2016年9月17日公開 129分 G
2020年7月31日放送「金曜ロードSHOW!」
退屈することを何よりも嫌うガキ大将の少年・石田将也は、転校生の少女・西宮硝子へ好奇心を抱き、硝子の存在のおかげで退屈な日々から解放される。しかし、硝子との間に起こったある出来事をきっかけに、将也は周囲から孤立してしまう。それから5年。心を閉ざして生き、高校生になった将也(声:入野自由)は、いまは別の学校へ通う硝子(早見沙織)のもとを訪れる。(映画.comより)
大今良時の漫画「聲の形」のアニメーション映画化作品です。
高3になった石田将也が、バイトを辞め、持ち物を売り、口座から全財産を引き出して母の眠る枕元に置いて家を出て橋の上から飛び降りようとする場面から始まります。
将也が小6の時に転校してきたのが、聴覚障害を持つ西宮硝子です。彼女は筆談用ノートを使ってクラスメイトと交流しようとしますが、受け入れられず苛められるようになります。その先頭を切ったのが将也や植野直花です。やがてこの苛めが問題となり、将也が壊したり捨てたりした補聴器は将也の母が弁償しますが、硝子は転校してしまい、それ以後将也は逆に苛められるようになります。中学生になっても孤立が続き、彼は「自分がしたことは自分に跳ね返る。自分は罪を背負い、罰を受ける必要のある人間である。」と心を閉ざしてしまっていました。
飛び降りに失敗した将也は、硝子が通う手話サークルを訪れます。彼女と再会した将也は、思わず手話で「友達になってほしい」と話しかけます。本当はまず謝りたかったんですけどね(^^;硝子と話をしようとする将也ですが、彼女の妹の結弦(悠木碧)に阻まれます。でも、同じクラスの永束と友達になり、彼の助力で将也は硝子と会うようになるんですね。二人は小学生時代硝子と仲良くしていた佐原や硝子をいじめていた植野とも再会し、同じクラスの川井や真柴とも親しくなっていきます。周囲に心を閉ざしていた将也の視線で見る景色は、クラスメイトの顔にバッテンが付けられていて顔の見分けができないのですが、心を開くとそれが剥がれて顔が見えるようになっていました。
皆で遊園地に遊びに行って久しぶりに人との関わりを楽しいと感じた将也でしたが、昔の苛め事件を蒸し返したことで再び孤立してしまいます。
硝子の母と妹と4人で花火大会を見に行った夜、一人先に帰った硝子がベランダから飛び降りようとしているのを助けた将也が転落して意識不明になります。硝子が自殺しようとしたのは自分のせいで将也たちに迷惑をかけていたと思ってしまったから?繋がりたいのに繋がれない思いが二人をずっと苦しめてきたのですね。でもその思いを内側に溜めているだけでは事態は変わらないのです。ありのままの自分を受け入れ肯定することから始めなければなりません。意識を取り戻した将也は病院を抜け出し、橋の上で泣いている硝子を見つけ、彼女に「君に生きるのを手伝ってほしい」と言います。
退院した将也は、硝子を連れて高校の文化祭にやってきます。周囲の冷ややかな視線を避け俯く彼の周囲に佐原や植野、川井や真柴が集まってきます。原作では彼らのもっと深い人物設定がなされているのでしょうけれど、アニメでも本音を曝け出しあった後に生まれた友情を感じることができました。周囲の人物から全てのバッテンが剥がれ、将也の心が外に向かって開けられたラストシーンです。
苛めの被害者だけではなく、加害者の方も心に傷を負う姿が描かれています。小学生の将也がしたことは、度を越した振舞いでしたが、彼自身にそれほどの悪気はなかった。でも母親が詫びて大金を弁済している姿や、以後のクラスメイトの態度に、初めて自分がした事の重大さに気付きます。謝ろうにも彼女は転校して目の前から消えています。苛められる側になって、より一層彼女の苦しみを思うようになり、自分自身をも追い詰めていったのであろう姿はいっそ痛々しいくらいです。それは裏返せば彼の正直さでもあります。
硝子と仲が良かったけれど、結局何もできなかった佐原や、傍観者だったくせに非難だけはする川井より、直接苛めていた植野の方がストレートに硝子と向き合おうとしているように感じました。彼女は表面だけ取り繕って本音を見せなかった硝子に腹を立てていたのかも。
硝子の妹(最初は男の子に見えたしそう錯覚させていた)の結弦が、年下だけど一番大人な印象です。彼女なりに姉を心配し見守っている姿がけなげでもあり可愛くもあります。
飛び降りシーンが二度も登場するし、どちらかというとネガティブな感情が優位に立ってしまいますが、その中で必死に生きることを選び取った二人の姿に勇気をもらう人も絶対いるだろうなと思いました。