2020年8月21日公開 インド 143分 G
アニ(スシャント・シン・ラージブート)の息子が受験に失敗したことが原因で病院に担ぎ込まれ、集まったアニの旧友たちが大学時代の思い出を語り始める。1990年代、インドの名門ボンベイ工科大学に入学したアニが割り振られた学生寮は、寮対抗の競技会でいつも最下位の“負け犬”こと4号寮だった。4号寮の仲間たちは負け犬の汚名を晴らすため、知恵とやる気で競技会に挑む。(シネマトゥデイより)
ニテーシュ・ティワーリー監督が、自身の大学時代のエピソードも盛り込みながら、1990年代インドの工科大学の学生寮を舞台に、主人公と仲間たちの友情を描いた作品です。どこの国も大学受験は人生の重大イベントではあるけれど、インドでは100万人が受験して合格するのは1万人という超超狭き門らしい
アニの息子ラーガヴ(ムハンマド・サマド)は、父と同じボンベイ工科大学入学を目指し猛勉強しましたが、不合格となったことに絶望し、友人の目の前で飛び降り自殺を図って病院に運ばれます。ラーガヴにとって、父が合格祝いのシャンパンを用意して励ますなどの行動がプレッシャーになっていたのね 病院に駆け付けたアニは、元妻のマヤ(シュラッダー・カプール)からそれを指摘され責められます。彼女はアニが仕事ばかりで家族を顧みなかったことも併せて彼を非難します。手術は成功したものの、医師から「生きようとする気力」が低いラーガヴの容態は芳しくないことを告げられます。アニは息子の気力を取り戻そうと、大学時代の親友たちを呼び集めて、「負け犬」と呼ばれていた大学時代の物語を語り始めます。
冒頭で映ったエピソードは、ラーガヴの未来ではなく、アニの過去の姿だったのね~~ とここで気付いた私
1992年。ボンベイ工科大学に入学したアニは、「負け犬」と呼ばれている学生寮「H4」を割り当てられます。建物はボロいし食事も・・・。初めは転寮を希望していたアニでしたが、個性的な寮生たち、エロで頭が一杯の先輩セクサ(ヴァルン・シャルマ)、汚い言葉遣いは誰にも負けないアシッド(ナヴィーン・ポリシェッティ)、マザコンのマミー(トゥシャール・パーンデー)、大酒飲みのへべれけ(サハルシュ・クマール・シュクラ)と出会い、ハレー彗星並みに貴重な人気女子学生のマヤと付き合うようになります。それにしても個性的なメンバーです。
入学から2か月が経った頃、「H3」のラギー(プラティーク・バッバル)がアニをH3に誘いますが、親友たちとの生活を満喫していたアニは断ってしまいます。途端にラギーの態度は豹変。彼は大学で開催される競技大会ゼネラル・チャンピオンシップ(GC)優勝のため、スポーツ万能のアニを引き抜きたかっただけなんですね。ちなみにH4の「負け犬」はGCで万年最下位の劣等寮だからで、H3は優勝常連寮です。
ラギーの高圧的な態度にむかついたアニは、H4の兄貴分デレク(ターヒル・ラージ・バシン)と、GCで優勝して「負け犬」の汚名を返上しようと決意します。でもH4の寮生たちはスポーツが苦手で、優勝への意欲も欠けていました。そりゃ~万年最下位じゃ無理もない
アニはやる気を起こさせるため、それぞれが一番大事なものを断つという提案をして、自分もマヤ断ちをします。(彼女にしてみれば突然避けられるのってわけわからないけど、そこは親友がちゃんとフォローしてました)それでもH4は負けが続き、へべれけも断酒の禁断症状で倒れてしまいます。アニはへべれけを心配して断酒を止めるよう言いますが、彼は自分のためじゃなく友のために続けてきたのだと言うんです。青春だね~~
これをきっかけに、H4生たちは、応援団を組織して相手チームにプレッシャーをかけたり、マヤに色仕掛けを依頼したり(ノリノリで協力してるのが可笑しい)、ファウルの演技で相手の主力選手を退場に持ち込んだり、不戦勝を狙って出場チームがいない競技にエントリーしたり(いない筈なのに女子選手がエントリーしていて慌てながらも男の意地で勝ったのも)してポイントを着実に稼いでH3との差を縮めていくんですね。このエピソードたちはまさにコメディでした。
そしていよいよ、優勝がかかったリレー、チェス、バスケ決勝戦の日を迎えます。
ここまで、大人になった親友たちが次々と見舞いにやってきて、デレク(最高にイケテるアニキだったのに禿げてるという落差が)まで登場して語られる学生時代の思い出はキラキラと輝いています。
マヤとアニの関係も互いに非を認め合ったことで好転しています。親友たちの中にも、自分にとって大切なのは家族だと再認識する者も出てきます。
ラーガヴの容態が急変し、緊急手術が必要となったと知らされ、アニは医師に話の結末を語る時間が欲しいと願い出ます。今のアニが息子にしてやれる唯一のことは、物語の結末を語ることでした。
さて、H3の妨害工作にも負けず、デレクとへべれけの活躍でリレーとチェスはH4が優勝しますが、バスケは、アニが逆転を狙って投げたスリーポイントを外して優勝を逃してしまいます。しかし、肩を落とすアニにラギーが声をかけてH4の健闘を称えました。会場からも温かな拍手が沸き上がります。
アニは、勝敗に関わらず、全力で戦いに挑んだことで「負け犬」の汚名を返上したこと、結果そのものより努力することの重要さを息子に伝えます。そしてそれは確かに伝わったのです。
回復したラーガヴは、その1年後に大学入学を果たします。彼は勝敗にこだわらない人生を選択し「自分がどんな学部に入ったのかは尋ねないで欲しい」と語りかけます。最後はインド映画お約束・お決まりのダンス&歌で
監督は、受験のプレッシャーで押しつぶされそうになっている子供たちに、ベストを尽くせば失敗は何も悪いことではないと伝えたかったそうです。