杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

家に帰ろう

2019年08月31日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年12月22日公開 スペイン=アルゼンチン 93分

88歳のユダヤ人仕立屋アブラハム(ミゲル・アンヘル・ソラ)は、子どもたちや孫に囲まれ、家族全員の集合写真を撮っても浮かない顔をしていた。その翌朝、住み慣れた仕立屋兼自宅を引き払い、老人施設に入ることになっていたのだ。最後に1着だけ残ったスーツを見てアブラハムはあることを決意する。家族が皆帰ってしまったその日の深夜、家を抜け出しブエノスアイレスからマドリッド行きの航空券を手配、早速飛行機に乗り込むのだった。ブエノスアイレスから、マドリッド、パリを経由して、ポーランドに住む70年以上会っていない親友に最後に仕立てたスーツを届けに行く旅が始まる。アブラハムは、決して「ドイツ」と「ポーランド」という言葉を発せず、紙に書いて行く先を告げていく。飛行機で隣り合わせた青年、マドリッドのホテルの女主人。パリからドイツを通らずポーランドへ列車で訪れることができないか、と四苦八苦していたアブラハムを助けるドイツ人の歴史学者など、旅の途中で出会う女性たちは、アブラハムの旅を支えようとそれぞれの環境の中で受け入れることで、アブラハムの尖った部分を柔らかくしていく。ポーランドに住む親友は、ユダヤ人であるアブラハムが第2次大戦中、ナチスドイツによるホロコーストから逃れたアブラハムを助け、匿ってくれた命の恩人であった。アブラハムが70年前に受けた足の傷が悪化し、看護師から車いすを押されて、過去の壮絶な思い出と一緒にたどり着いた場所は、70年前と同じ佇まいをしていた。アブラハムの人生最後の旅に人と人が繋ぐ“奇跡”が訪れようとしていた。(公式HPより)

 

ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の老人が、70年の時を経て、友人との約束を果たすためにアルゼンチンから故郷ポーランドへ旅する姿を描いたロードムービーです。監督・脚本を手掛けたパブロ・ソラルスは、自身の祖父の家が「ポーランド」という言葉がタブーであったことから発想を得たそうです。

アブラムは、自分を高齢者用の施設に入れようとする子どもたちから逃れ、故郷ポーランドを目指して旅に出ます。旅の目的が明かされるのはラスト近くになってから。第2次世界大戦時、ユダヤ人である自分を匿いナチスの手から救ってくれた親友のお陰で《別の人生》を生きることが出来たことをアブラムは片時も忘れたことはありませんでした。それでも迫害を受けた辛い記憶の呪縛から故郷に足を踏み入れることができなかったのです。しかし、人生最後の時が訪れようとしている今を逃してはもう二度と機会が巡ってこないかもしれません。あの日、親友と交わした約束(自分が仕立てたスーツを渡す)を果たすため、アブラムは一大決心をして旅立ったのです。

彼にとってドイツ人は加害者であり、憎むべき対象でした。しかし、旅の中で彼を助けてくれる女性たちを通して、彼の頑なな心が和らいでいきます。

車椅子で辿り着いたその場所で待っていた、親友と互いに手を取り合い再会を喜ぶ“奇跡”のラストシーンに胸が熱くなりました。 長い長いアブラムの「人生の旅」は重い荷物を降ろしてようやく安らぎを見つけたのですね。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

2019年08月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年12月28日公開 120分

北海道札幌市。鹿野靖明(大泉洋)は幼い頃より難病の筋ジストロフィーを患い、34歳になる今では体で動かせるのが首と手だけ。24時間365日だれかの介助がないと生きていけない体にも関わらず、医師の反対を押し切って病院を飛び出し、市内のケア付き住宅で自ら集めた大勢のボラ(ボランティアの略称)に囲まれ、自立生活を送っている。わがままで、ずうずうしくて、ほれっぽくて、よくしゃべって…!夜中に突然「バナナ食べたい」と言い出したりする自由すぎる男・鹿野を介助するボラは、彼と付き合いの長いベテランから、新人の大学生まで人さまざま。その一人、医大生の田中(三浦春馬)はいつも鹿野に振り回される日々。ある日たまたま鹿野宅を訪れた田中の恋人・美咲(高畑充希)まで新人ボラに勘違いされてしまう。おまけに鹿野は美咲に一目惚れしてしまい、田中は彼の代わりに愛の告白まで頼まれる始末…!最初は戸惑う美咲だが、鹿野やボラたちと共に時間を過ごす内に、自分に素直になること、夢を追うことの大切さを知っていく。ところが鹿野が突然倒れ、命の危機を迎えてしまう…。(公式HPより)


原作は、渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」で、筋ジストロフィーにかかりながらも自らの夢や欲に素直に生き、皆に愛され続けた実在の人物・鹿野靖明さんと、彼を支えながらともに生きたボランティアの人々や家族の姿を描いた人間ドラマとなっています。実際に鹿野靖明さんが暮らしていた札幌や、美瑛・旭川などで撮影が行われたそうです。

テレビ予告CMの高畑充希が息を切らしながらバナナを目の前にドン!と置くシーンが印象的でしたが、本編では割とすぐにこのシーンになってます

鹿野というキャラに大泉洋がぴったりはまっていて、我儘で図々しくて惚れっぽくてという欠点要素も彼が演じると愛嬌ある人物になるから不思議。この鹿野という人が、生きることを楽しむことに全力で向かっていたからこそ、こういうキャラになったんだろうなと思わせてくれます。

田中君は、将来自分の進むべき道に悩む青年ですが、彼もまた鹿野と触れ合うことで変わっていくんですね。田中の恋人の美咲は、デートのついでの軽い気持ちでボランティアに来て、鹿野に反発しながらも次第に一番の理解者となっていきます。お互い遠慮なく本音をぶつけ合うことで親密な感情が芽生えてくるのですが、彼女の場合は恋愛感情ではなく、共に戦う同士のような気持ちのようです。鹿野の求婚をあっさり断るシーンはちょっと笑えます。

他に、萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平、韓英恵、竜雷太、綾戸智恵、原田美枝子、佐藤浩市など豪華な俳優陣が脇を固めています。

いわゆる闘病記のような暗さや重さはなく、毎日全力で生を楽しむ姿に観ている方が勇気と元気を貰える作品でした。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダンボ

2019年08月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年3月29日公開 アメリカ 112分

サーカスに、愛らしい子象が誕生した。”大きすぎる耳”をもった小象は”ダンボ”と呼ばれ、ショーに出演しても観客から笑いものに。ある日、ダンボの世話を任されたホルト(コリン・ファレル)の子供たちミリーとジョーが、悲しむダンボを元気づけるため遊んでいると、その”大きな耳”でダンボが飛べることを発見する。”空飛ぶ小象”の噂は瞬く間に広がり、ダンボで金儲けを企むものによって、ダンボは愛する母像ジャンボと引き離されてしまう。母を想うダンボに心を動かされたホルトの家族とサーカス団の仲間は力を合わせ、ダンボの捕らわれた母を救い出す作戦がはじまる!(チラシより)

 

1941年製作のディズニー・アニメ「ダンボ」を、ティム・バートン監督が実写化したファンタジーアドベンチャーで、大きな耳で空を飛ぶことができる「ダンボ」が、引き離された母親を助けるため、サーカス団の家族の力を借りて新たな一歩を踏み出す姿を描いています。

ダークファンタジーを得意とするティム・バートンですから、単に心温まるファミリーストーリーに留まりません。ホルトは曲芸乗りの看板スターでしたが戦争で片腕を失くして帰還、不在中に妻は病死しています。ダンボを使って金儲けを企む企業家ヴァンデバー(マイケル・キートン)は、邪魔な団員たちをクビにしたり、ジャンボを殺すように命じたりと徹底した悪役ぶりを発揮します。

当時のサーカスは「まともでない」者を見世物にするような興行で、ダンボの大きすぎる耳も観客にとっては嘲笑の対象です。ダンボの澄んだ無邪気な子供のような瞳が強調されているのは、彼を取り巻く環境に対する皮肉のようにも見えます。

人間であれ動物であれ、幼子が母親と引き離される悲しみは共通のもの。母を喪ったミリーとジョーには尚更ダンボの悲しみが他人事ではないと想像できます。またサーカスの団員たちにとっても「普通でない」ダンボは自分たちと同族の親愛感を持つに足る対象です。初めのうち、ヴァンデバー側かと思えた空中ブランコのスター、コレット(エバ・グリーン)もまた、ダンボやホルトや子供たちと心を通わせていきます。

サーカスの団長は、金儲けのためにジャンボを買ったり、ヴァンデバーにサーカス団を売ったりしますが、根は正直な善人として描かれています。一方ヴァンデバーは冷徹な悪人であり、ダンボを逃がすまいとした結果、彼の築き上げた遊園地を火事で失う結果になっても自業自得と思える結末になっています。

昔のディズニーアニメはあまり好きじゃなくて、たぶん「ダンボ」も観ていない気がしますが、今回はティム・バートン作品ということでチョイスしました。

監督作品常連のジョニー・デップが出ていないのも、ホルト役が、ちょっと苦手なコリン・ファレルなのも個人的にはマイナス要素ですが、監督独特の映像世界は楽しめました

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

老後の資金がありません

2019年08月26日 | 

垣谷美雨(著) 中公文庫

「老後は安泰」のはずだったのに!後藤篤子は悩んでいた。娘の派手婚、舅の葬式、姑の生活費…しっかり蓄えた老後資金はみるみる激減し、夫婦そろって失職。家族の金難に振り回されつつ、やりくりする篤子の奮闘は報われるのか?ふりかかる金難もなんのその、生活の不安に勇気とヒントをあたえる家計応援小説。(BOOKデータベースより)

 

先日金融庁が公表した公的年金以外に老後資金2000万円が必要との報告書が話題となっていますが、それより以前に友人から薦められていたこの本を図書館で予約して数か月、やっと順番が回ってきました 

主人公の篤子はちょっと心配症な気があるパート主婦。一生懸命節約に励んで溜めた1200万円ですが、次々と失う羽目になります。

自分のためなら我慢もできるし見栄も捨てられるけど、可愛い娘や嫁としての立場が絡んでくると無下に却下もできずに散財することになる前半部。

地味婚を希望していた筈の娘なのに相手の親の強引なペースに乗せられ言われるがままの派手婚になり、500万円も出すことに。新生活のための準備金やハネムーンに使う方がよほど有意義と考える篤子ですが、相手方との釣り合いや後々娘が引け目を感じることになっては可哀相との親心が働くんですね~~。わかるわかる!

義父の葬儀費用にしても同じです。義妹から思わぬトラウマの告白(食べ物の恨みは何年経っても残ってるという、他人から見れば失笑事ですけど、当人には深刻なんですよね)に気圧され、現役時代の人間関係を基準に葬儀屋に押し切られてついつい気張ったけれど、蓋を開けてみれば思いのほか少ない参列者だったとかは、本当に「あるある」な話ですから リタイアした高齢者の葬儀は、ほぼ子供の関係者と少ない親族で占められるのが現実です 結局ここでも400万円が消えて、残り300万円。どうする?篤子!! と、ここまで一気に読み進めてしまいましたよ。

一方、篤子の友人のサツキはパン屋を営み、見栄は張らず上手に節約しています。ついつい自分と比べて落ち込む篤子にさらに追い打ちをかけるように、娘の夫によるDV疑惑に自身のリストラ、とどめは夫のリストラです。お花の先生を筆頭に、自分以外の誰もが人生の勝ち組に思えてどんどんマイナス思考に陥る篤子

義母への仕送りに窮した篤子が義妹に電話する時も、夫は自分のリストラのことは伏せてくれと言います。この期に及んでも見栄を張りたがるのが夫族まぁ、気持ちはわからないでもないけど。 電話の中で売り言葉に買い言葉、義母を引き取ることになったあたりから後半戦突入です。義父が亡くなった頃は生気のない老女だった義母ですが、一緒に暮らすようになると老舗和菓子屋の看板娘だったころの本来の性格が顔を出し、何だかすっかり元気になるんですね。 年金詐欺を引き受けたのも彼女だし、危ないと思ったらすぐに手を引く決断力といったらあっぱれなくらいです。

堅実に暮らしているように見えたサツキですが、近所にベーカリーが乱立して商売が傾き、義母の年金を当てにするほど困窮していて、篤子に助けを求めてきたのが年金詐欺。臆する篤子を人助けだと叱咤して義母は積極的に協力します。お金を要求したのもサツキの心の負担を軽くしようという思惑があり、もちろん息子夫婦の役に立ちたいという思いも当然あります。この辺の心情もまた理解できるような・・・。拍子抜けするほど簡単に騙せたことに味をしめたサツキは、篤子たちには内緒でマージンを取って「客」を紹介してきます。貧すれば鈍す!ですね。サツキの従妹夫婦のだらしない生活状態から犯罪者の匂いを嗅ぎ取って断る場面では義母の判断力に感心し、役所の職員の鋭い質問や、顔写真がネットに載っていることに気付いてお金を受け取らずに立ち去る場面にこちらまでハラハラドキドキさせられました。

優雅な暮らしを送っていると思っていたお花の先生が実は夫の借金返済と介護に疲れて夫を殺して捕まったり、親から財産分与されて金持ちと結婚した美乃留(お花の教室で知り合った友人)が子供に恵まれず、夫の浮気相手が妊娠したことで離婚に追いやられたりの展開になります。一方、篤子の娘はDV被害者ではなく、年下の夫を尻に敷いていたというのが真相だったり、兄である篤子の夫の方が母親の愛情を独り占めにしていたと僻んでいた義妹が、篤子と仲良く暮らしている母を見て嫉妬し自分の家に引き取ると申し出たり、篤子夫婦も次の仕事が見つかったりして、あれあれ?なんだかハッピーな気配が

篤子は、見栄っ張りじゃないと思っていた自分が実は誰よりも見栄を張っていたことに気付きます。家族のことを心配しているのは事実だけれど、その結果自分が不幸になることが一番嫌なんだという・・・貧しさというのはお金がないことではなく、相談できる友人がいないことだというのも痛い真実ですね その点篤子はサツキや美乃留という本音で話せる友人を得ることができたのだから、羨ましいくらい

おそらく、篤子と同年代の女性は多かれ少なかれ彼女に自分を重ねて共感する部分があると思います。 だからこそ展開に引き込まれて一気に読めちゃうんですよね この作者の他の小説も読みたくなってきました


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サイバー・ミッション

2019年08月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年1月25日公開 中国=香港 99分

オタク系プログラマーのハオミン(ハンギョン)がかつてハッキング対決で負かしたコードネーム・ゼブラ(リディアン・ボーン)は裏世界の仕事に手を染め、ハオミンを次の大仕事に巻き込むべく、パートナーのスー・イー(リー・ユエン)を介して接触を図ってきた。ゼブラの次のターゲットを探るため、ハオミンは覆面捜査官として、ゼブラ側に潜入。ゼブラのバックに裏世界の大物・モリタケシ(山下智久)が関係していることが明らかとなるが……。(映画.comより)


サイバーアクション作品で、日韓のアイドル共演らしい 山ピーが出ているということで観てみたけど、完全に悪役でしたね。(DVDには特典として舞台挨拶の様子が収録されていました

何しろ世界最高峰のセキュリティを謳うインフラ管理システムをハッキングして掌中に収めて世界経済を牛耳ろうというのだから、相当に冷徹なキャラですが、当然、最期はやられちゃうわけで そのシーンは意外にあっさりしていました。それにしても警察の援護が遅すぎ 

ゼブラはモリに雇われたハッカー?悪役?と思わせておいて、実はハオミンとのバディものだったというオチです (ゼブラとスー・イーのシーンはファンサービスなのかな?)スタイリッシュなゼブラとニートでお気楽な若者然としたハオミンのコンビに美女が加わり、モリの企みを暴こうとする展開で、ハッキングシーンは実態に即しているのかはよくわからなかったけれど、現実としてハッカーが存在するのも確かで、仮想現実の危うさは感じることができたような


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マイマイ新子と千年の魔法

2019年08月25日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2009年11月21日公開 93分

2019年7月9日放送 日テレ「映画天国」

ゆったりとした自然に囲まれた山口県防府市・国衙。
平安の昔、この地は「周防の国」と呼ばれ、国衙遺跡や当時の地名をいまもとどめている。
この物語の主人公は、この町の旧家に住み、毎日を明るく楽しく過ごす小学3年生の少女・新子だ。
おでこにマイマイ(つむじ)を持つ彼女は、おじいちゃんから聞かされた千年前のこの町の姿や、そこに生きた人々の様子に、いつも想いを馳せている。
彼女は“想う力(ちから)”を存分に羽ばたかせ、さまざまな空想に胸をふくらます女の子であり、
だからこそ平安時代の小さなお姫様のやんちゃな生活までも、まるで目の前の光景のようにいきいきと思い起こすことができるのだ。
そんなある日、東京から転校生・貴伊子がやってきた。
都会とは大きく異なる田舎の生活になかなかなじめない貴伊子だが、好奇心旺盛な新子は興味を抱き、
お互いの家を行き来するうち、いつしかふたりは仲良くなっていく。
一緒に遊ぶようになった新子と貴伊子は同級生のシゲルや、タツヨシたちとともに、夢中になってダム池を作る。
そして、そこにやってきた赤い金魚に、大好きな先生と同じ「ひづる」と名前をつけ、大切に可愛がるようになる。
やがて新子たちは、学校が終わるとこのダム池に集まって過ごすようになっていた。
しかし、ふとしたことから「ひづる」が死んでしまい、それを機に仲間たちとの絆も揺らぎ始めていく。 
そんななか、新子は「ひづる」そっくりの金魚を川で見かけたという話を聞き、貴伊子や仲間たちと金魚探しを始めるのだった。
そして、みんなの心が再びひとつになりかけたその時……。(公式HPより)

 

「この世界の片隅に」の片渕須直監督が手掛けた長編アニメで、昭和30年代の山口県を舞台に、空想好きで明るく元気な小学3年生の少女・新子の生き生きとした日常を描いた成長物語です。原作は髙樹のぶ子の「マイマイ新子」。

初めのうち、新子のパワーについていけずに、声にも違和感がありましたが、徐々にその世界観に引き込まれていくのを感じました。

つむじ=マイマイが新子の想像力の源として描かれています。物語には度々「死」が登場します。新子の想像の中の千年前のお姫様・諾子は一緒に遊ぶ筈だった同い年の少女を亡くし、転校してきたクラスメイトの貴伊子は母を亡くし、新子達が大好きなひずる先生の名前を付けて世話していた金魚も死んでしまい、タツヨシは警察官の父親を自殺で亡くし・・・。特にタツヨシの父については、大人の事情がかなり赤裸々に明かされていて、子供が見るにはどうかな?と思うところですが、身近な周囲にある死=喪失を通して、でも新子たちは逞しく成長していくんですね。

亡き母のことがいまひとつ朧気だった貴伊子は、夢の中でマイマイのある自分を意識します。新子が見ている1000年前の世界を自分の頭の中で理解し得た時、彼女は母親が確かに存在していたこととその死を受け入れることができたんですね。

子供たちは、後ろ(過去)を振り返って留まるより、前(未来)に向かって駆け出すパワーに溢れた存在なんだということを改めて気付かされた作品です。

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

運び屋

2019年08月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年3月8日公開 アメリカ 116分

家族をないがしろに仕事一筋で生きてきたアール・ストーン(クリント・イーストウッド)だったが、いまは金もなく、孤独な90歳の老人になっていた。商売に失敗して自宅も差し押さえられて途方に暮れていたとき、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられたアールは、簡単な仕事だと思って依頼を引き受けたが、実はその仕事は、メキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だった。(映画.comより)


クリント・イーストウッド監督・主演作品。87歳の老人がひとりで大量のコカインを運んでいたという実際の報道記事をもとに、長年にわたり麻薬の運び屋をしていた孤独な老人の姿を描いたドラマです。高齢者の運転が問題となっている日本からすると、90歳のドライバーは危なっかしく思えますが、この主人公はドライブに関しては問題ないようです アールが着ている服はこれまでイーストウッドが出演した映画の作品の中で着用していたものが数点あるそうですので、どの服がどの作品で着ていたのかを確認するという楽しみ方もあるかも

アールはデイリリーという高級百合を栽培し、各地の品評会で高い評価を受けていましたが、熱中するあまり家庭をないがしろにして、娘のアイリス(アリソン・イーストウッド)の結婚式にも姿を見せず、家族に愛想を尽かされます。数年が経ち、インターネットが普及すると、時代の波に乗れない彼は農園の経営にも失敗し手放すことになるんですね。

孫娘のジニー(タイッサ・ファーミガ)だけはアールを慕ってくれていましたが、娘は口も聞いてくれず、孤独な彼に声をかけてきた男がいました。アールが仕事柄、車で国中出かけていて、無事故無違反の優良ドライバーだったことを聞きつけた男は、仕事を紹介すると言います。初めは断ったアールでしたが、孤独を紛らわせようと軽い気持ちで誘いに乗るんですね。荷物を指定されたモーテルまで運ぶという簡単な仕事ですが、ただ一つ「中身を見てはいけない」というルールがありました。(その時点でかなり怪しいヤバい仕事と気付くと思うのだけど)その報酬は高額で驚くアールでしたが、そのお金で孫娘の結婚パーティの費用を出してやり、家族との距離が少しだけ縮まります。一度だけと心に決めた事も忘れ、おんぼろトラックを新車に買い替えて、アールは二度目の仕事を引き受け、今度は農園を取り戻します。行きつけの退役軍人レストランが火事で再開が難しいと聞いて三度目の仕事を引き受けたアールでしたが、さすがに不審に思った彼は荷物を開けてしまいそれが大量の麻薬であることを知ってしまうんですね。(遅すぎですが)この時の警官や犬をやり過ごすエピソードは、ハラハラしながらも大胆なアールの行動に舌を巻いてしまいます。

それからも運び屋を続けるアールは、麻薬組織のボスのラトン(アンディ・ガルシア)に気に入られますが、ラトンが裏切られて殺されると、状況は一変。厳しい締め付けが彼を追い込んでいきます。そんな折、元妻メアリー(ダイアン・ウィースト)が重病で死期が近いことを知らされたアールは、運び屋の仕事の途中で死を覚悟でメアリーの元へ駆けつけます。長年の不義理を詫び、メアリーとの最期の数日間を過ごした彼に、娘も心を開いてくれて、親子の絆が復活するんですね。

もちろん、麻薬組織を壊滅すべく、取締局の捜査官も動いています。コリン・ベイツ(ブラッドリー・クーパー)は主任特別捜査官(ローレンス・フィッシュバーン)から結果を出すよう言われ、相棒のトレビノ(マイケル・ペーニャ)と共に捜査を開始しますが、なかなか敵の尻尾をつかめずにいました。内通者から情報を引き出して張り込んでいたモーテルでコリンとアールは顔を合わせますが、まさか老人が運び屋だとは思わず取り逃がしてしまいます。二人は朝のカフェで会話を交わすのですが、記念日を忘れていたコリンにアールが「仕事より家族が大事」だと忠告するんですね。これはアールの本心であり、忌憚のない意見だからこそ、コリンの胸にも突き刺さるんですね。

アールは安全運転ではあるけれど、音楽を聴きながら気ままなドライブをします。パンクして困っている車があれば停まって手助けをするし、見張りについているラトンの部下のフリオ(イグナシオ・セリッチオ)たちにも遠慮がありません。初めは「このじーさん殺してもいい?」とカリカリしていたフリオでさえ、アールの人柄に魅了されてしまうんですね。何しろフリオたちが白人の多い町で警官に不審尋問を受けた際には賄賂を渡して助けてくれましたから。 アールは差別用語も平気で口にしますが、それは悪意からではなく、彼の生きてきた時代には普通に使っていた単語だから。言われた方が傷ついたと知ると素直に謝りもします。コリンが麻薬取締官だと気付いても態度は変わらず飄々としていますが、これこそ彼が長年生きてきた中で身に着いた度胸と元々の豪放磊落な性格によるものです。また、生死の境を生き抜いた元軍人ということも大きいと思います。

運び屋の仕事を途中で放棄した彼は、追手に捕まります。死を覚悟した彼でしたが、組織は再び仕事を命じます。そしてこれが彼の最後の仕事になります。運び屋のルートの詳細な情報を得たコリンたちがアールの前に立ちはだかり、逮捕されるんですね。アールがモーテルで会った老人だと気付いたコリンとの会話も短いながら余韻のあるものでした。

裁判にかけられた彼は自ら有罪を認め収監されます。刑務所の中でアールは再びデイリリーを育てているシーンで終わります。

さて、そもそもどうしてアールは運び屋という犯罪に手を貸し続けたのでしょうか。デイリリーを育てることで外での評価を得ていた彼ですが、本当は家族に上手く愛情を伝えられず、自分の居場所がそこにないと感じていたからこそ、外に逃げていたのだと思います。農場が潰れてしまうと、それこそ居場所がなくなります。そんな時に出会った麻薬組織の人間たちは、運び屋としての彼の能力を高く評価してくれました。やがて彼らとの間にある種家族のような親しみを共有することになると、アールはそこに自分の居場所を見つけてしまったんですね。社交的で破天荒な生き方をしていても、アールは孤独であり、彼が求めていたものは家庭にこそあったのだと気付いた時には妻は病に倒れています。法廷で彼が認めた罪は、運び屋としてだけでなく、生き方そのものに対してだったのかもしれませんね。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クエスト・オブ・キング 魔法使いと4人の騎士

2019年08月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年 アメリカ 120分 日本劇場未公開

平凡な学校生活を送る少年アレックス(ルイ・アシュボーン・サーキス)は、ひょんなことから伝説の聖剣エクスカリバーを引き抜いてしまい、世界を救う使命を担うことに。古代からやって来た魔法使いマーリン(パトリック・スチュワート、若いマーリンはアンガス・イムリ―)とともに仲間を招集し、聖剣を狙う邪悪な魔女モーガナ(レベッカ・ファーガソン)を倒す旅に出るが……。(映画.comより)

 

アーサー王伝説を現代風にアレンジし、伝説の聖剣を手にした少年が仲間たちと繰り広げる冒険を描いたファンタジーアドベンチャーです。主人公のアレックスを演じている、色白でちょっとぽっちゃり体型の少年は、俳優アンディ・サーキスの息子だって

最初はB級の子供向け作品だなぁと思って観ていました。が、これがなかなか深いメッセージを含んでいて侮れなかったです 

親友のベダーズ(ディーン・チャウムー)を庇ったことでいじめっ子のランス(トム・テイラー)とケイ(リアーナ・ドリス)から報復を受けそうになり逃げ出した廃墟で、偶然エクスカリバーを引き抜いたアレックス。(あんな場所に無造作に突き刺さってる剣なんてありえない設定だけど)それを知ったモーガナが剣を我が物にしようとアレックスの命を狙います。

マーリンはアレックスを支えるため転入生のマーティンに姿を変えて接触してくるのですが、当然アレックスに信じてもらえません。 (12歳のアレックスと自称16歳のマーティンが同じ授業を受けてるってかなり変)ところが、夜になると地面の下から現れた怪物に襲われ、現実だと認識するんですね ここからベダーズやランス、ケイを巻き込んでの冒険が始まるというわけです。

現代に蘇ったマーリンは少々、いや、かなりKYな少年 くしゃみをすると鳥に変身してしまうし、本当は老人の姿だし 魔法を使う時の仕草もちょっとユーモラスです。(杖とか使わんの??)体力消耗時の特効薬がファーストフード(しかもフライドチキンってブラックジョークか!)というのが現代的で笑えますが、子供受けしそうなネタではあります。

いじめっ子として敵対していたランスとケイが仲間に加わったり、途中で裏切りがあったりして、なかなか波乱に富んだ冒険行となります。この辺も伝説をオマージュしているらしい そもそも3人の名前も円卓の騎士に由来してるしね。ランスは強欲、ケイは未熟、ベダーズは臆病で、モーガナはそこを突いて仲間割れを企むのですが、それぞれが自分の欠点を克服して真に対等な関係を築いていくんです。折れて沈んだ聖剣を湖の精が修復して差し出すなど、基本的なストーリーも伝説に忠実。ちなみにこの精霊は水さえあればどこでも現れるというとっても便利な存在になってました。

アレックスは母子家庭ですが、実は父親はアル中で家族を捨てているという、超辛口設定。母は息子が傷つくと思い嘘をついていていたわけで、父親からもらったと思っていたアーサー王伝説の本も母があげたものでした。真実を知って、母に憤り、戦いを諦めかけたアレックスを仲間たちが励ますシーンもベタだけどです。

イギリス各地に残るストーンヘンジが瞬間移動装置になっているという発想が面白かったです。 マーリンの魔術をベダーズが動画にて撮って練習して出来るようになるのですが、武具を買うのにゲーセンのコインを複製するとか・・それ犯罪ですから~~って突っ込んじゃいけないのよね、ファンタジーだから。

倒したと思っていたモーガナが生きていたのは、アレックスが騎士の掟を破ったから。てっきりモーガナに嘘をついたからだと思ったら、母親への敬意を忘れていたからというのもちょっと意外でした。 >そっちかい

モーガナとの最終決戦のため、学校の生徒を仲間にするやり方も、アレックスたちの真剣な訴えより、マーリンの魔術で操られた校長の一言が効くとか、かなりシュール とはいえ、皆で一致団結して戦うシーンはなかなか見応えがありました。

モーガナを倒しても現実世界はちっとも変わらないのは事実だけれど、子供たちの心の中に正義と友情と正しいことをするという勇気は確実に植え付けられたわけです。未来への希望の種は蒔かれた!ってことですね


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランスポーター イグニッション

2019年08月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2015年10月24日公開 フランス 96分

2019年8月9日放送 午後のロードショー

プロの運び屋フランク・マーティン(エド・スクレイン)のもとに、妖艶な美女アンナ(ローン・シャバノル)から依頼が入る。時間通りにフランクが到着すると、3人の美女が彼の愛車アウディS8に乗り込んだ。そして銃を突き付けられ、人質に取られ猛毒がまわり命の期限が 12 時間に迫った父親(レイ・スティーブンソン)の映像を目にする。ルールを侵され怒るフランクだが、アンナたちはフランクの特殊部隊時代のライバルだったカラソフ率いる巨大売春カルテルに命を狙われていた。流儀や使命、命が脅かされている父の間で揺らぎながら、愛車を駆るフランク。そんな彼に、裏切りが待ち受ける……。(MovieWalkerより)


トランスポーターシリーズではあるけれど、リブート作品で、主役のフランクはジェイソン・ステイサムから変わっているんですね。 

3つのルール「依頼人の)名前は聞かない」「契約厳守」「依頼品を開けない」を厳守というのはこれまでと同じ。元特殊部隊出身で銃撃戦や格闘技に加え運転技術もピカイチの腕を見込まれてアンナからの依頼があったわけですが、彼女の真の目的は自分たちを追手から逃がすことでした。

これはルール違反だと断ろうとした彼に、「乗ってきたジーナ(ガブリエラ・ライト)とキャオ(ウェンシャ・ユー)は荷物だから違反はしていない」と答えたアンナは父親を人質にとっていることを伝えて強引に引き受けさせます。(金髪の鬘を付け、同じ服を着た三人は一見見分けが付きません。)仕方なく警察の追跡を振り切る際のドライビングテクニックにまず目を瞠ることに 彼女たちの仲間はもう一人マリア(タチアナ・パジコビク)がいます。

フランクシニアは命の危機にあってもユーモアを忘れないキャラで、悲壮感はありません。それどころか、彼女たちの真意を知ると進んで協力するんですね どちらかというと生真面目なフランクジュニアと対照的です。

アンナは12歳でロシアンマフィアのカラソフに売られた過去があり、他の仲間も同様のようです。彼女たちは復讐を計画し、彼の銀行の貸し金庫から宝石やお金を奪い、一緒に保管されていた手帳を使って仲間のイマソワの口座から1億ドルを引き出します。さらにもう一人の仲間であるユーリの飛行機に乗り込んで預金を奪うのですが、その時にジーナが負傷してしまいます。これを助けたのがフランクシニア野戦での経験が役立ったわけです。毒を盛ったという話はフランクに依頼を引き受けさせるための嘘であることを告白したアンナに依頼終了を告げ別れたフランクですが、この件にフランクが絡んでいると知ったカラソフに父親を拉致されてしまうんですね。(よく捕まる父親だこと

父親救出のため、再びアンナたちと手を組んだフランクはカラソフの船に乗り込みますが、そこにカラソフに金を盗られたと思ったイマソワとユーリも現れ、アンナの機転で仲間割れが始まります。その際、キャオとジーナが巻き込まれて犠牲になってしまうんですね。

特殊部隊時代の因縁のあるカラソフとフランクの決闘は素手対ナイフです。基本フランクの戦い方は素手プラスその場にあった道具を用いての肉弾戦で、怪我もするので見ていて痛そう 

アンナの銃に助けられ、カラソフは断崖の下へ・・・。一か月後、カラソフたちの口座から奪ったお金を犠牲になった仲間の家族とフランク父子に送金するアンナの姿でエンドロールです。 

スタイリッシュなヒーローキャラとドライビングテクニックはシリーズから継承されていますが、個人的にはステイサム君の方が好き


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ライオン・キング 吹替版

2019年08月09日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2019年8月9日公開 アメリカ 119分

アフリカの広大なサバンナで、動物たちの王であるライオンのムファサ(声:大和田伸也)の子として生まれたシンバ(賀久賢人)は、いつか父のような偉大な王になることを夢見ながら成長していく。しかし、ある時、王位を狙う叔父スカー(江口洋介)の策略によって父の命を奪われ、シンバ自身もサバンナを追われてしまう。やがてたどりついた緑豊かなジャングルで、イボイノシシのプンバァ(佐藤二郎)とミーアキャットのティモン(亜生)といった新たな仲間との出会いを得たシンバは、過去を忘れて穏やかに時を過ごしていく。一方、スカーが支配するサバンナは次第に荒れ果て、存続の危機が迫っていた。(映画.comより)


アフリカの雄大な自然を背景にライオンの王子シンバの成長と冒険を描いたディズニー・アニメ「ライオン・キング」を、フルCGで映画化しています。人間の動作を再現したり生身の動物を撮影したものではなく、全てがデジタル空間で作り上げられた映像という、まさに最新鋭の技術を駆使した作品。映画の冒頭シーンの1カットだけが実写だそうですが、その後のシーンも全て実写のドキュメンタリーのように見えるから凄い!

ストーリーは概ねアニメ版を忠実に再現していて、特に「サークル・オブ・ライフ」が流れるオープニングは、サバンナを駆け抜けて集まった動物たちに、ラフィキが生まれたばかりの王子シンバを高々と掲げて見せるところもそっくりでした。ヒヒのラフィキはアニメ版より寡黙で、吹替では殆ど意味不明な独り言が多いのですが、これは呪術師的要素を強調するためかな? 物語を象徴する「サークル・オブ・ライフ」は、“生と死を繰り返して世代を受け継ぐ”という意味の他に、世界は皆で分かち合うのもので、一人ひとりは独立した存在だけれど、お互いに繋がっていて、その中でそれぞれが果たすべき役割や生きる意味があるというメッセージも込められているんだとか。

上映時間とスクリーンの都合上、吹替版での鑑賞で、けっこう小さな子も親に連れられて来ていました。監督は本物のライオンがそこにいるかのような疑似体験を観客に提供しようと考えたようですが、あまりにリアルなため、(ヌーの大暴走や、燃え盛る火の中でのスカーとの戦いなど)刺激が強すぎて恐がる子もいました。これってPGかかってるんでしたっけ? 

イボイノシシのプンバァとミーアキャットのティモンは、砂漠で行き倒れていたシンバを助けて仲間にします。それは親切心というより、仲間にすれば敵に襲われずに済むという利己的な考えからでした。自分たちをはみ出し者だと認識している彼らのモットーは「ハクナ・マタタ」(スワヒリ語で「くよくよするな」の意)。過去は忘れて気楽に生きるという考えにシンバは救われますが、心の奥底ではずっと過去を引きずっていました。

スカーが王位について荒廃したプライド・ランドを何とかしようと助けを求めて抜け出したナラ(門山葉子)と再会したシンバですが、彼女の求めに応じることを拒絶します。自分が父親の死の原因になったと思い込んでいるシンバには故郷に戻ることは自分が犯した(と思っている)罪を晒されることでもあるからです。 落ち込むシンバの前にラフィキが現れ、父の幻に導かれて自分が果たすべき使命を悟ったシンバはスカーとの対決に臨みます。ナラからシンバが王国に向かったことを聞いたティモンとプンバァも後を追い、手を貸します。

追い詰められたスカーはハイエナたちこそ真実の敵だと言い逃れようとしますが、もちろんシンバに通用しません。命乞いをするふりをしてシンバに襲い掛かったスカーですが、隙を突かれて崖から落ちてしまいます。そこへやってきたハイエナたちに「真の友よ」とすり寄ろうとしますが、シンバとの会話を聞いていた彼らは・・・スカーの惨めな最期はさすがに音だけの表現でした 

アニメのハイエナたち同様、こちらもリーダーのシェンジはともかく、アジジとカマリの二匹のキャラは愛嬌がありました。「近い!」って(笑)

子供時代のシンバ(熊谷俊輝)とナラ(小林星蘭)が歌う「王様になるのが待ちきれない」は可愛かったです。 ただ、歌自体は字幕版でも聴いてみたいかな。

ラストは冒頭のシンバの誕生シーンを彷彿とさせます。まさに命は巡る!です。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

彼が愛したケーキ職人 ネタバレあり

2019年08月07日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年 12月1日公開 イスラエル=ドイツ 109分

ベルリンのカフェで働くケーキ職人のトーマス(ティム・カルクオフ)。イスラエルから出張でやって来るなじみ客のオーレン(ロイ・ミラー)といつしか恋人関係に発展していく。オーレンには妻子がいるが、仕事でベルリンに滞在する限られた時間、ふたりは愛し合う。ある日「また一カ月後に」と言ってエルサレムの家へ帰って行ったオーレンから連絡が途絶えてしまう。実は交通事故で亡くなっていたのだった―。
エルサレムで夫の死亡手続きをした妻のアナト(サラ・アドラー)。休業していたカフェを再開させ、女手ひとつで息子を育てる多忙ななか、客としてトーマスがやってくる。職探しをしているという彼をアナトは戸惑いながらも雇うことに。次第にふたりの距離は近づいていき……(公式HPより)


同じ男性を愛した2人の男女の姿を描いた作品です。国籍や文化、宗教や性差を超えて巡り合う男女の人間賛歌と謳っていますが、トーマスの行動は結局彼自身の欲求を満たすだけだったのではとの違和感が拭えず、共感はできなかったかな。

トーマスは母を亡くし父も出ていき、祖母の手で育てられた過去を持つ青年です。そんな彼がユダヤ人のオーレンと恋人関係になるのですが、ある日を境に連絡が取れなくなったことで状況が動きます。オーレンが事故死したと聞いたトーマスは、イスラエルの彼の妻のカフェを訪ねます。オーレンを喪った悲しみを共有する二人ですが、トーマスはオーレンとの関係を告げず、会ったこともない風を装います。一見アナトを気遣っているようで、本当はオーレンが愛した家族のことを知りたい、彼の思い出に触れたいというのが本音だったのではと思ってしまうんですよね

トーマスの作るクッキーやケーキが人気となりカフェは繁盛します。ある時二人は結ばれますが、これはアナトの方からのアプローチ。だって彼はゲイですから。さりげなく避けていたトーマスが、結局は彼女を受け入れ、意識的にオーレンが妻にしたのと同じ行為に及んだのは、間接的にオーレンとつながりたかったから?

正直、ユダヤ教の戒律や、ドイツ人にオーブンを使わせてはいけないとか、宗教的なタブーはよくわからないので、作品に込められたメッセージもちゃんと理解できたわけではありません。しかし、愛する人を亡くした喪失感を、その人が生きた街でその家族と過ごすことで自分を同化することで埋めようとするかのようなトーマスの行動は何となくわかる気がします。ずぶぬれのトーマスにアナトが貸したオーレンの服を一人になった時にベッドの上に広げるシーンは彼の切ない感情の発露と受け取れます。

このまま平穏な暮らしが続くかと思われた時、コーシャ(ユダヤ教徒が食べてもよいとされる「清浄な食品」)を守っていないことがばれて証明書を取り上げられてしまいます。大口の注文もキャンセルになり途方に暮れたアナトに更なる追い打ちが待っていました。トーマスの書いたメモが夫の遺品にあったものと筆跡が同じであることに気付いた彼女は夫の携帯に残ったトーマスのメッセージを聞いてしまい、夫の愛した人物がトーマスだとわかってしまったんですね。

実は、オーレンの事故死の真相は、彼が妻子を捨てベルリンに移住しようとしていると告白されてアナトに追い出され、ホテルに宿をとる途中の出来事でした。アナトはベルリンに夫の愛する誰かがいることは知っていたけれど、それが誰かはわかっていなかったようです。

でもオーレンの母はトーマスが息子が愛した人だと見抜いていました。だからこそ、彼を家に招いたとき、息子の部屋が見たいかと尋ねたんですよね。一方、敬虔で保守的なユダヤ教徒であるオーレンの兄のモティ(ゾハール・シュトラウス)はアナトにも教義を強要し、ドイツ人であるトーマスを雇うことにも反対していました。(それでも彼のために部屋を用意してやるなど親切で世話焼きな一面もあるんですけど。)おそらくは同性愛に対しても嫌悪感を抱いていたでしょうから、トーマスの素性がわかった時には有無を言わさず彼を追い返すのです。

突然の別れから数か月後に飛ぶラスト。ベルリンの店から出てくるトーマスはやってきたアナトに気付かず自転車で走り去ります。それを黙って目で追う彼女は何を考えているのか、そもそもどうしてベルリンにやってきたのか・・その答えは観客に委ねるということでしょうか。

映画の中に登場するクッキーやケーキ作りのシーンの中にトーマスの心の動きが投影されていますが、セリフの少ない映画なので、登場人物たちの心情は表情や仕草で推し量らなければならず、単純明快なアメリカ映画を見慣れた目には刺激が少なく単調にも見えます。こういう三角関係は、普通に考えたらかなり異常なんですが、そこに国籍や性差といった要素も絡んできて、逆に下世話感がなくなっているというか・・・人は誰も一人では生きられない、誰かを愛し愛されたいんだなぁと思わされる映画でした。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おかえり、ブルゴーニュへ

2019年08月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年11月17日公開 フランス 113分

フランス・ブルゴーニュ地方のワイン生産者=ドメーヌの家の長男として生まれ育ったジャン(ピオ・マルマイ)は、世界を旅するため故郷を飛び出したが、父親が末期の状態であることを知り、10年ぶりに故郷ブルゴーニュへ戻ってくる。家業を継ぎ、ワイン作りに励む妹のジュリエット(アナ・ジラルド)、そして別のドメーヌの婿養子となった弟のジェレミー(フランソワ・シビル)と兄弟3人の久しぶりの再会を果たすが、間もなく父親が亡くなってしまう。残された葡萄畑や相続などさまざまな課題に直面する中、父親が亡くなってから最初の葡萄の収穫時期を迎え、兄弟たちは自分たちなりのワインを作るため協力し合う。その一方で、長男は離婚問題、長女は醸造家としての方向性、次男は義父問題と、それぞれが打ち明けづらい悩みや問題を抱えていた。(映画.comより)


フランス・ブルゴーニュ地方のワイナリーを舞台に、ワイン醸造家だった父親の死をきっかけに10年ぶりに再会する三兄妹の悲喜こもごもが描かれたドラマです。
 
ジャンは妻との関係がこじれ、父の病気の知らせを口実に実家に帰ってきますが、そもそも彼が家を出た理由が父と意見が合わず逃げ出しているんですね。広い世界を見たいと思ったのも本当だけど、父親から愛されていないと思い込んでいたことも大きいようです。ジュリエットは醸造家として頑張っていますが、女性という理由で軽んじられることや、経営者として率いることへの自信のなさに不安を持っています。映画では三兄妹の子供時代のシーンが度々挿入されますが、その中で、彼女が一番確かな味覚を持っているように見えました。ジェレミーは義父の強圧的な態度と義母の過干渉に悩まされています。婿養子ゆえに自分の意見を抑え込んでフラストレーション溜まりまくりなんですね
 
音信不通だった兄の10年ぶりの帰宅に、ジュリエットは素直に喜びますが、ジェレミーは母親の葬儀の時に帰って来ず連絡もよこさなかった兄に不満をぶつけます。
ジャンのパートナーのアリシアの出産が重なったことが理由だったとわかり、わだかまりも徐々に解けていく三兄妹の姿に季節の移ろいの中でのドメーヌの暮らしがオーバーラップしていきます。大勢の人(季節労働者?)を雇って葡萄の収穫をする様や、醸造の過程なども観られてなかなか興味深かったです。(葡萄を大きな樽の中で素足で踏み踏みするシーンはちょっと衝撃的)収穫祭のバカ騒ぎや大勢の労働者が寝起きする様子もリアルなんだろうなぁ
 
父親の死で持ち上がる相続問題は、日本もフランスもあまり変わらないのね
全員の承諾がなければ土地も家屋も自由にできないのですが、オーストラリアで自分の葡萄畑を持つジャンは、借金の返済のために一括で売って税金を払うことを望みますが、弟妹は生まれ育った場所を売ることに反対します。
解決策が見つからないまま時は過ぎていきますが、狡いドメーヌの隣人や、ジェレミーの養父の強引な提案などがちょっとコミカルに挿入されているので、あまり重くならずに見られます。ジェレミー夫婦が、日曜の朝はゆっくり寝ていたいのに隣に住む義母が「朝食よ!」とドアを叩いて起こしにきて、赤ん坊が泣いてしまうとか、思わず失笑する場面も ジェレミーの妻は父親に似ず優しいキャラなのが好ましかったです。
枝を剪定したり、春になって若葉が出て伸びていく様子など、季節と共に映し出される葡萄畑の風景に、三兄妹それぞれの悩みや互いへの思いが重なって、郷愁を誘う幼い頃の思い出と家族の絆にほっこりさせられます。
 
家を出た後で出した手紙も無視され、父に嫌われていたと思い込んでいたジャンが、父が出せなかった手紙の返事を読んでその真意を知る場面も良かったです。
ジュリエットがジャンに内緒でアリシアと連絡を取ったことで、息子のベンを連れてやってきます。父親に似て口下手なジャンですが、この時アリシアと本音で会話ができて関係にも修復の兆しがみられるんですね ベッドシーンがあるためPG12になってるのかな。
良いワインが出来たことで、醸造家としての腕に自信を持ったジュリエットや、気弱な性格が災いして義父に逆らえずにいたジェレミーがそれまでの不満を一気にぶちまけたことで関係が変わるなど、それぞれの道が拓けていきます。
 
結局、ドメーヌはジュリエットとジェレミーがこれまで通りに続け、ジャンの相続分を地代として払ってもらうということで折り合いがつきます。相続税の方は在庫のワインと、オーストラリアでジャンが持つ在庫のワインも処分して支払うことで決着。って最初からそうすれば売るとか売らないとか悩まずに済んだじゃんと突っ込みたいところですが、アリシアの権利もあって、不仲だったから言い出せなかったということかな

家族にはマルセルというドメーヌで働く頼りになる使用人がいます。三兄妹を子供の頃から知っている(であろう)彼が、一歩引いた立場から見守っているのが印象的でした。
彼らの家の門を入ったところにブランコがあります。ジャン帰ってきたときにはロープだけ残っていて、そこから幼少期の光景が再現されるのですが、ジャンの息子のベンがやってきたときに新しく取り付けられ、新たな家族の思い出の象徴みたいな小道具になっていました。

あ~~ワイン飲みたくなってきた

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ワイルド・スピード スーパーコンボ

2019年08月02日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

 

2019年8月2日公開 アメリカ 136分

ロサンゼルスで娘と暮らす、ワイルドなスタイルで超重量級のクルマを操る追跡のプロ・元FBI特別捜査官ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)と、ロンドンで優雅な生活を送る、クールなスタイルで超高級なクルマを駆る規格外の元MI6エージェント・デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)。2人の元に、行方をくらませたMI6の女性エージェント・ハッティ(バネッサ・カービー)を保護して欲しいという政府の協力要請が入る。ハッティは全人類の半分を滅ぼす新型ウイルス兵器をテロ組織から奪還したが、組織を率いる、肉体改造を施された超人的な戦士・ブリクストンに急撃され、ウイルスと共に消息を絶った。しかも、彼女はショウの妹でもあるという。ホブスとショウは「こんな奴と誰が組むか!」と協力を拒否するが、ウイルスの回収を最優先するため、仕方なく手を組む事に…世界の命運はこの2人に託された!(公式HPより)


「ワイルド・スピード」シリーズ9作目です。今作では「ワイルド・スピード MEGA MAX」で初登場のホブスと、「ワイルド・スピード EURO MISSION」から参戦のショウがタッグを組み、いがみあいながらも、目の前に立ちふさがる強敵ブリクストンとの戦いが描かれています。個人的にはヴィン・ステイサム・ドウェインの三大マッチョスターが揃うこのシリーズが大好き (今回はヴィンちゃん不在なのが寂しいけど)

これまでのシリーズで二度の接点を持つ二人ですが、性格も生活スタイルも相反するコンビですから、顔を合わせれば悪態の応酬が始まります。ショウの妹を挟むことで更なる喧嘩の種が投入されているので、コントの様な二人の掛け合いが楽しめました。

でも、やるときはやる二人なので、ロンドン市街で繰り広げられるカーチェイスや銃撃戦、削岩機やトラックを駆使したロシアの大逃走劇、灼熱のサモアを舞台にホブス一家勢揃いの肉弾戦、車のコンボでヘリ撃墜と、舞台は世界中に広がる壮大なスケールのアクションが繰り広げられ、時間を忘れさせてくれます。

それにしても、ドム(ヴィン・ディーゼル)とブライアン(ポール・ウォーカー)のコンビに始まったシリーズは当初は敵だったこの二人が主役になるという変遷があり、ポールの事故死がなければまた物語も違っていたのかなぁと思うと感慨深いものがあります。

初めは敵役として登場した二人ですが、今作では互いの家族関係や過去についても描かれていて、犯罪者一家に育ち、家族思いという共通点があり、人間味を感じられるのが面白かったなぁ。母親に頭が上がらないというかマザコン気味の二人が可愛く見えてきました

エンドロールの中にも終わってからも次回作への布石が盛り込まれているので、最後の最後まで席は立たない方がよろしいかと


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする