杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ガチバン スプレマシー

2016年04月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年4月13日公開 77分

いまだ跡目が見つからない衣笠高校の番長・森紋児(佐野和真)は、2年間も留年を繰り返しながら、番長を探すため喧嘩に明け暮れていた。一方、社会人になった黒永勇人(窪田正孝)は鉛筆削りの営業の職に就くが、中学中退の学のなさが災いして仕事でミスばかり。むかつく上司に罵倒された挙句クビとなり、拳では越えられない壁を痛感する。自身に限界を感じた勇人は生まれて初めて勉強したいと思い、定時クラスがある衣笠高校の編入テストを受ける決意をする。願書を取りに来た勇人とばったり再会した紋児は、勇人を番長に迎えようと受験対策の協力を申し出るが・・・。

「ガチバン」シリーズ第16作。
過去の「ガチバン」9作品で主演した佐野和真と「ガチバン MAX」から8作品で主演を務めた窪田正孝の共演であり、珍しくコメディタッチで暴力シーンが控えめな作品です。

実はこのシリーズの本編を観たのはこれが初めてです。
以前、窪田君主演の7作品の総集編と呼べそうな『ガチバンBSR 黒永勇人編』はDVD購入しておさらいしたのですが、やっぱり暴力シーンがメインの本編は気が進まず・・・ところがこのDVDの特典に「スプレマシー」の舞台挨拶が入っていて、どうもこれまでの作品と違うらしい。子供と一緒でも楽しめそうとのことなので思い切って観てみました。
ちなみにこの舞台挨拶では佐野&窪田コンビの作詞作曲「Tシャツ(仮)」という歌まで披露してくれていて、ファンにはお宝特典でございます

鉛筆削りのクレーム電話に変な敬語を連発して応対する勇人とか、衣笠高校に受験願書を取りに来てトイレで紋児と再会するシーンとか、慣れない勉強に悪戦苦闘する様子とか、笑いどころ満載です。
それだけだとおバカなだけで終わっちゃいますが、7掛けという意味がわからず納入ミスした勇人を励ましてくれた納入先の事務のおじさんの言葉に発奮し、自分の生き方を変えようとしてもう一度勉強をやり直そうと決意する姿や、頑張ったのに結局試験に落ちてしまった時の落胆の様子に思わずじわ~~っとくるシーンもあって、なかなか良かったです
こういう複雑な感情表現は相変わらず上手いよね~窪田君

勇人の頑張る姿に初めは背中を押していたよっちゃん先輩が、置いてきぼり感を募らせ逆に足を引っ張ろうとしたり、でも最後はまたまた二人仲良くプーに戻ったり。この二人の関係もいつまでも変わらないのかな~~

それにしても・・・勇人って中学校レベルから地道にやり直した方が早くない?そして何気に紋児の学力は普通以上ありそうな

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名探偵コナン時計じかけの摩天楼

2016年04月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
1997年4月19日公開
2016年4月8日 金曜ロードSHOW!放送

頭脳は高校生だが体は小学生の名探偵コナンは、いつも麻酔で迷探偵・毛利小五郎を眠らせ、変声機を使って小五郎を演じつつ正体を隠して難事件を解決していた。ある日、コナンの正体である高校生名探偵・工藤新一に、建築家の森谷からパーティーの招待状が届く。新一は電話でガールフレンドの蘭に代理出席を頼み、自分はコナンとして蘭に付き添おうとするが、その代わり5月3日の夜に、蘭と映画「赤い糸の伝説」に行くことになった。コナンたちがパーティーに出席した数日後の5月3日、特殊火薬盗難事件と連続放火事件が発生する。そして、その犯人らしい男が新一に爆破予告をしてきた。しかし、コナンはラジコン飛行機やペット用ケースに仕掛けられた爆弾を次々と見抜いていく。続いて環状線爆破の予告が届いた。期限は日没まで、しかも環状線上の各列車が時速60キロ未満にスピードを落とすと爆発するという。これらの条件からコナンは爆弾そのものの仕掛けを突き止め、大惨事は未然に防がれた。これまで爆破のターゲットとなった場所も放火された建物も、すべて森谷の古い作品であることに気付いたコナンは、森谷こそが事件の真犯人であると見抜く。森谷は完全主義の美意識から外れる若い頃の作品の抹消を図り、また、新一の活躍がめぐりめぐって自分の新作の建設中止に至ったことから、新一への挑戦を最終目的の隠れ簑にしていたのだ。森谷逮捕の時にはすでに最後の爆破のタイムリミットが迫っていた。場所は、いま蘭が新一を待つ映画館ビル。森谷はパーティーの席上で、蘭からデートの話を聞いていたのだ。コナンが駆け付けた時には小爆破が起き、コナンは瓦礫越しに新一の声で蘭へ最終爆弾の解体の指示を出す。最後の切るべきコードは青か赤か。赤好きの蘭の決断でコードが切られ、爆破は防がれた。選ばれたのは青、蘭は新一との赤い糸を切らなかったのである。...(映画.comより)

劇場版シリーズ一作目の作品。放送にあたりデジタルリマスター版として編集されています。
TV放送されるとつい見てしまうのでこれでもう何度目かの鑑賞ですが、犯人や結末を知っていても楽しめるところがです。

デジタルリマスター版ということで映像も綺麗。

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ゲームメイカー 消えたジグソーパズルと巨大迷路の秘密

2016年04月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年製作 アルゼンチン/カナダ/イタリア 112分

アイヴァン・ドラゴ(デヴィッド・マズーズ)は10歳の時、両親に連れられて出かけた遊園地で貰ったボードゲームをきっかけにゲームに目覚め、ゲーム会社のコンテストに応募して新作を送り続け遂に優勝するが、社長のモロディアン(ジョセフ・ファインズ)から送られてきた賞品はタトゥーシールが一枚だけ。しかも、それを腕に貼ったところ剥がれなくなってしまう。そんなある日、気球レースに参加した両親が行方不明になってしまい、アイヴァンは寄宿学校に入れられてしまう。落ち込む日々を過ごす中、祖父ニコラス(エドワード・アズナー)から手紙が届き、アイヴァンの家系は、代々ゲームの創作者として有名な一族だったことがわかる。手紙の中の暗号を解いたアイヴァンは、壁の中に住む少女アナンシアシオン(メーガン・シャルパンティエ)の協力を得て学校を抜け出し、おじいさんの住む町ジールへ辿り着く。しかし、かつてゲームの都として栄えていた町は、あのゲーム会社によって支配されていた…。


アルゼンチンの作家、パブロ・デ・サンティスの児童小説"El inventor de juegos"が原作です。

ゲーム嫌いの父の家系は実は代々ゲームメイカーの才能に恵まれていて、息子の中にもその才能があると知った父は祖父に息子を会わせようとしますが、邪魔が入ります。
父親と共に育ったモロディアンは悪の才能を開花させ、ジールから追放されたことを逆恨みしてニコラスや町に復讐しようとしていたのです。そのためにアイヴァンの両親を攫い、彼を辛い状況に陥れ、最後にその才能もろとも自分の会社に利用しようと画策します。

沼地に建てられ年々沈んでいく寄宿学校(寄宿生はアイヴァンただ一人)にいじめっ子、アイヴァンを助けてくれる壁の中に住む少女や幽霊が出るという噂の地下の図書館など、いかにも子供が興味を持ちそうな状況が次々出てきてわくわくするのはまさにボードゲームのよう

外出を禁じられたアイヴァンが生徒たちをけしかけて振動を与えて学校を完全に沈めちゃったり、ジールで真実を知り、モロディアンの会社に乗り込んで捕まっていた両親やアナンシアシオンを助け出したりの大活躍の末、ジールはゲームの町としての活気を取り戻してめでたしめでたしの結末はお約束ではあるけれど子供向けだし、ま、こんなもんでしょ

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64 ロクヨン 前編  試写会

2016年04月25日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2016年5月7日公開 121分
2016年4月25日 一ツ橋ホール 18時半開映

7日間で幕を閉じた昭和最後の年、昭和64年。そのわずかな間に少女誘拐殺人事件が発生。それは刑事部で“ロクヨン”と呼ばれ、少女の死亡、未解決のままという県警最大の汚点を残し14年が過ぎ去った……。時効まであと1年と迫る平成14年。かつて刑事部の刑事としてロクヨンの捜査にあたった三上義信(佐藤浩市)は、現在は警務部の広報官として働き、記者クラブとの確執や、キャリア上司や刑事部と警務部の対立などに神経をすり減らす日々を送っていた。そんなある日、ロクヨンを模したかのような新たな誘拐事件が発生する。


横山秀夫の警察小説「64(ロクヨン)」を映画化した2部作の前編です。
とにかくキャストが豪華佐藤浩市を始め、綾野剛、榮倉奈々、窪田正孝ら若手から永瀬正敏、三浦友和らベテランまで主役級が勢揃いしてます。

このところご無沙汰続きだった試写会、やっと当たりました。
もちろん公開したら劇場に行くつもりだったけれど、一足先に観れてラッキー!!
オールキャスト揃い踏みの舞台挨拶付き完成披露試写会はメディアも入って豪華版でしたが、こちらも協賛のとんかつ和幸さんの食事券のお土産付でしたのでお得
ただ、客入りは9割くらいで空席があったのが残念。良い作品なのでもっと沢山入ると思ったのにな~。

前編では誘拐事件の犯人は誰かという謎はまだ解けません。
主人公の三上を通して様々な人間関係が描かれます。
警察内部の軋轢を一般の会社に当てはめて見るのも一興です

三上の所属する広報室は記者対策を担っていますが、必要最小限の情報で記者を飼いならせと命じる上層部と際限なく情報を要求する記者の間で板挟み状態になります。ある交通事故の加害者の名前を匿名としたことで記者たちの反感を買い、直接抗議文を県警本部長(椎名桔平)に送ろうとする騒ぎに発展し三上は苦境に立たされます。この本部長も温和そうに見えてノンキャリア組なぞ駒にしか見ていなさそうな冷たさを感じさせます。
それに三上を苦しめる敵役の警務部長・赤間(滝藤賢一)の憎たらしいことったら
更に彼は家庭でも問題を抱えています。容姿コンプレックスに悩む娘(本質は父への反発にあるようですが)が家出していて、身元不明遺体の確認に夫婦で出かけたりしています。

そんな中、「ロクヨン」事件の時効を一年前に控え、お偉いさんが激励に訪れることになり、三上は被害者家族への根回しを命じられます。ところが、幸田メモの存在から事件には警察内部の不祥事隠しがあったことがわかってきて・・・この部分で窪田君演じる元ロクヨン自宅班で科捜研から出向していた日吉が登場予告で日吉が泣くシーンが挿入されていますが、その涙の原因は当時の班長の脅し文句にあったのね以来、14年間自宅引き籠りを続けている彼に三上が送った手紙を読んで、彼はまた泣きます。凄く感情の籠ったシーンで引き込まれるのですが、ただ一点、あの妙に整った口髭はいただけませんビジュアルに思わず吹き出しそうになったぞともあれ、彼の出番は後編でもありそうで嬉しいな

この幸田メモの存在を巡り、刑事部(捜査の実働部隊)と警務部(事務方)の衝突も起こって、三上はますます苦境に立たされることになるのです。
部下である美雲(榮倉奈々)の進言を受けて記者クラブに胸襟を開いて、両者の間に信頼関係が生まれたのも束の間、新たな誘拐事件が発生。身代金の額や状況が「ロクヨン」と類似していることを示唆して「続く」となるのでした。

被害者家族の雨宮を演じる永瀬正敏の演技にも引き込まれます。妻も亡くし、孤独に生きている彼が、新たな事件の前にぼさぼさだった頭髪を短くしていたのと、事件後警察を止めてスーパーの警備員をしていた幸田(吉岡秀隆)が姿を消したことが後編で意味を持ってくるのかしらん?
原作とは異なる結末らしいですが、とりあえず原作読んでみるかな

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マーラとバイキングの神々

2016年04月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年製作 ドイツ 94分 日本劇場未公開

マーラは、心の奥から聞こえる奇妙な声に悩まされていた。「君は予言者だ。使命を果たせ」。不思議な力に導かれ、神々の世界に足を踏み入れたマーラ。そこで彼女は、洞窟に幽閉されている半神ロキと出逢う。ロキは、炎の邪神ローゲにさらわれた妻のシギュンを取り戻す使命をマーラに託した。果たせなければ、この世は終末の日《ラグナロク》を迎える。マーラは北欧神話の専門家ヴァイシンガー教授と共に、世界を救うため、火の山に住むローゲに戦いを挑むが…。


「ロード・オブ・ザ・リング」、「ナルニア国物語」のVFXチームによる映像で、「マイティ・ソー」の原典である《バイキング神話》を基にしたファンタジーです。が・・・やはりハリウッド版と比べるとスケールや脚本に難ありな感が否めませんでした。そもそも、北欧神話自体馴染みが薄いしね

マーラの母親は、自然力や魔法を信じる怪しげな団体に帰依している周囲からは浮いた存在です。マーラが学校でいじめに遭っている原因の一端とも思える設定ですが、マーラ自身はそんな母親を少し疎ましく感じながらも愛しているのね。

マーラが見る幻覚は実はロキの助けを呼ぶ声が起こしています。ロキと言えば悪役のイメージですが、本作では攫われた妻を取り戻そうと、少女に助けを求める男で、荒ぶる神の威厳は感じられません。シギュンを助けに行くため戒めを解けば世界は崩壊するので、義理堅いロキは自分の代わりに妻を助けてくれる預言者を探していたというわけです。良い奴じゃん。

北欧神話の専門家である教授(同じ町の大学に都合よくいたんだなぁ)に自分の幻覚の意味を解いてもらおうとして、二人は冒険に足を踏み入れることになります。冒険というと勇ましく聞こえますが、ロキに神の力を分けてもらって瞬間移動ができるようになっただけなんですけどね教授とのやりとりもコミカルですが、何かというと「思春期だから」というセリフが登場するのは、現代ドイツの一般的少女像を反映させているということなのかしらん?

ともあれ、神話世界と現代を行ったり来たりするうち、ローゲの弱点を見抜いたマーラは邪神を怒らせパワーを消耗させることで退治しちゃうんですね。最期、踏みつぶされるローゲの姿はギャグかと思っちゃいましたよ
不死身の英雄ジークフリートも登場(均整の取れた上半身を惜しげもなくさらすのは何サービスだ?)しますが、完全なる脇役扱いでした。

マーラをいじめていた級友は、彼女の幻覚を共有したことで、自分がしてきたことを反省します。教授はマーラの母親に気があるようだし、事件解決の後は色々ハッピーエンドになりそうな余韻あり。

冒頭のソーとロキの戦いや、マーラたちとローゲの戦いは、予算が潤沢じゃないのか貧相なのが惜しいけれど、「思春期」の子供の視点で見るなら共感度高い作品かも

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モンスター・ホテル2

2016年04月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2016年2月20日公開 アメリカ 89分

モンスターたちの社交の場・モンスターホテルで出会ったドラキュラの娘・メイヴィス(声:川島海荷)と人間のジョナサン(藤森慎吾)がついに結婚!二人の息子・デニスも誕生しドラキュラ(山寺宏一)は大喜び。なんとしてもデニスを一人前のモンスターに育てたいドラキュラは、いつもの仲間と一緒に孫育てに奮闘中。そして迎えたデニス5歳の誕生日。メイヴィスが招待したドラキュラの父・ヴラッドは人間が大嫌いな古いタイプのモンスターだったので、さぁ大変。デニスの誕生日はモンスターの家族と人間の家族を巻き込んでの大騒動に!(公式HP)


舞台は前作から7年後の「モンスター・ホテル」。ドラキュラだろうと人間だろうと「じぃじ」は孫に夢中なのねまして可愛い可愛い愛娘の産んだ子なら尚更のこと立派なドラキュラに育てようと何かにつけて口出し手出しするんだけど、メイヴィスの方は息子の将来を思い、人間界で適応できるように実家のホテルを出てジョナサンの生まれた町で暮らそうと考えています。
夫であるジョナサンはホテルでの暮らしが気に入っていて出来ればこのままでいたいようですが、妻にも義父にも頭が上がらず振り回される役どころ
ジョナサンの故郷を下見に行くという口実で二人を送り出してデニスを預かったドラキュラは、何とか孫のモンスターとしての才能を開花させようとキャンプに連れ出しますが、そこで騒動を起こしてしまい、怒ったメイヴィスはデニスの5歳の誕生パーティが済んだらホテルを出ると決めてしまいます。

ところが、メイヴィスが人間嫌いの祖父のヴラッド(ドラキュラの父)を招待したことで、誕生パーティが大混乱に陥るの。この大ピンチにデニスが蝙蝠に変身。ひ孫がモンスターの血を受け継いでいることがわかり、ヴラッドも好々爺に早変わりでめでたしの結末です。

ジョナサンの実家で微妙に居心地の悪さを感じたメイヴィスや、大好きなモンスターたちとのお別れが悲しかったデニスの心情なども描かれていて、楽しいだけじゃない現実の苦みもちょっぴり味わえます。こうしてみると、何も考えていないようなジョナサンが意外と頼れる夫でありパパなのかも

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菩提樹荘の殺人

2016年04月19日 | 
有栖川有栖(著) 文春文庫

アポロンのように美しい少年、と噂される連続通り魔事件の容疑者。お笑い芸人志望の若者達の悲劇。大学生時代の火村英生の秀逸な推理、そしてアンチエイジングのカリスマ殺人事件。「若さ」を持て余す者、「若さ」を羨望する者達の恩讐に振り回されつつ謎に立ち向かう火村とアリスを描く、美しい本格推理四篇! (「BOOK」データベースより)


ドラマ化にあたって原作を読んでいるため、どうしても比較感想になってしまいますが
事件そのものより火村とアリスの関係性に注目してしまいました。

「アポロンのナイフ」
ドラマでは初回から引っ張ってこれだけ?な展開でしたが、こちらはまとめて一気に読めるのがいいです
本ではアポロンらしき少年と会話を交わしたのはアリスですが、ドラマは火村の教え子に変えてましたね
アポロンの仕業かと思われた二件の殺人の真相はそのまま。下手にいじらなかったのは正解かと

「雛人形を笑え」
お笑い界での成功を目指した被害者。その野心の強さ故に引き起こされた悲劇ともいえるかな。
火村が犯人を確信したのが被害者の死体のポーズというのが単純だけどインパクトありました。
でも一番面白かったのは、被害者の元相方を前にしての火村とアリスの喫煙に関する会話だったりします。
ほんま、あんたら漫才うまいやないですか

「探偵、青の時代」
ドラマ本編が終了した後、huluで放送された三本のうちの一本がこれを下敷きにしているようで。
(そもそも、TVで始めたならそこで完結せんかい!!と憤るクチなので未見ですが、すげ~~観たかった
まだ学生の頃の火村の名推理なのですが、事件そのものは殺人ではなく、軽微なものです。
本ではアリスが大学の同窓生と偶然あって火村が昔披露した推理について聞かされるという展開ですが、ドラマでは当時のメンバーの中にアリスがいたようですね。

「菩提樹荘の殺人」
アンチエイジングのカリスマが別宅の敷地内の池に首を突込み下着姿で死んでいた・・アリスじゃないけど、逆さで足が突き出てたら横溝正史の「犬神家の一族」だ。こういうふうに軽い笑いを入れて凄惨な殺人を扱う中の息抜きにしているのがけっこう好きだったりします。容疑者は交際していた二人の女性とマネージャーをしていた姉と秘書(付き人)の男性の4人です。被害者の裏の顔が暴かれた時点では犯人から一番遠かった人が実は、という結末。積もった恨みが爆発してしまったのねぇ
火村とアリスの出会いや、アリスが推理作家を目指すきっかけとなった高校時代のラブレター話も登場します。(これはドラマでも使われてたな~~

「若さ」をモチーフにしたということで、34歳から年をとらなくなった二人の学生時代の話が出てきたのがけっこうツボだったりします。特に「菩提樹荘の殺人」で火村の「俺は万年青年なんかより老いに寄り添えている人間を見る方が心安らぐ」というセリフがアリスが40年後の火村を「高校生より尖った頑固な爺さんになってそうだ」と想像し、火村はアリスを「微笑ましい万年青年になるかもな」と評するくだりが、二人の関係がこれからも変わらないだろうと思わせてくれます。

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ミクロ・アドベンチャー

2016年04月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年製作 オランダ 101分

引っ込み思案な男の子ヨハネス。仕事で忙しい父と、全く遊んでくれない姉との3人暮らし。そんなある夜、物音がした台所に行ってみると、なんと手のひらに収まるほどの小人が物陰に隠れていた。ウィプララと名乗るその小人は、台所にぽっかりと開いた穴の奥にある、魔法の国からやって来たという。ヨハネスは、家族に内緒でウィプララの面倒を見るが、ある日、家族で出かけたレストランでトラブルに巻き込まれ、ウィプララの存在が見つかってしまう。さらに、ヨハネスたちはウィプララの不思議な魔法によって、体が見る見るうちに小さくなってしまい…。


ミクロ化した家族の冒険を描いたファンタジーアドベンチャー作品で、原作はオランダの児童文学作家、アニー・M・G・シュミットです。

ヨハネスはお父さんとお姉ちゃんの三人暮らし。亡くなったお母さんのことを話すと悲しくなるからとお父さんの前でお母さんの話はしないってお姉ちゃんに約束させられていますが、それってけっこう辛いよね。

ある夜、ヨハネスは小人(妖精ではないらしい)のウィプララと出会います。彼が魔法を使うと七色の眩しい光線が炸裂しますが、この魔法が失敗ばかり。猫やクモやお父さんの親友のアーサーをカチカチに固めてしまい、元に戻すことが出来なくなります。
でも食べ物だけはうまくご馳走(子供にとってと言う意味でね)に変えることができたのですが、これが原因で一家は窮地に立たされます。警察沙汰になりたくないというお父さんのリクエストで魔法を使ったところ、一家もウィプララと同じサイズになっちゃうの。

元に戻るには、正しく魔法が使える他のウィプララを探さなければならず、何とか家に帰ろうとする一家ですが、中国人の店で腕白坊主に追いかけられ、玩具のリモコン自動車で逃げ出して町を疾走したり、怪我をしたお父さんを病院に連れて行ったり、鳩の背中に乗ったりと思わぬ冒険が待っていました。
町で一番高い屋根に飾られていたアトラス像がウィプララの魔法が当たって動けるようになった時、ヨハネスのした質問に「思考より行動」だと答えます。これを聞いたウィプララは自信と勇気を取り戻すのです。

一家を元のサイズに戻すことができたウィプララは、アーサーや猫もちゃんと戻すことができました
実は彼は自分の国の魔法の試験でパニクり、皆を固めてしまって逃げてきたのです。でもちゃんと魔法が使えるようになったので、皆を元に戻すために自分の国へ帰っていきます。

ヨハネスもウィプララも自分に自信が持てずにいたけれど、この冒険を通して成長します。
妻を喪った痛みを仕事することで紛らわせていただろうお父さんも、子供たちとちゃんと向き合って絆も強くなったようです。

大きな石像にされてしまったアーサーですが、お蔭で本が売れたり、好意を寄せていた婦人をうまくいったりしたから、ま、いっか~~

オランダの映画はあまり観たことがないし、原作も未読です。ヨハネスやウィプララに一番影響を与えたのがアトラス(ギリシャ神話の神で両腕と頭で天の蒼穹を支えています。)の言葉というのも興味深いです。父親じゃないんだ~~



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おいしい生活

2016年04月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2001年10月20日公開 アメリカ 95分
2016年3月1日 日テレ「映画天国」放送

NY。冴えない元ギャングのレイ(ウディ・アレン)と仲間たちは、完全無欠の銀行強盗を計画する。愛妻フレンチー(トレーシー・ウルマン)はカムフラージュで銀行近くにクッキー屋を開くが、それが予想外の大繁盛。ついには彼女の従姉妹メイ(エレイン・メイ)を店員に雇い、すっかり話題の店に。やがてレイも失敗ばかりの強盗をあきらめ、店をフランチャイズ化する計画に手を貸す。かくして一躍、社長になったレイとフレンチーは大金持ちに。するとフレンチーは、急に本格的な社交界入りを志すようになり、画商のデイヴィッド(ヒュー・グラント)に色々教示を受ける。レイはそれが面白くない。しかし横領事件が起こり、突然、会社は倒産。デイヴィッドも去っていった。レイとフレンチーは元の貧乏生活に戻ることになったが、それはそれで幸せな二人なのだった。(Movie Walkerより)


ウディ・アレン監督作との相性はすこぶる悪い私。
彼の作品とは知らず、スイーツ関連のコメディだと思って録画したのですが・・・たしかに「クッキー」は美味しそうだけど、この夫婦のドタバタぶりも笑えるけど、金持ちや知識人への痛烈な皮肉がてんこ盛りで素直に笑えなかった。主人公が間抜けなおバカさん扱いなのも気に入らないのよね。喉に小骨が引っかかるようなこの作風、やっぱり苦手だ。

レイはダメ人間の落ちこぼれです。刑務所時代の「切れ者」というあだ名を皮肉と気付かず本気にするような男。そんな彼の仲間たちも頭の悪さでは引けをとらない者ばかり。銀行まで続くトンネルは逆方向に掘る始末。妻のフレンチ―はそんな夫に呆れながらも結局は協力してしまいます。でもカムフラージュで売ったクッキーがバカ売れして本末転倒しちゃうの。

大金持ちになった途端、上流志向の妻に振り回されるレイ。高級食材より妻の作った肉団子入りスパゲティが食べたいレイの気持ちはわかるぞ~
一方、何とか上流階級の仲間入りをしたいフレンチ―は、悪趣味なインテリアで室内を飾り、インテリ層を招いてもてなすのですが、彼らの目には下品な成金としか映らず蔑まれてしまいます。意地になった彼女は画商のデイヴィッドから芸術のイロハを学ぼうとするのですが、彼の方は彼女を単なる金ヅルとしか見ていません。これもよくあるパターンね

経営も財産管理も他人任せにしていたため、横領されて一文無しになってしまった夫婦ですが、全部失くして初めて互いが一番大切であることに気付くの。(いや、レイの方は最初からずっと妻を愛していたんですけどね

態度を豹変させて去っていったデイヴィッドから、以前彼にプレゼントした高価なシガレットケースを、これも以前レイに教わった鍵開けの腕前で取り戻したフレンチ―。このラストが一番好きかも

どんなにお金があっても幸せにはなれない、やっぱり愛がなくては!なオチでした。

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彼は秘密の女ともだち

2016年04月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年8月8日公開 フランス 107分 R15+作品

幼い頃からの親友ローラ(イジルド・ル・ベスコ)を亡くし、悲しみに暮れていた主婦クレール(アナイス・ドゥムースティエ)は、ローラの夫・ダヴィッド(ロマン・デュリス)と生まれて間もない娘の様子が気になり二人の家を訪ねると、そこにはローラのワンピースを着て娘をあやすダヴィッドの姿があった。そんなダヴィッドから女性の服を着たいと打ち明けられ、戸惑うクレールだったが、やがて彼を“ヴィルジニア“と名付け、女友達として絆を深めていく。「男に許されない事を全てやりたい」とパリジェンヌのように美しく着飾った“彼女”と過ごすことが、刺激と歓びに満ちた冒険へと変わっていくクレール。夫・ジル(ラファエル・ペルソナ)に嘘をつきながらもヴィルジニアとの密会を繰り返すうちに、クレール自身も女性としての美しさが増していくのだった。そんな中、ヴィルジニアが男であることに直面せざるを得なくなったクレールが、自分らしい生き方を見つめ、最後に選んだ生き方とは……。Movie Walker


平凡な主婦が「特別な女ともだち」との出会いを通して本当の自分を見いだしていくハートフルドラマ・・・らしい。
ロマン・デュリスが女装なんてと思ったけれど、これが意外に似合っていました

妻を亡くしたばかりで幼い娘を抱えて途方にくれたダヴィッドが、泣き止まない娘をあやすために始めた母親代わりの女装姿を妻の親友に見られてしまう。クレールにとっては、大事な親友の夫が変態趣味だなんてと最初は受け入れることができません。でも、ローラがダヴィッドの女装趣味を知っていたことや、彼の女装への熱意を打ち明けられて、態度が軟化していきます。それにローラに彼女亡き後、残された娘とダヴィッドを見守ると約束したこともあり、放ってはおけなかったのよね

夫のジルにはさすがに本当の事が言えず、女装したダヴィッドを女友達だと嘘を付いて彼の買い物に付きあったり食事をしたり、挙句はお泊り旅行までしちゃうんですが、これって恋愛感情なの?それとも亡き親友の代わりなの?
それはダヴィッドも同じ思いだったみたいで、二人は一線を超えそうになるのだけれど、クレールが逃げ出し、後を追ったダヴィッドが事故に遭ったことで、彼の女装も周囲にばれちゃうんですねぇ

そして7年後・・・成長したローラそっくりのリュシーを迎えに来たクレールとヴィルジニア。ごく普通にママとして受け入れられているらしいヴィルジニアはまぁ良いとして、クレールが一緒で三人仲良く帰るシーンで終わるってどういうこと?そもそもクレールの夫ジルの立場はどうなってるの?
観る人の解釈に委ねられているような結末は、個人的には好きじゃない。もし、クレールがジルと別れてたらヤダな本当の「女」友達としてヴィルジニアを受け入れたと思いたいかな。

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ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション

2016年04月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年11月20日公開 アメリカ 137分

カットニス(ジェニファー・ローレンス)率いる第13地区の反乱軍は、スノー大統領(ドナルド・サザーランド)が支配する独裁国家との最終戦争に突入。カットニスは、ゲイル(リアム・ヘムズワース)、フィニック(サム・クラフリン)、そしてピータ(ジョシュ・ハッチャ―ソン)を従え、スノー大統領暗殺に挑んでいく。だがカットニス抹殺の念に憑りつかれたスノーは、反乱軍の動きを察知。死のトラップ、無数の敵に直面する中、やがてカットニスは過去のどのゲームの戦闘よりも困難で非道徳的な決断を迫られるのだった……。(Movie Walkerより)

「ハンガー・ゲーム」シリーズの完結編です。
ピーター・ゲイルとの三角関係にもようやく終止符が打たれますが、う~~ん・・・そうきたか
ま、思い返せば幼馴染より生死を共にした相手の方が強烈な感情が芽生えて当然ってことですかね。

スノー憎しの思いに凝り固まったカットニスは仲間に嘘を付いてパネムに乗り込んでいきますが、そこで仲間を次々失ってしまいます。一方のスノーの方もカットニスに執着し過ぎて反乱軍の動きを読み間違い破滅していきます。

洗脳が解けきれていないピーターが補充要員として送り込まれたのは、コイン首相の思惑あってのこと。
革命成就の暁には、立役者であるカットニスにその座を奪われないかと恐れる彼女が、隙あらばピーターに殺されてしまえと考えたんですね。指導者は常に権力欲と疑心暗鬼に陥るものらしい。
そしてある意味コイン首相の不安は見事に的中することになりますが

ゲイルの考えた作戦も実に非人間的でえげつない。いや、裏で糸を引いていたのは「ゲームメーカー」のヘブンズビーなんですが。
結局この革命の真の勝者がヘブンズビーだとしたら、なんかやりきれないぞ

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ルパン三世 イタリアン・ゲーム

2016年04月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2016年1月8日 金曜ロードショー放送

サンマリノ共和国の名家に生まれ、イタリア最大手のホテルチェーンを経営するロッセリーニ財閥の若き会長であり、スーパーモデルなどとしても活躍するお騒がせセレブのレベッカ(藤井ゆきよ)が誘拐された。レベッカの熱狂的なファンの犯人は、彼女に結婚を迫り列車を制御不能状態に!あるお宝を狙い、彼女を追っていたルパン(栗田貫一)は、何の因果か銭形(山寺宏一)と一緒に、暴走列車に監禁されたレベッカを救いだすため暴走列車とカーチェイスをする羽目に。実は誘拐犯を裏で操っていた謎の人物がいた。その人物は仮面伯爵と名乗り、レベッカ誘拐事件の前に、ルパン三世に挑戦状を出していた。その内容とは「あるお宝」をどちらが先に手に入れるか勝負しようというもの。そして、「あるお宝」とは、かの有名な「カリオストロ伯爵の遺産」!
「カリオストロ伯爵の遺産」を巡り様々な人間が交錯していく。孤高のガンマン・次元大介(小林清志)、居合抜きの達人・石川五ェ門(浪川大輔)、男心を惑わす小悪魔・峰不二子(沢城みゆき)、そしてルパン最大のライバルであるICPOの敏腕捜査官・銭形警部といったおなじみのメンバーに、イギリス秘密情報部MI-6 ニクスや、イタリア警察のセルジオ、レベッカを追うパパラッチ・サロや、カリオストロ伯爵の子孫ガスパーレ、さらに、ルパンと電撃結婚をしたお騒がせセレブのレベッカ・・・。信頼と裏切りが錯綜し物語は最後まで何が起こるか分からないスリリングな展開に!
果たして仮面伯爵は一体誰なのか?そして、張り巡らされた仮面伯爵の罠に、ルパンは打ち勝つ事ができるだろうか…?最も危険なイタリアン・ゲームが今幕を開ける!!(番組HPより)

30年ぶりに復活した「ルパン三世」のテレビシリーズの最新作。“新ルパン”はジャケットの色が青!これ、往年のファンとしては違和感あるのよね(^^;

ぶっちゃけ、仮面伯爵の正体はけっこう早くから予想できちゃいました。
お騒がせセレブ・レベッカやMI-6の凄腕殺し屋・ニクスも、ハリウッドの二番煎じの感が否めないし、不二子にはもっとルパンを翻弄して欲しかったなぁ

サブタイトルの「イタリアン・ゲーム」はチェスの序盤定跡の名称だそうです。お宝を巡る勢力争いをチェスの勝負になぞらえているらしい
ちなみに劇場版『ルパン三世 カリオストロの城』の敵役と今回のカリオストロ伯爵の末裔として登場したラザール・ド・カリオストロは全く異なる人物とのこと。

TVアニメ第4シリーズのSP版の位置付けのようですが、シリーズ未見でも特に不都合はなかったです。
ルパンお得意の飄々とした振る舞いも健在ですが、お色気度は大人しめかな

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白ゆき姫殺人事件

2016年04月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年3月29日公開 126分
2016年4月1日「金曜ロードSHOW!」地上波初放送

日の出化粧品の美人社員・三木典子(菜々緒)が何者かに惨殺される事件が起こり、典子と同期入社で地味な存在の女性・城野美姫(井上真央)に疑惑の目が向けられる。テレビのワイドショーは美姫の同僚や同級生、故郷の人々や家族を取材し、関係者たちの口からは美姫に関する驚くべき内容の証言が飛び交う。噂が噂を呼び、何が真実なのか多くの関係者たちは翻弄されていき……。過熱報道、ネット炎上、口コミの衝撃といった現代社会が抱える闇を描き出していく。


二年前の公開当時は劇場鑑賞予定もなく忘れていたのが、地上波放送されたので録画して観てみましたが、かなり豪華な出演者の顔ぶれだな~というのが観終わっての感想です。
犯人はこの人だ!とミスリードしておいて、最後に真犯人が登場する展開はまさに原作者・湊かなえ氏の作風そのものでした

蓮佛美沙子はこれ以降TVドラマなどの露出が多くなったという印象があります菜々緒は悪女イメージが強いのだけど、この作品では途中までは淑やかな美女?と見せておいて、あら~やっぱり!なキャラでした

美人OL殺害、しかもめった刺しの上燃やされるという状況で、犯人は被害者に強い恨みを持つ人物という推測の中、地味で目立たない彼女の同僚が疑われます。そのきっかけは同じく同僚の里沙子(蓮佛美沙子)が元カレでワイドショーの契約ディレクターである赤星(綾野剛)に情報を流したから。
事件ネタに飛びついた彼がツィッターで憶測情報をつぶやき、ワイドショーに取り上げる際の周辺取材も偏った方向からなされます。ネット上で、勤務する化粧品会社の目玉商品になぞらえ「白ゆき姫殺人事件」と呼ばれて無責任な噂や口コミが広まり、美姫が犯人だと世間が断定していく様がなかなか恐いです。

美姫が交際していた上司の篠山(金子ノブアキ)を典子にとられたとか、同期で美人の典子へのコンプレックスがあったとか、果ては子供の頃に放火騒ぎを起こしたり呪いの力で同級生を怪我させたなど、実名や学歴に加えてあることないことが曝され、美姫の両親すら娘が犯人という前提のもとに謝罪する始末。
美姫の学生時代を知る友人(谷村美月)が番組に抗議文を送ったことで赤星の行動が問題視されてTwitterへの書きこみは止めても、既に事件は彼の手を離れて騒ぎが収束する気配もありません。

一方ビジネスホテルに潜伏していた美姫は、事態に絶望して死を選ぼうとし、手記を書いています。これまで噂されていた彼女に関する数々のエピソードが、今度は彼女自身の視点から描かれます。物事には必ず裏と表があって、一方の見方だけでは真実は浮かんで来ないということがよくわかる手法でした。
例えば、篠山が手作り弁当を迷惑がっていたというのは嘘で彼の方から頼んできたとか、典子が嫌がらせのために篠山を奪ったとか、放火事件もいじめられていた友人の力になろうとやったことがたまたま火事を引き起こしてしまったことや、級友の怪我も呪いとは全く関係がなかったことなどが明かされるのです。

死のうとした美姫の目に、TV画面は真犯人逮捕のニュースを映し出します。実は最初に赤星に情報を流した里沙子が典子を殺した犯人だったのです。三木の性格の悪さを直前の美姫の手記で明かしているので、典子のパートナーだった里沙子が彼女を恨む理由も一応納得はできますが、あのような強い殺意・憎悪に至る動機としてはやや弱い気もしました。

姫は「赤毛のアン」が愛読書の想像力の豊かな少女で、辛いことがあっても想像の翼を広げることで乗り切ってきた女性でした。彼女が苦境に立たされた時、両親でさえも娘を信じきれなかったけれど、大学時代の友人や幼馴染の夕子(貫地谷しほり)だけはずっと美姫を見捨てなかった。まさに「貧の友は真の友」です。美姫を励ましたのは、昔夕子と交わした秘密の合図(ロウソクの灯りを使ったサイン)で、これも「赤毛のアン」に出てくる有名なエピソードの一つです。(同級生で初恋の男の子とのエピソードもアンとギルバートのそれから採られていました。)

事件が解決するとTwitterは一転して美姫への同情と赤星の糾弾が溢れます。今度は赤星の個人情報が曝され仕事もクビに。美姫の実家を謝罪に訪れた赤星を父親(ダンカン)は怒鳴りつけ追い返しますが、そんな父親だって娘の無実より世間体を気にして謝っていたじゃないか~とここは複雑な気持ちになるね。

ぼんやり歩いていた赤星を美姫の運転する車が轢きそうになります。彼女を認識できないほど憔悴している赤星に、「きっとなにか良いことがありますよ」と声をかけ去っていく美姫。このラストが象徴するものって・・・深いね

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エール!

2016年04月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年10月31日公開 フランス 105分

フランスの田舎町に住むベリエ一家は、仲睦まじく暮らしている。両親(カリン・ビアール、フランソワ・ダミアン)と弟が聴覚に障害を持っており、高校生の長女ポーラ(ルアンヌ・エメラ)は通訳のように外部とのコミュニケーションの橋渡しをしていた。ある日、ポーラの歌声に才能を感じた音楽教師トマソン(エリック・エルモスニーノ)は、彼女にパリにある音楽学校のオーディションを勧める。しかしポーラの歌を聴けず才能を知ることができない家族の大反対に遭い、また一家にとってポーラは不可欠な存在であるため、彼女は葛藤の末に夢を諦めようとしてしまう。そんな中、彼女の歌の力が家族にも伝わる出来事が起こる。(Movie Walkerより)


フランス映画ですが、あちらの10代って皆あんなに積極的なの?
学校のコーラス曲に情熱的な愛の歌を選曲って日本じゃあり得ない気がしますが、これもお国柄の違いということかしら?ポーラは歌の練習をするために、親友のマチルダ(ロクサーヌ・デュラン)に家族の通訳を頼むのですが、手話をマチルダに教える役を買って出たポーラの弟と付き合い出し・・そこまでは良いけど、ゴムアレルギーの弟がアナフィラキシーを起こすエピソードは笑いとしては微妙に感じるのも日本人的感覚だから?

聴覚健常者であるポーラを失うことは家族の生活に多大な支障を来すことなので、「家族はひとつ」が合言葉のベリエ家にとっては大問題。それでも娘の幸せを考えたら笑って送り出すのが親だと思ってしまいますが、彼らにはポーラの才能を「聴くことができない」のだからその才能を信じきれないのもまたわかります。

ポーラがオーディションで選んだ曲は、家を離れて行く気持ちを歌い上げたもので、会場にいる家族に向けて手話を加えて歌う姿を見て家族がポーラの才能に気付く場面がとても感動的でした。
以前、パリ行きに反対し泣き崩れる母が、自分は良い母親じゃないと言ったのに対してポーラは最高の母親よ!と返すのですが、「あなたの歌が聞こえないのに?」と言われて絶句するという出来事があったのですが、手話付きで歌うのはポーラなりの家族への伝え方だったのね。聴覚障害のある家族にとってポーラの歌う姿は見えてもその歌声は届きません。それを象徴するのが発表会で歌っている時に無音になるシーンです。でも生き生きと歌う姿や、デュオ曲の後で観客が総立ちとなって拍手をする様子に、娘の才能を感じ取ることができます。そして手話・・・ここで家族はポーラの気持ちを理解することができたのね。

ポーラの母がとても陽気でいつも笑顔の可愛い女性です。夫婦仲も良過ぎるくらいに熱々で、子供の前でそんな「音」聞かせていいのかよ~ってくらい開放的父親は頑固な家父長という感じですが、ポーラの真剣な思いを知ると、彼女が諦めていたオーディションへ連れて行きます。彼が娘の才能に気付くきっかけの一つに、娘の歌を喉に手を当てて聴くシーンがあるのですが、家族の絆が感じられてここも良かったなぁ。
おませな弟も案外しっかりしていて、これならポーラがいなくなっても大丈夫だと思わせてくれます。

ポーラがコーラスを始めたのは密かに憧れていた男子生徒に近づくためで歌は二の次だったのですが、この出会いがポーラの運命を変えたわけですね。声替わりで音楽学校行きを諦めた彼は一時は全てを投げ出してしまうのですが、ポーラの姿勢に態度を改め、彼女に協力するようになります。こちらも恋の進展がありそうな結末でした

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あやしい彼女

2016年04月08日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2016年4月1日公開 125分

東京の下町。毒舌で頑固でおせっかい、トラブルばかり引き起こす73歳のおばあちゃん、瀬山カツ(倍賞美津子)は、周囲から煙たがられてばかりの毎日。女手一つで娘・幸恵(小林聡美)を育て、望むような人生を生きることができなかった彼女はある日、幸恵と喧嘩し家を飛び出してしまう。ふと目にした写真館に吸い寄せられたカツは「私がこのカメラでお姫様にしてあげますよ」と言う店主(温水洋一)の言葉に喜び、写真を撮影。店を出るとそこにいたのは、なんと20歳の姿をしたカツ(多部未華子)だった……。麗しい容姿を取り戻したカツは、まず髪型を変え、洋服を変え、そして名前を大鳥節子と変え、失われた青春を取り戻すために新しい生活をスタートさせる。そんな中、なじみの商店街で開催されたのど自慢大会で、節子は得意の昭和歌謡を熱唱。その歌声は会場中を魅了し、歌手になるという夢が動き始める。新人を探していた音楽プロデューサー・小林拓人(要潤)にスカウトされた節子は、しがないバンドマンの翼(北村匠海)と組んでバンドデビューを果たすが、実は翼は節子の孫。長年カツに想いを寄せる幼馴染の中田次郎(志賀廣太郎)も巻き込みながら、初めて思い通りの人生を歩み始める節子であったが、そんな奇跡のような日々は長く続くはずもなく……。(Movie Walkerより)


韓国映画のリメイクというのは知らなかったのですが、ヒロインの強烈な個性や、幼馴染の男性の受け身な姿勢を振り返ればなるほど!いかにも韓国コメディの流れを踏襲していますね
あれ?そういえば、内容は違うけれど今冬ドラマでも若返ったヒロインの話をやってたな

口を開けば毒舌のマシンガン、誰に対しても物怖じせず、自分を押し通すヒロインですが、倍賞美津子さんや多部ちゃんが演じると可愛く見えるから不思議です。
この作品は多部ちゃんの演技観たさにチョイスしたのですが、かなりツボにはまってしまいました。オードリー風の衣装も、ちょっとずれた昭和なセンスも彼女が演じるととてもキュートに見えます。ロック仕立ての「見上げてごらん夜の星を」や「真赤な太陽」、しみじみ聴かせる「悲しくてやりきれない」など懐かしの昭和歌謡(というか戦後歌謡の域ですが)が使われていますが、若者には逆に新鮮に聞こえるのかしらん?多部ちゃんは歌の猛特訓をして臨んだそうですが、その歌声は間違いなく観客を惹きつけます。

カツがパートをしてる銭湯は婿養子に入った次郎が営んでいます。彼に想いを寄せるみどり(金井克子)とは犬猿の仲で、喧嘩も日常茶飯事ここは笑える楽しいシーンですが、後に脳梗塞で倒れて還らぬ人になったみどりの通夜に彼女だ好きだったフルーツ牛乳を供えるカツに、実は親友だった二人の関係性が映し出されていました。

夫を早くに亡くして女手一つで娘を育ててきたカツにとって、娘や孫は唯一の自慢の種ですが、その恩着せがましい物言いにとうとう娘がキレて喧嘩になります(口を開けばあんたのためにやりたいことを我慢してきた、なんて言われ続けてきたらキレても仕方ないよね)原因となったのはカツが詐欺に引っかかったことですが、孫が痴漢をした示談金と言われて薄々怪しいと思いながらもお金を渡したのは、雑誌の編集長をしている娘(実は左遷されてたのですが)の仕事に差し障りがあってはならないと思ったからでした。これも後になってわかることなのですが、カツは、素直に気持ちを表せない人なのね

さて、不思議な写真館を出たカツは引ったくりに遭い、これを追いかけます。自転車の高校生より速いって、そりゃ無理があるだろ!という突込みはおいといて、ここで自分が若返ったことに気付くのです。神様がくれたチャンスとばかり、髪型や服装を変えていつもの銭湯に浸かったはいいけど、「やりたいこと」が出て来ない長湯でのぼせた彼女は次郎や次郎の娘・麻衣子(三鴨絵里子)らに名前を尋ねられ、とっさに大鳥節子と名乗りますが、これは憧れの「オードリー・ヘップバーン」と「原節子」から拝借したのね。

次郎の人の善さに付け込み居候を決め込んだ節子は、商店街ののど自慢大会に飛び入り参加したことで、孫の翼や音楽プロデューサーの小林を魅了します。就職活動で抜けたボーカルのアンナ(越野アンナ)の代わりに翼のバンド“怪しい彼女”に誘われ、可愛い孫のためにと引き受けた彼女は、翼たちの音楽を騒音と一刀両断。得意の「真っ赤な太陽」を歌いあげます。街角ライブの動画で再び彼女の歌声を耳にした小林はバンドを大人気音楽番組に出演させ、知名度の上がった彼らは人気ロックフェスの出演も掴みます。(節子にとってはフェスより紅白の方が知名度が高いので、翼たちとの感覚の違いから起こるドタバタも可笑しかったです。)小林との距離も急速に近づいていく中、亡き夫以来の恋心に戸惑いながらも胸の高鳴りが止められない節子が可愛いかったな

一方、カツを案じる次郎は、節子の部屋からカツの所持品を見つけて彼女がカツをどうかしたのではと疑い、罠(猿や鳥を誘き寄せるんじゃないんだけど~~しかもまんまと引っかかってるし)を仕掛けるのですが、反対に節子に返り討ちに遭います節子が口紅を塗る様を見てようやく節子=カツという事実に気付く次郎。実はこの口紅は昔次郎がカツに初めて贈ったもの(または同じ商品)なの

また、母の捜索を続ける幸恵の方も、みどりや次郎に聞いて少しずつカツの過去を知っていきます。病弱だった自分のためになりふり構わず生きてきた母親の人生を知り、改めて感謝するんですね

フェス当日、事故に遭いながらも会場に駆けつけた翼ですが、もちろん演奏できる状態じゃない。でも曲を作った翼の努力を知っている節子は歌わせて欲しいと小林に頼みます。
この時の「新曲」も良い歌でした
病院に駆けつけた節子は翼のために、輸血を申し出ます。実は血を抜くと若さが失われカツに戻ってしまうのですが、それを承知で可愛い孫のためにきっぱり新しい人生を捨てたのです。「ローマの休日のお姫様だって、それが人生の休日だと知っていた」というようなセリフがあるのですが、ここもでした。

ラストの、元に戻ったカツの前に若返った次郎(野村周平)が現れるくだりは蛇足な感もありますが、この二人案外うまくいくのかもね

笑ってちょっぴり泣けてじんわり温かい作品でした。

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