杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

怪物の木こり

2024年04月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年12月1日公開 118分 PG12

「怪物の木こり」という絵本に出てくる怪物の仮面を被った犯人が斧で相手の頭を割り、脳を奪い去るという連続猟奇殺人事件が発生。犯人は次のターゲットに弁護士の二宮彰(亀梨和也)を定めた。しかし二宮の本性は、犯人をも上回るほどの冷血非情なサイコパスだった。犯人はなぜ脳を奪い、なぜ二宮を標的にしたのか。事件の捜査が進められるなかで、警視庁の天才プロファイラー・戸城(菜々緒)、二宮の婚約者の映美(吉岡里帆)、二宮の協力者で自身もまたサイコパスの外科医・杉谷(染谷将太)、そして過去の殺人事件の容疑者・剣持(中村獅童)ら、さまざまな人物の思惑が複雑に絡み合い、事態は次第に混迷していく。(映画.comより)


2019年第17回『このミステリーがすごい!』大賞受賞の『怪物の木こり』(倉井眉介/宝島社文庫を三池崇史監督のメガホンで実写映画化したサイコスリラーです

二宮は、マンション地下駐車場で 怪物のマスクを被った男に襲われ、頭部を手斧でかち割られそうになりながらも九死に一生を得ます。男を探し出し必ず殺してやると決意する二宮自身がサイコパスなんですね。
一方、殺害し脳を持ち去る「脳泥棒」の猟奇事件が連続して起こり、捜査一課とプロファイラーの戸城嵐子たちが捜査する中で、26年前に起きた「 東間事件」が関係していることが浮かび上がります。戸城と組む乾刑事(渋川清彦)は暴力行為で更迭された粘着妄執型のサイコパスとして描かれています。

26年前に静岡県で起きた児童連続誘拐殺人事件で、脳神経医だった東間 翠が誘拐した子どもたちに脳チップを埋め込む人体実験を行い、屋敷からは手術に耐えられなかった幼児15人の遺体が見つかり、翠は自殺していました。その目的は、サイコパスの子どもを生み出して児童養護施設に送り込み、観察することでした。東間夫妻の息子がサイコパスだったのが動機のようですが、どう繋がるのか理解できませんでした😆 

頭部を怪我した二宮は、手当をした医師から頭に脳チップが埋められていることを指摘されます。この時点で彼はその事実を知りませんでした。
それまでは殺人に罪悪感を持たず他人に共感することも出来なかった彼に変化が生じます。虐待されていた子どもを見て動揺したり、利害関係だけの婚約者に対して温かな感情が芽生え始めたり・・・サイコパス仲間のる脳神経外科医・杉谷九朗は、彼の脳のCT画像を見て脳チップが怪我により損傷したことが原因と指摘します。二宮は
東間の被害者だったのです。チップが機能しなくなったことで彼は共感能力を取り戻しつつありました。

一方、被害者全員が児童養護施設出身で性格や行動に問題があったこと、被害者の一人に脳チップが埋め込まれていた事実を突き止めた警察は、脳泥棒の狙いが脳チップで、被害者たちは「東間事件」で誘拐された子供たちだと考えます。

「脳泥棒」と「東間事件」が繋がっていると気付いた二宮に、拉致された映美の画像が貼付されたメールが送られてきます。
杉谷に助けを求めようとした二宮ですが、あることに気付いて『怪物の木こり』の絵本を取り出します。その中の一節に目を留めた彼は「脳泥棒」の正体に気づくのです。

ここからネタバレ



脳泥棒の正体は、東間事件で最初に誘拐された剣持武士でした。映画の冒頭で警察が踏み込んだ際、翠の前で『怪物の木こり』の絵本を読んでいた少年が彼なのね。剣持は妻を保険金目当てで殺害した元容疑者で、その事件を担当していたのが乾刑事です。乾は剱持の容疑が晴れた後もずっと監視していて、妻の父親に暴力を振るう現場を目撃した乾に殴られた拍子に脳チップが破損していたのです。倫理観が戻った剣持は、自分に尽くしてくれた妻さえも殺したことに罪悪感を抱くようになります。自分の存在を憎んだ彼の復讐の矛先は、同じ境遇にある他の東間事件の被害者に向けられたのでした。

東間の屋敷に呼び出された二宮は剣持と対決します。剣持が罪のない映美を殺さないと確信した二宮は逆に彼女を人質に取るのです。この時、映美は二宮が父親を殺害したことを知りショックを受けます。
格闘の末、剣持を倒した二宮は彼に「人間に戻って良かったと思うのか」と尋ねます。剣持は、 幸せの意味を知ったが同時に絶望を感じたと答えます。
事件当時、武士は同じように攫われていた彰を助けようとしていました。彼の最期の言葉も「あの時助けられなくてごめん」でした。

戸城が現場に駆け付けた時には二宮と映美の姿はなく、剣持は燃え盛る炎に包まれていました。
その翌日、二宮と面会した戸城は必ず罪を暴くと告げます。

脳チップの修復手術を予定していた二宮でしたが、剣持の言葉に気持ちに変化が生じます。例え罪悪感に苛まれたとしても幸せを恐れないと決意した彼は怪物に戻らない=手術はしないと杉谷に告げます。

杉谷は脳チップを埋め込まれていませんが、彼こそ真のサイコパスです。
彼の善悪の基準は楽しいか楽しくないかで、そのための殺人も平気です。二宮とは同じサイコパスの仲間として関心を持っていましたが、普通(の人間)に戻る彼には興味がないようです。二宮との会話(電話)の後、彼はまた猫を捕まえて・・・眼力の強い二宮や人相の悪い剣持より、一見温厚そうに見える杉谷が一番怖いかも😱 

映美を救い出し、人間に戻ろうとしていた二宮でしたが、真実を知った彼女は「絶対許さない」と二宮を刺します。二宮は映美の首を絞めて「正当防衛」の証拠を作ってから彼女に警察に行くよう命じると静かに息を引き取ります。

サイコパスだった二宮が人間性に目覚めた後に起こる悲劇はしかし、彼にとって救いになったのかもしれないな~~と感じました。

三池崇史らしいバイオレンス描写ですが、血が噴き出るシーンはどこか劇画的で現実感がなく怖さもあまり感じずに鑑賞できました。😁

『怪物の木こり』は童話で、木こりの姿をした怪物が人を襲って食べる話です。これって童話と言えるのか??😓 
村人を襲って食べても誰も彼の仕業と気づかないのですが、ある日親友を殺してしまった木こりは誰も話す人がいなくなり途方に暮れます。そこで彼は新しい村に移っては赤ん坊を自分と同じ異形に作り変えて仲間を増やしていきました。これで寂しくない。めでたしめでたし???
挿絵もおどろおどろしくてこれ、現実に売ってたら怖いぞ😵 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロスト・フライト

2024年04月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年11月23日公開 アメリカ 107分 PG12

東京を経由しシンガポールからホノルルへ、新年早々悪天候が予想される中、会社の指示で難しいフライトに臨むトランス機長(ジェラルド・バトラー)は、ホノルルの地で離れて暮らす愛娘との久々の再開を待ち焦がれていた。しかし、離陸直前に移送中の身の犯罪者・ガスパール(マイク・コルター)の搭乗が告げられ、悪天候だけでなく予定外のフライトに暗雲が立ち込めていた。
かつては大手航空会社に在籍していた実力派パイロットのトランス。順調なフライトを迎えたかに思えたが、フィリピン沖上空で、突如激しい嵐と落雷に巻き込まれ機体の電気系統が機能を停止。通信も途絶えコントロールを失ったトレイルブレイザー119便に、トランスは意を決し着水の準備に入るも、寸前で目の前に広がった孤島へ奇跡的に不時着した。一命をとりとめたトランス機長を含む乗客17名だったが、そこは凶暴な反政府ゲリラが支配する世界最悪の無法地帯・ホロ島だった。
トランスは、通信機が途絶えた飛行機と乗客を残し、島からの脱出の手がかりを求め、犯罪者のガスパールと共に探索に向かう。危険な雰囲気が立ち込める廃倉庫で見つけた電話を配線し、なんとか娘を介して現在地を知らせることに成功するが、その隙に迫ったゲリラたちによって、乗客と乗務員が人質に取られてしまう最悪の展開に。
一方、消息不明となった119便の事態を重く見たトレイルブレイザー社は、外部から元軍人の危機管理担当者として腕利きのスカースデイル(トニー・ゴールドウィン)を招集。トランスの決死の報せを受けたスカースデイルは、対策室の反対を押し切り乗客の救出へ傭兵チームを派遣する。
刻々と危険が迫る囚われた乗客たちの身を危ぶみ、トランスは救助を待たず、元傭兵の過去を持つ犯罪者であるガスパールと手を組むことを決意。難攻不落のゲリラ拠点へたった二人で乗客の救出に向かう。生死を懸けた究極の脱出サバイバル、トランスとガスパール、そして乗客たちの行方は・・・。(公式HPより)


元MI6の経歴を持つスパイ小説家チャールズ・カミングの脚本をもとに、ジャン=フランソワ・リシェ監督による、ゲリラ組織が支配する島に不時着した飛行機の機長が、犯罪者と手を組みながら窮地を乗り越えていく姿を描いたサバイバルアクション作品です。

ジェリーが乗客を守る機長の責務を全うしようと奮闘するトランス役を演じています。
不安定な天候の中を進路を変えずに行けという無茶ぶりに早くもトラブルを予感させられ、離陸直前には殺人犯の護送という突発事態も発生。こりゃ~フライト中に殺人犯が暴れるのかと思いきや、飛行機が落雷の直撃で電源を消失して墜落寸前に。
機長の的確な判断と腕で何とか陸地に不時着したものの、そこは反政府ゲリラが支配する島だったという、一難去ってまた一難です。😖 

島の偵察を試みた機長は、殺人犯の男ガスパールの手錠を外して同行させます。ちなみに乱気流の中、シートベルトを外していた護送警官と彼を止めようとしたCAが投げ出されて死亡しています。

廃墟で電話を見つけて何とか会社に連絡することに成功しますが、悪戯電話と間違えられ切られてしまうのね。なんかありそうな話だな。次に娘と電話が繋がるのですが、そこにゲリラが現れ格闘になります。機長を助けたのは途中で姿を消していたガスパールです。彼は元軍人でめっちゃ腕が立つの😁 (過去に犯した殺人も社会が悪い、みたいな😓

ゲリラが乗客を人質に身代金を要求すると知って急いで飛行機に戻ろうとしますが、ゲリラの方が先に乗客たちを捕まえてしまいます。
残っていたゲリラを倒して乗客たちが連れて行かれた村を聞き出し、操縦席にメッセージを残して村に向かった二人。乗客たちを救出しバスに乗せますが、村にはゲリラがうようよ。機長はゲリラと交渉しようとしますが、殺されそうになったところを傭兵チームが駆けつけて何とか飛行機に戻ることができました。フィリピン政府による救出部隊が到着するのは24時間後で絶体絶命の中、機長は飛行機を飛ばす決断をします。(副操縦士のデレ(ヨソン・アン)が電気系統を直していました。)

追ってきたゲリラとの激しい銃撃戦の中、傭兵たちと乗客乗員は機内に乗り込みます。ガスパールは初めから一緒に行く気はなく、傭兵が持っていたお金(救出のための資金)と武器を頂戴してどさくさに紛れて消えます。
大人しく一緒に帰れば恩赦があるんじゃないかと思うんだけどな~~😥 

被弾しながらも操縦桿を握り、立ち塞がるゲリラのボスを車もろとも吹き飛ばして飛行機は空へ。
エンジンが片方しか使えないとか翼の一部が飛んじゃうとか、扉が開けっぱとかの状況の中、それでも安全な飛行場に奇跡的に着陸するんですね。😀 

机上の理論に拘り自分の責任回避しか考えない航空会社?の人間の指示を無視して救出部隊を派遣し、島からの脱出をサポートするスカースデイルも良かった😊

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オペレーション・フォーチュン

2024年04月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年10月13日公開 イギリス=アメリカ 114分 G

英国諜報局MI6御用達の敏腕エージェント、オーソン・フォーチュン(ジェイソン・ステイサム)は、100億ドルで闇取引されている「ハンドル」と呼ばれる危険な兵器をを追跡・回収するミッションを遂行することに。MI6のコーディネーターであるネイサン()、毒舌の天才ハッカーのサラ(オーブリー・プラザ)、新米スナイパーのJJ(バグジー・マローン)とチームを組んで行動をスタートさせたフォーチュンは、能天気なハリウッドスターのダニー()を無理矢理任務に巻き込み、億万長者の武器商人グレッグ(ヒュー・グラント)に接近する。しかし、次第に闇取引の裏に隠された巨大な陰謀が明らかになっていく。(映画.comより)


ガイ・リッチー監督とジェイソン・ステイサムが5度目のタッグを組んだスパイアクションです。




とある研究施設が襲撃され、ハンドルと呼ばれる謎の兵器が強奪されます。MI6の長官のナイトンは、コーディネーターのネイサンにハンドル回収の極秘指令を出します。ハンドルはブラックマーケットで100億ドルの値が付けられ、世界中の犯罪組織が狙っています。ネイサンは危険なこの任務を盟友で潜入捜査のプロのオーソン・フォーチュンに依頼します。任務と称しプライベートジェットや超高級ワインを要求するフォーチュンは英国政府に嫌われていますがこの任務を遂行できるのは彼しかいません。

モロッコで休暇中のフォーチュンを強引に引き入れ、毒舌ハッカーのサラとフォーチュンを崇拝する新人スナイパーのJJを加えたチームは、マドリードに飛んで空港でハードディスクを手に入れますが、そこにライバルのマイク率いる別動隊に横取りされてしまいます。でもサラがディスクのコピーを取っていて、悪名高い武器商人のグレッグがハンドルの仲介をしていることが判明します。

グレッグがカンヌで船上パーティを開催することを知ったフォーチュンは、まずLAに飛んでグレッグが熱烈なファンであるハリウッドスターのダニー・フランチェスコ(ジョシュ・ハートネット)を脅して仲間に引き入れます。

ダニーのマネージャーと恋人を名乗ってパーティに乗り込んだフォーチュンとサラは、グレッグの気を引くことに成功します。
グレッグの仲介相手がウクライナのマフィアだと突き止めたフォーチュンは、二手に分かれての作戦を実行します。

トルコのグレッグの別荘に招待されたダニーとサラは、ダニーがグレッグとドライブに出かけている間にサラがグレッグのPCから情報を引き出します。一方フォーチュンはグレッグの弁護士ベン・ハリスになりすまして取引現場にへ向かいます。

しかし、サラの行動がバレ、フォーチュンも正体を知られてしまいます。JJの援護で窮地を脱したものの、マイクが現れ取引相手を皆殺しにしてハンドルを奪っていきます。車で逃げるサラとダニーを追うグレッグの手下との銃撃戦も見せ場です。😀 

ハンドルが世界中のどんなセキュリティも突破する高度AIだとわかります。
仲介金を手にすることができなくなったグレッグにフォーチュンが協力をもちかけます。グレッグはハンドルを売る相手が大富豪のトレントとアーノルドだと告白します。2人はハンドルで金融崩壊を起こすことを企んでいました。

トレントとアーノルドのタワーでは、マイクが奪ったハンドルを2人に引き渡そうとしていました。そこへダニーを伴ったグレッグが現れ、爆発で彼の力を見せつけて「手数料が払われなければお前らの愛する人々を排除する」と脅してその場を離れます。フォーチュンとJJが次々敵を倒していく中、手数料を巡って仲間割れが起き、トレントとアーノルドは殺され、到着したフォーチュンによりマイクも倒され、ハンドルはフォーチュンにより回収されます。

任務が終了し、ドーハにいたフォーチュンたちに、ネイサンは新たな任務をオファーしますがあっさり断られます。
フォーチュンはウクライナ人から奪った現金や宝石を、ダニー出演の映画に投資していました。
ダニーの役はグレッグがモデルのような風変りな億万長者です。グレッグ自らもプロデューサーとして名を連ねています。グレッグがトレントたちのタワーで見せたあの爆破シーンを彷彿とさせるダニーの演技を満足気に見つめるフォーチュンなのでした。😁 

専用ジェットの機内やホテルやレストランでバカ高いワインを楽しむフォーチュン役を楽し気に演じるステイサム😍 コメディタッチですが派手な銃撃戦や肉弾戦もありアクションも楽しめました。😀 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エリザベート 1878

2024年04月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年8月25日公開 オーストリア・ルクセンブルク・ドイツ・フランス  114分 PG12

ヨーロッパ宮廷一の美貌と謳われたオーストリア皇妃エリザベート(ビッキー・クリープス)。1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えた彼女は、コルセットをきつく締め、世間のイメージを維持するために奮闘するも、厳格で形式的な公務にますます窮屈さを覚えていく。人生に対する情熱や知識への渇望、若き日々のような刺激を求めて、イングランドやバイエルンを旅し、かつての恋人や古い友人を訪ねる中、誇張された自身のイメージに反抗し、プライドを取り戻すために思いついたある計画とは——。(公式HPより)


ヨーロッパ宮廷一の美貌と称されたエリザベートの40歳の1年間にスポットを当て、若さや美しさという基準のみで存在価値を測られてきた彼女の知られざる素顔を大胆な解釈で描き出す。(映画.comより)

エリザベートはバイエルン王国ミュンヘンで、バイエルン公マクシミリアンと王女ルドヴィカの次女として生まれ、16歳でオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフに見初められ結婚しましたが、自由奔放な性格でウィーン宮廷の伝統と格式を重んじる生活と合わず息苦しさを感じていたようです。

映画はウエストを締め上げるシーンから始まりますが、体重の増減が新聞記事になるほど常に国民の関心を集めていたことがその理由だったわけね。

40歳を迎えたエリザベートは美貌の衰えを気にして苛立っています。夫のヨーゼフ(フロリアン・タイヒトマイスター )は、彼女に〝象徴〟としての美しさだけを求めています。政治に口を挟まず黙って従っていればよいという夫に彼女は不満を抱いています。それでも無意識に象徴としての美の衰えを気にするあたりは矛盾していますが、女性として共感もあります。

記念式典の大臣たちの挨拶にうんざりしたエリザベートは気絶した振りをして退出します。宮殿に戻った彼女が滞在中のいとこルードヴィヒ2世(マヌエル・ルバイ )にその様子を可笑し気に話している親密な雰囲気に夫のフランツはやきもきします。

誕生日直前に旅行に行きたいと言い出したエリザベートは侍女イーダ(ジャンヌ・ヴェルナー)にたしなめられます。部屋に入ってきた娘のヴァレリーにハンガリー語で話すよう命じ、体型維持に余念がない様子。
40歳の誕生祝賀晩餐会では、周囲に促され嫌々ケーキのろうそくを吹き消します。ここまでのエピソードはどれをとっても我儘にしか見えませんね😝 

彼女が唯一自ら続けているのは精神病院の慰問ですスミレの砂糖漬け菓子を患者たちに配り、院長に温浴療法を取り入れるよう勧めます。あれ?ただの我儘皇妃じゃなさそう😜 

と思ったら・・・寝付けない彼女は、娘を無理やり起こして服を着せ嫌がる娘を乗馬に連れ出します。案の定高熱を出してしまった娘を見て、フランツは身体の弱い子に気まぐれで無理をさせたと叱責します。彼らは当時2歳の長女ゾフィーを亡くしていました。父親としてはもっともな怒りだと思うなぁ。😔 
夕食は別にとり早く寝てしまった夫に怒ったエリザベートは息子ルドルフ(アーロン・フリース )と早めに旅行に出かけてしまいます。娘は置いていくよう言われた。これもまぁ仕方ない気がするけど😔 

エリザベート一行はイングランド・ノースハンプシャーのスペンサー家のマナーハウスに滞在し、妹で両シチリア王妃マリー(リリー・マリー・チェルトナー)からフランスの発明家のルイ・ル・プランス(フィネガン・オールドフィールド )を紹介され、動画撮影に応じて大いにはしゃぎます。
馬術家のベイ・ミドルトン(コリン・モーガン )と親し気に振る舞うエリザベートに、ルドルフが苦言を呈します。ベイが自分に夢中だと確認はしても受け容れることはしないのは自分の立場を一応は自覚しているということかしらん😧 
ひとりで遠乗りに出かけて落馬したエリザベートは愛馬の死(脚が折れた馬は苦しまないよう殺されます)に悲しみ憤り早々にオーストリアに戻ります。

落馬事故について気遣う夫と愛し合おうとしますが体を重ねるまでには至らず終わります。慰めを受けたくても感情がかみ合わない二人なのね。

シェーンブルン宮殿でイーダを無理矢理乗せて乗馬を楽しんでいる時、フランツが若い女性とふたりで歩いているのを目撃したエリザベートは、侍女フィニの服を借りてお忍びで市場へ出かけ、夫と歩いていた女性アンナと会話をします。

肖像画のポーズを取っていたエリザベーは、喫煙をフランツに見とがめられてしまいます。動画に興味のない画家と話しが合わず、若い頃の肖像画を模写するよう命じます。

公務のためウィーンを離れることになったルドルフは、父との考え方の違いに悩んでいて、自分は母親似だとエリザベートに打ち明けます。エリザベートも離れるのが寂しいと訴えます。
息子が母似なら娘は父似・・というか父を慕っている娘は母を批判的な目で見るようになっていきます。この構図、ある意味不変ですね😁 

フェンシングでフランツに手加減されて怒ったエリザベートは、ハンガリーについて意見をしてフランツを怒らせます。彼は彼女が政治に口を出さずにただ美しい皇后としていることにのみ価値を認めているのです。
感情の昂ぶったエリザベートは窓から身を投げますが、幸い足の怪我だけで済みました。しかしフランツは医者は呼びましたが見舞いにはきませんでした。喧嘩したとはいえどっちもどっちな対応だな。夫婦関係冷え切ってる?

怪我の療養でルードヴィヒ2世(バイエルン王)の別荘に滞在したエリザベートは、シュタルンベルク湖で船に乗ったり、夜はふたりでダンスや湖でシンクロのように踊って楽しい時間を過ごします。でも同性愛者の彼はエリザベートを受け容れることができませんでした。翌朝、彼は「湖で死ぬなよ、俺の湖だから」と声をかけます。気の合ういとこへの彼なりの気遣いの言葉ですね。😊 

バイエルンから戻る馬車の中で、侍女のマリー(カタリーナ・ローレンツ )が結婚を申し込まれていると話すとエリザベートは許可しないと答えます。長年仕え自分を理解してくれる者を手放すことができないわけですね。年増のマリーにとっては結婚の最後のチャンスだったのに😫 

ヴァレリーを連れて戦闘で負傷した兵士が入院する病院へ慰問にやってきたエリザベートはタバコが欲しいと訴えた兵士に自分のタバコを与え、自らも彼の隣に寝て喫いました。母の行動にヴァレリーは不快感を顕わにします。
病院を慰問したエリザベートを労うフランツでしたが、彼女の政治的発言に激昂し、テーブルを叩きます。彼女もテーブルを叩き返しました。

精神病院を訪れた彼女は、自分が提案した温浴療法が取り入れられているのを見学します。医師から医療行為としてヘロインを勧められ、(もう40歳だから)健康に気を遣うよう進言された彼女は舌を出します。この時代、ヘロインは「良薬」なわけですね。

ヘロイン注射とタバコの本数が増えていくエリザベートは、マリーを影武者に仕立てて行事に参加させます。食事を抜きコルセットで締め上げられベールで顔を覆って代わりを務めたマリーは戻るなり嘔吐し、エリザベートは急いでコルセットを緩めさせるのでした。エリザベートがそれほどに過激なダイエットと矯正をしていたという証拠でもあるのですね。

ある日、自慢の長い髪を自ら切ってしまったエリザベートに髪の手入れを専属でしていたフィニは号泣しますが、マリーは冷静に髪を拾い集め鬘を作るよう手配をします。エリザベートの姿に驚いたヴァレリーをバスタブで抱きしめ、寝室にやってきたフランツと愛し合うエリザベートでしたが、後日
アンナを呼び出した彼女は、皇帝の愛人になって自分の代わりに優しくしてほしいと穏やかに語ります。

マリーの影武者役は続き、エリザベートが左肩に錨のタトゥーを入れるとマリーにも同じものを入れさせます。

エリザベートは侍女のマリー、イーダ、フィニと大きな船で海に出ます。黒いドレスに小さなブーケを持ち甲板で海を見つめる4人はまるで葬儀のよう。ひとり舳先に向かって歩いていったエリザベートはそのまま海に身を投じるのでした。

オーストリア=ハンガリー二重帝国などの歴史&政治背景はよくわからないまま観てしまいましたが、自由な心を持ち先進的な考えのエリザベートにとって厳格な宮廷での暮らしはさぞかし窮屈だったろうとは想像できます。現代のように男女対等ではなく、皇帝&国民のお飾りとしての価値しか認められていないのですから尚更です。
でも映画で描かれる母としての姿はあまり褒められたものではないな😓 

映画のラストは史実とは大きく異なるようです。(暗殺されたらしい)
エリザベートがバスタブに浸かったり、湖で泳いだりといった水のシーンが度々登場するのは、彼女が水の中にいる時だけ本来の自分でいられたということのようです。海に還ることで彼女は自由になったのでしょうか。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オペレーション・ゴールド

2024年04月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
 2023年10月27日公開 アメリカ 92分

バックリー(ジョン・トラボルタ)は史上最大規模とも言われる犯罪帝国を築いたアメリカの麻薬王。イアン・スワン(ブルース・ウィリス)は数百万ドル級の獲物ばかりを狙う賞金稼ぎ。イアンはバックリーを10年追い続け、ついにハワイの人気のないビーチで追い詰める。しかし、バックリーの子分たちが現れて銃撃戦に。イアンは撃たれて海に沈んだ。その日から、イアンの息子で賞金稼ぎのライアン・スワン(ブレイク・ジェンナー)、イアンの元相棒ロビー(スティーブン・ドーフ)は手を組みバックリーを探すことに。一方、昏睡から目覚めたイアンは、危険を承知で最後の大仕事に打って出る。それは、イアンとバックリーにとっては避けては通れない真っ向う対決の時だった…。(公式HPより)


ジョン・トラボルタとブルース・ウィリスの29年ぶりの共演となったアクション作品です。

冒頭でいきなりイアン=ブルース・ウィリス退場ですか?😮 いやいや、そんなわけあるか!と思ったら案の定・・・😁 

父を探しにハワイにやってきた息子のライアン(彼も賞金稼ぎ)は、父の元相棒のロビーと接触します。
2人は、イアンが追っていた相手は最高額の賞金がかけられている麻薬の売人テランス・ビルフォードと当たりをつけます。警官と家族の殺害及び麻薬取引で捕まったものの、保釈金1000万ドルを現金で払って釈放された後に逃亡した彼の目撃情報は途絶えていました。

懸賞金の山分けを条件に手を組んだライアンとロビーは、手掛かりを求めてイアンの車に残されていた名刺に書かれていたホテルに向かいます。
ホテルでは、ハワイの次期上院議員トーマス・カネの政治資金パーティーの最中。支援者のバックリーも息子のアーンを連れて出席していました。

2人はイアンが泊まっていた客室でベッドに隠していたテランスの写真を発見します。直後に何者かに襲われ、ロビーは拉致され、ライアンは犯人としてマウイ警察に捕まりますがバックリーが正当防衛としてライアンを釈放させ、帰国を促します。

ライアンに声をかけてきたのは刑事のサバンナ(プライヤー・スワンドクマイ )です。事件の捜査から外され捜査自体が止まったことに怒った彼女は彼らに協力することにします。

サバンナは2人を「リップタイド・クラブ」に連れて行き、友人ニッキーとその仲間たちからバックリーの悪行を聞きます。彼はハワイの聖なる山の採掘計画のために先住民を買収し、邪魔者は失踪扱いにして始末していました。

ライアンはサバンナに父が撃たれた場所に連れて行ってもらいます。水中から発見されたイアンの携帯電話のデータ復旧に成功し、父の最期が映った動画を見て、やはり父は助からなかったと感じますが、サバンナはこのビーチに鮫はいないと異を唱えます。(遺体は鮫に食われていました)

その頃、バックリーの豪邸に軟禁されていたロビーは、彼に選挙に出馬しない理由を尋ねます。バックリーは長年ここで暮らしていても所詮先住民からすれば自分は旅行者で植民者だからと答えます。つまり地元民のカネのバックにいることで利益のおこぼれを目論んでいるわけね。
バックリーの資金元はテランスの麻薬カルテルではないかと探りを入れたロビーに、バックリーはネタ元を吐かせようと部下に拷問を指示します。

サバンナは故郷の先住民が暮らすパリウリ村「パラダイス・シティ」にライアンを連れて行きます。(この村の先住民たちだけが、バックリーからのお金を拒んで抵抗していました。)そこには死んだはずの父イアンがいました。瀕死のイアンを救ったのは彼らで、ライアンが見た遺体は偽装だったのです。

イアンは、復旧した自分の携帯電話に入れていたテランスがバックリーの顔に整形した写真を見せ、あの日の出来事を話します。バックリーを捕らえ証拠も押さえたイアンでしたが、隙をつかれてテランスに撃たれたのです。これで冒頭のシーンと繋がったぞ😀 

島の資源を掘り尽くし、マウイを国際的麻薬売買の拠点にしようとしているとイアンは話します。そこにニッキーからロビーが捕まっている場所の情報がもたらされ、3人は救出に向かいますが、村を出た直後にテランスの部下たちにより村が襲撃され焼き払われてしまいます。

ニッキーたちと協力してカネの支援者たちとの祝賀会場であるテランスの屋敷に侵入したライアンは、コア・カハリの協力を得てイアンと共に地下に囚われていたロビーを救出します。実はイアンの妻がかつてロビーと不倫したことで2人は仲違いしていたため不穏なムードに😫 

屋敷の敷地内で繰り広げられる派手な銃撃戦が見所かも。息子と部下を伴って屋敷から逃走したテランスをライアン&コアが追いかけますがコアが撃たれてしまいます。そこにイアンが追い付くと、アーンにテランスが母を殺したことを暴露します。ショックを受けたアーンは逃げて駆けつけたサバンナとロビーに保護されます。

テランスの銃弾を受けたイアンに駆け寄るライアン。一人で船で逃げようとしたテランスをイアンは撃つことができず代わりにエンジンを狙って船を爆破します。父から護身術として銃の扱い方を教わっていたライアンですが実は銃が苦手なのね。
船から飛び降りていたテランスでしたが、岸で警察に捕まります。

後日。パラダイス・シティで村を守ってくれた呪術師のチャーリーとコア、イアンの葬儀が執り行われます。ライアンが寄付した懸賞金のおかげで村を再建できると感謝されます。(1割は自分の資金として取り置いてますけどね。)
サバンナにこれからも友達だよな?と言うライアンにそんなの退屈と答えてキスするサバンナでした。💛

あれ?結局イアンは死んじゃうのね😓
警察が権力者に牛耳られていて当てにならない中、賞金稼ぎが悪人をやっつける展開はちょっと新鮮。バックリーの正体もわかってみればなるほどです。でも悪人の彼も息子のことは愛してる点は唯一人間臭かったかも。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

春に散る

2024年04月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年8月25日公開 133分 G

40年ぶりに故郷の地を踏んだ、元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)。引退を決めたアメリカで事業を興し成功を収めたが、不完全燃焼の心を抱えて突然帰国したのだ。かつて所属したジムを訪れ、かつて広岡に恋心を抱き、今は亡き父から会長の座を継いだ令子(山口智子)に挨拶した広岡は、今はすっかり落ちぶれたという二人の仲間に会いに行く。そんな広岡の前に不公平な判定負けに怒り、一度はボクシングをやめた黒木翔吾(横浜流星)が現れ、広岡の指導を受けたいと懇願する。そこへ広岡の姪の佳菜子(橋本環奈)も加わり不思議な共同生活が始まった。やがて翔吾をチャンピオンにするという広岡の情熱は、翔吾はもちろん一度は夢を諦めた周りの人々を巻き込んでいく。果たして、それぞれが命をかけて始めた新たな人生の行方は——?(公式HPより)


沢木耕太郎の同名小説の映画化で、ボクシングに命をかける男たちの生き様を描いた人間ドラマです。監督は「ラーゲリより愛を込めて」「護られなかった者たちへ」の瀬々敬久です。
窪田君が出演しているので劇場で観ようかと思っていましたが、どうも格闘技は苦手でDVD待ちしました。😓 

広岡が帰国したのは病を得て望郷の念にかられたということでしょうか。
居酒屋で酔って騒いでいる若者たちに絡まれた広岡が鮮やかなパンチで倒す姿を目撃した翔吾は、彼と拳を交わして人生初のダウンを奪われたことで、ボクシングを教わりたいと懇願しますが断られます。

広岡はかつて所属したボクシングジムの会長を継いでいる令子に挨拶に行き、旧友の佐瀬(片岡鶴太郎)と藤原(哀川翔)の消息を尋ねて会いにいきます。懐かしさのあまり一緒に住まないかと提案しますが断られます。😓 

諦めきれずに家まで押し掛けてきた翔吾に佐瀬が課題を出して助け舟を出します。見事それをクリアした翔吾は、指導を受けることになり、一緒に暮らし始めます。実は母親思いの彼は、母を守るためにボクシングを始めています。この母親は男運が悪いようで、暴力を受けたりしているのですが、それを知った翔吾が相手をぶちのめして警察沙汰になって危うく試合できなくなりかけたりもしています。😞 

医師から手術を勧められるも、先延ばしにして様子見を選んだ広岡。死亡の危険もある難手術に怖気づいたのは、翔吾を育てるための時間が欲しいと思ったからでもあるのかな。

令子のジムに翔吾を入れてもらおうとしますが、スパーリング相手の大塚(坂東龍汰)を倒してしまったことで断られ、伝手を頼って無名の山の手ジムに入れます。(そこは子供たちに教えるようないわゆる町のジムなんですね。)佐瀬もこのジムで教えるようになります。

広岡は翔吾に激しいトレーニングを課しテボクシングを一から叩き込みます。兄の死を姪の佳菜子(橋本環奈)に知らせてもらった事で、彼女も広岡の家で暮らすようになります。

ある日、大塚と戦って勝った方がチャンピオンの中西利男(窪田正孝)と戦う権利を得るという提案を受けた広岡は、当て馬だと反対しますが、翔吾の熱意に負けてOKします。
藤原が指導する大塚との試合は、接戦の末に翔吾が勝利するのですが、目に異常が出ます。このままでは失明する危険があると反対する広岡ですが、翔吾は戦いたいと納得しません。藤原は成功者である広岡に反発していますが、中西との試合では翔吾を応援していました。😁 

年越しの夜、広岡が倒れ病院に運ばれたことで、皆は初めて彼に手術が必要なことを知ります。広岡を父のように思っている翔吾は生きていて欲しいと泣きます。その思いを理解した広岡は試合を認めることにします。

翔吾と中西の試合は激戦となり、最終ラウンドまでもつれ込みます。翔吾の右目は腫れあがり見えていません。タオルを投げるよう勧める佐瀬に首を振り広岡は試合を見守ります。結果判定となり翔吾が勝利します。

それまでの中西はふてぶてしい所作が目に付き、翔吾をライバルと見なしていませんでしたが試合を通して彼を認めていくのが伝わってきます。試合後は互いに健闘を称え合う二人の姿が良かった💛

息子が右目の視力を喪ったことを知った母・和美(坂井真紀)に責められ広岡はただ頭を下げることしか出来ません。翔吾は和美に、仁一は悪くないと言いました。病院を出た広岡は待っていた令子に「桜を見に行ってきます」と声をかけその場を離れました。翌朝、満開の桜の木の下で(心臓発作に襲われ)亡くなっているのが発見されます。

半年後。佳菜子と暮らす翔吾は新しいスーツを着て新しい仕事を始めようとしています。仕事へ向かう途中の土手で足を止めた翔吾、広岡とトレーニングで走った場所で彼は改めて生きていくことを誓うのでした。

ボクシングシーンはやっぱりかなり迫力があって観ていて切なくなりました。これを大スクリーンではやっぱり辛い😵 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小さき麦の花

2024年04月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年2月10日公開 中国 133分 G

2011年、中国西北地方の農村。
貧しい農民ヨウティエ(有鉄)は、マー(馬)家の四男。
両親とふたりの兄は他界し、今は三男・ヨウトン(有銅)の家に暮らしているが、息子の結婚を心配するヨウトン夫婦にとって、ヨウティエは家族の厄介者。一方、内気で体に障がいがあるクイイン(貴英)もまた厄介者だった。互いに家族から厄介払いされるかのように、ふたりは見合い結婚、夫婦になった。 
ぎこちなく、それでも互いを思いやり、作物を育て、日々を重ねていくふたり。ヨウティエのことをいつも気にかけるクイイン。そんな彼女の気持ちに愛おしさを覚えるヨウティエ。ある日、家を建てるためにヨウティエが作ったたくさんの日干しレンガが突然の大雨に襲われる。そんな不運さえもふたりには大切な日々となる。 クイインは初めて会ったその日からヨウティエの優しさに気付いていたと話す。
ロバと、ヨウティエと、クイインと。力を合わせ、毎日懸命に働き、ついに自分の家をもった。だが、その幸福は長くは続かなかった——。(公式HPより)


家族に厄介払いされるように見合い結婚した二人でしたが、互いを慈しんで力を合わせて慎ましく日々を生きる姿が描かれます。

冒頭の場面では、互いの家族に言われるがままの二人には意志や感情が見受けられず、その背景もよくわかりません。
しかし結婚後の二人は徐々に自分の言葉で自分のことを話し始めます。
ヨウティエは内気で優しい性格のために、クイインは体の障害のために、これまで家族から虐げられ人格を否定され続けてきたことがわかってきます。そもそもクイインは医者にも診てもらっていないようです。初め彼女は知恵遅れなのかと思ったのですが、そうではなく逆にしっかりした考えを持つ女性だとわかります。二人ともおそらくはろくな教育も受けることがなく育っていて、その日を生きる事で精一杯だったのでしょう。

離村する者も多い貧しい村には空き家も多く、その一つをあてがわれて新婚生活を始めた二人ですが、農村改革で空き家を解体した者にお金が入ることになって、出稼ぎに出ていた村人の空き家に住んでいた二人は追い出されてしまいます。 別の空家に移ってもその繰り返しで、二人は自分たちで土をこねてレンガを作り自分たちの家を作り始めます。

病気になり輸血が必要な豪農の当主がRH-の血液を持つ ヨウティエに輸血を頼むのですが、相応の報酬を払うわけではなく輸血が終わった後で食事をご馳走するくらいで無償なんですね。この豪農が村人の収穫を政府に売る取りまとめ役をしているので、クイインがもう止めてと頼んでも村人の為に何度も輸血をするヨウティエ。
クイインのためにコートを買おうとしてお金が足りず諦めたヨウティエを見て、値切って買ったそれをさも親切そうにあげるという彼に、ヨウティエは代金は収穫で払います。値切ったことを知らないので言われた値段でね。😖 素朴で優しくて正直者なのです。クイインが初めて彼と会った時にロバに優しく接していた姿を見て「この人となら」と思ったのも頷けます。

クイインを荷馬車に乗せて自分は歩くヨウティエを冷やかす村人たちに、彼は「荷物とクイインの他に自分も乗ったらロバが可哀相だ」と答えます。

働き者の二人は、麦畑だけでなくじゃがいやトウモロコシなどを栽培し、卵から雛を孵して育てます。そんなある日、荷馬車に麦を積む作業に難儀するクイインに思わず酷い言葉で罵ったヨウティエ。すぐに後悔しますが、彼にとってクイインは憐み保護してやる対象ではなく対等な働き手になっていたんですね。

嵐の夜に日干しレンガを守るために必死にビニールを掛ける二人。ずぶぬれの妻を心配する夫に生い立ちの中で過酷な状況には身体が慣れていると笑う妻。
風邪を引いたクイインに鶏が産んだ初めての卵を料理して食べさせるヨウティエに彼女が「幸せになったのに身体が弱くなった」とすまなそうに言う場面で感じた一抹の不安はやがて現実となります。

兄に頼まれた仕事で遅くなったヨウティエ。夫の帰りを心配して外に出たクイインが川に流されて還らぬ人となってしまいます。この時「卵」を持って夫の帰りを待っていた彼女の気持ちが何とも切ない。

妻の亡骸に寄り添い、その手に麦を押し付けて作った小さな「花」。指輪も買ってやれない彼が妻に贈った愛の証です。タイトルはここからですね。😀 
ヨウティエは収穫した作物を全て売り払い、借金や卵(以前雛を孵すために借りていた)を返し、ロバを解き放ちます。

二人で建てた家が解体される様子を静かに眺めた後、ヨウティエは村を去っていきます。村人たちは彼が町(貧窮者に与えられた共同住宅)に行くのだと話します。自由になった筈のロバは戻ってきていて彼とともに行ったのだと思われます。

以前交わした二人の会話の中で「植物と違って人間はどこへでも行ける」と言ったクイインに、「農民は土地に縛り付けられどこへも行けない。」と彼は答えました。そのヨウティエが村を去る=農民を捨てる。クイインを喪った哀しみの深さが胸を抉ると同時に彼はこれまでのしがらみから自由になったのだとも感じました。

想像もできないほどの貧しい暮らしの中で、それでも二人の互いを思いやり慈しむ気持ちが痛いほど伝わってきます。土地とともに生きる農民の逞しさ、応えてくれる自然の素晴らしさ、何気ない毎日の中にある喜びを共に味わっている気になりました。これがたった十数年前の中国の農村の姿だということにも衝撃を受けました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロスト・キング 500年越しの運命

2024年04月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年9月22日公開 イギリス 108分 G

フィリッパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)は職場で上司から理不尽な評価を受けるが、別居中の夫(スティーブ・クーガン)から生活費のため仕事を続けるように言われてしまう。そんなある日、息子の付き添いでシェイクスピア劇「リチャード三世」を鑑賞した彼女は、悪名高きリチャード3世も実際は自分と同じように不当に扱われてきたのではないかと疑問を抱き、歴史研究にのめり込むように。1485年に死亡したリチャード3世の遺骨は近くの川に投げ込まれたと長らく考えられてきたが、フィリッパは彼の汚名をそそぐべく遺骨探しを開始する。(映画.comより)


500年にわたり行方不明だった英国王リチャード3世の遺骨発見の立役者となった女性の実話をもとにしたヒューマンドラマです。

フィリッパは勤め先で上司から正当な評価を与えられていないと感じます。それは彼女の持病も理由になっているようです。そんな時、シェイクスピア劇の「リチャード3世」を観た彼女は、リチャード王もまた不当な評価をされている人物と感じ彼にシンパシーを抱きます。直後から彼女は王の幻影を見るようになります。

リチャード3世について調べ始めたフィリッパは、シェイクスピア作品によりテューダー朝の敵役(甥殺しのせむし男)として描かれ後世に伝わっていることを知ります。
リチャード3世協会に入会した彼女は、王の墓を探すことに情熱を燃やします。
川に投げ捨てられたという説もある中、伝手を辿って教会に遺体が埋葬されていると確信したフィリッパは、王の幻影に導かれるようにして訪れたレスターの社会福祉事務所の駐車場北端で『リチャードの墓の上に立っているんだ』と感じるのです。彼女の動機や原動力はまさに「感情」に突き動かされたというのが理由です。

発掘の協力を求めて色々な団体に声をかけますがことごとく断られます。彼女は諦めず、知り合いの名を借りて市長に面会し、考古学者に会い、レスター大学の協力を得ることができますが、探知機での調査で反応が無く、資金も底を尽き大学も手を引いてしまいます。

それでも諦めず、クラウドファウンディングで資金を集めて駐車場を掘り始めると、早速足の骨が見つかります。フィリッパはその骨こそが王のものだと直感しますが、考古学者は別の人物のものだろうと他の場所を掘ろうとします。

釈然としないながらも強く主張できずにいたフィリッパでしたが、元夫のアドバイスに吹っ切れて、足の骨を掘り進めるよう迫ります。それはまさしく王の骨だったのです。せむしと言われきた王は側弯症だった(その違いがいまいちわからない😓 )ことも判明します。

リチャード3世の遺骨発見に世間は沸きますが、その功績はレスター大学に横取りされ、記者会見の場にフィリッパの席はありませんでした。抗議するフィリッパをいなす大学の広報?の男が非常に利己的な人物として描かれ悪役になっていました。

王の遺骨が厳かに葬られる場面の裏で、講演を頼まれたフィリッパが学生たちの前で「正当な評価をされない人を正当に評価されるためにした」と語るシーンで映画は幕を閉じます。

前半、精神を病んでいるかのように突き動かされるフィリッパに引いてしまいます。
二人の息子の世話も夕食の支度もせずに自分の想いだけに囚われる姿は異常に感じました。仕事を休んで探求に没頭する彼女に元夫も心配と懐疑の目を向けます。しかし映画が進んでいくと、息子たちも夫もフィリッパを応援するようになっていくんですね。クラウドファウンディングに匿名で寄付したのも息子たちの発案で元夫が新車を買う資金を出したものだったという。😊 

骨が王の遺骨とわかったとたん掌を返す大学側の対応に憤慨する頃にはフィリッパの側に心情が傾いていました。😁 

王の幻影は彼女が遺骨を見つけたことで消えていきます。王にとっては名誉の回復がなされることより遺骨が安らかに埋葬されることの方が嬉しかったのかなぁと感じてしまいました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シークレット・キングダム ピーターの奇妙な冒険

2024年03月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2024年3月8日公開 オーストラリア 98分

かつて統合されていた地上と地下はある出来事で分断されてしまった。その後、地下にはシュラウドと呼ばれる邪悪な生き物が誕生した。シュラウドから平和を取り戻すため、王に選ばれたのが地上に住むピーター(サム・エヴァリンガム)だったのだ。センザンコウと呼ばれる地下の住民のグループに率いれられ、土地に光と平和も戻すために魔法の冒険を始めることに。しかし、シュラウドの手下が現れるなど思いもよらぬ出来事が次から次へと巻き起こる。(公式HPより)


ピーターと妹のベリティ(アリラ・ブラウン)は両親に連れられて父がかつて暮らしたことのあるという古い家にやってきます。古いというよりどう見てもボロ屋敷😓 どうやら父親は事業に失敗して家を手放したようです。

ピーターは行動するための独特のルールを持っています。たとえば3つ数えるうちに出来たらOKとか😁 

妹を追って近所の骨董品店に入ったピーターが商品を過って落として買い取るのですが、そのパズルのピースのようなものがきっかけで妹と二人不思議な世界に迷い込むのです。

突然ベッドと共に地下に落ちた二人はセンザンコウに運ばれていきます。
このセンザンコウのキャラが可愛い😍 

彼らのリーダー曰く、5つのピースを集めて鍵を見つけ大時計の針を動かして二つに分かれた世界を一つにするという予言に出て来る王がピーターだと。
ベリティに半ば引きずられる形で渋々冒険の旅に出るピーター。案内役はプリング(ダリウス・ウィリアムズ)です。彼は歌で道を覚えているのですがどうみても下手くそな歌😓 

まずはピースの在処を示す本をGETした二人。謎掛けを解いてピースを入手すると次のピースへのヒントが白紙の本に文字が浮かび上がってくる仕掛けです。
途中ドラゴンっぽいキャラが助っ人に加わるのですが、その容貌と目つきが怪しいな~と思っていたら案の定な展開。彼がシュラウドでした。

ベリティもプリングも石にされてしまい絶体絶命のピーターの脳裏に自分で封印していた「事実」が浮かびます。
ここで、この物語が単なるファンタジーではなく、ピーターの心の闇が作り出した世界であることが判明するんですね😧 実は妹は・・・なかなり辛い真実でした。その真実と向き合う決意をしたピーターは見事に時計のねじを巻いて世界を修復します。それは彼が現実を受け入れる勇気を得たということでもあるのです。

冒険自体はどこぞの物語を焼き直したような感じで新鮮味はありませんが、ピーターが受けたトラウマの克服という意外性がありました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おまえの罪を自白しろ

2024年03月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年10月20日公開 101分 G

政治家一族の宇田家の次男・宇田晄司(中島健人)は建築会社を設立するも倒産し、やむなく政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の父・宇田清治郎(堤 真一)の秘書を務め、煮え切らない日々を送っていた。
そんなある日、一家の長女・麻由美(池田エライザ)の幼い娘が誘拐された。犯人からの要求は身代金ではなく、「明日午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を自白しろ」という清治郎への脅迫。それは決して明かすことが許されない国家を揺るがす”罪”だった。権力に固執し口を閉ざす清治郎―。晄司はタイムリミットまでに罪に隠された真相を暴き、家族の命を救うことができるのか !?(公式HPより)


真保裕一の同名小説の映画化で、政治家一族の孫娘誘拐事件の行方を描いた社会派サスペンス作品です。

宇田家は晄司の他に、長男で埼玉県議員の揚一朗(中島歩)と、長女で市議・緒形恒之(浅利陽介)の妻の麻由美、その娘・柚葉(佐藤恋和 )がいます。

父の清治郎が、上荒川大橋建設にあたり総理の友人に便宜を図ったという疑惑がかけられてメディアを賑わせていたある日、柚葉が何者かに誘拐される事件が起こります。犯人の要求は身代金ではなく、清治郎に対して「明日午後5時までに記者会見を開き、お前の罪を自白しろ」というものでした。

現総理大臣・夏川泰平(金田明夫)を擁護するために、様々な汚れ仕事を引き受けてきた清治郎にとって、決して明かすことのできない「罪」でした。
権力に固執する清治郎は、指揮権発動(罪を問われない特例)と、自身の後継を宇田家の者にする確約を得ようと奔走しますが、党との駆け引きの末、指揮権発動のないまま記者会見の時間となります。清治郎は過去の2つの罪を自白しますが、総理が関わる上荒川大橋の件は口を閉ざします。
会見後に届いた犯人からのメッセージには「午後10時までに再度会見を開いて全ての罪を自白しなければ孫娘の命はない」とありました。

犯人の要求が上荒川大橋の件だと推察した晄司は、世間に漏れたのは政府内部の敵の仕業ではないかと調べ始めます。夏川総理の敵対派閥である党幹事長の木美塚(角野卓造 )への内通者の存在を突き止めます。 (清治郎の対抗派閥の若鷺議員(池田成志 )が宇田家に出入りしていた官僚を利用してリークしていました)木美塚と面会した晄司は、ここでなんと木美塚派へ寝返るのです。😮 それまで政治家に対して批判の目を向けていた彼の意外な行動に驚きますが、このあたりから晄司が政治家として目覚めていくようです。

犯人の要求通り2度目の会見を開いた清治郎は、上荒川大橋建設予定地の変更は自身と総理の利益のためだったと告白し、罪を認めて謝罪します。
会見後に「日の出町緑地を探せ」という犯人からのメッセージが入り、柚葉が救出されますがショックから声が出なくなり、犯人も捕まらないままでした。

晄司は独自に犯人捜しを始めます。
清治郎が推し進めていた公共事業は、橋の建設の他に「老朽化した競艇場施設の移設」と「日の出町緑地の再開発」がありました。そのどれもが荒川が舞台になっていることに気付いた晄司は、そこに犯人の本当の狙いがあると推理し、埼玉県警の平尾刑事(山崎育三郎)に協力を求めます。 

清治郎は3回目の記者会見を行い、議員を辞職すると告げます。さらに揚一郎と緒形が意志を継いで上荒川の研修センター移設を今後も進め、自費で研修センターの地盤調査を行うと発表し一方的に会見を終わらせました。騒然となる記者たちを前に、兄に代わり毅然と会見終了を伝える晄司には映画の冒頭で見られた虚無感は微塵もありません。

地盤調査が始まったある夜。緑地に怪しい2人組が現れて地面を掘り起こそうとする現場を、密かに監視していた警察がおさえます。この時抵抗された平尾が負傷しますが・・・このエピソード要る?😓 

逮捕されたのは、寺中初美(尾野真千子)と勲(柏原収史)の姉弟でした。最初に上荒川大橋の建設予定地だった場所で「寺中建材工業」を営んでいた彼らの父は立退料を見込んで会社の移転を計画して借金をしたのですが、急な場所の変更で借金だけが残った挙句、親子喧嘩の際に転落死していました。
困った二人は荒川土手に父の遺体を埋めましたが、清治郎の開発計画が決まれば地面が掘り返されて遺体が見つかるため、今回の犯行を企てたのです。清治郎が失脚すれば計画も流れると思ったのね。
初美の「誰が橋を変えたんですか、誰が私たちの人生を変えたんですか」の涙ながらの訴えが晄司の胸に突き刺さります。

柚葉が声を取り戻して笑顔が戻った頃、議員を辞職した清治郎が晄司に思わぬ告白をします。「俺のあとはお前にしか継げないと思ったから、おまえの会社を潰した」と。それを陰で聞いてしまった兄の存在って・・・😒 

場面は変わり、国会で新人議員となった晄司が木美塚新総理に向かって怯むことなく質問をする姿がテレビに映ります。そしてエンドロール・・・
父の清治郎が初心を忘れ自己保身にまみれていったその轍を彼が踏まないよう祈りたい😩 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミステリと言う勿れ

2024年03月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年9月15日公開 128分 G

ただの遺産相続という勿れ−−− 2023年秋、シリーズ最大級の 新たな謎が幕を開ける!!
天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整(菅田将暉)は、美術展のために広島を訪れていた。そこで、犬堂我路(永山瑛太)の知り合いだという一人の女子高生・狩集汐路(原菜乃華)と出会う。「バイトしませんか。お金と命がかかっている。マジです。」そう言って汐路は、とあるバイトを整に持ちかける。それは、狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった。当主の孫にあたる、汐路、狩集理紀之助(町田啓太)、波々壁新音(萩原利久)、赤峰(柴咲コウ)の4人の相続候補者たちと狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴(松下洸平)は、遺言書に書かれた「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題に従い、遺産を手にすべく、謎を解いていく。ただし先祖代々続く、この遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。汐路の父親も8年前に、他の候補者たちと自動車事故で死亡していたのだった…次第に紐解かれていく遺産相続に隠された<真実>。
そしてそこには世代を超えて受け継がれる一族の<闇と秘密>があった 。(公式HPより)


田村由美の漫画を菅田将暉主演で実写化した連続テレビドラマ「ミステリと言う勿れ」の劇場版で、原作のエピソード「広島編」をもとに、広島の名家・狩集家をめぐる遺産相続事件の顛末を描いた作品です。原作漫画は未読ですがTVドラマは見ていて菅田将暉がキャラにはまっていたので映画も観て見たくなりました😀 

冒頭で、車がカーブを曲がり切れずにガードレールを突き破って崖下へ転落し爆発炎上、乗っていた4人の男女が亡くなります。

8年後。
海岸で狩集汐路に犬堂我路が自分の代わりに久能整を紹介する場面の後、整を尾行していた汐路が、命と金のかかったボディガードの依頼をして強引に狩集家の遺言の場に連れていきます。

狩集家の顧問税理士の真壁軍司(角野卓造)と顧問弁護士の車坂義家(段田安則)により、汐路の祖父・狩集幸長の遺言状の内容が開示されます。孫たち4人それぞれに蔵の鍵が渡され、『蔵のあるべきものをあるべき所へ 過不足なくせよ』という言葉を解き明かした者が当主として全てを相続できるというものです。

祖父から「狩集家の遺産相続時に必ず人が死ぬ」と聞かされていた汐路は自分たちの親が自動車事故で死亡したのもそのためだと信じていました。
整は候補者の理紀之助、新音、ゆらと話し合うことを提案しますが誰一人応じません。ちなみに理紀之助はメガネをかけたインテリな臨床検査技師、新音はヤンチャな性格だが根は真面目、ゆらは専業主婦でさちという一人娘がいます。
狩集家に泊まることになった整は、魔除け効果があるとされるアメジストドームや、家の至る所にお札や祠があることに違和感を覚えます。 

翌日、汐路の蔵の中に9体の日本人形を発見し、着物の柄が各月を指していると気付いた二人ですが、牡丹、菊、桜の人形がありません。互いの蔵を見せる条件で覗いた新音の蔵には、本物と偽物が対になった有田焼が大量にありました。

蔵に向かう途中で汐路の頭上に植木鉢が落とされ、夜には階段に撒かれた油で汐路と新音が転落します。また、ゆらが自分の座敷牢のある蔵に閉じ込められる事件も起こり、疑いをかけられた理紀之助は無実を証明するため自身の血のついた日本刀が沢山置かれた蔵を見せます。

4人それぞれが疑心暗鬼に陥り始めた夜、柵の近くに短刀を埋める汐路に整は「それ以上はやってはいけない」と声をかけます。植木鉢も油もゆらを閉じ込めたのも汐路だと整は見抜いていました。父の居眠り運転で自分たちの父母が死亡したと長年責められていた汐路が、事故の原因が遺産相続のトラブルだったと信じることで自分を保っていたと知った3人は汐路を許し協力して謎を解くことを約束します。これで一段落と東京に帰ろうとした整でしたが、何者かに車で轢かれそうになったのと、狩集家代々の家族写真を見て思い直します。

4人と、車坂の孫で汐路の初恋の人・朝晴を呼び出し、遺産相続時のトラブルで死亡した過去の狩集家の人間が全員天パーで色白だったことを伝えた整に冗談かと思った5人でしたが、その条件を満たした人間が必ず早世していると分かります。

轢き殺されかけたことで俄然闘志に火が付き、4人の両親の死亡事故について調べ始めた整は、生前に汐路の父・弥(滝藤賢一)が兄姉妹たちと狩集家の謎を調べていたことを知ります。狩集家の真相を知った男性がそれを舞台の脚本にして発表し、その舞台を両親たちが観に行っていたことを知りますが、その男は後に自殺していました。
舞台のダイジェスト版DVDを借りて来た整は汐路たちに見せます。
戦後の動乱の最中に、1人の鬼と2人の従者が狩集家の人間を皆殺しにして乗っ取ったのが今の狩集家だったという内容に4人は動揺しますが、蔵の下に夥しい人骨が埋まっているのを発見して物語が事実だと知ります。
さらに物語には当主の幼い娘を逃がしてしまった鬼たちが、自分たちが偽物と露見しないよう、自分と同じ特徴(天パで色白)を持った子孫を殺すと誓ったと語られていました。

真実を知ってしまった弥を、その誓いを現代でも忠実に実行する誰かが殺したと気付いた整は、喫茶店に5人を集めてそれぞれが持つ情報を開示し合い、弥が「本当の狩集家の末裔」を発見して情報をUSBメモリに保管していたと結論付けます。
保管場所の情報はないまま朝晴が帰った後で、新音が飲み物を零したのを見た汐路は、父と最後に会った朝の出来事を思い出します。それを聞いた整はUSBメモリの隠し場所に思い至り一計を案じます。

誘き出された犯人が、USBメモリを手に入れて「本当の狩集家の末裔」の家を訪れ放火しようとしたところを、待ち構えていた刑事たちに取り押さえられます。

犯人は朝晴でした。
真壁家と車坂家が代々従者として誓いを守り続け、謎に近づく者と「天パーで色白」という特徴を持つ狩集家の人間を殺害してきたのです。
朝晴に疑いを感じていた整は、弥が飲んだジュースの中に睡眠薬が入れられていたと気付いて朝晴に偽情報を流して罠にかけたのでした。

朝晴は、あっさり犯行を認め、口止めしようとする祖父と真壁を無視して2人が脚本家を殺害したことも明かします。自分は正しいことをしていると信じている者特有の熱に浮かされたような表情は背筋が寒くなります。それまでが温厚で優しいお兄ちゃん然としていただけに一層不気味でした。

朝晴はまた「幼い汐路が弥の行動を全て教えてくれたおかげ」と言い放ち、汐路は強いショックを受けます。3人の従兄姉たちが慰め励ます中、整はアメジストドームに隠されていた弥のUSBメモリを渡して「本当の狩集家の末裔」を訪問しようと提案します。

玄関に置かれていたアメジストドームを作った女性(松嶋菜々子 )こそ、生き残った正統な後継者でした。弥たちは女性を訪問して日本人形(桜の柄・・・牡丹の柄の人形を届けようとして事故に遭っている。菊の柄は逃げた女の子が抱えていたもので、それが証拠となって弥が女性を探し出した)と有田焼を贈り、「『鬼』のルールは自分たちが終わらせる」と約束していました。
女性は汐路たち4人に、それぞれの親から注文を受けたパワーブレスレットを渡しました。

事件が解決し、新幹線で東京に戻る整。
弥が我路と知り合いだったことから、大隣警察署にも事件の報せが届きますが、事件の場にまたも整がいたと知って驚く刑事たち(伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆) 😁 
え?出番ここだけですか💦

逃亡生活を続ける我路が、クルーザーで汐路から届いた事件解決の報と整(めんどくさい性格)についてのメールを読んで笑みをこぼすところでENDでした。

『犬神家の一族』のようなおどろおどろしい連続殺人が起こるのかと思いきや、誰も死なない(親は事故死しちゃってるけど)のね。
整君のめんどくさい性格もドラマそのままで笑ってしまいますが、彼のセリフの多くにも心に刺さる含蓄があります。

・子供って乾く前のセメントみたいなんです
・どうして女性の幸せを決めつけるんだろう 
・犯罪とは、人間の努力が裏側に表れたものにすぎない

あ、宣伝に使われる「けっこうです」も😁 

舞台となった広島の観光地も登場するのでその景勝も楽しめました。😀 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リボルバー・リリー

2024年03月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年8月11日公開 139分 G

大正末期の1924年。関東大震災からの復興で鉄筋コンクリートのモダンな建物が増え、活気にあふれた東京。16歳からスパイ任務に従事し、東アジアを中心に3年間で57人の殺害に関与した経歴を持つ元敏腕スパイ・小曽根百合(綾瀬はるか)は、いまは東京の花街の銘酒屋で女将をしていた。しかしある時、消えた陸軍資金の鍵を握る少年・慎太(羽村仁成)と出会ったことで、百合は慎太とともに陸軍の精鋭部隊から追われる身となる。(映画.comより)


長浦京の「リボルバー・リリー」を映画化したアクションサスペンスで、監督は行定勲です。物語の舞台は第一次世界大戦後で関東大震災後の帝都です。復興しつつある中、モガと呼ばれる西洋風のファッションの流行も描かれ、特に百合のドレス姿は美しいの一言。💛その妖艶なドレス姿で拳銃を撃ちまくり大の男を次々倒すのだからたまりませんね😁 

墨田区の歓楽街にあるカフェ「ランブル」のオーナー・小曾根百合は、旧知の筒井国松(石橋蓮司)が犯人と報じられた細見一家殺人事件が気にかかり、現場の秩父に向かいます。国松が住んでいた小屋には銃痕があり、陸軍の軍人たちの姿もあり腑に落ちないまま帰路につきますが、列車の中で軍人に追われている少年をみかけて咄嗟に助けます。

少年は細見慎といい、殺人事件の生き残りでした。事件当日、突然軍人たちが父・細見欣也(豊川悦司)を探してやってきて、知らないと答えた家族や使用人を皆殺しにしたのですが、慎太は縁下に隠れて難を逃れたのです。慎太は父から何かを預かっていて「玉の井の小曾根百合の元へ行け」と言われたと話します。
追ってきた軍人を百合はS&W M1917リボルバーで急所を外して返り討ちにします。彼女は、かつて台湾でスパイを養成する「幣原機関」で訓練を受けた諜報員だったのです。

慎太を連れ「ランブル」に戻った百合は、敏腕弁護士の岩見良明(長谷川博己)に事件の調査を依頼します。すると、慎太の父欣也は軍の重要機密に関わっていたことがわかります。
欣也は、陸軍の軍資金の一部を自分名義で外国の銀行へ特殊な形で預けていました。慎太が預かっていた書類は、途中で百合の後輩の元諜報員・南始(清水尋也)に奪われていましたが、預金を下すには慎太の指紋と暗証番号が必要で、そのヒントが慎太が書類を腹に巻き付けていた布にありました。

生き延びた慎太は父の友人の国松の小屋へ行って助けを求めていました。そこへ外国へ行ったはずの父が戻ってきて慎太に書類を預け、小曾根百合を訪ねるように言ったのです。彼を逃すために国松は殺され、欣也も自害していました。

元海軍出身で暗号解読の知識のある岩見が布に書かれていた暗号文を解き、そこに書かれていた住所の寺に向かいます。一方、莫大な資金が消えてしまうかもしれない銀行の契約更新日まで10日と迫り、陸軍も必死で慎太を探していました。

百合は幣原機関の長・水野寛蔵と恋愛関係になり、子供が生まれましたが、組織の派閥争いで子供を喪い傷心を抱えて「もう人殺しはしたくない」とスパイを辞めて帰国していました。(国松と「ランブル」で働く奈加(シシド・カフカ)も水野家の関係者でした。)

百合と岩見は、陸軍と海軍の仲の悪さを利用して海軍に助けを求めることにします。
しかし海軍の山本五十六(阿部サダヲ)を訪ねようとした岩見は、内務省の植村(吹越満)のもとに拉致されます。植村はこれ以上国家機密に立ち入るなと忠告しながら、百合の正体を明かし、水野も「表向きは」病死したことになっていると話します。実は細見欣也=水野だったのです。
慎太と寺へ辿り着いた百合の方も、慎太が隠し持っていた家族写真を見て細見欣也が水野だったことに初めて気付きます。

慎太の母の遺骨箱の中に銀行口座の暗証番号が隠されていました。逃げ出してきた岩見と合流して山本五十六と会った二人は、慎太の保護を条件に銀行預金の全額を海軍が得ることを了承します。細見は陸軍が資金を持つことで再び戦争になることを恐れて資金を隠したのですが、海軍がその資金を持つことで陸軍を牽制するということらしい😔 

山本から慎太を連れて自力で日比谷の海軍省まで来るようにと指示された百合は、馴染の滝田(野村萬斎)洋装店でオーダーメイドした白いドレスに着替え「あとで春風堂のマロングラッセを食べましょう」と慎太と約束をし、陸軍が包囲する中を強行突破していきます。「ランブル」の仲間たち(シシド・カフカ、古川琴音)が援護射撃をし、山本五十六から拳銃を借りた岩見も駆けつけます。

百合は激しい銃撃戦で純白のドレスを真っ赤に染めながら海軍省の門の前に辿り着きますが、そこには陸軍勢がバリケードを作って待ち構えていました。
百合の援護射撃のもと、門に辿り着いた慎太の前には山本五十六ら海軍の軍人たちが居並び、山本五十六に「帝国海軍に向かって帝国陸軍が発砲するのか」と一喝された陸軍は撤退、慎太は保護されます。

暫くのち。留学することになった慎太に別れを告げにやってきた百合は、彼に春風堂のマロングラッセを差し出します。二人でお菓子を食べながら、慎太は「理想の日本にするのを待ってて」と百合に伝えました。

列車の中で向かい合って座る百合と岩見。自分の気持ちを伝えようとした岩見を止めた百合は「来た」と囁きます。客車のドアが開いて拳銃を手に入ってきた謎の男(鈴木亮平)に、百合は素早くバッグから拳銃を出して撃ちます。
新しい事件の始まりか?😁

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

THE FIRST SLAM DUNK

2024年03月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年12月3日公開 124分 G

いつも余裕をかましながら 頭脳的なプレーと電光石火のスピードで相手を翻弄する 湘北の切り込み隊長、ポイントガード・宮城リョータ(声:仲村宗悟)。 沖縄で生まれ育ったリョータには3つ上の兄がいた。 幼い頃から地元で有名な選手だった兄の背中を追うように リョータもバスケにのめりこむ。 高校2年生になったリョータは、 湘北高校バスケ部で、桜木(木村昴)、流川(神尾晋一郎)、赤木(三宅健太)、三井(笠間淳)たちとインターハイに出場。 今まさに王者、山王工業に挑もうとしていた。(東宝サイトより)


1990年から96年まで「週刊少年ジャンプ」で連載された「SLAM DUNK」のアニメ映画。原作者の井上雄彦が監督・脚本を手がけ、「The Birthday」がオープニング主題歌、「10-FEET」がエンディング主題歌を務めています。

映画公開前の予告を見て「絵が荒いな」と感じて劇場鑑賞は見送りましたが、おそらくは敢えて、なのでしょうね。
声優さんもTVアニメ版とは異なるため違和感もありました。
世間的には高い評価を受けたようですが、個人的にはイマイチだったかな。

インターハイ2回戦での秋田・山王工業との試合が描かれます。高校バスケ界の絶対王者と呼ばれ、最強のセンター河田、高校ナンバーワンプレイヤー沢北を擁 する山王に対し無名の湘北という構図です。

試合開始早々、リョータのパスから花道がダンクシュートを決め、序盤は拮抗した内容となります。

試合の模様と並行して、リョータの生い立ちが描かれているのが特徴的でした。父を亡くし、自分がこの家のキャプテンになると言った兄も海に出て還らぬ人となり、宮城家は沖縄を離れて神奈川県へ移住しました。バスケの名選手だった兄を慕っていたリョータは塞ぎ込み、いつも独りでバスケの練習をしていましたが、中学生になったある日、スリーポイントを立て続けに決める少年に1on1を挑まれます。彼に兄の面影が重なったリョータは途中で帰ってしまいます。

前半を2点リードで終えた湘北でしたが、後半フルコートプレスディフェンスを展開した山王がリョータを徹底マークします。三井のスタミナ消耗も激しく、赤木は河田との競り合いで気力を削がれ、20点以上の点差がつます。
安西監督からリバウンドでの勝利というタスクを与えられた桜木は「山王(ヤマオー)は俺が倒す!」と宣言して観客から大ブーイングを浴びますが、天性の身体能力を発揮して空中戦を次々と制し、チームの空気を変え、点差は8点にまで縮まります。

湘北高校でバスケットボール部に入部したリョータは衝突を恐れず問題児と揶揄され赤木とも衝突します。ある日、不良グループを束ねる三井が、かつて1on1を挑んできた少年と気付いたリョータは「いつでも1on1を受けてやる」と喧嘩を売ります。三井との喧嘩でバスケットシューズを壊してヤケになったリョータは、原付で単独事故を起こして母に叱責され、退院後逃げるように故郷の沖縄へ行きます。母は夫と長男に続き次男まで失う恐怖にいたたまれなかったのでしょう。

秘密基地の洞穴で、隠されていた兄のバスケットシューズと山王工業が表紙を飾るバスケット雑誌を見つけたリョータは、雑誌に兄が書いた『最強の山王を倒す』という文字に、兄の夢を実現しようと決意してバスケ部に復帰。そこには三井の姿もありました。三井の復帰はTVアニメで観てたな~~。

山王のエース沢北が本領を発揮して流川を攻守で圧倒。桜木には最強センター河田をぶつけてきます。再び点差が開き始めますが、流川がパスの選択肢を持ったことで流れが変わります。桜木はコート外に出そうになったボールを追いかけ関係者席にダイブ。そんながむしゃらなプレーが観客の心を掴んで、アウェイ状態から一転して湘北に声援が送られ始めます。しかしプレー再開後、桜木は背中に痛みを覚えます。

インターハイ前日は、リョータとソータ兄弟の誕生日でした。その夜、母がソータの映像を見て涙する姿を見たリョータは、バスケットを続けさせてくれた母への感謝の気持ちを手紙に綴りました。それを読んだ母はインターハイ会場を訪れ、観客席から湘北対山王戦を見届けます。

山王の執拗なマークを強引なドリブルで破るリョータ。背中の痛みで交代させられながらも、桜木は「オヤジ(安西)の栄光時代はいつだよ、全日本の時か?」「俺は今なんだよ」と皆の制止を振り切って再びコートへ。逆境で食らいつく迫真の戦いを見せた湘北は試合終了直前、1点差で勝利します。

インターハイ終了後、湘南の海岸で母に会ったリョータは兄の遺品の赤のリストバンドを差し出しました。

敗れてコートを去る山王工業の面々の中、沢北は廊下で崩れ落ち涙を流します。高校ナンバーワンと呼ばれ日本では全てをやりつくしたと思っていた彼が望んだ『俺に必要な経験』は、彼が今まで知らなかった『敗北』だでした。

数年後。アメリカのチームで試合に出場した沢北は、相手チームの中にリョータを見つけます。特に言葉を交わさず肩を叩き合った二人。試合が始まったところでエンドロールに。

TVアニメではインターハイ出場が決まったところで終わった気がしますが、映画はその先の王者・山王との試合に絡めてのリョータが主役でしたね。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ONE PIECE FILM RED

2024年03月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2022年8月6日公開 115分 G

素性を隠したまま発信される歌声が「別次元」と評され、世界でもっとも愛される歌手ウタ(声:名塚佳織、歌唱:Ado)が、初めて公の前に姿を現すライブが開催されることになった。そのことに色めき立つ海賊たちと、目を光らせる海軍。ルフィ率いる麦わらの一味は、何も知らずに、ただ彼女の歌声を楽しみに会場にやってきた。世界中から集まったファンが会場を埋め尽くし、いよいよ待望の歌声が響き渡ろうとしている。しかし、ウタが「シャンクスの娘」であるという事実が明らかになったことから、事態は大きく動き出していく。(映画.comより)


「ONE PIECE」の劇場版アニメ。長編劇場版通算15作目で、原作者の尾田栄一郎が総合プロデューサーを務める“FILMシリーズ”4作目で監督は谷口悟朗。歌手のAdoが歌唱担当したことで注目を集め、ウタがアニメキャラクターとして初めてNHK紅白歌合戦に出場し話題となりました。

ONE PIECE・・・TVアニメも原作もあまり見てないんだよな~~。去年話題を集めていたのでDVDで観ましたが、登場キャラが多過ぎるのと物語の世界観が把握できずに理解が追い付かず、印象としてはAdoのライブをアニメで見ている感じ😓 アニメファンには怒られそうですが💦

音楽の島エレジアでライブを行うウタの目的は、世界を平和にすることですが、それは彼女の“ウタウタの実”の能力で作り出したウタワールドにファンを閉じ込めることでした。ウタが眠れば能力は解除されますが、眠れなくなるネズキノコを食べ続けているため、彼女の体力が尽きて死ねばウタウタの世界は閉ざされて永遠に閉じ込められてしまうのです。

シャンクスの娘として赤髪海賊団の中で育ったウタ(敵の海賊から奪った宝箱に入っていたのをシャンクスが育てた )ですが、シャンクスたちがエレジアを滅ぼして幼いウタを捨てたことで、海賊嫌いになっていました。でも本当はウタが意図せずその能力で魔王トットムジカを蘇らせてしまった結果だったのです。シャンクスはウタを守るため自らが汚名を着たわけね。

ウタの能力を恐れた海軍や海賊たちは彼女の「新時代」計画を阻止しようと動きます。エレジアでウタを育ててくれたゴードンから過去の悲劇の真実を聞かされる前に、ウタは映像電伝虫の記録映像でそれを知っていたのですが、自分を必要とするファンの声に応えるために計画を変えることなくエレジアの地下に眠っていたトットムジカを蘇らせてしまいます。

トットムジカは現実世界とウタワールドの両方で姿を現すため、二つの世界が繋がります。そのため双方の世界で同時攻撃してトットムジカを倒すことで現実世界に戻るチャンスが生まれます。

ルフィたち麦わら海賊団は、ウタワールドで他の海賊団たちや、CP0のブルーノらと共闘し、現実世界では赤髪海賊団が海軍を牽制しながらトットムジカとの戦いに挑んでいきます。指揮を任された海軍大佐コビーの見事な采配も見所の一つらしい。

ルフィとシャンクスだけでなく、他のキャラたち(ヤソップとウソップ の父子とか)も双方の世界で交信し協力してトットムジカを倒すことに成功します。
ルフィがドラゴンボールの悟空が変身した時みたいな姿になったのは、ニカ(太陽の神)に変身した設定と言う事ですが、その辺の事情はさっぱり😝
とにかくシャンクスとの同時攻撃でトットムジカは撃破されました。

でも人々がウタワールドから解放されるためにはウタの歌が必要です。シャンクスが差し出した解毒薬を拒否し、最後の力を振り絞って「世界のつづき」を歌いウタは「みんなを幸せに」します。ウタを捕らえようとする海軍を前に、シャンクスは「俺の娘だ」と庇い強大な覇王色の覇気を発します。

サニー号の上で気がついたルフィの目に、赤髪海賊団の船が去っていく姿が映ります。シャンクスから麦わら帽子を渡された時の約束に、ウタから麦わら帽子を返された時の「似合う人になって」という約束が加わり、ルフィは「海賊王に俺はなる」と誓いを新たにする のでした。

映画の中で流れる歌
「新時代」
「私は最強」
「逆光」
「ウタカタララバイ」
「Tot Musica」
「世界のつづき」
「風のゆくえ」
「ビンクスの酒」

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フォーチュン・クッキー

2024年03月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2004年5月1日公開 アメリカ 97分

1976年のジョディ・フォスター主演「フリーキー・フライデー」のリメイク作品です。ひょんなことから心と体が入れ替わってしまった母と娘が、互いの生活を送ることで大騒動を巻き起こしながらも次第に相手の気持ちに気づいていく姿を描いたコメディ。

母と娘の心が入れ替わってしまう映画は他にもいくつかあった気がします。それにこの作品、多分観てる筈なんだけど、感想の記録がない😓 

几帳面で完璧主義者の精神科医テス・コールドマン(ジェイミー・リー・カーティス)は、再婚相手ライアン(マーク・ハーモン)との結婚式を2日後に控え、学校で問題を起こしてばかりの娘のアンナ(リンジー・ローハン)のことで頭が痛い。ロックに夢中で放課後はバンド仲間とガレージで練習する騒音もですが、何よりの悩みはライアンに全然打ち解けようとしないこと。

一方アンナは口うるさく子どもの気持ちを全く理解しないくせに弟のハリー(ライアン・マルガリーニ) には甘いママが不満です。学校では以前は仲良しだったステイシーから嫌がらせを受け、国語教師のベイツ(スティーヴン・トボロウスキー )からはいわれなき落第点をつけられ反省室の常連で すが、片思いのジェイク(チャド・マイケル・マーレイ)と接近したり、マディ(クリスティナ・ヴィダル)たちバンド仲間と充実した学生生活を送っていました。

ある日、マディからライブハウスのオーディションを受けられることになったと知らされますが、その時間はママの結婚式のリハーサルと重なっていました。その夜、ライアンも一緒に出かけたチャーニーズ・レストランでの夕食でそのことを相談したアンナはママの猛反対にあって逆ギレします。
その時、店のオーナーの母ペイペイ(ロザリンド・チャオ)がふたりにフォーチュン・クッキーを差し出します。それぞれのクッキーを割った時に地震が起きますが、席に戻ると皆何事もなかったと言います。

翌朝、互いの体が入れ替わっていることに気付いた二人は大慌て。とりあえず、午前中はお互いの生活を送ることにします。
中身がテスのアンナのファッションは優等生風😁ジェイクにも冷たい態度をとります。授業でベイツ先生の嫌がらせを受けたアンナは、彼が高校時代に振った相手だと思い出し、当時の恨みを娘に晴らそうとしていると気付いて教育委員会に訴えるとベイツを撃破します。

中身がアンナのテスは、母のプラチナカードで買い物をして洋服を着替え、ピアスを開け髪型も変えて職場に行き、カウンセリングの仕事(話を聞き流すだけ)をこなします。

昼に合流した二人は元に戻る方法を聞こうと昨夜のレストランに行きますが、おみくじの通りにするしか方法はないと言われてしまいます。

午後。
中身がアンナのテスは、ハリーの保護者面談で弟が書いた作文を見せられ、本当は姉のことが好きで尊敬していると知って感動します。

中身がテスのアンナは、試験中にステイシーの策略で退出させられてしまいます。ジェイクの協力で、保管された答案用紙に答えを記入したアンナは仕返しにステイシーの答案を消しゴムで消しますが、それを見たジェイクは彼女に失望します。

中身がアンナのテスは、トーク番組の生放送に出演させられ慌てますが、ぶっちゃけトーク全開で観客を煽って盛り上げます。番組を終えて入ったカフェでバイトしていたジェイクとばったり会った彼女はロックの話で意気投合します。ジェイクはすっかり彼女に夢中になります。

結婚式の前夜祭に出かけた二人は、おみくじに書かれた通りの心を持とうと念じますが戻れません。バンド仲間がアンナを連れ去りにやって来たのを見たライアンはアンナの望み通りにオーディションに行かせようと、アンナとテスを会場へ送り出します。脇役のライアンの唯一の見せ場ですね。😁 

中身がテスのアンナがギターを弾ける筈もなく、ステージで棒立ちになっていると、中身がアンナのテスが、弾く真似をさせて舞台袖で自分がギターソロを弾きます。会場は大歓声で盛り上がりバンドは予選を突破します。

前夜祭に戻った二人が、互いの気持ちを思いやるスピーチをすると地震が起き、元の体に戻ります。

翌日の結婚式で、テスとライアンは皆から祝福を受け、アンナとジェイクもキスを交わします。

逆の立場に変わって悪戦苦闘する二人の様子がコミカルに描かれて笑いを誘いますが、やがて互いの立場を理解し認め合うようになるのも良い感じです。中でも、中身がアンナのテスを演じた女優さんの弾けっぷりが見事でした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする