杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

マダム・イン・ニューヨーク

2014年11月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年6月28日公開 インド 134分

シャシ(シュリデヴィ)は、2人の子どもと多忙なビジネスマンの夫サティシュ(アディル・フセイン)のために尽くすインドのごく普通の主婦。“ラドゥ”というお菓子を贈答用に販売するほど料理上手な彼女の悩みは、家族の中で自分だけ英語ができないこと。夫からは対等に扱われず、年頃の娘は学校の三者面談に来ることも恥ずかしがる始末。事あるごとに家族にからかわれて傷つき、やり場のない不満を抱えていた。そんな彼女にある日、ニューヨークに暮らす姉のマヌ(スジャーター・クマール)から、姪の結婚式を手伝ってほしいとの連絡が入る。家族より一足先に1人でニューヨークへ行くことになったシャシだったが、英語ができないためにカフェでコーヒーすら注文できず、店内をパニックに陥らせてしまう。打ちひしがれた彼女の目に飛び込んできたのは、“4週間で英語が話せる”という英会話学校の広告だった。家族はもちろん、マヌたちにも内緒で通学する決意を固めるシャシ。学校では、世界中から集まった英語が話せない生徒たちと出会うが、その中には、カフェで失敗した際に助けてくれたフランス人男性ローラン(メーディ・ネブー)もいた。ロランが自分に好意を抱いていることを知ったシャシは、長い間忘れていたときめきに戸惑いながらも、仲間とともに順調に英語を学んでゆく。やがて、夫に頼るだけの専業主婦から1人の人間としてのプライドに目覚めた彼女は、自信を取り戻し始める。家族が遅れてニューヨークにやってきた後も、密かに通学を続けていた。だがある時、授業を受けている間に幼い息子がケガをしてしまう。母親としての自覚や責任感に欠けていると自分を責めたシャシは、卒業を目前に学校へ通うことを諦めてしまう。それでも学校の仲間たちは、彼女を一緒に卒業させようと協力していたが、最終試験の日程が姪の結婚式と重なってしまい……。(Movie Walkerより)


これは世界中の専業主婦たちから熱い支持を受けそうな映画ですいえ、専業主婦ならずとも、ごく平凡で取り柄が無いと思いこんでいるすべての女性への心強いエールです。

料理上手で家族に尽くすことが自分の勤めと信じてきた平凡な専業主婦のシャシですが、自慢の料理は家族にとっては「当たり前」に供される日常で、お菓子の販売も夫には趣味の範囲内としてしか認めてもらえません。家族の中で自分だけが英語ができないことを、ことあるごとにからかわれて傷ついていますが、家族はそのことに全く気が付いていないのです。長女の学校の面談で担任の英語教師との会話をヒンドゥー語でお願いして、下手なジョークを言ったことを娘に後で怒られるエピソードは、娘が思春期で反抗的な態度を割り引いてもやっぱり傷つくと思うわ

そんなある日、NYに住む姪の結婚が決まり、手伝いのために渡米することになったシャシは不安で一杯。
(一か月以上前から手伝いに行くってのも凄いが)空港で必要な手続きの英語を話すだけで精一杯の彼女の様子は、そのまま自分に重なり、身につまされました。機内でユーモアのある乗客男性に救われ励まされてNYの姉一家と無事会えたのにホッとしたのも束の間、今度はカフェで言葉が通じず大失敗をしてしまいます。何もかもが気忙しい都会のカフェでありがちな光景だけれど、当事者にとっては辛い経験よね彼女にとって、この時目にした「4週間で英語が話せる」という広告はお釈迦様の蜘蛛の糸であり溺れる者の藁であったのかもしれません。

自ら電話をかけ、慣れない土地で迷いながらも英会話学校に辿り着いた彼女の行動力に敬意を表します。
教室ではカフェで助けてくれた男性と再会します。フランス人の彼はシャシに一目惚れで積極的にアプローチしてきますが、シャシにとっては(自分への賛辞に一瞬胸がときめくことはあっても)教室の仲間でしかないのよね変に彼と進展があったりするよりよほど現実的で好ましい展開です。

一度は諦めた最終試験を受けることにしたシャシですが、当日息子の悪戯でアクシデントが起こって行けなくなってしまいます。けれど、ラーダ(結婚する姪の妹の方。シャシが英会話学校に通っていることを知る彼女の味方)の機転で試験を終えた仲間たちと先生が式に招待されるの 
宴の席でのシャシの英語のスピーチは結婚する二人への最高の贈り物となります。同時に夫や子供たちも自分たちがシャシを軽んじていたことに気付いて反省するのです

帰りの機内で「NYタイムズ」と言いかけて「ヒンドゥー語の新聞」を頼んだシャシは、以前の控えめな妻の顔ですが、その内面や夫の彼女を見る目はきっと以前とは違っているのでしょう

インド映画らしくダンスシーンも登場しますが、どちらかというと控えめな感じなのも良かったです

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闇金ウシジマくん Part2

2014年11月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年5月16日公開 133分

ある日、ウシジマ(山田孝之)の事務所に暴走族のヘッド・愛沢(中尾明慶)とトラブルを起こしたヤンキーのマサル(菅田将暉)が、愛沢に連行されてくる。愛沢はマサルに借金をさせ、その金を自分への慰謝料として払うよう要求するが、マサルはウシジマに懇願してカウカウ・ファイナンスで働くことに。当てが外れた愛沢には、すぐにでも金が必要なある事情があった。一方、ナンバー1を目指す新米ホストの神咲麗(窪田正孝)に入れ上げる17歳のフリーター彩香(門脇麦)は、その夢を応援しようとウシジマに借金を申し込むが・・・。


真鍋昌平のコミックを実写化した「闇金ウシジマくん」の劇場版第2弾です。
トゴ(10日で5割)ヒサン(1日3割)の暴利で貸し付け、容赦なく取り立てる闇金業者「カウカウ・ファイナンス」の社長ウシジマの周囲に群がる、ライバルの闇金業者やヤンキー、暴走族、極道、ホスト、風俗嬢、ストーカーといった金と欲望にかきたてられた人々の壮絶なサバイバル劇で、中身は相当悲惨なのですが、じめじめした暗さが不思議なくらい無いのが面白いところです。
山田君演じるウシジマは終始無表情なのに、時折喜怒哀楽が透けてみえる気がするのは演技力の高さでしょうか。

今年ブレイクした感のある窪田君のホスト役もです。
母親の自殺すらネタに変えてナンバー1を狙うその上昇志向は、孤独から生み出されたものなのかしら?彩香との出会いはごく普通の若者らしいものだったのに、彼女がどこからお金を工面してくるのか疑いも持たず(あるいは気付いていても知らぬ振りで)彼女の行為を利用するようになっていく姿にため息だよ

彩香の方も、中卒の引き籠りで家族から厄介者扱いの孤独を麗の夢を応援することで埋めるかのような行為が痛々しく映りました。

蝦沼(柳楽優弥)はウシジマのライバル闇金の犀原(高橋メアリージュン)の借金返済のためタコ部屋同然の日雇い労働をさせられています。彩香に自分と同じ孤独のニオイを嗅ぎ取り彼女をストーキングするのですが、彩香に近づく男たちを排除することに喜びを見出すという何とも醜悪で粘着質なキャラ。イっちゃってる目の柳楽君、恐いです 

彩香が体で稼いだお金でナンバー1になったのも束の間、蝦沼にバットで殴打され顔面に傷を負った麗はホスト界を去り、昔の夢だった料理人を目指すの。彩香は風俗に身を置いて借金を返しながら、やり直すための勉強を始めます。別れはしたものの、この二人については希望の見える結末で良かったな

逆にどうしようもない奴だったのがマサル。
ウシジマの元で働きだしたのはいいけれど、仕事を甘く見てクビになり、そのことを逆恨みしてウシジマの部下の高田(崎本大海)や柄崎(やべきょうすけ)を襲って金を奪うよう愛沢を唆すんだから最低だなそんなマサルに対しても「殺したら借金取り立てられないからな」と言い放つウシジマが超クールでした。

愛沢は12~15歳のガキを取り巻きにしている時点でガキのまんま大人になったような男ですが、妻(木南晴夏)を思いやれるだけ根は優しい奴なのかも。その妻はホストに入れあげて我が子の面倒もろくにみてないんだけどねぇ自業自得とはいえ、保険金目当てに車にダイブさせられるのはちょっと哀れでした。彼よりマサルの方が酷いことをしてる気がするんですがねぇ。

ウシジマ君の良き理解者は戌亥(綾野剛)。この二人なかなか似合いのコンビよね
そしてカウカウの社員たちの忠誠心も普通のサラリーマンより有りかも

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カレイドスコープの箱庭

2014年11月26日 | 
東城大学病院は存続の危機に立たされながらも、運営を続けていた。そんな折、肺癌患者が右葉摘出手術で亡くなったのは、病理医の誤診が原因ではないかとの疑惑が浮上。田口医師は実態を把握せよという高階病院長の依頼を受け、仕方なく、呼吸器外科や病理検査室などの医師や技師たちに聞き取り調査を開始する……。万華鏡のように、見る角度によって様々な形となって姿を現す大学病院。果たして事件の真実とはーー。

田口&白鳥シリーズがこんなに長く続くとは思っていなかった。それどころか過去に未来にどんどん膨れ上がっていく交友関係と人物相関図。
ここらでいっちょう整理しとかんと頭がすっかり迷宮入りというわけでもないでしょうが、本書には海堂ワールドを俯瞰できる登場人物相関図や、600名近くに及ぶシリーズ全登場人物表が収録されていて、シリーズのファン必見のお宝保存版がおまけについているという・・・う~ん、これは購入して手元に置くべきかそういえば文庫本で揃えたのは三作目あたりまでだったかなぁ??
一応バチスタ・シリーズ最終章らしいし。

頼りない神経内科医師だった田口センセも今や押しも押されぬ院長の懐刀。いや影のフィクサーと称されるお方に成長されて、今回は初の海外講演までやっちゃいました。それが派手好きな東堂マサチューセッツ医科大上席教授の完璧なお膳立てによる演出の成果だったとしても、世界的権威を誇る曾根崎教授と(日本語で)議論を戦わせる程度は朝飯前にできちゃったのですもの。戦車に乗って登場した「あの」シリーズの雄姿はぜひまた実写版で観たいものですが活字なので「巨大ポスター」という描写で満足いたしましょ。

国内ではエーアイ国際会議の開催に向けて尽力する中、検体取り違えによる誤審疑惑の解明まで背負わされちゃって相変わらずの孤軍奮闘・・・いえいえ、やっぱり出ました(出たって・・)白鳥さん。田口センセの調査報告書の監査名目でしっかり調査にしゃしゃり出てきました。そうでなくっちゃね!そもそも今回の事
件は殺人じゃないもんねぇ。私でも怪しい人物に思い当たるくらいのレベルなんですが、種明かしは言われてみれば納得だけど病理検査の現場を知る医療人じゃなきゃ思いつかないトリックかも。

そして今回も白鳥さんの暴虐無人だけど小気味良い、でも言われた本人は絶対腹立つ発言の数々ににんまり楽しませて頂きました。今回も白鳥さんのグッチー愛をヒシヒシと感じるわ。

一つ納得できないのは、犯人に対して処罰がないこと。病院の体面を考慮すればどうしようもないのですが、だからと言ってあんな輩を野放しで放免するのはどうなのよ?と疑問が残るところです。まぁそれが逆にリアリティあるのかもしれませんが・・。

謎解きとしては軽いですが、これまでの登場人物のおさらい、復習編のノリで楽しめる一冊です。

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コッホ先生と僕らの革命

2014年11月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年9月15日公開 ドイツ 114分

1874年、帝政ドイツ。ブラウンシュヴァイクにある名門校・カタリネウム校のメアフェルト・グスタフ校長(ブルクハルト・クラウスナー)に招かれて、オックスフォードに留学していたコンラート・コッホ(ダニエル・ブリュール)はドイツ初の英語教師として赴任してきた。しかし当時のドイツでは反英感情が高く、教室でもイギリスに対する強い偏見が待ち受けていた。授業を開始しようとした矢先、級長フェリックス・ハートゥングを先頭にクラスでただひとり労働者階級出身のヨスト・ボーンシュテットに罪を被せいじめているのを目の当たりにする。その日の夜に開かれたパーティで、コッホはフェリックスの父と会う。地元の名士でキリスト友会会長を務め、カタリネウム校に対しても多大な影響力を持つフェリックスの父(ユストゥス・フォン・ドーナニー)は、ドイツ帝国の教育は秩序と規律、服従がすべてであると考えていた。個性や自立を促す進歩的な教育を目指すコッホとの対立は、避けられなかった。英語を学ぶ意欲がからっきしない生徒たちを前に、コッホはある一計を立てる。生徒たちを体育館に集合させ、愛用の革製ボールを見せるコッホ。それは、サッカーボールだった。当時、体育の授業と言えば体操であり、触ったことのあるボールといえば医療用の重いボールくらいだった。生徒たちがコッホに倣いボールを蹴ると、たちまちサッカーの楽しさに目覚めて夢中になり、サッカー用語を通じて英語も熱心に勉強するようになる。スポーツ用品メーカー社長の息子オットー・シュリッカーは、ボール自体に興味を持ち、同様のものを作れないか試行錯誤する。またヨストはフォワードとして大活躍をし、各人の個性や才能が見え始めてきた。ある日、コッホたちが体育館でサッカーの試合をしていると、授業を見学しに来たキリスト友会のメンバーと校長にその様子を見られ、間の悪いことにヨストが蹴ったボールが牧師の股間に命中してしまう。キリスト友会会長であるハートゥングは激怒し、サッカーを禁止させなければコッホを解雇させると校長に詰め寄る。さらにヨストは退学処分の最後通告として補習室送りになり、彼の母親クララも、ヨストの将来を危惧しコッホを責める。サッカー禁止令に従うコッホだが、落ち込む生徒たちを見て、放課後は自由だと提言する。授業後、自発的にサッカーの練習をする生徒たちの熱意に触れ、コッホも本腰を入れて指導。次第にクラスは本物のチームとしてまとまっていくが……。(Movie Walkerより)


後にドイツの「サッカーの父」と称されるコンラート・コッホを描いた作品です。
日本人とドイツ人は勤勉な気質が似ていると言われますが、映画の当時の社会状況は日本が世界大戦に向かって軍国教育を強めていった状況とそっくりな気がしました。

そんな息苦しい雰囲気が漂う学校にやってきたのが英国帰りのコッホ先生というわけです。
実は校長が進歩的な人物で、彼の招きでコッホ先生はやってきたのです。
後に先生が窮地に陥った時には助け舟を出し、彼を庇います。この校長がいたからこそコッホ先生も自分の理念を曲げずに生徒と向き合えたのでしょう。

生徒は資本者階級の子息が殆どで反英感情も強かったため、彼の教育理念は受け入れて貰えなかったのですが、当時ドイツでは殆ど知られていなかったサッカーを授業に取り入れることで、生徒たちの興味を引くことに成功します。サッカーを通じて生徒たちはフェアプレイの精神や自由と平等の理念をも身につけて行ったのです。

労働者階級故に苛めの対象になっていたヨストもサッカーを通じてクラスに溶け込んでいきます。(ヨストの母親が息子には貧しい暮らしから抜け出して上に行ってほしいと望み、無理してこの学校に入れたようです。彼女とコッホ先生の間に生じる仄かな感情は必ずしも必要なシーンとは思えなかったけれど、ま、いっか。
しかし、フェリックスの父親は息子が自分の信じる教育理念から外れていくことを懸念して、サッカーを禁止します。

禁止されたらやりたくなるのが子供ってもんでしょ親や学校に隠れてしていたサッカーが見つかり絶体絶命のピンチを救ったのはコッホの留学時代の親友でした。イギリスとの親善試合が設けられr、教育長の監察官が見守る中で白熱のゲームが・・・。
ラストも後味良いものでした。

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劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

2014年11月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年8月31日公開 99分

宿海仁太(じんたん)、本間芽衣子(めんま)、安城鳴子(あなる)、松雪集(ゆきあつ)、鶴見知利子(つるこ)、久川鉄道(ぽっぽ)の小学生6人は大の仲良しで、「超平和バスターズ」と名乗り、秘密基地に集まって遊ぶ楽しい日々を過ごしていた。しかし、ある夏の日、芽衣子が事故で亡くなり、残された5人の心は離れ離れになってしまう。時は流れ、高校1年生になった仁太の前に、死んだはずの芽衣子が成長した姿で現れる。その姿は仁太にしか見えず、芽衣子は超平和バスターズのみんなに願いをかなえてほしいと言うが、その願いが何であるのか芽衣子自身も思い出すことができない。離れ離れになっていた超平和バスターズは、このことをきっかけに再び集い、芽衣子の願いをかなえようとするが……。(映画.comより)


2011年4~6月に放送されたオリジナルアニメの劇場版ですが、観てなくてもストーリーは理解できます。
時間軸が、めんまが亡くなった年と現在、その一年前 のそれぞれ夏の一日の3場面で構成され、過去と現在を行ったり来たりしながら物語が進んでいく手法です。

じんたんがめんまを背負ってひたすら駆け出すオープニングが唐突で???でしたが、そのシーンが後半の山場に繋がっていました銀髪碧眼のめんまの容姿は幽霊だからではなく、彼女がクォーターだったから。自分が「がいじん」「のけもん」と思い込んでいたその孤独が描かれる場面でそのことを理解しました。

子供の頃に亡くなっているのでその設定はありなんだけど、めんまの声優さんのあまりのアニメ声(幼いイメージ)には違和感があり馴染めず・・・絵的には小学校低学年に見える子供時代ですが、一体何歳の設定だったんでしょ?現在は高校生の彼らが大人びているのは、事故でそれぞれが心に傷を抱えているからということでしょうか。

ゆきあつが事故当時のめんまの服装を真似て疾走するエピソードは、TV版ではもっと掘り下げて語られているのかな?映画では簡略過ぎて唐突な印象でした。TV版を圧縮して紹介し、なおかつ現在を盛り込んでいるのだから仕方ないですけど

それでも、めんまを好きだったゆきあつの想いと彼のじんたんへの嫉妬、そんなゆきあつに想いを寄せるつるこ、じんたんを好きという気持ちとあの日自分の発言がめんまの死につながったのではという後悔に苦しむあなる(本名を縮めたあだ名とは思うけれどあんまりなネーミングだ)、事故直後のめんまを置いて逃げ出してしまったことに苦しむぽっぽなど、それぞれの抱える彼女への罪悪感や苦悩をきちんと描き出してみせるあたりはなかなか見応えがありました。

めんまの願いは、病床にあったじんたんの母から託された事であると同時に、彼女自身が仲間たちにきちんと気持ちを伝えることでもありました。
彼らがめんまに自分の思いを伝える手紙を出し、めんまも彼らに気持ちを伝える手紙を残すことで、彼女は「生まれ変わって皆と再会する」ために成仏できたのです。(クォーターである彼女に対して成仏というのは少し違和感あるのですが

彼らはやっと過去から解き放たれ、未来へ向かって歩き出したのかもしれませんね。

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相棒 劇場版III 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ

2014年11月21日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年4月26日公開 114分

東京から約300キロ離れた鳳凰島で馬に蹴られた男性が死亡する事故が発生。警視庁特命係の杉下右京(水谷豊)と甲斐享(成宮寛貴)は、事故調査の名目で、ある噂が囁かれる島の実態を調べる密命を受けて島に降り立つ。その島は実業家(宅麻伸)の個人所有で、島内では神室(伊原剛志)や高野(釈由美子)ら元自衛隊員たちが訓練のための共同生活を送っていた。調査を始めた右京は、男性の死亡理由が事故ではなく殺人であると確信し決定的な証拠を発見、捜査一課の伊丹(川原和久)や鑑識の米沢(六角精児)らも集結するが、そんな彼らを自衛隊の特殊部隊が襲撃し……。


東京都管轄の島とはいえ、遠くの孤島に特命係が赴くにはそれなりの理由づけが必要よね。というわけで、今回は島で『民兵』組織が非合法兵器(生物兵器で自衛隊から盗まれたもの)を製造していると言う噂の実態を調査することになります。防衛省には自衛隊OBが幅を利かせていて、昔から複雑な因縁のある警察は容易に手出しできないため、はぐれ者の特命に白羽の矢が立ったというわけです黒幕にはカイトの父・峯秋氏(石坂浩二)がいて、彼の指示で元相棒の神戸(及川光博)が二人に会いに来るという筋書きでした。

神室の理念がいかに大局的なものだったとしても、力で平和を維持することはありえないし、生物兵器を持ち出す時点でテロリスト以外の何者でもありません。宗教や軍隊に名を借りた狂信者集団は見ていて腹が立ちます。とはいえ、今の世界情勢は彼らの論理と似た思考で動いているのだからやりきれないね。

神室たちの不穏な動きを確かめるために実業家により送り込まれたスパイが事故に見せかけて殺されたというわけです。神室の理想に賛同して土地(島)を与え資金援助していたのに、いつのまにか過激なテロ集団になっているんだから、たまったもんじゃないよねぇ結局大きな力(彼らの場合は生物兵器)を手にすると人は破滅に向かって歩み始めるということでしょうか。

いつものメンバー勢揃いして、自衛隊の特殊部隊まで登場させて賑々しかったわりに、殺人方法(蹄鉄で殴るのと蹴られるのでは傷跡が違う気がするんですが)や生物兵器をあの程度の爆破で処理できるのかとか、幕引きの仕方が雑な気もしますが、TVドラマの延長と思えばこんなものかと

ドラマのSP版でも十分だった気がしますので劇場鑑賞しなくて自分的には正解


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紙の月

2014年11月17日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年11月15日公開 126分

バブル崩壊直後の1994年。夫(田辺誠一)と二人暮らしの主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は、「わかば銀行」の契約社員として外回りの仕事をしている。細やかな気配りと丁寧な仕事ぶりで顧客からの信頼も篤く、厳格なベテラン・隅より子(小林聡美)や、若くちゃっかり者の窓口係・相川恵子(大島優子)らの受けもよく、上司の井上(近藤芳正)からも高評価だった。、一見何不自由のない生活を送っている梨花だが、自分への関心が薄い夫との間には空虚感が漂い始めていた。ある夜、梨花の顧客で裕福な独居老人の平林(石橋蓮司)の家で一度顔を合わせたことのある孫の光太(池松壮亮)と再会した梨花は、何かに導かれるように大学生の彼と一夜を過ごす。逢瀬を重ねるうち、仕事中ふと立ち寄った化粧品店で現金が足りずに顧客の預金に手をつけてしまう梨花。すぐに自分の銀行口座から引き出して戻した一万円が全ての始まりだった。学費のために借金をしているという光太に彼の祖父の預り金を横領して金持ちを装った梨花は、「車を買うのを止めたから」と200万を渡し、さらに顧客から預かった300万を自分の通帳に入れ、自宅で定期預金証書や支店印のコピーを偽造、横領する額は日増しにエスカレートしていった。上海に赴任する夫には同行せず、光太と高級ホテルやマンションで贅沢な時間を過ごすが、やがて二人の間に破局が訪れる。そんな折、銀行内で不自然な書類の不備が続いていることを不審に思った隅が調査を始め、梨花の横領が暴かれて・・・。


銀行勤めの平凡な主婦が引き起こした大金横領事件の顛末を描いた角田光代の長編小説の映画化です。劇場で流れる予告編の歌がとてもインパクトがあったのと、宮沢りえの演技に興味を惹かれたのですが、好みのジャンルではないため、貯まったポイントで鑑賞することにしました。

梨花は確かに平凡な主婦でしたが、元々の気質が少し非常識というか、思い込みの激しさがあった気がします。カトリック系の学校に通っていた少女時代、恵まれない外国の子供を救う募金に協力しますが、級友たちが募金を止めたあとも、彼女は続けます。そこまでは良いのですが、彼女が高額の募金をしたことで、この運動自体が中止になってしまうのです。しかもそのお金は父親の財布から抜き取ったものでした。教師は聖書の言葉を引用しながら、行為の善悪を説きますが、梨花には伝わりません。おそらくはお金の苦労を知らずに育った彼女に、この時点で親や教師が正しい導きを施していたらこの横領事件はなかったのかもと思ってしまいました。

夫は梨花を愛していますが、夫婦の想いはすれ違うことが多かったようです。パートから契約社員に昇格した記念にと夫に贈ったペア時計に込めた気持ちに気付かない夫は、出張先の免税店でより上質な時計をお土産として彼女に渡します。妻がクレジットカードを持つことに難色を示し、転勤になった時も梨花が仕事を辞めて着いてくるのは当然と思っています。彼のような夫は世の中のごく平凡な夫像でもあるのですが、梨花にとっては愛されている実感のない、自分はただの飾り物のような虚しさがあったのかもしれません。子供のいない夫婦だからこそ互いをしっかり見つめていなければならなかったのですがね。

梨花が光太に惹かれて道を踏み外したのは、彼が梨花だけを見て、求めてくれたからとは思うのですが、それでもきっかけは唐突で不自然な気がしました。基本、不倫は理解できない性質なので仕方ないですね

愛する人ができれば美しくいたいと思うのは女の常。化粧品を衝動買いしたときに現金が足りず(カード持ってないからローンできないのね。)顧客の預かり金を一時拝借してしまったのが横領のきっかけでした。あの時感じたであろう罪悪感がどんどん薄れ麻痺していく様子が恐いです。
プリンターを使い自宅で証書の偽造を始めた頃にはもう彼女の感覚はすっかり狂っています。

光太が根性曲がりのヒモ男なら少しは梨花に同情の余地もあるのだけれど、映画では彼はごく普通の若者として描かれていました。大学の学費のための借金であり、それを知った梨花が横領した(彼の祖父のお金だというのも彼女には一種の免罪符だったのでしょう。)お金を光太に強引に渡そうとしたとき、「これを受け取ったら何かが変わってしまうよ」と言った彼はごくまともな人間です。
この時、梨花は自分がお金持ちであるように装い、それを維持するために更に横領を重ねるようになっていくのです。

横領がばれた後、「自由が欲しかった」と言った梨花に、彼女の罪を暴いた隅が「それで、自由になれたの?お金で自由を買うことは出来ないのよ」ときっぱり言い放ちます。
隅は融通の利かないお局様的な描かれ方をしていますが、彼女こそが銀行の良心であると言えます。登場人物の中で唯一好感が持てたのが隅でした

相川はちゃらんぽらんなようで、けっこう冷静に職場の状況や自分の置かれている立場を自覚しています。上司と不倫してても、地元の公務員をちゃっかりキープしてあっさり寿退職する現代娘でした。彼女のような人間がいわゆる人生の「勝ち組」なのかもね。

隅の言葉に抗うかのように銀行の窓をぶち破って逃走する梨花。それにしてもすんなり海外へ高飛びなんて普通無理っしょ以前から計画してたのかしらん?
ラストが自分が援助した男の子との再会というのもあざといなぁ。
この時彼女の胸に沸き上がった思いは「自分は正しいことをした」だったりしてね

梨花にはひとかけらも共感できませんでした。

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8月の家族たち

2014年11月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年4月18日公開 アメリカ 121分

ある8月の真夏日、オクラホマの片田舎。父ベバリー(サム・シェパード)の突然の失踪をきっかけに、長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)、次女アイヴィー(ジュリアンヌ・ニコルソン)、三女カレン(ジュリエット・ルイス)の三姉妹が、数年ぶりに実家へ集まってくる。母・ヴァイオレット(メリル・ストリープ)は、癌を患っているが誰よりも気が強く、いつでも真実を言うのが正しいと信じている毒舌家。一方、美人で聡明、母親譲りの気質を持ったバーバラは、夫(ユアン・マクレガー)の浮気と娘ジーン(アビゲイル・ブレスリン)の反抗期に悩んでいた。何事にも不器用なアイヴィーは、結婚もせず、地元に残って両親の面倒を見る毎日。婚約者を伴ってきたカレンは、ある不安を抱えていた。それぞれの家庭、夢、恋、そして自分自身、守るべきものがバラバラな家族たちが、激しく本音をぶつけあう中、数々の“隠しごと”が暴かれていく……。(Movie Walkerより)

トレイシー・レッツの戯曲を映画化したものだそうです。舞台劇と思えば納得なのですが、映画だとどうにも息苦しいというか救いがないというか・・・楽しい作品ではないね

最高気温が32℃を超える暑さの中、クーラーも扇風機もない家の中という設定は、今観ている分にはまだ良いけれど、真夏には観たくないぞよく熱中症にならないもんだと、葬式の後の食事会でマナー云々を言い出す母に大人しく従う家族が逆に不思議でした。

薬物中毒の母親が多種の処方薬を無造作に何錠も飲むシーンは、他のアメリカ映画でも同じようなシーンがしばしば登場するけれど、日本で一般的なシート包装じゃなくて、小さなプラスチック瓶に裸錠で調剤するのが向う流なのねぇ。だからあんな飲み方しちゃうんじゃなかろうか?とつい余計な気を回したりして母親の主治医の責任も重大ですよ。後にバーバラが主治医のバーク医師に薬瓶を投げつけて抗議するシーンがあってホッとしたくらいです。

ヴァイオレットの妹のマティ・フェイ(マーゴ・マーティンデイル)が夫と浮気をしていたこと、彼女の息子のリトル・チャールズ(ベネディクト・カンバーバッチ)が実は夫の種であることも気付いていながらずっと知らぬ振りをし、そのことに夫もまた気付いていて悩んでいたなど、とにかく普通じゃないリトル・チャールズ(内向的で後ろ向きな性格を理解し励ますのは父のチャーリーとアイヴィーだけ)とアイヴィーがそれと知らずに恋愛関係になっていることに気付いたマティ・フェイはバーバラに秘密を話して二人を別れさせようとするけれど、ヴァイオレットは直接アイヴィーに彼は異母兄だとばらしてしまう。もうメチャクチャです。この母、観察眼だけは並外れているけれど、物言いがストレート過ぎて周囲を傷つけてしまうのね。
そしておそらくは自分もそれ以上に傷ついて、だから薬に逃げてしまったのかも。だからと言って彼女の行為が正当化されるわけではないけれど・・・。

カレンの婚約者のスティーブ(ダーモット・マローニー)はまだ14歳のジーンにマリファナで近づき誘惑するとんでも男。ジョナに現場を押さえられますが、カレンはスティーブを擁護します。でもこのカップルは長続きはしなさそうね

とにかく自分中心な母に振り回される娘たちですが、互いの秘密を母に暴かれたことで逆に姉妹の絆は深まったのかもしれませんね

母の方は娘たちに去られ、残ったのは夫(彼の死は自殺だったと家族が認識することになるのも何だかなぁな展開です。)が生前雇った家政婦ジョナ(ミスティ・アッパム)だけです。南中部の田舎では人種への偏見もまだ残っているようで、彼女はジョナをインディアン(この呼び方は差別用語でネイティブアメリカンと呼ぶべきらしい)と呼び蔑んでいたけれど、独り取り残された彼女にそっと手を差し伸べたのがジョナだというのも何やら象徴的です。

家族の崩壊を描いたならせめて再生の兆しくらい欲しかったなぁ。

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美女と野獣

2014年11月10日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年11月1日公開 フランス 113分

バラを盗んだ父の罪を背負い、野獣の城に閉じ込められた美しい娘ベル(レア・セドゥー)。しかし、城の主の野獣(バンサン・カッセル)は毎夜ディナーを共にすること以外、何も強要してこない。やがてベルは野獣の恐ろしい姿の下にある、もうひとつの姿に気付きはじめ、野獣が犯した罪や城で過去に起こった出来事の真実が解き明かされていく。

1740年に書かれたビルヌーヴ夫人版の物語をもとにした実写映画です。
ディズニーアニメ版が子供が楽しむものだとしたら、こちらは現実と魔法がほどよくMIXされた大人のためのファンタジーといえるでしょう。私は好きです

え?ベルって男兄弟がいたの?と初めから
しかも長兄は放蕩息子でギャンブルで借金を作ってならず者から追われる身です。次兄は悪い人ではないけれど、そんな兄に引きずられる感じ。二人の姉も贅沢好きの浪費家で働かずに不平不満ばかり。ベルのすぐ上の兄(三男)とベルだけが「まとも」な感覚を持っています

ベルの父親は裕福な商人でしたが、財宝を積んだ船を嵐で失い破産したため、一家は田舎で隠遁生活を送ることになるのです。(母親はベルを産んで亡くなっています。)
ベルだけがそんな生活に不満も言わず、むしろ家族一緒に暮らせることを楽しんでいました。そんなある日、船が1隻だけ見つかったと知らせを受け、父は喜んで町に出かけますが、それすら借金のカタに取られてしまい、失意の帰り道に吹雪に遭い、古城に迷い込んで・・とこの辺は従来通りの展開

ベルのために手折った1輪の薔薇が元で父が野獣に命を奪われると知ったベルは、自ら城に乗り込みます。野獣が娘を差し出せと言ったわけではないのね。
命を差し出す覚悟のベルでしたが、野獣は夜7時のディナーに同席することのみを求めます。
日替わりで新しいドレスに着替え、好奇心に駆られて広い領地を探検するベルは、薔薇の庭で悲しげな女性の彫像を見つけます。それは城に来てから毎夜夢に出てくる古のプリンセスでした。

ベルが夢にいざなわれて野獣の過去を覗くという手法で進む物語の中で、プリンセスの正体は比較的早い段階で推察できます。森の精である彼女が愛を知りたくて人間に姿を変え、王子と結ばれたけれど、王子が彼女との約束を破ったある行為の結果、恐ろしい悲劇が起こったのでした。森の神の怒りに触れた王子は野獣に姿を変えられ、人間の女の愛だけが彼を救うことができるというわけです。

ベルが身につけるドレスや装飾品のちょっと古風な美々しさや、古城に咲く色とりどりの薔薇にも目を奪われます。アニメ版では食器や燭台といったキャラがベルの友達になりますが、実写版ではビーグル犬が姿を変えたキャラとして登場し愛らしい仕草で和ませてくれます
ベルと野獣が徐々に相手を想うようになる過程をもう少しじっくり描いて欲しかったかな。

借金返済のため、財宝目当てでならず者と一緒に城へ乗り込む長兄と次兄。それを知り後を追うベルと三男。怒り狂う野獣を諌めるベル。それはともかく、巨人発動ってどうよ
イギリス童話の「ジャックと豆の木」といい、英仏では巨人は最終兵器なのかね?

この映画ではもう一組のカップルが登場します。ならず者の首領と恋人の占い師です。ベルと野獣が本当の愛で結ばれるのに対し、恋人を見捨てて逃げようとしたならず者の末路は哀れでした

母親が子供に本を読んで聞かせる場面から始まるこの映画は、本の内容自体が本編であり、この母親こそがベルなのです。めでたしめでたしで結ばれた二人のその後が描かれているわけですついでに兄弟のその後(本を書いて出版したのは兄弟で、姉たちは双子に嫁いだという現実的なオチです)もね

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大統領の執事の涙

2014年11月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年2月15日公開 アメリカ 132分

黒人差別が日常的に行われていた時代のアメリカ南部。綿花畑で働く奴隷の息子に生まれた黒人セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)は、幼い時、目の前で白人の主人に父を殺される。女主人アナベスは彼を気の毒に思いハウス・ニガー(家働きの下男)にするが、やがて彼は農園を脱出し、放浪の末、ホテルのボーイとして働き始める。仕事ぶりが認められ、遂にはホワイトハウスの執事に抜擢された彼は、アイゼンハワー(ロビン・ウィリアム)、ケネディ(ジェームズ・マースデン)、ジョンソン(リーヴ・シュレイバー)、フォード、ニクソン(ジョン・キューザック)、レーガン(アラン・リックマン)ら歴代の大統領に仕えながら、キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争といったアメリカの国家的大局を目の当たりにする。その一方で、白人に仕える父親に反発して反政府活動に身を投じる長男ルイスや、反対にベトナム戦争へ志願兵として赴く次男チャーリーなど、セシルの家族もまた、激動の時代に翻弄されていく。


7人の米国大統領に仕えた黒人執事の実話を描いたヒューマンドラマです。
セシルは黒人として、執事としての誇りを胸に、ホワイトハウスで30年にわたり7人の大統領の下で働き続けました。ホワイトハウスの執事として大事なことは、その空間の“空気になる”事です。決して自分を出さず、存在を消すことで、彼は逆に歴代大統領や共に働く仲間の信頼を勝ち取ります。彼の勤勉さは大統領に代表される白人たちの黒人への意識そのものを変えるきっかけとなっていくのです。

妻のグロリアはセシルの仕事に理解を示しながらも、家庭より仕事に夢中な彼に寂しさを募らせます。酒や隣人のハワードに逃げ場を求めたりもしますが、結局は彼女自身の強さと夫への愛が勝る姿は、まさに古き良き妻の手本のようです。長じた息子たちの生き方は正反対です。父に反発するルイスは国と戦うことを選び、チャーリーは国のためにベトナムへ志願します。息子たちを心配しながらも見守ることしかできない親の気持ちを思うと辛いです
実家を久しぶりに訪れたルイスと、彼が同伴した反政府運動仲間のキャロルの生意気な態度に激怒したセシルの気持ちが理解できる年齢になりました。最初は仲裁に入ったグロリアですが、父親の仕事をバカにする息子を前にキレて放った言葉には重みがありました。

ルイスの行動を心配し、非難するだけだったセシルですが、だんだん息子のしていることの意義を理解し始めます。彼自身もホワイトハウスでの仕事ですら白人と黒人の間では報酬の差があることに疑問を持ち、改善を訴えるのです。初めは取り合ってもらえず「嫌ならクビ」と言われて素直に引き下がった彼ですが、やがて大統領の口添えを得て状況が改善されます。(そこまでにも数年かかるのですが)
執事としてではなく客として大統領夫人に招かれた晩餐会。セシルはグロリアを伴い晴れやかな気持ちで出席しますが、何とも居心地の悪さを痛感することになります。身内である黒人同僚ですら彼を場違いと見下すその意識こそを変えていかなければならないのだと悟った彼は、職を辞して息子と和解し彼と共に歩むようになるのです。それはセシル自身の意識が変わったことに他なりません。

そして2008年。アメリカ初の黒人大統領が生まれ、ホワイトハウスに招かれたセシルは、黒人の給仕長を見て時代が確かに変わったことを感じます。確かな足取りで大統領が待つ執務室へと向かう姿で終わるこの映画は、確かに良作です

それにしても、自由の国アメリカでたかだか半世紀前にまだ人種差別が根強く残っていたことに改めて驚きを隠せませんでした。いやいや、形を変えた差別はまだまだあるのでしょうね

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ハリケーンアワー

2014年11月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年2月15日公開 アメリカ 96分

2005年8月、巨大ハリケーンカトリーナが接近しつつあるニューオーリンズで、ノーラン(ポール・ウォーカー)は、早産のため救急車で病院に搬送された妻(ジェネシス・ロドリゲス)と子供の無事を祈っていた。だが、妻は命を落とし、生まれた娘も生命維持装置に二日は入っていなければならない状態となる。やがてハリケーンの猛威が町を襲い、混乱の中病院に取り残されたノーランは、娘を守るため、電源や水の確保に奔走する。しかし、壊滅的な打撃を受けた町では略奪や放火など犯罪が横行し、やがてノーランのいる病院にも銃で武装した略奪者が現れる。

本国公開目前(2013年11月30日)に交通事故死したポール・ウォーカーの遺作です。明るい冒険キャラのイメージの強い彼の父親役が新鮮。生きていれば演技の幅を広げる一歩になっただろうに・・・

それはともかく、ストーリー運びにはちょっと無理があるかな
まず、未熟児残してスタッフが全員避難するなんて日本じゃありえない
バッテリーだって探せばいくらでも新しいのがあるだろうし、3分毎に充電のハンドル回すなんて体力的にも精神的にも無理~~2階の病室から外の救急車の往復だけでも3分なんてあっという間だろうし・・などなどケチの付け所満載なんですが、それでも新米パパが保育器の中の娘と二人だけの時間を過ごすうちに、なんとしても我が子の命を守ろうという気持ちになっていく過程がじっくり描かれているのはです。

生きるためには強盗を銃で撃ったりもするあたりはいかにもアメリカのお話ですね。
紐が絡んで動けなくなった犬を助け、食糧を分けてあげるエピソードは、やがて彼らが助かるための伏線になっています。実はこの犬は災害救助犬なのよね
不眠不休で充電器のハンドルを回し続け、限界を超えたノーランが救助された時、すでに48時間は経っていました。自力呼吸の証拠の産声(泣き声)を聞き、その旨に愛しい娘を抱いたノーランはもうすっかり父の顔になっていました

いくら巨大なハリケーンだからとはいえ、あまりにもあっけなく都市機能が麻痺しパニック状態に陥るニューオリンズの町は情けない。けれど、東日本大震災の時、日本は暴動こそ起きなかったけれど、食糧や生活用品、マスクの買い占めなどはあったもんなぁ。他人事じゃないよなぁ

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エクスペンダブルズ3 ワールドミッション

2014年11月05日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年11月1日公開 アメリカ 126分

傭兵軍団エクスペンダブルズ(消耗品の意)を率いるバーニー(シルヴェスター・スタローン)はCIAのドラマー(ハリソン・フォード)からのミッションを遂行しようとするが、チーム結成時のメンバーながら、バーニーと袂を分かち、悪の武器商人になったコンラッド・ストーンバンクス(メル・ギブソン)が対象と知り動揺した隙を突かれてシーザー(テリー・クルーズ)が重傷を負わされる。仲間の身を案じたバーニーは、エクスペンダブルズの解散と新チーム結成を考えるが……。


アクションスター大集合な娯楽大作シリーズ第三弾です。
古参メンバーのバーニーの片腕リー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)、シーザー、ガンナー(ドルフ・ラングレン)、トール(ランディ・クートゥア)に創設メンバーのドクター・デス(ウェズリー・スナイプス)が加わったことで、バーニーの右腕の座をリーとドクが張り合ったりするシーンも飛行機の助手席というわかりやすい椅子取りゲームが勃発しちゃいます

一方、若いメンバーは、ケラン・ラッツ、グレン・パウエル、ヴィクター・オルティス、ロンダ・ラウジーが演じています。ヴィクターはボクシングWBCウェルター級元王者、ロンダは女子総合格闘技チャンプなんだとかアクションにハイテクスキルが加わった若い新メンバーの作戦に乗ってストーンバンクスを捕えたものの、彼の隠し持っていたGPSに足元をすくわれ逆に新メンバーたちが捕まってしまうの

一人で彼らを救出しようとするバーニーの前に現れたのが、新メンバー選出の際に年齢ではねられたガルゴ(アントニオ・バンデラス)。(とにかくお喋りなキャラで、そのマシンガントークで仲間がうんざりする姿を見るのも楽しいよ)クリスマスら旧メンバーにドラマーやトレンチ(アーノルド・シュワルツネッガー)イン・ヤン(ジェット・リー)まで加わった豪華な布陣で若手メンバーを救いだし、一国の軍隊を相手に大暴れのエクスペンダブルズ軍団を観てストレス解消です
(トレンチとヤンがそんな関係になってたなんて~~とか、ドラマー意外と話せるヤツじゃんとか、小ネタのツボも色々ありました。

バーニーとストーンバンクスの一騎打ちは今度こそ決着が着いた・・のか?そうなのか???

それぞれに見せ場がありますが、私のお気に入りはやっぱりクリスマスだわ~~
何気にガンナーにも惹かれますが

シリーズが進むと古参メンバーだけでは保たないというのか?な若手導入ですが、そのうち彼らが主流になるのかしらん?そこまでシリーズ続くのか??派手なドンパチが好きな人向け作品。
私は「RED」のオヤジ(というよりじじい)たちの方が明るく突き抜けてて好きです。

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LIFE!

2014年11月02日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年3月19日公開 アメリカ 114分

雑誌「LIFE」の写真管理部で働くウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、同僚のシェリル・メルホフ(クリステン・ウィグ)に思いを寄せながら会話もできない臆病で不器用な男。毎日地下鉄通勤し、変化のない日々を過ごす彼の唯一の楽しみは刺激に満ちた空想をすることだった。そんなある日、「LIFE」が休刊することになり、その最後の表紙を飾るショーン・オコンネル(ショーン・ペン)の写真のネガが見当たらないことに気付いたウォルターは、カメラマンを捜すため一大決心をして旅へ出る。ニューヨークからグリーンランド、アイスランド、ヒマラヤへと奇想天外な旅がウォルターの人生を変えていく。


「虹を掴む男」(1947)のリメイク作品。
「LIFE」は1936年~2007年の休刊まで、世界で幅広く読まれたアメリカの写真誌です。

劇場予告を見たときに予感があったので鑑賞予定はなかったのですが、DVDならまぁいいかなとセレクト 
でもこんな妄想男は恋人にしたくないってのが正直な感想です。彼は元々想像力が豊かだというのではなく、自分に自信が持てなくてそっちの世界に逃避していたように思えたからです。

大事なネガが見つからず、カメラマンを追って職場から飛び出した時、彼はまさに新しい人生の扉を開けたというわけですそれにしてもいきなり遠くへ行くもんだねぇアメリカ人ってのは言葉の壁を躊躇せずに行動できるのは羨ましい限りだわ

ウォルターと関わる人々も基本的には善人です。
妹のオデッサ( キャスリン・ハーン)は兄の職場にバースデーケーキを持ってきたり、頼まれた用事を途中で投げ出したりする空気読めない女性ではあるけれど、プレゼントに子供のころ遊んだ懐かしい人形を贈ったりする優しい娘です。
事業再編の責任者のヘンドリックス(アダム・スコット)はウォルターに辛く当たりますが、彼の立場からしたら職場にケーキや玩具を持ってくるような社員は真っ先にリストラしたい対象だというのも頷けます。けれども、ウォルターが探し出してきたネガ(それはウォルターを撮ったものでした。)をちゃんと表紙に使うあたりは、被写体が誰であれ、良いものを見分ける目を持つできる男ってことだもんね

彼の特技は妄想の他にもう一つあって、それはスケボーです。
(子供の頃の写真はモヒカン刈りで父親が剃ってくれていたというエピソード付
奇想天外な旅の途中でもスケボーが大いに役立っていました

世界的なカメラマンが何故かウォルターの母親( シャーリー・マクレーン)と会っていたり、そもそも直接会ってもいないのにそこまで目をかけてもらえるのかとか疑問もあるけれど、とにかく一歩踏み出したその勇気はでした。結果的にシェリルとその息子(スケボーテクを披露して仲良しに)のハートもがっちり掴んだんですものね

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