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杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

図書館のお夜食

2025年04月24日 | 
原田 ひ香 (著) ポプラ社(発行)

東北の書店に勤めるもののうまく行かず、書店の仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、開館時間が夕方7時~12時までで、そして亡くなった作家の蔵書が集められた、いわば本の博物館のような図書館だった。乙葉は「夜の図書館」で予想外の事件に遭遇しながら、「働くこと」について考えていく。(内容紹介より)


読書仲間のお薦めで手に取りました。
本は好きで小中時代は図書館に入り浸っていた身としてはなかなか興味深いタイトルですが、お夜食??と思ったら物語の舞台は所謂普通の図書館じゃなく夜だけ開館している設定なのね。通常の貸し出しはしておらず、館内での閲覧のみ、しかも亡くなった作家の所蔵本だけが収められているというかなり特殊な場所です。そこで働くことになった乙葉の目を通して語られる日々がお夜食に出される作家の作品ゆかりのメニューと共に綴られていきます。

第一話 しろばばんばのカレー
乙葉が働くことになった図書館の職員、管理人の篠井、受付の北里、渡海、みなみ、蔵書整理室の亜子と正子、食堂の木下、掃除の小林が紹介されます。
木下は元カフェ店長で、この夜のまかないは井上靖の小説「しろばんば」に登場するおぬい婆さんが作るカレーを再現したもの(大根が入っていて肉はコンビーフ)。食後の水出し珈琲も時間をかけて抽出したもので、読んでいるだけで美味しそうな香りが想像できます。

第二話 「ままや」の人参ご飯
元警官で図書館探偵の黒岩は警備員の役割。
作家の田村淳一郎が突然押しかけてきて、先日亡くなった友人の作家・白川忠介の蔵書を見せろと我儘な無茶ぶりを要求します。強引さに押し切られ整理前で離れた場所にある倉庫からの運搬をさせられた乙葉たち。田村と白川は些細なことから仲違いをしていたのですが、白川の蔵書の中に自分の著書が全てあったことで田村の中にあった長年のわだかまりが融けます。疲労困憊の乙葉たちの前に出されたまかないは向田邦子の遺したレシピから。素朴な人参ご飯に癒されます。

第三話 赤毛のアンのパンとバタときゅうり
蔵書印のない本(太宰治の『女生徒』)が見つかり、急遽失くなった本がないか調べることになります。元司書だった正子さんの独白では、いつからか本を読むことに心からの喜びを感じられなくなったことが語られます。
休日、本好きな女性が集まって『赤毛のアン』の映画談義からまかないで出たサンドイッチとチョコレートキャラメルの話題になり、亜子が初めて作ったそれの感動が二度目に作った時に薄れたことを話します。うんうん、なんかわかる気がする~。

第四話 田辺聖子の鰯のたいたんとおからのたいたん
覆面作家の高城瑞樹が亡くなり、遺族の希望で蔵書を引き取ることになります。
高城の大ファンだった乙葉も手伝うことになり、高城の部屋を訪れますが、そこで高城の妹を名乗る人物に違和感を覚えます。どうしても高城の死を現実と受け入れられない乙葉はこの妹と覆面作家の関わりについて想像を働かせます。

蔵書印の無い本を置いた犯人は年パスを持つ常連の二宮と判明します。
彼女は時代小説かの故高木幸之助の愛人で、ある目的のために通っていましたが、万引きした本を置く場所がなくなったからという理由で置いていっていました。元書店員の乙葉でなくてもそのあまりにも身勝手な理由に唖然&激怒です。万引きが文化人の間で正当化されていた時代があったなんて更に驚愕です。他に行くところもない彼女の寂しさはわからないでもないけれど、結局唯一の場所すら失うことになるのよね。

まかないのたいたんとは「炊いたもの」 の意で、甘辛く煮付けた鰯の煮付けと、その出汁を使ったおからの煮物でした。

最終話 森遥子の缶詰料理
篠井の正体とオーナーの謎が明かされます。
二宮の事件を受け、図書館の一時閉館がオーナーから指示されます。蔵書整理の後で二週間からひと月ほど休みに入るけれど、休館中も給料は支払われるとのことでしたが、乙葉はこのまま図書館が閉鎖されるのではと不安になります。

篠井は両親を事故で亡くしたあと祖父母たちの親権争いに巻き込まれたあげく劣悪な学校に入れられましたが、伯母であるオーナーに助けられます。伯母の半生(アラブの富豪との恋愛関係や資産管理)も相当ぶっとんでいてちょっとありえね~~!なんですが、小説だからね~😁 
乙葉は図書館の入り口の額に入っていた「蛾」からオーナーの正体に気付いて声をかけ図書館を閉鎖しないで欲しいと訴えます。

乙葉と篠井は互いに好意を感じているように見えます。
覆面作家の正体についてもまだすっきりしていないのでもし続編があるなら読んでみたいかな。(現時点ではなさそうですが)



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アマチュア

2025年04月22日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年4月11日公開 アメリカ 123分 G

内気な性格で愛妻家のチャーリー・ヘラー(ラミ・マレック)は、CIA本部でサイバー捜査官として働いているが、暗殺の経験もないデスクワーカーだ。最愛の妻とともに平穏な日々を過ごしていたが、ある日、無差別テロ事件で妻を失ったことで、彼の人生は様変わりする。テロリストへの復讐を決意したチャーリーは、特殊任務の訓練を受けるが、教官であるヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)に「お前に人は殺せない」と諭されてしまう。組織の協力も得られない中、チャーリーは彼ならではの方法でテロリストたちを追い詰めていくが、事件の裏には驚くべき陰謀が潜んでいた。(映画.comより)

戦闘や暗殺については素人のCIA職員の男が、殺された妻の復讐に乗り出す姿を描いたアクションサスペンス。原作はロバート・リテルの小説。監督はジェームズ・ホーズ。

幸せな日常が一転。愛する妻サラ(レイチェル・ブロズナハン)がテロに巻き込まれて殺されたと知ったチャーリーは、犯人検挙を訴えますが、上司のムーア(ホルト・マッキャラニー)は言葉を濁します。
チャーリーは自分で犯人探しを始め、妻の殺害現場付近の監視カメラの映像を解析して犯人がシラー(マイケル・スタールバーグ)、グレッチェン、エリッシュ、ミシカで、妻を撃ったのがシラーだと突き止めます。しかしムーアは他の大きな案件のため彼らの暗殺に動けないと言います。

納得できないチャーリーは、以前からやりとりしていた相手・インクワライン(カトリーナ・バルフ)からの情報で、ムーアの行った報告書の改ざんや、妻を殺したテロリストがCIAの隠密作戦に関わっていたことを知ります。(隠密作戦にシラーたち傭兵を利用していたけれど、ロンドンでの交渉が決裂し、逃げるためにホテルで人質を取ったシラーたちがサラを殺したのが真相のよう) ムーアにその事実を突きつけたチャーリーは彼を脅して暗殺のトレーニングを要求し、ヘンダーソン大佐から射撃や即席の爆弾製造を習いますが、銃もまともに撃てない彼にヘンダーソンは「お前は殺人者にはなれない」と言われてしまいます。

一方秘密を知られたムーアはチャーリーを始末しようと動きます。

ロンドンからパリに飛んだチャーリーは、グレッチェンのアレルギーを利用して彼女からシラーの居場所を聞き出そうとしますが失敗して逃げられ、追いかける彼の前で彼女は車に轢かれて死亡します。苦しむ彼女を見て思わず扉を解除するなんてまさに素人。道に飛び出した彼女が車に轢かれたのも偶然の結果です。

ムーアの命を受けて追ってきたヘンダーソンを即席の爆弾でまいたチャーリーは、インクワラインに協力を求めます。トルコのイスタンブールで落ち合ったインクワラインは女性でした。彼女の夫は元KGBでしたがCIAに寝返ってKGBに殺され、後を継いだ彼女も命を狙われていました。

スペインのマドリードに飛んだ二人は、ミシカが屋上のナイトプールを独占することを利用して、泳いでいたミシカをプールの底を破壊して地上に墜落死させます(ジェイソン・ステイサムの『メカニック ワールドミッション』を連想させました)が、チャーリーを追ってきたヘンダーソンが他のスパイと鉢合わせして乱闘になり撃たれてしまいます。

インクワラインの協力で、エリックに武器の取引を持ちかけますが、居場所がバレてCIAに襲撃され、逃げる途中でインクワラインが撃たれて死亡します。
エリックとの取引現場で、武器の代わりに爆弾を仕掛けたチャーリーは、シラーの居場所を聞き出して彼を爆殺します。

シラーがいるロシアの港町にやってきたチャーリーは、以前命を救ったCIAスパイの友人のジャクソン(ジョン・バーンサル)と再会し、彼からもう復讐はやめろと説得されますが拒否します。
シラーの部下に拉致され船に連行されたチャーリーに、シラーは銃を渡して撃ってみろと言います。シラーはチャーリーが自分の手で人を殺せないと気付いているのね。
その通りなのですが、実はチャーリーは船の操縦に細工してロシア領海からフィンランドの領海に侵入させていて領海侵犯でシラーたちは捕まります。チャーリーにとってサイバーシステムの操作は朝飯前ですもんね。

ムーアを疑っていたCIA長官サマンサ・オブライエン(ジュリアンヌ・ニコルソン)も密かに捜査を進めていたようで、ムーアは罪に問われ、チャーリーはCIAに復帰となります。彼の前に現れたヘンダーソン(予想通り死んでなかった)から「お前は期待以上だった」と言われ嬉しそうなチャーリー。(ヘンダーソンはムーアの命令で動いていたけれどチャーリーを殺したくはなかったように見えました。)

妻から誕生祝で贈られたセスナ(おんぼろだったのを修理しています)を操縦して空に飛び立つラストシーンでした。
サラの遺品にあったチャーリーへの贈り物はパズルでした。次々犯人を殺していく中、パズルを解いたチャーリーは中に方位磁石と“あまり空高く飛びすぎて迷わないで” という手紙が入っているのを見つけます。
妻を殺したシラーを敢えて殺さなかったのはメッセージを読んだ彼が復讐に囚われ自分を見失うのはやめようと我に返ったということなのかも。

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Mass@Mania presents “春の葡萄祭 2025” グレープ コンサート 

2025年04月20日 | ライブ・コンサート他
2025年4月20日 16時開場 17時開演
神田共立講堂

セットリスト
・紫陽花の詩
・雪の朝
・蝉時雨
・春への幻想
・殺風景
・残像
・交響楽
・朝刊
・ジャカランダの丘
・祇園会
・夢の名前   
・天人菊
・精霊流し
Ac1花会式 
Ac2フレディもしくは三教街 -ロシア租界にて-

神田共立講堂は1976年のグレープ解散ラストライブが行われた伝説の会場です。更に2022年11月3日に「GRAPE 50年坂 一夜限りのグレープ復活コンサート.」もここで行われており、ファンにとっての聖地でもあります。
そんな憧れのコンサートに遂に参加することができました😀 
自分がファンクラブに入ったのはさださんがソロになってからですが、きっかけはグレープです。

8分遅れで始まったステージ上にはヤクルトスワローズのユニホーム(レアものらしい)を着た吉田さん(以下マチャミ)とさださん。基本マチャミは椅子に腰かけまっさんは立ちっぱでした。
二人の間にはX金箱(年寄臭い話や動作をしたら千円罰金で貯まったお金はスタッフの打ち上げに使うとのこと)トーク中に何度も千円札が箱に投入されていきました。

歌の合間のトーク(歌より長いのはいつも通り)
グレープ良さは曲が短いことだねと言いながらノンストップでトークが続きます。

まっさんが教習所で高齢者講習を受けた時のことを面白おかしく再現します。ゴールド免許でも5年ではなく3年なんだよと言うとマチャミが「俺は5年」と返します。どうやら更新時の年齢で違いがあるようです。

鉄板ネタのグレープ時代のマネージャー話はラブホ事件
デヴューについて話し合った時にもう少し練習してからと渋るまっさんにマチャミが「チャンスの神様には後ろ髪がない」と背中を押したとか。
寡黙なイメージのマチャミですが、グッズの宣伝には熱弁を振るいまくってました。(社長だもんね~。)どうやら会場販売は現金の他の決済手段も取り入れられているようです。グッズ販売は長蛇の列で売り切れ続出だったらしい。
会場ロビーが狭くて列を見ただけで諦めた人です。

ラジオ番組の宣伝もしっかり入れられていました。
5月発売のアルバム「生命の樹~」は、グレープ4枚+レーズン1枚で50枚目になり、グレープとして3曲入っているそうです。

さだ工務店のメンバーも一緒でもちろん彼らのアルバムの宣伝もありました。
ピアノ 倉田信雄
ギター 田代耕一郎
パーカッション 木村キムチ誠
ベース 平石カツミ
ドラムス 島村英二
ギター YUMA HARA

終演は19:59 約三時間のコンサートでした。

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薬屋のひとりごと15

2025年04月12日 | 
日向夏(著) しのとうこ (イラスト) ヒーロー文庫

翡翠牌の持ち主である皇族の末裔を追う中で、猫猫たちは禁書でありながら優れた医学書でもある『華佗の書』を手に入れた。 傷んだその書が復元されるのを待つうち、医官たちは抜き打ち試験を受けさせられる。 猫猫は試験に合格して養父である羅門の下で投薬実験を行うことになり、羅門から医術について学べることを喜ぶが、その実験は大掛かりであり、市井の病人たちを使うというものだった。薬が効かぬ者は、場所を移されて外科手術が行われるという。医官たちを集めて大掛かりな投薬実験が繰り返されるが、一体何のために? そして誰のために? 猫猫の疑問は、口に出すことは許されない。 他の医官たちも実験の目的に薄々気づきつつも、誰も答えをはっきり言おうとしない。やんごとなき身分のかたが病に臥されたと気づいても、それを公にすることは国を揺るがすことになると、皆が皆わかっている? そして、猫猫は復元された『華佗の書』を壬氏に見せてもらうことになるが、そこには、決して忘れられぬ名前が書かれてあるのだった。 『曼陀羅華』。朝顔に似たその植物は、とある秘薬の材料だったのである。 

一話 選抜試験
二話 疱瘡と水疱瘡
三話 辞令
四話 投薬実験
五話 復元書
六話 病の主
七話 男の浪漫
八話 麻酔
九話 適材適所
十話 僥陽
十一話 特別版
十二話 説明と同意
十三話 種まき
十四話 患者の意思
十五話 告白 表
十六話 告白 裏
十七話 不安
十八~二十話 手術 前・中・後
終話

投薬実験だの手術だのと今回は医学薬学要素がこれでもかと詰め込まれていつもの謎解きより面白かった😀 
謎解き部分は何故そんな実験(治験だね)をするのかということになるのだけれど、早々に主上の病だと察せられるのはちょっと物足りなかったかな。
現代なら盲腸は重病とは言えない部類ですが、麻酔さえ確率していない時代設定なので外科手術も高難易度が予想される中、それが主上の玉体にメスを入れるという超ハイリスクを伴うスリリングな展開になります。

主上の病はストレス性盲腸炎で、東宮時代に発症して一度は緩解しています。壬氏様のやらかし(焼き印事件&西都での長期滞在)はもちろん、国内外の様々な問題が要因となっていることは想像に難くない😁 
何とか薬物治療で治めようとしたものの、容体は回復せず遂に手術を選択せざるを得なくなります。ここで問題なのが、失敗した時です。手術に関わった者はその縁者まで処刑される可能性も出てくるわけで、猫猫が選ばれたのも羅門が加わっていることと、万が一が起きても羅漢がゴネてくれるのを劉医官が期待した節もあります😅 

もし皇帝が亡くなったら、時期皇帝をどうするかという問題が出てきます。
現在の東宮はまだ幼く、摂政となるだろう玉葉后の父・玉袁は高齢です。となれば壬氏を推す声が大きくなり権力争いが勃発する恐れがあります。

主上が東宮時代にこの病は発症していますが、その原因となったストレスが祖母である女帝なんですね。80歳を超え痴呆が入ってきていた女帝と政について言い合いになり、阿多に愚痴をこぼしていたこと、女帝VS東宮になった時に味方したのが羅漢だという事実も判明します。(だから羅漢の数々の振る舞いがお咎め無しなのかぁ)

猫猫は手術に備えて『華佗の書』の「麻沸散」(麻酔薬)の研究に翠苓を巻き込みます。蘇りの薬は一度心臓を停めるけれど、今回は痛みを押さえたいわけでその調合の度合いが難しそう。
また、主上を心配する玉葉后に病状と手術内容を説明し納得してもらいます。
他にも安氏の兄 ・豪 (帝の伯父)が手術に反対して主上の部屋に押し掛けてきて温厚な高順がキレたりする一幕もありました。

壬氏の元には上級妃の補充の報告が上がります。安氏側・玉袁側双方から候補が上がり政治バランスと帝のストレス軽減に一役買ったよう。(病を押してそれぞれの妃のもとに通う主上の精力も凄いぞ😅

やっと手術が決まったと思ったら直前に本人から待ったがかかり焦る医官チーム。
何故か猫猫が呼ばれ向かった先は例の焼き印事件の部屋です。そこで主上・阿多・壬氏と4人での会合が開かれるのですが、当然ながら猫猫に発言権はありません。
主上は壬氏に皇帝を継ぐ意思を訪ねますが彼はきっぱり断ります。仮に皇位を継ぐことになるなら愛する者は手放すと告げた壬氏の言葉に一粒の涙をこぼす阿多。
息子が「天」であることより「人」であることを選んだことを知り嬉しかったのね。

壬氏と猫猫を帰した後で、主上と阿多の腹を割った会話もあり、15.16話は注目!
国母にはならないけれど骨を埋めるまで傍にいて愚痴を聞いてやるから月(壬氏)の好きなようにやらせてあげて欲しいと頼む阿多はまさに子の幸せを想う母親そのものです。💛

いよいよ手術が始まるのですが、開腹早々アクシデントで劉医官が手に怪我を負い執刀できなくなります。代打・天祐と思ったら「飽きた」からやりたくないと。おいっ!さすがに自由過ぎるというか医師失格というか…猫猫でなくても激怒しますな😡 
執刀は羅門になり、猫猫が羅門の身体を支えるアシストに回り何とか手術は成功!
実はこの時主上の意識はあり、天祐と猫猫の会話も耳に入っていたことがわかります。
術後、そのことを聞いた猫猫は天祐がお咎め無しになるのは腹の虫がおさまらないので彼の減給を主上に頼んで溜飲を下げます😁 

終話では、久しぶりに壬氏と二人きりになった猫猫が、帝の代わりにいつも以上にハードに仕事をしてやつれている彼に「帝になったら死にますね・・絶対向かない地位です・・・ならないで下さいね」と。この時の二人の会話がとっても自然です。
ゆっくりゆっくり食事をする二人の時間が束の間の休息という感じでした。

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八月の銀の雪

2025年03月29日 | 
伊与原 新(著) 新潮文庫

耳を澄ませていよう。地球の奥底で、大切な何かが静かに降り積もる音に――。
不愛想で手際が悪い。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。(内容紹介より)


作者は地球惑星物理学 を専門とする理系出身者です。去年秋に窪田正孝主演で『宙わたる教室』がドラマ化 されましたが、この原作が伊予原氏であることを読書仲間から教えられ興味を持って読んでみました。
物語には専門的な科学技術情報がたくさん登場し、主人公たちの心の内側にもともとあったものを照らし出す小さな灯のきっかけとなっています。といっても素人にも理解できるよう丁寧に分かりやすく説明されているので問題なく楽しめました。

・八月の銀の雪
就活で内定が一つも取れない理系学生の堀川は、行きつけのコンビニ店員のグエンのいつまでたっても慣れない接客を苛立たしく感じていました。店で会った同じ大学だった清田に、怪し気なマルチ商法の手伝いを持ち掛けられた堀川は、報酬に釣られ商談のサクラ役を引き受けます。
グエンから忘れ物を知らないかと尋ねられたことから、彼女が地震の研究をしている大学院生で恩師から貰った論文を探していると知ります。清田が堀川に説明するために要らない紙と思って書いた紙がその論文の一枚と気付いた堀川は、そのことを清田に話しますが、彼は何故彼女に肩入れするのか訝しがります。
迷っている女子学生にアドバイスを求められ「就活やめていいなんて簡単に他人に言えるものなのかな」と話したことで商談が破談となったことを清田に問い詰められた堀川は、就活に対する思いや、三年前のゼミで独りあぶれていた自分に声をかけてくれたことが嬉しかったことを話します。
清田が堀川に声をかけたのは、昔の自分と似ていたからだと漏らします。
 グエンがコンビニを辞めたと知った堀川は彼女の通う大学を訪ね、彼女がバイトが禁じられている奨学生で、日本語学校に通う妹の学費を助けるために身分を偽って働いていることを知ります。
使えないコンビニ店員とどこかで蔑んでいたグエンは、実はベトナムの貧しい農村育ちの家族思いの優秀な大学院生でした。
グエンは地球の中心にある内核に、鉄の結晶が銀の雪のように降っているかもしれないと言い、その音を聞くためにもっと研究を頑張りたいと話します。
『意外なことばかりだと考えるのは、間違いだ。深く知れば知るほど、その人間の別の層が見えてくるのは、むしろ当たり前のこと。今はそれがよくわかる』(文中より)

人の中にある感情を地殻に擬えて捉えるのがとても興味深かったです。


・海へ還る日
シングルマザーの「わたし」は娘の果穂が電車内でぐずった時に席を譲ってくれた女性から博物館のチラシを渡されます。クジラが好きな娘にせがまれ博物館の<海の哺乳類展>に行くとあの女性と再会します。彼女は動物研究部の委託職員として働く宮下和恵と名乗り、クジラたちの生物画の全てを描いていました。
宮下さんに誘われ網野先生のトークイベントに参加したわたしは、クジラやイルカについて色々なことを知ります。イベント後、宮下さんから果穂と一緒にスケッチのモデルを頼まれます。宮下さんが描いた絵の中の幸せな母子を見て、わたしは思わず「この子に何もしてやれない」と本音を漏らします。すると宮下さんは「大事なのは、何かしてあげることじゃない。この子には何かが実るって、信じてあげることだと思うのよ。」と言いました。自分に自信をもてずに大人になり、行き当たりばったりで妊娠・結婚したけれど離婚し、娘にも自分と同じような人生しか与えてやれないと思っていたわたしはその言葉に胸を衝かれます。
後日、宮下さんに誘われ九十九里浜で白骨化したクジラの掘り起こし作業を見学に行ったわたしは、網野先生から「クジラたちは、人間よりずっと長く深く考えごとをしていると思う」と聞かされます。
わたしの意識は海へと潜り、自分が以前に想像したプランクトンとしてではなく、人としてクジラと一緒に泳ぐ姿を見、クジラが歌う歌もその考えも想像が浮かばないことに気付きます。
自分たちは生命や神や宇宙について何も知らない、けれどもしかしたらその片鱗を知っているかもしれないと考えて嬉しくなったわたしは、娘には世界をありのままに見つめる人間に育ってほしい、そうすればきっと宮下さんのように何かを見つけるだろう、そしていつか必ず何かが実るだろうと思うのでした。

自分を否定してきた女性が宮下さんと出会ったことで意識が変わっていく様が心地よかったです。クジラの生態についても興味深く読むことができました。


・アルノーと檸檬
正樹は不動産管理会社の契約社員です。再開発によるアパートの立ち退きを拒む寿美江の説得に難航する中、彼女がベランダで飼っている迷い鳩の苦情が入ります。
立ち退きの前に脚環に<アルノー19>とある迷い鳩の飼い主を探すよう言われ、鳩レースの事務局を訪れた正樹は、そこでハトや渡り鳥の本を書いている小山内を紹介されます。迷い鳩はレース鳩ではなく新聞社の伝書鳩の血統であることがわかりますが、飼い主の存在がつかめません。
寿美江の検査入院中に鳩の世話を頼まれた正樹は、帰る場所を失った自分と<アルノー19>を重ね愛着が湧いてきます。彼は役者を目指して上京し、レモン農家をしている実家と絶縁状態になっていました。
やがて飼い主が見つかりますが既に亡くなっていて、家も無くなり跡地にタワマンが建っていることがわかります。退院してきた寿美江にそのことを話した正樹は、このまま飼って欲しいと言います。
正樹は同じ夢を追う仲間だった順也が売れたことに喜びと同時に嫉妬の感情がありました。だから彼からプロヂューサーを紹介すると言われた時、彼はもう違う世界の人間だと感じて、役者はやめて今の会社で働くことにしたと一世一代の演技をしました。そんな彼が迷い鳩の飼い主探しをするうちに、自分が見失っていたものに気付いていくのですね。

実家を思い出すレモンを嫌い避けていた彼が、八百屋で一個買ったレモンの香りを深くかぐ描写が、正樹の気持ちの変化を表していました。


・玻璃を拾う
瞳子がSNSにUPした画像に<休眠胞子>から著作権侵害を訴えるコメントが入ります。幾何学的な形の繊細なガラス片のようなもを並べて作られたその画像は、親友の奈津から送られた写真に混じっていたものだったことがわかります。
奈津と<休眠胞子>こと野中は、はとこで、膠原病を患う野中の母の雅代から奈津の母へ送られたものでした。野中に会いに行った瞳子は、SNSに公開されたことでそっくりのアクセサリーが無断で売られていたと聞かされます。
その画像はガラス細工ではなく、ガラスの殻を身にまとう珪藻でできたものだと明かした野中が、珪藻が気持ち悪いと言った瞳子に実際に見て確かめろと家に連れて行かれます。顕微鏡で見た珪藻の精緻な美しさと、それが相当な労力をかけて並べられたことを知ります。雅代のあたたかなもてなしを受け、例の画像が母の誕生祝いの作品だったことを知ると、それまで彼に抱いていた印象も覆り、彼と母親が互いを思いやって生活していたことを感じます。
雅代の訃報を聞き葬儀に参列した瞳子は、後日野中から見せたいものがあると言われ会いに行きます。彼に、母の日の作品製作の際に、瞳子のまつげを使ったと言われても不思議と嫌悪感を抱いていないことに気付いた瞳子は、またまつげを渡すことを約束します。
これまでありのままでうまく生きて来れなかった瞳子は、美しいガラスをまとう珪藻のように、人間のありのままの姿の本質を、見栄えよく繕った殻とそれに不釣り合いな中身を抱えていると考えるのでした。

野中の製作する珪藻の作品を実際に見てみたくなりました。不器用な生き方しかできない二人の今後もなんだか予想できそう。

・十万年の西風
原発の下請け会社を辞めた辰朗が、福島へ向かう途中に立ち寄った茨城の海岸で六角凧を上げている滝口と出会います。彼は気象学の元研究者で、父親が戦時中に気象技術者として軍事協力していたと話します。
原発の町で生まれ育った辰朗は、自分の仕事を誇りに働いてきましたが、会社で隠蔽行為を強要されたことで辞職し、福島を見ておきたいという思いに突き動かされます。
滝口と凧の話をする中で、彼から戦時中に使われた風船爆弾(偏西風に乗せてアメリカに攻撃を仕掛ける「気球兵器」)の話が出ます。滝口の父は風船爆弾の誤爆で亡くなっていました。
「風も、平和に使われるとは限らない」との滝口に、原発の仕事にも重なるところがあると感じた辰朗は、自分が子供の頃に父とあげた思い出のあるゲイラカイトを買って子供と一緒に凧あげをしながら、滝口の話やこれから訪れる福島でのことを話そうと思います。「たとえ何も伝わらなくても、今は構わない。いつかその意味を感じ取ってくれるような生き方を、父親である自分が見せてやれればいい。(本文より)」と。

風船爆弾のことは初耳でした。科学は人間の好奇心が発展させてきましたが、同時に間違った使い方をされることがあるのも事実です。あの原発事故から時が経ち、既に風化の兆候の見られる現在において、とても考えさせられる話でした。

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白雪姫 吹替版

2025年03月24日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年3月20日公開 アメリカ 109分 G

雪のように純粋な心を持つ白雪姫(レイチェル・ゼグラー:吉柳咲良)の願いは、かつてのような人々が幸せに暮らす希望に満ちた王国。だが、外見の美しさと権力に執着する邪悪な女王(ガル・ギャドット:月城かなと)によって、王国は闇に支配されていた。女王は、白雪姫の“本当の美しさ”に嫉妬し、彼女の命を狙うが、不思議な森で出会った7人のこびとたちや、城の外の世界へいざなってくれたジョナサン(アンドリュー・バーナップ:「JO1」河野純喜)に救われる。誰もが希望を失いかけた時、仲間たちと力を合わせ、白雪姫の優しさが起こした素晴らしい奇跡とは…?
「魔法の鏡よ、教えておくれ──世界で一番美しいのは誰?」(公式HPより)


ディズニー初の長編アニメ映画「白雪姫」を実写化したミュージカル映画です。監督はマーク・ウェブ。

子供の頃読んだお話の白雪姫は「雪のように白い肌」「髪は黒檀のよう」「唇は血のように赤い」と形容されていましたが、本作の姫の肌の色は・・「雪の日に生まれたから」という設定に変更されたようですが何とも違和感がありました。

そもそも、ただ自分を救ってくれる王子様を待つ少女ではなく、自ら運命を切り拓く勇気ある女性として描かれているのでオリジナルとは全く違うのよね。まさに時代が変わったことを強く印象付けられました。なので王子様の登場はなく、ジョナサンは山賊です。毒リンゴを食べて眠っている姫の元に駆け付ける場面で白馬に乗って登場するのはせめてものオマージュでしょうか😁 マジで脇役なんだな~~。😅 

魔女(女王)が何度もこびとの家を訪れて白雪姫を騙して危ない目に遭わせる定番エピソードも、最後の毒リンゴのみで後はバッサリ割愛されており、ジョナサンを助けに行くために何故リンゴ食べなきゃいけないの?な無理くり設定は正直引きました。

城の門前で女王と対決するシーンでは剣じゃなくて対話。しかも民の情に訴えるわけで・・姫が両親から国民の名前を覚えること(=国民一人一人と向き合うこと)が大切と教わってきたという伏線が生かされてはいるんですけど、どうにもぬるいぞ。

女王が鏡の言葉に激怒してブチ切れて割ってしまったことで鏡の中に吸い込まれてしまう最期ですが、鏡の破片が飛び散る中で怪我一つ追わない白雪姫ってどうよ。

とまあ、あれこれ不満はありましたが、こびとたちが鉱山で働く一日のシーンはお馴染みの歌もあってとても楽しかったです。
女王の衣装は邪悪さが出ていてGOODですが、白雪姫のあのドレスはせっかく現代的な味付けなのにアニメと同じではダサ過ぎです。そこは変えられなかったのか?

ちなみに吹替版の声は、先生(大塚明夫)、おこりんぼ(津田篤宏)、てれすけ(平川大輔)、ごきげん役(小島よし)、ねぼすけ(浪川大輔)、くしゃみ(日野)、おとぼけ(風間俊介)でした。

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波に乗る

2025年03月23日 | 
はらだみずき(著) 小学館(出版)

のこされたのは、丘の上の海が見える家。
「あんたの親父、亡くなったぞ」卒業し、入社一か月で会社を辞めた直後のことだ。連絡してきたのは、名乗りもしないぶっきらぼうな男だった。孤独死だったのか? 霊安室で対面した父は、なぜか記憶とはまるで違う風貌をしていた。文哉は、疎遠になっていた父の足跡をたどりはじめる。
不器用な父が、息子に託したものとは? 海辺の町で、知らない父が生きていた。(内容紹介より)


本作品は2015年2月に刊行されています。その後に加筆・改稿したものが「海が見える家」(2017)で、「海が見える家それから」(2020)、「海が見える家逆風」(2021)、「海が見える家 旅立ち(2022)でシリーズが完結しています。

文哉の両親は彼が小2の時に離婚し、以来父は姉の宏美と文哉を男手一つで育ててきました。でもいつしか家族の気持ちがすれ違い、宏美は早々に家を出て北海道で暮らし、文哉も大学生になると一人暮らしを選びます。父親の芳雄もまた50過ぎて長年勤めていた会社を辞めて千葉で暮らし始めます。

文哉が何とか就職した会社はブラック企業でした。堪らず彼は1か月で辞めてしまいます。そんな時、見知らぬ男から、父の死を知らせる電話が入ります。千葉の病院で父の遺体と対面した文哉は、札幌から駆け付けた姉と共に家族葬で父を送りますが、遺品整理を含めた後始末に戸惑うことになります。

父は別荘地の丘の上に建つ海の見える家を遺していました。東京の不動産会社で働いていた父は口数が少なく、人生を楽しんでいるようには見えなかったのですが、彼の死を知らせてくれた“ぶっきらぼう’こと坂田和海との出会いにより、父親の予想もしなかった姿を知ることになります。

子育てと仕事に追われていた芳雄は、器用なタイプではないが故に思春期を迎えた娘や息子との付き合い方がわからず結果として良い関係を築けなかったのかも。当然ながら父親にも若い頃があったわけで、彼がこの南房総の小さな町に終の棲家を求めたのは、別れた恋人(和海の姉)との思い出の地であり、青春を過ごした場所であったからでしょう。仕事も子育ても終えた彼にとって自分を取り戻す機会だったのですね。

当初、家を売ったお金を姉と分けるつもりで家の管理と遺品整理を任された文哉でしたが、父が生前交流していた地元の人達と出会って自分の生き方を模索していくようになります。失業中の彼は、和海に教わって海で魚や貝をとり、父の遺した畑の野菜を育て自給自足していきます。また、父が生業としていた別荘管理の仕事を引き継いでいきます。実は彼も父と同じように不器用だけど優しい性格だということもそれまでのいくつかのエピソードで語られていました。

改めて父を偲ぶ会が設けられることとなり、結婚相手の正体に愛想を尽かして戻ってきた姉も加わって、父が生前親しくしていた地元の人たちが大勢やってきます。父が遺してくれたのは、海が見える家だけでなく、彼が地元で作った新しい人間関係です。亡くなって初めて父親を知ることとなった文哉ですが、かつて父もまた息子に「自分の人生がおもしろくないなら、なぜおもしろくしようとしないのか。他人にどんな評価されようが、自分で納得していない人生なんてまった意味がない」と言われたことで自分の人生をおもしろいものに変えようと決めたことを知ります。自分は父に投げつけた言葉を実践してきたとは言えないと文哉は自分を恥じます。

和海の姉の娘の凪子が一風変わっているのは、母親の死が陰を落としているのでしょう。彼女が作る流木作品をきっかけに文哉とも少しずつ打ち解けていく様子も描かれており、やはり父と文哉は似ているな~と感じさせます。

父のサーフボードを見つけた文哉、無謀にもいきなりトライして離岸流に流されて九死に一生を得たことで人生観が変わるのですが、ラストは和海に教わって「波に乗る」文哉の姿です。父が見た景色を彼もまた確かに見たのね。

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教皇選挙 

2025年03月21日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年3月20日公開 アメリカ=イギリス 120分 G

全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派、カトリック教会。その最高指導者にしてバチカン市国の元首であるローマ教皇が、死去した。悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は新教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。世界各国から100人を超える強力な候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まった。票が割れるなか、水面下で蠢く陰謀、差別、スキャンダルの数々にローレンスの苦悩は深まっていく。そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発するのだった……。(公式HPより)


エドワード・ベルガー監督によるローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー作品です。




コンクラーベといえば、ダン・ブラウンのサスペンス小説「天使と悪魔」で登場したのを機にその存在を知りましたが、本作はまさに選挙の実態を描いたもので、外部からの介入や圧力を徹底的に遮断するための様々な措置を含めた選挙の舞台裏が描かれていて興味深かったです。
枢機卿の法衣や修道女の修道服 、十字架、指輪、靴、外套 など衣装やアクセサリーにも作り手の拘りを感じることができます。

聖職者と言えども生身の人間。選挙における駆け引きは政治家にも引けを取らない熾烈なパワーゲームです。投票を重ねる度に情勢も変わり、水面下で様々な陰謀、差別、スキャンダルが蠢く様が生々しく描かれます。観客は選挙を執り仕切るローレンス枢機卿の視点に重ねて選挙の行方を見守ることになります。

政治的分断が深刻化している現代社会の縮図のような選挙戦の中、有力候補者はローレンスの親友で米国出身のリベラル派のベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)、カナダ出身の保守派トランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)、イタリアの伝統主義の保守派テデスコ枢機卿(セルジオ・カステリット)、アフリカ系のアデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)です。

現在枢機卿は世界に252人(コンクラーベの選挙権を持つのは137人)、欧州出身は45%で、12%はアフリカ、15%はアジア だそう。

ローレンスとベリーニは前教皇を批判していたテデスコの前近代的な考え方が教会を後退させることを危惧していて、彼は教皇に相応しくないと考えていました。
 
コンクラーベ直前、ローレンスはウォズニアック大司教からトランプレが重大な不正行為で前教皇から解任されたことを打ち明けられます。しかしトランプレはこれを否定します。
また、前教皇から秘密裏に任命されたというカブール(アフガニスタンの首都)のベニテス枢機卿が現れ、ローレンスは彼を招き入れることを決断します。(何故隠されていたかという理由はイスラム主義勢力が強いアフガニスタンではキリスト教徒が迫害されているための安全策とされましたが、現実には教皇が死去する前に公表していないと資格がないのだとか)

コンクラーベ第1回の投票は、票が割れますが、4人の他ローレンスも有力候補者の一人となります。ベリーニとローレンスはテデスコの勝利を避けるためアデイエミを支持することに渋々同意するのですが、翌日の食事中に起きたアデイエミと修道女シャヌミの騒ぎを目にしたローレンスが事情を問い質すと、過去に彼女がアデイエミと関係を持ち子供を産んでいたことが判明します。(カトリックの司祭は妻帯できない)
教皇の資格に価せず、教会全体のスキャンダルになりかねないと辞退を迫るローレンスに若気の至りと懇願するアデイエミ。ローレンスは秘密を守ると言いましたが騒ぎの噂は広まりアデイエミは失脚します。

枢機卿たちの宿泊施設を運営する責任者であるアグネス修道女(イザベラ・ロッセリーニ)から、シャヌミをバチカンに移したのがトランプレだと告げられたローレンスは、彼がアデイエミを陥れようと画策したと考えて詰問しますが、トランブレは教皇の要請に従っただけだと言い、逆にローレンスが教皇の座に野心を抱いていると非難します。
真相を確かめようと教皇の閉ざされた部屋に侵入したローレンスは、トランプレが票を得るため他の枢機卿に賄賂を渡した記録を見つけます。ベリーニに相談すると、教会の威信を保つために文書を燃やすよう促します。そこでローレンスは彼も賄賂を受け取っていたことに気付きます。

コンクラーベ3 日目。
ローレンスとアグネスは書類のコピーを枢機卿たちに配ります。トランブレは言い訳しようとしますが、彼がアデイエミを陥れるために画策したことアグネスに告発され失脚します。

有力候補者が次々失脚する中、ローレンスは自分の名前を書いて投票しようとしますが、これぞ神の御業とばかりにその瞬間自爆テロによりシスティーナ礼拝堂の窓が破壊され、路上で死傷者が出ます。

テデスコ枢機卿はここぞとばかりにイスラム過激派を非難し、教会は彼らと戦うべきと熱弁を振るいます。形勢はテデスコ有利となる中、ベニテス枢機卿が立ち上がると、戦争の恐ろしさを語り、暴力に暴力をもって対抗すべきではないと語りかけます。

ここまで観てくると誰が教皇に相応しいか自ずと答えが出てきます。しかし物語はその後に衝撃的な真実が明かされるのです。爆発でシスティーナ礼拝堂に開いた穴から風が吹くシーンが新たな時代の幕開けを想像させます。

ベニテスの病という伏線が登場していましたが、それは病ではなく彼が持って生まれた「神から与えられた身体」だったのです。
彼がローレンスに票を投じ続けたのは彼の信念によるものでしたが、そのこと自体が彼の苦悩を抱えた人生から来ていました。

ベニテスの秘密はやがて暴露される日が来ることは必須でしょう。その時教会はどう判断するのか。😣 リベラル派でも女性活躍に対しては保守的 な上、カトリック教会では未だ女性は聖職者(司祭以上)になれないという現実からすると、まさに爆弾投下に等しい衝撃的な結末です。

ちなみにベニテスが選んだ教皇名のインノケンティウスは「先入観のない純粋さを表す名」。他の枢機卿と異なり、企みや私欲のない純粋な信仰心を持つベニテスと彼同様イン・ペクトレで枢機卿に任命された後に教皇になったインノケンティウス10世を重ねているようです。

冒頭でベリーニが「前教皇はチェスで常に8手先を読んでいた」と語っていましたが、このコンクラーベが全て前教皇の考えたシナリオだとしたら凄すぎます。

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居酒屋「一服亭」の四季

2025年03月20日 | 
東川 篤哉 (著)  講談社

「二代目、安楽ヨリ子でございます」
隠れ家のような鎌倉の居酒屋「一服亭」。
異常なまでに人見知りの女将は、実はとんでもない名探偵だった。
頭や手脚を切断された画家、老舗レストランの首なし死体、海の巨岩上に残された右脚だけがない遺体…猟奇的事件の数々を驚愕の推理で料理する、本格ユーモアミステリー!(内容紹介より)


毒舌名探偵の二代目安楽ヨリ子が手料理をふるまい、難事件の謎を解くユーモアミステリーです。
表紙が気になって手に取った一冊ですが、本屋大賞受賞『謎解きはディナーのあとで』の著者だとは知らなかった😓 
そうとわかれば、軽妙な語り口も納得ですが、好みではありませんでした。
「純喫茶「一服堂」の四季」の続編のようですが、もういいかな😞 

第一話 綺麗な脚の女   
第二話 首を切られた男たち
第三話 鯨岩の片脚死体
第四話 座っていたのは誰?

第一話と第二話は夏、第三話は秋で第四話は冬 ・・・あれ?春がないじゃん。

第一話の語り手である君鳥翔太は、まさに今時の軽薄な若者を体現しています。この時点で既に共感度ゼロ。就職に困った彼が母の伝手を頼って出かけた先で殺人事件に遭遇します。密室の謎と犯人を解き明かしてもらうのが二代目安楽椅子探偵のヨリ子さんですが、彼女の居酒屋は表札サイズの看板?で探すのにも一苦労。極度の人見知りで初対面の人とはまともな会話もできず、気絶するというキャラはこの後もお約束になっています。彼女が飲んでいるのが「水」ではなく「日本酒」であり、出される料理で間違った推理をする客を罵倒して喜ぶ癖まである困ったちゃんです。

講談社ならぬ放談社という三流出版社に職を得た君鳥。元はといえば彼の発音が招いた誤解が発端ですが(本人はコと発音しているつもりがホに聞こえる)、その彼が今度は首のない死体事件関係者の高梨を連れてヨリ子さんの居酒屋を訪ねるのが第二話。彼が差し出す名刺を見て大手出版社と誤解した高梨が三流ゴシップ記者と気付いて名刺を「めんこのように」投げ捨てるというのも以後のお約束です。ついでにその名刺を再び回収する君鳥もね。😁 

第三話ではキャンプをしていて事件に遭遇した三田園晃が君鳥の取材を受け、片脚が切断されていた事件の謎と犯人をヨリ子さんに解いてもらう流れです。こちらは殺人ではなく片脚の謎の方に主眼が置かれていました。

事件関係者が一堂に会する第四話では冬の山荘という環境が謎解きのヒントになっていました。ここで登場する東原篤実は売れない推理作家。筆者をもじったキャラ?
男性と思って読んでいると実はあつみという女性であることが明かされます。ついでに第三話で登場した三田村も女性でした。それなら部下の女性たちとキャンピングカーに泊まれば良かったじゃんと突っ込みたくなるけれど、上司と一緒では気詰まりだろうという気遣いと捉えるべきなのかな。

それぞれのトリックはちょっと難ありな気もしなくもないけれど、軽過ぎる語り口と猟奇殺人事件のアンバランスさを楽しめるなら面白い作品といえるかも。😔 




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あの人が同窓会に来ない理由

2025年03月09日 | 
はらだみずき(著) 幻冬舎

机を並べた同級生のことを、僕は何も知らなかった。
今だから話せること、笑い合えることがきっとある。同窓会の幹事をするはめになった宏樹。だが、出席者は一向に集まらない。かつての仲間たちの消息を尋ねることにするが……。思い出したくない過去、知られたくない現状。20年の空白が埋まる時、もうひとつの真実が明らかになる。(内容紹介より)


同窓会というワードに惹かれてチョイス。
そういえば、同窓会に出席した一番古い記憶は中学の時に小学校の同級会が最初かな。次は高校の同級会で、ず~~~っと離れて大学の同窓会がもう10年近く前になり・・・回数少なすぎだろ!と自分に突っ込んでみる。

参加の理由が会いたい人がいるからという動機はまさに!そして友人に誘われたからというのも大いに頷けます。

本作は中学の同窓会。ということで自分を振り返ると・・・当時1ダースのクラスが存在するマンモス中学で、一年毎にクラス替えはあったけれど三年間で全ての生徒と知り合ったわけでもなく、仲の良かった筈の友達も高校・大学と進学するにつれ疎遠になり、年賀状のやりとりも遂に途絶えたのが現状。一度だけ同窓会のお知らせが届いたけれど、そういうわけで不参加を決め込んだ。もし当時親しくしていた子から誘われたら行ったかもとは思うが残念ながらそんな誘いは来なかった。(どんだけ存在薄かったんだ、自分💦)

ところで、本作の主人公の宏樹は、特に目立った生徒ではなく、どちらかというと影の薄い存在でした。近場で開催されたからという何となくな理由で参加したけれど、次は不参加で良いかなと考えていたところを親友の吾朗の補佐として幹事を引き受けさせられることになります。

今回に続いて幹事を引き受けた斉藤さんは、担任の先生(渾名がザビエル・・そういえば担任に渾名付けたっけな~)の〆の言葉に喚起され、出席者を増やしたいと二人を巻き込んで動き出します。
同窓会に来ない理由をあれこれ考えた3人は、クラスのキーパーソンだった者たちを参加させようとします。女子に一番人気だった磯崎・委員長の田代・副委員長で男子に人気だった塩崎、お調子者の細井・・いずれも不参加だったメンバーです。

ところが磯崎は音信不通で、他の者たちもそれぞれ秘密を抱えていることがわかってきます。あれから20年以上経ってそれぞれ違う人生を歩いてきたのだから当然ですよね。

宏樹が一番会いたかったのは湯島葵でした。二人はある秘密を共有していました。転校生だった葵は、女子から嫌われクラスでも浮いた存在でしたが、ある事件が彼女を一層孤立させました。

同窓会代行会社と契約し、担当となった沢村あゆみのアドバイスを受けながら、返事の来ない同級生に連絡したり、行方不明の篠崎を探します。
その中で、田代・塩崎・篠崎が幼馴染だったと知った3人は、彼らの間に何かがあったと気付きます。男子に人気だった塩崎のあまりにも変わった容貌に驚きながらも、彼女の実家の庭の手入れをすることになった宏樹(造園プランナー)は、彼女から湯島が来るなら参加すると言われます。

沢村は会社のオプションとして人探しを提案したいと宏樹にお試し(無料)を持ち掛ける中で二人は個人的に会うようになります。(💛のフラグ立ったね😁 )彼女は昔働いていた店にいた女性が湯島葵ではないかと宏樹に告白。再会した葵に宏樹はずっと抱いていた疑問をぶつけます。
葵の悪い噂の真実と篠崎との関係は衝撃的でしたが、中学生あるあるかな~とも思いました。
葵は篠崎への復讐で彼に「悪い遊び」を教え破滅させましたが、その葵の店の常連客として篠崎がいました。う~~ん、深い😔 

細井に本人には嬉しくない渾名を付けられた東・水嶋・山田・志水がいままで同窓会は不参加でも彼らだけで会っていた事実も明かされます。細井は自分の子どもが渾名で傷つけられ苦しんでいることを知り、自分が過去に彼らを傷つけたことを後悔し謝りたいと申し出ます。

色々あって最後はほぼ全員が出席することになりますが、宏樹は不参加を告げます。彼の目的は既に達せられており改めで出席しても得るものがないのよね。そして沢村との前に新しい人生のページが開かれようとしています。

同窓会、ちょっと行きたくなりますね。😊

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ウィキッド ふたりの魔女

2025年03月07日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年3月7日公開 アメリカ 161分 G

魔法と幻想の国オズにある<シズ大学>で出会ったふたり― 誰よりも優しく聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバ(シンシア・エリボ)と、誰よりも愛され特別であることを望むみんなの人気者グリンダ(アリアナ・グランデ)は、大学の寮で偶然ルームメイトに。見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくにつれかけがえのない友情を築いていく。ある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、そこでオズに隠され続けていた“ある秘密”を知る。それは、世界を、そしてふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった…。(公式HPより)

名作児童文学「オズの魔法使い」に登場する魔女たちの知られざる物語を描き、2003年の初演から20年以上にわたり愛され続ける大ヒットブロードウェイミュージカル「ウィキッド」を映画化した2部作の前編。後に「オズの魔法使い」に登場する「西の悪い魔女」となるエルファバと、「善い魔女」となるグリンダの、始まりの物語を描いたファンタジーミュージカル。(映画.comより)


この作品がブロードウェイミュージカルを基にしているって知りませんでした。もちろん舞台は日本版も観た事がありません。
なので、「オズの魔法使い」に出て来る良い魔女と悪い魔女の前日譚としか認識していませんでした。😅 

まずは始まってすぐ「Part1」と出たことに驚いた。だって予告編やTVCMでは前後編なんて謳ってないぞ。(後でリーフレットを読んだらちゃんと書いてあったけど💦)

西の悪い魔女が退治されたニュースに大喜びのオズの人々の前に降り立ったグリンダは皆と一緒に祝いながらも少し複雑な表情を見せます。
良い魔女として知られるグリンダですが、大学生の彼女は傲慢で鼻持ちならない女性として描かれていました。

シズ大学の学長モリブル(ミシェル・ヨー)は、妹ネッサローズ(マリッサ・ボーディ)の付き添いだったエルファバの魔法の才能に気付いて大学入学を許可します。モリブルにエルファバと相部屋にされたグリンダは、エルファバの魔法の才能に嫉妬し、緑色の外見を皆と一緒に馬鹿にします。
エルファバの緑色は、母親が浮気相手との間に出来た子供だったからです。父親はエルファバが感情をコントロールできなくなった時に起こる騒動を悩みの種とし、また妹の障害や妻の死をエルファバのせいにして冷たく当たっていました。

ある日、ウィンキー国のフィエロ王子(ジョナサン・ベイリー)が編入してきます。グリンダと彼はすぐに好意を持ち合います。彼は皆をダンスパーティ―に行こうと誘います。ボック(イーサン・スレイター)から一緒に踊ろうと誘われたグリンダは言葉巧みにネッサローズを誘うよう仕向けます。
そのことに感謝したエルファバは、モリブルにグリンダの特別レッスンを許可して欲しいと頼みます。

そうとは知らず、グリンダはエルファバに悪趣味な帽子をプレゼントし、その帽子を被ってダンスパーティーにやってきたエルファバを皆が笑います。
エルファバが学長にレッスンを受けられるよう頼んでくれたと知り胸を打たれたグリンダは、ヘンテコなダンスを踊るエルファバと一緒に踊ります。その夜から2人は親友になりました。

オズの国ではかつて対等だった動物への差別が進み、ある日突然歴史学のヤギのディラモンド教授(声:ピーター・ディンクレイジ)が連行されます。

その後の授業の中で、檻に入れられたトラの赤ちゃんが虐待されるのを見兼ねたエルファバは、魔法でその場にいた者たちを眠らせ、フィエロ王子と一緒に子トラを森に逃がします。このエルファバの行動や考え方に衝撃を受けたフィエロは彼女を見直し、自分の生き方を見つめ直します。(続編でのグリンダとの三角関係も興味をそそりますね。😁

エルファバにオズ(ジェフ・ゴールドブラム)から招待状が届き、エメラルドシティにグリンダと訪れます。オズはこれまで誰も読めなかったグリモリー(呪文書)を見せます。「衛兵(チンパンジー)たちが翼を欲しがっている」と言われ、エルファバはグリモリーを読んで彼らに翼を生えさせますが、これはオズがエルファバを試すための嘘でした。実はモリブルはオズの命令でグリモリーを読むことのできる真の魔法使いを探していたのです。

オズが魔法使いを騙るペテン師で、彼こそが動物の虐待を命令していると知ったエルファバは、グリモリーを奪って逃げます。エルファバを説得しようと追いかけたグリンダに、一緒に魔法の箒で逃げようと誘うエルファバでしたが、グリンダは後ずさりし、二人に別れが訪れます。
動物たちを救うと宣言し、エルファバは西の空へ消えていきました。

冒頭のマンチキン国の900万本のチューリップ畑や、本物の水が使われた船着き場、オズの「巨大な顔」の広間、特に巨大な本棚が回転する大学図書館などが目を惹きます。
グリンダの居室の豪華さと、ピンクを主体とする彼女の衣装小物がまた可愛くて目の保養になりました。

肌の色や種族の違いという差別問題を織り込んだ本作は児童文学作品である「オズの魔法使い」から踏み込んだ内容になっています。
初め、無意識的差別者だったグリンダが、エルファバと交流する中で本当の意味で善に目覚めていくのかなぁ?と続編に期待します。

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使命と魂のリミット ネタバレあり

2025年03月02日 | 
東野 圭吾(著) 角川文庫

「医療ミスを公表しなければ病院を破壊する」突然の脅迫状に揺れる帝都大学病院。「隠された医療ミスなどない」と断言する心臓血管外科の権威・西園教授。しかし、研修医・氷室夕紀は、その言葉を鵜呑みにできなかった。西園が執刀した手術で帰らぬ人となった彼女の父は、意図的に死に至らしめられたのではという疑念を抱いていたからだ…。あの日、手術室で何があったのか?今日、何が起こるのか?大病院を前代未聞の危機が襲う。(内容説明より)


おそらく、ドラマを見たような気がする・・・ので夕紀が父親の手術死の原因に西園教授のミスを疑うのはどうにも違和感がありました。
疑惑を自らの目で確かめるために医者を目指した彼女が、父親と同じ状態の患者の手術に立ち会うことでその誤りに気付く展開ですが、脅迫状の犯人が仕掛けた最悪な状況の描写が真に迫っていて一気に読み進めてしまいました。

脅迫状の犯人・直井譲治は恋人・神原春菜の死を誘引したアリマ自動車社長・島原総一郎に復讐を企てます。島原が大動脈瘤で手術をすると知った直井は、合コンで出会った帝都大学病院の看護師・真瀬望を利用して病院の情報と島原の手術日を聞き出します。

脅迫状を最初に見つけたのが夕紀です。病院側には心当たりはないけれど、患者側から恨まれている可能性もあり、警察は密かに捜査を開始します。このことで夕紀の中で父親の手術ミスの疑念が深まります。

担当刑事の七尾は、かつて警察官だった夕紀の父・健介の部下でした。
健介は『人間は、その人にしか果たせない使命を持っている』が口癖でした。(タイトルはここから取っているのね。)
七尾は夕紀に健介が警察を辞めた理由について口を滑らせます。
(健介は万引きした中学生がバイクで逃走し、パトカーで追跡中にトラックに衝突して亡くなったことがきっかけで警察を辞めていましたが、自分の行為は間違ってなかったと思っていました。)

脅迫状が公表されていないと知った直井は、二度目の脅迫状を待合室に置いて患者に見つけさせます。話は病院関係者や患者の間に広がり、病院も会見を開きますが、医療ミスは否定します。

病院の男子トイレで発煙筒による騒ぎが発生し、新たな脅迫文も見つかったことで、患者の退院希望者が相次ぎます。
しかし島原は、自分の都合を優先して手術の延期を拒否します。

西園教授の長男が、中学生の時にバイクの運転中にトラックと接触し亡くなったことを知った夕紀は、事故のきっかけを作った健介への復讐で西園が殺したのではないかと思います。

一方、七尾は犯人の狙いが病院ではなく、入院患者の島原だと気付きます。
彼の会社の車は、かつてコンピューターの故障で暴走事故を起こして問題になり、死亡事故も起きました。工場長や製造部長は責任を取って辞任しましたが社長の島原は辞めておらず、後に彼が無茶な販売台数のノルマを課したことがミスに繋がったことが判明します。
事故の遺族には十分な補償がされましたが、動作不良を起こして停止した車が渋滞を作ったことで救急車の到着が遅れて死亡した事例がありました。その患者が神原春菜だったのです。

手術当日。
七尾は望に話しを聞き、直井が犯人と確信します。
警察が病院周辺を警備する中、手術が始まって暫くすると直井の遠隔操作で受電施設が爆破されます。自家発電機と無停電電源で手術は続行しますが、時間経過とともに自家発電機が停止します。慌てるスタッフの中、西園だけは目の前の患者に全力を注ぐ姿を見て、夕紀は彼は医者として使命を全うする人だと確信します。

警察はテレビやラジオで直井に自家発電機の仕掛けの解除を呼びかけますが反応がありません。七尾は、望に電話で説得してもらおうとしますが直井は電話に出ません。しかし良心の呵責に耐えられなくなった直井は自ら望に電話して仕掛けを解除。手術は無事成功します。病院に現れた直井に望は抱きつきます。

手術を終えた西園が狭心症の発作を起こします。
西園と百合恵(夕紀の母)は、以前から夕紀が疑っていることを知っていましたが、手術に夕紀を立ち会わせることでその疑念を晴らそうとしていました。
西園と健介は互いのことに気が付いていました。
健介は西園と話して彼が使命を全うする人間であると確信し、自分の命を預け、西園も健介の気持ちに応えるために全力を尽くしたけれど結果として健介は亡くなってしまったのです。
西園への疑いが晴れた夕紀は、西園のような医師を目指したいと言います。

西園を手術室に運びながら、夕紀は百合恵に『心配しないで。あたしが救うから。二人目の父親は絶対に死なせないから』と言いました。

医療ミス自体は無くて、恋人の死を誘引した男への復讐を企てる犯人と、父親の死に疑問を持つ娘という二つの物語が交差する中で、手術室での緊迫したやりとりが後半の山場となっていました。
手術室に至るまでの手順や術中の医学用語なども興味深く楽しめました。

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膠着 スナマチ株式会社奮闘記

2025年02月28日 | 
今野敏(著) 中公文庫

老舗の糊メーカー・スナマチ株式会社は創業以来の大ピンチ。社運をかけて新製品開発を行うも、できあがったのはなんと“くっつかない糊”!? そんなもの売れるのかと頭を抱える新入社員の啓太と、「俺に売れない物はない」と豪語するベテラン社員の本庄。窮地に陥った会社を救うべく、ふたりの営業マンの闘いが始まった! 今野敏が贈る、ユーモアたっぷりのサラリーマン応援小説。(出版社内容紹介より)


三流私大出の丸橋啓太はニ十社近く会社訪問をし、十社ほどの試験を受け、ようやくこの会社に入社できた新人君ですが、営業部に配属早々、量販店マルコウの注文を一桁多く間違えて発注してしまう大ポカをやらかします。ところが先輩営業マンで啓太の指導係の立場の本庄は、マルコウの仕入れ担当者に売り方の戦略アドバイスをして啓太のミスを売り上げに変えてしまいます。
接着剤を木材や模型、手芸売り場にも置けば利用客も増えるというアイディアが実は本庄の口から出まかせだったのだから呆れるやら感心するやらで俄然物語に引き込まれていきました。

啓太が外資系企業にTOB(公開株式買付)で会社が買収されるという噂を耳にした頃、先輩社員の真奈美が急接近してきます。ときめいたのも束の間、本庄に連れられ参加した新プロジェクトで明かされたのは社運をかけた新製品開発が失敗したとの報告でした。「接着できない接着剤」ができてしまった というのです。メンバーには失敗を隠して打開策を見つけるという難問が課されますが、誰も上手い解決策を見つけられないまま時間が過ぎていきます。

絶妙のタイミングでTOBの情報が流れ、会社やプロジェクトチームの中にスパイがいるのではという疑心暗鬼に陥る流れの中、本庄と真奈美のどちらかがスパイかもと板挟みになる啓太。真奈美が専務の愛人だと誤解する一幕もありましたが、結局二人とも会社を守ろうとしていたことがわかります。社長の息子の常務と専務の間の確執も匂わせていましたが、これも方針の違いからということで、両者とも買収を防ごうと動いていたわけです。

開発者の野毛が「科学の常識の中で生きている」ちょっとずれた感じは、専門用語が多用される説明部分で示され、入社まもないど素人の啓太が半分も理解できない感覚も共感できました。

その門外漢である啓太の閃きが「接着できない接着剤」の使い道を見つけます。固まらず・熱に強く・断熱性がないという特徴は、シリコングラス(PCのCPUにファンクーラーを取り付ける時に使用する接着剤)に使えるのではというアイディアが採用され、糊会社が異業種の新事業に乗り出すことが話題となったことで株価も上がり、外資企業のTOB断念に繋がっていきます。
スパイ疑惑の方も、開発部長が犯人と判明し一件落着です。

営業マンとして独り立ちした初日、啓太はマルコウで新製品の注文を取ります。担当者は本庄の陳列アドバイスを受け容れ売り上げが伸びたことで自らもどうやったら良いか考えるようになっていました。固定観念に囚われていたら成長しないんだなぁと彼の姿勢に好感を持ちました。

啓太と清掃員姿のおじいさんのエピソードはその正体についてはすぐに推察できましたが、「糊、好きかい?」と最初聞かれた時は「よくわかりません」と答えた彼が二度目(もう社長だと気付いています)には「はい。好きです。」と言い切っています。
最初はどうにか受かった会社だからという消極的な気持ちだった啓太が、ミスや買収騒ぎの中で社会人として成長し、会社のことを好きになっていく様子が心地よかったな。大学は三流でも啓太自身は状況を分析したり見極めることのできる素頭の良い子だったというわけね。😁 




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闘う君の唄を

2025年02月24日 | 
中山七里(著)朝日新聞出版

新任教諭として、埼玉県秩父郡の神室幼稚園に赴任した喜多嶋凛。モンスターペアレンツたちの要求を果敢に退け、自らの理想とする教育を実践するのだが……。どんでん返しの帝王が仕掛ける物語は、いったいどこへ向かうのか?読者の予想を裏切る著者の真骨頂!

【目次】
一. 闘いの出場通知を抱きしめて
二. こぶしの中 爪が突き刺さる
三. 勝つか負けるか それはわからない
四. 私の敵は私です
五. 冷たい水の中をふるえながらのぼってゆけ

タイトルに惹かれて手にしましたが、あとがきに中島みゆきさんの「ファイト!」から構想を得たとありました。だよね~😀 

冒頭の電車内で泣き叫ぶ赤ちゃんをよそにスマホをいじっている母親に注意する凛の描写は、続編のヒロインにも踏襲されていたと気付きました。😁 そっちを先に読んじゃったので事件の真犯人もわかっちゃってるんだけど💦

凛が勤めることになった幼稚園は埼玉県秩父郡の神室駅からバスで20分程の神室幼稚園です。 実はこの幼稚園では、15年前に3人の園児が殺害される事件が起き、職員の中で当時を知るのは園長の京塚正彦だけです。逮捕された送迎バスの運転手・上条卓也は死刑確定後に獄死していたと後に明かされます。

凜は年少の星組の担任になります。指導役は年中組の高梨まりかで、年少月組の担任は神尾舞子、年長組は池波智樹です。(舞子と池波は続編に登場しますが、本作の舞子先生は終始冷静沈着で人間味に欠けるキャラながら、凛が四面楚歌となった時にただ一人「普通」に接していました。)
理想に燃える凛でしたが、この園では15年前の事件以来、保護者会の力が強く園長も言いなりの現実に直面します。

凜は保護者の会長・見城真城らと何度も衝突をしながらも、牧場で牛と触れ合いながら命の尊さを教えたり、保護者会から押し付けられた劇の演目は変えずに大胆な脚本で園児や保護者が楽しめる内容を考えたりといった慣例を覆す授業や型破りな指導で少しずつ周りの信頼を得ていきます。

ところが、埼玉県警捜査一課の渡瀬刑事の出現により、再び15年前の事件が人々の記憶に呼び起こされます。
更に新入園児の保護者説明会に来ていた凛の小学校の同級生だった横山美穂により、凛が15年前の事件の犯人・上条卓也の娘だと暴露され、保護者や同僚から糾弾され
園長からは自主退職を迫られます。
辞めないと申し出た凛に、園長は副担任として仕事を続けさせますが、園児との会話も禁じられ精神的・肉体的に追い詰められていきます。

3月に入り、雨で午前中に全ての園児を退園させたある日、凛のクラスの菅沼大河が帰宅していないと連絡が入ります。
以前、大河ら数人の園児たちが自宅マンションの裏山でツキノワグマの子供にエサをあげていたことを思い出した凛は、豪雨の中を探し回ります。山の中の掘っ立て小屋を見つけ中を覗いた凛はそこに渡瀬刑事がいて驚愕します。ヤクザと見紛う面相の渡瀬がいきなり現れたらそりゃ驚くよな~~😁 凛の読み通り大河もそこにいました。

小屋の地下収納庫には血液が付着した鎌とロープがありました。渡瀬は15年前の事件の真犯人の証拠を探していたのです。鑑識により血痕が15年前に殺害された園児のものと一致します。小屋と土地の所有者は園長で、身柄は駆け付けた秩父署の刑事たちに引き渡されます。

凛が幼稚園教諭になろうと思ったのは、亡くなった3人の園児のためであり、父親の犯した罪への贖罪の気持ちがあったからでもあります。神室幼稚園に決まったのは偶然でしたが、彼女にとっては必然でもあったのです。
渡瀬は、再審請求までの道のりの険しさに言及し、凛が置かれている厳しい状況も変わらないことから転職や離職をアドバイスしますが、凛はもう逃げないと答えます。
受け持ちクラスの園児たちが一斉に見つめるその顔に希望と勇気をもらう凛です。

凛の父親は過って轢き殺してしまった園児の遺体を隠そうとして現行犯で捕まっています。保身の行為が身に覚えのない2件の殺人の犯人にされる悲運に繋がりました。
幼児性愛者の園長がこれ幸いと自分の罪をなすりつけ、平然としていたその鉄面皮には呆れを通り越してうすら寒い気がします。

それにもまして、世間というバッシングの描写の過酷さに辟易させられます。被害者遺族も加害者遺族も永遠に癒えることのない傷を受け続けなければならないどんな理由があるというのか。😡 

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薬屋のひとりごと 14

2025年02月23日 | 
日向夏(著)しおとうこ(イラスト) ヒーロー文庫

中央に戻り、外廷の医務室勤務になって医官たちの仕事を手伝う猫猫。
後輩もでき、新しい部署にも慣れていく。
しかし猫猫たちが不在の間に、宮廷では妙な派閥争いが起きつつあった。
正しき血統を維持しようとする皇太后派と、新しき流れを作ろうとする皇后派。安氏と玉葉の意思とは裏腹に、周りは次第にきな臭くなっていき、特に若い武官たちの間では、傷害沙汰が繰り返されていた。
そんな中、猫猫は姚に頼まれて「名持ち」の一族の会合に参加することになるのだった。(内容紹介より)


皇帝によって一族を表す『名』を与えられた「名持ち」の者たち。時は流れ、滅族滅となった一族もあれば、新たに起こる一族もある。
そして、元上級妃である里樹の実家、卯の一族は衰退しつつあった。
名持ちの会合で猫猫は卯の一族とかつて親交があった辰の一族と対面する。
辰の一族がかつて皇帝より賜りし家宝を探すために――。
また、花街でも女華が持つ玉牌が何者かに狙われる。辰の家宝、翡翠牌、華佗の書。皇族の末裔の謎に絡む陰謀!馬閃、そして羅半兄の恋の行方は?時代の移ろいに翻弄される猫猫たち。錯綜する思惑の中、猫猫は真実を見抜けるだろうか。(イントロダクションより)

一・二話 名持ちの会合 前後編
三話 辰の家宝
四話 兎と龍
五話 心に響く銅鑼
六話 馬と兎

燕燕に植物図録で釣られた猫猫が連れて行かれたのは丑の別邸で行われる 「名持ちの会」一応猫猫は羅のお嬢様ですもんね。羅漢・羅半兄・羅半も参加。姚と燕燕 は随行です。5年に一度の開催で、羅の一族の参加は15年ぶり。一族の長と若者の組み合わせは見合いや後継者の顔見世、コネ作りや商売の意味合いもあり密室も完備されているという😁 
娘を溺愛する羅漢が猫猫に贈った簪は超悪趣味なものでしたが、謎解きの重要なアイテムとして利用されます。
姚たちが同行したのは、辰の「恋文男」の求婚を断るため。良家のお嬢様ならではの悩みです。
実は羅半は羅漢や猫猫の力を借りて卯と辰 の家の仲違いの原因となった辰の家宝を探し出し両家を和解させ恩を売ろうとしていました。
猫猫は見事にこの謎を解きます。羅漢の嘘を見破る力も効力を発揮しますが、このおっさん、最後にどえらいことをやってくれちゃうんですね~~😖 
猫猫たちの密談中に姚を恋文男から守った羅半兄。決闘で飛蝗や盗賊の襲撃を退け開墾で鍛えた体力で見事勝利し、燕燕に俊杰さまと本名で呼ばれ篤い感謝を受けたことですっかり彼女に💛を奪われてしまいます。う~~ん、この二人上手くいくのか??

一件落着と思いきや、今度は麻美に連行され、彼女の夫の馬琴・馬閃とともに里樹の祖父 である卯の当主の元へ。趣旨を理解した猫猫は里樹の不幸話と馬閃の活躍話をして馬閃を売り込みます。やれやれ😓 この場にいた里樹の異母兄の卯純 がなにやら曲者っぽい。

七・八話 消えた盗人前後編
九話 妓女の引き際
十話 花押

女華の翡翠の牌を狙った盗人が入り、白鈴を心配した李白が馬を駆って猫猫を緑青館に連れて行きます。いちゃつく李白と白鈴はすっかりバカップル様😁 
牌は女華が別の場所に隠していて無事でしたが、盗人の手掛かりを探す謎解きが始まります。女華が風呂で部屋に不在の時間を狙い、隣の部屋にいた白鈴たちには睡眠薬入りの粥を盛った犯行は身請けされた梅梅の後釜を狙った梓琳姉が盗人を手引きしたからでした。梓琳姉の逞しさと卑しさが強調されてますね~~。😞 
身の危険を感じた女華は翡翠の牌を手放し、猫猫に託します。
猫猫は壬氏様に相談に行きます。13巻の終わりに非常に気まずい結果になっている二人ですが、翡翠の牌が華佗の牌 と判明し、持ち主を問い質す壬氏様と女華を守りたい猫猫の思いがぶつかる場面を救ったのが雀さんの言葉。
二人っきりになっても進展しない猫猫と壬氏様を扉の外で盗み見る水蓮と雀さんでした。ちなみに前話で水蓮が阿多の母 であることが明かされています。😆 

十一話 後輩たち
十二話 修練場医務室勤務
十三話 決闘とその代償
十四話 二人はなかよし
十五話 矛盾と目的
十六話 妤 

恋文男がまた決闘で負けて、卯純に連れられ医局に来ます。
決闘の理由は恋文男が里樹を莫迦にしたのを卯純が笑い流したのを偶然見ていた馬閃が両方に激怒したというもの。職務で馬閃にも聞き取りにいった猫猫は、武官に絡まれそうになりますが李白が助け舟を出してくれました。
文官だった卯純は家のゴタゴタで武官にされ(見せしめのようなもの)李白の部下となっていましたが、李白は彼を弱いが無害だと庇います。
猫猫と馬閃は「質が悪い、そういう奴ほど危険視すべき」と意見が一致します。

猫猫に医官見習いの後輩ができます。妤と長紗です。妤から『ここ数年で薬屋を始めた訳ありの男』を探していると相談を受けた猫猫は左膳のことかと思ったのですが、妤の捜し人は克用でした。😮 彼は妤のいた開拓村で医者をしていましたが、呪い師をしていた村長に疎まれ追い出されており、その後村は疱瘡で滅びました。医療知識のある克用が村に残っていたら村は滅びなかったと理不尽とわかっていても恨まずにいられなかったのね。妤の家族が無事だった のは、克用に 種痘を受けていたから。
彼は流行病の研究をしていた師匠から双子の弟とともに疱瘡の種を植えられていて、そのため顔半分に痕が残っていたのです。弱毒性の種を植えられた弟には後遺症はなかったけれど既に死んでいます。さらに彼は師匠が華佗の書 を子孫が隠し持っていると聞いたと話します。

十七話 禁猟区
十八話 華佗の末裔
十九・二十話 残された秘宝 前後編
二十一話 帰り道

天祐の故郷が狩猟地として選ばれ、解体研修で李医官・猫猫・天祐が参加することに。政のお付き合いに壬氏様が参加するのは異例でしたが、実は皇太后派の若者が暴れる予兆を聞きつけたためでした。案の定事件が起こります。天祐の実家に火の手があがり、猫猫たちが駆けつけると天祐の父親に刃物を向ける名持ちの若者たちの姿が。その中には恋文男の姿が。こいつどうしようもない一族の恥さらしだな😠 
皇子を手にかけた罪人の子孫という間違った情報を鵜呑みにした若者たちが先走り、罪人の子孫を私刑にして皇弟である壬氏様に取り入ろうとしたのですが、全く壬氏様の人となりを理解していない馬鹿者たちですね。

事の顛末に伝説の毒鳥(実は罪人の子孫の比喩だった)を餌にされた猫猫はがっかりしますが、天祐から華佗の書があると聞き燃えている家に水をかぶって飛び込もうとして壬氏様に止められます。羅の血筋を感じさせる一幕でした。
天祐父から華佗の書を見つけて処分して欲しいと頼まれ、割れた二つの牌を合わせることで見事に場所を特定した猫猫。馬閃に続き壬氏様に俵担ぎで運ばれる図は笑えますね。見つかった華佗の書は復元が必要なのでお預けです。

発見に浮かれていた猫猫はうっかり水蓮に壬氏様と馬車で二人きりにされます。
猫猫に触れたい気持ちを我慢する壬氏様ですが、猫猫じゃなくてもぞわ~~っとする変態セリフはいただけません。悪戯心を起こした猫猫が壬氏様に仕掛けますが、微妙に後が続かず・・・二人ともいい加減いい歳なんですけどね~~😅 
 

終話 悪意をばらまく者
雀さんが卯純のところにやってきます。
実は一連の騒動の火種は卯純が起こしていました。王芳に卯の龍の置物の話をし、皇太后派の血気盛んな若者たちに天祐父と翡翠の牌の存在と卯の弱体化をリークし煽っていたのです。彼は自分を強者と驕り高ぶっている者を憎んでおり、特に家族(里樹を虐めていた父と姉)を嫌っていました。でも母親と里樹は好きなのね。そんな卯純に親近感を覚えた雀は、自分の後継者(スパイ)にスカウトします。ろくでもない師弟関係の誕生です。

何気に雀さんの「母に可愛がられる異父弟はそのうち事故にみせかけよう」という一文に虎狼の行く末に待っている悲惨な運命を予感してしまいました😁 ま、あいつに思い入れはないのでちょっと楽しみだったりして。

水蓮の素性や華佗の書の登場に加え、猫猫の壬氏様への気持ちが少しずつ動いている様子や、羅漢に対しても軟化している感じが見られ、なかなか盛り沢山な内容でした。
特に、名持ちの会での羅一家団欒??の愉快な会話は笑わされました。😁 


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