杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

あやしい彼女

2016年04月08日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2016年4月1日公開 125分

東京の下町。毒舌で頑固でおせっかい、トラブルばかり引き起こす73歳のおばあちゃん、瀬山カツ(倍賞美津子)は、周囲から煙たがられてばかりの毎日。女手一つで娘・幸恵(小林聡美)を育て、望むような人生を生きることができなかった彼女はある日、幸恵と喧嘩し家を飛び出してしまう。ふと目にした写真館に吸い寄せられたカツは「私がこのカメラでお姫様にしてあげますよ」と言う店主(温水洋一)の言葉に喜び、写真を撮影。店を出るとそこにいたのは、なんと20歳の姿をしたカツ(多部未華子)だった……。麗しい容姿を取り戻したカツは、まず髪型を変え、洋服を変え、そして名前を大鳥節子と変え、失われた青春を取り戻すために新しい生活をスタートさせる。そんな中、なじみの商店街で開催されたのど自慢大会で、節子は得意の昭和歌謡を熱唱。その歌声は会場中を魅了し、歌手になるという夢が動き始める。新人を探していた音楽プロデューサー・小林拓人(要潤)にスカウトされた節子は、しがないバンドマンの翼(北村匠海)と組んでバンドデビューを果たすが、実は翼は節子の孫。長年カツに想いを寄せる幼馴染の中田次郎(志賀廣太郎)も巻き込みながら、初めて思い通りの人生を歩み始める節子であったが、そんな奇跡のような日々は長く続くはずもなく……。(Movie Walkerより)


韓国映画のリメイクというのは知らなかったのですが、ヒロインの強烈な個性や、幼馴染の男性の受け身な姿勢を振り返ればなるほど!いかにも韓国コメディの流れを踏襲していますね
あれ?そういえば、内容は違うけれど今冬ドラマでも若返ったヒロインの話をやってたな

口を開けば毒舌のマシンガン、誰に対しても物怖じせず、自分を押し通すヒロインですが、倍賞美津子さんや多部ちゃんが演じると可愛く見えるから不思議です。
この作品は多部ちゃんの演技観たさにチョイスしたのですが、かなりツボにはまってしまいました。オードリー風の衣装も、ちょっとずれた昭和なセンスも彼女が演じるととてもキュートに見えます。ロック仕立ての「見上げてごらん夜の星を」や「真赤な太陽」、しみじみ聴かせる「悲しくてやりきれない」など懐かしの昭和歌謡(というか戦後歌謡の域ですが)が使われていますが、若者には逆に新鮮に聞こえるのかしらん?多部ちゃんは歌の猛特訓をして臨んだそうですが、その歌声は間違いなく観客を惹きつけます。

カツがパートをしてる銭湯は婿養子に入った次郎が営んでいます。彼に想いを寄せるみどり(金井克子)とは犬猿の仲で、喧嘩も日常茶飯事ここは笑える楽しいシーンですが、後に脳梗塞で倒れて還らぬ人になったみどりの通夜に彼女だ好きだったフルーツ牛乳を供えるカツに、実は親友だった二人の関係性が映し出されていました。

夫を早くに亡くして女手一つで娘を育ててきたカツにとって、娘や孫は唯一の自慢の種ですが、その恩着せがましい物言いにとうとう娘がキレて喧嘩になります(口を開けばあんたのためにやりたいことを我慢してきた、なんて言われ続けてきたらキレても仕方ないよね)原因となったのはカツが詐欺に引っかかったことですが、孫が痴漢をした示談金と言われて薄々怪しいと思いながらもお金を渡したのは、雑誌の編集長をしている娘(実は左遷されてたのですが)の仕事に差し障りがあってはならないと思ったからでした。これも後になってわかることなのですが、カツは、素直に気持ちを表せない人なのね

さて、不思議な写真館を出たカツは引ったくりに遭い、これを追いかけます。自転車の高校生より速いって、そりゃ無理があるだろ!という突込みはおいといて、ここで自分が若返ったことに気付くのです。神様がくれたチャンスとばかり、髪型や服装を変えていつもの銭湯に浸かったはいいけど、「やりたいこと」が出て来ない長湯でのぼせた彼女は次郎や次郎の娘・麻衣子(三鴨絵里子)らに名前を尋ねられ、とっさに大鳥節子と名乗りますが、これは憧れの「オードリー・ヘップバーン」と「原節子」から拝借したのね。

次郎の人の善さに付け込み居候を決め込んだ節子は、商店街ののど自慢大会に飛び入り参加したことで、孫の翼や音楽プロデューサーの小林を魅了します。就職活動で抜けたボーカルのアンナ(越野アンナ)の代わりに翼のバンド“怪しい彼女”に誘われ、可愛い孫のためにと引き受けた彼女は、翼たちの音楽を騒音と一刀両断。得意の「真っ赤な太陽」を歌いあげます。街角ライブの動画で再び彼女の歌声を耳にした小林はバンドを大人気音楽番組に出演させ、知名度の上がった彼らは人気ロックフェスの出演も掴みます。(節子にとってはフェスより紅白の方が知名度が高いので、翼たちとの感覚の違いから起こるドタバタも可笑しかったです。)小林との距離も急速に近づいていく中、亡き夫以来の恋心に戸惑いながらも胸の高鳴りが止められない節子が可愛いかったな

一方、カツを案じる次郎は、節子の部屋からカツの所持品を見つけて彼女がカツをどうかしたのではと疑い、罠(猿や鳥を誘き寄せるんじゃないんだけど~~しかもまんまと引っかかってるし)を仕掛けるのですが、反対に節子に返り討ちに遭います節子が口紅を塗る様を見てようやく節子=カツという事実に気付く次郎。実はこの口紅は昔次郎がカツに初めて贈ったもの(または同じ商品)なの

また、母の捜索を続ける幸恵の方も、みどりや次郎に聞いて少しずつカツの過去を知っていきます。病弱だった自分のためになりふり構わず生きてきた母親の人生を知り、改めて感謝するんですね

フェス当日、事故に遭いながらも会場に駆けつけた翼ですが、もちろん演奏できる状態じゃない。でも曲を作った翼の努力を知っている節子は歌わせて欲しいと小林に頼みます。
この時の「新曲」も良い歌でした
病院に駆けつけた節子は翼のために、輸血を申し出ます。実は血を抜くと若さが失われカツに戻ってしまうのですが、それを承知で可愛い孫のためにきっぱり新しい人生を捨てたのです。「ローマの休日のお姫様だって、それが人生の休日だと知っていた」というようなセリフがあるのですが、ここもでした。

ラストの、元に戻ったカツの前に若返った次郎(野村周平)が現れるくだりは蛇足な感もありますが、この二人案外うまくいくのかもね

笑ってちょっぴり泣けてじんわり温かい作品でした。

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