杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

アンノウン

2012年05月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年5月7日公開 アメリカ/ドイツ 113分 

植物学者のマーティン・ハリス(リーアム・ニーソン)は、学会出席のため、妻のリズ(ジャニュアリー・ジョーンズ)と共にドイツのベルリンへやって来た。ホテルへ着いたところでアタッシュケースを空港に忘れて来た事に気付いたマーティンは、タクシーで空港へ引き返す途中事故に遭い、車ごと川に転落してしまう。4日後に意識を取り戻したマーティンは、宿泊先のホテルに向うが、彼を待っていたはずの妻はマーティンを“知らない人”と言い放ち、彼女の傍らにはマーティンを名乗る見ず知らずの男(エイダン・クイン)がいた。妻との新婚旅行の写真まで持つこの男に対し、所持品が携帯電話と一冊の本だけで警察にも身分を証明できず混乱と焦燥を募らせるマーティン。しかし、何者かに命を狙われたことから、この一件にうごめく陰謀の存在を確信する。彼を助けたタクシー運転手ジーナ(ダイアン・クルーガー)と、元秘密警察のユルゲン(ブルーノ・ガンツ)という2人の協力者を得て謎の解明に奔走するマーティンだが…。

交通事故から生還後、自分のアイデンティティを失った男が、身に迫る危険をかわしながら、謎の真相に迫るサスペンスアクションです。

そもそも、身に及ぶ危険を的確に回避するそのアクションが、およそ「博士」に似つかわしくないということに気付けば、マーティンの意外な正体が判明してもすんなり納得してしまうのよね。そして同時に、とっても優秀な「組織」にしては何とも間抜けた作戦に思えてくるのが残念だけど、そこまでの過程はけっこうスリリングなので全体としてはかな。

リズは少し複雑なキャラ設定です。マーティンを夫として愛していたのか、単なる相棒として見ていたのか、それでもそこに愛情があったのか・・・謎 もう少しその辺を深く描いてくれても良かったかなと思うけど、ヒロインはリズよりジーナだから仕方ないか

ボスニアで家族を惨殺され不法入国しているという設定のジーナは、事故の時にマーティンを救いだしたあと、警察沙汰を恐れて姿を消しますが、マーティンが彼女を探し出して協力を求めるのです。その過程で事件に巻き込まれた彼女は住む家と職を失いますが、代わりに「夫=自由」を得るという、ある意味ハッピーエンドなラストでした。何気にジーナのアクションもかなり過激です

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阪急電車 片道15分の奇跡

2012年05月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年4月29日公開 119分

宝塚~西宮北口間を約15分で走る、えんじ色の車体にレトロな内装の阪急今津線。後輩に婚約者を寝取られたOL翔子(中谷美紀)。恋人カツヤ(小柳友)のDVに悩む女子大生ミサ(戸田恵梨香)。息子夫婦との関係がぎくしゃくしている老婦人(宮本信子)。セレブ気取りの奥様たちとの付き合いに疲弊する平凡な主婦・伊藤(南果歩)。おしゃれな大学になかなか馴染めない地方出身の男女(勝地涼・谷村美月)。年上の会社員と付き合いながら、憧れの大学を諦めきれない女子高生(有村架純)。電車内という限られた空間で、それぞれの人生がほんのちょっと重なり合い、影響し合い、そして離れていく…数々の出会いが重なり、そこに生まれる小さな愛の奇跡。勇気を持って踏み出せば、いつもとは全く違う景色が、人生が、そして素敵な出会いがあなたを待っている。

「その出会いは偶然なんかじゃ……ない」「終着駅は、きっと笑顔。」
というキャッチコピーに素直に肯ける作品でした。

冒頭で、主なキャストたちの大まかな人物紹介エピソードが描かれます。これによって登場人物のキャラがある程度伝わるので、電車内での展開に自然に引きこまれていくのです。

後輩に婚約者を奪われた復讐に、純白のドレスで結婚式に乗り込んだ翔子。美人で仕事もできる翔子の強さが裏目に出て、妊娠を武器に守ってあげたいオーラで婚約者を寝取られてしまった悔しさを晴らしたい思いで出席したものの、結局は傷心を抱えて会場を後にします。翔子のような強さは私にはないけれど、弱さを武器にまんまと欲しい男を手に入れる後輩にはこんな方法を取っても許されるんじゃないかと思ってしまいました。披露宴会場で新婦の友人にすまして言うセリフが。事情を知っているだろう新郎の母の申し訳なさそうな、哀れむような会釈も印象に残りました。あれでいたたまれなくなったんだろうなぁ。

帰途の電車内で、孫(芦田愛菜)を連れた老婦人とふとしたことで会話(聞いてると涙がじわーっと出てきちゃうの)を交わしたことが、彼女を新しい生き方に誘います。
翔子が降りた後、そこに乗り合わせていたミサは、彼女の来ていたドレスの話題でカツヤを怒らせてしまいます。車内で大声で怒鳴る姿に老婦人の孫は怯えて泣きだし、それをまたカツヤが怒鳴る・・・これだけでも恋人への気持ちが萎えるよね~~さらに降りた駅のホームで突き飛ばされ膝をすりむいたミサに老婦人は絆創膏を貼りながら忠告を与えます。それがミサの転機となるのです。

ミサに影響を与えたもう一人は女子高生の悦子。ちょっとおバカだけどハートフルな社会人の彼を友人に自慢している姿がミサにはちょっぴり羨ましく輝いて見え、思わず彼女に「合格諦めずに頑張れ」ってエールを送っちゃいます。(TV放送では悦子と彼のエピソードがカットされていたので、ミサが何故悦子の悩みを知ってたのかわからなかったのですが、公式HP見てちょっと納得)

一方、軍オタで地方訛りの抜けない小坂と、同じく地方出身で垢抜けずに友人たちの中で浮いている美帆もこの電車内で言葉を交わすようになります。小坂に名前を聞かれ、権田原という苗字が恥ずかしくて答えられなかった美帆ですが、勇気を出してそのことを伝えたことから二人は友達としてスタートするのです。このエピソードはとても爽やかです

さて、話は数カ月先に飛び、ミサは友人の助けもあってDV男と別れることが出来ました。すっきりした顔の彼女が乗り合わせたのは、電車内で暴虐無人に振舞うオバタリアン軍団です。(彼女たちは前半部分でも同様に振舞っていましたが、後半更にヒートアップしてます)中の一人が胃通を訴えているのにこれから行くランチのことしか頭にない彼女たちにむかついたミサは彼女(伊藤)を介抱して途中下車します。伊藤はミサに、本当は高いランチを食べに行くより家族とラーメンを一緒に食べに行く方が自分は良いのだと話します。そこでミサは考え方の違う人たちと無理して付き合っても仕方ない。決めるのは自分だというアドバイスをするの。それは丁度老婦人からのバトンを受け継いだかのようです。
ミサと別れた後のすっきりした伊藤の晴れやかな笑顔が素敵です。

同じ頃、翔子の方も職場を変え転居した最寄駅のホームで、小学生の女の子がいじめに遭っているのを目撃します。女の子の毅然とした態度と機転の効いた言葉に昔の自分が重なり、思わず声をかけるの。前半でこの子は自宅へ帰る道を歩きながら「助けて」と心で叫んでいたのですが、それはういう理由だったのかとわかり、翔子が言葉をかけたことが、少女にはまさに救いとなったことがわかります。こんな風にさりげなく気遣うことのできる翔子ってやっぱり凄いな

そして彼女たちと入れ違いに例のオバタリアンたちに遭遇した老婦人は、孫の素直な正論(電車の中で五月蠅くしちゃいけないんだよ)に逆切れしたオバタリアンに遂に堪忍袋の緒が切れて、終点まで説教を始めるの。普段物静かな彼女の思わぬ迫力に溜飲が下がるけれど・・・多分効果ないのよね(^^;だからこそのオバタリアン。恐るべし!!でも一時的にでもやりこめた老婦人、あっぱれです

この老婦人は忙しい息子夫婦に代わり、頻繁に孫の面倒を見ているようですが、有難迷惑なデコパージュの贈り物をわざと嫁にしたり、辛辣に他人を批判する一方で、亡き夫を思い出させる青年との会話がきっかけで犬を再び飼い始めるような可愛らしいところもあります。
何より品があって凛とした佇まいが素敵。
私もこんなばーさんになりたいぞ
間違ってもオバタリアン軍団にはなるまいぞ・・・もう遅いか?

登場人物たちはどこにでもいそうな市井の人々です。ただ同じ電車に乗っただけの人々です。良い人もいれば、悪い人もいて、無邪気さと厚かましさも混在してる。だけど出会いはいつでも必然なんだって思えてきちゃう、そんな作品です。あぁ、劇場で観とけばよかったな

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マーラー 君に捧げるアダージョ

2012年05月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年4月30日公開 ドイツ・オーストリア 102分

世紀末ウィーンを代表する後期ロマン派の大作曲家であり、スター指揮者グスタフ・マーラー(ヨハネス・ジルバーシュナイダー)と、その19 歳年下の妻で、類まれな美貌と音楽的才能を持ち画家クリムトなど当時の芸術家たちを魅了したアルマ(バーバラ・ロマーナー)。二人は誰もが羨む理想の夫婦だったが、その年の差と、マーラーがアルマに作曲を禁じたことで生じた亀裂が、愛娘の死により顕在化する。アルマは療養先で知り合った5 歳年下のグロピウス(フリードリヒ・ミュッケ)に慰めを求め、その事実に困惑したマーラーは、休暇中の精神分析医フロイト( カール・マルコヴィクス)の元を訪れ、アルマとの愛と情熱、希望と苦悩、そして音楽に溢れた人生を語りはじめる…。

う~~ん・・・・つまらなかったぞ
アルマの母(エーファ・マッテス)やグスタフの妹(レナ・シュトルツェ)の証言を交えて物語が進むのだけど、芸術家夫婦ってわけわからんというのが正直な感想です。

大作曲家として既に有名だった夫が妻に求めたのはひたすら自分に奉仕することってのが、まずは現代感覚から合わないのです。最初はそれに従っていた妻が、次第に自己の渇望に気付いていくのは理解できるけど、夫を傷つけながらも彼を捨てられない理由も愛ゆえというのはちょっとこじつけっぽく感じてしまいました

映画は起きた事実を想像で描いているのだと最初に断りが出ますが、それならもう少し現代風にアレンジしても良かったんじゃないかな。何となく中途半端さが残りました。

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バッド・ティーチャー

2012年05月23日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年5月19日公開 アメリカ

お金も夢もない中学教師のエリザベス(キャメロン・ディアス)は、仕事ではなく、ただ玉の輿こそ女の幸せとばかりにお金持ちの結婚相手を探すことにのみ熱意を傾ける日々を送っている。ある日、彼女の勤める中学に代理教師のスコット(ジャスティン・ティンバーレイク)が赴任してくる。スコットがお金持ちだと知ったエリザベスは、スコットを振り向かせるために豊胸手術を画策。ありとあらゆる手段を使い、手術費用を荒稼ぎする。スコットを振り向かせるために時には突拍子もないアプローチをして猪突猛進に突っ走るエリザベスだが……。(goo映画より)


まずはオープニングで配給「日活」となっているのに気付き妙に納得してしまった 予告CMお馴染の洗車シーンはキュートなお色気たっぷり

玉の輿の婚約者をGETして教師生活にサヨナラの予定が、その真意を見抜かれて破談となり、再び学校へ戻ってきたエリザベス。もちろん教育への熱意なんてあるはずもなく、生徒への暴言は当たり前、授業はビデオで映画を見せるだけ、こっそり教壇の引き出しに隠した酒は飲むわ、校内でマリファナは吸うわとやりたい放題の“バッド・ティーチャー”です。

ところが代理教師でやってきたスコットが、イケメンで有名ブランド時計の創業者一族とわかった途端、第二の玉の輿目指して猛烈にアタックを開始します。彼好みの巨乳になろうと豊胸手術を決意するけれど、それには莫大な費用がかかるので、あの手この手で費用捻出を編み出すのですが、それも当然普通のやり方じゃないの。
教師の立場を利用して生徒の親へ個人授業料を請求したり、洗車デーの収益を着服したり・・犯罪行為でしょ、それ

ところがスコットは同僚のエイミー(ルーシー・パンチ)に惹かれていきます。
このエイミーのキャラもかなりエキセントリック。教育熱心だけど、空回り気味で生徒の受けはイマイチ、バッド・ティーチャーのエリザベスを敵対視して、彼女の素行を校長に告げ口したり何かと彼女の邪魔をするの。

エイミーに彼を取られると焦ったエリザベスは、共通テストで一位のクラス担任へ賞金が出る事を知り、俄然やる気を出します。無気力先生が一転スパルタ教師に早変わり。でも今までサボってたんだもの、生徒が急に成績上がるわきゃない。そこで彼女が立てた作戦はテストを盗み出すこと。おいおい!完全に犯罪じゃん

努力の甲斐あり、彼女のクラスは一位を獲得。賞金も手に入れて手術の予約もOK。ついでにエイミーへの仕返し(ちょっとHなシーンですが、元恋人同士でこういう撮影もなんか複雑じゃないのかなぁとは余計なお節介ですね)もしちゃうんですが、これがエイミーの復讐心に火を点ける結果に。

教師生命どころか犯罪者として刑務所行きの絶体絶命のピンチですが、エリザベスは慌てません。ちゃんと「保険」はかけてるんですね~~さすが!!
人を呪わば穴二つってわけで、バカを見るのはエイミーでした。(度々校長がエイミーに「2008年の二の舞をしたいのか」というのだけど、この意味が最後までわからなかったのが残念)

さて、ライバルを蹴落とし手術代も手に入れたのにエリザベスの心は晴れません。いつのまにか彼女の心は外見だけのスコットより、常に自分を見守ってくれていた体育教師(=貧乏)のラッセル(ジェースン・シーゲル)に惹かれていたんですね

そしてまた新学期。エリザベスのお仕事は・・・生活指導~~これって笑える

ラブコメの女王キャメロン健在の作品でした。胸元の大きく開いたトップスにミニスカート、ハイヒール姿で、なりふり構わず欲望に向かって突っ走るエリザベスは教育者としては失格の烙印を押されて当然ですが、女性としてはあっぱれ!!です。
ま、自分の子供の担任だったらこっちがキレるけどね

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ブルー 初めての空へ

2012年05月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年製作 アメリカ 劇場未公開 96分

ブラジル・リオで密猟者に捕まり、アメリカ・ミネソタに連れてこられたコンゴウインコの雛が、トラックから振り落とされたところをリンダという女の子に助けられ“ブルー”と名付けられ育てられた。時は過ぎ、成鳥となったブルー(声:ジェシー・アイゼンバーグ)は、飛べないけれど、リンダ(レスリー・マン)と一緒に小さな田舎町の本屋で仲良く暮らしていた。ある日、鳥類学者チュリオ(ロドリゴ・サントロ)が二人のもとを訪れ、ブルーが絶滅種のインコであり、種の保存のために雌とつがわせたいと申し出る。リンダは悩んだ結果、ブルーを連れてリオへ行くことを決意する。リオの環境保全センターでブルーは同じ種のジュエル(アン・ハサウェイ)に出会い、一瞬で恋に落ちるが、ジュエルは気の強い野性の鳥で何とか逃げ出そうとしていた。その夜、ブルーとジュエルは何者かに捕まり鎖で繋がれてしまう。彼らの逃げるための冒険が始まった・・・。


3Dアニメですが、レンタルDVDなので普通に2D再生で鑑賞しました。
原題の『RIO』は、リオ・デ・ジャネイロのことで、南国ブラジルの美しい自然やカラフルな鳥たち、沸き立つサンバのリズム、カーニバルの熱気も忠実に華やかに描かれていて見ているだけでも楽しくなってきます。
『アイス・エイジ』シリーズのスタッフ製作ということで、レンタルDVDには「アイス・エイジ」のマスコットキャラ・スクラットの短編も収められていました。

巣から落ちて密猟者に捕まったブルーはその記憶がトラウマとなったのか飛べない鳥になっていました。でも優しい飼い主のリンダと幸せに暮らしていたのです。そんな彼が突然連れてこられたのは故郷リオ。でも人間との暮らしの長い彼には広い空よりカゴの中の方が快適なの。そんなブルーにジュエルは落胆を隠せません。再び密猟者の一味に捕まった二羽ですが、ブルーはリンダの元に戻りたい一心で、そしてジュエルは自由を得るために逃げ出します。

その逃走の冒険の中で、徐々に互いを意識し、大事な相手になっていくのです。何度も飛ぼうとしては、失敗してしまうブルーが、ジュエルを助けたい一心で遂に飛べるようになるというストーリーはありふれてはいるけれどやはり感動シーンではあります。

彼らを助ける仲間たちも個性的です。子沢山で気のいいラファエル(ジョージ・ロペス)、陽気なニコ(ジェイミー・フォックス)とペドロ(ウィル・アイ・アム)、鎖を切る手伝いをしてくれたブルドッグのルイズ(トレーシー・モーガン)たちが賑やかに物語を膨らませてくれます。

孤児のフェルナンドは、お金のために二羽を攫う手伝いをしますが、後悔してリンダたちに手を貸します。貧しいリオの現状にも目を向けながら、ちゃんと救われる結末は、安心して子供と鑑賞できるでしょう。

悪役は密猟者のマルセルと手下の二人と、キバタンのナイジェル(ジェマイン・クレメント)。ナイジェルは、スター街道からの転落人生らしい。元々性格悪そうに見えたけどね~~。手下の二人がお間抜けなのに比べ、執拗に二羽を追い詰めていくナイジェルの悪さが際立つけれど、お子様向けということで、最後は笑えるオチが待っていました。ナイジェルが手先に使ったサル(マーモセット?)たちも面白かったな

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THE BAD

2012年05月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年製作 アメリカ 劇場未公開 90分

美術館の警備員として人生を捧げて来たロジャー(クリストファー・ウォーケン)とチャーリー(モーガン・フリーマン)。ところが新任の館長によって館内の展示物が一新されることになり、2人の愛する絵画がデンマークへ送られる事を知り愕然とする。ロジャーはデンマークへ引っ越す事を考えるが、もちろん妻に一笑に付される。しかし、同じ悩みを抱えるチャーリーが自分たちの絵画を守るため盗み出そうと言い出した。初めはそんな大胆な行動は無理だと本気で取り合わなかったロジャーだが、同じように彫刻像に思い入れのある夜警担当ジョージ(ウィリアム・H・メイシー)の存在を知り計画に誘ったことで、現実味を帯びてくる。3人は、美術館のセキュリティーを破るための作戦会議を開き、予行練習を行い、それぞれの贋作を作り、搬出作業当日の勤務に志願する。そして搬出作業の当日、計画は実行され、本物と贋作のすり替えの手筈は整ったのだが・・・。

大物俳優3人がこんなコメディに出てるとは知りませんでした。
彼らが真面目に演じるほどに口元に浮かぶ笑いを抑えられないよ~~。

愛する者(作品)を守るため、必死な彼らですが、何といっても彫刻な自称帰還兵のジョージの行動が可笑し過ぎです。一体感を持ちたいためか全裸で彫刻と同じポーズをするという趣味を持つ彼は、「そんなことしてる場合」じゃない時にもしっかり全裸でポーズ!!
案の定ピンチを招くのよね~~。おまけにロジャーが箱を間違えて彼を助け損なった時の情けない表情ったら・・・

そんなに安易に盗み出せるわけがないのは承知の上で楽しまなければなりません。
そして贋作が見破られずにハッピーエンドってのもフィクションだからこそ。
でもこのご老人たちが実に幸せそうなんだな~~。
一途に愛されて芸術作品たちも、美術館でお飾りになってるよりよほど幸せかもと思わせられちゃったわ。

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幸せの教室

2012年05月16日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年5月11日公開 アメリカ 99分

学歴を理由に、長年勤めていたスーパーをリストラされたラリー・クラウン(トム・ハンクス)は、再就職のためのスキルを身につけようと、短期大学に入学する。スピーチの授業を担当する教師メルセデス・テイノー(ジュリア・ロバーツ)は、いつも仏頂面で不機嫌だった。彼女は結婚生活の破綻からアルコールに走り、教師としての情熱を失っていたのだ。初めてのキャンパスで年齢も境遇も違う様々な人々と出会い、充実した日々を送り始めるラリーと、彼との交流を通して再び自分と向き合い始めるメルセデス。果たして2人はこの教室で、幸せな未来を見つけることが出来るのか……?

トム・ハンクスとジュリア・ロバーツ。大物共演で安定感のある物語ですが、若者受けする作品とは言い難いかも(^^; 中年世代向けのヒューマンラブコメです。

ラリーが店主から首を言い渡される場面にいた、かつての同僚が嫌な奴。おそらく仕事ではラリーの方が実力者だけど、大学出という免罪符を振り回してラリーの不幸を嘲笑うの。でもちゃんと後半でどんでん返しが用意されてます。「明日は我が身」という言葉をこんなに爽快感を持って楽しめるなんてな演出。

バツイチで妻の分の家のローンも残っているラリーは職探しに躍起になるけれど、不況の折、学歴のない彼をどこも雇ってくれません。そこで隣人のラマー(セドリック・ジ・エンターテーナー)に学歴を身につけるようアドバイスされ、短大に入学したラリー(数講座だけの日本ならさしずめ「市民講座」のようなニュアンスなのかしら?)は、学生部長から「スピーチ」と「経済学」を薦められます。

「スピーチ」の女教師はやる気のなさ気な態度ですが、向学心に燃えるラリーはお構いなしに学生ライフを満喫していきます。同じ講座の学生たちも彼がおじさんだからと揶揄したり無視することなく自然に接しています。(日本の夜学みたいな感じかしら?)ガソリン代節約のために車をスクーターに換えて通学するラリーは、「経済学」の授業で一緒になったタリア(ググ・バサ=ロー)に誘われ、彼女の恋人デルの率いるスクーター仲間に入ります。一人だけ世代の違うラリーが溶け込めるのか?と思うのは要らぬお節介で、ヘアスタイルやファッション、インテリアまでセンス良く改造されて、イケてるオヤジに大変身!ラリーの方も彼らをラマーのガレッジセールや海軍時代の仲間フランクのレストランに連れて行って互いに刺激を受け合っている様子が楽しく描かれていきます。また、それが縁でフランクの店で働くことも決まり、どんどん運気向上していくの

一方メルセデスの方は、売れない作家の夫ディーンが、隠れてアダルトサイトばかり見ているのが不満。結婚生活もうまくいってなくてストレスを酒で紛らわせていましたが、ある晩遂に夫の本音(巨乳好きという理由が笑えるが)を聞いてしまい遂にプッツン!!車を降りてバス停に佇む彼女を見かけたタニアがラリーに家まで送るようアドバイスしたことから、互いに気になる存在になっていくという、お決まりのコース。
(確かにディーンは良い夫とは言えないですが、メルセデスにも欠点が多々あるように見受けられて、一方的に追い出されてしまうのは何だかな~ほんの少しだけ同情しちゃったよ)
そしてまたまた定番の誤解と嫉妬。でも結局は・・・という展開です。

恋愛以外に面白かったのは経済学のマツタニ教授とのエピソード。講義は自分の著書が教材で、授業中の携帯は取り上げ、寒いジョークで学生を引かせるなど、いかにも日本人という設定キャラが笑えます。(もちろん英語で講義してますが)しかし、真面目に講義を受けたラリーは、家のローンから解放され新しい一歩を踏み出す知恵を学びました。

そして「スピーチ」のクラスの最終試験でのラリーのスピーチは他の学生のテーマもさりげなく入れながらの堂々たる内容でしかもけっこう感動的なの。

タニアとメルセデス、二人の女性によって変わっていくラリーの姿は、ある意味「中年の星」です 前向きさと向学心って大事よね」
登場人物が基本的に「良い人」ばかりなのも安心して楽しめました。


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緑の毒

2012年05月14日 | 
桐野 夏生 (著)  角川書店(発行)

開業医の川辺康之は妻の浮気の腹いせに、寝ている女性の部屋に忍び込み、スタンガンと薬で昏睡させ、レイプをし快楽を味わうという所業を繰り返していた。川辺にレイプされた被害者の一人が犯罪被害者のネット掲示板に書き込みをしたのをきっかけに、被害女性たちが次々と名乗り出始め、自分たちの記憶を頼りに犯人探しを始める。彼女たちは、警察に被害届を出すより、自分たちで復讐したいと考えるようになり結束していく。(Wikipediaより)

粘着質で自分のことしか考えない男が起こす事件と、その被害者たちが団結して男に復讐をする話です。
ちなみに題名はシェイクスピアの『オセロ』に出てくる
「嫉妬はこわいものでありますな、閣下。そいつは緑色の目をした怪物で、人の心を餌食にして、苦しめるやつです。」(本文序章より)からきているようです。

川辺康之の年齢は39歳。不惑の40歳を前にして、大いに不満たらたらのガキな性格破綻者。これが開業医だというのだから呆れます。洋服マニアで趣味はヴィンテージスニーカーの収集。事件を起こす時も黒ずくめだけどブランドもので身を固め、ビンテージスニーカーを履いて行くというおバカさが哂えます。

妻のカオルは病院勤務医。自由が好きだから夫の医院なんぞに縛られたくないし、医者の世界では開業医は最下位ランクで勤務医の方が上位なんだってさ。で、自分の方が偉いと思ったのか、元々我儘気ままな性格なのか、夫が惚れた弱みで甘やかしたせいなのか、助長しまくりで救命救急の玉木医師と不倫中。しかも玉木にも妻子があるときてはもう何やってんだか・・。
玉木についても救命救急の敏腕主任医師という立場に陶酔する人物として描かれていて、ちょっと他の作家の他の作品に登場する医師へのあてこすりのようにも思えたのは気のせい?よね

妻の浮気に気付いた時から、川辺の嫉妬心はとんでもない行動に彼を導きました。スタンガンと鎮静剤のアンプルを用意して、独り暮らしの若い女性の部屋へ忍び込むレイプ犯となったのです。彼の犯行は妻が浮気相手と逢っている水曜の夜というのがまたおぞましい。

被害者は黙して語らずとタカをくくっている川辺でしたが、レイプに遭った被害女性の一人が、ネットの犯罪被害サイトに書きこんだことがきっかけとなって、被害者たちが連絡を取り合い、犯人に対して復讐の刃を向けるのです。その方法も川辺をネットに晒すというのだからまさに現代的なやり方ですね。

彼女たちは妻のカオルに対しても憤怒をぶつけますが、カオルにとっては夫と別れる良い口実になっただけに見えて何だか徒労を感じてしまいました。夫へ向けるひとかけらの憐憫の情すら彼女の傲慢さのような気がしてくるんだもの。

「邪心小説」の謳い文句通り、人間の醜く邪悪な感情に踏み込んで書かれた小説です。
川辺が持つコンプレックスが彼を嫉妬に駆りたて、プライドが破滅へ追い込んだわけですが、その幼稚な思考回路こそが恐ろしいと感じました。

そもそも、この小説、なんで読もうと思ったんだっけ?

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太陽の王と月の妖獣 上・下

2012年05月13日 | 
ヴォンダ・N. マッキンタイア (著) 幹 遙子 (翻訳)  ハヤカワ文庫

1693年、栄耀栄華をきわめる太陽王ルイ14世の住むヴェルサイユ宮殿に、伝説の怪物である海の妖獣が運びこまれた。捕まえたのは、イエズス会士で自然哲学者のイヴ・ドラクロワ。国王の命をうけ、遠洋へ探検の旅に出て、雌の海の妖獣を生け捕りにしてきたのだ。妖獣は宮殿の庭にあるアポロンの泉水の檻に入れられ、その世話を宮殿で侍女をつとめるイヴの妹、マリー=ジョゼフがすることになったのだが…(上巻)

警戒心が強かった海の妖獣は、気だてのいいマリー=ジョゼフにようやく心をひらくようになった。やがてマリー=ジョゼフは、海の妖獣が高度の知性をもっていることに気づく。だが、不死の霊薬になるといわれる妖獣は、まもなく開かれるルイ14世の即位50周年記念の祝宴の料理に供されることになっていた!マリー=ジョゼフは、妖獣が殺されるのを命がけで阻止しようとするが…波爛万丈の歴史改変SF。(下巻)

中世フランスの宮廷を舞台に、太陽王と謳われるルイ14世の命を受けた修道士イヴが捕まえた妖獣を巡る物語です。いわば、SF歴史ファンタジーといったところでしょうか。登場する妖獣は人魚のような存在ですが、ジュゴンとは明らかに違う「海の人」です。普通人魚は観目麗しい上半身として描かれるものですが、ここではかなり醜い容貌とされていました。

当時の宮廷女性はただ華やかに優雅に振舞うことだけを要求され、知性の追求は、宗教的に異端でした。そんな時代にあってイヴの妹であるマリーはかなり現代的な探究心と向学心を持つ女性として登場します。逆に男女のことについてはかなり疎くてそのバランスが面白いかも。

王の本当の目的は妖獣を食べることで永遠の命を得ることのようです。マリーも最初は単なる「獣」として接するのですが、やがて妖獣が人間と同じように思考を持つ生き物であることに気付きます。彼女たちの会話は、妖獣の方がマリーに対して音→映像として思念を送り込むことで成立していますが、他の者には理解できず、マリーの口を通して語られる出来事は単にマリーの作り話と捉えられてしまいます。ただ当事者だった兄のイヴと、無神論者のリュシアン(クレティアン伯爵:クレティアンとはキリスト教という意味があるそうで、そのシニカルさも楽しい)だけはマリーの言葉を信じるようになるのですが・・。

マリーの必死の命乞いで、王は妖獣が差しだす海に眠る難破船の宝と引き換えに助命を聞き入れますが、結局宝が見つかっても彼女を自由の身にはしません。そりゃ、永遠の命が目的なんだから当然だよな~~。逃がそうとした三人も捕まって罰を受けることになります。
しかし、二度目の「宝探し」の時に妖獣は海に逃れることができ、お宝いっぱい手に入れた王の与えた罰は、身分や財産は剥奪されたものの、当人たちにはとても幸せな結果となるのでした。

一介の修道僧とその妹がどうして華やかな宮廷人に立ち混じることが出来たのかは、イヴが王の隠し子の一人だったことや、兄妹の母への愛からというのは、いかにもかの王ならと思わせてしまいます。更にリュシアン自身も亡き王妃の隠し子という立場に至っては、宮廷人の貞操感はどこに置き忘れたのやらと嘆かわしいけれど・・。

物語は恋愛にうぶだったマリーが女性として成長する様も描いています。
打算と冷酷な本性を隠している王弟の愛人ロレーヌの騎士への当初の憧れは、マリーへ行われた瀉血という当時の無茶な治療に彼が加担したことで化けの皮が剥がれ、王弟の息子であるシャルトル公の好色さにも気付いていきます。

逆に外見は侏儒(体の小さい人)ですが、リュシアン伯爵はそれ以外では完璧な宮廷人であり、王の忠実な臣下であり、科学に対しても相応の知識を有している人物だということが分かってきて、マリーは彼に恋するんですねカトリック信者のマリーにとっては無神論者であるリュシアンを受け入れることも大きな試練と言えそうですが、愛の力って凄いのねうんうん、人間外見じゃないよ!と言いたいところですが、伯爵の外見はなかなかのハンサムだったりします
「氷と炎の歌」シリーズに登場するティリオンも小人でその外見から嫌われ蔑まれますが、心はとても優しい好人物。この物語のリュシアンと通じるものがあるなぁ。

王が平和のために手を結ぶローマ法王及びカトリックの修道院の尼僧たちはまさに前近代的な人物として描かれ、印象はかなり悪いのに比べ、若い頃放蕩三昧だった王は逆に好意的な人物像に刷りかえられているのが若干気になるけれど、結末はいかにもファンタジックでハッピーエンドなので・・ま、いっか~
リュシアンが城の屋根の上でマリーに身の上を打ち明ける場面が好きです。また、彼が貸したアラブ種の馬のザキとマリーとの信頼と愛情のつながりも好感があります。

宮廷人たちのファッションや生活についての細々とした描写もその豪華さを想像して楽しかったです。

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アーサーとふたつの世界の決戦

2012年05月13日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年製作 フランス 102分 日本未公開

魔王マルタザール(ルー・リード)はアーサー(フレディ・ハイモア)をミニモイの国に閉じ込め、人間界を乗っ取ろうとやってきた。 整形手術で人間の顔に変身したマルタザールは、アーサーの祖父母を騙して家に潜り込み、アーサーが正常の大きさに戻るためのクスリを奪おうと探す。ミニチュアサイズのアーサー、セレニア(セレーナ・ゴメス)とベタメッシュ(ダグ・ランド)が何とか家にたどり着いた時、マルタザールは薬ビンを手に入れ湖へ向かっていた・・。アーサーたちはもう一つの方法を得るために蜂の巣へ向かう。巨大蚊で襲ってくるマルタザールに、女王蜂から魔法の蜜を分けてもらい、正常の大きさに戻ったアーサーが挑み最終決戦が始まった。

シリーズ最終作なのに日本では未公開。もちろん前2作を観ておくとキャラの相関図が頭にすんなり入ってきます。今回はマルタザールの息子のダルコスがアーサーたちと和解し味方に加わるところが面白いです。ダルコスとは、初めはアーサーの部屋のミニカーや電車といった玩具たちを駆使して戦うのですが、ダルコスが本で潰されるというピンチを三人が救ったことで、友情が芽生えるの。


人間界にやってきたマルタザールがマントや仮面を被ると・・ありゃりゃ・・ベイダー卿の出来上がりぃという遊び心も入っていて楽しいよ。アーサーの祖母であるデイジーの作るチョコパイをマルタザールが食べたがっているというのも意外性がありましたが、アーサーと父親の関係が修復される結末に対し、マルタザールを説得しようとしたダルコスが父親に裏切られてしまうというのは何だか悲しいなぁ。

ベタメッシュのドジ加減もセレニアとの恋模様も微笑ましく、まさにファミリー向け作品なのでした

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光のほうへ

2012年05月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2010年6月4日公開 デンマーク 114分

アルコール依存症の母親に代わり、赤ん坊の弟の面倒を見る兄弟。二人は、店から盗んだミルクを与え、タバコをふかしながら赤ん坊をあやし、電話帳からとった名前を赤ん坊につけて洗礼の真似をする。しかしある日、赤ん坊は突然死んでしまう。
大人になった兄ニック(ヤコブ・セーダーグレン)は恋人のアナと別れ、自暴自棄になって人を殴り、最近まで刑務所に入っていた。臨時宿泊施設で暮らしながら、酒と肉体を鍛えることで時間を埋めていたニックは、アナの兄イヴァン(モーテン・ローセ)と街で偶然再会する。イヴァンはニックを、今は結婚して子供もいるアナのところへ案内する。アナと目が合うと、ニックは逃げるように立ち去る。その夜、ニックはイヴァンに、アナが自分たちの子供を妊娠したが中絶し、そのままいなくなったことを打ち明ける。一方、弟(ペーター・プラウボー)は妻を交通事故で亡くし、幼い息子マーティンをひとりで育てていた。生活保護を受けようとするが、ソーシャルワーカーにこのままでは子供と引き放さなければならないと言われ、断ってしまう。しかし彼はクスリを止められずにいた。息子をリビングに残し、バスルームで慣れた手つきでクスリを打つ弟。母親の死をきっかけに教会で再会した兄は、弟を心配し、母親の遺産を全て譲ろうとするが・・・。

子供時代の兄弟が、育児放棄した母親の代わりに幼い赤ん坊を必死で彼らなりに世話をしている姿が胸に痛いです。特に名前も付けられていない弟に洗礼名を与えようと電話帳で名前を探すシーンや洗礼の真似ごとのシーンが印象深いの。
たまたま母親の酒を二人で飲んで騒いで寝てしまった翌日、赤ん坊はもう息をしていませんでした。これは絶対トラウマになるね~~と思ってたら場面が代わり大人になった兄弟の生活の描写となります。

兄は酒と暴力、弟はヤク中。過去から逃れようと苦しみ、別々に生きていながらも互いを思いやるところは子供時代と変わっていないけれど、やっぱり底辺から這いあがれない彼らの人生が切ないです。
弟は妻に先立たれて息子と二人で暮らしているけれど、クスリの売人となって警察に捕まってしまいます。同じ頃、イヴァンを庇い誤認逮捕された兄と収監先で偶然短い会話を交わすのですが、そのあとで弟は自殺してしまうのです。
父親として息子を守りたいと思いながらもクスリと手を切ることができない弟の姿が哀れでした。息子を想う気持ちの強さが逆に彼を破滅に追い込んでいくようで・・・。映画の中でははっきり語られていませんが、おそらく亡くなった彼らの弟に電話帳からとってつけた名前がマーティンだったのだと思います。

遺されたマーティンは、ニックと暮らすことになるのかしら?どうぞ今度は失敗しないで、光のほうへ歩いて行ってと祈る気持ちになるラストでした。

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アーティスト

2012年05月09日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年4月7日公開 フランス 101分

1927年のハリウッドで、サイレント映画のスターとして君臨していたジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、新作のオーデションで新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)と出会う。ジョージの「女優には目立つ特徴が必要」というアドバイスをきっかけにヒロインを務めるほどになったペピーは、トーキー映画のスターへと駆け上がる。一方ジョージは、かたくなにサイレントにこだわっていたが、自主製作の作品がこけて、元々うまくいってなかった妻とは離婚、忠実な運転手(ジェームズ・クロムウェル)の給料も払えなくなる。酒に溺れ、絶望のあまりフィルムに火を放って火事になり病院に運ばれたジョージを自分の屋敷に連れてきて介抱するペピー。彼女の献身的な介護で元気を取り戻していくジョージだったが、ある時、競売にかけられた自分の私物がペピーの屋敷にあるのを知り・・・。


耳の不調で音の大きな活劇は負担なので、映画館から遠ざかっていたけれど、これは絶対スクリーンで観たかった
無声映画で、今年のアカデミー賞を5部門でさらったことでも話題ですが、登場人物たちの思いが仕草や表情で自然に伝わってくる上質な作品です。
私はサイレント作品はDVDでも殆ど観たことがないですが、そのシンプルさが郷愁を誘いスクリーンに惹きつけられました。

芸術家(アーティスト)の誇りゆえに時代から取り残され凋落していくスター俳優ジョージと彼のファンだったペピーの物語です。トーキーという新時代の波に乗ってどんどんスター街道を進む彼女ですが、心の中にはいつも自分を引き上げてくれた恩人のジョージがいました。

逆に、火事で運ばれたジョージが大事に胸に抱えて離さなかったフィルムはあのオーディションの時のものという事実の中に彼のペピーへの想いがこめられています。

落ちぶれ、世間に忘れられていくジョージを気にかけ、裏で色々援助の手を差し伸べていたペピーですが、それを彼に知られてしまいます。(競売された家具をペピーが手を回して買っていたことに気付いてしまうの)ジョージの誇りは傷ついて同情より死を願いますが、その場にペピーが駆けつけて彼への想いを語るシーンは・・わかっているけど、単純だけど・・泣かされるのよねそこへアギーの演技で一瞬の後に笑顔になれるのもでした。さすが「金の首輪賞」に見合う演技力~

主演のデュジャルダンが、まさに往年のスターオーラを出し輝いています。
彼とペピーが出会ったオーディションのダンスも楽しいけれど、何よりラストで踊るタップダンスが最高のショーでした。また、ペピーがジョージのタキシードに袖を通してのパントマイムのシーンも切ない想いを代弁していて良かったです。

映画で使われる音楽も当時の雰囲気にあっていて物語を邪魔することなく盛り上げています。


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ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路

2012年05月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年4月9日公開 フランス 120分

18世紀半ば、ヨーロッパ中を演奏旅行で回るモーツァルト一家。11歳のヴォルフガング(ダヴィッド・モロー)は神童と称され、父レオポルド(マルク・バルヘ)に溺愛されていた。4歳年上の姉ナンネル(マリー・フェレ)も音楽の才能に恵まれていたが、バイオリンの演奏も作曲も女には無理だと決めつける父に禁じられ、弟の伴奏者に徹していた。それでも、仏国王の娘ルイーズ(リザ・フェレ)や、ヴェルサイユ宮殿での王太子(クロヴィス・フアン)との出会いが、ナンネルの作曲家への夢と情熱に火をつけるのだった。

女がプロとしての道を歩むことなど認められない封建社会に生まれ、天賦の音楽の才に恵まれた弟を持ったこと。この二つの要素がナンネルの持つ才能を歴史の裏に埋もれさせてしまったのでしょうか?この映画を観るまで彼女の存在すら知らなかった私です。

しかし、邦題にある「哀しみの旅路」は内容に少々相応しくないように思えます。何故なら、ナンネルの少女時代は決して哀しみだけではなかったと思うからです。物語は少女から大人の女性になっていくナンネルの一瞬の輝きを鮮やかに切り取って見せてくれます。

弟を音楽家として売り込むため、一家は各国の宮廷を巡り演奏旅行を続けます。何日も馬車に揺られる放浪の生活は体の負担も大きく辛い旅でもありました。
そのさなか、馬車の車軸の損傷で身を寄せた修道院で、枢機卿の策略によって幽閉されていたフランス王の娘たちと知り合います。中でも、一番末のルイーズとナンネルは特に親しくなり、身分を超えた友情を感じるのです。

ルイーズの頼みで、宮廷にいる彼女の想い人への手紙を託されたナンネルは、手引きしてくれたイザベル(サロメ・ステヴナン)の手配で男装して手紙を届け、その際、王太子と出会います。バイオリンの腕や歌を気に入られた彼女は、作曲の才能も王太子に見出され、自分が女性であると告白した後は更に気持ちを通わせていくのですが、放蕩の父王のようにはなるまいと決意していた王太子は、ナンネルと友情以上の感情を持つことを抑えてしまいます。

一方ナンネルの方は娘らしい思慕の情を王太子に持ち、彼のいるパリを去りがたく、家族と離れてまでパリに戻り、音楽教師をしながら王太子の依頼で再び作曲をします。自分の曲が宮廷楽団によって演奏されるシーンは、ナンネルにとって人生で一番幸せな時だったでしょう。

しかしやはり女性が音楽家として成功するのは難しく、また王太子が彼女を遠ざけたため、失意のままナンネルは家族の元に帰り、二度と作曲はせずその生涯を弟と家族に捧げたと綴られ物語は終わります。

まさに放蕩の限りを尽くした父王とは逆に、王太子もルイーズもかなり敬虔な信仰を持っていたようで、いや、あのような父だからこそ神に救いを求める他なかったというべきか・・。
でもナンネルに対するあの扱いは酷いなぁと
傷ついた彼女をいつも温かく迎え、優しく諭す母アンナ・マリア(デルフィーヌ・シュイヨー)の存在は地味ながらとても大きかったと思います。

監督はルネ・フェレ。実の娘マリーとリザがそれぞれナンネルとルイーズを演じています。
二人とも設定年齢に似合わぬ聡明で大人な印象を与えます。一方神童であるヴォルフガングはこの作品では単なる脇役に過ぎず、やんちゃな弟の域を出ません。もちろん彼については他に沢山の本や映画が描かれているし、今回は姉の物語だもんね

特にルイーズは、想い人が異母兄だったという事実も(表面上は)淡々と受け入れ、自身の品格を損なうことなく、ひたすら神を信じ修道女としての生き方を選ぶという善なる女性として描かれているのです。しかし、「もし私たちが男に生まれていたら、私は政治の世界で、あなた(ナンネル)は音楽の世界で名を成したでしょう」というルイーズの言葉にこそ、彼女の生来の強さと願いが垣間見えて、このシーンが実は一番心に残りました。

もちろん、重厚なヴェルサイユ宮殿を舞台に優雅なバロック音楽を楽しむという点でも美しい作品といえるでしょう。

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赤の銃士 狙われた王位とルイ14世の陰謀

2012年05月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年製作 スペイン 119分 日本未公開

スペインの人気TVシリーズの映画化。
17世紀を舞台に、スペイン王位の転覆を狙った陰謀を阻止するため、剣術に長けた覆面のヒーロー“赤の銃士”が立ち上がり、最強の暗殺者と戦いを繰り広げるアドベンチャーものです。

実は・・フランスの三銃士関係と間違えて借りちゃったんだよな~~。
冒頭、悪漢に囲まれ窮地に陥った金髪美女を助けるヒーローのいでたちが、黒ずくめの服装に顔を隠し、赤い房飾りのついた長剣を持ってるのを見て「忍者か?」と思ってしまったぞ。

主人公のゴンザロは教師だけれど、“赤の銃士”と呼ばれる白馬に乗った正義の騎士。正体を知っているのは彼の親族であり従者のような役割をしているサトゥールだけです。若く見えて美男だけど、どう見ても10代の息子・アロンソがいたり、歌の上手い美女マルゲリータ(どうやら妹らしい)が出てきたり、元のドラマを知らない身には話がよく見えないところもありました。ゴンザロの格好が忍者風なのは、彼が東洋で修業をしたという設定があるらしいのは後で検索して知りました。

スペインで行われることになった国際平和会議に乗じて、国王フェリペ4世を亡き者にしようという陰謀が企てられます。フランス、イングランドの国王にポルトガルの代表、ローマ法王まで加わる国際会議を好機と捉えたフランス国王ルイ14世とスペインの枢機卿の策略で、ルイの銃士隊長によって息子を誘拐されたルクレシア公爵夫人を利用して国王を暗殺しようとするのです。侯爵夫人はヘルナン警備隊長に助けを求め、二人は誘拐した国王と息子を交換するのでした。(侯爵夫人と国王とヘルナンの男女関係についてもイマイチわらかんなぁ

その謀略に巻き込まれ暗殺者に命を狙われたゴンザロを救ったのは何も知らないアロンソでしたが、火薬により失明してしまい、激しく後悔したゴンザロは「赤の銃士」を捨てることを決意し、愛刀を湖に沈めてしまいます。

その頃、誘拐された国王が連れて行かれた要塞には謎の金髪美女の父も囚われていました。彼は王の重臣であり、この陰謀を聞き知ったために捕えられていたのでした。
国の危機を説かれ、その気になったゴンザロは美女と共に要塞に向かい、彼女の父と王を救出します。

一方、町に残った男たち(兵士は騙されておびき出され皆殺しになっていました)はマルゲリータの恋人ホアンの指揮の下、力を合わせ敵兵士から町を守ろうと戦います。
もちろん素人が戦いのプロである各国の兵士に勝てるわけはなく、殺されたり捕まったりしてしまうのですが、そこに救出された王により知らせがもたらされ、失明した筈のアロンソの目も見えるようになり・・というハッピーエンドを迎えます。

本筋の他に、修道僧に間違われて振り回される道化役の存在があったり、美女の沐浴シーンや奴隷の装束、会話に下ネタがしばしば出てきたりと、くだけてコメディタッチなところもあり、正義一辺倒でないのも楽しめます。 また悪役俳優もけっこう美男が揃っているのも嬉しいな

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吾郎とゴロー

2012年05月05日 | 
川渕圭一(著) 幻冬舎文庫

一流医大を出て、エリートコースを順調に歩んできた吾郎。だが、研修先は医療設備が不十分で、窓際ドクターばかりが働くボロボロの分院だった。深夜の中庭でひとり愚痴をこぼしていた吾郎は、ゴローという口の悪い患者と出会う。彼は吾郎の診療にも文句ばかりつけるが。訳あり患者からエリート研修医への、ちょっぴり切ないひと夏限りの課外授業。(「BOOK」データベースより)

主人公である吾朗はエリート大の医学部でも優秀な成績を修めた将来有望な研修医(と自分で思い込んでいます)。それなのに配属されたのは本院ではなくおんぼろの三年後には閉鎖が決まっている分院で、おまけに他の研修医は気が弱く技術の低い哲也や要領の悪い皆川、お喋りなのり子という自分より遥かに劣った者ばかり。(この物語でも脱サラして医者になった37歳の研修医が出てきますが名前は皆川になっています。患者との会話を重視するキャラは同じです。)憤懣やるかたない吾朗が真夜中の病院の中庭で愚痴をこぼしていると、突然現れたのは、6年前にこの病院で死亡した患者、すなわち幽霊でした。

科学で説明できないものは信じない現実主義者の吾朗ですが、自分の目で見て聞いたことは信じないわけにはいきません。確かに残されていたカルテには入院してわずか13日で急性骨髄性白血病で亡くなったことが記されていました。

この幽霊、ゴローは、毎夜1~3時に吾朗お気に入りの中庭のフェニックスの木の前に現れて彼と会話をします。今までの努力の見返りに医師としての名声を求めようとする吾朗に「実体のない名声より患者との交流の方がよほど人生の財産になる」とか、研修医仲間が患者の死に激しく動揺する様を冷ややかに見る吾朗に「医者一年目で既に(死に対して)不感症になっちゃったんだな」とか、死後の解剖は医学の進歩のためと強要する態度の吾朗に「患者本人や遺族の気持ちを考えたことがあるのか」とか・・・。話をするうちに感情的になる吾朗とは異なり、ゴローはあくまで穏やかに話します。実際は21歳で亡くなったゴローは現実に24歳の吾朗よりよほど大人なイメージです。それは生きていたら27歳というのもあるのでしょうけれど、やはり年の割に成熟した人物に見えます。

そんなゴローが見えるのは吾朗だけ。そしてその理由は彼の遺した現世への想いにありました。短い夏休みに姉と姪たちとの旅をしたことがきっかけで、吾朗はそのことに気付きます。そしてゴローの願いを叶えるために奔走する姿はもう以前の自分勝手で傲慢な吾朗ではありません。

ゴローの願いが叶うシーンや、エンディングでのエピソードはじんわり心に沁みます。

人間的にも医師としても成長した吾朗がちょっぴり眩しく感じられる、ファンタジックな物語でした。

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