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漢方薬

2020-09-05 06:03:29 | 日記


私の母は薬剤師として病院で働いていましたが、
薬剤師の中でも「管理薬剤師」という資格を持っていたのを買われ、
ある漢方薬局へと職場を移しました。
それで母の子である私達姉弟も藤沢へ引っ越す事になります。

母は前任の男性薬剤師から数か月間の教育実習を経て、
自分一人だけでの業務を始める事になりました。

と言っても、それまでの西洋医学の薬局から、
いきなり右も左も判らない東洋医学での職場を一人で切り盛りしなければならないのですから、
それは大変だったみたいです。
母は44歳から51歳までの7年間を漢方薬局で働きました。
毎日毎日が勉強の積み重ねで、
その勉強ノートが山と積まれていました。



店の中はこういった薬草が入った引き出しがいっぱいあり、
来店する客の症状を聞いて、それにはどういった薬が合うのかを判断し、
その中から何種類かを調合して一日分を袋に詰め、
それを数か月分作って客に渡すのです。
そういった顧客ノートがいっぱいありました。

私達家族は店に付随する家に住む様になったのですが、
最初は強烈な漢方薬に匂いが鼻に付きましたが、
それはすぐに慣れっこになって、鼻もマヒして行きました。


漢方薬というのは、多分中国から入った薬学だと思うのですが、
数千年という気が遠くなる様な先人たちの知恵は、本当に凄い。
この病気には、この草を煎じて飲めば効く。
この薬草とこの薬草を混ぜると、この症状には効く。
そういった途方もない知識の塊が漢方薬なのです。

「凄い」と思ったのは、
ある病気(何の病気なのかは覚えていない)にかかった牛の、
内臓のある部位(これも覚えていない)を取り出し、
それを乾燥させた物が、貴重でとても高価な漢方薬なのです。
そんなまるで考え及びもつかない物体が、
どうして人のある病気に効くなんて判る様になったのか?
信じられないし、先人たちの積み重ねから来る能力に驚くばかりです。

犀角(さいかく)という、これは少し有名らしい漢方薬があります。
これはアフリカなどに住んでいるサイの角です。
これをサメの皮(いわゆる鮫皮)ザラザラしたサメの皮をやすりにして粉にするのです。
私もサイの角をサメの皮で擦る手伝いをした事があります。
これは解熱に効くのです。
そんな事、何で分かったの?という事ばかりなんです、漢方薬って。

もう亡くなってしまいましたが、
かつての東宝映画の看板女優だった星由里子さん。
彼女がまだスターになる前、盲腸になったそうです。
それを母の前任の薬剤師が、調合した薬で一発で完治したそうです。
漢方薬は遅効性だと思われていますが、
中にはこういった即効性の薬もあるのです。
これは後日談的な話なんですが、
星由里子さんの母親は、そういった事が公になると娘の将来にケチが付く、
と思ったのかどうか?それ以来一切の感謝の言葉とかは無く、無視したそうです。

薬局に来る男性に、70歳くらいの痩身の方がいました。
その人は丹沢の山中を年中歩き回って薬草を採取しては売りに来ていたのです。
母の務めていた薬局は漢方薬問屋であったので、
国の内外から沢山の薬草が大きな麻袋で入荷していました。
そういった仕入れとは別に、こういった個人的な仕入れもあったのです。

現在の漢方薬局は、
この病気にはこれが効くと、あらかじめ袋に入れたパックになっています。
お店の引き出しから何種類かの薬草を取り出して、調合する。
そんな江戸時代みたいな薬局はもう殆ど残っていないんでしょうね。




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