杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

東京島

2010年10月31日 | 
桐野夏生/著  新潮社/出版

クルーザーで夫・隆と世界一周旅行に旅立った清子。だが出発からわずか3日目に嵐に遭い、数日間漂流した後に2人が漂着したのは、どことも知れぬ無人島だった。
それから間もなく、与那国島での過酷な労働に耐えかね、島からの脱出を図った23人のフリーターたちが途中で台風に遭い、島に漂着。更には日本への密航途中で金銭トラブルに発展した11人の中国人たちが島に置きざりにされる。
無人島に流れ着いた男たちと1人の女。いつしか「トウキョウ」と呼ばれるようになった島で、唯一の女である清子は性を武器に逞しく生き抜いていくが…。(ウィキより)


映画は好みに合わない気がして観ていなかったけれど、家族が文庫本を買ってきていたので読ませてもらいました。

孤島に流れ着いた夫婦が、後から同じく漂着した若者たちと暮らすようになり、更に島流しにあったらしい中国人まで増えて、いつしか女一人の清子は女王然とした振る舞いをするようになります。貞淑な妻だった平凡な女の豹変に夫はなす術もなく、病を得て後、謎の死を遂げます。

彼らはこの島をトウキョウと呼び、漂着した浜はオダイバ、それぞれの居住区をブクロ・ジュク・シブヤなどと名付けます。
謎の産廃ドラム缶のようなものが置かれている浜「トーカイムラ」には協調性のないワタナベが追いやられていますが、彼は後に一人だけ助けられて島から脱出するのです。

サバイバル能力の乏しい夫や日本の若者に比べ、後から来た中国人グループ「ホンコン」たちは逞しく統率の取れた行動をして更に脱出用のボートまで作り上げます。
船出に偶然遭遇した清子が彼らと行動を共にしたのも本能の成せる業というものでしょうか。

失敗して再び島に流れ着いた清子を待っていたのは彼女の存在を疎ましく思う日本人の憎悪の目。しかし、彼女はめげずに妊娠を武器に生き延びていきます。そして再びホンコンたちに接近し、そこでボートごと漂着していたフィリピンダンサーたちに出会い・・・

物語は清子の視点だけでなく、男たちの視点からも語られていきます。
夫隆の思いは日記という形で、それを盗み読むワタナベや、与那国脱出の際リーダーだったGM、ひ弱な文学青年風だったオラガ、幼い頃に死んだ姉との会話をするため気味悪がられているマンタなど、それぞれのバッググラウンドも含めてその気持ちの変化が綴られています。

さらに最終章では島の内・外という形で清子の生んだ双子のその後が描かれています。

清子が体現していたのは、身勝手さ、残酷さ、薄汚さ、逞しさといった人間の根源的な性でした。
さて、島を出るという望みを捨てた者たちの間に生まれた均衡と平和は永久的なものなのでしょうか?
彼らの数十年後が知りたくもあります。

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時をかける少女

2010年10月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年3月13日公開

高校卒業を間近に控えた芳山あかり(仲里依紗)は大学合格も決めて春からの新生活に対する期待に弾んでいた。そんな中、母和子(安田成美)が交通事故で昏睡状態に陥る。混濁する意識の中で「’72年4月の土曜日、中学の理科室で、深町一夫(石丸幹二)と逢わなければ」と言う母のため、あかりは代役を申し出る。和子は深町にメッセージを伝えるため時を越える薬を研究していたのだ。しかし、間違えて1974年2月に飛んでしまったあかりはそこで映画作りに熱中する大学生涼太(中尾明慶)に出会う・・・。


1983年の原田知世主演作品、1997年の角川春樹監督作品は観ていないのですが 、2006年 のアニメは劇場で観ました。但し、アニメの方は2006年当時(現代)を舞台とした新たな物語でヒロインは芳山和子の姪の設定ですがオリジナルとは別物でした。
けれど今回の物語は芳山和子の娘をヒロインとして、オリジナルの未来編で原作者自ら「本当の意味での二代目」と語っているだけあって期待通りの内容になっていました。

そもそも、この物語を知ったのは1972年NHK少年ドラマシリーズ 『タイムトラベラー』というドラマでした。未来人・タイムリープというSF要素たっぷりのミステリアスな雰囲気にわくわくした記憶があります。

涼太はSFファンなので、2010年から来たというあかりの説明をすんなり受け入れます。携帯やコインという証拠も一役買っているでしょう。そして彼女が深町を探す手伝いをする中で、二人の間に淡い恋心も芽生えていくのも自然な成り行きでした。

若い頃の母(石橋杏奈)や父(青木崇高)との出会いや涼太が情熱を注ぐ映画製作の様子、二人で行った風呂屋のエピソードなど、まさに70年代の匂い漂う描写が懐かしい~~。

涼太の勧めで出した新聞の尋ね人広告が未来の深町(ケン・ソゴル)の目に留まり、無事彼に母の伝言を届けることが出来たあかりですが、映画冒頭で出てきた深夜バスの事故が涼太が乗る予定のバスであることに気付き、必死に止めようとします。

この時代に残ってまでも!と懇願するあかりを制止する深町。歴史は変えられないの・・このシーンは本当に切ない・・。深町の情けでポケットに入れられた8mmのテープが父との久しぶりの交流に繋がり、記憶にないその映像に涙するあかり。一方病室では和子と深町の束の間の再会。そしてエンドロールの桜並木。う~~ん、悲しさと希望とが混じったほろ苦さが残りました。

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おまえうまそうだな

2010年10月27日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年10月16日公開 

草食恐竜マイアサウラ(原田知世)に育てられた肉食恐竜ティラノサウルスのハート。ある日自分が母親とは違う“肉食い”だということを知り、家出してしまう。立派な肉食いに成長し、草原を歩いていたハート(山口勝平)は、ある日たまごを見つける。そのたまごから生まれて来たアンキロサウルスの赤ちゃん(加藤清史郎)に「おまえうまそうだな」と声をかけると、赤ちゃんは自分がハートの子どもで、“ウマソウ”という名前なのだと思い込み、ハートになついてくる…。

絵本作家・宮西達也の「ティラノサウルス」シリーズから生まれた映画です。
テレ東でも今月になって放送されていたのですね。
「あなたをずっとずっとあいしてる」「きみはほんとうにステキだね」そして「おまえうまそうだな」などを上手に繋いで一つの物語にしています。系統としては「あらしのよるに」や「かいじゅうたちのいるところ」と同じかな。

マイアサウラのお母さんが、拾ったティラノサウルスのたまごから孵った子をハートと名付けて自分の子と同じように愛情を注いで育てます。けれどある日、ハートはティラノサウルスと遭遇し、自分が凶暴な「肉食い」と知りショックを受け、自らがおかあさんやお兄さんに危害を加えないよう去っていきました・・・「あなたをずっとあいしてる」

一人逞しく成長したハートが、見つけた卵から孵ったアンキロサウルスの赤ちゃんを「うまそうだな」と食べようとしたところ、「ウマソウ」が自分の名前だと勘違いした赤ちゃんがハートを「お父さん」だと思い込んでしまいます。懐かれてウマソウを食べることができなくなったハートは徐々にウマソウに愛情を感じ始めますが、このまま一緒にいることはできないと考えてウマソウを遠ざけようとします。・・・「おまえうまそうだな」

ウマソウが他のティラノの仲間に襲われているのを助けたハートはティラノのボスである片目のバクー(別所哲也)に土地を追われ、遠い海辺でエラスモサウルスのペロペロと仲良くなります。誤まって海に落ちたハートを助けてくれたのがペロペロでした。自分が凶暴な「肉食い」なことは内緒にしていたハートですが、海の肉食いに襲われそうになったペロペロを助けるために戦った際に正体がばれてしまったのですが、ペロペロのハートへの友情は変わりませんでした。・・・ 「きみはほんとうにステキだね」

最後に、たまご山が爆発するという情報を教えられたハートが「お母さん」を救うために戻ってきて、バクーと戦いになるのですが、実はバクーこそがハートのお父さんだったのでした。
そして・・・

原作絵本と比べて可愛すぎるほどのほのぼの系の画は、最近の実写と見紛うばかりのアニメーション技術を見慣れた目には、素朴というか、はっきりいって下手クソだと映ってしまったけれど、ストーリーと声優の演技が素晴らしかったので、やけに人間くさい動作をすることや、二本足で歩くことも含めて、途中からそんなことは気にならなくなってしまいました。むしろ、このくらいの画質の方が、ほのぼのとした印象を強く与えてくれるのかも。「餌」の捕食シーンも残酷さは極力排除し、血や噛む音なども出さないようにしているのは絵本原作だからでしょうか。

親が子供を想う愛情や、子が親を慕う心は人でも恐竜でも同じ。
自分が周囲と異質であっても、生きていくために共にいられなくても・・・。
たかが子供の絵本と侮ってはいけません。
親子の絆や、互いを思いやる心、大きなものに立ち向かっていく勇気といった、普遍で大切な事ごとを温かいタッチで描いた秀作です。


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ダーリンは外国人

2010年10月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年4月10日公開

漫画家を夢見るイラストレーターさおり(井上真央)は中学の英語のテストで4点を取るほど英語が苦手。そんな彼女が恋に落ちた相手は、“漢字”の美しさに一目惚れして来日した語学オタクのアメリカ人トニー(ジョナサン・シェア)だった。付き合出だした二人だが、“外国人なダーリン”トニーの言動は、さおりにとって「?」や「!」だらけ。そしてある出来事をきっかけに、ふたりの心がすれ違い始めて…。

小栗左多里のコミックエッセイ「ダーリンは外国人」の映画化作品です。
良く似た俳優を見つけてきたもんだ!とイラストと比べながらまず思いました。

ヒロインの職業が漫画家で恋する相手が外国人という設定は、いわゆる「普通の恋」じゃないように見えますが、本質的には喧嘩と仲直りを繰り返しながらお互いを知り合うというカップルの成長物語となんら変わりはないのですね。

どちらかというと、さおりが自分勝手に「こうでないと」という思い込みで行動して、トニーがかなり我慢しているように見えたのだけど・・(^^;

さおりの父親(國村隼)が娘を心配して結婚に反対しながらも、密かに英会話の本を買って練習していたり、後ろのページにメッセージを書き残していたりというエピソードが味わい深かったです。母親(大竹しのぶ)の大らかで明るいキャラも楽しかったな♪

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男と女の不都合な真実

2010年10月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年9月18日公開 アメリカ

ローカル局プロデューサーのアビー(キャサリン・ハイグル)は、美人で賢く仕事も有能だけど、理想の男性を追求するあまり逆に男性から敬遠され恋は11ヶ月もご無沙汰状態。そんな時、アビーの手がける番組の視聴率UPのために、恋愛カウンセラーのマイク(ジェラルド・バトラー)が起用される。下品でスケベ、男性の本音をあけすけに語るマイクに嫌悪を示すアビーはマイクと賭けをして、彼の恋愛指南で彼女が狙うイケメン医師コリン(エリック・ウィンター)のハートを掴むことができたら彼を認めることにしたのだが・・・。

“理想の王子様”を追い求めるアビーにマイクが教えた男をゲットする5つのルールが笑えますが、これこそ男の真実の一端を如実に表している気もします。じらして待たせて気持ちを煽ったり、説教くさいことを言わないなどは確かに効果ありそう(笑)

放送禁止用語を連発したり、レストランでのハプニングなどはワルノリな感もあるけれど、ギリギリOKラインを保っているので、日本公開もあったのかなぁと納得。でも一応R15指定ですが。

本音トークが売りのマイクはジェリーが演じるからこそ下品過ぎず、嫌味にならずに受け入れられるのでしょう。

それにしても、職場恋愛を公の電波であんなに堂々と流したら、日本じゃ即クビな気もしますが・・・アメリカって大らかな国なのね☆

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アーサーと魔王マルタザールの逆襲

2010年10月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年4月29日公開 フランス

かつて身長2mmのミニモイ族を魔王の手から救ったアーサー(フレディ・ハイモア)は“ミニモイの国”の扉が開く満月の日に王女セレニアに再会するのを楽しみにしていた。しかし、田舎のおじいちゃん(ロナルド・クロフォード)の家での生活がアーサーに危険を及ぼすと考える父親(ロバート・スタントン )は予定よりも早く家に帰ると言い出す。そんな時「助けて!」と書かれた米粒がアーサーの元に届けられ…。

前作が楽しかったので、続編は劇場で観ようと思っていたのに、時間が合わなくて行けなかったのだけど・・・・いや、行かなくて良かった。まさかこんな唐突に終わるとは(^^;
まるでTVドラマの「続く・・」のような。続編の公開はいつ?

そのせいか、ストーリー自体もさほど起伏があるわけじゃなく、次回作の布石なのか、実写での行動描写が増えてます。月が隠れて望遠鏡の通り道が使えなくなったのも、次善の作として別のやり方があったのも同様の理由からでしょうか。

「助けて」と米粒に書かれたメッセージを送ったのはミニモイの人ではなく、題名にある通り魔王Mの策略で、アーサーはまんまと罠にはまり彼を地上に送ってしまうことに。さて、Mが地上で巻き起こす騒動と退治は次を見てね、というわけです。

でも自然やミニモイの国の住人たちのCGは相変わらず素敵で夢に溢れています。
アーサーを迎える準備をするミニモイの人たちが、花の蜜や草の実を集めてケーキやご馳走を作る様子が愛らしく、アーサーがベタメッシュ(セレニアの弟)を助けて逃げる空中シーンや、クモに乗るシーンもわくわくします。ただ、前回勝気な性格だったセレニアがうって変わって恋する乙女になってるのはちょっと違和感があり微妙でした。

DVDでは特典に次回作をちょっとだけ入れてあるけれど、公開時に批判集中したんだろうなぁ~。劇場で子供に「なんでここで終わっちゃうのぉ?」と泣かれた親も多かったんだろうと想像。次作に続くことをきちんと宣伝しなかったのは監督が悪いわけではないのでしょうけど。

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エクスペンダブルズ

2010年10月20日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年10月16日公開 アメリカ 

傭兵軍団“エクスペンダブルズ”を率いるリーダーのバーニー(シルベスター・スタローン)は、ナイフの名手クリスマス(ジェイソン・ステイサム)や、マーシャルアーツの達人ヤン(ジェット・リー)、大型銃器のスペシャリストシーザー(テリー・クルーズ)、爆破のプロトール(ランディ・クートゥア)らと数々の危険な任務を遂行してきた。ある日、バーニーはチャーチ(ブルース・ウィリス)と名乗る依頼人から南米の島国ヴィレーナの軍事独裁者ガルザ将軍(デーヴィッド・ザヤス)の殺害を請け負うことになり、クリスマスと共に下見に向かう。島では案内人サンドラ(ジゼル・イティエ)が待っていたが、彼女は将軍の娘だった・・。

スタローン監督の下、豪華(過ぎる)アクションスター大集合で、まるで金にあかせたプロスポーツチームを見てる気分になりました。(笑)でも彼らはちゃ~~んと成果は出してるね。

教会での仕事依頼人役のブルースと競合相手役のシュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)。この二人を出すためだけに無理矢理挿入したようなシーンが本編の中で浮いて見えるんですが、きっとファンには嬉しいサービスなんでしょう。

彼らの憩いの場所はかつての仲間で今は刺青師のツール(ミッキー・ローク)の店。
ここでの会話やナイフ投げ競争は戦闘シーンの前後にほっとする和みどころでもあります。
ツールの過去の告白話からバーニーがサンドラ救出を決心するんですね。
クリスマスが恋人に振られて傷心だったり、その恋人が殴られたことに怒り相手をぶちのめしたりする「男の純情」エピも描かれていました。

薬物に溺れて仲間を外されたガンナー(ドルフ・ラングレン)がバーニーを裏切り、激闘を繰り広げるシーンも迫力がありましたが、結局は仲間内の痴話喧嘩のような形で収束しちゃったのは・・これも男の熱い友情ってことですか?(^^; ヤンがチビと言われて憤慨するのもある意味お約束なのかな?

将軍の後ろで糸を引くのは元CIAのモンロー(エリック・ロバーツ)。エクスペンダブルズへの真の依頼者はCIAってわけです。ほう~~アメリカってやっぱ・・そんな国なのね。
冷徹非情なモンローの部下ペイン(スティーブ・オースティン)やブリット(ゲイリー・ダニエルズ)も拷問や暴力への躊躇いは全く無い奴ら。やられてもやられてもゾンビのようにタフな彼らとの戦いに辟易(泣)

彼らに比べたら、将軍なんて可愛いもんです。娘に反逆されたこともあり、モンローたちの強引な手口に嫌気が差して、彼らと決別しようとするのですが・・・このあたりは弱小国と強大で奢った大国の縮図を見ているような感覚もありました。

島での戦闘は火薬による爆発と弾薬が飛び交う地獄図でございました。
あぁ、私ってばやっぱり戦場シーンは苦手だ~~。

スタローンも頑張ってたけど、やっぱり好み的にはスマートなサブリーダーのステイサムです♪

無駄に豪華。でもやっぱり豪華なだけあって見応えはあります。

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守護天使

2010年10月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年6月20日公開 

薄給メタボなサラリーマン須賀(カンニング竹山)は、鬼嫁(寺島しのぶ)から毎朝500円の小遣いを貰い満員電車で会社に向かう。ある日、駅で虎の子の500円を落とした彼は、拾ってくれた優しい女子高生涼子(忽那汐里)に一目惚れして、勝手に彼女を守ることを決意する。ところが幼馴染のチンピラ村岡(佐々木蔵之介)は「いまどきの女子高生は乱れてるぞ」と一蹴、おまけに彼女が書いたらしいブログには、彼女の淫らな日々がつづられていて…。

何をやってもうだつが上がらない不細工中年男が、ある日出会った清少女に初恋をして、ひたすら彼女を守ろうとするお話でした。
お笑いのカンニング竹山さん主演ですが、いつもの“キレキャラ”は封印、真面目でひたむきな中年サラリーマンを演じています。

彼女を騙って書かれたブログのせいで、闇サイトの魔の手に捕まった涼子を守るために、初めは彼を嗤っていた村岡や勤めていた塾の元生徒・大和(與真司郎)も協力します。須賀が、幼馴染とはいえ何度迷惑をかけられても村岡を見捨てなかったり、引きこもりだった大和に誠実に向き合う姿勢に、この二人が協力する理由があるんだろうね。金なし!職無し!未来なし!な三人が繰り広げるのは可笑しくも切ない男の哀歌なのかも。

他にも村岡が入り浸る雀荘の店長や麻雀仲間(大杉漣)など怪しげな皆様の応援もあり、涼子が拉致された部屋を突き止め、犯人のハーベスト(柄本祐)やブッチャー(バナナマン日村)から涼子を取り戻すのでした。この時のぶざまなコスチュームはやり過ぎじゃないのぉ?(^^; 
やり過ぎといえば、須賀がバイトに行かされたホモ雑誌の編集長役は佐野史郎でした。この辺のエピソードはコメディで笑えます。

以前、レンタルDVDに入っていた予告編を観た時は、少女を守ろうとする男たちは皆少女に恋してるのだと思ったのですが、実際はこのダメ主人公を人間的に好きでいてくれる仲間たちが協力するというお話だったのね。

なので、少女の側に立った視点や感情描写というものは殆ど出てきません。
闇サイトの罠にはまった彼女の絶体絶命さを期待する向きにはお預け感が残るでしょう(笑)
しかし・・いいのか?高校教諭(池内博之)があんなワルで(怒)

須賀と嫁との関係は相撲の親方の娘を押し付けられたという背景があるようですが、夫をいびる鬼嫁の心情描写がちょこちょこと出てきて、サブストーリーとして楽しめました。もう一つの「初恋」オチでした。

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パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃

2010年10月14日 | 
リック リオーダン (著), 金原 瑞人 (訳) ほるぷ出版

アメリカの寄宿学校に通う12歳の少年パーシー・ジャクソンは、ある時突然、ギリシャ神話の神々の息子のひとりであると告げられる。仲間のアナベスとグローバーとともに、旅に出ることになったパーシーに、予言の神が下した神託は4つ。おまえは西へ行き、そむいた神と対面する。おまえは盗まれたものを見つけ、持ち主に無事に届ける。おまえはおまえを友と呼ぶ者に裏切られる。おまえは結局、もっとも大切なものを守りそこねる。さらわれた母親の運命と、まだ見ぬ父親への複雑な思いをかかえて旅するパーシーの冒険の結末は…。アメリカ探偵作家クラブ賞受賞の実力派ミステリ作家によるギリシャ神話とミステリの融合。スピーディな展開、二転三転する犯人…、新感覚ミステリ・ファンタジーシリーズ第一弾。 (「BOOK」データベースより)

映画を先に観て、図書館でシリーズを全部予約したら初巻が一番最後になりました(^^;

映画では高校生ですが、原作のパーシーは12歳。著者が当時小学生だったADHDと難読症の息子ヘイリーに語り聞かせたのがきっかけで誕生した物語ということで、年齢設定も低かったのでしょう。

ゼウスの電撃を盗んだ犯人にされたパーシーが、そのことで神々の戦争になるのを止めようと冒険の旅に出る物語は、次々と繰り出される魔物や怪獣や神々の攻撃を命がけで潜り抜けながらのスリルとアクションと謎解きが交じり合った現代神話ファンタジーです。

映画も本も、私にはどちらも面白かったな~~♪

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ナイト&デイ

2010年10月13日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年10月9日公開 アメリカ 109分

平凡な女性ジューン(キャメロン・ディアス)が空港で出会った笑顔が素敵なイケメンのロイ(トム・クルーズ)。運命の恋の予感はしかし、怒涛のパニックへと変わる。ロイはジューンが夢に見た理想の男性どころか、CIAから裏切り者として追われるスパイだった。身を守るためにロイと行動を共にすることを余儀なくされるジューンだが、ロイが仲間のフィッツジェラルド(ピーター・サースガード)の裏切りを知り、彼らが警護していた永久エネルギー電池”ゼファー”とその発明者であるサイモン(ポール・デーノ)を守ろうとしていることを知る。ゼファーを狙うスペインの武器商人アントニオ(ジョルディー・モリャ)一味の追撃も加わる中、必死の逃亡劇が幕を開け・・・


先行上映を我慢して(スクリーンが小さかったため)レディースデーまで待った甲斐がありました。
初回は朝8:30からの上映だったけどそこそこ客も入っていて、やはり娯楽大作らしい人気でもありました。

とにかく、俺様トム(良い意味で)の本領発揮の映画です。
キャメロンも皺の多さはともかく、元気でチャーミングなヒロインを演じています。
彼らの軽快でウィットに富んだ会話の応酬は「バニラ・スカイ」の時よりパワーアップして息もぴったりでした。アクションシーンも殆ど自ら行っているということです。
ハイウェイでの追跡劇や闘牛場のシーンなど本当に見応えのあるアクションの連続を楽しめました。

笑いあり、スリルあり、謎あり、アクションありでロケーションもアメリカに留まらず、オーストリア、スペイン、南の孤島と美しい場所に次々と連れて行ってくれて、お腹一杯な満足感を与えてくれます。

平凡な女性が空港でぶつかった一人の男性。それは偶然ではなく彼が機内にあるものを持ち込む為の策略でした。然し、裏切り者にばれて逆に彼女を巻き込んでしまいます。
どんな危機にも慌てず騒がず、常に紳士的でユーモアに富んだロイはジューンのピンチを幾度も救ってくれます。こんな男性が身近に現れたら、殆どの女性がハートを射抜かれてしまうだろうなぁという筋書きです。

逆にロイの目線で観たら、やや天然だけど自分の気持ちにまっすぐで元気で明るくて前向きなジューンは、一緒にいて心安らぐ守ってあげたくなる女性なのでしょう。

スパイに恋はご法度な筈ですが、ロイはあっさり恋も任務も成し遂げちゃうんですね~~♪ ラストでジューンがロイを救うエピソードはやり過ぎな感もあるけれど、まさに娯楽作と思えばあのくらいは余裕であり!ですね。

映画を観てハッピーな気持ちになりたい人、スカッとしたい人にお薦めです。

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南極料理人

2010年10月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年8月22日公開

海上保安庁の料理担当である西村(堺雅人)は、南極ドームふじ基地に派遣される。ペンギンやアザラシはおろか、ウィルスさえ生存できない極寒の地では、楽しみと言えば食べることだけ。観測隊員のために西村は、時に贅沢な食材を使い、娯楽の少ない彼らをもてなしていた。日本から遠く離れた西村の心の支えは家族。しかし、ある日娘から「お父さんがいなくなってから毎日が楽しくて仕方ありません」というファクスが届き、ショックを受ける。

南極隊員で料理担当だった西村淳のエッセイ「面白南極料理人」の映画化です。
極寒の地で働く観測隊員の生活がユーモアたっぷりに描かれています。とはいえ、そこには特別ドラマチックな出来事は何もありません。そんな毎日だからこそ、食事は別格の楽しみとなるのです。手間暇かけて作られた料理の数々に観ている側のお腹も鳴り出しそう。

西村は赴任が決まっていた上司(宇梶剛士)が事故に遭ったため、自分の意志に反して南極に単身赴任になりました。愛する妻や娘にもあっさりと送り出され心中穏やかではない様子ですが、毎日8人分の食事作りを頑張っています。科学館?と電話を繋いで子供たちと会話するエピソードが微笑ましかったなぁ。

隊員は雪氷学者の本さん(生瀬勝久)、ラーメン大好きな気象学者のタイチョー(きたろう)、シェイカーも出来る医療担当のドクター(豊原功補)、彼女に振られて交換手にアプローチする雪氷サポートの兄やん、漫画大好き車両担当の主任、通信担当の盆、大気学者の平さんです。

それぞれ仕事に励みながらも家族を思い、泣いたり笑ったり怒ったりしながらも一つの家族のように暮らしている様子が伝わってきて寒い寒い南極の風景なのに、ほんわか温かな気持ちになれました。

それにしても、西村の腕前は大したものです。和洋中、どの料理も本当に美味しそう。
伊勢エビの丸ごとフライや巨大なローストビーフ、ベーキングパウダーと水を混ぜてかん水まで作っちゃったラーメンなどなど、思わず生唾が湧いてきます。こんな食事が毎食食べられるなら、極寒の地も捨てたもんじゃないと思えるほど(笑)

聞けばフードスタイリストは「かもめ食堂」のスタッフ、なるほどね~と納得。

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噂のモーガン夫妻

2010年10月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年3月12日公開 アメリカ

ニューヨークの人気弁護士ポール・モーガン(ヒュー・グラント)は、一度の浮気に怒った妻に家を追い出され、3ヶ月間ホテル暮らしを余儀なくされていた。セレブ相手の不動産業を営んでいる妻・メリル(サラ・ジェシカ・パーカー)は電話にも出てくれず、プレゼント攻撃も効き目なし。そんなある日、妻を誘い出し夜景の美しいレストランで関係修復を提案した帰り道に殺人事件を目撃してしまう。犯人に顔を見られた二人は命を狙われ、FBIの証人保護プログラムにより、身分を隠してど田舎のワイオミング州・レイで暮らす羽目になったのだが・・・。

夫の浮気が原因で別居中の夫婦が殺人事件の目撃者となったことから起こる騒動を描いたコメディです。大都会NYから田舎町に避難させられあまりの生活スタイルの違いに戸惑う二人の姿に笑いながらも、徐々に歩み寄っていく二人がちょっと愛しく思えてきます。漫才のような夫婦の掛け合いも笑えます。

浮気男を演じさせたらピカイチなヒューのとぼけた魅力は年齢を重ねても相変わらず。
浮気の原因が、子供が出来ずに不妊治療を強制する妻にもあって、そもそも夫に父親となる心構えが出来ていなかったのに先走ってしまったことがわかったりと、強制的に隔離された同居生活の中で、喧嘩しながらも本音をぶつけ合った夫婦の再生物語になっていました。

しかしサラ・ジェシカ・パーカーはいつまでぶりっ子風キャラでいくんだろうか?
妻が夫に隠していた秘密も、それを打ち明ける時の唐突さも身勝手さが鼻につき、夫に同情したくなってしまいました。

二人を引き受けた田舎町レイの保安官夫妻(サム・エリオットとメアリー・スティーンバージェン)や町の人たちとの交流も面白おかしく描かれていきます。
自然と共に暮らし、皆が知り合いな旧き良き時代を彷彿とさせる関係は、後に犯人が二人の居場所を突き止めて追って来るロデオ大会で効果的に使われていました。

もう一組、夫妻の秘書同士の凸凹コンビも登場しますが、年代別三組のカップルの姿はまるで過去・現在・未来を見ているかのようでした。

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男女逆転 大奥   ネタバレあり

2010年10月06日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年10月1日公開

男だけを襲う謎の疫病(全身に赤く醜い吹き出物が出てかなりグロイ)が席巻した江戸、徳川の時代。
多くの男が死に至り、男が女の4分の1に減少した結果、全ての重要な仕事を女が占め、男が体を売る男女逆転の世で、最も贅沢を尽くした場所が大奥だった。
1人の女将軍に3000人の美しき男が仕える女人禁制の男の園にいま、1人の若侍が足を踏み入れようとしていた・・・・。

男女逆転の大奥という発想、ありそうでなかった壮大なパロディ世界を楽しんできました。とはいえ、大奥に上がったばかりの水野祐之進(二宮和也)に御中臈の松島(玉木宏)があっさりと「3000人とは名ばかりで実際は800人程度」とばらしてしまうんだけど。

将軍をめぐり多くの美男たちが争う大奥の構図だけれど、幼い将軍の御世にあっては肝心の「お役目」も待機状態とあって、専ら陰湿ないじめが行われ、また立身出世のために上役に取り入ろうとしのぎを削っています。
困窮した家のため・身分違いで叶わぬ幼馴染のお信(堀北真希)への愛を断ち切るために奉公にあがった水野が目にしたのは、そんな大奥の実態でした。

大奥総取締の藤波(佐々木蔵之介)は、剣術に励み武士道を追い求める水野に目をかけますが、本当の目的は彼を犠牲に自らの栄達を図ることだったのです。

松島と剣士の鶴岡(大蔵忠義)、藤波と松島のBLな関係、水野に淡い恋心を抱くお針子の垣添(中村蒼)といった禁断の世界も描かれますが、かなりあっさりしたものでした。
三の間の古参の杉下(阿部サダヲ)は水野の良きアドバイザーとして、後には従者として彼を助けてくれます。こちらは男の友情といったところでしょうか。

策謀の果てに将軍の座を掴んだ吉宗(柴咲コウ)ですが、その目的はこの国の民を困窮から救うことでもありました。そのためにお忍びで江戸市中に出歩いたりもします。
しかし・・桜を背負って馬で駆ける構図から始まる登場シーンとか、町人に身をやつしての市中散策など、どう見ても「暴れん坊将軍」のパクリだし・・いや、オマージュというのか(^^;

吉宗が大奥初お目見えとなる総ぶれで水野に目をとめる=初夜の相手を務めるわけですが、しきたりで事後に処刑されることになっていることを二人はこの時は知らなかったのです。死を覚悟して夜伽の相手をする水野(しかし床入りシーンはカットされてます)。う~~ん・・逆転の構図じゃなければなかなか泣けるシーンなんだけど、全体的に失笑はするけど入り込めない私はBLファンじゃないってことだね。

吉宗の知略で、水野も大奥も転機を迎えます。この解決方法も昔、ドラマで見たっけなぁ。ってどんだけ時代劇見てたんだ、私。

ニノの若侍姿も良いのだけど、意外にも阿部サダヲさんの髷姿が似合ってたな♪
将軍の御用取次・加納役の和久井映見さんも穏やかな物言いの中に切れ者の賢さを潜ませて良い味がありました。

女性版同様、大奥の美男子たちの華美な衣装を楽しむのも一興です。水野の黒一色の中に流水模様の縫い取りを施した衣装も見事でした。

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16ブロック

2010年10月03日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2006年10月14日公開 アメリカ 

夜勤明けで署に戻ったNY市警の刑事ジャック・モーズリー(ブルース・ウィリス)は、上司に簡単な任務を課せられた。それはわずか16ブロック先の裁判所に証人エディ・バンカー(モス・デフ)を護送するというもの。嫌々任務を引き受けたジャックはエディを車に乗せて護送を始めたものの、渋滞やうるさいエディに嫌気がさし、エディを車に残したまま酒を買いに行ってしまう。だが車内に残されたエディに銃を向ける男が現れ・・・

護送中の囚人が警察の汚職にまつわる事件の証人だったことから、仲間を敵に回しての命懸けの戦いとなっていく様をリアルタイムで映し出す、アクションエンタテイメント作品です。

数年前、レンタル店で借りたこの作品、家のデッキと相性が悪かったのか再生されなかったという思い出あり。ネットレンタルの作品リストに入れていたものの他に観たい作品が多くて出番がなかったけれど、このところのリスト在庫切れで浮上してきた

最初、ブルース・ウィリスだって気付かないくらいのくたびれた中年男ぶりに驚いたけれど、トラブルが重なるうちに「ダイ・ハード」の面影が彷彿としてきました
簡単な任務の筈が・・という「運の悪さ」も共通しているのだけれど

突き出た腹と引きずる足の見苦しい中年刑事の酒びたり生活の理由が明かされる頃には、ジャック自身の弱みも露呈。過去と決別することは、長年の相棒である友と仲間を告発することだったとはね
DVDにはもう一つのエンディングが入っていましたが、やっぱり本編の結末の方が後味が良いねぇ

ジャックとエディの間に生まれる友情が軸ではあるけれど、相棒だったフランク(デヴィッド・モース)との間にも友情が残っていたからこそ、互いに銃を向け合っても自身が相手に向かってとどめを刺すことはしなかったんだろうね。

ちなみに16ブロックの距離感は約1.6km。東京だったら「渋谷⇔原宿」位らしいです 

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扉をたたく人

2010年10月02日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年6月27日公開 アメリカ 104分

コネチカットで暮らす大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)は、愛する妻に先立たれて以来、全てに心を閉ざし、無気力な毎日を送っていた。ある日、出張でニューヨークを訪れた彼は、マンハッタンの自分のアパートで見知らぬ若いカップル、タレク(ハーズ・スレイマン)とゼイナブ(ダナイ・グリラ)に遭遇する。彼らは知人に騙されて住んでいたのだった。行くあてのない彼らに部屋を提供したウォルターはミュージシャンであるタレクにジャンベを習い始め、二人の間に友情が芽生え始める。ところが突然、タレクが不法滞在を理由に拘束されてしまう。数日後、ウォルターのアパートの扉をたたいたのは、連絡のつかない息子を案じたタレクの母モーナ(ヒアム・アッバス)だった・・・。

ジャンベ奏者のシリア系男性タレクとアクセサリーを作って売るセネガル系女性のゼイナブは、詐欺にあってウォルターの家を貸されたカップルでした。それがわかっても訴えることも出来ず、立ち退かねばならない彼らを見かねてウォルターは共同生活を提案します。

冒頭から他人と関わらず、全てに無気力な様子のウォルターが、タリクたちを受け入れる様には少々違和感があったのですが、いわゆるアメリカ人の寛容さを表すエピソードなのかなぁとも思いました。

ジャンベというアフリカン楽器を通してタリクとの間に静かな友情が芽生えていった矢先、無賃乗車を疑われたあげくに不法移民であることがばれて収監されてしまうタリク。ゼイナブも同じ境遇で、タリクを助けるどころか自分の身も危ういことが判明します。

何とか強制送還を避けるために、弁護士をつけたり面会に行くウォルターの前に、息子の身を案じたモーナが現れます。彼女の世話をしながら必死にタリクを救おうとするウォルターに、以前の無気力さは姿を消しています。美しいモーナとの間に芽生えた淡い想いや、モーナとゼイナブの間に流れる愛しい人を想う者同士の情愛に触れる時、作り手の9.11テロ以降のアメリカの、外国人に対する不寛容さへの鋭い指摘を感じることになります。

努力の甲斐なく、急に国外退去となったタリクを追って、母もまた自らアメリカを去る決意をします。それは同時にウォルターや今までのアメリカでの生活全てを捨てることでもありました。ラストシーンの地下鉄の構内でジャンベを叩くウォルターの姿に、無力さに対する慟哭と無言の抗議を感じました。

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