杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

菩提樹荘の殺人

2016年04月19日 | 
有栖川有栖(著) 文春文庫

アポロンのように美しい少年、と噂される連続通り魔事件の容疑者。お笑い芸人志望の若者達の悲劇。大学生時代の火村英生の秀逸な推理、そしてアンチエイジングのカリスマ殺人事件。「若さ」を持て余す者、「若さ」を羨望する者達の恩讐に振り回されつつ謎に立ち向かう火村とアリスを描く、美しい本格推理四篇! (「BOOK」データベースより)


ドラマ化にあたって原作を読んでいるため、どうしても比較感想になってしまいますが
事件そのものより火村とアリスの関係性に注目してしまいました。

「アポロンのナイフ」
ドラマでは初回から引っ張ってこれだけ?な展開でしたが、こちらはまとめて一気に読めるのがいいです
本ではアポロンらしき少年と会話を交わしたのはアリスですが、ドラマは火村の教え子に変えてましたね
アポロンの仕業かと思われた二件の殺人の真相はそのまま。下手にいじらなかったのは正解かと

「雛人形を笑え」
お笑い界での成功を目指した被害者。その野心の強さ故に引き起こされた悲劇ともいえるかな。
火村が犯人を確信したのが被害者の死体のポーズというのが単純だけどインパクトありました。
でも一番面白かったのは、被害者の元相方を前にしての火村とアリスの喫煙に関する会話だったりします。
ほんま、あんたら漫才うまいやないですか

「探偵、青の時代」
ドラマ本編が終了した後、huluで放送された三本のうちの一本がこれを下敷きにしているようで。
(そもそも、TVで始めたならそこで完結せんかい!!と憤るクチなので未見ですが、すげ~~観たかった
まだ学生の頃の火村の名推理なのですが、事件そのものは殺人ではなく、軽微なものです。
本ではアリスが大学の同窓生と偶然あって火村が昔披露した推理について聞かされるという展開ですが、ドラマでは当時のメンバーの中にアリスがいたようですね。

「菩提樹荘の殺人」
アンチエイジングのカリスマが別宅の敷地内の池に首を突込み下着姿で死んでいた・・アリスじゃないけど、逆さで足が突き出てたら横溝正史の「犬神家の一族」だ。こういうふうに軽い笑いを入れて凄惨な殺人を扱う中の息抜きにしているのがけっこう好きだったりします。容疑者は交際していた二人の女性とマネージャーをしていた姉と秘書(付き人)の男性の4人です。被害者の裏の顔が暴かれた時点では犯人から一番遠かった人が実は、という結末。積もった恨みが爆発してしまったのねぇ
火村とアリスの出会いや、アリスが推理作家を目指すきっかけとなった高校時代のラブレター話も登場します。(これはドラマでも使われてたな~~

「若さ」をモチーフにしたということで、34歳から年をとらなくなった二人の学生時代の話が出てきたのがけっこうツボだったりします。特に「菩提樹荘の殺人」で火村の「俺は万年青年なんかより老いに寄り添えている人間を見る方が心安らぐ」というセリフがアリスが40年後の火村を「高校生より尖った頑固な爺さんになってそうだ」と想像し、火村はアリスを「微笑ましい万年青年になるかもな」と評するくだりが、二人の関係がこれからも変わらないだろうと思わせてくれます。

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