杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

リトルプリンス 星の王子様と私

2016年04月07日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年11月21日公開 フランス 107分

よい学校に入るため、友だちもつくらず勉強漬けの毎日を送る9歳の女の子(声:鈴木梨央)。名門校の学区内に引っ越してきたが、隣には風変わりなおじいさん(津川雅彦)が住んでいた。ある日、隣から飛んできた紙飛行機が気になって中をあけると、そこ書かれていたのは、小さな王子の物語。話の続きが知りたくてたまらず、女の子は隣家を訪ねた。王子の話を聞き、一緒に時を過ごすうちに、二人はかけがえのない友だちになっていく。しかし、ある日、おじいさんが病に倒れてしまう。女の子は、もう一度王子に会いたいと言っていた彼のために、プロペラ機に乗って、王子を探す旅に出た——!(公式HPより)


アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「星の王子さま」は昔一度読んだきりで内容も半分忘れていました。映画化にあたって、主人公は現代の少女に置き換えられ、飛行士は老人となっています。もし飛行士がこの物語を発表していなかったという設定で、原作の物語を語りつつ原作のその後が描かれるのですが、全く違和感なく楽しめました。

女の子の母親(瀬戸朝香)はシングルマザー(離婚したようです)。娘の将来を思っての徹底したスケジュール管理はどう見てもやり過ぎですが、女の子は初めは疑問も持たずに従っています。自分のために一生懸命な母親の期待を裏切りたくないからです。
大事な面接で想定外の質問にパニクって失敗してしまった娘のため、母はBプランを実行。それはその進学校の学区内に引っ越すというものでした。孟母三遷の教えみたい

でも、子供には反抗期というものがやってくるのよね~
引越し当日、壁をぶち破って飛んできたプロペラに驚いた女の子は、その持ち主である隣家の老人からの接触を最初は避けますが、紙飛行機に書かれた物語に惹かれて老人と親しくなっていきます。友人も作らず勉強しか知らなかった女の子にとって、老人と過ごす時間はとても楽しく大切なものになっていくのです。

紙飛行機に書かれていたのは、老人が昔不時着したサハラ砂漠で星の王子様と会った時のお話で、これは原作に忠実に再現されています。我儘なバラ(滝川クリステル)の世話に疲れた王子様は、自分の小さな星から逃げ出して、ビジネスマン(所有欲の象徴)やうぬぼれ男(自尊心や高慢の象徴で、お辞儀をするために帽子を被っている。)や王様(その統治は全て自らが中心と勘違いしている。)に出会い、やがて地球にやってきて、飛行士と出会います。
初めて出来た友達のキツネ(伊勢谷友介)は大切なものに気付かせてくれ、ヘビ(竹野内豊)はバラの元に帰る方法を示唆します。(自分の星は遠いから体を持っていくことはできない、だから毒蛇に噛まれて心だけとなって還るというのは何ともシュールだと子供心に少し怖かったことを思い出しました。)
ストップモーションの手法で描かれる物語は、絵本の挿絵が動き出したような不思議で懐かしい感覚になります。

ある時、女の子が老人と会っていることが母親にばれて、二人は会えなくなってしまいます。(このおじいさんってば、かなり破天荒なキャラです。体は老人だけど心は無邪気で好奇心に溢れる子供なのよね。無免許でオンボロ車を運転して捕まるあたりがまさに現代的かも
星の王子様を探しに行こうという女の子に老人はもう遅いのだと言うのですが、彼女には納得できず一方的に老人と絶好します。でもやがて老人が病に倒れると、王子様を見つけて老人に会わせようとして、一人でオンボロ飛行機に乗って空に旅立つのです。(飛行機が飛び立つ行程は子供が喜びそうな楽しさに満ちています。)

無気力な大人(青年)になって昔のことを忘れてしまっていた王子様が、女の子と出会ったことで再び「あの頃」の自分を取り戻していく展開がです。
王子様はビジネスマンやうぬぼれ男や王様たちから逃れて女の子と一緒に自分の星に帰りますが、バラは枯れてしまっていました。過ぎてしまった時間は取り戻すことができないのです。でもバラは王子様の心に刻まれています、忘れないことが大切なんですね。

もう一度「星の王子様」読んでみようかな

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長い廊下がある家

2016年04月05日 | 
有栖川有栖(著) 光文社(発行)

廃村に踏み迷った大学生の青年は、夜も更けて、ようやく明かりのついた家に辿り着く。そこもやはり廃屋だったが、三人の雑誌取材チームが訪れていた。この家には幽霊が出るというのだ―。思い違い、錯誤、言い逃れに悪巧み。それぞれに歪んだ手掛かりから、臨床犯罪学者・火村英生が導き出す真相とは!?悪意ある者の奸計に、火村英生の怜悧な頭脳が挑む。切れ味抜群の本格ミステリ傑作集。 (「BOOK」データベースより)

短編集で、ドラマの最終回の原作にもなっている『ロジカル・デスゲーム』が入っているため読んでみました。ドラマの方は番外編がHuluに移行しちゃって見られない。最近の傾向ですが、地上波で始めたなら最後までちゃんと見せて欲しいのもです。

『長い廊下がある家』
火村の教え子が巻き込まれた事件。
アリスの推理はほんとしょうもないけど、いつものようにその推理の骨格は真実を示しているのが面白いです。長すぎる廊下、見てみたいぞ
犯人が複数ならそのトリックも成立するよね

『雪と金婚式』
金婚式を迎えた老夫婦の美しい思い出(階段で転倒し脳震盪を起こして逆行性健忘症になった夫が、妻に贈った思い出の雪)が事件の鍵を握っていました。
雪を作る装置が殺害時刻を混乱させ真犯人のアリバイ作りに加担してしまっていたのね。
火村の推理で夫の記憶が蘇る展開はあまりにも劇画的ですが

『天空の眼』
マンションの隣人(女子高の英語教師)に頼まれて、彼女の元教え子の心霊写真騒動にアドバイスをしたアリスが、その後に起きた殺人事件解決にも一役買います。いつもはどうしようもない推理を連発して火村や警察関係者に引かれるアリスですが、今作では珍しく彼の推理が的を突くのです。
青森で道に迷った女子学生が撮った写真に写っていた背の高い草は自生する大麻でした。現場に行って初めてわかる真実です。無意識の行為が後の犯罪と殺人を生むとはまさに不条理。実際に起きた事件は小説のネタにしないアリスにとって、事件解決は嬉しくも哀しい気持ちですね。珍しく火村不在のまま終わります。
これ、ドラマでやって欲しかったな~~

『ロジカル・デスゲーム』
ドラマでは長谷川京子が演じていましたが、原作は千舟という狂信的なファン?からの挑戦状だったのですね。ドラマの中でモンティ・ホール問題といわれてもなんのこっちゃな数学音痴ですが、小説としてじっくり読んだら何となくわかったような気になったぞ
それにしてもホイホイと危ない輩に誘い出されてしまうあたり、火村先生も脇が甘いな

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走馬灯株式会社 vol.1

2016年04月03日 | ドラマ
2012年7月16日~9月17日 TBSドラマ

菅原敬太の漫画のドラマ化で、1話完結のオムニバス形式で描くサイコスリラー作品です。
これも窪田君の過去作追っかけで発掘
ミステリアスな案内人役は香椎由宇。その第一話の主演が窪田君です。
走馬灯株式会社に迷い込んだ人は、自分の産まれてから現在に至るまでの人生が収録されたDVDを観ることができます。

DISC1 2012年7月16日 関隆広(23)
恋人の結子(梶原ひかり)を母(横山めぐみ)に紹介しに実家に帰った関隆広。母一人子一人で育った彼は少々マザコン気味です。
その夜、幼馴染の圭介(千代将太)の誘いで飲んだ帰りに迷い込んだ「走馬灯株式会社」で神沼(香椎由宇)から渡されたDVDには驚愕の事実が映っていました!赤ん坊の自分をあやしていたのは見知らぬ女性で、しかも呼ばれている名前も違う。「母」は本当の母親ではなく、実母から自分を奪い、自分の子として育ててきたのです。そして両親を殺したのも今の「母」父から子供が産めないことを理由に棄てられた「母」による狂気の犯行だったというわけです。

事実を知って吐き気を催す演技がリアルでその動揺が伝わってくるようでした。家に帰り「母」と向かい合った彼は、今まで育ててくれた感謝からか、何も知らない振りをしようとしましたが、待っている筈の恋人の姿がない
仏壇には死んだ人に捧げるという紙人形がまた一つ増えていた・・・

母親役の横山さんの熱演でさらに恐さが倍増しています。
いや~こんな事実、知らない方が幸せよ。このあと、隆広君は絶望して死を選んじゃうのですから。
優しい彼は、真実と「母」への愛情の相克に耐えられなかったのですね


DISC2 堤友樹
妻(臨月)を愛していながら一夜の過ちからストーカー行為を受けた知樹は、その相手が高校時代に一方的に熱を上げてきた女ではないかと疑いを持つが、実はその女こそが妻だった。全身整形してたのね(走馬灯株式会社は自分と関わった相手の過去も観られるらしい)もちろん生まれた子供(女の子)は整形前の妻にそっくり。さらにストーカー女からも妊娠したとのメールが届き八方塞がりな知樹ですが、なんか同情できなかったな~

DISC3 多岐川理央
一年前に父親が事故死して以来元気のない理央のため、彼氏と親友が旅行に誘ってくれたのは、理央が生まれた村だった。その村の婆様の予言は絶対で、もし外れるようなことがあれば村に災いが起きるという。そして理央の死も予言されていて・・・。
彼氏も親友も全員この村出身で、理央を連れて村を逃げ出した父も村人に殺されたという真実が恐い!予言された時刻が過ぎたことで落胆する村人を振り切り逃げ出した理央は、東京でこの村が土砂災害で全滅したというニュースを目にするのでした。
いっそ全員で村を捨てたら良かったのにね~

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鹿の王 生き残った者

2016年04月03日 | 
上橋 菜穂子(著) 角川書店

強大な帝国・東乎瑠にのまれていく故郷を守るため、絶望的な戦いを繰り広げた戦士団“独角”。その頭であったヴァンは奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、一群れの不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは幼子を拾い、ユナと名付け、育てるが―!?厳しい世界の中で未曾有の危機に立ち向かう、父と子の物語が、いまはじまる―。 (「BOOK」データベースより)


下巻の還って行く者を読んでから5か月。やっと上巻の順番が回ってきたぞ。
まぁ、上巻のおおざっぱなあらすじは下巻で想像ついてましたので、手元に来てもなかなかページを開く時間を取る気になれず、返却日間際に慌てて読んだ・・・もはや宿題状態。やっぱり順番って大切かも

下巻同様、火馬の民のヴァンとオタワルの医術師のホッサルそれぞれの目線で物語が進んでいきます。
ある晩、ヴァンが奴隷として働かされていた岩塩鉱を謎の獣が襲い、人々を次々と噛んでいきます。その後、謎の病が流行しヴァンと幼い女の子だけが生き残ったのです。彼はその子をユナと名付け、岩塩鉱から逃亡しますが、以後不思議な感覚に襲われることになります。

ホッサルは東乎瑠帝国の医術師として、この病の原因を究明しようとします。岩塩鉱で奴隷の一人が脱走したことを知り、噛まれても病にかからなかったヴァンの捜索を従者のマコウカンに命じるのです。マコウカンは跡追いのサエと共にヴァンの足跡を追いますが、山犬の襲撃に遭いサエを見失ってしまいます。

ヴァンはユナを連れ国を出ようとする途中で怪我をしたトマと出会い、彼の故郷(オキ地方)でしばしの平穏な日々を過ごすのですが、再度山犬と対峙したことで、自分が二つに別れた感覚を味わいます。
それをきっかけに谺主(こだまぬし)に呼ばれてヨミダの森へ赴いたヴァンは、その感覚が「裏返し」というものだと知るのでした。ヴァンはここで怪我を追い湯治していたサエと出会います。今度は岩屋を襲撃してきた山犬を何とか追い払うのですが、その間にユナを攫われてしまい、矢毒に倒れたところをサエに救われ・・・下巻に続く、という展開でした。

ホッサルは、この病がかつてオタワル王国を滅ぼした黒狼熱(ミツツアル)ではないかと疑っています。もしそうなら医術者の彼にとって、未知の病を研究する千載一遇のチャンスです。もちろん病に倒れた人の命を救うことが最優先ではあるけれど、一方で新しい治療法を試すまたとない機会に研究心を押さえられない自分にも気付いています。ミラルは優秀な助手であり、彼の良き理解者として描かれています。オタワル人は国を持たぬ民となることで逆に強者(国)の懐に入り込んで生き延びる道を選んだ民であり、ホッサルも祖父と同じくオタワル医術を東乎瑠帝国に広めることを望んでいるんですね。

上巻では、なぜ黒狼熱が再び広がってきたのか、その理由についてはまだ伏せられていますがきっかけとなった事件は明かされています。
支配者である東乎瑠が移住民を従属したアカファ王国に送り込み、彼らが持ち込んだ黒麦と火馬の民が栽培していたアカファ麦が掛け合わされたことで生じた毒麦により火馬が死んだことから火馬の民との諍いが起こった結果、火馬の民は滅ぼされてしまったのです。
この毒麦を食べて死んだ火馬を食べた犬が毒素を体に保有することになるわけね。
また、トナカイの乳を含む乳製品を常食にするアカファの民と口にしない東乎瑠の民という食生活の違いが、病への抵抗力に関係していることもさりげなく提示されていました。

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ミスター・アーサー(2011)

2016年04月01日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2016年3月9日 ミッドナイトアートシアター放送

大富豪の御曹司アーサー(ラッセル・ブランドン)は、毎日気楽なバカ騒ぎを繰り返し、まともに働くこともせず、乳母のホブソン(ヘレン・ミレン)に身の回りの面倒を任せきり。
この息子に次期社長を任せるのは無理と踏んだ現社長の母親(ジェラルディン・ジェームス)は、アーサーにしっかり者の社長令嬢スーザン(ジェニファー・ガーナ―)との結婚を命じる。政略結婚に気が進まないアーサーだが、拒否すれば財産を相続させないと脅され、仕方なく同意。ところある日、街で出会ったナオミ(グレタ・ガーウィグ)に一目惚れしてしまい・・・。


1981年版のリメイクだそう。
深夜放送の枠だったので録画で視聴しましたが、題名の「アーサー」から中世騎士物内容は知らずに観たので最初は「何?このバカ息子は??」状態。甘やかされて育った常識知らずのお坊ちゃんのアーサーに同情する気持ちはさらさら無かったのに、途中からなんだか純真な青年に見えてきたから不思議。

アーサーの恋のお相手が貧しい庶民の女の子(もぐりの観光ガイド)というのはベタな気もしますが、スーザンは完全肉食系女子でその計算高さや高飛車な態度とは好対照で、アーサーがナオミを選ぶのもむべなるかなと思わせてくれます。ちなみにスーザンの父親も会社乗っ取りを企みアーサーを脅してくるのですが、そのやり方はかなり強引。スーザンはその血を引いてるわけですからねぇ
バッドマンモービルを乗り回したり、彼女とのデートにグランドセントラル駅を貸し切ってオリジナルペッツ(これって嬉しいものなのかは理解できなかったけど)をプレゼントしたりは、さすが大富豪のボンボン

乳母役がヘレン・ミレンだってのが一番の拾いものでしたもしかしたら彼女の名前があったので録画したのかも
本当はホブソンが叱るべきところは叱ってちゃんと躾をしていたらこんなおバカちゃんには育たなかったと思うのですが、忙しい母親に顧みられずに育ったアーサーを不憫に思うあまり甘やかしてしまった気持ちもなんかわかるぞ~

ホブソンはアーサーに従属しているわけじゃなく、かなり辛辣だし、際どい下ネタも連発します。このギャップが妙にはまるというか楽しいのねそしてアーサーの恋模様よりホブソンとの掛け合いの方が面白く感じたというこの人がいたから作品が締まった気がします。
病床のホブソンがダースベイダーの面を被ってる図なんてもう最高!
そして甲斐甲斐しく看病するアーサーにも変化が。

スーザンと婚約していることがバレてナオミに振られ、ホブソンも亡くしてしまったアーサーですが、結婚式当日、パンツ一丁だけになり逃げだしてナオミの元へ向かいます
でもね~そこでハッピーエンドとなったら彼は変われない。再度振られて、やっと本気で自分を変えようと自立支援の会などにも参加するようになるんですね~

ま、最後はスーザン父子の腹黒さに気付いた母親も折れてアーサーとナオミはめでたしな結末を迎えるのですが

ラジ―賞にノミネートされたそうですが、そこまでお下劣な作品ではなかったような

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