日向夏(著)しのとうこ(イラスト) ヒーロー文庫
玉鶯は、蝗害は異民族のせいで起きたと憤る民を鎮める名目で、砂欧に戦争を仕掛けようとしていた。壬氏は戦を避けようと頭を悩ませていたが、玉鶯の暗殺という思わぬ形で戦を回避することになる。しかし、領主代行を失った西都の舵を取る者がいない。壬氏は、いやいやながら西都の政務を執ることになった。猫猫は、心身ともに疲弊する壬氏を気遣いながら、怪我人や病人を診る日々を送っていた。そんなある日、壬氏は、領主代行だった玉鶯の息子たちを、西都のために後継者として政治を教え、育成してほしいと頼まれる。しかし、玉鶯の長男・鴟梟はどうしようもない無頼漢であった。他の二人も後継者教育を受けたことなどないことがわかり、猫猫は頭を抱えてしまう・・・(内容紹介より)
・序話
・一話 本邸の我が儘坊
・二話 温室と礼拝堂
・三話 玉鶯の子どもたち
・四話 深窓の奥方
・五話 三男次男長男
・六話 葡萄酒醸造所
・七話 遺産問題
・八話 俊杰
・九話 異国娘
・十話 急患と緊急事態
・十一話 南の宿場町
・十二話 理人国
・十三話 鏢師
・十四話 変装
・十五話 優先順位
・十六話 噓つき
・十七話 信仰の町
・十八話 盗賊の根城
・十九、二十話 盗賊村前後編
・二十一話 酌
・二十二話 事の顛末
・二十三話 帰路
・二十四話 手負いの獣
・二十五話 醜い雀の子
・二十六話 夫婦
・二十七話 師弟
・二十八話 安眠
・二十九話 折衷案
・三十話 成長
・終話
相変わらず序話の人物が誰なのかは後半にならないとわからず、それが判明する頃には物語も大きな転機を迎えます。
鴟梟の息子・玉隼がやぶ医者に怪我をさせ、母親に連れられて謝罪に来ますが、本人は全く反省していません。いかにも甘やかされて育った感丸出しの彼が後々まで猫猫を困らせることになるのね。😓
温室を巡る庭師と猫猫の丁々発止の衝突とその結末も描かれます。礼拝堂で雀から異教の祈りの言葉を教わるのですが、後に猫猫を助ける大きな伏線になっていました。
玉鶯の三男・楊虎狼が月の君の下で働くことになったと挨拶にきます。謙虚で礼儀正しい彼に好感を抱く一同。彼は末っ子で他の兄弟とは少し年が離れています。やぶ医者情報で、兄妹の母親が異国に滞在して帰国後は目立たない存在になっていることが語られます。
玉鶯の孫娘・小紅(ストレスで髪の毛を食べていた子)の術後の診察に訪れた猫猫は、玉隼が小紅を苛めている現場に遭遇します。この時の長女(小紅の母)、三男、彼らの母の対応の違いが示されます。
久しぶりに本邸にやってきた長男・鴟梟が息子の言を信じて猫猫に詰め寄りますが、虎狼が仲裁し事なきを得ます。
長男は父親に似ていますが、陸孫の下についている次男の飛龍と虎狼はあまり似ていないようです。
壬氏から頼まれ葡萄酒の醸造所で起きた食中毒事件を見事に解決する猫猫。人を下戸にする茸を自ら実験台となってその効果を実証する彼女は実に生き生きとしてました。壬氏に報告に行った彼女は玉鶯の遺産問題の愚痴を聞かされます。😌
医務室にやってきた羅半兄が収穫した芋について不満を示す中で、芽や緑色の皮に含まれる毒の話をします。これも後に猫猫が窮地を脱するヒントになっていました。小姓の俊杰が自己紹介をした際にみせた羅半兄の動揺は、彼の本名の大きなヒントになっているような。
虎狼の依頼で、往診に出かけた猫猫は患者の頭痛の原因が虫歯だと気付きます。身体にを触れさせず、問診だけで見抜くとは流石!!この時、雀は夫の馬良を同行しますが、その理由は彼の鋭い観察眼にあったよう。
患者は白金の髪と青い目の異国人でしたが、馬良は理人国の王族の四男の可能性を指摘します。だから身体に触れさせなかったのか~~!😌
雀から収穫量の計算の仕事を依頼された猫猫でしたが、小紅の来訪で事態が思わぬ方向へ。彼女に案内された隠し通路で、毒矢で襲われた鴟梟が傷を抉り出して負傷しているのを見つけて処置をしますが、そこに雀が現れ、またまた連れ去られることに。
異国の言葉と潮の香りで、自分たちが南の宿場町にいることを推測した猫猫に、鴟梟は雀とは戌西州の平和に関して利害関係で結ばれていると話します。
壬氏は陸孫と飛龍から、理人国の使者との面会を求められます。茘に行方不明になっている自国の貴族(第四王子)の捜索協力を求める理人国の特使たちですが、それは猫猫が治療した彼女(彼)であると推察され、さらに事件の関与が疑われる鴟梟を猫猫が治療した報告も届いて対応に苦慮することになります。😖
鴟梟は子供たちに優しく接し、特に小紅は彼に懐いています。どうも雀から聞いた話とは異なる人物像に疑問を抱く猫猫。
解放されると聞かされホッとしたのも束の間、事態が変わって女鏢師と別の場所へ移動させられることになる猫猫と子供たち。女鏢師は巧みな化粧で猫猫の年齢と容姿を誤魔化して良家の母子に化けた一行。小紅から隠し通路は「ふーらんおじさん」=虎狼から教えられたと聞いた猫猫は虎狼が鴟梟襲撃に深く関わっていることに気付きます。
女鏢師から戌西州第二の都市に向かう母子という設定を説明され、まだ西都に戻すタイミングでないが、それまで彼らを守ると言われた猫猫。自分の命を最優先にするよう蛇毒や針も渡されます。
一方、壬氏は鴟梟を尻尾切りする場合、猫猫をどう守るか悩みます。内部の裏切り者が虎狼だと発覚したきっかけが 羅漢です。父ちゃん、やっと活躍だ!虎狼の次の行動は常軌を逸していますが、それこそが謎を解くヒントなんですね。
壬氏は鴟梟と協力して第四王子を探すことを決め羅漢に同行を求めます。
森林地帯の町の手前で盗賊に襲われた猫猫は、玉隼を護衛に託して逃がし、機転を利かせて雀から教わった異国の教典の一節を引用し窮地を脱します。
盗賊に支配された信仰の町に連れて行かれた猫猫と小紅は、盗賊の頭領・独眼竜が、手配書にある異国のお嬢様を探していることに気付きます。小紅が間違えられそうになりますが、疑いが晴れると女子供が集められた場所で炊事の手伝いをさせられます。
独眼竜は、過去に鴟梟とのいざこざの恨みから町を制圧し、多くの住民に犠牲が出ていました。その選別は異教徒かどうかで、信者を装った猫猫が助かった理由です。
猫猫は町に出かけたまま行方知らずとなった女鏢師を気にかけつつ、以前この町に羅半兄が農耕指導に訪れていたことを知ります。
薬師をであること明かした猫猫は、炊事場を取り仕切る中年女から、独眼竜に虐待された少年の治療を頼まれます。捕まった時に着ていた服を返してもらった猫猫は、袖に隠された雀の刺繍と異国語のメッセージに気付き、一計を案じます。
夕食の酌を利用し馬鈴薯の皮と芽を混ぜた食事で盗賊たちの体調を崩し、蛇毒を入れた馬乳酒を呑んだ独眼竜は、口内の傷(少年の虐待の原因)から毒が回ります。事態に気付いた盗賊たちに追い詰められ絶体絶命の猫猫を救ったのは鴟梟と鏢師たちです。
鏢局を継いだ 鴟梟が、異国の要人の護送任務に関わったことで猫猫と小紅が巻き込まれたのね。女鏢師の正体が雀と知って驚く猫猫。だって容姿も身長もまるで別人だもの。でも笑い方は雀だ~!雀は猫猫たちの身の安全をちゃんと確保していたわけです。
帰路、独眼竜(熊男)の処置に不安を覚える雀の予感は的中し、逃げ出した熊男が猫猫を恨んで襲ってきます。雀が間一髪で熊男を倒すのですが、右腕に重傷を負います。彼女の体には過去の戦いの傷跡が無数に残っていました。猫猫は彼女の命を救うために全力を尽くします。
雀は幼い頃に母が突然いなくなり、母を探しに行った父も帰らず、財産を奪われて孤児になります。生き残るための厳しい生活の末、西都で母を探し出しますが、自分が母にとって「不要な存在」だと知り、彼女を捕まえた男に自分の能力をアピールして彼に拾われたのでした。
母から『馬の一族』(皇族の護衛)と『巳の一族』(諜報活動)の関係を教えられ雀と結婚させられた馬良ですが、彼女の明るさや献身に次第に心を許していきました。
重傷を負い横たわる妻への愛情を再確認し、一緒にいることを選んだ二人の絆はより深くなりました。😍
驚いたのは、雀を巳の一族に引き込んだ男が魯侍郎だったことです。(重傷を負った彼女への評価は依然高いようです。)
雀の母の正体が玉鶯の妻でしかも巳の一族だったというのも驚愕!
雀は自分を不要の者と切り捨てた母より高い序列にいることを望んでいて一種の復讐なのね。
また彼女は「月の君を幸せにする」という命令を受けています。猫猫を守ることが彼女にとって正しい選択だったのです。
疲労困憊の猫猫の足は何故か壬氏の執務室へ向かいます。執務室の床に横たわり壬氏の体温と安心感に包まれて熟睡する猫猫と壬氏。ここで何も起こらないのがいかにもな二人ですね。😁
気力が回復した壬氏は、虎狼、鴟梟と向き合い西都の今後を話し合います。虎狼の提案(壬氏が治める)に対し、雀は鴟梟が西都を象徴する「あやつり人形」となる折衷案を提示します。
鴟梟が本邸に戻り、傀儡(武生としての役割を果たす)として働き始め、食糧問題にも多少の目途が立ったことで、ようやく中央に帰る日が訪れます。
羅半兄にそれを伝えようとした猫猫でしたが、玉隼と小紅のやり取りに気を取られ失念してしまいます。おいおい、それってまさか・・・
小紅が玉隼を半眼で睨み果敢に言い返す姿は彼女の成長を感じますね~。それってまさしく猫猫の影響ですよね。😁
中央へ戻る船旅の途中。乗り合わせた変人軍師が船酔いで苦しむ姿をしり目に見張り台に上った猫猫はそこに壬氏の姿を見つけます。狭い空間に座り手を繋ぐ二人。軽い接吻の後の会話はこれまでと少し変わってきたような。💛
でもここで終わらないのが羅半兄のネタです。
猫猫が伝え忘れたことだけじゃないらしいが、どこまでも不運な羅半兄というオチがついていました。😁