杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ワイルド・スピード MEGA MAX

2012年02月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年10月1日公開 アメリカ

麻薬王ブラガの逮捕に貢献したが、裁判で懲役25年を言い渡され護送されるドミニク(ヴィン・ディーゼル)を、元捜査官ブライアン(ポール・ウォーカー)とミア(ジョーダナ・ブリュースター)は助け出し、張り巡らされた捜査網と国境を越え、ブラジルの裏社会に身を隠す。ミアの妊娠を知ったブライアンはヴィンス(マット・シュルツ)に誘われ、ドミニクも合流して車の窃盗に加わるが、仲間の裏切りに遭う。それは麻薬取締局の押収した車で、表向きはリオデジャネイロの実業家にして裏社会を牛耳る黒幕・レイエス(ホアキン・デ・アルメイダ)の闇金の流れを記録したマイクロチップが隠されていたのだ。逃亡生活から抜け出し永遠の自由を得るために、ドミニクは最後の仕事としてレイエスの裏金1億ドルを強奪しようと仲間を集めて計画を立てる。難攻不落の厳重なセキュリティを破り大金を盗み出すために、彼らは世界中に散らばる凄腕レーサーを招集。強烈な個性と超絶ドライビング・テクニックが交わるドリーム・チームを結成し、常識を覆す手口の大金強奪ミッションに挑む。しかしそんな彼らの計画の前に、二人を逮捕せよという特命を受けたホブス連邦捜査官(ドウェイン・ジョンソン)が、巨大装甲車グルカを駆り、凄まじい執念で彼らの前に立ちはだかる。


前作「ワイルド・スピード MAX」の後日談を描いたシリーズ第5作は、ローマン(タイリース・ギブソン)、ジゼル(ガル・ギャドット)、ハン(サン・カン)、タズ(リュダクリス)、エレナ(エルサ・パタキー)ら過去の主要キャストが勢揃いし、追う側にはドウェインを配した豪華作になっています。今回の裏テーマは「仲間=家族」。ドムが家長的役割を果たしています。

今回ブライアンは追う側から追われる側に立場を変え、車の窃盗や金庫の強奪までしちゃいます。カーアクションも更にパワーアップされてたっぷり登場。
まず、護送されるドムを助け出す冒頭のシーンでしょ。列車から車を盗み出すシーンでしょ。盗み出したパトカーでレースをするというおまけも付けています。
車が川に落ちるシーンや、ホブスに追われてリオのスラムを逃げるシーンも凄い

極めつけは警察署に保管されてる金庫を車に結んだロープで引きずってのカーチェイスです。
巨大な金属の塊である金庫が街中を暴走し、バス停から信号機、銀行まで破壊しながら転がっていくんですから、観てるだけでもストレス解消されるかも 金庫自体にも裏があって、彼らの計画の成功には思わずです (実際はこの金庫は車に被せてあって、自力走行できるようになっていたそう

今回もコルベットにスープラ、R34やポルシェ911GT、SRT8、ダッチチャーザーなど、ため息ものの豪華な車がてんこ盛り。

また、ホブスが乗るグルカがドムの愛車チャーザーに突っ込み、殴り合いが勃発するシーンではマッチョ二人の激しいバトルがあります。個人的にはスルーしたい場面ですが、好きな人にはたまらないのではないかしら?

部下をレイエスに殺され、一時休戦で手を結んだホブスとドムですが、計画終了すればまた追うものと追われるものに分かれます。この二人、続編でも好敵手になっていくのかな?

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ヤング≒アダルト

2012年02月27日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年2月25日公開 アメリカ 94分

37歳になるメイビス(シャーリーズ・セロン)は自称作家、実はゴーストライター。執筆中の“ヤングアダルト”シリーズは人気下落で終了が決定し、新作の予定もない。酒に溺れ、愛犬と暮らす侘しい生活を送っていた。そんな中、高校時代に付き合っていたバディ・スライド(パトリック・ウィルソン)と、彼の妻ベス(エリザベス・リーサー)の幸せいっぱいの案内状がメイビスを苛立たせる。そこでバディと再び恋におちて、輝かしい青春時代を取り戻そうと考え、自信満々で故郷町を訪れたのだが・・。いつまでも大人になれない規格外の彼女が大騒動を巻き起こした果てに見つける“真実”とは……。

シャーリーズが、バサバサ髪でノーメーク、くたびれたスェット姿で現れ、夢に破れかけてる中年女の哀しさが滲み出て、ちょっと憂鬱になってしまう。しかも、昔の栄光が忘れられないタカビー女で、とんでもない自己中とくればどうにも共感のしどころが見えてこないのよね。
それでもただのイタイ女で終わらないあたりは彼女の演技力の効果でしょうか

美貌と才能の両方を持ちながら、それが幸せに結びついていないのは性格が悪いからじゃないの?という見方も出来ますが、自分(の欲望)にとても正直で、自分しか見えていない女性だと思えば、ちょっと可愛く見えてくる・・かも 高校時代から20年が経ち、皆は目の前の現実と折り合いをつけ幸せそうに暮らしているのに、メイビスにはそういう生き方が理解できないの。彼女だけ大人になっていないのね。

そんな彼女に辛辣な忠告をしながらも支えてくれたのは、高校時代に隣のロッカーを使っていた「ゲイ」と噂された冴えないマット(パットン・オズワルト)です。彼にとって、メイビスは今も昔も高根の花で憧れの女性。性格悪くても美人が良いのかね~?と思いつつ、冷静に現実を受け止め生きている聡明な彼が許せるくらいにはメイビスにも良いところがあるんだろうなとも考えてしまいました。

実はマットが杖をついているのは、高校時代にゲイと疑われ暴行を受けた後遺症でした。メイビスのいとこも登場しますが、彼も交通事故で車椅子です。これって物語上必要な設定だった???

メイビスが大失敗をやらかして、自らを反省するのかと思ったら大間違い。マットと「出来た」のかも想像にお任せという感じ。さらに、マットの妹の励ましを真に受け、再びタカビーな人生を歩みそうな気配濃厚でエンドロールに・・・お~~い、成長しないのかい!!
高校時代と故郷からはしっかり卒業したようですが

後味、イマイチかなぁ いわゆる大人な常識人にはメイビスという女性はもてあましてしまう存在です。ということは私も彼女の故郷の町の住人と同じってことね

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かぞくはじめました

2012年02月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年 アメリカ 115分 日本未公開 

ホリー・ベレッソン(キャサリン・ハイグル)が、親友アリソン(クリスティナ・ヘンドリックス)のお膳立でブラインドデートをした相手のエリック・メッサー(ジョシュ・デュアメル)は、アリソンの恋人ピーター(ヘイズ・マッカーサー)の親友。ところが1時間も遅刻して普段着で現れた彼は、ドレスアップしたホリーにバイクの後ろに乗れと指示し、レストランの予約もデートの計画もなく、他の女からの電話でこの後会う約束をする始末。怒ったホリーにメッサーも逆ギレしデートは数分で終了。二度と会いたくない二人だったが、アリソンとピーターの結婚式を皮切りに夫妻のイベントには必ず招待され・・。月日は流れ、ホリーはベーカリー経営も順調で、客のサム(ジョシュ・ルーカス)という理想の恋人候補も現れた。だが突然、アリソンとピーターが事故で帰らぬ人となり、遺言で一人娘のソフィーの共同後見人として目っサーと共に指名される。親族に引き取り手もなく、二人は大切な親友の最後の頼みに応えることを決意し夫妻の家で共同生活を始めるが・・・。


震災の影響で公開中止になった作品です。
出会いが最悪だった二人ですが、親友夫妻の遺児の後見人として共に育児という荒波に揉まれるうちに、互いを認め合い、最後には本当の家族になるというお話。

子役のソフィーを演じるのはアレクシス、ブリン、ブルック・クラーゲットという一卵性の三つ子姉妹です。その可愛らしさは作品を成功に導いている大きな理由かも。

育児は親の楽しみや目的の前に立ち塞がる大きい壁です。
ホリーはレストランの開店準備、メッサーはスポーツ番組のディレクターを目指して修行中ですが、お金も時間も削られる毎日が続きます。もちろん育児経験ゼロですから、離乳食ひとつとっても食べてくれずに途方に暮れたり、泣きやまないソフィーを抱いて夜中ドライブしたり。様々なハプニングに直面し、何度も大ゲンカと失敗を繰り返しながら、少しずつ心を開き始める二人はなんだか微笑ましくもあります。ソフィーの成長に一喜一憂し、洋服を買いに行けばついつい買いすぎて散財する様子に思わず昔の自分の育児を重ね合わせて見てしまったりも

彼らを支える近所の住人がまた個性的。
口は出すけど手は出さないディーディー(メリッサ・マッカーシー)と一手に引き受けているスコット夫妻、お洒落に気を使うベス(ジェシカ・セント・クレア)とバンド演奏に夢中なジョシュの夫妻、ゲイのカップルのテッドとゲリーは育児疲れの様子。
三組の育児の先輩があれやこれやと賑やかにホリーとメッサーに助言を押しつけるのがコミカルに描かれます。また、後見人として相応しいかを評価するために抜き打ちで訪れる社会福祉士のジャニーン(サラ・バーンズ)の前で必死に取り繕う二人も笑えます。

アトランタでのディレクターとしての仕事の打診を受け心揺れるメッサーに憤慨したホリーとの間で亀裂が生じ、彼らは距離を置きます。ホリーは、ソフィーの病気がきっかけで再会していた医師のサムと付き合いだしますが、やっぱり心が通じる相手はお互いだけだと気付き「本当の家族」になるという結末はベタだけどめでたしめでたしです

ウマの合わない二人の男女、という設定ですが、相性が良いからこそ衝突する時は派手にぶつかるってことかしらん?そしてそんな二人の本質を親友たちは見抜いてたってことで

それにしてもソフィーちゃん、可愛い~~

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TIME/タイム

2012年02月22日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年2月17日公開 アメリカ 109分

現代社会と似た近未来において、唯一の通貨は“時間”だった。25歳になった瞬間から、左腕の体内時計が刻む余命の時間。“富裕ゾーン”の住人が永遠の命を享受する一方で、“スラムゾーン”の人々は一日に満たない余命を、日々の重労働で稼ぐか、他人からもらうか奪うという熾烈なサバイバルに明け暮れなければならなかった。2つの世界は、“タイムゾーン”という境界線で隔てられていた。ある日、スラムゾーンに住むウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、富裕ゾーンからやって来た、人生に絶望した男ハミルトン(マット・ボマー)から116年という時間を譲り受ける。その直後、ウィルの目の前で、母親のレイチェル(オリビア・ワイルド)がわずか1秒という時間のために息絶えてしまう。残酷な運命に怒りを覚えたウィルは、この世界の謎に挑むことを決意し、タイムゾーンを超えて富裕ゾーンへ向かう。そこで出会ったのは、退屈な日常に飽いた大富豪(ヴィンセント・カーシーザー)の娘シルビア(アマンダ・セイフライド)。ハミルトン殺害容疑でウィルを追ってきた時間監視局員のレオン(キリアン・マーフィー)に追い詰められたウィルは、シルビアを人質にとって逃走する。絶体絶命の危機の中、一体誰が何のためにこのようなシステムを作ったのか?2人の間には、いつしか共感を超えた恋心が芽生えていく。時間に支配された世界の果てで待ち受ける衝撃の結末とは……?

全ての人間の成長が25歳で止まる近未来なんてやだ~~
単に止まるだけなら若いままの外見でいられてラッキーと思って観ていたら・・・残りの命を永らえるために働かなくてはならないのは仕方ないにしても賃金(これも時間で支払われる)低すぎです。富裕層とスラム層の差が極端過ぎるんだもの。

時間を通貨と置き換えたらまさに現代を象徴するような資本主義社会を更に強調しているのだわ

主役の二人は美しいです。特にアマンダが勝気なお嬢様を好演しています。
でも、結局誰がこんな世界を作り出したのかはっきりしないし(シルビアの父親の背後にもっと大きな力が働いていそうなんだけどよくわからなかった)、二人の行動が世界を変えていくきっかけになったと感じさせる終わり方ですが、『ボニー&クライド』のような展開には失笑してしまいました。

主題は奪うより分け与えよってことですかい?

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花のかみかざり

2012年02月21日 | 
いもとようこ 著 / 岩崎書店 刊

死の床で、あたなはなにを願いますか?看護師のうさぎさんには後悔することがありました。ずっと前に狼のおばあさんの最後の願いをかなえてあげられなかったのです。その願いとはいったい何だったのでしょうか? (内容紹介より)

絵本です。
大人が読んでもだったと言う人がいて興味を惹かれたので借りました。
車椅子のネズミのおばあさんに「いつも優しくしてくれてありがとう」と言われて思わず泣いてしまったうさぎの看護師。その理由は以前勤めていた病院で偏屈で恐いと思っていた狼のおばあさんが死ぬ間際に「抱きしめておくれ」とうさぎに頼んだのに、その恐いまでの雰囲気に気圧されて逃げ出してしまったことへの後悔と罪悪感でした。

赤ちゃんを抱いてあやすうさぎの看護師を睨みつけるように見ていた狼のおばあさんは、本当は自分も優しく抱きしめて欲しかったのです。おばあさんが亡くなって初めて彼女の思いに気付いたうさぎさんは、取り返しのつかない後悔を抱えてしまったのでした。

ネズミのおばあさんは、では代わりに今私を抱きしめてと優しくうさぎさんを慰めます。
悲しみは慈しみの心で洗われて、うさぎさんは「明日」を見つめて新たに進んでいけそうです。

とまぁ、そんなお話なのですが、実はこのストーリーを読んで思い出したのがTVドラマ「白い影」で竹内結子演じる倫子が末期がんの石倉老人に抱いてくれと言われて逃げ出すシーンです。あの時の石倉老人の思いを絵本が解き明かしてくれたように思えました

とても可愛らしい絵柄で子供が喜びそうだけど、読んであげる大人の胸にも響くお話です。

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陽だまりの彼女

2012年02月21日 | 
越谷 オサム 著 / 新潮社文庫

幼馴染みと十年ぶりに再会した僕。かつて「学年有数のバカ」と呼ばれ冴えないイジメられっ子だった彼女は、モテ系の出来る女へと驚異の大変身を遂げていた。でも彼女、僕には計り知れない過去を抱えているようで──その秘密を知ったとき、恋は前代未聞のハッピーエンドへと走りはじめる! 誰かを好きになる素敵な瞬間と、同じくらいの切なさも、すべてつまった完全無欠の恋愛小説。

新聞の書評を読んで気になった作品。単なる恋愛小説なら気に留めなかったと思うけど、そこにミステリーの味付けをしたファンタジーとなれば別です

文庫本の表紙デザインは西島大介という人が描いてますが、昔のマンガに出てくるようなちょっとキュートで愛らしい女の子が描かれた黄色の表紙にまず目を引かれました。

物語の内容は、中学時代、共に周囲から浮いていたため、自然に二人で過ごす時間が多くなり淡い恋を感じていたのに転校で離れてしまったのが、大人になって再会して短期間に恋に落ち・・・という恋愛小説の王道パターンです。

違うのは、ヒロイン(渡来真緒)のキャラがかなり特異なことで、だけどちっとも嫌な感じじゃないの。中学の頃、小学生の算数程度の問題も解けない学年一のバカ呼ばわりされていて、協調性に乏しく、自分が思った通りに行動し、気まぐれ・・となると欠点だらけの嫌な子のように見えますが、主人公の奥田浩介君(と読者)の目に映る彼女は、とても愛らしく憎めない女性なのです。離れていた10年間で、真緒は必死に勉強し、有名女子大に入り、これから伸びていく会社でバリバリ仕事のできるイイ女に変身しているのですからなおさらです。

再会して交際を始めた二人は、真緒の両親に彼女の過去を理由に反対されて逆に気持が燃え上がり駆け落ち状態で籍を入れてしまいます。(真緒は推定13歳の時、突然裸で現れて今の両親の里子から養子になったけれど、それ以前の記憶がないという設定。けれど浩介は彼女の生い立ちに拘りません。)おいおい!そりゃ短絡過ぎじゃないの?と思いながら読み進めていくと、実にラブラブな新婚生活をこれでもかというほど見せつけられるのですだけど、それが嫌みにならないのは作者の文章力の成せる技なのかな?


その中に、終局での大どんでん返しの伏線となる隣家との交流と、真緒が口座から大金を下す場面が出てきます。お金が絡むと「お!ここからミステリーか」とちょっと期待してしまうのですが、最後まで読むとそうではないことがわかります。

隣家の幼児を助けたあたりから「ん~~これはもしかして・・」と結末が頭に浮かぶようになるのです。そして、それと察すれば、今までの真緒の行動は実に「らしい」ことに気付きます。ある種の動物好きにはもうたまらないかも陽だまりの和室でゴロゴロする真緒やくすぐりっこを喜んだり、背中をすりすりしてきたり・・・彼女の行動全てがぴたりと当てはまるのですもの。

謎が解けてみると、改めてもう一度読み直したくなる、そんな本です
結末をハッピーエンドと呼ぶかは読んだ者の感覚に任されますが、浩介の素直で誠実で、大らかで温かい人柄を思うと、ハッピーエンドで良いかもと思ってしまいました。


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ペーパーバード 幸せは翼にのって

2012年02月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年8月13日公開 スペイン 123分

内戦下のスペイン・マドリード。妻マリア、息子ラファと幸せに暮らしていた喜劇役者のホルヘ(イマノル・アリアス)だったが、ある日、相方の腹話術師エンリケ(ルイス・オマール)との舞台を終えて帰宅途中、爆撃に遭う。家へ急いだ彼の目に映ったのは、がれきの山と化した自宅とその下敷きになった妻子の姿だった。そして一年後。内戦が終わり、ホルヘは劇団に戻り、戦争で両親を失った少年ミゲル(ロジェ・プリンセプ)を引き取っていたエンリケと再会し、一緒に暮らし始める。息子と同じ年頃のミゲルを冷たく突き放すホルヘだが、ミゲルはホルヘを慕い、芸を覚えようとする。一方、反体制派へ厳しい弾圧を行っていたフランコ政権は、ホルヘを要注意人物としてマークし、監視役の内偵者を劇団へ送り込む。劇場や巡業先にやって来て、執拗に反体制派摘発の圧力をかける軍人たちに怯えるエンリケは海外脱出を主張するが、ホルヘは拒否し、ミゲルに芸を教え始める。そんなある日、劇団が独裁者フランコ総統の前で公演を行うことになり・・・。


1936~39年のスペイン内戦では、ソ連や国際義勇軍の援助を受けた左派が、ドイツ&イタリアファシズム陣営の援助を受けた右派に破れ、その後に独裁政治が続きます。そんな時代を劇団の芸人たちの視点から描いた作品です。

ホルヘは最愛の妻子を失い、心を閉ざしています。彼が劇団を離れていた間に“反体制派”運動に加わっていたかどうかは明らかにされませんが、劇中では一貫として運動に加わることを拒否しています。ただ全てが虚しく思えていたのでしょう。それでも時に滑稽に、そして痛烈に独裁者フランコやその体制を揶揄する歌やセリフを吐きます。それは彼の中に残る反骨精神なのか、それとも捨て鉢になっていたのか?

そんなホルヘを支えるのは優しく穏やかなゲイのエンリケ。芸の相棒であるだけでなく、孤児のミゲルの母親的存在でもあり、疑似家族のようでもあります。死んだ息子を思い出させて辛いのか、当初はミゲルを冷たくあしらっていたホルヘですが、ニュースフィルムに映っていたミゲルの母親を探し出して会いに行くという気遣いをみせます。この時ミゲルが折った紙の鳥を持っていくのです。内戦のショックで現実を拒否した彼女へ、自分がミゲルを育てると告げたホルヘはこの後からミゲルに芸を教え始めるのです。

劇団員の中には、未成年ダンサーのメルセデス、とうの立った歌手のロシオ(カルメン・マチ)や、犬に芸をさせる老夫婦らがいました。巡業の旅で、犬を盗まれ劇団を抜ける老夫婦、引退して巡業先の村長と一緒になることを決めたロシオ・・それぞれの人生模様も描かれます。ロシオが痔主という設定で、なぜか洗面器を必要とするのですが、痔と洗面器の関連性はよくわからなかったな メルセデスが軍人の暴力に遭う場面はその前後の様子の描写に留めることで、弱者へもたらされる理不尽さを浮き立たせていました。

内偵として潜り込んだパストールは、次第にホルヘたちへの親しみを深めていきます。フランコ総統の前での公演に仕組まれた陰謀に気付くのも彼です。黒幕は意外な人物ではありますが、明らかにされてみれば、確かに怪しい振る舞いが多々・・
罠に気付いたホルヘはミゲルやエンリケ、メルセデスと劇団を逃げ出し、国外(ブエノスアイレス)脱出しようとするのですが、駅でホルヘを嫌っていた中尉に捕まってしまうのです。汽車が走りだし、ミゲルの必死の呼びかけに逃げようとしたホルヘを無情にも銃弾が貫きます。ミゲルの絶叫と手元からこぼれおちるペーパーバードが切ないです。

そして数十年後。そこには年老いたミゲルが受賞の言葉を述べる姿がありました。彼の感謝は亡き二人の「両親」ホルヘとエンリケへ向けられたものでした。
そっか・・・無事逃げ延びて素晴らしい芸人になったんだね

邦題からはハッピーエンドを想像してしまうのですが、ちょっと違いましたね。


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モリエール 恋こそ喜劇

2012年02月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年3月6日公開 フランス 120分

1644年、22歳の駆け出しの劇作家モリエール(ロマン・デュリス)は前年に旗揚げした劇団の借金が膨れ上がり、債権者から追われていた。多額の借金に苦しむ彼は、金持ちの商人ジュルダン(ファブリス・ルキーニ)に窮地を救われる。借金の肩代わりと引き替えに、ジュルダンの演劇指南役として雇われることになったモリエールは彼の屋敷で聖職者と偽り暮らし始めるが……。

フランスが誇る喜劇王として有名なモリエールの若き頃の数か月間の失踪の謎を大胆に脚色した映画です。モリエールの作品については殆ど何も知らず、ただ名前のみという私ですが、映画全編に漂うエスプリの効いた軽妙な笑いの雰囲気に魅せられました。
豊か(すぎる)胸毛、どっかでみたな~~と思ったら・・ロマン・デュリスがお茶目で飄々とした美男のモリエールを演じています。

ジュルダンは貴族の未亡人セリメーヌ(リュディヴィーヌ・サニエ)に熱を上げ、彼女の気を引くためにサロンで芝居をしようと、その指南役にモリエールを雇います。ジュルダンの妻(ラウラ・モランテ)は、胡散臭いモリエールを警戒していましたが、彼の書いた脚本を偶然読んで彼に惹かれていきます。ジュルダンの娘は貧乏な若者と恋に落ち、もう一人の娘は生意気盛り。そんな一家にモリエールが加わり要らぬ波風がたっぷり巻き起こるのです。

ジュルダンに未亡人(あまたの崇拝者たちから金品を巻き上げる小悪魔キャラ)を焚きつけたのは、貧乏貴族のドラント伯爵(エドゥアール・ベール)で、その裏でジュルダンのまぬけぶりを嗤いながら、持参金目当てに自分の息子を彼の娘と結婚させようと画策します。

貧乏貴族は喉から手が出るほど金が欲しいし、裕福な商人が次に求めるのは地位(爵位)というわけです

夫人と割りない仲になったモリエールですが、やがてジュルダンの知るところとなります。
セリメーヌの本心を知り(この時のモリエールの演出もかなり滑稽ながら、どこか知的でした)傷心のジュルダンは今まで振り返りもしなかった妻の不貞に打撃を受けながらも、自らを反省し、妻を取り戻すためにモリエールとある取り引きをするのです。単なる修羅場にならないのがいかにもフランス風?

ジュルダンの娘を政略結婚から救ったモリエールは、夫人に別れを告げます。
悲劇こそ劇の主役と考え喜劇を軽んじていたモリエールに夫人が与えた助言を守り、彼は国中を回って興業し、劇団の名を高めていきました。そして13年後。パリに戻り今度こそ「正統派」の劇を上映と思ったモリエールの元に一通の手紙が届きます。それは片時も頭を離れなかった愛しい人の病を知らせるものでした。夫人との悲しい別れは、彼の中に残っていた思いあがったプライドを消し去り、偉大な喜劇作家としての礎になったのでした・・・とさ。 

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聖女の救済

2012年02月18日 | 
東野圭吾 著 / 文藝春秋 刊

男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。湯川が推理した真相は―虚数解。理論的には考えられても、現実的にはありえない。 (「BOOK」データベースより)


ガリレオシリーズ第4弾でシリーズ2作目の作品。

真柴綾音と義孝夫妻は子供ができないことを理由に離婚することが決まっていた。その時綾音の胸中には義孝へのある宣告が下されていた。・・・冒頭で既に犯人はわかってしまいます。なので、興味の対象はそのトリックに移ります。だって、綾音は北海道の実家に帰っていて留守だったのですから。

綾音のパッチワーク教室の講師であり、愛弟子の若山宏美と夫が不倫関係にあることが示されると、宏美に嫌疑がかかるよう仕向けるのかと疑いますが、そうでもなさそう。
死因が珈琲に仕込まれた毒殺ということで、用いられた亜ヒ酸は和歌山カレー中毒事件にヒントを得たもののようです。

問題は毒物の混入経路で、綾音を疑う薫は、湯川に協力を申し出るのです。湯川が導き出した答えはまさに理論上はあり得ても、現実にはあり得ないものでした。しかし先入観を排した聞き込みから導き出したそれはまさに理解を超えた完全犯罪のトリックだったのです。

綾音と初めて会った時に覚えた草薙の心のときめきは、恋とばかりも言いきれない刑事としての感が影響していたというのが、なんだか切ないね。

それにしても、それほど周到に待つことが出来るものなのかしら?
義孝は確かにかなり身勝手ではあるけれど、嘘をついたり騙したわけではないのです。愛と憎しみは表裏一体というけれど・・・親友を裏切ったという負い目が夫への過度の愛憎に結びついた気がしてなりません。おとなしい女ほど恐いぞ~~

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アメイジング・グレイス

2012年02月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年3月5日公開 イギリス 118分

18世紀のイギリス。資産家に生まれたウィリアム・ウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)は、多くの慈善事業を行う政治家に成長するが、聖職者になるか、世を変える政治家になるかで心が揺れていた。そんな時、イギリスの主たる収入源である奴隷貿易の実態を知り心を痛めた彼は、彼の師で、『アメイジング・グレイス』の作詞をしたジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)にアドバイスを求め、背中を押される。英国最年少の首相ウィリアム・ピット(ベネディクト・カンバーバッチ)と共に、奴隷貿易廃止を訴え、トマス・クラークソン(ルーファス・シーウェル)、王族出身で元奴隷のオラウダ・エクィアノ(ユッスー・ンドゥール)、友人で下院議員のヘンリー・ソーントンらと活動を開始する。ウィルバーフォースたちは国中を回って演説し、1年足らずで世論に影響を与える。39万人もの世論の賛同を得、1791年、国会に奴隷貿易廃止案を提出するが、奴隷制度賛成派の妨害により、否決される。うちのめされ、病に倒れたウィルバーフォースをヘンリーは自宅に招き、バーバラ・スプーナー(ロモーラ・ガライ)と強制的に引きあわせる。バーバラは美しく聡明で、心が折れかけていたウィルバーフォースは彼女と恋に落ち、立ち直ることができた。ウィルバーフォースの苦難に満ちた活動は、名曲『アメイジング・グレイス』によって支えられ、奇跡の結末を迎える。


「奴隷貿易廃止法」成立200周年を記念して製作された映画です。
「アメイジング・グレイス」といえば、本田美奈子が歌っていたあの歌か~という程度しか知らなかったのですが・・・賛美歌だったのですね
作詞者のジョン・ニュートンは奴隷貿易船の船長をしていた時、冷酷に奴隷を扱い、航海中に2万人の奴隷が命を落としたといいます。ある時大嵐に遭い九死に一生を得たことでそれまでの自分の行いを悔い神の道を選び、神への感謝の気持ちを綴ったのがこの歌なんだとか。
そのジョン・ニュートンに師事していた政治家ウィリアム・ウィルバーフォースが、奴隷貿易廃止を掲げて戦う姿を描いたのが本作ということです。

映画ではウィルバーフォースの美声と、彼の結婚式のシーンでも出席者が歌うシーンが出てきます。

Amazing grace! how sweet the sound (すばらしき神の慈しみよ なんと美しき響きか)
That saved a wretch like me     (こんな悪人まで救って下さった)
I once was lost, but now am found(かつて道を外れていた私を 神が見つけて下さった)
Was blind, but now I see. (見えなかった目も今は開かれた)


初めは敵側だったチャールズ・フォックス卿(マイケル・ガンボン)が途中から仲間に加わるのですが、そのとぼけた狸じじいぶりがシリアスな場面に適度なユーモアを与えてくれます。

奴隷船の実態は言葉で語られ、拘束具が示されるだけなのですが、それだけでもかなり衝撃的でした。議員たちを船上パーティに誘い、奴隷船の傍につけてその独特の臭い(死臭や排泄物臭)で、奴隷たちがいかに酷い環境に曝されているかに気付かせるシーンもよかったです。

アメリカの南北戦争は比較的知られていますが、英国発の奴隷貿易廃止運動については習った記憶がないので、映画で知ることができたことに感謝

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ハンナ

2012年02月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年8月27日公開 アメリカ 111分

ハンナ(シアーシャ・ローナン)は、元CIA工作員の父エリック(エリック・バナ)とフィンランドの山奥で人知れず暮らし、並外れた格闘テクニックを叩き込まれた少女。愛らしい外見に反し、痛みを知らず、感情を持たないまま16歳に成長する。いつしか戦闘応力が父を越えるまでになったハンナに、ついに外の世界へ旅立つ日が訪れる。だが、ある任務によってヨーロッパへ旅立った彼女を、かつての父の同僚であるCIA捜査官マリッサ(ケイト・ブランシェット)が執拗に追う。行く手を阻むマリッサの手下との壮絶な戦いの中で、ハンナは自身の卓越した身体能力の秘密を知ることになる……。(goo映画より)


シアーシャちゃんの透明感のある可愛さにため息。そして一見した無邪気さと対極にある冷徹な殺人者の顔に身震い。でも見所はそれだけなんだよね~~惜しい!!

ハンナの出生の秘密がCIAによる秘密の研究にあり、それを握りつぶすためにマリッサが関係者を抹殺。その時ハンナの母親も殺され、逃げ延びたエリックがハンナを殺人マシーンとして育てた・・・らしい。でも結局マリッサを殺すためだけにハンナを利用したとしか思えない筋書きは穴だらけな気がするんですが。

フィンランドの森の奥深くでの狩猟シーンは白銀の世界。少女の生きる世界の厳しさを暗示しているかのようです。父から教え込まれたのは戦闘の技術(要は殺しのテクニックよね)と複数の言語。外の世界との接触も無く育った少女の願いはもちろん父に認められて外へ出ていくことです。同時にそれは組織に追われることも意味しているんですが。

無事任務を果たしたと信じているハンナが追跡の手を逃れて潜り込んだ一家とモロッコ、スペイン、ドイツと旅をする中で、同じくらいの年齢の少女とその弟と仲良くなります。ハンナにとって初めての友人です。疑似恋愛もしますが、キスしようとする男の子を瞬刹で抑え込むシーンは、微笑ましさと哀しさが混じった気持にさせられました。

身代りを立てて難を逃れたマリッサが執念深く父子を追い詰めていきます。CIAから一目置かれる優秀な工作員のエリックのはずがマリッサにあっさりやられちゃうのって・・どうよ

ハンナが「外」の人間と出会い成長していく物語とも言えるでしょうけれど、物語にハッピーな終わりがくるようには思えず・・なんだかなぁ

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あぜ道のダンディ

2012年02月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年6月18日公開 110分

北関東の地方都市。50歳になった配送業の宮田淳一(光石研)は、大学浪人中の俊也(森岡龍)と高校3年生の桃子(吉永淳)と3人暮らし。妻は39歳で他界、子どもたちとの会話も殆どなくあってもかみ合わない。職場でも無愛想で同僚(藤原竜也)に話しかけられても、めったに返事をしない宮田の唯一の楽しみは、仕事を終えた後、親友の真田(田口トモロヲ)と居酒屋で酒を酌み交わすこと。最近胃に不調を覚え、亡き妻と同じ胃ガンだと思い悩む宮田は、子どもたちには弱みを見せられず、真田に悩みを打ち明ける。そんな中、俊也と桃子が東京の私立大学に合格。4月には家を出て、東京で新生活を始めることになった。子供たちと思い出を残したいと娘を女子高の前で待ち伏せたり、息子とゲーム対戦するために携帯ゲーム機を購入するのだが、一緒にプリクラを撮ろうと言い出せずに終わったり、買ったゲーム機が息子のと対応してなかったり・・。見かねた真田は俊也を遊園地に誘い、二人きりで話をする。子供たちも本当は父親の気持ちを分かっていたが、素直にコミュニケーションがとれずにいたのだった。そして子供たちが東京へ旅立つ日が来た・・・。


とにかく不器用で無骨な父親です。同僚に話しかけられたら返事くらいしても良いのにと思っちゃうし、親友の真田に対しても子供に対してもいきなり怒り出すあたり、ちっちぇえなとも思ってしまいます。通勤時、宮田は自分を競馬馬に見立てて自らに鞭を当てます(実際はお尻のあたりを叩くだけですが)。観るのは好きだけどお金がないので馬券は買いません。
癌だと思い込み、自分の遺影用の写真を拡大プリントして子供たちの部屋に忍ばせたりします。誤解だとわかるとほっとして真田の前で泣き出します。キカイ音痴なくせに店員に聞かずに買ったゲーム機は息子のものに対応していなくて、結局真田と2人で対戦しています。

・・・宮田という人物は、多分とっても等身大な父親像なんだよね、それはもう悲しいくらいに。だからこそ観ていて歯痒くなっちゃうのかも。

子供たちも最初は父親に日常の挨拶もしないイマドキの生意気なやつらに見えます。だけど・・・ちゃんとわかってるんだよね~~。父親の性格もその経済状態も。桃子は援交誘われても乗らないし、逆に友だちと一緒の大学だからというだけで選んだ東京での大学生活に疑問を感じ父親にすまないと思うような真面目な女の子でした。

父親の介護をして看取り、子供ができないことで妻とうまくいかなくなり別れた真田にとって、宮田の家族はとても近しい存在です。だから宮田を見かねて俊也に「君のお父さんはダンディだよ。見た目はかっこよくないけど、心は渋いんだ。君も男ならわかってやってほしい」ともっともらしく説教しますが、言われるまでもないのです。俊也が住まいに選んだのは桃子のセキュリティ万全なマンションとは大違いの二昔くらい前の貧乏学生が住んでいたような古いアパートだもんなぁ
(でもさ・・そんなに離れてるんかい?兄妹の住まい。都内なら一緒に住めばいいのに私学の学費と住居費、お父さんの稼ぎじゃ無理っぽいんだけどな)

子供たちの新居に荷物を運び入れて戻ってきた宮田がいつもの店のいつもの席で、真田を前に泣くんです中学時代共に苛められっ子だった2人は、共に長い年月をかけて友情を深く結んできたんだってことがよくわかるシーンです。子供たちとの別れに際し、宮田は真田の、お気に入りで彼自身へのご褒美で買ったという帽子を借ります。自分のダンディズムを貫くためにどうしても必要だったのです。心情を考えると何だかこちらも切なくなります。

宮田のダンディズム
・男は弱音を吐かない
・男は見栄をはる
・男は陰ながら思い遣る

大きな事件が起こるわけでもなく、子供たちが家を出て行くまでの数ヶ月を淡々と描いている中で、父として子供としての相手を思いやる気持ちがこれまた淡々と映し出される作品です。

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ペントハウス

2012年02月08日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年2月3日公開 アメリカ

マンハッタンにそびえる65階建ての超高級マンション“ザ・タワー”の管理マネージャー・ジョシュ・コヴァックス(ベン・スティラー)は、居住者のあらゆる要求を満たす最上級のサービスを取り仕切っていた。ある日黒い車から現れた謎の一味を強盗と勘違いしたジョシュは、ペントハウスの住人でウォール街の大富豪アーサー・ショウ(アラン・アルダ)が誘拐されたと誤解し助けに向かうがFBI捜査官のクレア(ティア・レオーニ)のラリアートをくらう。実は逃亡を図ったショウが、証券詐欺罪でFBIに逮捕されたのだった。ショウを尊敬していたジョシュは、裏切られた思いを隠せない。しかもショウは、ザ・タワーの使用人の年金運用を請け負い、そのお金を私的流用していた。年金だけでなく全財産をショウに巻き上げられた老ドアマンのレスターは、ショックのあまり自殺を図り、病院へ担ぎ込まれる。ペントハウスでの自宅監禁を条件に、1000万ドルで保釈されたショウのもとに乗り込んだジョシュは、謝罪もせず開き直るショウに怒りを爆発させ、リビングに飾られたフェラーリの窓ガラスをゴルフクラブで叩き壊して総支配人からクビを言い渡されてしまう。クレアから、ショウが逃亡資金として用意していたはずの隠し金20億円が見つからないという情報を得たジョシュは、ペントハウスの壁に埋め込まれた金庫に金があると睨み、義弟でコンシェルジュのチャーリー(ケイシー・アフレック)、新米エレベーター・ボーイのエンリケ(マイケル・ペーニャ)、ザ・タワーを家賃滞納で強制退去させられたウォール街の負け犬フィッツヒュー(マシュー・ブロデリック)、幼なじみの泥棒スライド(エディ・マーフィ)、錠前職人の父親を持つメイドのオデッサ(ガボレイ・シディべ)とともに、ショウの財産強奪を計画する。300万人のパレード見物客で賑わう感謝祭の日、ジョシュたちは、FBIの24時間監視態勢に置かれたペントハウスを目指すが・・。

コメディと侮るなかれ!高層タワーでのスリルあるアクションシーンは『ミッション・イン・ポッシブル』よりハラハラしちゃいました。だって、イーサンは何をやらせてもそつなくこなすのがみえみえだけど、ど素人のジョシュたちが空中で悪戦苦闘する姿は危なっかしくてねぇ

冒頭で、ジョシュとショウがネットでチェスの対戦をする様子が描かれます。このチェスの手が物語の鍵になってます。クィーンを犠牲にしてチェックメイトするという手法はまさにジョシュたちの強奪作戦に生きてきます

もちろんコメディですから
・従業員についても詳細に調べているFBIなのにショウの細工(隠し金庫他)に気付かない
・あの「車」を最後にどうやってあの場所に隠したのか
・それをFBIに気付かれずにばらせたのか
などなど、数々の疑問は棚上げしておきましょう

ジョシュが集めた仲間は、個々にはなんともお馬鹿で頼りない連中ですが、やるときはやる!!奴らでした 負け犬フィッツヒュー役はマシューが演じています。カメオ出演じゃなくて主要キャラで出演してる姿、久々に観ました こそ泥の幼馴染スライド役はエディ相変わらずの早口マシンガントークでのジョシュとの掛け合いはそれだけで笑えます。スライドがジョシュたちに万引きを命じるシーンで彼らの財布を預かるのですが、それって・・と思ってたらやっぱり!!なオチが待ってました。当然よね


映画の最大の見所はもちろんペントハウスからフェラーリを盗み出す場面。金庫は空っぽでしたが、フェラーリが純金で出来ていることにドタバタ騒動の中で気付くのです。そして本当の「お宝」はそのダッシュボードにあった○○でした。
仲間と助け合っての強奪作戦はハラハラドキドキ&わくわく、くすくすでついつい見入ってしまいます。FBIってこんなにおまぬけだったっけ?『J・エドガー』観たばかりなのでついつい比べてしまいます

チェスでは負けを帰しましたが、作戦は大成功!仲間たちは○○と引き換えの司法取引により無罪放免されますが、さすがにジョシュは無罪とはいきません。でも大丈夫!仲間が作戦を完了させます。このオチも愉快でした。

クレアがそそのかしてこの計画をさせた?と深読みもできるかもそれならジョシュが出所したら2人の関係も発展しそうかななんて想像しちゃいました。

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イースターラビットのキャンディ工場

2012年02月07日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年8月19日公開 アメリカ 95分

イースター島にあるキャンディの国では、ウサギとヒヨコが世界中の子供たちのために色とりどりのキャンディを作っていた。王子であるウサギのイービー(声:ラッセル・ブランド/日本語版:山寺宏一)は、もうすぐ父親の跡を継ぐことになっていたが、彼にはミュージシャンになりたいという、どうしても諦められない夢があった。そこでイービーはこっそりハリウッドへ向かい、偶然出会った青年フレッド(声:ジェームズ・マースデン/千葉雄大)の助けを得て、オーディションを受ける。一方、キャンディ国からは、ウサギの最強部隊“ピンク・ベレー”がイービー捜索に出動する。その隙に、ヒヨコたちのボスであるカルロス(声:ハンク・アザリア/大塚芳忠)が、キャンディ工場を乗っ取ろうとクーデターを企て王国は大混乱に……。

イースターの伝承(復活祭の夜に、イースターラビットがイースターエッグを運んでくる)を現代風にアレンジした、いかにも子供向けの作品です。けれども映像は子供だけ楽しむのはもったいない上質な出来です。キャンディ工場のカラフルで夢いっぱいの映像だけでも心が浮き立つ楽しさがあります。

就職も長続きせず家でぶらぶらしていたプーなフレッドは、両親から家を追い出されてしまいます。日本だといつまでも家に置いておく場合が多そうだけど、さすが、自立の国アメリカ!と妙なところに感心妹が家と職(面接)を世話してくれるのですが、イービーと出会ったことで彼の人生は変わり始めるのです。自分のやりたいことを見つけられずにいたフレッドが、本当にやりたかったことは・・・へ?イースターラビットになりたいだと???この展開は日本でまだ認知度の低いイベントゆえ、彼の父親のように「凄い仕事だ!」と手放しで喜んであげられないけれど・・ま、ファンタジーだからいっか そしてイービーは自分の夢と父親の跡を継ぐことの両方を叶えようと決意します。わがまま王子の成長物語でもあるし、イービーとフレッドの友情物語にもなっています。

ちなみにイービーが受けたオーデションでは、デヴィッド・ハッセルホフが本人役で出演しています。(『ナイトライダー』は観てないのでウィル・フェレル?とか思っちゃったぞ違ったのね


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GANTZ PERFECT ANSWER

2012年02月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年4月23日公開 

前作から5ヶ月後、トップモデルの鮎川映莉子(伊藤歩)の元に、小さな黒い球「ガンツボール」が送られてくる。ボールは彼女に「鍵」となる人物の抹殺を命じ、彼女は操られるように無意識に実行していく。彼女に殺された人物はガンツの元に転送され、玄野計(二宮和也)たちガンツメンバーに加わっていく。ガンツボールの最後のミッションは小島多恵(吉高由里子)だった。しかし実行する前に加藤勝(松山ケンイチ)の姿をした男に映莉子は殺されガンツボールを奪われてしまう。映莉子もまたガンツの元に転送されるが、そこで彼女が殺した人たちを含めて、以前100点を獲得しガンツから解放されていたことが判明する。映莉子を殺した男の正体を確かめるために、メンバーの鈴木(田口トモロヲ)は自分の得点で彼を復活させ、玄野は西丈一郎(本郷奏多)を復活させるのだった。その後ガンツは改めて小島多恵の抹殺を命じ、命令を遂行しようとする他のメンバーと多恵を守ろうとする玄野や加藤たち、謎の黒服星人の間に苛烈な戦闘が繰り広げられる中で、不条理な世界に玄野が下した究極の選択とは……。


謎の球体“ガンツ”に巻き込まれる人々と、独創的な世界観を描いた「GANTZ」2部作の後編です。少年漫画が原作ですから、そもそもが荒唐無稽な世界で、敵との戦闘シーンは前作よりさらにパワーアップ、そして残酷でグロテスクでさえあります。こういうのでフラストレーションを発散させられる向きには楽しい作品かもしれません(^^;
前作をTV放送で観たので結末が気になってレンタルしたけど・・・なんだかなぁ

そもそも、何故彼らがガンツに召還されねばならなかったのかが最後まで解き明かされていないのよね。そして何故「星人狩り」をしているのかも。
わかったのは、ガンツが多恵を狙ったのは、最強のパワーを秘めている玄野をいつまでも手元に置くためだったことと、狩られている星人たちが復讐のためにガンツの部屋を突き止め破壊しようとしていたことです。ちなみに加藤に化けていたのは前作で彼を倒した千手観音らしい(^^;

電車内や部屋で繰り広げられる戦いは、とにかく銃をぶっ放しての大量殺戮以外の何者でもなく、残酷で目を覆いたくなるシーンが続きます。これが楽しいってどういう感覚や?まだ、星人・カトウと玄野&加藤が対決するシーンの方がましだな。ケンイチ君二役ご苦労様

玄野が復活させた西くんは相変わらず嫌なヤツ。演じてる奏多君は好きなんだけど、役がなぁぁぁ。そしてあっさりやられてしまう結局雑魚キャラ
死んだはずの人間と黒い玉の部屋の真相を追う謎の男(山田孝之)も必要かな?いてもいなくてもストーリーには全く影響なかったし

やられてもやられても不死身な玄野でしたが、遂に力尽きる時がきます。ミッションクリアしたその時、彼が選んだのは・・・ははぁ~~そうきますか
ガンツが望んでいたのはガンツ好みの玉男だったというわけ?
彼と引き換えに取り戻した他者の通常の生活の穏やかさが印象的でした。

で・・・星人全滅したんかい?




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