杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ミラベルと魔法だらけの家

2021年11月29日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2021年11月26日公開 アメリカ 

魔法の力に包まれた、不思議な家に暮らすマドリガル家。
家族全員が家から与えられた“魔法のギフト(才能)”を持つ中で、少女ミラベル(吹替:斎藤瑠希)だけ何の魔法も使えなかった。
ある日、彼女は家に大きな”亀裂”があることに気づく──それは世界から魔法の力が失われていく前兆だった。 残された希望は、魔法のギフトを持たないミラベルただひとり。なぜ、彼女だけ魔法が使えないのか?そして、魔法だらけの家に隠された驚くべき秘密とは…?(公式HPより)

 

南米コロンビアが舞台の、魔法にあふれた家に暮らす少女ミラベルの活躍を描いたミュージカルファンタジです。

マドリガル家の子どもたちは、ある年齢になると「魔法の才能」を家から与えられます、母フリエッタは癒しの魔法、おじのブルーノは予言の魔法、長姉イサベラは花の魔法、次姉ルイーサはパワーの魔法、おばのぺパは天気の魔法、いとこのカミロは変身の魔法、ドロレスは聴力の魔法です。ちなみに父のアグスティンやペパの夫のフェリックスは普通の人です。 ところがミラベルだけは何の力も与えられませんでした。それでも家族の一員として幸せに過ごしてきたのですが、従弟のアントニオが動物の魔法を与えられた夜、魔法の家の異変に気付きます。

祖母のアルマ(中尾エミ)に訴えますが取り合ってもらえず、一人で家族を救うために立ち上がることを決意したミラベルは、行方不明になったブルーノの部屋(立ち入り禁止になっている)に入り、預言の欠片を見つけて持ち帰ります。そこには崩壊する家と自分が映っていました。ブルーノを見つけて予言の意味を尋ねますが、彼にもわかりません。そうこうするうち、家族の中にも亀裂が・・。

昔アルマが夫と生まれたばかりの三つ子と暮らしていた街が襲われ、逃げる途中で夫が殺され悲嘆にくれる彼女の前に一本の蝋燭が現れ、安全な土地と魔法の家を授けたのがマドリガル家の始まりでした。アルマはいつしかその魔法で町と家族を守ることだけに執着するようになっていて、家族がその力故に悩んでいることに気付かないでいました。

ブルーノは自分の予言の重さに悩み苦しんで姿を消していたのです。イサベラやルイーサも周囲からの期待に応えようと無理をしていました。

特にイサベラは特に好きでもないマリアーノと婚約までしてます (彼を好きなのはドロレスで、結末では結ばれるという

アルマとミラベルの衝突がきっかけで魔法の家は倒壊してしまいます。けれど、それがきっかけで家族の心は再び一つになるのです。

何かと嫌味をいったりつっかかってくるイサベラとミラベルは、これまでソリが合わなかったのですが、家の一大事に力を合わせます。

これまでマドリガル家の魔法に助けられてきた町の人々も協力し、新しい家が出来上がります。そのドアノブをミラベルが付けると…あら不思議!魔法の家が再び蘇ったのでした こんな魔法の家、欲しいね~~

力を持つが故の悩みと持たない悩み。どちらも当人には深刻ですが、両方あって物事は旨く行くのよねというお話 みんな違ってみんな良い


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キャラクター

2021年11月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年6月11日公開 125分 PG12

漫画家として売れることを夢見る主人公・山城圭吾(菅田将暉)。高い画力があるにも関わらず、お人好しすぎる性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。ある日、師匠の依頼で「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチに出かける山城。住宅街の中に不思議な魅力を感じる一軒家を見つけ、ふとしたことから中に足を踏み入れてしまう。そこで彼が目にしたのは、見るも無残な姿になり果てた4人家族……そして、彼らの前に佇む一人の男(「SEKAI NO OWARI」のボーカルFukase)。
事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をつく。
それどころか、自分だけが知っている犯人を基に殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出し、サスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始める。
山城に欠けていた本物の【悪】を描いた漫画は異例の大ヒット。山城は売れっ子漫画家となり、
恋人の夏美(高畑充希)とも結婚。二人は誰が見ても順風満帆の生活を手に入れた。
しかし、まるで漫画「34」で描かれた物語を模したような、4人家族が次々と狙われる事件が続く。
刑事の清田俊介(小栗旬)は、あまりにも漫画の内容と事件が酷似していることを不審に思い、山城に目をつける。共に事件を追う真壁孝太(中村獅童)は、やや暴走しがちな清田を心配しつつも温かく見守るのだった。
そんな中、山城の前に、再びあの男が姿を現す。
「両角って言います。先生が描いたもの、リアルに再現しておきましたから。」
交わってしまった二人。山城を待ち受ける“結末”とは?(公式HPより)
 
 
お人好しな性格ゆえに、人の悪を描けず苦悩する才能のない漫画家が、殺人事件の犯人と出会ったことで運命に翻弄されていく姿を描いたダークエンタテインメント作品です。菅田君の演技もですが、とにかく本作が俳優デビューのFukaseの演技に圧倒されました。
 
そもそも、なんでダークホラー?性格を考えたら「ほのぼの系」の方が合ってるんじゃね?という疑問は置いといて
作画は上手でもキャラに深みがないため一向に芽が出ない山城は、とうとう漫画家を諦めようとしますが、その最後の夜に事件に遭遇しちゃうんですね 凄惨な現場を目撃した彼の中で何かが変わります。警察の事情聴取に「犯人の顔は見ていない」と嘘を付いて描いた作品が大ヒット。リアルにインスピレーションを得たのだから、犯人を投影したキャラにも作品自体にもある種の魂が宿って当たり前かも。
 
鳴かず飛ばずの山城を陰で支えてきた恋人・川瀬夏美(高畑充希)と結婚して、セキュリティー厳重な豪華マンションに居を構えますが、彼の中で押さえようのない不安が頭をもたげます。彼が描いた漫画「34」と事件の関連性にいち早く気付いて真相を探り出した清田刑事があんなことになる展開は予想外でしたが、周囲の人間、特に夏美に危害が及びそうになったことで、山城は自分を囮に犯人逮捕に協力を決意します。
犯人の両角がコンタクトしてきて「あなたの作品通りに模しておきました」と誇らしげに話しかける場面などは背筋が凍る怖さです。罪を犯すことへの罪悪感を全く持たない彼は明らかに性格異常者。幸せな4人家族に拘る理由として、彼の特殊な生育環境も明らかになりますが、だからと言って許されるとか同情する余地は全くないただただ、気味悪さが残りました。
 
山城は実家の家族を想定して囮を準備しますが、夏美は双子を妊娠していて、ターゲットとなります。必死に妻を守ろうとする場面はもはやスプラッターホラー。(刺されまくるけど、死なないのね
 
真壁らが駆けつけ両角は捕まり一件落着かと思わせておいて・・・二人が揉み合って倒れた際の位置関係が漫画と逆だったこともあり、何だか両角と山城の心が入れ替わったかのような含みのあるラストがさらに恐怖を煽ってきました
 
俳優陣に興味を惹かれて観ましたが、やっぱりコレ系は苦手だ~~

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検事の死命

2021年11月26日 | 

柚月裕子(著) 角川文庫

電車内で女子高生に痴漢を働いたとして会社員の武本が現行犯逮捕された。武本は容疑を否認し、金を払えば示談にすると少女から脅されたと主張。さらに武本は県内有数の資産家一族の婿だった。担当を任された検事・佐方貞人に対し、上司や国会議員から不起訴にするよう圧力がかかるが、佐方は覚悟を決めて起訴に踏み切る。権力に挑む佐方に勝算はあるのか(「死命を賭ける」)。正義感あふれる男の執念を描いた、傑作ミステリー。(「BOOK」データベースより)

 

『佐方貞人』シリーズ第三弾の本作は、二つの短編と一つの中編で構成されています。とはいえ前二作は未読ですが

タイトルが『使命』じゃなくて『死命』なのが重要で、佐方の検事としての生き様を現わす強い言葉が使われているんですね。

上司の筒井が佐方や増田を誘う行きつけの飲み屋の親父や、そこで出される名酒や肴の描写に思わず生唾を飲み込んでしまいました。個人的にも洒落たショットバーよりあんな地元の穴場的で庶民的な飲み屋に惹かれるな~~

第一話:心を掬う

米崎地検着任一年が経った頃の話。増田の目線で語られていきます。

郵便物が届かないという被害を耳にした増田が何気なく佐方に話したことから、調査が始まります。複数の被害の全てが中央郵便局の取り扱いだったことが判明し、郵便監察官の福村と協力して事件解決に乗り出すのね。

普通、現金は現金書留で送りますが(紛失の際の担保があるものね)、送料割り増しになるため普通郵便に同封するケースがあることを佐方は自分の経験(祖父母がなけなしの金を送ってくれていた)で知っていました。手紙の紛失は郵便局員による犯行と睨み、福村が目星をつけた容疑者を検挙するための証拠を掴もうと画策するんですね。抜き取った手紙をトイレに持ち込み、中の現金を懐にいれ手紙はトイレに流していると確信して、浄化槽を攫ってその証拠の手紙を取り出す展開は、読んでいるだけで汚物にまみれての作業とその執念が伝わってきます。言い逃れしようとする犯人に、佐方自らが仕組んだ動かぬ証拠を突きつける場面は爽快です。

 

第二話:業をおろす

父・陽世の十三回忌のために故郷に帰った佐方は、法事を執り行ってくれる上向井英心を訪れます。父は無実の罪を敢えて受け服役し、獄中で病気が見つかり亡くなっていました。佐方は何故父がその選択をしたのか長年疑問に思っていて、父の幼馴染の英心なら知っているのではないかと尋ねますがはぐらかされます。しかし法事の席で意外な事実が英心の口から語られます。

父がある秘密を守るために、敢えて恩人の金を横領したという汚名を受けたことは佐方だけは知っていましたが、実刑を免れることができたのにそれをしなかったことが解せずにいたのね。 英心は、陽世が横領事件の数年前のある事件に関わったことで、弁護士としての正義と人としての正義の狭間で苦しんでいたことを突き止めます。佐方は父との約束を守り続けてきたのですが、英心は12年経ち、当事者たちが故人となっていることで、法事の席に関係者を集め真実を明らかにして陽世の名誉を回復しようとしたのです。この話の主役は英心ですね

それにしても佐方も父親も職業的には立派ですが、秘密を守るために払った犠牲は大き過ぎるよな~~ 特に陽世は、自分の中だけで完結していて、その結果、親や子、親族にどれだけの不利益をもたらし傷つけたかについて考えが及ばなかったのかと思ってしまいます。 恩人の名誉を守るためという名目に酔いしれた独りよがりの正義感に見えてしまうし、過去の自分の行為の罰をそういう形で課すというのも違うんじゃないかな 

 

第三・四話:死命を賭ける、死命を決する

電車内での痴漢行為で逮捕された被疑者の武本は無実を主張します。彼は県内有数の資産家・名家の係累で、被害者の玲奈は母子家庭の補導歴のある少女です。何としても無実を勝ち取ろうとする武本側は優秀な弁護士の井原を雇い、大物議員や検事正を使って圧力をかけてきますが、佐方は武本がクロと確信し、罪を正しく裁くために武本を起訴します。

公判では、武本の性癖や、玲奈の補導の理由(友人を庇っての濡れ衣だった)が明かされ、検察側有利に裁判は進みます。

井原は奥の手の証人を用意し勝利を確信しますが、この証人が逆に佐方の調査により事件や武本との繋がりを暴露する決定的な「証拠」となるのです。井原弁護士は依頼人がシロかクロかには関心がなく、依頼人の利益を守ることだけに熱心なのですが(第二話で佐方の父が苦しんだ「依頼人の利益のため」と一見同一のようで、実は全く立ち位置が異なるのですが)そのため詰めの甘さが出ています。 一方佐方はこの証人の素性と武本との繋がりを徹底的に調べ挙げて決定的な証拠を見つけ出すんですね 発行が2013年ですが、既にスマホも登場していたような?パソコン通信という言葉を久々に目にしましたが、物語の設定は20世紀なのかな?

この案件には佐方を信頼し協力する上司の筒井と事件を扱った警察署長の南場の存在が欠かせません。警察や法曹界の権力争いの構図も透けて見えました。 でも権力者に逆らった佐方たちが無事で済むのかという疑問、心配は残りますね。小説も現実も甘くないんじゃないかな 


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ルパン三世 ワルサーP38

2021年11月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年10月22日 金曜ロードショー放送

とある国の副大統領の誕生パーティーに、ルパン(声:栗田貫一)が送ったものではないニセの予告状が届いた。その届け主を探るため、ルパン一味はパーティーに潜入するが、待ち受けていた銭形警部(声:納谷悟朗)に追い詰められてしまう。あと一歩で捕まると思われたそのとき、銭形が何者かの銃によって撃たれてしまう。ルパンが銃弾が放たれた先を見ると、そこには、ワルサーP38を構える何者かの姿があった。その銃は、かつて駆け出しのころのルパンが持っていたもので、かつての相棒に裏切られたときに奪われたものだった。銭形を撃った犯人を、その手の甲の入れ墨から、暗殺者集団の“タランチュラ”のものであると推理したルパン。かつての相棒との因縁の決着をつけるために、彼らのアジトがある島へと潜入する。タランチュラのアジトに無事に潜入したルパン一行。しかし、暗殺者エレン(声:篠原恵美)によって捕まってしまったルパンは、ボスであるゴルドーのもとへと連れて行かれ、注射をさせられてしまう。その注射は、島から発生するガスを吸わないと活性化し、人間を死に至らしめる強力な毒だった。アジトから逃げられなくなってしまったルパンだが、組織から抜け出したい暗殺者集団の助力を得て、解毒剤を作成する計画を打ち立てる。はたしてルパンは、過去と決別するという目的を達成し、無事にアジトから抜け出せるのか!?(TV番組HPより)

 

1997年に制作されたスペシャルシリーズの第9弾で、若き日のルパンが愛用していた名銃“ワルサーP38”を巡る、ルパンの過去が暴かれる作品となっています。コミカルな要素は影を潜めていてダークでシリアスな展開で、ハードボイルドなルパンです。

毒を注入され、島に縛り付けられている殺し屋たちですが、エレンの仲間はそれを良しとせず、自由を求めています。一方殺しを楽しむ者たちは望んでその生き方を享受しています。解毒薬を開発した医師こそがゴルドーを陰で操る黒幕で、ルパンたちに与えた薬は一時的なものでした。

一時の自由を味わい、ルパンを庇って死んでいくヒロイン。結局タランチュラは全滅しますが、組織の恩恵を受けていたのが世界各国の指導者層たちという現実を皮肉っているような筋書きでした。 実際あり得ない話でもなさそうに見えるのが恐いですね。

飛行船に島の毒ガスを満載して逃げるルパン一味です。あらゆる分野に秀でたルパンですから時間があれば解毒薬を作るのも確実なわけね

今作ではゼニガタ警部は満身創痍状態で、補佐についた刑事からお笑いの天丼のようにダメージを与えられ、これが唯一のコメディ要素でした。


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逃亡者

2021年11月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

1993年9月18日公開 アメリカ 130分 

2021年10月22日 午後ロード放送

優秀な外科医リチャード・キンブル(ハリソン・フォード)は妻殺しの容疑で逮捕されてしまうが、護送途中に起こった事故に乗じて逃亡を図る。自らの潔白を証明するため、片腕の男を捜し始めるキンブル。一方、連邦保安官ジェラード(トミー・リー・ジョーンズ)がキンブルの追跡を開始。逃亡を続けるキンブルは真犯人を見つけ出すことができるのか?(映画.comより)

 

妻殺しの濡れ衣を着せられた医師の決死の逃亡劇を描いたサスペンス・アクション作で、ジェラードを主人公にしたスピンオフ作品「追跡者」も製作されています。

リチャードは、妻のヘレン(セーラ・ウォード)殺しの容疑で死刑判決を受けますが、刑務所へ移送途中に他の囚人が逃走を図り事故が起きます。混乱に乗じて逃げたリチャードは、真犯人を自らの手で探し出し濡れ衣を晴らそうとします。一方、脱走した囚人がいると察知したジェラードは部下達と追跡を開始します。ここから追いつ追われつの始まりです。 序盤のダム?へのダイビングは迫力がありましたが、あの状態で生きているのは奇跡だ!!

妻を襲った「片腕が義手の男」の手掛かりを得ようと、執拗なジェラードの追跡を振り切りながら危険を覚悟でシカゴに戻ったリチャードは、同僚で親友のチャールズ・ニコルズ(ジェローン・クラッベ)の援助を受けながら、男がフレデリック・サイクスだと突き止めます。犯人の目的が妻ではなく自分にあり、裏に大手製薬会社が絡んでいること、同じ病院に勤務していた医師アレックス・レンツが関わっていたことに気付きますが、レンツは既に交通事故で亡くなっているとニコルズから知らされます。一方、ジェラードもリチャードが本当は無実ではないかと思い始め、彼が残した手がかりを元に独自に調査をしてサイクスに目星をつけますが、逃げられてしまいます。

シカゴ記念病院に潜入したリチャードは、同僚医師のアン(ジュリアン・ムーア)の助けを得て、レンツの研究用検体が、彼の死後すり替えられていたと気付き、レンツの上司のニコルズこそが、自分を裏切り罠に嵌めた黒幕と悟ります。リチャードは、レンツが研究中の新薬に重大な副作用があることを指摘していて、その新薬による富と名声を目論むニコルズは彼が邪魔だったというのが真相ですね。 更にレンツノの死にも関わっていたようです

サイクスに襲われ返り討ちにしたリチャードは、新薬の成果に関する講演会を開いていた会場のホテルに乗り込み、ニコルズを糾弾します。揉み合う二人の前にジェラードが駆けつけ、リチャードを射殺しようとするシカゴ警察を止めます。そのジェラードをニコルズが撃ち殺そうとしているのを見たリチャードがニコルズを倒し、その後二人は逮捕されるのですが、リチャードの無実を確信したジェラードは、報道陣が詰めかける現場から去るパトカーの中でリチャードの手錠を外すのでした。 

親友登場のあたりから怪しさはあり、予想通りの展開でした。どちらかというとリチャードとジェラードが事件を通してある種の友情のようなものを築いていくことに焦点が当てられていたようです。


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ホテルローヤル

2021年11月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年11月13日公開 104分 PG12

北海道、釧路湿原を望む高台のラブホテル。雅代(波瑠)は美大受験に失敗し、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルを手伝うことに。アダルトグッズ会社の営業、宮川(松山ケンイチ)への恋心を秘めつつ黙々と仕事をこなす日々。甲斐性のない父、大吉(安田顕)に代わり半ば諦めるように継いだホテルには、「非日常」を求めて様々な人が訪れる。投稿ヌード写真の撮影をするカップル、子育てと親の介護に追われる夫婦、行き場を失った女子高生(伊藤沙莉)と妻に裏切られた高校教師(岡山天音)。そんな中、一室で心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的に。さらに大吉が病に倒れ、雅代はホテルと、そして「自分の人生」に初めて向き合っていく・・・。(公式HPより)

 

桜木紫乃の自伝的小説が原作。桜木の実家だったラブホテルを舞台にした七編の連作を、現代と過去を交錯させ一つの物語として映像化しています。監督は武正晴。脚本は、連続テレビ小説「エール」を手がけた清水友佳子です。誰にも言えない秘密や孤独を抱えた人々が訪れるホテルローヤル。そんなホテルと共に人生を歩む雅代が見つめてきた、切ない人間模様と人生の哀歓が描かれます。

冒頭に登場するのは貴史と美幸のカップル。ヌード写真のモデルを頼まれ、釧路湿原を見下ろせる高台の上に建つホテル・ローヤルに連れて行かれます。カメラマンの夢に酔いしれる貴史についていけない美幸。撮影が進むにつれ二人の心の距離は離れていきます。

恵(内田慈)と夫の真一(正名僕蔵)は墓参りの予定を住職に忘れられ、財布から出る予定の五千円でホテルに行きます。狭い家で介護する親と子供たちと暮らしお金に余裕のない夫婦がホテルで過ごす二人だけのかけがえのない幸せな時間がそこにありました。またお金を貯めて来ようねと約束しあってホテルを出る二人です。

ホテルローヤルの掃除婦として働くミコ(余貴美子)は息子の仕送りに喜びますが、後日彼が悪事を働き逮捕されたことをニュースで知ります。雅代の母るり子(夏川結衣)や同僚はミコを気遣い帰しますが、夜になって妻が帰ってこないと夫がやってきて、皆で捜索することに。林の中でうずくまり星を見ながら子供時代を思い返すミコを夫が見つけて背負って帰るシーンに胸が熱くなりました。

高校教師の野島と担任の女生徒まりあ。カップルに見えた二人ですが、実は野島は妻の不倫に気付きながら何も出来ずにいて、まりあは二親から捨てられ孤独を抱えていました。互いの苦悩に共感共鳴した二人は心中してしまうのです。

るり子が不倫相手と去り、大吉が病を得て亡くなったことや、心中事件で客足が遠のいたことで、雅代はホテルを閉めることを決断します。(アダルト玩具販売会社は通称『えっち屋』なのね)宮川を呼んで玩具の引き取りを依頼した雅代は、宮川に新しい旅立ちのためホテルの部屋で玩具を使って抱いて欲しいとお願いをします。行為は成立しなかったけれど、雅代の中でそれは自分の想いに別れを告げる儀式でもあったのかな。

最後に登場するエピソードは、大吉とるり子の若き日の話で、二人でホテルを開業したきっかけが描かれます。二人は不倫関係で妊娠が判明して駆け落ちしていたのね。後にるり子が若い男と不倫して家を出ていくのも因果は巡るというか・・・。 ホテルの名前はつわりのるり子のために買ってきた蜜柑のブランドから付けられていました。ホテルの客室に蜜柑を欠かさず置く理由もそこにあったことがわかります。夢や希望の詰まっていたホテルの歴史が描かれることで物語に人生の深みを感じさせる余韻を与えていました。

だから何なの?という見方もあるけれど、どんな場所にも人の想いが詰まっているんだなぁと感じさせてくれるお話でした。

画家を夢見ていた雅代の部屋の窓枠がキャンバスのようで、外の景色が季節で変わる様が一幅の絵のように見えたのが印象的でした。

彼女はホテルを閉める時、描いていた絵を手に持ち部屋を出るのですが、廊下に置いて(捨てて?)行きます。それはホテルとも夢(画家)とも決別した証なのかな?


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サムライ(1967)

2021年11月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

1968年3月16日公開 フランス 107分

2021年11月12日 映画の時間 放送

中折れ帽とトレンチコートを身にまとう孤高の殺し屋ジェフ・コステロ(アラン・ドロン)は、コールガールの恋人ジャーヌ(ナタリー・ドロン)にアリバイを頼み、仕事へ向かう。今回の標的であるナイトクラブの経営者を首尾よく暗殺するジャンだったが、現場を立ち去ろうとした際に女性歌手ヴァレリー(カティ・ロジェ)に顔を見られてしまう。警察の一斉検挙によりジェフも連行されるが、ヴァレリーが面通しで嘘の証言をしたため釈放されることに。しかし警部(フランソワ・ペリエ)はジェフを疑い、彼に尾行をつける。(映画.comより)

 

フレンチフィルムノワールと称される一匹狼の殺し屋の生きざまを描いた、ジャン=ピエール・メルビル監督、アラン・ドロン主演の名画と呼ばれる作品です。当時の押しも押されぬ二枚目スターのアラン・ドロンが主役ということで録画してみました

冒頭に「侍ほど深い孤独の中にいる者はない。おそらくそれは密林の虎以上だ ――『武士道』より」とのキャプションが。タイトルもここからとられているようです

ジェフの部屋は殺風景ですがその中で一匹のカナリアが目を惹きます。彼が唯一心を許せる友なんですね

仕事をするときは、事前にアリバイを用意した上で路上の車を盗んで協力者である修理工にナンバープレートを付け替えさせ、ターゲットの情報と銃を受け取り、指紋を残さぬよう手袋をはめます。首尾よく仕事を終えると証拠となる手袋と銃をセーヌ川に捨てタクシーで帰宅します。

いつものように依頼を受けたジェフはナイトクラブの支配人マルテ殺しを遂行しますが、ヴァレリーに顔を見られてしまいます。警察も捜査対象となったジェフですが、何故かヴァレリーは彼のアリバイを偽証するんですね。 でも警部はジェフこそが殺し屋だと直感し、部下たちに彼を徹底的にマークするよう命じます。理由も何もない刑事の勘、ここに極まれり! 

一方、釈放されたジェフはメトロを乗り継いで報酬の受取場所に向かいますが、報酬を受け取る代わりに殺されそうになります。腕に怪我を負ったジェフはナイトクラブの中に自分の素性を知る者がいると思い、ヴァレリーに探りを入れます。その方法がお持ち帰り&ベッドインというのがいかにもフランス映画らしい

ジェフはヴァレリーに、「偽証は誰かを庇ったためだろう?自分が捕まれば依頼人の身も危ないからな。」と尋ねますが彼女は答えず、二時間後に電話してと言います。何故二時間後??

警察はジェフの部屋に盗聴器をしかけ、ジャーヌにも証言の撤回を迫りますが、婚約者を装っているうち本気になった彼女は断ります。

部屋に戻ったジェフは、カナリアの様子がいつもと違うことに気付いて盗聴器を見つけだし、公衆電話からヴァレリーに電話しますが、彼の身を案じたヴァレリーは、受話器を取りませんでした。再び部屋に戻ったジェフを、待ち伏せしていた殺し屋が襲い、銃を突きつけて「消しに来たのではなく、今度は依頼だ」と言います。ジェフは殺し屋の銃を奪い彼の雇い主の名前を白状させます。

刑事たちの尾行を振り切るため網の目のようなメトロを乗り換え乗り継いでまいたジェフは、いつものように車を盗んでナンバープレートを付け替えてもらい、情報と銃を渡されますが、その際「あんたとの仕事はこれが最後だ」と言われます。このときは何故そんなことを言うのかジェフ同様意味がわからなかったなぁ。

ジャーヌに「決着をつけてくる」と告げて去ったジェフは、殺し屋が教えた彼の雇い主である大物ギャングのレイの邸宅(前にヴァレリーと一夜を過ごした場所でした)に行き、彼を射殺します。ヴァレリーはレイの囲われ者だったのね。ナイトクラブのバーテンダーこそがレイに彼を消すよう進言した張本人だと悟ったジェフですが、彼をそのままにしてヴァレリーに銃を向けますここで依頼のターゲットは彼女だったということがわかります。 う~~ん、要はレイが焼きもちを焼いて相手を次々殺害したってこと??

銃声が響き、倒れたのは彼女ではなくジェフでした。張り込んでいた刑事たちに撃たれたのです。「危ないところでしたね」とヴァレリーに声をかける刑事でしたが、警部は「それは違う」とジェフの銃を見せます。彼の銃には銃弾が込められていませんでした。

殆ど説明的シーンがなく、淡々と進んでいく展開はまさに「男の美学」「殺し屋の美学」に満ちています。現代では通用しない点も多々あるけれど、この時代には合っている トレンチコートにフェドーラ帽で常に身だしなみはバッチリ決めているのも美学 


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PARKER パーカー

2021年11月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2013年2月9日公開 アメリカ 118分 PG12

2021年10月28日 午後ロード放送

プロフェッショナルな強盗として闇社会に生きるパーカー(ジェイソン・ステイサム)は天才的な犯罪者だが、汚い金しか奪わない、悪者しか殺さない、仕事は完璧に美しく行なうという、3つの厳格なルールを自分に課していた。ある日、パーカーは新しく集められた4人の仲間メランダー(マイケル・チクリス)、カールソン(ウェンデル・ピアース)、ロス(クリフトン・コリンズ・JR)、ハードウィック( マイカ・ハウプトマン)と共に強盗を行う。4人は強盗した金を元手にさらに大きな強盗をパーカーに持ちかけるが、パーカーをそれを拒否し分け前を要求。すると、4人は豹変してパーカーを襲い瀕死の重傷を負わせ、大金を持って逃亡した。一命を取り留めたパーカーは4人に復讐すべく、彼らを追ってパームビーチに飛ぶ。そこで知り合った不動産仲介会社の社員レスリー(ジェニファー・ロペス)という女性の協力を得て、4人が新たな強盗を計画している事をつかみ、復讐の機会を窺う。だがその頃、パーカーに向けて新たな刺客が放たれていた。(ウィキより)

 

リチャード・スタークの犯罪小説「悪党パーカー」シリーズの1作「悪党パーカー 地獄の分け前」を映画化したクライムアクションで、監督はテイラー・ハックフォード。映画化は、メル・ギブソン主演、ブライアン・ヘルゲランド監督の「ペイバック」(1998)以来13年ぶりだそうです。

仲間に裏切られ殺されそうになりながら九死に一生を得たパーカーが「落とし前」をつけようとする展開で、この作品でも「よく生き延びたな」と思う場面が多々登場します 不死身かよ

彼の中のルールに反する「仕事」をしたハードウィックに激怒し、次の仕事の誘いを断ったパーカーを仲間は始末しようとするんですね。元々この時の稼ぎを次の大仕事の準備金にしようとしていた彼らにとって、パーカーの取り分も最初から必要だったようです。

通りかかった農夫に助けられ病院で意識が戻ったパーカーは、救急車を盗んで逃亡し、中にあった薬を使って自分で治療します。

回復したパーカーは相棒のハーリー(ニック・ノルティ)に連絡を取り、ハードウィックの兄のボビー(シャーリー・ハーモン)を脅して一味がパームビーチにいることを聞き出します。兄弟の伯父のダンジンガー(キップ・ギルマン)の素性を知るハーリーは復讐を止めますが、パーカーはハーリーと恋人で彼の娘のクレア(エマ・ブース)に避難するよう言います。

パームビーチにやってきたパーカーですが、一味が狙う宝石店がどこか見当がつきません。まずは隠れ家を突き止めようと不動産屋に依頼を装って物件を紹介してもらおうと考えます。担当したのは、お金と将来に困っているレスリーです。彼を怪しみクレジット情報などを調べて尾行したレスリーは、パーカーが一味の隠れ家に忍び込んで出てきたところを目撃し分け前を要求した上で協力を申し出ます。彼女の情報で一味の狙う宝石がわかりますが、潜伏先に戻ったところをダンジンガーに雇われた殺し屋に襲われまたまた重傷を負いながらも倒します。レスリーの家に逃げ込んだパーカーを、巡回に来た自分に好意を寄せている警官を誤魔化して帰らせ匿うのですが、手当をしにやってきたクレアを見て、パーカーに好意を持つレスリーは複雑な気持ちになるのね。(そもそも危険だからと避難させた恋人がやってくること自体、おかしな話なんですが

翌日、宝石の競売が行われます。火事に見せかけ消防隊員の恰好で乗り込んだ一味はまんまと宝石を奪い隠れ家に戻りますが、潜んでいたパーカーが待ち受けていました。ところが、パーカーを案じたレスリーがやってきて彼らに捕まってしまいます。何ておバカな役回り

ここからパーカーの反撃開始です。パーカーが以前に忍び込んで隠していた銃を見つけたレスリーも応戦し復讐を遂げたパーカーは、レスリーに宝石を隠しておくよう指示します。ほとぼりが冷めた半年後、宝石は現金化され、彼女のもとに分け前が送られてきます。瀕死のパーカーを助けた農夫のもとにも大金が送られ、一方パーカーはダンジンガーのところに乗り込み彼を射殺してジ・エンド まさに彼なりの美学ですね


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グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告

2021年11月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

4月23日公開 アメリカ 94分 G

妻を亡くしたエド(ロバート・デ・ニーロ)は彼の娘サリー(ユマ・サーマン)の家族と一緒に暮らすために引っ越すことになる。孫のピーター(オークス・フェグリー)は、始めはおじいちゃんと暮らせることを喜んでいたものの、自分は部屋を明け渡し、屋根裏部屋で暮らすことを知り激怒。ピーターは、エドを追い出すために手紙を書き、宣戦布告。ピーターは、おじいちゃんが部屋を明け渡すようにあの手この手で攻撃をしかけるが、あまりにも度を越したイタズラにエドも激怒。悪友ジェリー(クリストファー・ウォーケン)の悪知恵を借り、ピーターに報復を始める。二人の部屋をかけた小さな戦争は、やがて隣人を巻き込み大騒動へと発展していく!果たして勝つのはエドか、ピーターか!?決戦の火蓋が切って落とされる!!(公式HPより)

 

祖父と孫が部屋とプライドをかけたバトルを展開する、ロバート・デ・ニーロ主演のコメディです。

自室を取られて蝙蝠やネズミのいる屋根裏部屋で暮らすことになったら、そりゃ怒るわなぁ で、おじいちゃんに宣戦布告するわけです。

最初は他愛もない悪戯でしたが、どんどんエスカレートしていきます。老人相手にそりゃ無茶だろ!!という過激さですが、受けて立つのはタフ過ぎるじーさんズ。どっちもどっちや 

エドにもピーターにも頼りになる友達がいるのが良いんだな クリストファー・ウォーケンやチーチ・マリン(ダニー役)が悪友を楽しそうに演じています 「戦争」してるけど互いを愛してることもまた本当なので笑って観ていられるのです。途中で一休みとばかりに二人で釣りに出かけますが、釣り禁止区域と知って慌てて逃げるのも笑えました

二人だけの戦いなので、家族に迷惑をかけない約束なのに、ちょこちょことサリーが被害を被っています。 結婚前、アーサー(ロブ・リグル)と娘の交際に反対していたせいか、エドとアーサーの間にはわだかまりがあり、その空気感の微妙さ加減も ところが、上の娘がBFといちゃつくのは許せないサリー(父親のアーサーより過敏な反応)ですが、エドが昔話の中で自分への振る舞いを後悔していたと知り、娘のBFへの態度を軟化させるの。

末の孫娘がまたおしゃまで可愛い ところが、彼女の誕生パーティ(それにしてもあちらの誕生祝は派手でスケールもデカイなぁ)で度を越した悪戯によるハプニングが起こり、エドが怪我をしてしまいます。サリーにも二人の戦争がばれてしまい、エドが姿を消してしまうんですね。

ピーターはおじいちゃんと暮らすのが嫌なわけじゃなく、初めはただ自分の部屋を取り戻したかったのだけど、いつのまにか屋根裏にも愛着が出ていて、そうなると戦争も意味をなさないわけ。そしてゲームと違ってどんどん状況が悪化していって最後には爆弾が登場し、いつまでも終わらないという現実に気付くの。ある意味「人生のお勉強」でもありました。

基本的に楽しく笑えるし、子役たちも可愛いしで面白かったです。


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奥様は、取り扱い注意

2021年11月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年3月19日公開 119分 G

元特殊工作員だった過去を持つ専業主婦・伊佐山菜美綾瀬はるか)と、実は現役の公安警察であり菜美を監視する優しい夫・伊佐山勇輝西島秀俊)の二人は、桜井久実裕司に名前を変えて、小さな地方都市・珠海市で新しい生活を始めていた。
実は半年前、ある出来事がきっかけで菜美は記憶喪失になっていたのだった―。「過去なんて捨てて、あなたとの今を大事にして生きていく」
二人が新生活を送る珠海市は、新エネルギー源「メタンハイドレート」の発掘に活気づいていたが、美しい海を守ろうとする開発反対派と、市長(檀れい)をはじめとする推進派の争いが日に日に激化。実は新エネルギー源開発の裏で、ロシアと結託した国家レベルの陰謀が潜んでいることを突き止めた公安。「公安の協力者にならなければあの女を殺せ」信じるか、疑うか。逃がすか、拘束するか―― 。葛藤する裕司(勇輝)。
菜美の記憶の回復は、愛し合う二人の別れ(死)を意味する。
そんな中、過去の因縁と国家に追われ、久実(菜美)は大きな事件へと巻き込まれてゆく―。(公式HPより)
 
 
綾瀬はるかと西島秀俊が元特殊工作員と公安エリートの夫婦を演じたドラマの劇場版です。監督は「カイジ ファイナルゲーム」の佐藤東弥。

上司の池辺(小日向文世)から珠海市での任務と菜美の監視を命じられた伊佐山。高校の教師として働きながら妻の行動を追跡する一方で「メタンハイドレート」調査基地の建設に絡む疑惑の調査を始めます。同僚の生物教師・矢部(鈴木浩介)は珠海市の海を守ろうと基地建設に反対していますが、彼の元妻が推進派の市長なんですね。五十嵐(六平直政)は反対派のリーダーで市長選に立候補していますが、推進派の妨害工作に苦しめられていました。

記憶を失くした久実(菜美)は、定期的に精神科医(前田敦子)のカウンセリングを受けています。(実は医者も公安の協力者だと後で判明するのですが)カラフルな積み木で精神状態を推測するらしいけど、あんな治療法あるの??

記憶を失くしている彼女はごく平凡な奥さん然としていますが、目に生気が感じられません。後半のアクションシーンの彼女とは明らかに違いがあります。その辺の演技はしっかりできていて (そういえば浅利陽介が青果店主として出演してました

車に轢かれそうになった事件が縁で、矢部の教え子でダイニングバーを経営している珠里(岡田健史)と親しくなった久実は彼のバーを手伝うようになります。空手部の実力選手だった珠里の趣味はコスプレで、後に反対派のメンバーを助ける伏線にもなっていました。その行為を久実の仕業と疑う裕司でしたが、久実は「いつか一緒にカフェを開きたい」と夢を語り、絵を見せます。そこには子供を挟んで手をつなぐ二人が描かれていました。 

調査会社社長の横尾(みのすけ)は開発コンサルティング会社社長の浅沼(佐野史郎)の指示で裏組織と癒着していました。メタンハイドレートは10年で枯渇することに気付いた人物は殺され、彼が遺したデータを狙って反対派を潰そうと目論んでいました。裏組織にはドラグノフ(セルゲイ・ヴラソフ)というロシアの諜報員も絡んでいて、彼は過去に菜美に兄弟を殺され、怪我を負わされていて、彼女に復讐しようと乗り込んできて、伊佐山に狙いをつけます。菜美の愛する夫を苦しめ殺すことで彼女を苦しめようというわけです。

実は、本当の黒幕は、ドラグノフに菜美の情報を売っていた伊佐山の上司の神岡(鶴見辰吾)で、組織の情報を流していた犯人をあぶり出すために池辺が伊佐山夫婦を囮にしていたのね 更に、菜美は途中から記憶を取り戻していて(もしかしたら最初から?)お芝居していたという

互いの正体がばれてからはアクションシーン全開です。喧嘩しながら敵を倒すなどは『Mr.&Mrs. スミス』を連想させますね (それにしてもドラグノフ役の人、アクションは良いとして演技下手~~

記憶が戻った菜美が公安の協力者にならない以上は彼女を殺さねばなりません。胸に銃弾を受け海に沈んでいきますが、絶対裏があるよね~!と素直に悲しめない自分が逆に寂しい だって、夫婦でTVを見ているシーンで伏線ありましたもん

案の定、ラストは謎の微笑みを浮かべてコロッケを頬張る伊佐山と、どこか外国で銃痕のある胸をチラ見させ去っていく菜美の姿でした。

結局この夫婦はどちらも最終的に自分の「仕事」を選んだわけですが、確かに普通の主婦をしていた時の彼女より本業をしている彼女の方が魅力的で、彼もそのことをよくわかっていたということですね


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アイス・ロード ネタバレあり

2021年11月12日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2021年11月12日公開 アメリカ 109分 G

カナダ北部のダイヤモンド鉱山でメタンガスが爆発!坑道が崩れ落ち、26人の作業員たちが地下に閉じ込められてしまった!酸素が切れるまで30時間、それまでに救出に必要な抗口装置を取り寄せなければならない。バカでかい装置の輸送は飛行機にも大型ヘリにもムリ、トラックにしかできないと判明する。しかも、4月になった今は閉鎖されている最短コース、氷の道〈アイス・ロード〉を通らなければ間に合わない。
そんな神にも難しい〈死のミッション〉を空軍から依頼された、運輸会社の経営者ジム・ゴールデンロッド(ローレンス・フィッシュバーン)のもとに、トラックドライバーたちが集められる。
彼らの中からジムは、ベテランでアイス・ロード経験者でもあるマイク・マッキャン(リーアム・ニーソン)と、彼の弟で整備士のガーティ(マーカス・トーマス)を指名する。ガーティが戦地での負傷から患った失語症が原因で、兄弟は職場を転々としていた。今も会社をクビになったばかりだったが、ジムはガーティのスゴ腕を高く買ってくれた。さらにもう一人、ジムの元部下のタントゥー(アンバー・ミッドサンダー)がチームに加わる。先住民としての誇りと怒りから、何かとトラブルを起こしているが、ドライブテクニックは一流だ。しかも、彼女の兄のコーディ(マーティン・センズメアー)は、安否不明の作業員の一人だった。

救出装置が3基用意され、3台のトラックに載せられる。総重量30tの巨大トラックが1台でも到着すればOK、報酬の20万ドルは成功者のみで分けるという作戦と条件だ。社の命で同行する保険会社のトム・バルネイ(ベンジャミン・ウォーカー)がタントゥーの助手席に乗り込み、遂に3台が氷の上へと滑り出す。
夜通し走り、やがて明るくなった視界には、美しい氷の世界が広がる。バルネイは「絶景だね。それほど危険には見えない」と、タントゥーに話しかける。だが、彼女の答えは、トラックの速度が速いと圧力波で氷が割れて水没、遅いとタイヤにかかる重みでやはり水没するという厳しいものだった。さらに太陽が上昇し、水温が上がり始めたその時、ジムのトラックが異音を発して急停車してしまう。すぐにバックして助けに行くマイクに、タントゥーは「突き進むんでしょ」と不満を唱えるが、「いいから下がれ」と言われて渋々従う。ガーティがトラックを調べる間、牽引の準備にかかるマイク。するとトラックの重みに氷が負け、あっという間に後輪が沈んでしまう!だが、それは、この命がけのミッションに立ちふさがる、膨大な試練への序章に過ぎなかった。自然の猛威、トライバー同士の対立、さらに事故に隠された危険な陰謀までが彼らを待ち受けていた——。(公式HPより)

 

地下に閉じ込められた26人の命を救うため巨大トラックで危険な氷の道を走り抜けるドライバーの戦いを描いたレスキューアクションです。リーアム・ニーソンといえば「96時間」シリーズが有名ですが、こちらも限られた時間でのミッション遂行です。「アルマゲドン」のジョナサン・ヘンズリーが監督・脚本を手がけています。

弟が抱えるPTSDからのトラブルで職場を転々とすることを余儀なくされている兄ですが、彼自身も口より先に手が出るタイプ。冒頭でも弟の悪口を言われて相手を殴って首になってますが、ラストで事故の原因を隠蔽しようとした重役シックル(マット・マッコイ)を一発ぶっ飛ばす場面とリンクしていて、スカッとしました。 こういう自分のことしか考えない、他人の犠牲を屁とも思わない傲慢な奴はもっと酷い目に遭うと良いのに

報酬に釣られて応募したのは普通なら氷が薄くなっていて危険なため閉鎖されたアイスロード(氷上の道)を総量35トンのトラックを運転して事故現場に機材を届ける仕事です。リスク分散のため3台のトラックに機材を積み込み、一台でも無事に着けばミッション成功という死と隣り合わせの危険な任務には、ジムと彼の元部下のタントゥーという先住民の女性ドライバーの3組であたりますが、保険会社の担当だというバルネイがついてきます。最初からにやけた奴という印象でしたが、こいつが陰謀を企む者に差し向けられた敵なんですね。(白人と先住民の間の確執とか、まだあるんですね~

正体がわかるのは、ジムがトラックと共に沈んだ後、バルネイに嘘を吹き込まれたマイクがタントゥーを疑い諍いになったあたりからです。バルネイは兄弟をトラックの荷台に閉じ込めてダイナマイトを爆発させて沈めようとしますが、危機一髪荷台を抜け出して難を逃れます。殺されかけた兄弟は、空のトラックに乗り込み、タントゥーを乗せて逃げたバルネイを追いかけます。ここまではバルネイの目的がイマイチ不明だったのですが、アイスロードを抜けた山道でシックルが待っていたことで、彼らの陰謀が見えてきました。ここで、ガーティの飼っていたネズミがタントゥーの危機を救ってくれます。

そしてここからはバルネイ一味対タントゥーも加わっての3人での仁義なき戦いに突入です。雪上バイクで追いかけてくる敵を蹴散らし、バルネイをトラックごと突き落とし・・・これで安心かと思いきや、転落した車から脱出したバルネイがまたまたダイナマイトを使って雪崩を起こすわ、氷上でマイクと死闘を繰り広げるわ、タントゥーとガーティが古い橋の上でタイヤがスリップして落ちそうになるわ、極めつけにガーティが柵とトラックに挟まって死んじゃうわの、怒涛のアクシデントが襲ってきます。やられてもやられても追ってくるバルネイがゾンビに見えてきたぞ 戦闘能力も半端ないし、彼の本業は特殊戦闘員ですか??

ジムとガーティの尊い犠牲の上に届けられた機材で閉じ込められていた作業員たちは全員救助されます。坑内の作業員たちの間でも、助かるために「犠牲」を求める論争があったりしますが、結局事故の原因がシックルたち上層部が効率を重視して安全装置を切っていたとわかって結束して救助を待つ選択をしたのでした。(こちらの話を掘り下げると時間が足りなくなるし主題がぼやけてしまうので、割とあっさり終わってました。)

う~~ん、氷の湖に落ちても死ななかったのに圧死って・・失語症が治ったガーティと一緒にハッピーエンドが個人的には良かったな~。

でも氷の割れるシーンも雪崩のシーンも迫力があってスクリーンでの見応えがありました


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カムバック・トゥ・ハリウッド!!

2021年11月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年6月4日公開 アメリカ 104分 G

舞台は1970年代のハリウッド。B級映画プロデューサーのマックス(ロバート・デ・ニーロ)は、ギャングのレジー(モーガン・フリーマン)からの借金が返せず大ピンチだが、起死回生の大トリックを思いつく。危険なスタント撮影で死亡事故が起きれば、保険金がガッポリ入って大儲けができる!早速ボツにしていたサイテーの脚本を引っ張り出し、老人ホームから往年のスター、デューク(トミー・リー・ジョーンズ)を担ぎ出して西部劇の撮影を開始する。ただし真の目的は、映画を絶対に完成させないこと、そして撮影中にデュークに死んでもらうこと。ところがデュークは思いの外しぶとくて、撮影は順調に進んでしまう。さあ、どうするマックス!?(公式HPより)

 

オスカー受賞の名優たちが顔を揃え、縁起合戦を繰り広げるコメディ作品です。

平均年齢78歳の煮ても焼いても食えないジジイたちのタフさと愛嬌に魅了される最高の《お達者コメディ》(公式HPより)

『尼さんは殺し屋』を上映する劇場前で、上映に反対する宗教団体のデモを前に、マックスはビジネスパートナーの甥っ子ウォルター(ザック・ブラフ)を丸め込みます。客席は閑古鳥が鳴き、メディアから酷評されているB級映画ですが、彼は現状を認めようとしないのね。内容が気になるなぁと思ったらラストでその中身が登場します。尼さん集団(若い美女)がミニスカで悪党を

アパートに帰ったマックスを待っていたのは、何かにつけて古い名画を引用する映画マニアもレジ―。貸した金(35万ドル)返せよ!!と脅迫します。とはいえ、新作がコケて返す当てなどないマックス。嫌々ながらかつての弟子で今や売れっ子プロデューサのジェームス・ムーア(エミール・ハーシュ)に泣きつきます。ムーアが出した条件はマックスが長年温めてきた『パラダイス』の脚本を譲ることでしたが、これだけは譲れないと拒否します。ウォルターの莫大な製作費がかかる『パラダイス』を作る見込みもないとの説得も手伝い、渋々ムーアとの共同制作に同意します。ムーアが押す主演俳優のピアーズに二流役者だと不満なマックスでしたが、ウォルターは憧れの大スターに会えると有頂天。撮影初日に屋上でのスタント準備中のピアーズにサインをせがみますが、よろけたピアーズがビルの屋上から落下して亡くなります。

思わぬ頓挫に内心喜んだマックスですが、事故死で巨額の保険金がムーアに入ると知り激怒すると同時にあるアイディアが浮かびます。『パラダイス』の共同制作を断る連絡を入れたマックスは、ボツにしていた最低の脚本を引っ張り出して、計画をレジーに打ち明け、資金を提供させます。監督をメーガン(ケイト・カッツマン)という未経験の若い女性を抜擢し、主演は老人ホームで見つけた自殺願望の元西部劇スターのデューク。間違いなく初日に事故で死んでくれるだろうという期待の下に撮影は開始されます。 いや、ほんと悪魔のような所業だぞ!マックス。ちなみにウォルターは何も知りません。

マックスはデュークが乗るバター・スコッチを暴走させ落馬事故に見せかけようとしますが失敗。次に炎の燃え盛る中に突っ込むシーンを演出しますが、これも失敗します。逆に凄い画が撮れるあたりが爆笑もの

吊り橋に細工して深い谷に落とそうとしても、間一髪!投げ縄で岩壁に捕まり無事生還するデューク。あの手この手で事故死させようとするマックスに対し、次々ピンチを回避していくデュークは何だか生き生きとしてきます。思惑が外れ困惑するマックスに、約束が違うと怒ったレジ―が脅しにきます。二人の会話を聞いて計画を知ったウォルターは、撮影中のフィルムを野外スクリーンに映し出して二人に見せます。その出来に感動したレジ―は矛を収め、マックスもアカデミーが狙えると確信を持ちます。真相を知らされたデュークも、マックスの励ましでラストシーンを無事撮り終わります。まぁ、自殺したかった彼が撮影で生きる希望を取り戻したというのはめでたいことですね 

そしてアカデミー授賞式当日。レッドカーペットを歩くマックスとウォルターがインタビューを受けています。ムーアの調子のよい「共同映画製作」発言はいかにもハリウッドらしいと言えますね 何故かレジ―までいるという良いのか?ギャングだぞ

バター・スコッチに乗ってやってきたデュークですが、大勢の前に出るのは苦手だと言って去っていきます。次の場面では草原を走りとある家の扉を叩く姿が・・・昔、恋人か役者人生かの分かれ道で捨てたことを後悔し続けていた「彼女」の家ですね

ハリウッドという特殊な映画業界人の話ということで、いかにもありそうなというのがミソな気がします。軽くて調子が良くて、悪辣だけど憎めないマックスというキャラが面白いし、そんな彼でも映画に対する愛情はとても深いことも伝わってきました。


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きまじめ楽隊のぼんやり戦争

2021年11月07日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年3月26日公開 105分 G

一本の川を挟んで「朝9時から夕方5時まで」規則正しく戦争をしている二つの町。津平町に暮らす露木(前原滉)は、真面目な兵隊だ。朝から川岸に出勤し、お昼は気まぐれなおばさん(片桐はいり)の定食屋。夕方になれば、物知りなおじさん(嶋田久作)の煮物を買って帰って、眠るだけ。川の向こうの太原町をよく知るひとはいない。だけど、とてもコワイらしい。ある日突然、露木が言い渡されたのは、音楽隊への人事異動?! 家で埃を被ったトランペットを引っ張り出したはいいものの、明日からどこへ出勤すればいいのやら…。そんな中、ひょんなことから出会ったのは向こう岸から聞こえる音楽だった。その音色に少しずつ心を惹かれていく一方、町では「新部隊と新兵器がやってくる」噂が広がっていて     。(公式HPより)

 

不条理な世界で生きる人間たちをユーモラスかつシニカルに描いた作品です。

いつの時代でもない架空の町が舞台で、川の向こう岸の町と、目的も分からない戦争を何十年も続けているのです。朝9時から夕方5時までと時間も決まっています。まるで会社に行くみたいに兵隊たちは出勤し仕事として銃を撃っているのです。

露木の同僚は、昇進することを夢見る藤間(今野浩喜)。毎朝、肝心なことばかり忘れてしまう町長(石橋蓮司)の訓示を聞き流して川岸へ出勤して昼は定食屋でご飯を食べます。おばさんの息子はもっと上流で兵隊として働いていると自慢します。どうやら上流に行くほど戦争は激しいらしくそこでの任務は出世コースらしい。昇進志向の藤間にはご飯の盛りが良いのですが否定的なことを言うと減らされます。まるでコントそれも無表情での会話なのがシュールです。

仕事が終わると煮物屋でおかずを買って帰ります。ある日煮物を盗んだ三戸(中島広稀)が捕まり、兵隊になります。本当は平一(清水尚弥)も盗んだのですが、彼は町長の息子だったので警官になるんですね。町長の秘書?は子供が出来ないからと妻の春子(橋本マナミ)を捨て若い愛人を妻にするし、この不条理さが何とも言えません 後に藤間と春子がくっついて子供が出来るというのも凄い皮肉だ 

新しくやってきた技術者・仁科(矢部太郎)や、転属になった露木が所属する隊の場所を受付で聞いても全く要領を得ない問答が続くのは「お役所仕事」への痛烈な皮肉とも受け取れますね。ちなみに藤間は被弾して右手を失い除隊になりますが、その際の押し問答も同様です。

ようやく「自力で」探し当てた楽隊の基地は薄暗い地下。27代目指揮者兼、自称楽隊の頭脳・伊達(きたろう)は女性へのパワハラ男です。それまでいじめの対象だった女性が楽団員とカップルになり子供が出来たと知るとそのターゲットがそれまでおだてていた別の女性にシフトするのもえげつない 優秀なトランペット奏者・大木を演じていたのは竹中直人ですが・・・気付かなかった

そんな中、聞こえてきた川向うから聞こえるトランペットの音。同じトランペット奏者の露木はその音色に惹かれていき、やがて川のこちらとあちらで合奏するようになるのですが・・・

新兵器が出来、その一発で向こう岸の町が大変な被害が出ます。まるで原爆のような凄まじい威力です。次に待っているのは…当然相手の報復ですよね。露木が目にしたのは流木に引っかかった合奏の相手らしい女性の死体と楽器。

映画はここで終わります。

理由も目的もとうにわからなくなっている戦争を疑問すら持たず惰性で続けている町の人々。上からの指示を疑いも持たずに受け入れ言われるままに動く毎日の中でも絶えない、権力や男女・身体への差別の悩みは普遍です。あくまで架空の町の架空のお話なのに、現実にある日常と地続きにあることが何より背筋を凍らせました。笑っているうちに笑えなくなる、そんな作品かも。


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リスペクト

2021年11月05日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2021年11月5日公開 アメリカ 146分 G

少女の頃から、その抜群の歌唱力で天才と称され、煌びやかなショービズ界の華となったアレサ(ジェニファー・ハドソン)。しかし、彼女の成功の裏には、尊敬する父(フォレスト・ウィテカー)、愛する夫(マーロン・ウェイアンズ)からの束縛や裏切りがあった。極限まで追い詰められる中、すべてを捨て、自分の力で生きていく覚悟を決めたアレサは、ステージに立ち観客にこう語り掛ける。「この曲を、不当に扱われている全ての人に贈ります」自らの心の叫びを込めた圧倒的な歌声は、やがて世界を歓喜と興奮で包み込んでいく。

 

伝説的歌姫アレサ・フランクリンの半生をアレサ本人から生前に指名されたハドソンが演じ、圧巻の歌唱力とパフォーマンスで魅了しています。

「リスペクト」「貴方だけを愛して」「シンク」「ナチュラル・ウーマン」など数々の名曲も見所(聴き所)です。

アレサは父・姉妹・祖母とミシガン州・デトロイトで暮らしていました。父親はバプティスト派の牧師で高名な説教者で、母親(オードラ・マクドナルド)は別居していますが、子供たちとは頻繁に会っていました。ところがアレサが10歳の時、心臓発作で亡くなってしまいます。母を慕っていたアレサはショックで言葉を話すことができなくなりますが、父は彼女に教会で賛美歌を歌わせることで「治療」します。

父が家に大勢の客を招いて開くパーティーで、アレサは請われるままに歌を披露していましたが、ある時、客の一人から思わぬ被害を受けてしまいます。10代で二人の男の子の母(少し時間が飛ぶので出産については何も語られていません。)となったアレサは、祖母に子供たちの世話を任せて父の説教巡回に同行して讃美歌を披露していました。二人の活動は、黒人社会の中では有名で、黒人公民権の運動家のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師とも親交がありました。しかしこの頃になるとアレサは父の束縛を嫌がるようになります。そんな時、テッドと出会うのですが、父は彼を嫌い追い出し、アレサにNY行きのチケットを渡してコロンビアレコード社長のジョン・ハモンドを訪れ、契約に成功します。

4枚のレコードを出したもののヒット曲に恵まれずにいたアレサにダイナ・ワシントンは「自分が歌いたいと思う歌を歌いなさい」と忠告を与えます。テッドと再会し交際を始めたアレサはヒットが出ないストレスもありレコーディングをすっぽかして父と気まずくなります。父が自分を見限り姉妹をデビューさせようとしていると知ったアレサは、テッドを新しいマネージャーにして家族の元を去ります。

二人は結婚し息子が生まれますが、相変わらずヒットには恵まれず、遂に契約を切られてしまいます。更にテッドはアレサの意向を無視して勝手にスケジュールを決めてしまい、二人の間に温度差が生じます。

アトランティックレコードのプロデューサー、ジェリー・ウェクスラーと契約した二人は、アルバム制作のためにアラバマ州マッスル・ショールズを訪れます。NYに比べたら「田舎」で、おまけにミュージシャングループのスワンパーズは全員白人という状況に不機嫌になるテッドでしたが、アレサは彼らとのセッションに手応えを感じます。その「貴方だけを愛して(I Never Loved a Man the Way In Love You)」のレコーディングの様子は音楽関係者でなくても鳥肌ものです

レコーディングは順調に進んでいましたが、自分の思い通りに進まないことが気にくわないテッドはスタジオマネージャーとケンカし、アレサにも暴力を振るって予定を早めてNYに戻ります。彼のDVはエスカレートしていき、アレサは息子を連れて実家に戻ります。喧嘩別れのように家を出た彼女を家族は優しく迎え入れ、久々に平穏な時間を過ごしていたアレサですが、「貴方だけを愛して」がビルボードで最高2位に達したことで芸能活動を再開します。テッドの謝罪を受け入れてよりを戻したアレサは、姉妹のアーマとキャロリンをバックコーラスに加えてオーティス・レディングの「リスペクト(RESPECT)」をアレンジ・カバーし大ヒットとなります。キング牧師から賞を授与され「アレサ・フランクリンの日」も定められ順風満帆に見えましたが、テッドの暴力が再び頭をもたげます。メンフィスでの公民権運動に参加したいといったアレサに暴力を振るった事が記事になり、アレサはテッドとの結婚生活に見切りをつけます。その後、アレサはツアーマネージャーのケン・カニングハムと交際し、4人目の子供が生まれます。

7年後、キング牧師の暗殺事件が起こり、アレサは彼に歌を捧げますが、その晩、父親と口論となり再度袂を分かつのです。

ヒットを飛ばす一方、過度の重圧から逃れようと酒や薬物の依存症となり、家族の手助けも拒絶して独りになったアレサですが、亡くなった母親が傍にきて優しく抱き寄せてくれる幻覚を見たことで、やり直す決心をします。アルコール依存症を克服したアレサは、自分のルーツである讃美歌を歌いたいと考え、ジェリーにアルバムを作りたいと伝えます。讃美歌は売れないと渋るジェリーでしたが、アレサの決意が固いと知って、制作過程をドキュメンタリーとして録画することを提案します。アレサは同意し、讃美歌の第一人者のジェームズ・クリーブランドの協力を得て制作にとりかかります。不安に押しつぶされそうなアレサにジェームズは「神のご加護が感じられる教会で、賛美歌を歌うことだけに集中すればいい」と助言します。子供の頃から家族ぐるみの付き合いのあるジェームズのその言葉に強く背中を押され、また当日教会に現れた父と和解できたこともあり、「アメージング・グレース」のレコーディングは無事終了し、この讃美歌アルバム「至上の愛チャーチ・コンサート」は彼女の一番の売り上げを記録し200万枚以上を売り上げたのでした。

人気商売につきものの孤独と周囲の人間への不信感、自身の驕り、逃避の手段としてのお酒や薬物。お決まりの展開ですが、彼女の場合は信仰心が正しい道へと引き戻してくれます。凄いぞ!信仰の力

裕福な牧師の娘という環境で育った彼女には、貧しさからくる飢えや渇望感はないけれど、幼い時に受けた「暴力」と結果としての妊娠が、心に深い傷を残していることは伝わってきます。良き理解者だった母を喪い、父の束縛に苛立ち、愛する夫はDV男と悲劇を突き進んでいるようにみえて、大事な局面ではしっかり家族が手を差し伸べているんですね。アレサが傷ついて戻ってくるのはいつも実家。手を広げて「お帰り」と迎えてくれる優しい祖母や、敢えて辛辣な言葉を投げかける姉妹もいて、決してアレサは不幸ではなかったし、立ち直ることも出来たのだと思いました。 そして不当な扱いを受けた経験が彼女を女性解放・人種差別撤廃運動に駆り立てたとも考えられます。

正直、アレサって誰?状態だったのですが、オバマ大統領就任式で歌ったニュースは聞いたことがあるような。 映画に登場する曲も一度は耳にしているものばかりですが、今回はその歌詞に彼女の半生を重ねて聴いてしまいました。 それにしてもジェニファー・ハドソンの迫力ある歌声は圧巻でした。


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すばらしき世界

2021年11月03日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年2月11日公開 126分 G

冬の旭川刑務所でひとりの受刑者が刑期を終えた。刑務官に見送られてバスに乗ったその男、三上正夫(役所広司)は上京し、身元引受人の弁護士、庄司(橋爪功)とその妻、敦子(梶芽衣子)に迎えられる。
その頃、テレビの制作会社を辞めたばかりで小説家を志す青年、津乃田(仲野太賀)のもとに、やり手のTVプロデューサー、吉澤(長澤まさみ)から仕事の依頼が届いていた。取材対象は三上。吉澤は前科者の三上が心を入れ替えて社会に復帰し、生き別れた母親と涙ながらに再会するというストーリーを思い描き、感動のドキュメンタリー番組に仕立てたいと考えていた。生活が苦しい津乃田はその依頼を請け負う。しかし、この取材には大きな問題があった。三上はまぎれもない“元殺人犯”なのだ。津乃田は表紙に“身分帳”と書かれたノートに目を通した。身分帳とは、刑務所の受刑者の経歴を事細かに記した個人台帳のようなもの。三上が自分の身分帳を書き写したそのノートには、彼の生い立ちや犯罪歴などが几帳面な文字でびっしりと綴られていた。人生の大半を刑務所で過ごしてきた三上の壮絶な過去に、津乃田は嫌な寒気を覚えた。
後日、津乃田は三上のもとへと訪れる。戦々恐々としていた津乃田だったのだが、元殺人犯らしからぬ人懐こい笑みを浮かべる三上に温かく迎え入れられたことに戸惑いながらも、取材依頼を打診する。三上は取材を受ける代わりに、人捜しの番組で消息不明の母親を見つけてもらうことを望んでいた。

下町のおんぼろアパートの2階角部屋で、今度こそカタギになると胸に誓った三上の新生活がスタートした。ところが職探しはままならず、ケースワーカーの井口(北村有起哉)や津乃田の助言を受けた三上は、運転手になろうと思い立つ。しかし、服役中に失効した免許証をゼロから取り直さなくてはならないと女性警察官からすげなく告げられ、激高して声を荒げてしまう。さらにスーパーマーケットへ買い出しに出かけた三上は、店長の松本(六角精児)から万引きの疑いをかけられ、またも怒りの感情を制御できない悪癖が頭をもたげる。ただ、三上の人間味にもほのかに気付いた松本は一転して、車の免許を取れば仕事を紹介すると三上の背中を押す。やる気満々で教習所に通い始める三上だったが、その運転ぶりは指導教官が呆れるほど荒っぽいものだった。その夜、津乃田と吉澤が三上を焼き肉屋へ連れ出す。教習所に通い続ける金もないと嘆く三上に、吉澤が番組の意義を説く。「三上さんが壁にぶつかったり、トラップにかかりながらも更生していく姿を全国放送で流したら、視聴者には新鮮な発見や感動があると思うんです。社会のレールから外れた人が、今ほど生きづらい世の中はないから」。その帰り道、衝撃的な事件が起こる・・・。(公式HPより)

 

直木賞作家の佐木隆三が実在の人物をモデルに綴った小説「身分帳」を原案に、舞台を現代に置き換え、人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の再出発の日々を描いた人間ドラマで、監督は「ゆれる」「永い言い訳」の西川美和。

津乃田は若手テレビディレクターでしたが、小説を書きたいと職を離れていたところを、やり手のプロデューサー吉澤から声を掛けられます。彼女は社会に適応しようとあがきつつ、生き別れた母親を捜す三上の姿を追って感動ドキュメンタリーに仕立て上げようとします。三上にもっともらしい取材動機を語りながら、本当の目的は視聴率なんですね。チンピラに絡まれている男性を助けた三上はチンピラを執拗にぶちのめします。彼の行動をカメラに撮っていた津乃田が、三上のあまりにも生き生きと暴力を振るう姿に恐れをなして逃げ出しますが、吉澤は「間に入るか助けを呼ぶこともせず、かといってカメラを最後まで回すこともせず逃げ出したあんたは何者にもなれない」と糾弾します。彼女はまさにTVという世界の人間であり、その目的も良し悪しは別として明確なのですね。

吉澤と違い、実際に三上と会話し彼の一挙一動を目の当たりにしてきた津乃田は、一度ぶち切れると手がつけられないトラブルメーカーの半面、他人の苦境を見過ごせない真っ直ぐな正義感の持ち主な三上を次第に受け入れていくのですが、だからこそ彼の暴力行為がショックだったのでしょう。取材も母親探しも没になり、教習所でもなかなかハンコを貰えずで、半分やけになった三上は、昔の兄弟分に連絡を取ります。

下稲葉(白竜)は九州のヤクザの組長ですが、三上を快く迎え入れ、上げ膳据え膳のもてなしをします。しかし組は暴対法の煽りで弱体化しており、下稲葉自身も糖尿病の悪化で片足の膝下を切断していました。(日本酒に見せかけ中身は健康水というのも彼のプライドなんですね)

津乃田から、かつて自分がいた養護施設と連絡が取れたとの知らせを受けた三上が目にしたのはパトカーに取り囲まれている下稲葉宅。慌てて駆け寄ろうとした彼を引き止めた下稲葉の妻・マス子(キムラ緑子)は、「あなたはまだやり直せる、シャバは世知辛いけれど空は広い」と慰められ、東京に戻ります。

津乃田は三上を知る中で、彼の暴力性の原因が幼少期の親との関係にあると考えるようになります。庄司の家に招かれた三上が子供を養子に出す親の事情を伝えるニュースを見て感想を問われた時に「でも結局棄てたんだろ」と言う場面があります。一方で、棄てられたのだと心の奥底で気付いていても母を慕う気持ちの方が勝り、母の行為を正当化して自分が施設を飛び出した後で母は迎えにきたと語ってもいるのです。

津乃田と養護施設を訪れた三上ですが、既に過去の資料は処分されたあとで、せめてもと昔施設で働いていたという女性を紹介されます。お互いに相手の記憶はなかったものの、施設の歌を通してその存在を確かめ合うシーンが泣けます。施設の子供たちと遊ぶ中、突然地面に突っ伏して泣き出す三上。この時彼は元のヤクザな生活には戻らない覚悟を決めたのかもしれないなぁ。同時に津乃田もまた三上の歩んできた人生をいつか文章に綴ろうと決意します。津乃田の語り、彼の目線で物語が進んでいくのもそのためですね。

三上は高血圧の持病を持ち薬が手放せません。ストレスも持病悪化の原因になるため医師は安静を勧めますが、それでは暮らしていけません。庄司の口添えで生活保護を受けることができましたが、それを良しとはせず自分で稼ごうと職探しをするものの、前科者に厳しい現実が待っていました。運転免許の再発行を思い立ったものの、彼の運転はとても合格点には及ばない乱暴なものでした。教習所のエピソードはコメディタッチで笑えます。 刑務所に入る前の運転ってどんだけ乱暴だったんだ??

スーパーの店長の松本とは万引きの疑いをかけられたことがきっかけで親しくなります。自分も過去に世間をはみ出したことのある松本は、三上を心底案じ、時には辛辣な忠告もしてくれる人物です。

ケースワーカーの井口も三上の真面目で几帳面な人柄や生活を知り、彼を応援するようになります。井口の紹介で、老人介護施設で働くことになった三上は、自分を支えてくれた人たちに今度こそカタギの人生を歩むと誓って真面目に働き始めます。

周囲の人間に恵まれ、新しい人生が拓けるかに見える展開に、天邪鬼な自分は「この先に暗転する事態がくるんじゃないの?」と疑心を持ちつつドキドキしながら続きを観ました。結果としてその予想は当たってしまいますが、また犯罪に手を染めるのでは?という危惧は外れました。

三上は介護士の阿部(田村健太郎)と親しくなりますが、彼には知的障害があり、他の介護士から陰湿ないじめを受けていたのです。いじめの現場を目撃した三上は頭の中で暴力で撃退する妄想を抱きますが我慢します。介護士たちが阿部を笑いものにした時も思いとどまります。その日の帰り、嵐が来そうだからと積んだ秋桜を阿部から貰い、泣きながら帰路についた三上の胸中を去来したのは怒り?それとも自分への情けなさでしょうか?

元妻・久美子(安田成美)から電話がかかってきます。実は三上は免許センターで偶然久美子を見かけ、彼女の家に行ったのですが、彼女が再婚したことと、彼が服役している間に娘を産んだ事を知り、黙って帰ってきたことがありました。(おそらくは娘から三上の事を聞いたのでしょう)久美子から今度一緒に食事しようと誘われて幸せな気持ちになった三上ですが、その夜発作(おそらく心筋梗塞ですね)を起こし還らぬ人になってしまったのです。 高血圧であることは何度も出てきますし、九州で性接待を受けた時も機能しなかったエピソードもあり伏線になっていました。

翌日、異変を知り駆けつけた津乃田は、警察が現場検証をしている部屋で、阿部からもらったコスモスを握りしめたまま事切れている三上を見て取り乱し号泣します。同じくアパートに駆け付けていた庄司夫妻、松本、井口・・・彼らは間違いなく三上を悼んでいました。

三上は長く社会のレールを外れた人間でしたが、そんな人が社会で生きていく難しさがしっかり描かれています。それでも彼を理解し応援する人たちも確かに存在したのが救いになっていました。殺人を犯したこと、暴力を正当化してきたことは罪としても、彼には人への優しさや見て見ぬ振りのできない正義感も確かに存在していました。そういう意味ではいじめをしたり障害者を嗤う者たちの方がよほど悪人に見えました。少なくとも彼は孤独ではなかったし前向きな気持ちを持っていました。志半ばでの死は悔しかったでしょうけれど、彼の最期の人生は「すばらし」かったのではないかと思いました。


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