Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

セカンドライフ sonicmart制作記1.

2007年08月17日 | Design&3DCG
今年5月から我々は、このHPでも紹介しているsonicmart[注1]というシムの制作をおこなってきた。そこでの経験を少し述べよう。
 当初、日頃から我々は3DCGを扱っているので、制作自体は難しいものではないと予想していた。だが最初にSLの3DCGソフトを立ち上げたとき、愕然とした。例えれば昔のStrata Studio以下の仕様だ!! こんなソフトで、実際に制作ができるのだろうか!? プリムサイズは最大10m迄、総プリム数は15,000以下、リンクヒエラルキー、ブーリアン減算、インポートやエクスポートはできない。さらに致命的なのは投影図としてのビューがないことだ。こうした制約の中で、手元のオブジェクトライブラリーなどを使わずに、SLのなかで全ての作業を完結させなければならないわけだ。恐ろしく制作効率が悪いことが予想された。
 実際の制作では、オブジェクト同士を正確に組み立てるには、数値制御しかない。建設モードのサイズと座標軸だけが頼りである。組み立てても、リンクヒエラルキーは、設定時のみ有効で、解除すると全てのオブジェクトリンクが解放されてしまう・・つまりバラバラ。またリンク可能なオブジェクト数にも制限があった。これは玩具だ!!。
 救われたのは、制作過程自体がレンダリングになっており、しかもフルタイム・レンダリングであることだ。さらに光や影という概念を排除してあるために、この部分の演算処理をしなくて済む。本来データ量の大きいはずの植物オブジェクトは、2プリム程度と処理しやすい。ただし見場を我慢すればだが。
 我々の制作方法が他のシムと異なる点は、可能な限りオブジェクトだけで環境を形成している点である(通例の3DCGではあたりまえだが)。 本来平滑な部材以外にはテクスチャーを用いていない。 典型的なのは建築ファサードの凹凸や開口部をオブジェクトだけで制作している。このあたりを他の多くのシムで多用されているテクスチャー処理方法とした場合、つまり写真を貼り付けるだけ(影がないから可能なのだが)といった2Dのロールプレイングゲームの手法を多用するとリアリティを損ない、3DCGであることの存在理由を失うのである。 このあたりに2D制作の余地を残しているところが、ゲーム屋発想なのだろうか・・。
 我々が採用した方法を用いれば、3DCGとしてのリアリティは形成できるが、当然プリム数も増えてくる。プリム総数には制限があり、今後このシムに滞在するアバターが制作したり持ち込んで配置されるオブジェクト容量を、予め確保しておかなければならない。そこで少ないプリム数で形成できる建築デザインが必要になってくる。上図の写真でコテージの屋根は1プリムといった具合に、プリム数で建築デザインが決まってくる。そうなれば、建築群によって形成されるシムの風景、ひいては全体環境やコンセプトも必然的に決まらざるを得ない。
 3DCGが本来目指してきたリアリズムを一端留保し(PCの性能が向上する時迄)、フルタイム・ウォークスルー・アニメーション・レンダリングを前提にして諸要素を構築し開発されてきた点が、SLオブジェクト・ソフトの優れた点である。 


注1.事業者は株式会社デジソニック(代表,明石康弘)。
コメント
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