Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

横濱13. パブリックデザイン

2008年09月27日 | Yokohama city
 地下鉄みなとみらい21線の各駅のデザインは、ようやく公共空間にパブリックデザインが本格的に導入された最初のケースになった。二層吹抜空間による開放的な設え、ビルの内部と地下鉄駅とが吹抜でつながっていたり、洋風建築に地上への出入口がクラシックにデザインされ、また設備が美しく空間のアクセントになり、といった類のデザインは、地下鉄の計画段階から行わなければ、実現できないことばかりだ。結果として駅毎に異なった個性あるデザインとなり、地下にいることを忘れさせてくれる優れた空間ができた。大切なことは、計画段階でこうしたデザインが、必要なんだという認識があったということである。
 私も大学に赴任した10年以上前に、名古屋市に対してこうしたパブリックデザインを提案したことがある。ある鉄道新線の委員会では、他の委員と共に駅や列車のCI導入を提案したが、コンサルタント自体がパブリックデザインを知らず、形式的で方向違いの書類が出されただけで、別の議論に進み、実現はしていない。そうした保守性が名古屋の人的気質なのだろう。以後私は、名古屋では、デザインの提案をしないことにした。
 パブリックデザインは、ヨーロッパやアメリカではあたりまえだが、パブリックという概念に乏しい我が国では、残念ながら定着していない。精々東京・大江戸線の地下鉄のように後づけデザインで、その場をしのぐといったことが多い。そうこうしているうちに、みなとみらい21線で、先に行われてしまった。手法としては簡単である。計画の段階から優れた建築家やデザイナーを参加させながら、地下鉄整備事業をすすめれば、よいだけである。簡単なことができない。他方で私達の生活にとって重要なことが簡単に決まる。といった具合に、日本はものすごく変だと思う。
 歴史を振り返れば、近代水道、西洋式公園、鉄道、乗合馬車、風水を用いた中華街といったインフラに始まり、ガス灯、テニス、理容、クリーニング、アイスクリーム、ビール、オルガン、牛鍋、和英辞典、そして写真師といった具合に、横浜発祥となる物事が多い。そうしたことを思えば、他に先駆けて新しい物事を創り出してゆくところは、いかにも横濱らしいのである。

2004年:みなとみらい駅
Canon EOS Kiss Digital,SIGUMA F3.5-5.6/18-125mm
コメント
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