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河童の歌声

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巌窟王

2024-05-26 03:53:22 | 読書


集英社の、少年少女世界名作の森15「巌窟王」を買いました。
日本では「巌窟王」として通っていますが、これの元本は「モンテクリスト伯」です。

私が初めてこの本を読んだのは、中学生の時だったと思います。
その頃あった「中学生コース」あるいは「中学時代」
といった月刊誌の付録の小冊子だった様な気がします。
それは勿論ペラペラの紙質もわら半紙みたいな本だったと思います。
しかし、たったそれだけの本に私は心を奪われて、夢中になって読んだのでした。

その思い出が強烈で、18か19歳くらいの時に、
いよいよ本物の「モンテクリスト伯」を買いました。
文庫本サイズで全7巻の大作です。
もう、それこそ寝食を忘れて、夜も寝ずに、目を真っ赤にして読みまくりました。
読み終わるのに何日かかったか記憶にありませんが、
全てを読み切った時の感動、呆然として頭の中がカラッポになってしまいました。
本を読んであれほど感動した事は、後にも先にありません。

それから、もう一回か2回くらい読み返したのかも知れません。
40歳くらいの時だったか、知り合った、あれは通産省の役人だったかに、
その感動を語り、彼にその本を貸したのですが、
色々生活の変化などがあって、彼とも有耶無耶になってしまい、
その本はそれっきりになってしまったのです。

その残念さ、無念さが心にずっと尾を引いてしまいました。
それでそれを買い直しました。
税込み7000円以上したのですが、嬉しかったですね~。
心が純粋な時代に感動した本は、忘れられるものではありません。
それから読み直す事、今回で多分5回目。
まだ3巻目ですが・・そんな時、フト思ったのです。
「あのダイジェスト版の(巌窟王)を読み直したいと」

と言うのは、ダイジェスト版の方が分り易いという一面があるのです。
元本では哲学的会話で分りにくい場面も、
「あ、つまりこういった事が言いたかったんだな」とか、
19世紀当時のフランス、イタリアの政情などが理解しやすかったり、
金銭感覚が現代と比較しやすかったり、
金銭感覚が理解出来ていないと、小説としては失格なんですね。
例えば千フラン・・これは100万円と書き換えると、
「あ~、なるほどそういった価値か」と理解度が深まるのです。
そういった意味でもダイジェスト版には、かなりの価値があります。

当時のパリの人口は約90万人。
と言えば、つまり現在の仙台市くらいなんだなとか、
パリ、マルセイユ、ジェノバ、モンテクリスト島、ローマといった位置関係、
その距離(当時の移動手段は馬車)だった事を考えると、
その時間、日数などが具体的に分かるのです。

ダイジェスト版は1時間か1時間半もあれば読み切ってしまいます。
ですが、中学生だった私は、たったこれだけの本に夢中になり、
それが後々の人生にまで影響を与える事に、本の持つ(凄さ)を感じるのです。
我が妻エリカ殿は、こんなカタカナばかりの小説など見向きもしません。
彼女は江戸時代に酔っています。
それはそれとして認めない訳にはいきません。

ですが、これはヨーロッパの物語です。
それを日本人などがテレビにしたり映画にしたり、
そういった馬鹿げた行為だけは絶対に許せません。
それは、宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の決闘。
徳川と豊臣が天下を競った関ケ原の合戦を、白人たちが演じているのと同じで、
あまりの愚劣さに言葉もありません。
どうか、こういった絶対的な勘違いだけは、やめにして頂きたい。
汚らわしいのです。

こういった圧倒的な本を読むと、
毎日テレビでやっているサスペンスドラマの薄っぺらさが気になります。
犯人を逮捕した時点でドラマは円満に終了。
しかし、犯人に家族を、家庭を取り返しの尽かない状態にされた被害者は、
それで(満足・気が済む)のでしょうか?
そこには被害者達の(悩める心)が無い気がします。
巌窟王(モンテクリスト伯)はそこからが本当のドラマなんです。

今回は5回目の読破ですが、
まだ多分・・・あるのかも知れません。



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アレクサンドル・デュマ

2024-05-06 06:50:46 | 読書


アレクサンドル・デュマと聞いて、それが誰か即答できる人はどのくらい居るのでしょうか?

アレクサンドル・デュマ(1802年ー1870年)68歳。
彼はフランスの作家です。
「モンテクリスト伯」「三銃士」を書いた作家です。

デュマを語るには、父親であったトマ、アレクサンドル・デュマから語らなければなりません。



トマ、アレクサンドル、デュマはフランス人の侯爵が父親で、カリブ海ハイチで、
奴隷であった女との間にムラート(白黒混血)として北フランスで生まれました。
母が死んだ後、他の3人の兄弟と共に、実の父に奴隷として売り飛ばされますが、
トマは父親がフランスへ帰国すると買い戻されて私生児として認可されフランスに行きます。
そこでナポレオン軍に入隊し、数々の武勲をあげ、陸軍中将にまで出世します。
町の有力者であったフランス人の娘と1792年(30歳)で結婚。
この夫婦からデュマは1802年に生まれます。
ですからデュマは1/4黒人の血が入った、クォーターなんです。



これはデュマの生家です。
父はナポレオンとの仲が不仲になり資産を全然残せませんでした。
しかし父親の友人であった将軍のお蔭で1823年(21歳)で職を得る事ができました。
その時、隣人であった娘を誘惑して、翌年私生児を産ませました。
これが後に(小デュマ)と呼ばれた息子です。
本当に手が早いんですね。
1831年には他の女性との間に女児を産ませ、
1840年には女優と結婚したのです。
しかし、劇作家としての夢は追い続け、観劇をし続けていました。

1836年に新しいメディアである新聞が発行されるようになり、
デュマはそれに「三銃士」「モンテクリスト伯」を連載し、名声を確固たるものにします。
しかし、収入も莫大なら、金遣いも莫大な人物でした。



それからのデュマは順風満帆とはいかず、数々のトラブルに見舞われます。
しかし、巨額の資産を得て、私邸モンテクリスト城を建設します。
晩年はそれらの資産も失っていたようです。

ですが「モンテクリスト伯」を初めとする数々の名著。
その影響力は今でも健在と言ってもいいでしょう。



デュマを(大デュマ)と言い、その子供デュマを(小デュマ)などと言います。
小デュマ(アレクサンドル・デュマ・フィス)1824年ー1895年(71歳)
彼の若い頃、周囲からの偏見は、その後の作風に大きく影響を及ぼしました。



20歳の頃、7人もの大金持ちのパトロンを持つ高級娼婦マリー・デュプレシと出会い、恋に落ちます。
マリーは間もなく病死しますが、彼女との思い出を「椿姫」として出版し、
これが小デュマの代表作となりました。

私にはアレクサンドル・デュマの存在は大きなものがあります。



そうです、私が世界一の小説と思う「モンテクリスト伯」です。
フランス製の6時間半に及ぶビデオを何度も繰り返し観てるうちに、
遂に5回目の読破が、また始まってしまったのです。

一字一句の持つ意味の深さに感動し、恐れを抱く時もあるのです。
この小説界の金字塔を、日本のテレビドラマ・映画にしたのがあるみたいですが、
そんな恥も外聞も無い、姑息な行為はどうか永遠にやめてほしい。
あれは人種の違う東洋人などがやってはならない行為です。
白人が宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の決闘をやってる様なものです。
そんなバカバカしい映画を、観たいなどとは絶対に思いません。
それと同じです、バカバカしいにも程がある。恥を知りなさい。

アレクサンドル・デュマ。本当に素晴らしい。
貴方の居ない文学界など・・・


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吉村昭の本

2023-12-11 07:05:56 | 読書


私は、吉村昭の本が大好きです。
彼の本質は、ドキュメンタリー(真実)を書く本です。





最初に読んだ本が何だったか覚えていませんが、
多分、この辺りではないかと思います。
私もそういった大きな事件、事故の類にとても興味を魅かれるからです。

しかし、既に捨ててしまった本(と言っても全部が文庫本)も多く、



最近になって、熊嵐という本を買い直しました。
110年も前のこの大事件を再び読み直したいという衝動が抑えられなかったのです。



「海の史劇」
これは1905年、日露戦争の最終章に起こった有名な日本海海戦を書いた本です。



この日本海海戦を体験し、捕虜となって行きぬいた、
ノビコフ・プリボイ氏が書いたのが「バルチック艦隊の壊滅」
これは原題は「ツシマ」で、現在は改訂版として販売されています。
この日本人とロシア人の書いたドキュメンタリー本は、
何回も読み直し、手垢で汚れまくっています。
真実を描いた本というのは、もう実に堪らなく心を揺さぶるのです。
その場で生死を彷徨う現実から身を避ける事は不可能です。
そういった中を必死に生き抜いた人達の壮絶なドラマ。
それが読む人の心を激しく突き上げるのです、そこがドキュメンタリーの凄さです。

「三陸海岸大津波」で、
吉村氏は津波被害の大きさ、多さで有名な町、
岩手県田老町を訪れ、万里の長城と言われ、海外からの視察者も多数訪れる、
巨大な防潮堤を視察に行ってます。
氏は2006年に亡くなられているので、2011年の東日本大震災を知らないままでした。
あの巨大で眼前にそそり立つ防潮堤を津波は軽々と乗り越え、
田老町が甚大な被害を受けたのを知ったら、吉村氏は何と思うのでしょう?

「戦艦武蔵」「高熱隧道」「陸奥爆沈」「漂流」「破船」「破獄」「大本営が震えた日」
「ポーツマスの旗」「桜田門外の変」「アメリカ彦蔵」「生麦事件」「島抜け」
読んだ本、まだ読んでいない本。
吉村昭ワールドからは抜けられない。



東京、荒川出身の吉村昭氏を記念して、
2017年に、吉村昭記念文学館が開館したとのこと。
私はまだ行った事がないので、そのうち行ってみようかと思っています。



名誉館長は吉村氏の妻であり、小説家でもある、
津村節子氏が務められているそうです。
都電の荒川2丁目駅が最寄り駅だそうで、毎月第3木曜日がお休みです。


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アクロイド殺害事件

2023-03-18 07:30:39 | 読書


何をとち狂ったか、今更「アクロイド殺害事件」を読んでいます。
ほんとに(今更)だと自分でも思っています。



(ミステリーの女王)と言われる、アガサ・クリスティーの著名作。
中学生の頃、「中学時代」とか「中学コース」といった雑誌があって、
そこには毎月、薄っぺらい小さな冊子が付録として付いてきました。
あまり覚えてはいないのですが、大体海外のミステリーだった様な・・・
多分、そこでこの本も読んだのかも知れません。
「まだらの紐」は読んだ記憶があります。

この本は様々な意見が飛び交ったそうですね。
事件の語り手が犯人だったなんて、そりゃないだろうといった。
見事に騙された、そんなのって許せないとか。

しかし、外国のこういったミステリーって読みづらいですね。
登場人物(この本では13人)を把握する事が中々できない。
一覧表を書いたのを横に置きながら読まないと、面倒きわまりない。
我が妻は、こういった外国作は名前が覚えられないと、完全に無視です。
彼女は、江戸時代を背景にした本ばかりを読んでいます。
これだと登場人物の名前を覚えやすい、それは言えますね。

かつ、あの場面の意味は何だったのかと、そんなシーンが多い。
テレビドラマの「刑事コロンボ」でも、そんなシーンが多かった。
こういった作は、DVD版映像で観るといいのですが、
どれもこれも高価なのが玉に瑕。
そして言えるのは、コロンボの時もそうでしたが、
よくよく気をつけて観ていないと、
肝心のシーンの意味が把握できない内に通り過ぎてしまうのです。
これは毎日テレビでやっている日本のミステリーが、
まるで小学生に教える様な「手取り足取り」方式で描いているのと大違いです。

だから、観終わった後でもう一回観ないと、見過ごしていたりするのです。
この本も多分、読み終わった後で、全部とは言いませんが、
その部分だけでも繰り返して読む羽目になるのでしょう。

同じ外国の本でも「モンテクリスト伯」が、
寝るのを忘れて一気呵成に読み切ってしまったのとは違いますね。
寝食を忘れてとは言いますが、ホントにあの時はそうでした。
それほど「モンテクリスト伯」は凄かった。
しかし、「アクロイド・・」はそうはいきません。
ドラマにひき込まれるまで時間がかかりますね。



これら一連のアガサ・クリスティーのDVDは全部を観たいですね。
「刑事コロンボ」は全作シリーズがお手頃価格であったので、買いましたが、
このシリーズは全作買うと、いったい何万円するのか?



何だか、この作品の日本版があるみたいですが、
私はこんなのは絶対に観ません。
「モンテクリスト伯」でも、日本版がありましたが、
そういった(ふざけた真似)はやめて頂きたいですね。
原作を汚す様な真似はやってはいけないと、私は思っています。
こういった素晴らしい原作は、それを大切に大切にして欲しいですね。



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平家物語、入門

2022-12-02 11:34:19 | 読書


「平家物語」
私はこの本の、よく言われる(滅びの美学)に、とても惹かれるのです。
我が世の春を、これ以上ないほど謳歌していた平家一門が、
一旦は蹴落とし世間から忘れ去られた存在になったと思われていた源氏一門に、
逆に蹴落とされるどころか、一族郎党、女子供、血の一滴までも根絶やしにされる悲劇。
僅か20年程度の全盛期から、京の都を捨て敗走、西へ西へと落ち行き、
総氏・平清盛が亡くなってから、たった4年で遂に壇ノ浦に滅びゆく憐れさ。
それ以後、生き残った平家血縁を根こそぎ、生かしてはおくものかと、
地の果てまでも追い詰める源氏執念の平家落人狩り。
見つかったが最後、一人残らず皆殺しとなる恐ろしさ。
生きた心地もなく日本全国の奥地へ奥地へと、死に物狂いで逃げ廻る平家の生き残りたち。
(盛者必衰)この言葉を語るに、これほどの物語はあまりないでしょう。
日本全国、数十か所に存在すると言われる(平家落人の里)
大勢の人達が隠れ住んだ所もある一方、
中にはごく僅かの人数で、ひっそりと生きていた人達もいて、
彼等が死に絶えた事により、果たして平家落人部落だったのかの真偽もわからずに、
廃村になってしまった村落も在るのです。



この壮絶な憐れさを人々は、琵琶法師によって後世に伝えました。
文字の読めない多くの平民たちは、彼ら琵琶法師たちの語りから、
源平合戦を知り、平家残党の憐れさを知り、
そのあまりのドラマチックさに涙したのでした。

琵琶演奏 「祇園精舎」 ~伝統音楽デジタルライブラリー


私もそういった琵琶法師の語りを聴きたく、
田原順子さんのミニコンサートに行った事があります。
いつかまた聴きに行きたいと思っています。

さて、この平家物語、いったいどのくらいの本が在るのでしょう。
古典の原文で読んだという人はほぼ居ないと思います。
よくあるのは、上下を半分に仕切って、
上が現代文、下が古典原文といった形式ではないでしょうか。
あまりにも様々な作家が、この本を書いてますので、
どれを読んだらいいか、よく分からないというのが本音だと思います。
そんな中で私が推薦するのがこれです。



著者は、ドキュメント作家として知られる吉村昭氏。
私はドキュメンタリーが大好きなので、この作家の本を何冊も読んでいます。
〇 「羆嵐」   北海道で巨大な羆に7人が喰い殺された。
〇 「高熱隧道」 丹那トンネルの難工事。
〇 「海の史劇」 ロシア、バルチック艦隊との日本海海戦。
〇 「関東大震災」 あの大震災の様子。
〇 「三陸海岸大津波」 明治時代に起きた岩手県の大津波災害。
他にも挙げればきりがありません。

吉村氏は、何を書くにもしても事実を忠実に書く事を心がけているので、
一人っきりで各地、現場を訪れて生き証人から話を訊く様にしています。
とは言っても「平家物語」に生き証人が居る筈もなく、
しかし、私は吉村氏のそういった作風に期待して、
この長い物語(のダイジェスト版)を読んだのです。

平家物語には、話の本質とは無関係の宗教的な部分が多く、
そういった話はカットして書いたそうです。
ただ、本来の作者が書いた物を盗作している様な、後ろめたさを感じるように思えて、
今回限りで現代語訳は二度としないと言っています。
吉村昭という作家のそういった愚直さが、私は好きです。



それと正反対なのが、吉川英治氏。
宮本武蔵という、吉村昭氏とある種共通した愚直な剣豪の物語に、
「お通さん」などという架空の人物をでっち上げ、ありもしない話を作り上げてしまう。
こういった作風は、私は好きになれません。
お願いだから、史実をゆがめて後世の人達を惑わすのはやめて頂きたい、と思うのです。
一旦、吉川英治風な「宮本武蔵」という人物像が伝わってしまうと、
以後、人々はそれが真実だと思い込んでしまうのです。
そういった話を書きたいのであれば、全くの作り話を書けばいいと思うのです。
どうか真実の話で(ウソ話)をこしらえるのは、やめにしてほしかった。

真実というのは、ひとつしかありません。
今更どうにも出来ない真実は、それを忠実に後世に語り伝えて行くべきだと思っています。
平家物語の真実を知る人は誰もいません。
ですが、少しでも(真実はこうだった)と思わせてくれる文体で、私は読みたい。
そういった人に私が薦めるのは、この本です。
更にもっと深く読みたいと思っている人達も、
この本をきっかけにして、本物の世界に辿り着くのも、いいでしょうね。



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