杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像

2014年03月31日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年3月29日公開 127分

日本初となる国際Ai(オートプシーイメージング:死亡時画像診断)センター発足の目玉として導入されたMRI「リヴァイアサン」。顕微鏡レベルの解像度を誇る巨大な機器は世間から大きな注目を集めていた。国と自治体、東城医大が三位一体で取り組む死因究明システムの一大改革に、田口(伊藤淳史)と厚生労働省の白鳥(仲村トオル)が奔走し、杮落としとなる大講堂でのシンポジウムを10日後に控えた中、東城医大に一通の脅迫状が届く。「三の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」ケルベロスとはギリシア神話に登場する3つの頭を持つ冥界の番犬で、ケルベロスの塔はAiセンターを指すと見られた。高階病院長の指示を受けた田口は、脅迫状の真相解明の任も背負うことになる。時を同じくして司法解剖では死因が判別できない前代未聞の集団不審死事件が発生。その中にはAi推進派の白鳥の上司がいた。そしてAiセンター始動の日・・・医学界の根底を大きく揺るがす「最悪な日」が今はじまる。


テレビドラマ「チーム・バチスタの栄光」シリーズ(伊藤淳史&仲村トオル版)の完結編だそう。
映画版としては竹内結子&阿部寛のイメージなんだがどういう棲み分けになっているのかな?

小説を読んでから随分経っているので、頭の中でシリーズの前後がごっちゃになってしまっているのに、映画では新しい設定や登場人物の役割分担が大幅に変更されていたりして更に混乱してしまいました 

田口先生が戦車に乗って行進の図は小説のイメージ通り個人的にはこのシーンが一番面白かったかも

元々TVドラマ版は原作にないストーリーや人物相関図を呈しているため、本と比較するのはナンセンスではありますが、別宮葉子にその役を宛がうのはどうよこれでは天馬君のスピンオフとか作れないじゃん

東堂を演じる生瀬勝久さん、楽しそうでしたね~
ドラマ版の最終作ということなのでオールキャスト勢揃いの趣があります。
速水晃一(西島秀俊)先生ら救命チームの活躍の場も用意されますが、これもただ一人を狙った復讐の犯行にしてはやり過ぎだわ

脅迫状を送った犯人と連続不審死事件の犯人は別。後者は新薬開発に絡む利権者への憎悪が動機。脅迫状の方は桜宮すみれ(栗山千明)が噛んでいます伏線として映画冒頭で火葬場で黒焦げのペアンが登場し、リヴァイアサンがこの謎解きに一役買うのですが、この話もそもそもは壮大なる桜宮ワールドに連なっているのよね

しかし、このペアンの一件に白鳥が関わっているというのは飛躍し過ぎじゃないの?しかもこれが彼が医師を辞めた理由なんて・・・

ともあれ、田口&白鳥コンビも見納めと思うとちょっと寂しいかも
次があるとしたら竹内&阿部コンビの映画版(ややこしい)かな

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劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日

2014年03月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年8月31日公開 102分

タイムワープ技術を用いて様々な時代を取材し、その時代の暮らしや営みをアーカイブすることを推進するタイムスクープ社。今回時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)が派遣された先は、本能寺の変から11日後の京都。人々に混乱と動揺が走る中取材をするうちに、沢嶋は織田家の侍・矢島権之助(時任三郎)と博多の豪商、島井宗叱(上島竜平)と出会う。優れた茶器『楢柴』を持つ島井の護衛に就く権之助を同行取材しているうちに、一行は謎の人物に襲われ、『楢柴』は滝壺へと消えてしまう。襲撃してきた人物がこの時代のものではない武器を手にしていたのを見た沢嶋は、歴史が変わらないようにするため、新人ジャーナリスト細野ヒカリ(夏帆)とともに『楢柴』奪回へ向かう。二人は奪回のために安土桃山時代からバブル期の1985年、第二次世界大戦中の1945年を経て、織田信長の居城・安土城の最後の一日にまでタイムワープする。謎に包まれたその最後の日に、一体何が起きたのか……。(Movie Walkerより)


TVドラマ版を楽しんでいた人には嬉しい作品なんだろうな
あ、そもそもドラマじゃなくて「ドキュメンタリードラマ風歴史教養番組」だったっけ
切り口が面白いと評判を聞いてレンタルしてはみたけれど、イマイチ好みに合いませんでした。

そもそも、あの制服のままで過去に現れて良いのか?とか、結局歴史に介入してるんじゃないの?とか色々疑問が浮かんできて集中できなかったのが大きいかなぁ。
配属先も決まってない新人がいきなり抜擢されるなんて普通ありえないっしょ?
戦時中の学校で茶器を取り戻すやり方も強引かつ稚拙で笑えます。
また、1985年のヤンキーたちとの絡みは最早コントにしか見えなかったしね。
こういう設定はもしかしたら今時の若者には逆に新鮮なのかしらん?
同じ奇抜さなら個人的には「勇者ヨシヒコ~」くらいチープな方が突き抜けてて好きだな

名もなき庶民を取材することで時代に埋もれた真実を追うという切り口は新しさを感じます。なので劇中には歴史上の有名人物は登場しません。敢えて避けているんですね。そして庶民の視点から動乱の時代を見せることで、歴史の陰で流された血や苦しみを浮き彫りにしてみせる手法もです。

しかし幻の茶器を持つ商人役の上島竜兵は・・・下手過ぎ茶器を命懸けで守った割には最後にあっさり置いて逃げてしまうあたりはキャラの描き込み不足。たかが茶器ってセリフを彼に言わせるべきじゃないでしょ

茶器を奪おうとしたのは沢嶋たちの時代の犯罪組織の一員ってのはまあ良いとして、安土城焼失もそのせいってあり?野盗がお宝を見つけられずに悔し紛れに放火した方が納得できるんですけど

沢嶋たちが携帯する色んな科学装備は面白かったです。特に超小型スパイロボットは可愛い優れものでした。相手の時間を36秒(何故この数字??)だけ止める銃はちょっと笑えたけど

杏は出番短いけどオイシイところを持って行ったね

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パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 魔の海

2014年03月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年11月1日公開 アメリカ 106分

ギリシャ神話でも知られる海の神ポセイドンと人間の母の間に生まれた、ハーフゴッドのパーシー(ローガン・ラーマン)。謎のクリーチャーに襲われた彼は、それをきっかけに人間界と神々の世界の境目にあった結界が破られ、ハーフゴッドの世界を守るタレイラの木が枯れようとしているのを知る。また、その裏にはポセイドンらによって封印された神々の父クロノスの復活が関与していた。彼の邪悪なパワーを食い止め、世界を救うべく、パーシーと仲間たちはその鍵となる黄金の毛皮を探し求める冒険に出発し……。(シネマトゥデイより)

2010年の『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』の続編です。
前作であらすじは知っているものとしてお話が進んでいくので、前作を観るか、原作を読んでいた方が内容に入り易いかも
原作の方はもう忘れかけていたけれど、映画を観て「そうそう、そうだった」なんて思い出すのも楽しかったです(大きくは設定変わってない筈

最新技術を使い見応えはあるのに日本であまりヒットしなかったのは、原作に馴染みが薄いからかなぁハーフ訓練所での「旗取り競技」をはじめ、本のイメージを上手に実写化していると思うのだけど・・。

初めにタレイア(パロマ・クワイアトコウスキー)の木の謂れがコンパクトに語られ、さり気なくアナベス(アレクサンドラ・ダダリオ)とルーク(ジェイク・アベル)の結びつきにも触れています。
今回はパーシーの異母弟であるタイソン(ダグラス・スミス)が登場します。純粋に兄を慕うタイソンに対して、一つ目の巨人・サイクロプスとのハーフであることからその外見と自分以外に父の息子がいたことへの動揺で、パーシーは素直に彼を受け入れることができずにいます。
一方アナベスもまたタレイアを殺した憎き巨人の一族であるタイソンを疑い、仲間として認めることができません。

そんな中、訓練所のバリアが破れ、鋼鉄の雄牛(コルキス)が突進してきます。何とか打ち破ったパーシーの前に、前作で死んだ筈のルークが現れて訓練所の中に裏切り者がいることを匂わせ、神々への復讐を宣言します。彼がタレイアの木に毒を盛ったためバリアが破られたのです。(幼い頃の仲間を顧みない冷酷さがここで強調されてるね

木を救うには「金の羊毛」が必要で、ケイロン(アンソニー・スチュワート・ヘッド)とミスターD(スタンリー・トゥッチ)はクラリサ(レヴェン・ランビン )を送りますが、自分に関する予言を聞いたパーシーは、自分が行かねばならないことを悟り、アナベスとグローバー(ブランドン・T・ジャクソン )、タイソンと共に冒険の旅へ、という筋書き

金の羊毛を護るサイクロプスの居場所を捜す能力を持つグローバーをルークたちに浚われ、ルークのお父さんであるヘルメス神(ネイサン・フィリオン )の元を尋ねるくだりでは、ヘルメスが宅配会社を経営していたり、「地獄の戦車タクシー」の運命の三女神との会話などはコミカルな要素が盛り込まれていて笑えます。

タイソンがポセイドンに願うと海馬が現れ、「僕が願い事をしても叶えてくれないのに」と若干すねるパーシーですが、ルークとの対決では海の水を自在に操って魅せてくれます。(3Dだと迫力も増すんだろうなぁ。)
軍神アレスの娘であるクラリサとの確執も描かれますが、魔の海の脱出のために共に力を合わせて以降は仲間として連帯していきます。
グローバーにも見せ場あり。サイクロプスをやっつける時に大活躍です

ルークの狙いはクロノスの復活で、そのために金の羊毛が必要でした。タイソンがパーシーを庇って海に落ちます。(海というのがミソなのよね)それまでわだかまりのあったパーシーは激しく後悔します。なので、水中から甦ったタイソンにそれまで自分からは口にしなかった「ブラザー」と呼びかけ抱き合うのでした。(おいおい、それは後でいいから早く羊毛どけろよ!な場面なんだけどね
クロノスのCGもでした。ポセイドンの剣だけであっさり倒されたけれど、まだ続きがあるからねぇ

戦いの中でマンティコアに刺されたアナベスが倒れますが、ここは金の羊毛の力の見せどころ
タレイアの樹も甦り、ついでにタレイア自身が甦っちゃいます。
パーシーは予言の対象者が自分ではなくタレイアではないのかと思うのだけど・・・続きはまた新作で、という期待を持たせた終わり方でした

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ウォルト・ディズニーの約束

2014年03月26日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年3月21日公開 アメリカ 126分

ウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)は娘の愛読書である「メリー・ポピンズ」の映画化を長年にわたり熱望していたが、英国に住む原作者P.L.トラバース(エマ・トンプソン)は替えのオファーを断り続けてきた。それでも諦めないウォルトに業を煮やしたトラヴァースは、決着をつけるためにハリウッドへやってくる。
彼女は、脚本家(ブラッドリー・ウィットフォード)と音楽担当のシャーマン兄弟(ジェイソン・シュワルツマン、 B・J・ノヴァク)が提案するアイデアをことごとく却下。ついに映画製作は暗礁に乗り上げてしまう。なぜ彼女は頑なに「メリー・ポピンズ」を守ろうとするのか?その答えが、幼い頃の彼女と父親(コリン・ファレル)との関係にあると知ったディズニーは、映画化実現の最後のチャンスをかけ、トラバースにある約束をする・・・。(チラシより)


1964年のミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の製作秘話です。
実は映画も観てないし本も読んでいないのですが、劇中でシャーマン兄弟が歌う曲は聞き覚えがありました。「チム・チム・チェリー」や早口言葉のような呪文のような歌とかね
エマ・トンプソンは「ナニ・マクフィー」シリーズとはまた違う、頑固で偏屈な(実はオーストラリア出身の)英国女性を演じています。これがまた実に憎たらしいの

「メリー・ポピンズ」は東の風に乗って現れた不思議な力を持つナニーがバラバラだった家族をひとつにするお話とのこと。へぇ~~そうだったんだ
鳥の頭の柄の傘とか空から舞い降りるシーンはなんとなく知っているような気もいつかどこかでチラッとくらいは目にしていたのかも

トラヴァースは辛辣な女性ですが唯一心を許したのは専属運転手のラルフ(ポール・ジアマッティ)です。
彼の病気の娘が彼女の本の大ファンであることや、ラルフ自身の人柄が彼女の心を動かしたのでしょう。

映画では、ハリウッドで脚本にことごとく異を唱える彼女の姿(客観的に見てもそれは難癖に近く製作側である脚本家や音楽家に同情したくなりますし、それにもめげずに何とか良いものを作ろうとする姿は感動的ですらあります)と、彼女が父親と過ごしたオーストラリアでの子供時代が交互に登場します。

ディズニー社内の解放的で明るく自由で楽しそうな様子とトラヴァースの頑なさ(お菓子もぬいぐるみも拒否、紅茶党など)の比較が面白いです彼女が凹んだ時にミッキーの大きなぬいぐるみを抱きしめて寝るシーンがあるのですが、子供じみたディズニーの世界観を苦手としていた彼女の心の奥に眠っていた童心が顔を覗かせていてでした。

彼女の父親は想像力に富み家族を愛する人でしたが、その性格ゆえか仕事が長続きせず、病気から来る痛みを紛らわすうちに酒に溺れるようにもなっていったようです。(またはアル中で体を壊したのか?)
父親が大好きだった彼女は、変わっていく父親を見て混乱します。母(ルース・ウィルソン)はそんな状況に耐えきれず心を病み、そんな一家を心配した母の姉のエリー(レイチェル・グリフィス)が世話にやってきたようです。彼女がナニーのモデルなのかな?現実的なエリーおばさんが与えた影響も大きいのね。

実は「メリー・ポピンズ」に登場するミスター・バンクスの基になっていたのは彼女の父親であり、ウォルトたちが彼を悪人として描くことが彼女には耐えがたかったのです。
そんなトラヴァースの心情を察したウォルトはバンクスを悪人ではなく本当は善い人として描くことで彼女の承諾を勝ち得ます。

ここまでなら美談なのに、アメリカでのプレミア試写会に彼女を招待しないところにウォルトの実業家としての計算高い一面がみられます辛辣な彼女がマスコミにどんな感想を漏らすか心配する気持ちはわかるけどねそして呼ばれていないのに会場に現れるところが彼女の凄いところこのシーンでのウォルトとのやりとりが愉快です

「メリー・ポピンズ」機会があったら観てみようっと

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31年目の夫婦げんか

2014年03月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年7月26日 アメリカ 100分

変わり映えのない毎日を送る結婚31年目の夫婦、ケイ(メリル・ストリープ)とアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)。これまでの夫婦の生活を改めたいと考えていたケイは、フェルド医師(スティーヴ・カレル)の本に出会い、彼の1週間滞在型のカップル集中カウンセリングを申し込む。セラピー参加に反対の夫を連れてメーン州のフェルドのもとを訪れ、予想外の“課題”に驚きながらも、二人は次第にため込んでいた感情を吐き出していき・・・。


メリルとトミー・リー・ジョーンズが夫婦役って面白そうというわけでレンタル
コメディではありますが期待していた内容とはちょっと違いました。良い意味で真面目に夫婦の在り方を考えさせる作品です。
登場する夫婦はどちらも相手のことを嫌いになったわけではありません。むしろ愛しているからこそ相手のために状況を好転させようとするの。

個人的には夫の「このままで十分幸せなんだから波風立てなくても」という思いの方に共感してしまうのだけど、冒頭の何気ない日常生活の描写で妻が抱える悶々とした気持ちもわかってしまうのよね。日本人夫婦なら多かれ少なかれこんな状況だよな~とは思いますが、言葉にしなくてもわかるというのは男性側の理屈で、女性は当たり前のことでも言葉にして言って欲しいものだから

カウンセラーが投げかける課題を文句を言いながらもこなそうとする姿がちょっと可愛いというかいじらしいというか・・・やはり根底に互いへの愛情がなければ無理なんですもの
カウンセラー(=赤の他人)相手に夫婦の秘め事を話すというのも勇気がいりますよね。でも口にすることで互いが何を求めていたのか、どうして欲しいのかに気付くという効果はあるようです

課題に映画館の中で○ェ○というのがあって、コメディならではの設定ですが笑いとしては微妙。そのあと本でお勉強するケイはエライね
気分を盛り上げていざ!!な場面でいつものように目を瞑る夫。目を開けて私を見てという妻。一瞬後・・・STOP。そうなんです、こういうことは精神的要素が大きい。特にもう若くない二人には・・。
結局夫婦生活が復活する前にカウンセリングは終了し、以前よりギクシャクして家に戻った二人。変わらない日常。もはやこれまでと荷づくりするケイに遂にアーノルドは決意してケイの部屋へ・・失うと思ったら恋の炎が復活ってことかい

その後のラブラブぶりはまさに若かりし頃を彷彿するかのよう。娘や息子夫婦にフェルド医師まで呼んで二度目の結婚の誓いをしちゃうほどま、いいけどさスキンシップだけじゃなく、互いが望むことに気付くことが大切なんだということも伝わるので

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クロワッサンで朝食を

2014年03月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年7月20日公開 フランス・エストニア・ベルギー 95分

エストニアの小さな町に住むアンヌ(ライネ・マギ)は、2年間介護していた母を看取ったばかり。そんな彼女にフランス語が話せるからとパリでの家政婦の仕事が舞い込んでくる。心の空虚さを持て余していたアンヌは意を決して憧れのパリに向かうが、彼女を待ち受けていたのは、高級アパルトマンに独りで暮らす、毒舌で気難しい老婦人フリーダ(ジャンヌ・モロー)だった。アンヌの雇い主は、近くでカフェを経営するステファン(パトリック・ピノー)で、フリーダ自身は家政婦など求めてはいなかったのだ・・・。


実はフリーダもアンヌと同じエストニアの出身です。遠い昔にパリに出てきて今では洗練されたパリジェンヌになっているフリーダにとって、アンヌの作るエストニア風の朝食や彼女がスーパーで買ってきたクロワッサンは我慢がならないの最初、アンヌは部屋の中で靴を脱ぎますが、パリでは当然土足のまま(エストニアの生活様式は日本と似ているのかな?とふと思いました)年齢も性格もこれまでの境遇も異なる二人は反発しあいますが、やがて双方の持つ孤独や悲しみに気付き、歩み寄っていきます。

気位の高いフリーダがアンヌにかつての自分を重ねて少しずつ心を開いていく様子が、例えば彼女に自分のコートをあげて一緒に散歩するシーンにみてとれます
フリーダとステファンの関係もフランスなら「あり」だね
彼女はまだステファンに男を見ているけれど、彼にとっては老後の世話であり義務でしかないのが伝わってきて哀しいね
アンヌはフリーダの孤独を慰めようとかつてのフリーダの友人たちを招くのですが、過去の恋愛絡みの揉め事を知らなかったため、却ってフリーダを傷付けてしまい、フリーダもその鬱憤をアンヌに向けたことから関係に亀裂が入ります。部屋を飛び出したアンヌがステファンとというのもまぁ仏映画だからなぁ
アンヌの部屋で置き去られているコートを見たフリーダの喪失感が伝わってきてこのシーンも良かったなま、結局アンヌは戻るんですが何事もなかったように出迎えるフリーダもまた

映画でフリーダが身に着けているシャネルファッションは、ジャンヌ・モローの私物だそうです。部屋もまたシャネルの自宅にあったコロマンデル風の屏風が飾られていたり、ウェッジウッドのティーカップセットやイヴ・サンローランの手縫いのカーテンなど、小粋で洗練された雰囲気を出していました。

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アナと雪の女王

2014年03月19日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年3月14日公開 アメリカ 102分 2D字幕鑑賞

アレンデール王国の姉妹エルサとアナは、幼い頃は大の仲良しだった。だが触れたものを凍らせるという禁断の力でアナを傷つけてしまった日から、エルサの魔力は秘密とされ、二人は離ればなれに育てられる。エルサは妹を傷つけることを恐れ自分の世界に閉じこもり、アナは姉に嫌われたと思い込む。やがて美しく成長したエルサは新女王として戴冠式に臨むが、力を制御できずに真夏の王国を冬に変えてしまう。
城から逃亡した彼女は、生まれて初めて禁断の力を思うがまま解き放ち、雪と氷を自由自在に操り、冬の王国を作り出す。愛する者を守るため本当の自分を隠して生きてきたエルサは、“雪の女王”となることで生きる喜びと自由を手に入れたのだ。一方、妹を守るために姉が払ってきた犠牲と愛の深さを知ったアナは、エルサと王国を救うため、山男のクリストフとその相棒のトナカイのスヴェン、“夏に憧れる雪だるま”のオラフと共に雪山の奥深くへと旅に出る。アナの思いは凍った心をとかし、凍った世界を救うことができるのか?そして、すべての鍵を握る“真実の愛”とは…?(チラシ&HPより)


映画の原案はアンデルセンの「雪の女王」からインスピレーションを得たそうです。
雪の女王と言うと冷たい心の持ち主のように思いますが、この映画では誰も傷つけたくなくて閉じこもっていた人一倍優しく愛情に溢れた女性として描かれています。
そもそも隔離して育てること自体が間違っているのよね~~とお姉ちゃんに同情しちゃいました。ま、それも両親の愛故だったんですが互いを想う故に傷つけてしまうことはよくあること。でも魔法が絡むと事は厄介ね。

妹の方は天真爛漫というか無邪気というか、恐い記憶はトロールに消されてしまっているのだから仕方ないとはいえ、もう少し姉の気持ち察してみろよ!と言いたくなるほどあっけらかんとしてます。
長い間、閉ざされた城で退屈しきっていたのだから、戴冠式のお祭り騒ぎに浮き立つのはわかりますが、出会ったばかりの王子に一目惚れして即結婚したいなんぞ、エルサじゃなくても分別のある大人なら反対するっつうの

口論となり、姉の手袋を引っ張ってしまったため、封印されていた力が暴走して王国は雪と氷に閉ざされてしまいます。思わず城を逃げ出したエルサは、北の山で初めて自由に自分の力を使ってみます。孤独だけれど誰も傷つける心配もない自分だけの場所を見つけたの

アナは姉の秘密を今さらながらに知り、彼女と王国を救おうと姉の後を追いかけるの。その途中で氷配達人のクリストフと出会い、半ば強引に彼を冒険に引っ張り込みます。あれれ~~ハンス王子がいるのにいいの?と思ったら・・・後半、王子の邪悪な本性が暴かれ、なるほどね~~この展開は小さな子にはちょっと毒がある気もしますが、大人としては楽しめる内容でした。やっぱり愛情は時間をかけて育てるものよね

クリストフの相棒のトナカイ・スヴェンや雪だるまのオラフ、岩みたいなトロールたちなど人間以外のキャラも可愛いです
オラフは子供の頃にエルサがアナのために作ってあげた雪だるまなの夏に憧れるオラフですが、夏が来たら融けてしまうじゃんでもそこは魔法の力で彼の夢は叶うのでした

ディズニーアニメーションはとにかく風景が美しいのですが、今回も雪や氷のシーンが素晴らしかったです。いつものシネコンでは2Dしか上映がなく、春休みが近いせいかかなりの盛況で前から三列目しか空いていなかったので首が疲れましたが、それでも十分楽しめました

本編の前に「ミッキーのミニー救出大作戦」という短編が上映されました。
実はミッキー&ミニーのお話はあまり好きじゃないのよね
ファンにはノスタルジーに浸りながら現代的でもあるので喜ばれるんだろうなぁと思いながら少し醒めた目で観ちゃいました。


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箱入り息子の恋

2014年03月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年6月8日公開 117分

市役所に務める35歳の健太郎(星野源)はこれまで女性と付き合った経験もなく、いまだに実家で両親と暮らしている。父(平泉成)も母(森山良子)も息子を気遣い、親同士が子どもに代わって相手と対面する「代理見合い」への出席を決める。そこで今井夫妻(大杉漣、黒木瞳)と知り合った健太郎の両親は、目が不自由な彼らの娘奈穂子(夏帆)のことを知り……。(シネマトゥデイより)


子供の入社式にまで親がついて行く時代ですから、本人の代わりに親同士が見合いするというのもありなんだろうけど、まさに箱入り息子だ
この息子、市役所勤め13年、無遅刻無欠勤、昇進試験は拒否しヒラのままずっと同じ部署で移動なし。昼食は家に帰ってきて食べ、17時になると速効帰宅し、酒もたばこもやらない。彼女いない歴=年齢でもちろん童貞。あ~~やだやだ!!と母親だったらため息の一つや二つや三つ四つ出てしまうわ

しかし彼がこうなった遠因にはこの母親の過保護というか甘やかしというか、彼女自身が子離れ出来ていないことが浮かんでくるの。何だか身につまされて思わず胸に手を当ててしまいました

「代理見合い」の席で知り合った今井夫妻はといえば、病気で失明した娘のために良き伴侶を見つけたいと思って参加していました。父親の方は高学歴高所得のバリバリ働く婿がいいの。だから外見も収入もパッとしない健太郎は問題外の相手です。(そもそも彼が望むような男性が盲目の娘を選ぶのか?という疑問が浮かぶのですが)でも母親の方は定時に帰宅し酒もたばこもやらない事の方がポイント高いの。亭主関白気味の夫が仕事と称して外で遊んでいることにも気付いている彼女は、娘には優しく誠実な男性と結ばれて欲しいのよね。その気持ちわかるわ~~

そんな親の事情は知らない当人たちは、雨の日に偶然出会います。奈穂子に傘を貸したことが縁で見合いすることになったのですが、その場で彼女の父親から罵倒され雰囲気は最悪になります。この時最初にキレるのが健太郎の母だという点でも、彼女の息子への精神依存度がわかるというものです。しかし当人たちは互いに惹かれあうようになります。奈穂子の母親が後押ししてデートを重ねる二人の姿が何とも微笑ましいの。

でもこの作品、基本的にはコメディなんだね
二人が結ばれるシーンでは、女性経験無しの健太郎君が一発でうまくいくのかいな?と思って観ていたら案の定。でもそれが逆にリアリティを醸し出していてでした。
二度目は何と彼女のお部屋。しかも互いの親に反対されていて、おまけに事の最中に彼女の両親が部屋に入ってくるという最悪な展開シーツを効果的に使う演出でとっても奇麗なシーンなのに

奈穂子を助けて車に轢かれたり、彼女の父親に殴られた揚句ベランダから転落したりで散々な健太郎君・・お前は不死身か??特に転落後のシーンの足の角度はどうみても即死の状況なんですが・・これもコメディのお約束でしょうか。
ともあれ、二人の間には確かな愛情が育まれていき・・お後がよろしいようで

脇役キャラの中では、職場でやりまんと陰口をたたかれている同僚女子(穂のか)が意外と良い子で高ポイントでした。

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怪盗グルーのミニオン危機一発

2014年03月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年9月21日公開 98分 

月泥棒の偉業を成し遂げ、孤児3姉妹マーゴ、イディス、アグネス(須藤祐実、矢島晶子、芦田愛菜)の父親となったグルー(笑福亭鶴瓶)は、悪党稼業から足を洗いマイホームパパになろうと努力していた。ある日、世界レベルで悪と戦う超極秘組織「反悪党同盟」に引き抜かれて相棒のルーシー(中島美嘉)と共に、極秘研究所から盗まれた突然変異を起こすPX40という薬とそれを盗んだ犯人の捜査にあたることになる。行動を共にするうち、ルーシーに恋心を抱くようになったグルー。しかし、ショッピング・モールのメキシコ料理店主・エドアルド(中井貴一)が伝説の怪盗エル・マッチョであり、今回の事件の犯人であると見抜いたのに、同盟は別人を犯人と断定しお払い箱になってしまう。そんな折り、グルーの仲間でバナナが大好物のミニオンたちが姿を消し、それがエル・マッチョの仕業と判明。さらにルーシーも捕まってしまう。グルーは、家に残っていたミニオン軍団のデイブとスチュアート、娘たちと救出に向かう。薬で狂暴化したイーブル・ミニオンたちを元に戻しルーシーを取り戻せるのか・・・。


「怪盗グルー」シリーズ第二作です。
鶴瓶の声とキャラが合ってるので敢えて吹替で観ます。

大勢いるミニオンたちが減っても・・・気付かないよねぇ
しかもさらわれたミニオンたちは南の島で楽しくバカンスしてるし
ところが、彼らをさらったのはエル・マッチョに雇われたネファリオ博士で、PX40をミニオンたちに投与して凶暴に変えてしまうの歯が尖って紫色に変身するから小さな子供でもわかりやすい変化だね
博士は基本的には悪いことがしたいヒトなんだけど、家族(グルーや娘たちやミニオンたち)は守りたいの。だから彼らがピンチになると手助けしちゃいます。抗体を作ってイーブル・ミニオンを元に戻したりね

子供の頃のトラウマで女性恐怖症気味のグルーでしたが、本作ではルーシーに恋をしゴールインまた、父親としてマーゴがアントニオと仲良くするのを邪魔しまくります。(一見アンニュイで女の子受けするタイプのアントニオに嫌悪感を抱くのは父親としては当然かもしかもエル・マッチョの息子だしね)

相変わらず可愛いミニオンたちですが、今回も見分けがつかなかった~

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銀の匙 Silver Spoon

2014年03月12日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年3月7日公開 111分

進学校に通いながらも、成績が上がらずに居場所をなくし「寮があるから」と言う理由だけで逃げるように大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学した八軒勇吾(中島健人)。御影アキ(広瀬アリス)や駒場(市川知宏)ら同級生たちはそれぞれに将来の目標や夢を持っていて、そんな彼らに劣等感を感じつつ、農業高校の生活に四苦八苦の生活が始まる。酪農科学科では、ニワトリ、豚、牛など家畜の世話はもちろんのこと、牛の搾乳や直腸検査、豚のと畜など、経験したことのない様々な学習がてんこ盛りだった。毎朝5時起きで家畜の世話の毎日なのに、アキに誘われて入部した馬術部の起床時間はなんと朝4時!体育の授業の校内マラソンは敷地一周20km!思わず「こんな学校辞めたい」と弱音をもらす。実習で出会ったひときわ小さな子ブタに「豚丼」と名付け可愛がる八軒に酪農家の息子の駒場やタマコらクラスメイトたちは「経済動物はペットじゃない」「中途半端な同情はよせ」と忠告するが、サラリーマン家庭に育った八軒は、家畜の命に対する割り切れない思いを抱いていた。
御影牧場での住み込みアルバイト、ベーコン作り、馬術新人戦…。何もかもが初体験だらけの高校生活の中で、農業の厳しい現実にもぶつかる八軒。汗と涙と泥まみれの酪農青春グラフィティ!!


荒川弘の同名青春コミックの実写映画化作品です。TVアニメも放映されてたんだね
コミックは全部読んでいるので、実写化と聞いて嬉しさと戸惑い半々でしたが、発表されたキャストとキャラにあまり違和感がないように思ったので劇場鑑賞することにしました。
キャッチコピーは「最強に理不尽な青春!!」 主題歌は ゆずの「ひだまり」です。

コロボックルのような校長先生(上島竜兵)、軍隊の教官のような服装と口調の富士先生(吹石一恵)、タマコはイメージ通り。特にスレンダーだけどグラマラスな富士先生はサングラスかけてるとコミックから抜け出してきたようにドンピシャではまってました
八軒が校長先生に将来の夢がないと言ったところ「「夢がない・・それはいいですね」という答えが返ってきます。それは何にでもなれる可能性があって良いということなのですが、この名言エピソードもしっかり入っていてでした。もちろん「銀の匙」の謂れもね

映画では中島先生が担任と馬術部顧問を兼任。大仏顔の中島先生を演じる中村獅童ですが、目の細さが似てなくもない。アキのお父さん(竹内力)ははまり役だけど、八軒のお父さんはもっと強面の役者さん(例えば松重豊あたり)が良かったかも
アキと駒場の友人の南九条あやめ(黒木華)も縦ロールのタカビーお嬢様キャラをうまく演じてました。『小さいおうち』の時とは別人のよう。やっぱ女優だわ特にばんえい競争の時の乗馬服サイコー!!あともう少し弾けてくれたら満点なんだけど。

エゾノー祭(文化祭)がメインエピソードなので、ピザ作りや鹿の解体、犬の副ぶちょーを飼うことになったいきさつなどは省かれていました。また、アニヲタの西川君や八軒のお兄さん(あの味音痴キャラ好きなんだけどな)も登場しません。
ばんえい競馬のソリのイタいデザインを描いたのは馬術部部員に変更されてました。八軒が過労で倒れるエピソードもなくなってます。クライマックスで主役がいないんじゃ盛り上がらないもんね

駒場の家が借金が嵩んで離農することになったエピソードで酪農の厳しい現状が描かれます。
タマコの家の大規模酪農の様子も加えたら対比がより鮮明になったんじゃないかなぁ

色々コミックとの違いもあるけれど、二時間という枠の中でうまくまとめられていて良かったんじゃないかな面白かったです
コミックは現在11巻発売中。八軒は起業という夢を持ち始めます。自分のことと同じくらい友人のことで一生懸命になれる八軒の今後も楽しみだ~~

2023.11.30 DVDで再視聴

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終戦のエンペラー

2014年03月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年7月27日公開 アメリカ 107分

日本が連合国に降伏し、第2次世界大戦が終結した1945年8月。ダグラス・マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)率いるGHQが日本に置かれ、米軍統治が始まる。彼は日本文化に精通している部下ボナー・フェラーズ准将(マシュー・フォックス)に、太平洋戦争における天皇の責任についての調査を命じる。わずか10日間という期限の中で懸命な調査を続けるフェラーズは、ついに最大ともいうべき国家機密に近づいていく・・・。


当時の米大統領は政治的思惑から天皇を処刑したい意向があったようですが、もし天皇が処刑されることになれば、日本は混乱の極みに達し、共産主義者が台頭して統治が難しくなることをマッカーサーは懸念していました。日本統治に成功すれば、自分が将来大統領選に出た時に有利になるという計算もあったようです。それで、天皇に戦争責任がないことを証明するために、処刑賛成派の人間ではなく知日家のフェラーズを選んだのです。

フェラーズは学生時代にあや(初音映莉子)という日本人留学生と交際していました。
ある日突然帰国してしまった彼女を追って開戦前に日本にも来てきます。そこで彼女の伯父で軍関係者の鹿島(西田敏行)に知己を得て、日本軍人についての論文への助言をもらったりもしていました。彼がマッカーサーと共に日本へ来たのは彼女の行方を捜す目的もあったのです。通訳の高橋(羽田昌義)に秘かにあやの行方を調べさせますが、静岡の空襲で死んでいたことがわかります。役職を利用して彼女の住む静岡に爆撃しないよう操作していた彼はショックを受けます。そのことは彼を疎ましく思う者に知られ、元帥に告げ口されるのですが、全てを知ってなおフェラーズを買っていた元帥にはどうでもいいことだったようです。

フェラーズは東条や近衛文麿前首相(中村雅俊)や天皇の関屋貞三郎枢密顧問官(夏八木勲)と接触し、開戦に天皇がどのように関与したかを聴取していきますが、開戦を強く主張した東条英機(火野正平)ら軍部に押し切られるようにして始まったとして、では天皇が開戦に合意したのか、積極的に関わったのかを示す証拠も、反対したという証拠も聞き出すことはできませんでした。関屋からは御前会議で天皇が日露開戦時の明治天皇の御製を引用して開戦への反感を示したことを伝えられますが、このままでは処刑止む無しという結論にせざるを得ない状況で、今まで消息不明だった内大臣木戸幸一(伊武雅刀)から重大な「極秘」証言を得るのです。それは天皇自らが閣僚側近らに「降伏」の意志に「同意してほしい」と求めたことが終戦の決め手となったという事実でした。また、一部の軍人が天皇が吹きこんだ降伏受諾の録音テープを奪おうと宮中に押し入ったという衝撃の事実も語られます。
開戦時の天皇の関与に関しては玉虫色でも、終戦に果たした役割は明らかになったのです。

フェラーズの報告を聞いたマッカーサーは、証言以外に証拠となる文書が無いことに不満を露わにしますが、同時に天皇の人となりに強い興味を持ち、会談が実現します。予め皇室側から申し入れられていた数々の作法を無視するマッカーサー。天皇の目を見て話し、握手を求め、記念撮影まで。挙句天皇の右側の椅子に腰かけるんだもの。まるで挑発しているかのよう。そんな彼を受け入れ、全責任は自分にあり、懲罰を受けるのは日本国民ではないと言う天皇に、マッカーサーは、懲罰の話ではなく日本の再建のために力を貸してほしいと応じます。この会談シーンが作品の肝でした

この映画で、傲慢な統治者としてのマッカーサー像が少し違って見えてきました。
フェラーズがあやを回想するシーンがところどころに挿入されますが、日本の将来をたった一人の女性が変えた(救った)かもしれないというのはフィクションとしては面白いけど実際はそんな単純な話ではないだろうね

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ホワイトハウス・ダウン

2014年03月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年8月16日公開 アメリカ 132分

議会警察官のジョン・ケイル(チャニング・テイタム)は、現大統領ジェームズ・ソイヤー(ジェイミー・フォックス)の大ファンである娘のエミリー(ジョーイ・キング)を喜ばせようとシークレットサービスになるための面接試験を受けるが不採用となってしまう。そのことを娘に言えず、気晴らしも兼ねてホワイトハウスの見学ツアーに参加している最中、謎の武装集団がホワイトハウスを襲撃・占拠するという前代未聞の事態が発生する。政府が大混乱に陥る中、ジョンは大統領や娘、そして合衆国の命運をかけた戦いに身を投じる。


ジョンは元軍人。今の仕事はラフェルソン下院議長(リチャード・ジェンキンス)の警護ですが、大統領のファンである娘を喜ばせようと大統領警護官への転職を志望します。それって何だか動機不純でも面接官のフィナティは大学の同窓生で昔の彼の行状を知っていて不採用になるの。娘に本当のことが言えず誤魔化してしまった彼は、偶然大統領と遭遇したエミリーが「パパはシークレットサービスになるの」と紹介され焦ります。大統領は優しくエミリーに微笑みかける傍ら、ジョンには「嘘は良くないな」と耳打ちして一喝。二人の出会いは気まずいものでした

そんなことのあったすぐ後で起きたテロリストの襲撃で事態は一変します。はぐれてしまった娘を探すべく単独でホワイトハウス内を捜索するジョンは敵に出会うと容赦なく倒していきます。元軍人という設定がここで生きてくるのね
エミール・ステンツ(ジェイソン・クラーク)率いる傭兵部隊がテロリストの正体ですが、首謀者は大統領の警護担当官のマーティン・ウォーカー(ジェームズ・ウッズ)でした。その事実を本人から突き付けられ愕然とする大統領でしたが、娘を探していたジョンに救われ行動を共にすることになります。

ウォーカーは定年間近でフィナティの上司です。過労気味の彼女に家に戻れとハウスから出したのは彼なりの温情だったのでしょう。その一方他の部下たちは容赦なく殺しているのが何とも・・・

大統領の確保に失敗した彼はステンツたちに確保を指示しておいて、閣僚やツアーの民間人を手中に収めフィナティを通してホワイトハウスの占拠を宣言し、現金と輸送機を要求します。
彼の息子が過去に大統領の指示した極秘作戦で戦死していたことが動機として提示されますが、彼の真の目的は別。そのためには生きた大統領が必要だったわけです。そういえば『エンド・オブ・ホワイトハウス』でも最終目的はコレだったな
あちらは北朝鮮を敵役に祭り上げていたけれど、今回は狂信的な同国人の設定の違いだけで、展開も結末もあまり変わらない分、どうしても二番煎じな感が拭えませんでした。
そういえば公開時も似たような内容だったため劇場鑑賞は見送ったんだっけ

さて、娘の方はテロリストたちを目撃してこっそり動画撮影してネットに流します。これが英雄的行為としてニュースとなったことでステンツたちにジョンを誘き出すための餌にされてしまうの。その場で殺されなかったのが不思議なくらいですが

州軍が包囲し、マスコミや野次馬が群がる中、大統領を乗せたジョンの車(武器装備の公用車)を追うテロリストとのカーチェイスや派手な爆発の模様が中継され、二人の安否が絶望視されると、脱出していた閣僚たちはさっさと次の大統領を決めてしまいます。最高責任者の椅子は一刻も空けておけない事情があるってわけです。副大統領に権限が委ねられ、彼が乗った飛行機が撃墜されると今度はラフェルソン下院議長に渡ります。何がって?核ミサイルの発射コードなんだな、これがそして事件の本当の黒幕は・・・当然最後にその椅子に座ろうとするヤツだな

発射コードが打ち込まれ、こうなったらホワイトハウス毎爆撃するしかないというピンチの中でジョンたちの戦いが繰り広げられ、その最大のピンチを救ったのが旗(星条旗?)を振るエミリーというのも出来過ぎですが、ま、いっか

大統領警護官の職も娘の信頼もGETしたジョンが実は一番ラッキーマンかも
何気にツアーの案内人の青年のオタクぶりがでした。最後に見せ場まで貰ってたし

軍需産業と政治家の癒着がベースにあったり、戦争より平和というメッセージも見えますが、私は『エンド・オブ・ホワイトハウス』の方が良かったな

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ホビット 竜に奪われた王国

2014年03月05日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2014年2月28日公開 アメリカ 161分

魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)に誘われトーリン・オーケンシールド(リチャード・アーミティッジ)ら13人のドワーフたちとともに、巨大な竜スマウグ(声:ベネディクト・カンバーバッチ)に奪われたドワーフの王国エレボールを取り戻す旅に出たホビット族のビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)。臆病だったビルボは、旅を通じて自分にも知恵や勇気があることに気付き、ドワーフたちと固い絆で結ばれていった。獰猛で巨大なクモの群れの襲撃、ドワーフたちと因縁のある森のエルフとの遭遇、急流を下りながらのオークとの死闘など、旅路は困難を極めた。それでも彼らは目的を果たすため、恐ろしいスマウグがいるはなれ山の荒れ地を目指す……。


「ホビット」3部作の第2部です。
前作までの流れを頭の中で思い出しながら観て、いよいよクライマックスかというところで「続く」。第二部のお約束とはいえ、どうしても中だるみしちゃうのよねそんな本作のお楽しみとしては、レゴラスの登場と、その華麗な戦いシーンかな激流の中、まるでダンスをしているかのような優雅でかろやかな身のこなしと、素早く正確に繰り出される弓矢の技に見惚れてしまいます。この部分だけもう一度観たいくらい。

ドワーリン (グレアム・マクタヴィッシュ)、バーリン (ケン・ストット)、キーリ(エイダン・ターナー)、 フィーリ( ディーン・オゴーマン)、ドーリ(マーク・ハドロウ)、ノーリ(ジェド・ブロフィー)、オーリ(アダム・ブラウン)、オイン(ジョン・カレン)、グローイン(ピーター・ハンブルトン)、ビフール(ウィリアム・キルシャー)、ボフール(ジェームズ・ネスビット)、ボンブール(スティーヴン・ハンター) あぁ、今回もやっぱり覚えられないドワーフの面々。

とはいえ、幾人かはそのキャラと顔の見分けがつくようになってきたぞ
まずトーリン。ドワーフの王だし出番多いしね。それから今回フィーチャーされているのが甥のキーリトーリンは渋みがかったイイ男だけど、キーリは若くてハンサムでユーモアもあります。エルフのタウリエル( エヴァンジェリン・リリー )に種族を超えた恋愛感情を持ち、彼女もどうやら同じ気持ちのよう。でもタウリエルを思慕するレゴラスはそんな二人を苦々しく見ていて、この三角関係は最終作で何らかの動きがありそうね。
キーリのお兄さんのフィーリも何となく覚えちゃったぞあと、策士のバーリンも
レゴラスがグローインの持っていた写真をみて「これは誰だ?」と詰問した時、妻と息子のギムリと答える場面では後のレゴラスとギムリの関係を連想してクスリとしてしまいました

本編でも最後は人間がドワーフやエルフたちと力を合わせて巨大な敵に打ち勝ちますが、スピンオフ作であるこちらも弓の達人バルド(ルーク・エヴァンズ)が登場し、次回に期待をもたせています。あの「矢」で竜を射止め、祖先の汚名を晴らすんだろうなぁさしずめアラゴルン的役回り?(原作読んでいないので全くの推論ですが)。

はなれ山の地下でのスマウグとの戦い自体は少々物足りなさが。小さなドワーフやホビットが巨大な竜に立ち向かうのは体力じゃなくて知恵の方ですから迫力を期待してはいけないですが。
金貨財宝ざっくざくな竜の住処でトーリンの王位の正当性を示すアーケン石を探すビルボ。「一目で他とは違うことがわかる」白く輝く宝石ってどんなん?と思ってたら・・白というより青かったま、確かに他とは全く違うけど・・あのアーケン石、そういえばどうなったんだ?

スキンチェンジャー(姿を変える能力)の獣人ビヨルン(ミカエル・パーシュブラント)が実はけっこうイイ奴なのに対して、闇の森のエルフの王でレゴラスの父のスランドゥイル(リー・ペイス )は、先のスマウグとの戦いで戦意喪失し、自国防衛のみに固執しています。財宝やワインを好み、他者を顧みない狭量さは、タウリエルへの扱いや、トーリンに出した交換条件等に見え隠れしています。

ガンダルフはといえば、途中からこれまたお得意の別行動。ラダガスト(シルヴェスター・マッコイ )の登場も本編ファンには嬉しいサービスでした。

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ウルヴァリン:SAMURAI

2014年03月03日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2013年9月13日公開 アメリカ 125分

カナダで人目を避けるように暮らすウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)は、以前命を救ったことのある日本人実業家・矢志田からの願いで、彼の部下ユキオ(福島リラ)と共に日本へと向かう。不敵なまなざしを向ける矢志田の息子シンゲン(真田広之)に迎えられ、病床の矢志田と再会したローガンは彼から謎めいた言葉を告げられる。ほどなくして亡くなった矢志田の葬儀中にヤクザが襲撃してきて、ローガンは矢志田の孫娘・マリコ(TAO)を連れて逃げ出すが……。


「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(2009)に続くシリーズ第2弾です。
愛するジーンを喪い夜毎悪夢にうなされるウルヴァリンの元に、かつて長崎で命を助けた矢志田が命尽きる前にぜひ会いたいとの伝言を携えたユキオが現れます。でも一日だけならと彼女と共に日本を訪れたウルヴァリンを待っていたのは、彼の持つ不死身の治癒能力を奪おうとする企みだったのです。

命を救ってくれたお礼に能力を奪い我がモノにしようなんて図々しいにもほどがあります。事業が成功し権力財力を手にした人間が最終的に望むのが不死、というのもベタですねぇ娘を殺しても自分が権力を握りたいというシンゲンも相当なタマ。矢志田の息子だもんなぁ。
それに比べて孫娘のマリコはとってもまとも。でもだからといってウルヴァリンが彼女に心を移すの、早すぎませんかぁぁ
ジーンを亡くした喪失感からの脱却・回復という意味でこのエピソードが必要だったということかしらん。

というわけで、舞台は日本。でもねぇ・・・ハリウッドの描く日本ってどこか変。どこかオカシイ。
新幹線の上のバトルなんてありえね~~~
細かいことは気にせずストーリーを楽しめばいいとは思うんですが、ところどころ微妙に気になって仕方なかったのでございます日本以外が舞台ならそういう不自然さに気付かずに観ていられるんですけどね

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ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~

2014年03月03日 | 
三上 延(著) KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (発行)

静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。彼女の答えは―今はただ待ってほしい、だった。ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。謎めいたいわくに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。邂逅は必然―彼女は母を待っていたのか?すべての答えの出る時が迫っていた。

     
プロローグとエピローグにはリチャード・ブローティガン著『愛のゆくえ』(新潮文庫)が使われています。前号で大輔が告白した時の返事をするというシチュエーションなのに、どうも日付が前後しているような??プロローグの日付が5月31日なのに対しエピローグは5月が終わるまでまだ5日ほどあると書かれているんだもの。それとも次巻で5日間の出来事が書かれていくのかしらん?
この本は栞子と母それぞれが、愛する男性と互いの気持ちを確認し合う場に登場します。母娘の新たな共通点として位置付けられているようです。待ち続けると答えた栞子の父と、共に行こうと答えた大輔のスタンスの違いが面白いです。

第一話 『彷書月刊』(弘隆社・彷徨舎)
せどり屋の志田の過去が明かされます。
古書を売りに来ては暫くすると買い戻すという謎の女性客の行動と本に付けられた印や書き込みの理由は、栞子さんじゃないけれど何となく想像が付きました。が、その客が捜していた相手については大輔の推理通りなのかなと思って読んでいくとあっと驚く事実が!!さすが栞子さん、読みが深いぞ

第二話 手塚治虫『ブラック・ジャック』(秋田書店)
やっと馴染み深い本(漫画)が登場したぞ
それにしても発行年代によって収録された内容が異なっていたり、作者が作品に手を入れて描き直していたなんて知らなかったです
栞子の親友の滝野リュウ(滝野蓮杖の妹)が登場し、彼女の後輩から頼まれて、この本の紛失の真相を探るうちに、後輩の家庭の事情に首をつっこむことになり、しまいに父親と引きこもりの息子の関係まで改善する手助けをしちゃってるという。
そしてリュウもまた栞子の母の傀儡の役割を振られていたというオチにこの母親の底知れぬ恐さを感じます。

第三話 寺山修司『われに五月を』(作品社)
栞子が大輔の告白の返事を保留したのは母に会ってどうしても確かめたいことがあったからでした。しかし母は彼女に「宿題」を解いたらという条件をつけます。その宿題がこの第三話です。
昔迷惑をかけられて出禁にしていた門野澄夫の依頼(兄が死ぬ間際に蔵書を譲るといったが遺族が渡してくれない)を渋々引き受け、その真偽を確かめるのですが、ちゃらんぽらんな迷惑男に見えた澄夫の意外な一面を大輔だけは後で知ることになります。こういうギャップに弱いわぁ
寺山修司は名前や書名のいくつかは聞いたことがあるけれど、実際に読んだことはありませんでした。栞子が口ずさむ「五月の詩」に惹かれるものがありました。機会があったら読んでみようかな
その本を本当に愛している人が持ってこそ本も生きるという考え方も良いな

今回新しい試みとして断章が挿入されています。
本筋の視点は大輔君なのですが、断章では相手の視点で顛末記が語られるのです。これはちょっと新鮮で面白かったな。

断章Ⅰ 小山清『落穂拾い・聖アンデルセン』(新潮文庫)・・・志田
断章Ⅱ 小沼丹『黒いハンカチ』(創元推理文庫)・・・リュウ
断章Ⅲ 木津豊太郎『詩集 普通の鶏』(書肆季節社)・・・栞子

本作に登場する「事件」においても、栞子は依頼人のちょっとした目の動きやしぐさ、呼吸の速さや間の取り方で、心を読んで真実を当ててしまうのですが、それはまさしく母親譲りの才能です。そしてそのことを自覚するが故に、自分もまた母のように突然何もかも投げ出して探求の旅に出るのではないかとの不安を抱えていたのでした。
彼女が母に尋ねたのは父親のことです。そして、父親が、母がいつかいなくなってしまうかもしれないことを承知でプロポーズしたことを知りショックを受けます。今回も母の誘いに乗らなかったのは大輔との約束が頭をかすめブレーキをかけたから。
でもね、栞子と母の決定的な違いはこういうところにあるんじゃないかな?何もかも捨てて自らの欲望に忠実に生きた母を父はただ待つだけでしたが、大輔は愛する人に共に行こうと提案する。彼が背負っているものがなく身軽であるとはいえ、この違いは大きいと思うなぁまさに目から鱗、だね。

どうやら上手くまとまりそうと安堵した矢先、再び栞子を傷付けた男の脅迫文が
保釈中にそんなことしたら取り消されるで~~
次巻に期待を持たせる終わり方だなぁ。連続ドラマじゃないんだから、なるべく早く出版してね

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