杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

タイタンの戦い

2010年04月28日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年4月23日公開 アメリカ 

古代ギリシャ、神話の時代・アルゴス王国。人間たちは慢心し神への敬意を無くしていた。王は兵士に命じゼウス(リーアム・ニーソン)の石像を打ち壊すが、冥界の王ハデス(レイフ・ファインズ )により兵を殺され、王女アンドロメダ(アレクサ・ダヴァロス)を生贄としてクラーケンに捧げることを要求される。ゼウスがダナエーに産ませたデミゴッドのペルセウス(サム・ワーシントン)は自分の出自を知らずに育つが、養親をハデスに殺されたことで復讐を誓い、王女を助けるためにクラーケンを倒す術を知るため魔の山に向かうが・・。


1981年『タイタンの戦い』のリメイク版です。
ギリシャ神話の全知全能の神ゼウス・海の支配神ポセイドン・冥界の王ハデスの三兄弟ですが、覇権を巡る熾烈な争いを繰り広げる中で、ハデスがゼウスを倒し自らが世界の覇者となるために策謀を巡らすのが今回の筋書きというわけです。
パーシー・ジャクソンではポセイドンが絡んでいましたが、今回は完全に傍観者だね(^^;

そもそも、この兄弟神は色欲も人(神)一倍なわけで、作中で解説されるメデューサやダナエー、ペルセウスの守護神イオ(ジェマ・アータートン)の経歴には同情と憤慨を覚えます。

オリンポスの神々は人間からの神への愛を得て不老不死を保つので、人の慢心で敬意(愛)を得られなくなると自らも滅んでしまう運命なのですね。それを悪用しようとするハデスの策略にまんまと引っかかるゼウスってば、流石に人を作っただけあってよく人に似ている・・・あ、人が彼に似ているんですが息子ペルセウスに対しても密かに聖剣を与えたり助言したりと父親らしい気遣いをするのは基本的に父性愛の神だからなのね。

自分がデミゴッドと知らずにいたペルセウスがハデスに養親一家を殺され神に憎しみを抱くのも、神の血を引く能力を使うことを拒み続けるのも、当然の心理的展開。また、寄せ集めの仲間たちと旅を続ける中で、徐々に気持ちが変わり成長していくのはこの手の物語のお約束で、スコーピオン、メデューサ、クラーケンといったクリーチャーたちとの戦いシーンも迫力がありました。ただ、異教のジンの存在は宇宙人めいた外見といいちょっと違和感あったかな逆に魔の山の魔女たちのキャラは本で読んで想像したとおりで嬉しかったです。最後に王女と良い仲になるのかと思いきや、守護神のイオと惹かれあうのは年齢差が気になるところですが

でも一番気になったのはペルセウスの髪型だったりして
あの時代のギリシャの人々は押しなべて長髪。なのに彼一人は海兵隊カットの短髪。
まるで「アバター」撮影現場からそのまま来ました!的坊主頭なんですもの。
監督の意図がわからないぞ
登場人物の中でどんな場面でも目立つし見分けられることは確かなんだけど

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カールじいさんの空飛ぶ家

2010年04月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年12月5日公開 アメリカ 

冒険好きな少年と少女だったカールとエリーは夢を語りながら成長し、19歳で結婚。幼い日の思い出がつまった廃屋を買い取り居心地のいい我が家に改築する。喜びも悲しみも分かち合い、つつましく生きてきた2人にも、やがて悲しい別れが訪れる。ひとり残され偏屈な老人となったカールは78歳で一世一代の冒険に旅立つ。無数の風船と共に大切な家ごと飛び立ったカールが目指すのは、かつてエリーと夢見た冒険の地だった。(goo映画より)

昨年冬に3Dで話題を呼んだアニメーションが早くもDVD化されました。
冒頭から、カールとエリーの半生がセリフ無しで綴られていくのですが、それが何とも言えず美しく切ないほどの愛を感じます。
エリーを亡くし、土地開発で変わっていく環境にどんどん偏屈になっていったカールが、追い詰められて昔の夢を叶えるために思い切った行動に出るのが冒険の発端。偶然居合わせてしまったボーイスカウトの少年ラッセルとの珍道中には笑いと共感と感動がたっぷり詰まっています。老人や子供特有の特徴(怒りっぽさや素直さなど)をよく捉えて作り上げられた三頭身のキャラには誰しも親しみを感じるのではないかしら。

彼らが出会う伝説の怪鳥ケヴィン(実は♀)や犬語翻訳機をつけたダグとのユーモア溢れる交流を楽しみ、ケヴィンを捕まえようと狙うマンツの冷酷さに憤り、いつのまにか物語の中にはまりこむ自分がいました。

カールとエリーの憧れの冒険家であるマンツは名誉回復のために怪鳥を探し続けるうちにその性格が破綻してしまったようです。彼はある意味ではカールの映し鏡なのですね。やはり人は人と触れ合う中でこそ人間的な感情を維持できるということかしらんケヴィンやラッセルを守るためにカールが下した選択も、エンディングも心温まるものでした。

また、素晴らしいのはカールたちが辿り着いたごとパラダイスフォールの風景です。実際にスタッフが南米パラグアイの秘境ロライマムのパライテプイを訪れて写生した数々のスケッチが映画に生きているんですね

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ドラゴンアイ

2010年04月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年製作 カナダ 115分

惑星ミラビリスに住む人間(ブルード族含む)、魔術師のエルバン族、ゴブリン族の間では、鉱石“血の鉄”を巡る争いが絶えなかった。凶悪なブルード族の王ドラゴン・アイは昏睡状態にある息子を救い後継者として世界の覇権を握るべく、鉱石を産み出す“クルーシブル”の行方を追っていた。一方連合軍側も王の野望を阻止しようと予言で示された4人の騎士を集め、クルーシブルの在り処を記した地図を探すが・・。


元は何話かの短編だったのを繋いで一本にまとめた感じ?
いきなり冒頭で物語の外郭説明をナレーションで済ませてしまうあたり、かなり乱暴。「ロード・オブ・ザ・リング」と似た設定(人間・エルバン・ゴブリン)だけど、展開も筋書きも雑で唐突な印象を最後まで拭えませんでした。

4人のナイトのうち、白装束のエイドリックは最後までどんなキャラなのかわからずじまい。いてもいなくてもストーリー進行に問題無しって一体・・
また4人の中で唯一の女性パフィディアは魔術師のテスリンク(連合側の長)の孫娘で、騎士の一人ジョン・セラゴスと良いムードになるけれど、最後は振られちゃってますし(^^;無理やりロマンス入れなくてもいいじゃん。ゴブリンのバーラクの犠牲で助かるってのも何か人間重視だよね

ドラゴン・アイの武器はやけに科学的・近未来的なアイテムばかり。偵察ロボットや火薬ロケットって・・こんなのがあれば魔法は要らないんじゃ?そして彼の昏睡状態の息子は清純そうな美少年。このギャップはどこからくるの?
星の住民たちがまとっている衣装も中世と近未来が混ざったような感じで、全体的にちぐはぐな収まりの悪さがありました。

透明になるドラゴンの影像は綺麗だったけどね

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ブロークン・イングリッシュ

2010年04月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年12月13日公開 アメリカ=日本=フランス 98分

30代独身、NYのホテルで働くノラ(パーカー・ポージー)。親友オードリー(ドレア・ド・マッテオ)は自分が紹介したマーク(ティム・ギニー)と結婚、母親(ジーナ・ローランズ)からは事あるごとに心配され、男性と付き合おうとすれば失敗ばかり。もう愛には巡り合えないの?そんな時、同僚が主催したホームパーティーで、フランス人のジュリアン(メルヴィル・プポー)と出会って・・・。

アラサーという言葉が流行ったのは数年前。状況は日本もアメリカも同じようで
愛は欲しいけれど失敗して傷つくことを恐れているヒロインが、新しい恋に臆病になるあまり逆におかしな行動を取ってしまうという心理状態は何となくわかるような。でも正直「なんて面倒くさい女だ!」と思ってしまった時点でこの映画は好みから外れました

ノラやオードリーがごく普通に精神安定剤らしきものを服用する姿も日本ではあまり馴染みのない状況なわけで、ヒステリックなヒロインの振る舞いにも違和感があって、ロマンスものに必要な共感を得にくかったです。親友オードリーの方も、何故夫を非難するのかよくわからないままでした

そもそも顎のしゃくれた顔って好みじゃないんだよぉぉぉ
ジュリアン役はジェリー似のイケメンだったけどね
舞台設定はNYやパリのお洒落な街なので、そちらを楽しむ分には良いかも。

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ゴーストオブガールフレンズパスト

2010年04月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
日本劇場未公開 2008年製作 アメリカ 100分

有名な写真家で独身主義のプレイボーイ、コナー(マシュー・マコノヒー)は、平気で複数の女性と付き合い、電話一本で手を切るような男。愛を信じないコナーだが、たった一人の肉親である弟ポールの結婚式に出席するため渋々故郷を訪れる。しかしその言動から周囲を不快にさせ、式自体も危うくなってしまう。そんなコナーの前に死んだ筈の叔父(マイケル・ダグラス)が現れ、真実の愛を教えるためにコナーの過去・現在・未来に関わる三人の女性の訪問を告げる・・。

恋愛版「クリスマス・キャロル」のコメディバージョンですね。

過去のトラウマからプレイボーイとなったコナーは、既にそのきっかけすら忘れ果ててましたが、最初の訪問者に連れられ過去を覗いて原因に思い至る・・・けど全く反省の色無し。崇拝する元祖プレイボーイの叔父が思春期のコナーに叩き込んだ女のあしらい方に改めて頷いてる始末ですから。

現在の訪問者の時には調子に乗ってポールと婚約者の仲まで亀裂を入れてしまうし。
けれど、未来の訪問者から葬式に独身の弟しか参列しない様子を見せられて心を入れ替えちゃうんですね。兄弟愛は確かにあるんだけど、あくまでも自分本位なヤツ。 
改めて弟たちの仲を取り持ち、無事結婚式も行われ、初恋の女性(ジェニファー・ガーナー)ともうまく行きそうというお手軽ハッピーエンドもラブコメだから、ま、いっか

ところで、この叔父さんはコナーのために現れたのか?自分のためなのか?彼自身が反省の必要あるんじゃないの?と気になりました

何故か日本人の弓道家(でも演じてるのは日本人じゃなさそう)が登場し下手な日本語のセリフまであるのは笑えます。これって日本市場を意識したの?

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プレシャス 試写会

2010年04月15日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
一ツ橋ホール 19:00~

2010年4月24日公開予定 アメリカ 109分

1987年、ハーレム。16歳の黒人少女クレアリース“プレシャス”ジョーンズ(ガボレイ・シディベ)は、二人目の子供の妊娠が学校に知れ退学になる。二人共、実父に性的虐待を受けて出来た子供だった。母親(モニーク )からも虐待を受けていた。しかし、代替学校に通い始めたプレシャスは、レイン先生(ポーラ・パットン)と出会い、読み書きや学ぶことの楽しさを知るようになる。そして、劣悪な環境から抜け出そうと家を出るが・・。

ハル・ベリーの『チョコレート』のプロデューサーだったリー・ダニエルズの初監督作品。
両親からの虐待に苦しむ黒人少女が、一人の教師に出会い、学ぶ楽しさを知ることで自分の未来について考えるようになる物語でした。

実父からのレイプによる妊娠や母親からの虐待という、とても信じられないような辛い現実の中でも、自我を持ち、周囲の助けを借りながら必死に生き抜こうとするヒロインの姿はその名前の通り気高く感じられました。

理想とは程遠い毎日を送るプレシャスの唯一の慰めは現実逃避の夢を見ること。その明るくてゴージャスな空想世界と辛い現実の対比が何とも切ないです。ヒロインの見かけはお世辞にも可愛いとは言えず(はっきり言えば醜い)母親に頭が悪いと言われ続けて育ったのですから勉強に無気力になっていても仕方ない。(^^;

でも、代替学校でのレイン先生との出会いがそんな彼女を変えて行きます。「勉強したって何にもならない、お前はバカなんだから」と言われ続けて育ち、読み書きの出来なかった彼女が学ぶ楽しさに目覚め、同じように問題を抱えている仲間=友人と出会うことで愛し愛されることをも学んでいく様子は、萎れかかった植物が生気を得て輝くかのようでした。
(看護士役でレニー・クラヴィッツが出演してます

しかし明るい兆しが見え始めたのも束の間、今度は父親がエイズで亡くなりプレシャスにも陽性反応が出ます。それでも彼女は自分の手で子供たちを育てようとします。カウンセラー(マライア・キャリー)を交えた話し合いの席で母親の本当の気持ちを聞いた彼女は毅然として母に別れを告げるのでした。

この母親の独白がまた凄まじいの。無学で無知な女のたった一つの拠り所が夫なのは理解できるけれど、だからといって娘を犠牲にして許されることは絶対にないし、怒りの矛先を娘に向けるなんて言語道断です。ハーレムやブロンクスという劣悪な環境に蔓延る無知蒙昧という負の財産を抱えるアメリカのこれもまた一つの現実なんだねぇ

あまりにも違いすぎる環境に我が身の幸運を振り返り感謝せずにはいられない気持ちになりました。

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アリス・イン・ワンダーランド   試写会(2D)と3D鑑賞

2010年04月14日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
東商ホール 18:40~20:30

2010年4月17日公開予定 アメリカ 109分

6歳の時に体験したワンダーランドの記憶をすっかり失くした19歳のアリス(ミア・ワシコースカ)。ある日、好きでもない相手からの突然のプロポーズに困惑しその場を逃げ出した彼女は、チョッキを着た白うさぎを目にして追いかけるうちに穴に落ちてしまう。辿り着いたのは、あのワンダーランド。白うさぎやヤマネ、ドードー鳥に太った双子たちといったこの世界の奇妙な住民たちはみな彼女の帰りを待っていた。アンダーランドは今や独裁者・赤の女王(ヘレナ・ボナム・カーター)に支配された暗黒の世界で、アリスこそが予言の書に記された救世主だったのだ。そして、そんなアリスを誰よりも待ちわびていたのが、赤の女王への復讐を誓うマッドハッター(ジョニー・デップ)だった…。

ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」の主人公アリスの新たな冒険をティム・バートン監督と7度目のタッグを組むジョニー演じるマッドハッターを軸として再構築されたファンタジーです。

幼い頃の記憶を失いあくまで夢の中の出来事と思っていたアリスが、この世界で起こっている出来事を現実として受け止め立ち向かう姿がなかなかに凛々しかったです。
決して子供向けの御伽噺で終わらない、大人にも十分楽しめる作品、というかむしろ大人向けなんだろうなぁ 赤の女王の猜疑心や孤独感、ハートのジャックの狡猾さや裏切りなど、子供に理解できるのかしらん?

バートン監督独特の色彩感、赤の女王やマッドハッターの奇抜な外見も楽しめます。
白の女王の手の仕草はディズニーのプリンセスたちのアニメの動きにそっくりでちょっと笑えたな絶対意識してるでしょ

チェシャ猫が思っていた以上に可愛いの双子は頭の中で「タッチ」に置き換えてしまう自分がなんだか悔しいぞ

もちろん、ジョニーファンとしてはマッドハッターは文句無しの出来栄えでございました

この作品、前宣伝の異常なほどの早さと関連グッズの多さ、三段階で売り出された前売りチケットなど、話題に事欠かないです。自制しないとグッズ貧乏になっちゃう


2010年4月19日 3D鑑賞
前売り券に300円をプラスして3Dで観ました。
というのもこの劇場では2Dは吹替えしか上映がなかったのです
裸眼者用の3Dメガネ(メガネonメガネ)を着用したので、ずり落ちるのを押さえながらの鑑賞でちょっと疲れました。
ワーナーは有料(300円)でメガネ着用者用の3Dメガネを用意しているので、今度はそっちにしようかなぁ。てか、なんでそれだけは有料なんだよ

で、2Dと3Dの違いはやっぱり奥行き感と飛び出し感ですね。
ウサギを追いかけて穴から落ちるシーンのリアルさとか、闘いでの迫力は確かに勝っています。

でも正直に言うと、絶対3Dじゃなきゃ!!というほどでもない・・かな

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第9地区

2010年04月14日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年4月10日公開 アメリカ 111分

今から28年前、南アフリカ・ヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船が現れた。故障した船内にはグロテスクで不衛生で怠惰なエイリアンたちがいた。難民化した彼らを政府は“第9地区”に囲い込む。そして時が流れスラム化した第9地区をエイリアン管理を受託した民間企業MNU郊外の第10地区に強制移動させようとする。現場責任者に抜擢されたヴィカス(シャールト・コプリー)はエイリアンたちに立ち退きの通達をして回ることになるのだが…。

本年度アカデミー賞で作品賞をはじめとする4部門にノミネートされた話題作ということもあり、グロテスクなエイリアンものではあるけれど興味をそそられました。
もちろん、ドロドロでグチャグチャで昆虫とエビが合体したようなエイリアンの外見はかなりグロイのですが、生理的嫌悪感はむしろ人間の傲慢さの方に強くありました。

舞台が南アというのもアパルトヘイトを連想させますし、エイリアンを使った生体実験や、謎の液体を浴びて体が変化したヴィカスへの人間性を無視した扱いなどは、国家や企業の傲慢さを鋭く風刺しているように思えます。

そもそも、ヴィカス自身がエイリアンに向ける蔑視の態度は、彼がごく一般の感覚を持った人として描かれているだけに人間が根底に持つ差別意識を非常にリアルに映し出している気がしました。

ヴィカスの身に起きた事件を関係者の証言で振り返るドキュメンタリー風な作りさえも、結局全てが他人事であり、観客は傍観者に過ぎないのだと示唆しているの?(^^;だとしたらかなり辛口なテイストですね~。こういうの好きです
もちろん山場ではSF大作並みの派手なアクションがあり、娯楽性も十分でした。

ヴィカスが知り合うエイリアンの科学者クリストファー・ジョンソンの方が知性を感じさせ
人よりも人らしい感情を持っていたのが印象的でした。最後はヴィカスとの間に友情のようなものも生まれます。これ、続編も作れそうな気がする

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めがね

2010年04月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2007年9月22日公開 106分

早春の南の島に大きなトランクを提げてやってきたタエコ(小林聡美)さんは、予約していた民宿「ハマダ」に、宿の主人ユージ(光石研)が描いた恐ろしく簡単な地図を頼りに辿り着きました。観光する所もない辺鄙な田舎町にやってきたタエコさんもですが、「ハマダ」には不思議な人々を吸い寄せる働きがあるようです。毎朝、浜辺で行われる「メルシー体操」、近所でぶらついている高校教師のハルナ(市川実日子)さん、笑顔でカキ氷を振舞うサクラ(もたいまさこ)さん。彼らのマイペースさに一度は逃げ出したタエコさんですが・・・。

「かもめ食堂」のまったりさ加減が妙に気に入ったので、同じ監督のこれも期待してました。そして期待通りのゆるさに和みました。

題名は監督や主だった出演者が皆めがねをかけていたからだとか。どうせならと出演者全員がめがね着用となりましたとさ

都会の喧騒から逃れるように海以外に何もない田舎町へとやってきたタエコさん。何故そんな気持ちになったのかは何も示されていません。サクラさんや宿の主人のお節介が我慢できずに一度は他に宿を求めるのですが、そちらは更に「変」な施設(自給自足な宗教施設っぽい所)で、仕方なくまた舞い戻ってきます。迎えに来てくれたサクラさんの自転車の荷台にちょこんと座るタエコさんがです。

で、風変わりな面々と渋々交流するうちに、あら不思議。何だか心地よい空気感。
浜辺での「メルシー体操」も気付けば参加しているの。

タエコさんを追いかけてきたらしい青年(加瀬亮)も加わり、ゆったりした日々が過ぎていきます。ある日春の終わりを告げる風が。それは旅の終わりをも告げていました。
だけどね。「ハマダ」に宿の主人の描いた地図を見て迷わず着けた彼らは、ここで過ごす「才能」を持った人たちなんです。だから一年後・・・・タエコさんが編んだ真っ赤なマフラーを首に巻いたサクラさんを皆が出迎える浜辺の光景が

タエコさんの持ってきたトランクに象徴される物質的な豊かさは、島での素朴な心の豊かさを前にしたら、ぽんと置き去りにされる程度のものなんだね

サクラさんの氷あずき食べた~~い
メルシー体操浜辺で一緒に参加したい
ユージさんの漬けた梅干も食べたいなぁ。素朴だけど美味しそうなご飯も

スローライフ、したいなぁ

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サンシャイン・クリーニング

2010年04月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年7月11日公開 アメリカ 92分

ローズ(エイミー・アダムス)はハウスキーパーの仕事をしながら問題児の息子オスカー(ジェイソン・スペヴァック)を育てるシングルマザーで、学生時代の恋人マック(スティーブ・ザーン)と腐れ縁のまま不倫中。彼女の妹ノラ(エミリー・ブラント)は、自立できずに父親と同居中でバイトも長続きしない。父親(アラン・アーキン)の方も怪しげな商売に手を出している。そんな息子と家族のために割のいい仕事を求めて事件現場のハウス・クリーニングを始めることにしたローズは、嫌がるノラにも手伝わせて慣れない現場に悪戦苦闘することに・・・。

いわゆる負け組みの姉妹が、人生の一発逆転を狙って始めた仕事が事件現場のクリーニングという普通じゃない仕事。高収入だけど、凄惨な現場に逃げ出したくなる気持ちを抑えて頑張るのは、お金を貯めて周囲を見返したい気持ちがあるから。昔はチアリーダーとして人気者だったローズにとって、不倫中の元恋人が自分を選ばなかったことを含めた今の境遇は悔しく納得いかないのでしょう。

ノラの方は姉のような必死さや上昇志向はないようですが、姉の頑張りが気持ちの中で負担になっていたことが、後にノラの不注意で大きな借金が出来て仲違いした時にわかります。
結局ノラは自分探しの旅に出るのね~~姉妹で再び・・という結末を予想してたけど、良い意味で裏切られたかな

好き勝手に生きているようで、この家族の絆ってけっこう強いです。学校で問題児扱いをされているオスカーのことも、決して否定的には見ていません。(というよりこの祖父と叔母に問題ありだからこうなったのかもですが)そして、この家族の中で育つオスカーの将来も絶対明るい筈だ~

あるがままの自分を受け入れてそこからやり直すことの大切さを教えてくれる作品でした。

登場人物で印象に残ったのはローズたちを助けてくれるウィンストン(クリフトン・コリンズ・Jr)。物静かで穏やかな人柄にです。

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ホートン/ふしぎな世界のダレダーレ

2010年04月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年7月12日公開 アメリカ 88分

ジャングルに住むゾウのホートンは、ある日、助けを求める小さな声を聞きます。耳をすますと、声は風に乗ってクローバーの上に舞い降りた埃の中からのようです。埃の中にも世界があると信じたホートンは、この小さなダレダーレの国の市長さんと話をして、安全な場所に連れて行く約束をします。しかし、頭の固いカンガルーのお母さんは目に見えない存在を否定し、子供たちへの悪影響を心配して、クローバーを取り上げようと意地悪な大鷲のブラドを使って邪魔をするのでした・・。

原作は、ドクター・スースの絵本。アメリカ版アンパンマンのような人気絵本だとか。家族そろって楽しめる作品というか、はっきりとお子様向けですね。
ホートンの声はジム・キャリー、市長さんはスティーブ・カレル、カンガルーはキャロル・バーネットです。

この作品のテーマは
・信念をつらぬくこと
・見えないものを信じること
の大切さです。

ホートンは心優しい像で、彼の「小さくても人は人」という言葉には、自分との違いを良いことも悪いことも含めて相手の本当の姿を見つめようというメッセージがあります。
見えないものを信じず排除しようとするものたちを、現実世界の誰かに置き換えてみることも出来るけれど、ファンタジーとして素直に楽しむ方がいいかも

DVDのおまけに「アイスエイジ」のシドのサブストーリーが収録されているのですが、こっちの方が好みだったりする・・



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月夜のチャトラパトラ

2010年04月07日 | 
新藤悦子(著) 講談社(発行)

カッパドキアの洞窟ホテルで育ったカヤは、幼い頃、「キノコ岩の森」に迷い込み、「小さな人」たちと出会う。満月の夜に、時と友情の扉が開く…。少年カヤと小さな人たち、時空を超える友情のファンタジー。

この本を知ったのはフリーペーパーの紹介欄でした。児童書ではあるけれど、大人が読んでも十分楽しめるファンタジーで、トルコのカッパドキア地方の洞窟ホテルに住む少年と彼が「チャトラパトラ」と名付けた小さな人の物語です。そもそもカッパドキアという地名は耳にしたことがあっても、それがどこの国にあり、何で有名になったのかは知らなかった私でした。

主な登場人物は、この地方特有の奇岩を掘って作られた洞窟ホテルを経営するアタ(父を意味する)とアナ(母を意味する)。ホテルになる前の廃墟でアナが見つけ、息子として育てているカヤ(岩の意)という少年。冬にホテルにやってきた日本人のヨーコ(画家)とフィンランドからやってきた考古学者?のミッコ。そしてカヤが幼い頃に知り合い「チャトラパトラ・・でたらめに喋るという意味)」と名付けた小さな人たちです。

カヤは幼い頃に知り合い友達になった「チャトラパトラ」のことを大人たちには秘密にしてきました。それは大人には彼らが見えないと言われたからでもあるし、「小さな人」の方にカヤの外見(赤毛で緑の目)が似ていたせいでもあるでしょう。

カヤの秘密はしかし、ヨーコとミッコが泊まりに来た12歳の冬に暴かれてしまいます。それはヨーコが純粋な心を持っていた証であり、ミッコには「小さな人」に伝えなければならないことがあったからでした。そして驚いたことにアタやアナにも彼らが見えたのです。そう彼らは、見えないものを見る目を持ち、きこえない音に耳をすまし、わからないものを理解しようとする大人だったのね

自分だけの秘密の友達じゃなくなることに嫉妬と不安を感じたカヤが、大好きな友達が大好きな人たちの友達になったことを素直に嬉しいと思えるようになる結末に心がほっこりしました。

ところで、ヤカたち「大きな人」は「小さな人」の作ったベクメズ(葡萄の絞り汁を煮詰めたもの)を食べることで言葉が通じるようになります。ブドウ糖と言ってしまえば味気ないけれど、このベクメズが美味しそうで食べてみたいなぁ

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リリィ、はちみつ色の秘密

2010年04月05日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年3月20日公開 アメリカ=カナダ

1964年の夏、サウスカロライナ州に住む14歳のリリィ(ダコタ・ファニング)は、幼い頃自分の過ちで大好きな母デボラ(ヒラリー・バートン)を失った記憶に囚われ心に深い悲しみを負っていた。ある日父T・レイ(ポール・ベタニー)の言葉に傷つけられたリリィは家出をする。公民権法は制定されたがまだ差別は厳しく、黒人メイドのロザリン(ジェニファー・ハドソン)が不当に迫害されたこともきっかけとなった。怪我をして警察に連行されたロザリンを助け出して向かった先は母に縁のある町ティブロン。そこで2人はボートライト三姉妹と出会い、長女オーガスト(クイーン・ラティファ)が経営する養蜂場の仕事を手伝いながら共同生活を始めるのだが・・・。

原作はスー・モンク・キッドの同名ベストセラー小説。製作陣にはウィル・スミス夫妻も参加しているとか。


愛への飢餓感を抱えて生きてきた少女が、母に縁のある町を訪ねてボートライト三姉妹と暮らす中で、知的で独立心に富んだ女性たちの優しさに包まれて愛を知り成長していく物語です。

カリビアン・ピンクに塗った家に住むボートライト3姉妹の名前は誕生月にちなんでいるようです。長女オーガストは養蜂家で、実はリリィの母の子守をしていた過去があり、リリィに対しても母のような愛情を持って接しています。

次女ジューン(アリシア・キーズ)は音楽教師。凛とした女性ですが、恋人ニール(ネイト・パーカー)との関係を進めることに不安を感じ、リリィへの感情も複雑な様子です。三女メイ(ソフィー・オコネドー)は優しい性格ですが、双子の片方を失くして以来その強すぎる感受性を『壁』を作り想いを挟むことで何とかバランスを保っています。

1964年は変化が始まった年です。公民権の制定により解消された筈の差別は実際にはまだまだ根強く残っていた中で、養蜂業を成功させているボートライト家の存在は特別なように見えますが、現実にもこのような黒人知識層は存在していたとのこと。

この家の居間には蜂蜜のラベルのモデルにもなった黒い聖母像が置かれています。。
この像にまつわる話や、オーガストが蜜蜂との接し方になぞらえて、コミュニケーションを持つにはまず愛を送ることだとリリィに教える場面は心に沁みます。聖母は母の象徴であり、オーガストの豊かで深い包容力は母を思わせます。

リリィが好意を寄せていく黒人青年ザカリー(トリスタン・ワイルズ)との心の触れ合いは清らかなものですが、彼らが一緒に映画を観ることも当時は差別の対象となり、ザカリーは白人たちに袋叩きに遭います。この一件が引き金となって深い悲しみが訪れるのですが、そのことで、姉妹もリリィたちもより一層絆が深まることになりました。

リリィは母の自分に対する愛情を確認し、連れ戻しにきた父と決別し姉妹と暮らすことを選びます。この父もまた妻を愛する故に苦しんだ一人ではありますが、彼は、昔もリリィの思いを知った今も自分の生き方を変えようとはしませんでした。というより当時の白人男性としてはそれが当たり前だったのかもしれない・・かな

派手さはないけれど、アメリカのある時代を切り取った佳作ですね

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パイレーツ・ロック

2010年04月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年10月24日公開 イギリス

1966年、北海に浮かぶ船に高校を退学になったカール(トム・スターリッジ)がやってくる。更正のため、母親に名付け親のクエンティン(ビル・ナイ)に預けられたのだ。この船は海賊ラジオ局で、クエンティンはその経営者。1日45分しかヒットレコードをかける時間がないBBCラジオに対し、24時間いつでもロックを流すこのラジオ局は若者に圧倒的な支持を受けていた。しかしその一方、政府はこの海賊ラジオ局を潰そうと画策しているのだった…。(goo映画より)

ビートルズやストーンズ全盛の60年代、政府の方針で、彼らのレコードが国営ラジオでかかる時間はごくわずか。そんな中、最新のロックを24時間流す「海賊ラジオ局」(海洋上なので英国の法律が適用されない)は若者から絶大な人気を博していました。
この映画では、海賊局側と彼らを取り締まりたい政府側のやり取りをコミカルに描いています。

そもそも、ドラッグと煙草喫煙で高校を退学させられたカールが送り込まれたのが海賊ラジオ局「ラジオ・ロック」の船上ですから、ちっとも更正になんぞなってませんってば。
DJたちは個性溢れる筋金入りのロック魂の持ち主で、イギリスで初めて「F××K」という単語を電波に乗せて送ったり、女の子たちを船に呼んで遊んだりして、国の風紀を乱すと眉を吊り上げ取り潰しの機会を狙う政府をおちょくる日々を楽しんでいます。

カールはそんなDJたちに振り回されながらもいつしか彼らの気儘な生活に溶け込み仲間になっていきます。
実は彼の父親はDJの中の一人だったり(だからこの船に預けたのか~)、互いをライバル視するDJがいたりと船上での生活も波乱に富んでいます。やがて、政府を出し抜くことに成功した彼らを待っていたのは北海での沈没事故なのですが、彼らの支持者たちが助けにやってきて、全員助かるという結末は見殺しにしようとした政府への非難と風刺が込められているようでした。

<キャスト>
カウント(フィリップ・シーモア・ホフマン)アメリカからやってきた人気DJ
ギャビン(リス・エヴァンス)アメリカ帰りの伝説のイギリス人DJ
デイブ(ニック・フロスト)デブでもモテモテ、ちょっと皮肉屋
ニュース・ジョン(ウィル・アダムズデイル)真面目な?ニュース係
ケヴィン(トム・ブルック)
アンガス(リス・ダービー)根暗DJ
フェリシティ(キャサリン・パーキンソン)船内唯一の女性、レズの料理人
サイモン(クリス・オダウド)人の善いDJ
ハロルド(アイク・ハミルトン)
マーク(トム・ウィズダム)無口だが女性に大人気のDJ
ボブ(ラルフ・ブラウン)

超個性的なDJたちを束ねるのがビル・ナイ演じるクエンティン。いかにも英国紳士らしい佇まいが素敵

海賊局をつぶすことに執念を燃やす大臣ドルマンディはケネス・ブラナー、その部下トゥワット(アソコという意味なんだとか)にジャック・ダヴェンポート、カールの母シャーロットはエマ・トンプソンが演じています 

特にロック好き、でなくてもコメディとして違和感なく楽しめました。
ロックは英米発祥のイメージが強かったけれど、半世紀前には公に認められない存在だったのねぇ だからこそのロック、ではありますが

彼らDJが上陸した際に訪れる「アビーロード」も印象的でした

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見知らぬ明日

2010年04月01日 | 
グイン・サーガ130 
栗本 薫 (著) 早川書房(刊)

ヤガでの異変は心話が途切れたことでヴァレリウスも気付いていたが、パロの人材不足は魔道師も例外ではなく、いっそ自らが出向いて調べたい気持ちを抑えて、イシュトへの対応をするのだった。そんな彼にイシュトはケイロニアの情勢を耳打ちする。情報戦でも太刀打ちできないパロの現状を思い知り愕然とするヴァレリウスの前からヤガへ向けて去っていったかに見えたイシュトだが、その真意は別にあった・・。
一方フロリーは・・。

いよいよ最終巻です。
ページ数がいつもの半分、特に最後が、フロリーが妖怪に飲み込まれた後、目覚めた様子で終わっているのが、作者の突然の死で断ち切られたということを突きつけられているようで切ないです。


前巻で、ミロク教徒の聖地ヤガで起こっている異変の全体像が何となく見えてきて、これは中原を脅かすヤンダルの第二の攻撃か??と色めき立つ気持ちを抑えられずにいましたが、この巻ではまたまた一休み。暗雲漂う気配を受けつつ、次回からの波乱万丈に備える風でした。作者はまだまだこの先何十巻分もの構想を抱えていたのだろうなと思うと、本当に残念でなりません。

作者の意向を一番理解している誰かが引き継いで、物語を完結して貰いたい気持ちと、傾向が変わってしまうのなら未完のままでと思う気持ちが今はまだ半々くらいかな。
でも続編が出たらやっぱり読むと思う。間違いなく読むだろうな

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