杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

オール・ユー・ニード・イズ・キル

2014年12月31日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年7月4日公開 アメリカ 113分

「ギタイ」と呼ばれる謎の侵略者と人類の戦いが続く近未来。戦闘に対して逃げ腰な軍の広報担当官ウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は、殲滅作戦を指揮するブリガム将軍(ブレンダン・グリーソン)の不興を買い、最前線に送られてしまう。配属されたJ分隊の兵士たちは彼に非協力的で、武器の安全装置の解除の仕方さえ教えられないまま戦場に放り込まれたケイジは青白く輝くギタイと相打ちになって死亡する。ところが次の瞬間、出撃前日に戻ってしまう。再び戦死するとまた同じ時間に戻るタイムループから抜け出せなくなったケイジは、同様にタイムループの経験を持つ「ヴェルダンの女神」「戦場の牝犬」の異名で知られる英雄リタ・ヴラタスキ(エミリー・ブラント)に訓練を施され、次第に戦士として成長していく。戦いと死を何度も繰り返し、経験を積んで戦闘技術を磨きあげていったケイジは、やがてギタイを滅ぼす方法の糸口をつかみはじめる。


何度も同じ日を繰り返し、そのたび何度も殺されるってしんどそうと予告編を観た時に思いました。原作は日本のSF小説「All You Need Is Kill」(桜坂洋 著)だったのか何度も何度もリセットされる一日が繰り返されますが、それでいて少しずつ主人公の戦闘能力や経験値がUPしていくのですね。ゲームの世界で主人公がレベルアップしていくのと同じです。

ケイジは実戦経験もない口だけの男でした。広報官になったのも戦場で負傷したくないからという実に身勝手(ある意味正直)な人間です。ところが、将軍の不興を買って二等兵に格下げされ最前線に送り込まれてしまいます。敵の攻撃を受けあっけなく戦死するのですが、その際「アルファ」と呼ばれるギタイを道連れにしたことで、同じ日を延々ループすることになるの。
殺されるたびにリセットされて振りだしに戻るのはともかく、毎回殺される痛みというのは相当なものだと思うなぁ

孤独な戦いを続けるケイジでしたが、リタと出会うことで共に戦う仲間を得ます。彼女もケイジと同様にループに巻き込まれた過去を持ちますが、負傷した際に受けた輸血でその能力を失っています。
未来から過去へ情報を伝送する役割を持つ「アルファ・ギタイ」の青い体液を浴びたことでそのループ能力がケイジに移ったのだとリタに説明され、彼女の協力者のカーター博士(ノア・テイラー)から、そのループ能力を利用して「オメガ・ギタイ」を倒すことが人類を滅亡から救う唯一の方法と教えられたケイジは、リタの容赦のない特訓と、ダメとなったら即リセット(銃で一発の潔さがゲームでミスってリセットボタンを押す時と重なりちょっと笑える)することで、優秀な兵士に成長していくのです。

何度繰り返しても滅亡を避けることができず、しかもオメガの居場所もケイジをおびき出すための幻覚だったと気付いたケイジでしたが、カーターが開発した機材を使うことで、本当の居場所がパリのルーブル美術館のピラミッドの地下にあると突き止めます。しかし負傷して輸血を受けたことで彼のループ能力が失われてしまうの。ボスキャラ目前でリセット回数制限の最後の一回になってしまったというわけですもう失敗はできない状況で、今までの経験をフルに生かし、J分隊の協力を得て遂にオメガと対決しこれを倒した彼は、その青い体液を再び浴びてループ能力を再獲得します。(トムだもんね~~そのままやられっぱなしのヒーローになるわけないよね)ブリガム将軍と出会って地位を剥奪される直前まで戻った彼は、人類の勝利を目にします。もちろん無傷なJ分隊やリタとも再会してエンドロール・・めでたしめでたしです

劇中、兵士たちは機動スーツと呼ばれるパワードスーツを装着して戦います。(動力は電気のようで、だからバッテリーが切れると動けません。)ギタイは水棲のイソギンチャクの化け物のような外見で素早い身のこなしですが、銃で簡単に撃ち殺されるあたりはそれほど高等種には見えませんでした主人公の腰の引けた新兵から百戦錬磨の兵士への変貌は顔つきからも窺えて、そのあたりはさすがの演技ですね

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かぐや姫の物語

2014年12月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年11月23日公開 137分

昔々、山里に住む竹取の翁(地井武男・三宅裕司)が、早春のある日光り輝くタケノコの中に姫を見つけた。翁と媼(宮本信子)によって「天からの授かりもの」として育てられた姫(朝倉あき)は半年余りで少女へと成長し、捨丸(高良健吾)ら木地師の子どもたちから「タケノコ」と呼ばれ、自然の中で彼らと遊びながら育つ。その後も光る竹から黄金や豪奢な衣装を授かった翁は「高貴な姫君として育てよ」との天啓と受け止め、都に屋敷を建てて秋に一家で移り住む。
翁が宮中から招いた女官の相模(高畑淳子)から行儀作法をみっちり躾けられた姫は、「なよたけのかぐや姫」という名を与えられ、裳着の儀(成人儀礼)と披露目の宴が行われる。門前には求婚者が列をなし、評判を聞いた5人の公達が揃って求婚に訪れる。困った姫は、自分を珍しい宝物に例える彼らに、その宝物を持参することで気持ちの証を立てるように言う。3年経って宝物を持参した公達が現れるが、贋物だったり、嘘付きだったり、宝物を見つけようとして死んだ者まで出て、姫は自らを責め悲しむ。噂を聞いて遂に御門(中村七之助)までが姫を請うが拒絶される。しかしそれ以後姫は塞ぎ込むようになり、心配した翁夫婦に自分は月から来たもので、今月15日には迎えがきて月に帰らねばならないと告げる。驚いた翁は何としても姫を行かせまいとするが・・・。


日本最古の物語といわれる「竹取物語」を題材にした高畑勲監督・スタジオジブリ制作のアニメーション映画です。予告編を観た時の絵の粗さが気に入らず劇場鑑賞はパスしたけれど、興味はありましたのでDVDで鑑賞

実写と見紛うほどリアルなアニメーションを見慣れてる目には、「日本昔話」風の作画は素朴に映ります。それはそれで味わいはあるのだけれど、姫が走るシーンなどは素朴というより絵コンテ?と思うような粗雑さを感じます。でも脚本は良く練られていて、原作にはない捨丸兄ちゃんや女童(田畑智子)を登場させることで、姫の感情の幅を広げているように感じました。

驚異的なスピードで成長する姫を化け物扱いすることもなく、自然に受け入れる老夫婦と子どもたちの姿が童歌を、何故か知っている姫は、誰も知らない二番の歌詞も歌えます。節も少し異なる哀愁を帯びたその歌を歌う時、姫の目には涙が浮かぶのですが、それは彼女が地上に生まれた理由と深い繋がりがありました。

翁は姫を高貴に育て縁付かせることこそが自分の使命と信じて、都に屋敷を建てて引っ越します。自然児として育った彼女が都の窮屈な暮らしを好きな筈もないのですが、翁はちっとも気付きません。媼の方がまだ姫の気持ちに添う様子をみせます。(母性を象徴しているのかな?)

お披露目の宴の最中に酔った客からの暴言を耳にして耐えきれなくなった姫は屋敷を飛び出して故郷の山に辿り着きます。この時の描写は荒々しく、人間を超えた者という雰囲気を漂わせていました。でも山に捨丸たちの姿はなく、冬景色を見たことのない姫は出会った炭焼きの男に「山は死んだの?」と尋ねます。「山は再び訪れる春を待っているのだ」と聞かされた姫は自分も「待つ」ことを決意するのです。この時、雪の中で行き倒れた筈の姫が意識を取り戻すと屋敷の中にいて殆ど時間の経過もないというのも彼女の特異性を現すエピソードですね。

大人になった(初潮を迎えた)姫に、結婚こそ究極の幸せと考える翁は大喜びで、5人の求婚者を連れてきます。しかしその気のない姫は彼らの言葉を利用して断る口実を見つけ体よく追い払いますが、3年後、「宝物」を携え再びやってくるの(その間、自分がもう自然児でいられないことや、捨丸との思わぬ再会に心が揺れたり傷ついたりといったエピソードが入ります。)

でも車持皇子(橋爪功)の「蓬莱の玉の枝」は職人に作らせた偽物だったし、阿部右大臣(伊集院光)の「火鼠の皮衣」も偽物をつかまされたものでした。石作皇子(上川隆也)は「仏の御石の鉢」の代わりに野に咲くレンゲソウを持参し、甘言を弄して姫の気持ちも動くのですが、そこへ彼の正妻(朝丘雪路)がやってきてその本性を暴きます。な~んだ、ただの女たらしだったのね武人の大伴大納言(宇崎竜童)は「龍の首の珠」を求めて船出したものの、散々な目に遭って逃げ帰ります。可哀相なのは石上中納言で、「燕の子安貝」を取ろうとして落下、骨折がもとで亡くなってしまうの(それぞれの声を当てる俳優の個性に合っていて面白かったです。)
自分のせいで求婚者たちが不幸になったと知り落ち込む姫に追い打ちをかけるような強引な御門の行動が。(源氏物語の光の君を連想させる行為だね)恐れをなした姫は無意識に月に助けを求めてしまいます。このことで自分の出自と地上にきた理由を思い出した姫は、このまま帰りたくはないと泣き伏すのです。

以前地上から戻ってきた天人が、別れて来た恋人を想って歌ったのが童歌の二番だったの。その歌に惹かれて地上に落とされた姫が、今ならその天人の気持ちがわかると言ったのを聞いて、媼は姫を故郷の山へ向かわせます。そこで姫は捨丸と束の間の逢瀬を遂げますが、そのことも捨丸にとっては夢と記憶されることになるのです。そもそも彼にはもう妻子がいるし

昔読んだ物語では、姫の相手は帝であって、愛する人を守るために幾重にも武士たちを配するけれど姫は連れ戻されてしまったと記憶しているのですが、映画では捨丸にその役を振ったようです。(姫は最後まで捨丸「兄ちゃん」と呼んでいましたから、彼女の感情は恋というより思慕だったのかなぁ?)

迎えの日がきて、地上の記憶を失う天の羽衣を着ようとしたとき、女童と子どもたちが歌う童歌が聞こえてきます。それで正気に返った姫は今少しの猶予を願い翁と媼に別れを告げるのでした。羽衣を着て記憶を失った筈の姫が振り返って地球を見た時に流す一筋の涙が彼女の悲しみを象徴するようでした。それにしても姫を迎えに来た月の王が阿弥陀如来そっくりというのはちょっと引くな~~

いくつか??と思うところもありましたが、期待していなかった分、意外といいじゃん!という感想になりました

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アウトレイジビヨンド

2014年12月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年10月6日公開 112分
2014年10月15日 テレビ東京 「シネマスペシャル」放送

関東一円を取り仕切る巨大暴力団“山王会”の配下で勃発した熾烈な下剋上抗争から5年。先代を亡き者にし会長となった加藤(三浦友和)は、若頭に大友組の金庫番だった石原(加瀬亮)を抜擢し、政治の世界にまで手を伸ばし始めていた。そんな山王会の過剰な勢力拡大に業を煮やした警察は、壊滅に動き出す。関西の雄である「花菱会」に目を付けた“マル暴”の刑事片岡(小日向文世)は、脇に追いやられている山王会古参幹部の富田(中尾彬)らを利用し、関東と関西の巨大暴力団の対立を目論む。獄中で死んだと思われていた元山王会配下大友組の組長・大友(ビートたけし)の出所を出迎える片岡には、彼をも利用する魂胆があった。大友はヤクザに戻る気はなかったが、かつて大友の子分だった山王会若頭・石原(加瀬亮)は大友を消そうとする。


「アウトレイジ」の続編です。ヤクザものには食指が動かないので劇場鑑賞の予定はなかったけれど、前作は観ていたのでチョイス。本編の前に前作のあらすじが紹介されていて記憶の巻き戻しに役立ちました

己の利益に衝き動かされる組織幹部らの赤裸々な姿をこれでもかとばかり見せつけられると、たけし演じる昔気質の義理人情に厚い大友や、義憤にかられて彼を刺した元村瀬組の木村(中野英雄)が善人に見えてくるのが面白いところ。

先代を殺して自分が会長に収まった加藤や、大友を裏切った石原(加瀬亮)が悲惨な末路なのは当然ですが、最後まで利用されて使い捨てられた木村がちょっと哀れでした。
何より一番汚いのが自分の出世のために暴力団をも利用し操ろうとする片岡ですね
人懐こい笑顔と裏腹の性格の悪さをコヒさんが上手に演じているのも見どころです。
だから大友がきっちり片岡を罰するシーンはです。

前作に続き汚い言葉の応酬と裏切りの連続に、とても子供には見せられません(R15+指定)。暴力団壊滅のため手段を選ばない片岡(警察)のやり方も賛同はできないけれど、片岡の後輩の繁田(松重豊)のような実直な刑事を登場させて釣り合いを取っている感じです。

色気のあるシーンも殆どなくて男だらけの殺伐とした作品ですが、その奥に熱い人情が見え隠れしていましたたまにはこんな任侠映画もいいかも。

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バイオハザードV リトリビューション

2014年12月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年9月14日公開 アメリカ 96分
2014年11月2日 テレビ朝日『日曜洋画劇場』放送

ウェスカーとの死闘の末、生存者達を救出してタンカーの甲板へ出てきたアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)を、上空からかつてのい仲間のジル(シエンナ・ギロリー)率いるアンブレラ社の戦闘部隊が急襲、海へ転落し意識を失ったアリスが目覚めると、耳の不自由な娘と頼もしい夫を持つ平凡な主婦の自分がいた。だがそこへアンデッドが襲来し、娘と逃げたアリスの前に、自宅で身を挺してアンデッドから逃がしてくれた夫の変わり果てた姿が・・・。再び意識を取り戻したアリスは独房でジルから執拗な拷問を受けるが、突然セキュリティシステムが停止し、逃げ出したアリスの前に、アンブレラ社の元工作員エイダが現れる。エイダが死んだはずのウェスカーの命令で脱出困難なこの場所からアリスを救出に来たことを知り、やむなくエイダと行動を共にする。かつての仲間から攻撃され、かつての敵に助けられるアリスは、果たして実験施設から脱出することができるのか。


シリーズ第五弾です。
地上波放送にあたり、番組の合間にアリスをはじめ今作の登場人物の紹介やミラ・ジョヴォヴィッチとポール・W・S・アンダーソンへのインタビューなどが挟まれていて、初めて観る人にもわかりやすいようになっていました。終了後にはシリーズ第六弾の製作話も。どうやら次で完結するらしい

初めは生物兵器(ウィルス)による人間のゾンビ化だけだったのに、宇宙人のようなグロイ生物へと進化し、コンピューターによる人類絶滅計画へと変貌を遂げ・・・ホラー嫌いでゲームも知らない私には意味不明な物語となってしまいました
ミラのアクションは凄いけれど、戦い自体は早送りでも構わないぞ
専ら関心はストーリーにあるので、次回作でどうオチを付けるのか気になるだけです。

平凡な主婦だったり、研究所の警備員だったり、本当のアリスって一体・・・
前作までに死んだ筈のキャラが何人も再登場するのも、ゲームの世界を反映しているのかな?ゾンビものだから当然ありうる設定ということでしょうか

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初恋のきた道

2014年12月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2000年12月2日公開 アメリカ=中国 89分
2014年10月14日 日テレ「映画天国」放送

都会で働くビジネスマン、ユーシェン(スン・ホンレイ)は父の訃報を聞き、数年ぶりに故郷の村へ帰ってきた。年老いた母(チャオ・ユエリン)は、今では行われなくなった古いしきたり通りの葬儀をすると言って周りの人を困らせている。そんな母の頑固な様子を見て、ユーシェンは村の語りぐさとなっている父と母の恋物語を思い出していた。町からやってきた20歳の若い教師チャンユー(チョン・ハオ)と、彼に恋した18歳の文盲の少女ディ(チャン・ツィイー)。手作りの料理に込めた彼女の恋心はやがて彼の元へと届くのだが……。


ユーシェンの母は、町の病院で亡くなった父を担いで村まで連れてくるという昔のしきたり通りにするといって聞きません。村長は村には若者がいないので無理だから諦めるようユーシェンに頼みます。それでも首を縦に振らず「この村で人出が足りないなら隣の村で担ぎ手を借りて来れば良い」と言います。なんて頑固な女性だろう!と思ったのですが、物語が進むにつれて、母には何としても父を担いで連れ帰りたい理由があるのだとわかってくるの。彼女の想いがじわじわと伝わって来るにつれて、物語にどんどん引き込まれていきました。

途方に暮れるユーシェンの目に入ってきたのは新婚時代の両親の写真。ここから若き日の両親の村の伝説となった恋物語が幕を開けます。
18歳の素朴で純情な娘を若き日のチャン・ツィーが演じていて、その初々しさも見どころ(こんなに美しい娘も数十年たつとば○ぁに変わるのね~~時の流れは残酷だわ)

この若い教師に一目惚れしたディは何とか彼の目にとまろうとひたむきな努力をします。
村に初めてやってきた先生のために学校を建てることから始まるのですが、男たちが食べる昼食を村の女たちが用意するのね。ディは先生に食べてもらおうと美味しい料理を作り目につくように配置します。学校が始まると、先生は村の家々で順番に昼食を頂くのですが、その際にも朝早くから張り切って料理を作るのです。
彼が教える声を聞きたくてわざわざ家からは遠い学校の近くの井戸に水汲みにも出かけます。先生が家の遠い子を送っていくと聞くと待ち伏せしたり、それはもう健気なほどの熱の入れようです。
(ディのお母さんは夫を亡くした悲しみで泣きすぎて目を悪くしていますからこれも血筋なのかも。)

自由恋愛が珍しい時代、村一番の美人だったディに他の縁談がなかった筈はないのですが、映画では触れられていません。先生を好きになっても身分が違うのだから叶わぬ恋だと母親は娘を諌めるのですが、その一方で、町に呼び戻された先生をひたすら待ち続けるディのために、先生が使った思い出の茶碗を(買うより高い修理代を払って)直させるの。せめて思い出の一つは残してやりたいからという親心です。このエピソードから、母は娘の意に染まぬ結婚を無理強いしない人だったことがわかります。ディが先生を好きだということが村中に知れ渡っていたせいかもしれないけれどね

帰ってくると約束した冬の日。雪の降りしきる道でひたすら待つディは病気になってしまいます。
その噂を聞いて町を抜け出し戻ってきたチャンユーは再び連れ戻されてしまうのですが、二年の時を経て二人は結ばれたのでした。

村と町をつなぐ一本道は、二人にとって大切な思い出の道だったのです。

両親にまつわる話を思い出したユーシェンはやはりしきたり通りの葬儀をしてあげようと決心します。村長にお金を渡し人出を集めてくれるようお願いしますが、いざ葬儀の時、担ぎ手はかつての教え子たちが100人も集まったのです。そして誰一人お金を受け取ろうとしませんでした。
チャンユーがいかに生徒に慕われる教師だったか窺えますね

葬儀の後、母はユーシェンに「お前が戻ってきて村で教師をしてくれることが父さんの夢だった」と語ります。教師の資格をとりながらも先生にはならなかったユーシェンですが、村を去る前に、父が一生立ち続けた教壇で、父が初めての授業のために書いた文章を読むのです。その声を聞いた母は若き日の想いを胸に学校へ駆けつけるのでした。

何ともしみじみした余韻の残る美しい作品でした。

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ベイマックス

2014年12月24日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年12月20日公開 アメリカ 102分

先端の技術が集う都市サンフランソウキョウに暮らす14歳の天才少年ヒロは、自ら開発したロボットを使い、アンダーグラウンドのロボット格闘技に夢中になっていた。幼い頃に親を亡くしたヒロの良き理解者である兄タダシは、そんな弟を案じ、自身の通う大学にヒロを連れて行く。タダシの研究仲間やロボット工学の第一人者キャラハン教授と出会い、感銘を受けたヒロは、大学で最先端の科学を学ぶことを決意。しかし、その矢先、不慮の事故でタダシは帰らぬ人となってしまう。目の前で兄を失った悲しみに心を閉ざしたヒロの前に、タダシが人々の心と体の健康を守るために開発したケアロボットのベイマックスがヒロの心の痛みをキャッチして現れる。お節介なほど真剣にヒロをケアするベイマックスに、ヒロも次第に心を開いていく。ヒロの発明品が盗まれたことがきっかけで、ふたりは兄の死が事故でなかったことを突き止め、兄の仲間たちの協力を得て、真相に近づいていくが・・。


本編の前に短編アニメ「愛犬とごちそう」(6分)が上映されました。
子犬の時に拾われ、飼い主から愛情たっぷりに育てられ、肉やお菓子が大好きな犬が、飼い主に菜食主義の恋人ができてヘルシーメニューしか食べさせてもらえずいじけるのだけれど、彼女と仲違いして別れた飼い主を気遣って二人の間を取り持とうとするの。よりを戻した飼い主の元で再びヘルシーメニューに甘んじていた犬ですが、ある日二人の赤ん坊が転がしたミートボールが・・・きっと子供と一緒にまたスイートな毎日が待っていそうなお話でした。でも塩分糖分たっぷりの食事は犬にはいけないんじゃなかったっけ?それにそろそろ寿命じゃぁ・・・なんて考えるのは大人の意地悪ってもんかしら

さて、本編ですが、今回は吹替版での鑑賞ですが(それしかなかったし)声優さんの個性が先走らず話に集中できて良かったです
ベイマックスのキャラ設定もふわふわプニプニな癒し系の外見で、一途にヒロを心配し何があっても守ろうとする姿が健気です。一瞬で健康スキャンしたり除細動器がついてたりと高機能だけれど、ペンギンのようなよちよち歩きでちょっとKY気味なおとぼけ感もあって子供受けします。

予告編を観ていた時は、天才は兄かと誤解していたのですが、ヒロがそうだったのね
兄の死にショックを受けて自分の殻に閉じこもったり、真相を知り激怒して犯人を殺せと命じるなどのストレートな感情はまさに思春期の少年のもの。
兄の研究仲間たちがヒロに協力してくれたのは、真相解明ということもあるけれど、ヒロを気遣い元気になって欲しかったから。ヒロが行き過ぎた行為をしようとした時はやんわり窘めてくれます。
心配でたまらないのだけれど、さり気なく接してくれる育ての叔母も良かったな。

いかにも悪そうなキャラは実はそうでもなくて、一見善人が・・というのはよくあるパターンですが、その彼にもある事情がありました。だからといって行為が正当化されるわけではないのですが、愛情故に凶行に及んだわけですね。ヒロが憎しみを超えて許しを与えたように「犯人」もそうできたら良かったのにね。

時空の乱れの中で、ヒロと「犯人」の娘を救うためにベイマックスは自らを犠牲にします。そのシーンはなかなか感動的です。ディズニー作品ですから、最後には「希望」を残しているしね
肉体は滅んでも心は!ということですが、ロボットの場合は記憶チップなのね

冬休みに子供と観るのにぴったりな作品ですが、大人一人でも楽しめました。

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ネイチャー

2014年12月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年5月2日公開 イギリス 87分

「ディープ・ブルー」「アース」のBBC EARTHの製作。
少女が案内人に導かれ、水の旅へ出かけるという設定はほぼ定型になってきた感がありますね今回のテーマはずばり「水」。「謎めいた森」「燃え盛る地下世界」「異国の砂」「灼熱の平原」「魅惑の海中都市」「凍てつく山脈」「荒れ狂う激流」の7つの自然の領域を旅します。

都市の噴水に戯れる子供たちから視点は空へ、そしてアフリカの熱帯雨林へと誘い込まれます。

マウンテンゴリラの子供たちのじゃれ合いは冒頭の人間の子供のそれと変わらないな~と思いながら観ていると、今度は火山地帯に。何千羽のフラミンゴたちの緋色の源である湖での壮大な求愛ダンスに目を見張り、ナミビアの砂漠の生き物たち(ヘビやカメレオンなど)の生きる知恵に感嘆。灼熱の砂で火傷しないよう片手片足を上げるトカゲのダンスは愛嬌があるけれど、これも生きるための必死な姿なのね。

ついで場面はサンゴ礁が広がる紅海へ。日の当たる場所の華やかで穏やかな様相が日の差さぬ場所では一変、ミノカサゴの狩猟の場に。彼らも共同で狩りをするのね~
今度は凍てつく高山で繰り返される昼と夜の厳しい自然が目の前に広がります。高度な撮影技術を駆使して繰り広げられる自然の営みに圧倒。猿の群れはひと時の癒しです。

今回の最大の見所といえるヴィクトリアの滝への旅は壮観川の流れと自分が同化したような不思議な臨場感がありました。
ナイルワニが水辺にやってきたヌーを狩る迫力も生きる厳しさを見せつけます。
そして再び雷鳴の中を現代都市へと戻り旅はおしまい。

アフリカに限定された今回の「旅」は正直今までよりスケールが小さいかなと思ったのですが、その撮影技術は遥かに進歩しています。新たに開発した特注の撮影機材を用いた4K3D映像はスクリーンで観た方が遥かにリアルで迫力があるんだろうなぁ。劇場鑑賞すべきでした

海の大波の映像はプロのサーファーの協力を得て撮られたそうで、滝のシーンでも登山家が、他にも様々な分野のスペシャリストが関わり迫力ある自然の姿を映し出しています。それらのメイキング映像がDVDの特典に入っていて、膨大な時間と労力をかけて一瞬の煌めきを魅せるための努力に脱帽です。これを見て再び本編を観るとより楽しめるかも

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ハンナ・アーレント

2014年12月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年10月26日公開

1960年、ナチス親衛隊でユダヤ人の強制収容所移送の責任者だったアドルフ・アイヒマンが、イスラエル諜報部に逮捕される。ニューヨークで暮らすドイツ系ユダヤ人の著名な哲学者ハンナ(バルバラ・スコヴァ)は、彼の裁判の傍聴を希望。だが、彼女が発表した傍聴記事は大きな波紋を呼び……。 (シネマトゥデイより)


ハンナ・アーレントはドイツ系ユダヤ人で、第2次世界大戦中にナチスの収容所から逃れてアメリカに亡命した哲学者です。といってもこの映画を観るまで全く知らなかったんですが
(彼女は社会民主主義者のユダヤ人家庭で育ち、大学でハイデガーに哲学を師事。既婚者のハイデガーとは一時不倫関係に。最初の夫シュテルンと離婚後ハインリヒ・ブリュッヒャー(アクセル・ミルベルク)と再婚。フランスのグール強制収容所に連行されますが脱出しアメリカに亡命。ユダヤ系ドイツ語新聞にコラムを執筆して生計を立てながら大学の客員教授を経て1959年にプリンストン大学初の女性専任教授に就任という経歴です。)

彼女がアイヒマンの裁判を傍聴したのは、悪魔の所業の手先を務めたアイヒマンという人間をその目で確かめ、彼がどういう人間なのかを知りたかったからでしょう。ところが、実際に目の前で見たのは自分の感情(人間性)を封じ込め、ただ己の任務にのみ忠実であらんとした、小役人タイプの凡庸な男でした。とんでもなく冷酷な悪人を想像していた彼女は混乱し、なぜそのように凡庸な男がこれほどの悪を成したのか必死に答えを探します。

彼女は哲学者らしく思慮深く冷静に分析して、レポートをザ・ニューヨーカー誌に発表するのですが、その中に当時の収容所で指導者的立場にいたユダヤ人を批判する一行があったことから、彼女がアイヒマン(=ナチ)を擁護しているかのような誤解を世間に与え、また同胞のユダヤ人からも激しい非難を受けます。
予想していた以上の世間のバッシングに思い悩む彼女を支えたのは夫や秘書、それに親友のメアリー(ジャネット・マクティア)です。

大学からクビを宣告されながらも、満場の学生たちに講義した最後のスピーチは、胸を打つ内容です。
彼女は裁判の中でアイヒマンが証言した「自発的に行ったことは何もない。善悪を問わず自分の意志は介在せず、ただ命令に従っただけ」という言葉から、彼にとって、収容所へ送られた大勢のユダヤ人は人間ではなく、したがって罰するとか赦すとかの選択肢は初めから欠落しているのだと分析しています。(だからといって彼女がアイヒマンを擁護しているわけでは決してありません。罪は罪であり、彼のしたことは赦されることではないのですから当然です。)

上からの命令に忠実に従うアイヒマンのような小役人が、思考を放棄し、官僚組織の歯車になってしまうことで、ホロコーストのような巨悪に加担してしまうことを、彼女は「悪の凡庸さ」と名付けた概念で説明しました。世界最大の悪は、動機も信念も邪心も悪魔的な意図もないごく平凡な人間により引き起こされてしまうのだと。ナチがもたらしたのはモラルの崩壊であり、思考を止めるということはモラルの判断も不可能になるということ。どのような状況下に置かれても思考を停止してはいけない。考えることで強くなり破滅を避けられるのだと彼女は訴えます。

彼女の概念は学生たちには拍手で受け入れられますが、古い付き合いのクルト(ミヒャエル・デーゲン)やハンス(ウルリッヒ・ノエテン)には理解してもらえず、世間的にも賛否両論を巻き起こしました。
映画ではハンナが収容所時代にどのような経験をしたのかには触れられていませんが、彼女が同胞の指導者に対して抱いていた感情についてはレポートの一文で十分に説明がつくと思います。

私は「悪の凡庸さ」という概念を支持します。
今まさに、私たちの凡庸さが平和な日々の終焉に加担しているように思えてならないからです

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ホビット 決戦のゆくえ

2014年12月15日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年12月13日公開 アメリカ 145分

はなれ山にあるドワーフの故郷エレボール奪還を果たしたビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)たちだったが、一頭で一国を滅ぼすと伝えられる恐るべき邪竜スマウグ(声:ベネディクト・カンバーバッチ)を世に解き放ってしまう。怒り狂ったスマウグは、湖の町の無防備な人々、子供にまでその報復の炎を降りそそぐ。一方、ドワーフの長トーリン・オーケンシールド(リチャード・アーミティッジ)は、取り戻した財宝に執着し、友情と名誉を犠牲にして我が物にしようとするが、それを知ったビルボは彼に道理をわきまえさせようとする。だがビルボたちの行く手には強大な魔の手が迫っていた。復活を遂げた冥王サウロンが、オークの大軍勢を放ち、はなれ山に奇襲を仕掛けたのだ。滅亡へのカウントダウンが迫る中、対立が深まるドワーフ、エルフ、そして人間たちは、結束するか滅ぼされるか、究極の決断を迫られる。ビルボはその壮大な決戦で、自身と仲間たちの命を守るために立ち上がることを決意。それは中つ国の命運を握る最後の戦いであった……。(Movie Walkerより)


「ホビット」シリーズ3部作の最終章です。
燃えさかる炎の中、鐘楼から黒い矢を放ちスマウグを退治したのはバルド(ルーク・エヴァンズ)です。その伝説の矢を持ってきたのは彼の息子。一方町の統領は金貨を積んだ船で一番先に逃げ出そうとしてスマウグの下敷きに。(ざまーみろ)だけど、おべっか使いのアルフリドはその前に湖に突き落とされていて無事なのね。そして今度はバルドに取り入ろうとしたり、戦いになると女装して女子供に紛れようとするなどみっともない姿をこれでもかと見せます。そんな彼が最後まで無傷で逃げ出すのは何を示唆しているのかしらん?

バルドは家を失い傷ついた町の人々を連れてエレボールへ避難しますが、「竜の病」に蝕まれて財宝に目が眩んだトーリンは、門を固く閉ざしてしまいます。トーリンの変わりようをみて、ビルボは「アーケン石」を彼に渡すことをためらいます。この石を渡せば彼の病は一層ひどくなることが目に見えていたからです。前作までは良い王だったトーリンの変わりようは痛ましく映りますが、ビルボの決死の働きに心を動かされ、己の愚かさに気付いて王の自覚を取り戻したトーリンは最後は雄々しく戦うので何だかホッとしました。例え名誉の戦死を遂げても彼の武勇は伝説となったからです。彼がドワーフの仲間を前に言った「信じてくれとは言わぬ・・もう一度だけついて来てくれぬか?」のセリフは名言ですね

一方、ドゥルグドゥアで空中牢に閉じ込められたガンダルフ(イアン・マッケラン)は危機一髪の所で、ガラドリエル(ケイト・ブランシェット)、サルマン(クリストファー・リー )、エルロンド(ヒューゴ・ウィーヴィング)に助け出されます。3人の中でも飛び抜けた力があるのはガラドリエルなのね~そしてこのころはまだサルマンも味方だったのよね救出にはラダガスト(シルヴェスター・マッコイ)も一役買っています

オークの軍勢がエレボールに向かっていることを伝えようとしたガンダルフですが、エレボールでは財宝を巡っての争いが勃発していました。説得も空しく、エルフの秘宝を取り戻そうとする闇の森の王スランドゥイルと新しい町の建設のために「約束の分け前」を求めるバルドたち人間が手を組み、助勢に駆けつけたトーリンの従兄弟でくろがね山のダイン(ビリー・コノリー )の軍勢との間で一触即発の事態となった時、アゾク率いる闇の大軍勢が突如現れ事態は急変します。三軍は共にオーク勢に立ち向かうのですが、徐々に追い詰められ・・・。そこに正気に戻ったトーリン率いる戦士達がアゾクらに敢然と立ち向かうのです。

前作までで互いの恋心に気付いたキーリ(エイダン・ターナー)とタウリエル(エヴァンジェリン・リリー)。共に生きる道も選べたのにそれぞれの使命を選んだ二人ですが、最期の戦いで互いを気遣い庇ってキーリは戦死してしまいます。(兄のフィーリも戦死ですからエレボール王の直系は絶えたことになるのかな?)残されたタウリエルの「愛がこんなに切ないものなら知らなければよかった」の叫びが悲痛です
そして彼女を想うレゴラス(オーランド・ブルーム )の気持ちを考えるとこれもまた辛いものが

さて、ビルボはトーリンら仲間のためを思ってアーケン石をスランドゥイルに渡すのですが、スランドゥイルがどうしても手に入れたがった首飾りは亡き妻のものだったのかな?戦いが終わり、でも闇の森には帰らないと言ったレゴラスに「では北のストライダーと呼ばれる者を探すが良い」と告げます。アラゴルンとレゴラスの出会いはこの後なのですね
ホビット荘に戻ったビルボを待っていたのはまさに競売にかけられている我が家の家具雑貨でしたまぁ一年も留守にしてたのだから死んだと思われても仕方ないけど、本人を目の前に「本人である証拠を見せろ」はないよねぇ

原作はごく短い短編とのことですが、三部作まで膨らませたのは凄い。
ファンタジー好きとしては満足できる作品でした

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ポンペイ

2014年12月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年6月7日公開 アメリカ 105分

ローマ人に一族を滅ぼされたケルト人騎馬族の生き残りで、奴隷となりグラディエーターとして成長したマイロ(キット・ハリントン)は、ポンペイの有力者の娘カッシア(エミリー・ブラウニング)と出会い、身分の差を乗り越え恋に落ちる。しかし、カッシアは、かつてマイロの家族を殺したローマの上院議員コルヴス(キーファ・サザーランド)に婚約を迫られていた。コルヴスの策略で闘技場でローマ兵相手に死闘を演じさせられるが、ベスビオ山の噴火により治安は崩壊し自由の身となったマイロは、愛するカッシアを救うため、溶岩が迫りくる街へと舞い戻る。


マイロ役の俳優さん、どこかで観た顔だな~と思ったらテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のジョン・スノウだ~~!

マイロは友も仲間も持たない孤独な青年でしたが、ポンペイで初めて友を得ます。それは同じ剣闘士のアティカス(アドウェール・アキノエ=アグバエ)です。年長のアティカスは剣闘士の誇りをマイロに教えます。決して友好的な出会いではなかったものの、家族をローマ人に殺されたという共通の過去があったことや、互いの能力を認め合ったことなどから次第に友情が育っていくのでした。

カッシアの父セヴェルス(ジャレッド・ハリス)はポンペイの町をより栄えさせようとコルヴスを招き投資させようとするのですが、娘が当のコルヴスから逃げてきたことを知りませんでした。皇帝が代わり堕落したローマの政情やコルヴスの本性に気付かなかったのです。今も昔も情報は強力な武器なのよね

カッシアとマイロは馬を通じて親しくなっていきます。出会いはポンペイに戻る途中のカッシアの乗った輿を引く馬がぬかるみに足をとられて倒れた時に、マイロが馬が苦しまないような最期を与えてやったことです。
噴火の予兆に興奮するカッシアの愛馬を宥めたことで二人の距離は急速に近づきましたが、それが原因でマイロはコルヴスに目をつけられてしまいます。

闘技場でなぶり殺しにされそうになった時、マイロとアティカスは協力して闘います。その時火山が噴火、町は大混乱に陥るのです。建物の下敷きになったカッシアの母アウレリア (キャリー=アン・モス)から彼女が屋敷に幽閉されていることを知らされたマイロは、彼女を救い出し港へ急ぎますが、退路が塞がれてしまいます。馬を手に入れるために闘技場へ戻った彼らをコルヴスが襲いカッシアを奪われてしまい・・・一連の救出劇はなかなかスピード感もあり面白かったですまた、噴火の様子は恐ろしく、町がなすすべもなく崩れ落ちていく様は迫力がありました。同じ火山大国である日本も決して他人事ではないと思うとなおさらです。

闘技場でコルヴスの部下と闘ったアティカスは相討ちとなるのですが、その最期は誇りに満ちたものでした。
一方コルヴスの最期はカッシアのとっさの知恵で鎖に繋がれたまま火砕流に呑み込まれる悲惨なものです。

これで晴れて二人で自由を手に入れたのね、と思ったのも束の間、自然の猛威の前には人間はとてもちっぽけで無力なのですねけれど、愛する者だけを見つめ、抱き合って事切れるなら、それも幸せってものなのかも。時を経て発見された二人の姿は永遠の恋人として伝説になったのですから

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ポリス・ストーリー/レジェンド

2014年12月07日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年6月6日公開 中国 108分

ベテラン刑事ジョン(ジャッキー・チェン)は、半年ぶりにひとり娘のミャオ(ジン・ティエン)に会うため、歓楽街にある工場を改装したナイトクラブを訪れる。ミャオはジョンに経営者のウー(リウ・イエ)と付き合っていると告げ、ジョンは反対するが、そこに客同士のトラブルが発生。仲裁に入ったジョンは何者かに殴り倒され、気が付くと椅子に拘束されていた。クラブの出入口は封鎖され、無数の爆弾とともに、ジョン親子を含む十数人の客が人質となっていた。事件の首謀者はウーで、彼は自ら警察に通報し、ある取引を持ちかける。ジョンは見張りが交代した隙に拘束を解き部屋を脱出。バー内部やウーに関する情報を集めるうちに、この人質事件が自身が5年前に関わったある事件と関係している事を知る…。


仕事一筋で家族と過ごす時間も殆どないまま、妻の死に目にも会えなかったジョンを許せないミャオは、敢えてジョンに反抗的な態度を取っていましたが、事件が起きると父を応援し協力します。

5年前にジョンが関わった事件で殺された被害者の兄がウーであり、何故妹が死ぬことになったのか真実を知りたいがために、当時の関係者を集めて人質にしたというわけ
今まで組織犯罪とか凶悪犯を相手にしてきたことに比べると、今回は何だか内容的にはレベルダウンな印象が拭えません。ジャッキーも年齢的に大がかりで派手なアクションはそろそろ卒業というところでしょうか

ウーはジョンが妹を救えなかったことを恨んでいたようですが、関係者の証言により、彼女は殺されたのではなく事件に乗じて自殺したことがわかります。失恋が原因ではありますが、その遠因は実はウーにあったのです。って・・なんじゃそりゃ~~
更にその時、ジョンの妻が交通事故で瀕死の状態であったこと、その連絡が携帯にあったけれどジョンは仕事中だったため知らなかったことも明らかになるの。

真実を知り自らを罰しようとするウーをも救おうとするジョン。母の死の際、何故父が立ち会えなかったのかを知り長年のわだかまりが解けたミャオ。
ジャッキー映画のセオリー通り、死人を出さずに救いのあるラストも

何だかシリーズにおける「ちょっと一休み」的位置づけの感がありました。


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はじまりは5つ星ホテルから

2014年12月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年2月1日公開 イタリア 82分

フランス・パリのオテル・ドゥ・クリヨンをチェックアウトしたイタリア人のイレーネ(マルゲリータ・ブイ)は、世界の5つ星ホテルのサービスをチェックする覆面調査員だった。誰もが憧れる仕事をしているが、私生活では40歳独身。それでも自由な生活を謳歌していた。イタリア・トスカーナのフォンテヴェルデ・タスカン・リゾート&スパで調査中のイレーネの前に、元婚約者アンドレア(ステファノ・アコルシ)が現れる。今は親友のアンドレアは、現在の彼女との間に子供ができたことを相談し、自分たちに子供ができていたら産んだかとイレーネに尋ねる。イレーネは、必要ないから産まないと答える。ある日イレーネは、ローマにある妹夫婦の家で過ごしていた。2人の娘を持つシルヴィア(ファブリツィア・サッキ)はイレーネの将来を案じるが、イレーネは姪が世話してくれるとかわし、姪たちと絆を深めるため南イタリア旅行へ出かける。しかし夜になるとママに会いたいと泣かれてしまい、失敗に終わる。イレーネは仕事で行ったモロッコ・マラケシュのパレ・ナマスカで素敵な男性と楽しいひとときを過ごすが、愛妻家という言い訳でフラれてしまう。ローマに帰ったイレーネは、子供が産まれる彼女の側にいるために新居を探すアンドレアに同行する。次第に父親の責任を持ちつつあるアンドレアに、なぜか冷たい態度をとってしまうイレーネ。さらにシルヴィアとも些細なことで喧嘩してしまう。イレーネはドイツ・ベルリンのホテル・アドロン・ケンピンスキーで、人類学者ケイト(レスリー・マンヴィル)と意気投合する。翌日、一緒にトルコ街に行く約束をするが、突然の別れが訪れる。将来への不安から孤独を感じたイレーネは、ローマに戻ってもシルヴィアと仲直りできず、さらに孤独を深める。思わずアンドレアにすがるが、彼にはまもなく新しい家族ができる。華やかで自由な人生と引き換えにある孤独に気づいたイレーネは、自分らしい人生の旅の答えを出す。(Movie Walkerより)


世界の5つ星ホテルを泊まり歩いてそのサービスをチェックするという傍からみれば何とも羨ましい生活を送るヒロインですが、淡々と描かれるその日常は幸せというのとは少し違いました。彼女自身が自分の生き方を肯定し満足している間は良いのですが、ふと自分が孤独な中年女性で将来に何の保証もないことに気付いた時、自分の人生について考え直さざるを得なくなるのです。

きっかけは、アンドレアに出来る家族であったり、アバンチュールを期待した紳士からの柔らかな拒絶であったり、子供に慕われる妹の母としての姿であったり、自分と同じような境遇のケイトの突然の死だったりですが、それらが徐々にイレーネの心境に変化をもたらすことになります。

GFに子供が出来て戸惑っていたアンドレアが徐々に父親としての自覚と責任を持ち家庭を持とうとすることに反発し、妹が自分を思ってする忠告が煩わしくて喧嘩したりと将来への見えない焦りからぎくしゃくしてしまうイレーネでしたが、やがてありのままの自分を受け入れて生きるという選択をするのです。

世界80カ国、430軒以上の一流ホテルが加盟する世界的なホテル協会「ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド」が全面協力し、実在の5つ星ホテルで撮影されています。覆面調査員が具体的に何をするのかも野次馬的に楽しめました。特に初めて高級ホテルに泊まった新婚さん?への慇懃無礼な応対にホテルの評価を減点するエピソードは共感できます。

ヒロインは自分とは全く違う生き方をしていますが、彼女の悩みは女性ならどこか共感する点があると思います。

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