朝、新聞で天気図を見たら、台風並みの勢力に発達した低気圧が本州付近にあったので、覚悟して家を出た。今日も実家から国文研に行く。外は激しい雨風で、駅まで歩いて行くのも往生した。
「花に嵐」とはよく言ったものだ。駅前の桜の木も、強風にあおられ、花はとても持ちこたえられそうにない。この風雨がなくても、花の盛りは短く、やがて色褪せて散ってしまうことは分かっているが、よりにもよってこの時期に来なくてもいいだろうにと思う。
しばしだに春の嵐はたゆまなむ年ひとたびの花にも飽かぬに
午後になって雨はやみ、調べものを終えて夕方、国文研を出るが、まだ風が強い。昨日見た桜並木は、木の下に一面に花びらが散り敷き、また風に折られた枝が転がっていたりして、春の嵐がどれだけ猛威をふるったかを感じさせる。
気がつくと、所々に大きな水たまりができていて、そこに花びらが浮かび、桜の姿が映っているのがとてもきれいだった。花を散らした嵐は恨めしいが、そのおかげでこんな光景も見られたのかもしれないと思った。
木(こ)の下(もと)に花の姿をみづかがみ風のなごりのさざなみぞたつ