Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

セカンドライフ sonicmart制作記6.

2007年08月22日 | Design&3DCG
 ファーストライフ(以後FLと言う)に於いて、実際のリゾートを始めとする地域・都市や建築要素等の計画とデザインをしてゆくことが、私達本来の仕事である。そうした私達の実現化ツールの1つとして3DCGやプログラミングを多用している。従ってセカンドライフ(以後SLと言う)の制作場面では、FL世界で実現された姿をイメージしつつ、シムのランドスケープ・デザインを行っている。従ってマナティ・リゾート・アイランドを、実際に建設しても成立するだろう。我々にとってSLは、シミュレーションの場でもある。広義にみれば、SL自体がライフ・シミュレーションだといえよう。例えば、既婚・未婚を問わず、FL世界とは、違う恋人がいたとしたら、どんなライフスタイルになるだろうか、・・・といった具合に。
 建築要素である居住区のコテージ制作で、私達はFL世界同様の手法を採用した。そうしなければ、混沌とした風景をSL上に出現させてしまうからだ。実はそんな実例を、JAPAN系シムでみた。シムオーナーが、敷地を再分割して転売や賃貸を行い、ユーザーが獲得した敷地に思い思いの家を制作する。その結果、クラシックハウスの隣が蟹直売店、その隣にはサザエさんちがあり、巨大看板やオブジェ、大きなブックストア、意味不明なハイテクオブジェクトが立ち並び、空にはクラシック飛行機が飛ぶ、といった案配にである。法律や構造といった制約を取り去ると、日本人の空間はどうなるかといったシミュレーションだと理解すると、日本人の特質がみられるようで興味深いが、そこにはFL世界以上に混沌した街が出現している。それでは、フリーのサンドボックスと大差がない。こうしたシムをみていると、やはり環境全体に対する一貫性ある制作ルール導入の必要性を痛感した。
 マナティー・リゾート・アイランドの居住区には、クリエイターや個人、或いは企業等が作品や商品を展示したり販売したり、またSLの定住拠点として利用できる、3タイプのコテージを制作している。総戸数は、同時可能アクセス数100人を基に係数を用いて算出し、約130戸程度を設けた。ランドスケープ・デザインでは、個別的建築デザインよりはむしろ、多数の建築群によって形成される全体性を重視した。そのため、屋根や色彩をタイプ毎に統一したり、3m,3.5m,5m,10mというオブジェクト・モジュールを採用し、建築自体の形態統一を図った。特に室内と室外との境界領域である敷際に着目し、バルコニーやテラス・ギャラリーといったマージナル・スペースを設けた。マージナルスペースは、作品展示販売、販売促進プロモーションといった活動が、空や道を歩くアバターの目にとめることができる場所なのである。またシムにコテージを規則的に配置すると、統一感は形成されるが、他方単調な風景になってしまう。そこで、縦方向、横方向と言った3次元的配置の考え方を導入した。先ず斜面配置可能な高低差がある敷地を造成した。次いでコテージの窓辺から見える風景が全て異なるように、多様な方向にコテージの前面を向けることとした。
 建築要素のデザインポイントをまとめると、建築群による風景形成、制作オブジェクトのデザインルールを予め用意する、建築内部よりはマージナルスペースの設えに留意する、不規則な建築配置による多様な風景の見え方、となる。これによってシム全体の統一感と、利用者アクティビテイによって展開される多様な活動とが、共存共生できる風景形成が可能になる。
 今回、このような方法が可能だった背景には、事業者が私達特定の1グループにシム全体のデザインを一括依頼してきた経緯がある。もし複数の制作者へ依頼したならば、JAPANシムのような混沌とした風景になっていただろう。さらに幾つかの経験から私達は、SLが都市やまちづくりシミュレーション・ツールとして有効だと考えている。というのも実際の街で混沌とした風景を実現してしまったら、バーチャル空間とは異なり、リアル空間では容易に修正ができないだろう。
コメント
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