東京島
2010年10月31日 | 本
桐野夏生/著 新潮社/出版
クルーザーで夫・隆と世界一周旅行に旅立った清子。だが出発からわずか3日目に嵐に遭い、数日間漂流した後に2人が漂着したのは、どことも知れぬ無人島だった。
それから間もなく、与那国島での過酷な労働に耐えかね、島からの脱出を図った23人のフリーターたちが途中で台風に遭い、島に漂着。更には日本への密航途中で金銭トラブルに発展した11人の中国人たちが島に置きざりにされる。
無人島に流れ着いた男たちと1人の女。いつしか「トウキョウ」と呼ばれるようになった島で、唯一の女である清子は性を武器に逞しく生き抜いていくが…。(ウィキより)
映画は好みに合わない気がして観ていなかったけれど、家族が文庫本を買ってきていたので読ませてもらいました。
孤島に流れ着いた夫婦が、後から同じく漂着した若者たちと暮らすようになり、更に島流しにあったらしい中国人まで増えて、いつしか女一人の清子は女王然とした振る舞いをするようになります。貞淑な妻だった平凡な女の豹変に夫はなす術もなく、病を得て後、謎の死を遂げます。
彼らはこの島をトウキョウと呼び、漂着した浜はオダイバ、それぞれの居住区をブクロ・ジュク・シブヤなどと名付けます。
謎の産廃ドラム缶のようなものが置かれている浜「トーカイムラ」には協調性のないワタナベが追いやられていますが、彼は後に一人だけ助けられて島から脱出するのです。
サバイバル能力の乏しい夫や日本の若者に比べ、後から来た中国人グループ「ホンコン」たちは逞しく統率の取れた行動をして更に脱出用のボートまで作り上げます。
船出に偶然遭遇した清子が彼らと行動を共にしたのも本能の成せる業というものでしょうか。
失敗して再び島に流れ着いた清子を待っていたのは彼女の存在を疎ましく思う日本人の憎悪の目。しかし、彼女はめげずに妊娠を武器に生き延びていきます。そして再びホンコンたちに接近し、そこでボートごと漂着していたフィリピンダンサーたちに出会い・・・
物語は清子の視点だけでなく、男たちの視点からも語られていきます。
夫隆の思いは日記という形で、それを盗み読むワタナベや、与那国脱出の際リーダーだったGM、ひ弱な文学青年風だったオラガ、幼い頃に死んだ姉との会話をするため気味悪がられているマンタなど、それぞれのバッググラウンドも含めてその気持ちの変化が綴られています。
さらに最終章では島の内・外という形で清子の生んだ双子のその後が描かれています。
清子が体現していたのは、身勝手さ、残酷さ、薄汚さ、逞しさといった人間の根源的な性でした。
さて、島を出るという望みを捨てた者たちの間に生まれた均衡と平和は永久的なものなのでしょうか?
彼らの数十年後が知りたくもあります。
クルーザーで夫・隆と世界一周旅行に旅立った清子。だが出発からわずか3日目に嵐に遭い、数日間漂流した後に2人が漂着したのは、どことも知れぬ無人島だった。
それから間もなく、与那国島での過酷な労働に耐えかね、島からの脱出を図った23人のフリーターたちが途中で台風に遭い、島に漂着。更には日本への密航途中で金銭トラブルに発展した11人の中国人たちが島に置きざりにされる。
無人島に流れ着いた男たちと1人の女。いつしか「トウキョウ」と呼ばれるようになった島で、唯一の女である清子は性を武器に逞しく生き抜いていくが…。(ウィキより)
映画は好みに合わない気がして観ていなかったけれど、家族が文庫本を買ってきていたので読ませてもらいました。
孤島に流れ着いた夫婦が、後から同じく漂着した若者たちと暮らすようになり、更に島流しにあったらしい中国人まで増えて、いつしか女一人の清子は女王然とした振る舞いをするようになります。貞淑な妻だった平凡な女の豹変に夫はなす術もなく、病を得て後、謎の死を遂げます。
彼らはこの島をトウキョウと呼び、漂着した浜はオダイバ、それぞれの居住区をブクロ・ジュク・シブヤなどと名付けます。
謎の産廃ドラム缶のようなものが置かれている浜「トーカイムラ」には協調性のないワタナベが追いやられていますが、彼は後に一人だけ助けられて島から脱出するのです。
サバイバル能力の乏しい夫や日本の若者に比べ、後から来た中国人グループ「ホンコン」たちは逞しく統率の取れた行動をして更に脱出用のボートまで作り上げます。
船出に偶然遭遇した清子が彼らと行動を共にしたのも本能の成せる業というものでしょうか。
失敗して再び島に流れ着いた清子を待っていたのは彼女の存在を疎ましく思う日本人の憎悪の目。しかし、彼女はめげずに妊娠を武器に生き延びていきます。そして再びホンコンたちに接近し、そこでボートごと漂着していたフィリピンダンサーたちに出会い・・・
物語は清子の視点だけでなく、男たちの視点からも語られていきます。
夫隆の思いは日記という形で、それを盗み読むワタナベや、与那国脱出の際リーダーだったGM、ひ弱な文学青年風だったオラガ、幼い頃に死んだ姉との会話をするため気味悪がられているマンタなど、それぞれのバッググラウンドも含めてその気持ちの変化が綴られています。
さらに最終章では島の内・外という形で清子の生んだ双子のその後が描かれています。
清子が体現していたのは、身勝手さ、残酷さ、薄汚さ、逞しさといった人間の根源的な性でした。
さて、島を出るという望みを捨てた者たちの間に生まれた均衡と平和は永久的なものなのでしょうか?
彼らの数十年後が知りたくもあります。