杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ネクロポリス 上下巻

2009年01月31日 | 
恩田 陸:著  朝日新聞社:発行

(上巻)
懐かしい故人と再会できる場所「アナザー・ヒル」。文化人類学の研究のために初めて訪れた東大院生のジュンを迎えたのは、鳥居に吊るされた死体だった。これは何かの警告か。世間を騒がせている「血塗れジャック」事件の真相解明とともに、ジュンは犯人捜しに巻き込まれていく―。

(下巻)
聖地にいる173人全員に殺人容疑が降りかかる。嘘を許さぬ古来の儀式「ガッチ」を経ても犯人は見つからない。途方にくれるジュンの前に、「血塗れジャック」の被害者たちが現れて証言を始めた。真実を知るために、ジュンたちは聖地の地下へ向かうが…。

友人のお薦め通り、面白い小説でした。

英国と日本の文化が融合した架空の世界「V.ファー」。
「アナザーヒル」と呼ばれる陸の孤島では、死者と交流する「ヒガン」と呼ばれる行事が毎年行われているのですが「V.ファー」で連続殺人事件が発生した年、聖地である「アナザーヒル」でも同様の事件が起きるのです。

上巻では、多数の登場人物の相関図が頭に馴染むまで多少の時間を要しますが、同時に不思議な、でも何故か懐かしいような聖地での風習の数々に胸ときめかせてページをめくることになります。

対する下巻の後半、「アナザー・ヒル」の変質の原因究明で盛り上がるだけ盛り上げておいて「それだけ?」という肩透かしなラストはいただけないのですが。

まあ、その前までは確かにおどろおどろしさと懐かしさが混在したような独特のファンタジーの世界にどっぷりとはまっていられましたので、全体としては及第点かな。

アナザー・ヒルにおいては、『死はイベントであり、日常と地続きであり、死者と一緒に楽しんでしまうしかない。』というジュンの達観と、

『人間と言うのはなんと不可思議な存在だろう。極めて物理的な存在でありながら、やはり自然の一部であり、容れ物である身体に比べて、精神活動は超自然に近い。現実的であろうとする精神は常に矛盾の間で引き裂かれつつも、その微妙なバランスの取れた小さな一点を縫うようにして未来へ向かおうとする。』

という感慨は、下手な哲学者より明快に人というものを語っていて



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グイン123巻 風雲への序章

2009年01月31日 | 
栗本薫:著 早川書房:発行

アキレウス帝は、グインから、シルヴィアの行状とそれに伴う苦悩を告げられ、ケイロニア皇帝として、そしてグインの父として、ある決断をする。それは新年の儀典における、自らの引退宣言と、ケイロニアの最高統治者としてグインを任命することだった。一方、傷の癒えたイシュトヴァーンは、またもや中原支配の野望に燃え、カメロンの諫言をよそに、まずはパロを傘下に置くべく、リンダとの結婚を画策していたのだった。

ケイロニアの宮廷では、シルヴィアはすっかり姿を消してしまいました。作者の中でも彼女はもう過去の人なのかな。

久しぶりに登場したイシュト、初めは「おっ!こいつ、少しは成長した(大人になった)のかな」と思ったのも束の間、彼の狂気は以前より性質が悪くなったんじゃないのぉぉ?

まだまだ終わりそうもないというのが読み取れる巻、ですかね

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ヘブンズ・ドア

2009年01月30日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2009年2月7日公開予定

試写会場:有楽町朝日ホール
開映16:30~ 106分

車工場で働いていた青山勝人(長瀬智也)は、ある日突然クビを言い渡される。最後の給料と一緒に貰ったのは一枚の健康診断の結果の紙だった。精密検査の結果、余命が3日と知らされ どん底の勝人は、病院の中で春海(福田麻由子)という少女と出会う。彼女が先天性の疾患に骨肉腫を患い、余命一ヶ月の春海と知り意気投合した2人は、酔った勢いで病院の駐車場から車を盗み出し、脱走する。それは、春海が生まれてから未だ見たことがなく、勝人にとっては思い出が詰まった“海”を目指す旅の始まりだった。ところが盗んだ車には、拳銃と大金が積まれていて・・・。

ドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』のリメイク作品。
余命わずかと宣告された二人が思い出の海を目指して旅をする過程を描くロード・ムービーです。

警察、謎の組織、そして死の恐怖に追われながら、残された人生を全力で駆け抜けていく2人に、運命の哀しさと切なさと同時に生への煌きを感じることが出来る・・・かも。

謎の組織?も警察も、そんなドジばかり踏んでていいのか?といういい加減さの中でも特筆すべきは、刑事役の三浦友和さん。飄々としてどこかとぼけたユニークな存在感が「ま、いっか~~こんな流れでも」と思わせてくれるから面白い。

長瀬君の発作の起こし方はなかなか迫力あるし、人生に目的が無く無気力な現代青年を実に上手く演じています。春海役の子も上手なんだけど、病気の少女なのにあまりにもぴんぴんして元気なのはいかがなものかとあんな雨に濡れて風邪一つ引かないって考えられないぞ

2人が海に向かっての逃避行をする過程で、互いに気持ちが通い合い、限られた命を懸命に生き抜こうとする姿は、滅びが見えているからこそ美しく輝いて見えるのね

ゲスト出演で吉村由美(PUFFY)・土屋アンナ・嵐の二ノ宮君などの顔も
ニノったらそんな役ですか~~~似合わん・・けど

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007 慰めの報酬

2009年01月28日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2009年1月24日公開 イギリス=アメリカ

初めて愛した女・ヴェスパーを失ったジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、ヴェスパーを操っていたミスター・ホワイト(イェスパー・クリステンセン)を尋問し、背後にいる組織の存在を知る。早速捜査のためにハイチへと跳び、知り合った美女カミーユ(オルガ・キュリレンコ)を通じて、組織の幹部であるグリーン(マチュー・アマルリック)に接近。環境関連会社のCEOであるグリーンは、裏ではボリビアの政府転覆と天然資源の支配を目論んでいた。復讐心を胸に秘ボンドはグリーンの計画阻止に動くが……。

『007/カジノ・ロワイヤル』に続くダニエル・クレイグ版007の第2弾。

愛した女を喪い、復讐心に駆られながらも任務に臨み、巨大な犯罪組織と対決するボンドの姿が描かれています。今回も身体を張ったアクションが随所に見られますが、予告で頻繁に流れていた屋上?から天窓を突き破って落下するシーンは意外に早い段階で登場でした。

ロケーションも素晴らしい。
冒頭はイタリア・コモ湖岸の道でのカーチェイス。シエナでは地下の拷問室と地上の祭りの対比で魅せてくれる。さらにロンドン・ハイチ・オーストリア(歌劇トスカを織り交ぜた趣向も素敵)・イタリアのタラモーネと追跡は続き、ボリビアの砂漠のホテルで最後の対決を迎えます。

セクシーさやスマートさだけでなく、傷つきやすくもろい人間的な部分をも曝け出している今シリーズのボンドは、過去の歴代ボンドには惹かれなかった私の中の中でかなりの好感度を持って迎えられたキャラです。

きっと彼がボンドを演じているうちは新作が公開される度に劇場に足を運ぶんだろうなぁ

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さだまさし アコースティックコンサート

2009年01月24日 | ライブ・コンサート他
2009年1月24日
文京シビックホール
開場16:30 開演17:07 終演19:35

今年初めてのコンサート鑑賞です。
マリンバの宅間さんが不在なのはわかっていたけれど、頭の中では彼の音の幻聴が・・・マリンバとさださんのステージは自分の中で哀しいほどに一体化してるんですもの。宅間さんのいないステージに慣れるにはまだまだ時間がかかりそう。

それでも、今夜初めて参加のチェロがマリンバのパートを引き継ぎ、新しいサウンドを楽しませてくれたのは嬉しいサプライズでした。
チェロ奏者の結城貴弘さん、倉田さんに合わせたわけでもあるまいが、短髪が凛々しい美男君。(本当は永平寺で修行のため断髪したそうです)一人でバンドの平均年齢をぐぐ~っと下げてます。他が60代?だもんな~~まるで爺ちゃん(言い過ぎかな?オジサンにしておこう)の中に孫一人って図。(笑)ビジュアル的には宅間さんの代わりを立派に受け継いでます。
それにしてもさださん、「おくりびと」に影響されたのかしらん?

他にフルート旭氏が加わり、パーカッションはキムチさんでした♪

7分押しで始まったコンサートは二時間半で終了・・え~短いぞって思うのはさださんのコンサートだから。

・春
・案山子
・童話作家
・縁切寺
・精霊流し
(・北の国から)
・HAPPY BIRTHDAY
・秋桜
・川の流れのように
・悲しい酒
・本当は泣きたいのに
・窓
・セロ弾きのゴーシュ
・道化師のソネット
・修二会
・飛梅
Ac:主人公

オバマ大統領の命がけのパレードを引用して責任感を称え、日本の政治家への皮肉も加えてみせたり、「案山子」を聞く年代の推移による感じ方の違い、話をするということの大切さ、「秋桜」では百恵ちゃん秘話を、そしてさださんの歌のテーマでもある「命・時間・心」についてのいつものトークがありました。

「北の国から」ではギターを手にしたスタッフが田中邦衛さんの格好物真似で登場して笑わせてくれました。

今回はチェロのための選曲も多く、新人の結城さんフィーチャーな内容。
バックメンバーの入れ替えを自分への負荷と言い、もっと上手くなりたい、その想いで歌い続けることを改めて客席に語っていました。

清い水も澱めば濁る、ということかな。
さてさて、5月のわーるどコン、そして新しいツアーはどんなステージを魅せてくれるのかしら?

それでも・・・宅間さん、I miss you!

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近距離恋愛

2009年01月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年7月12日公開 アメリカ

自分で決めたルールを守り、恋愛ゲームを楽しむトム(パトリック・デンプシー)。恋も生き方も堅実で、努力家のハンナ(ミシェル・モナハン)。正反対の二人は、大学時代に偶然知り合って以来、もう10年来の親友同士だ。そんなある日、学芸員のハンナがスコットランドに長期出張する。彼女の不在で、やっとハンナが特別な人だと気がつくトム。だがハンナは、旅先で出会った婚約者を連れてNYに戻ってくる。彼女に筆頭花嫁介添人をお願いされたトムは、彼女を取り戻すチャンス欲しさに引き受けるが…!?

当たった試写会に行けず、劇場鑑賞も出来ずにいた作品だけど・・・
どうもこの手の花嫁略奪ストーリーは逃げられる相手の方に同情しちゃうので好きではないです。

もちろん、パトリックの三枚目的プレイボーイ役は面白いし、二人の不器用な恋愛ぶりにもどかしさを感じながらもついつい応援はしちゃうのだけど。

非の打ちどころのないヒロインの婚約者が可哀想だぁぁ
でも、このキャラの掘り下げがないので、やっぱり最後まで脇役扱いだね

ブライズメイド(花嫁付添い人)の存在は他の作品などで知っていたけれど、メイド・オブ・オナー=筆頭花嫁介添人は初耳でした。欧米結婚式の舞台裏を覗く楽しみはありますね。

結婚と離婚を繰り返してるトムの父親の存在がユニーク。

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アフタースクール

2009年01月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年5月24日公開

母校の中学校で教師をしている神野(大泉洋)と、サラリーマンの木村(堺雅人)は中学時代からの親友同士。産気づいた木村の妻(常盤貴子)を、仕事で不在の木村の代わりに神野が病院まで送りとどけた。その日、夏休み中だが部活のため出勤した神野のもとに、同級生だという探偵(佐々木蔵之介)が訪ねてくる。島崎と名乗る探偵は木村を捜していた。若い女性(田畑智子)と親しげにしている木村の写真を探偵に見せられた神野はショックを受けて、いつのまにか木村探しに巻き込まれてしまう・・。

あらすじの人物紹介にはやや難点があるけれど、ここでネタばらしをしたら面白くないのでそのままに。
放課後の中学の靴置き場から始まる冒頭シーンはまさにタイトルそのもの。そのまま現在にオーバーラップして・・・あれ?でも何かちょっと雰囲気が微妙だぞ?どこって言えないけどなんかちょっとずつ変?と思いながら、とりあえずは強引でひねてる探偵の行動に神野と一緒に引きずられて見ている自分がいます。

ところが、神野が探偵と別れて自分の部屋に帰ってきた途端、黒だと思っていた状況がいきなりグレーに、そして白にと変わり始めるのです。

ここからがこの映画の面白さ全開。
これは探偵が狂言回しか?と思わせておいて、もっと滑稽な人たちを用意してるあたり、やるな~!!って感じです。

全部分かって見たら、なるほど!! 
冒頭での違和感の謎も解けて、気分もすっきり

だけど、あんな囮捜査ってありかよ

世の中を斜に見てひねくれてる探偵に神野が投げかけた「お前(の人生)がつまらないのはお前自身がつまらないからだ」という言葉が直球ど真ん中をついてきました。うん、この作品の主役は神野だね☆☆

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海を飛ぶ夢

2009年01月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2005年4月16日公開 スペイン=フランス

26年前の海の事故で、首から下が不随となったラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)は、自ら命を絶つ決断をする。人権支援団体で働くジェネ(クララ・セグラ)は、ラモンの死を合法にするため、弁護士のフリア(ベレン・ルエダ)の協力を仰ぐ。法廷へ出る準備を進め、ラモンの話を聞くうちに、フリアは強く彼に惹かれていき、実は不治の病に冒されている彼女は自らも死を望み、ラモンの死を手伝う約束をするのだが・・。

一生の半分をベッドの上で過ごし、自ら死を望んだ実在の人物ラモン・サンペドロの手記をもとに描いた作品で、今もなお、スペインでは法律で認められていない「尊厳死」をめぐって生と死の意味を問いかけています。

彼の立場にならなければ、死を望む彼の気持ちは本当に理解することは出来ないと思っても、やはり尊厳死を強く望むラモンには抵抗感があります。

それは彼自身のためではなく、彼を看病し続けてきた家族への大いなる裏切りに思えてしまうからです。兄嫁のマヌエラやラモンの父を悲嘆に落としても死への渇望を叶えたかった彼へのかすかな怒りもあるかな。

弁護士のフリアは死への憧れという共通の願いでラモンと強く結びついていくけれど、結局「死」を現実として受け入れることを拒んでしまう。それこそが大多数の人の感性に近いのではと思うエピソードです。
逆にラモンを助けるローザが彼を一番理解し愛していたとも私には思えないけれど。

ラモンの願いに対して真っ向から批判した神父との対話に感じた彼の虚しさだけは共感できるかな。この時のマヌエラの言葉も胸を打ちました。

けれど、誰が正しいとか間違っているとかではなく、誰もが自分の「正しい」と信じることをしたのです。

生きることは権利ではなく自分にとっては義務だった、というのがラモンの主張。もし自分が寝たきりで生きる目的を失って長い間「生かされて」きたのなら・・・ラモンを責めることは出来ない。生きるということの意味を突きつけられる映画です。

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氷の微笑2

2009年01月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2006年11月11日公開

ある夜、ロンドン・テムズ川に一台のスポーツ・カーが猛スピードで転落するという事故が起きる。車に乗っていた超人気サッカー選手は死亡。同乗していた女性作家キャサリン・トラメル(シャロン・ストーン)だけが生き残る。これまでも他の殺人事件の容疑者となっていたキャサリンは、事件の容疑者として精神鑑定を受けることに。キャサリンの鑑定を担当した精神分析医マイケル・グラス博士(デヴィッド・モリッシー)は、だんだんとキャサリンの妖しい魅力に引き付けられていく……。

1992年の『氷の微笑』の続編。
48歳のシャロン・ストーンが前作に続いて演じたということが賛否両論を巻き起こしていたっけね。オバサンだとか肉体の衰えは無残だとか言われていたけれど、そうかなぁ?十分に美貌と若さを誇っているように見えましたが・・・。

そもそも性格破綻者なヒロインだから、そんな彼女の標的にされた精神分析医には同情はするけれど、その道のプロが簡単に彼女の罠に嵌っていくのはちょっとどうよ!とも思います。

彼の周りの人間も男女の別なくトラメルにからめとられた挙句、無残な死を迎えるってのも何だかな~~。

破滅の美学は持ち合わせていないので、こういう作品には拒否反応の方が勝ってしまうかな。 自分の周囲にこんな女性がいない幸運を喜ぶこと位でしょうか、この映画の教訓は。

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K-20 怪人二十面相・伝

2009年01月14日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2008年12月20日公開 137分

1945年の架空都市<帝都>。19世紀から続く華族制度により、極端な格差社会が生じる日本で、世間を脅かしている強盗がいた。“怪人20面相”と呼ばれるその強盗は、富裕層だけをターゲットとし、美術品や骨董品を魔法のようなテクニックで、次々と盗み出すというのだ。頭脳明晰でこれまでも数々の事件を解決してきた探偵、明智小五郎(仲村トオル)は、サーカスの人気曲芸師、平吉(金城武)が謎の怪人20面相<K-20>だと疑い、捜査を始めるが…。

北村想の小説の映画化。
第2次世界大戦を回避した架空の日本が舞台です。

が・・・原作を読んだことないのよね(^^;
怪人20面相と名探偵、明智小五郎の名前だけは聞いたことがあるというだけで、義賊と探偵の関係はルパンとホームズみたいなもの?と思っていたけれど、どうも違うらしい。映画の中の20面相は完全に悪役。明智も何だか胡散臭い。彼の婚約者、羽柴葉子(松たか子)も疑ってるようだしなぁ。

ふ~~ん、20面相に濡れ衣を着せられた曲芸師の平吉がヒーローなのね。ということを理解するのに、少し戸惑ってしまった。だってタイトルだと20面相がヒーローなのかと思うじゃないですか(汗)

あら、やっぱり~な明智探偵の正体だけど、この筋書きは原作通りなのかしらん?

少年探偵団や助手の小林少年(本郷奏多)は何だか権力側の手先みたいな扱いで好感持てなかったんですが・・。

「レッドクリフ」で冷静な知将を演じた金城さんが、一転貧しい軽業師になり、ボロい衣装で「007」や「バットマン」ばりの激しいアクションをこなしています。お姫様の松さんのおっとりした外見とユーモアあるセリフが緊迫したシーンの中でも一服のお茶のような安らぎと温かさを醸しててなかなか面白かったです。

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ジェネラル・ルージュの凱旋

2009年01月12日 | 
海堂 尊 :著 宝島社:発行

桜宮市にある東城大学医学部付属病院に、伝説の歌姫が大量吐血で緊急入院した頃、不定愁訴外来の万年講師・田口公平の元には、一枚の怪文書が届いていた。それは救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという、匿名の内部告発文書だった。病院長・高階から依頼を受けた田口は事実の調査に乗り出すが、倫理問題審査会(エシックス・コミティ)委員長・沼田による嫌味な介入や、ドジな新人看護師・姫宮と厚生労働省の“火喰い鳥”白鳥の登場で、さらに複雑な事態に突入していく。
 将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名をとる速水の悲願、桜宮市へのドクター・ヘリ導入を目前にして速水は病院を追われてしまうのか……。そして、さらなる大惨事が桜宮市と病院を直撃する。

『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』に続く、田口&白鳥シリーズ第3弾。

『ナイチンゲール~』のヒロイン浜田小夜の同僚の如月翔子が今回のヒロイン。
前作と時を同じくして起きた内部告発文書に振り回されるグッチーと、これまた前作の登場人物をリンクさせながら物語は進んでいく。まるで二重螺旋のように絡まりあいつつ、合わせ鏡のように決して重ならないその筆致と構成は見事としか言いようがない。

前二作で気になっていた姫宮もやっと登場。第4弾では彼女が表舞台に出てくるのかなという伏線もしっかりある。

白鳥の登場は相変わらず後半部の山場に悠々と、という感じだが、インパクトはこれまでの二作よりやや弱い。というのも今作の主たる登場人物であるジェネラル・速水の切れ味鋭い存在感が強烈だから。白鳥ファンとしては次作に期待したいところ。

AIやドクターヘリの重要性もしっかりアピールしているが、救命の最前線にある現場の苛立ちや事務方との絶望的にも見える温度差の違いをエシックスという組織との対比で鮮やかに映し出してもいる。机上の空論と人の揚げ足とりばかりしている沼田を長としたこの委員会の議論を読んでいると短気な島津じゃなくてもキレちゃいそうです。でも現実にもこんな性格のヤツがた~くさんいるんだろうなぁ。

物語には関係ないことだけれど、文中にプロパーという記述を見つけて、ちょっと懐かしくなる。今はMRっていうんだっけ。名前が変わっても医師の彼らを見る目は一段低いのだということが図らずもここで露呈していて寂しいな。

表題にあるルージュは重要な意味を持つわけではないけれど、新旧のエピソードを繋ぐバトンのような役割を担っていました。

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豹頭王の苦悩

2009年01月11日 | 
グイン・サーガ122巻 
栗本薫:著 早川書房:発行

ハゾスは、シルヴィアが生んだ赤子を殺すことができずロベルトに託し、公けには、王女は想像妊娠であったとして、赤子の存在を隠蔽した。そして、彼女の不祥事に関与した者たちを訊問し、事実関係を詳らかにしてゆく。苦悩するグインは、シルヴィアと話し合おうとするのだが、彼女からは憎しみに満ちた罵声を聞くばかりで、ついにグインは訣別の言葉を告げるのだった。

大部分は事態の収拾にあたったハゾスの視点で進んでいきます。
この愛妻家で堅実なケイロニアの宰相の目には、シルヴィアはとんでもない色情狂で王妃としても皇女としても全く失格の烙印を押す嫌悪すべき女性としか映りません。

しかし、盲目の選定侯ロベルトに語らせるという形で、王妃は心弱い人間ではあるけれど、その奥底にある悲しさや苦悩をも読者の前に映し出してみせるのです。

父からも母からも疎まれ愛されなかったという想い、妾腹とはいえ優秀な姉と比較される劣等感から周囲の人間への憎悪を募らせ、自分を徹底的に貶めることで復讐をしようとする彼女に、同情するというよりは憐れみの方が勝るのではありますが・・。

そして、そのような彼女を一番理解し、守りたいと思っていたのはグインよりむしろ下僕のパリスという男だったのではないかとも思えるほどに、この卑しい従僕の心の気高さの方に目が引き寄せられてしまいました。

シルヴィアをして破滅へと導いた夢の中の出来事は、たしか以前のエピソードにチラッと書かれていた気がするけれど、あまりにも長編なために、もう記憶がはっきりしません

前巻で現実から目を背けたように見えたグインは、最終章でその本質的な性格を取り戻し、どのような辛い真実にもきちんと対峙しようという姿勢を見せます。
けれど、シルヴィアの拒絶の言葉を受けたあとの決別の姿勢は、やはり女心をわからぬ朴念仁の態度と思えて何だかがっかり

愛を求め、愛する人に置き去りにされることを何より恐れているシルヴィアを結局グインは救えないままなのかしら

この巻は哀しく重いけれど、妙に心を引かれる読み応えのある内容でした

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ネコナデ

2009年01月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年6月28日公開

IT企業デジタルドラゴンの人事部長・鬼塚太郎(大杉漣)は、冷酷なリストラ業務で社内の嫌われ者になっていた。また中途採用者の研修でも厳しさを発揮して反感を買う。そんなある夜、持病となっている胃痛の薬を一人公園のベンチで飲んでいた鬼塚は捨てられた子ねこを見つける。翌日も残っていた子ねこをどうしてもそのままに出来ず、こっそり研修社員用に借りたウィークリーマンションの空き室で飼うのだが・・・。

社内では冷酷なやり手の人事部長という評価を得ている鬼塚だが、実は真面目で融通の利かない自分の性格を持て余し気味で、神経性の胃痛に悩まされているという側面を持っている。

社長命令で5年計画のリストラを進め、ようやくそれも終わろうとしている頃に、公園に捨てられていた子猫と目が合い、気付いたら胸に抱えて家の前に立っている。この時の鬼塚の心境描写は物足りないのだけれど、愛くるしい子猫の動作を見ていると、そんなことはどうでも良くなってしまう。

つい前日に娘に「生き物を飼うには責任が必要」と厳しく注意したばかりの彼は、家に連れ帰ることも出来ずに、余っていた研修用の部屋にこっそり子猫を連れてくるのだ。ここでも泣き声や物音、部長である彼の出入りの姿が絶対周囲にばれてしまうのではと余計な心配をしてしまうのだが・・・会社の開発品を子猫のモニターに使うのも含め、公私混同も甚だしいその行動は、後日やはり何人かの知るところとなる。

もう一つ気になったのは、研修プログラムの内容。今時あんなことをさせたら、即人権侵害で問題になりそうなんですが(^^;それとも、いまだにあんな研修は存在しているのだろうか?大手企業に就職経験などない私には想像も出来ないです。

可愛い子猫の所作はもちろん和むし癒されるのだけど、この映画の主人公はやはり部長なのね。堅物の彼が子猫を飼う事で、心境に変化が生じ、リストラと研修が終わる二週間後に、彼は辞職を社長に告げるのだけど、「本当は貴方が嫌いでした」という、その言葉は紛れもない彼の本音。

本音で生きるという彼の選択が正しいか間違っているかはわからないけれど、晴れやかな表情で子猫を胸に家の前に立つ彼の胃痛は消えていたのでした。

一匹では寂しかろうと慣れないネット通販で詐欺に遭い、でぶでぶの年寄り猫を押し付けられるエピソードが可笑しかったです。その相手役はもたいまさこさん、いかにもな名演技でした。

このDVDにはTVドラマ版の第一話が収録されているのだけれど、こちらは役者もがらりと変わって、主人公の家族構成も違います。全体的にコミカル要素が増えていて、カラリとしているかも。

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ブラザーサンタ 

2009年01月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2007年12月1日公開 アメリカ

サンタクロースことニコラス(ポール・ジアマッティ)の兄フレッド(ヴィンス・ヴォーン)は、弟とは大違いのダメ人間。努力はしたもの弟のような善人にはなれず、詐欺まがいの行為で留置所入りする始末。兄思いのニコラスは「北極でクリスマス用のおもちゃ作りを手伝うこと」を条件に、フレッドの保釈金を立て替えるが……。

クリスマスシーズンには毎年のように作られるサンタ関連作品。
今回は善人サンタの出来の悪い兄を主役に描かれている。

何をしても出来の良い弟と比べられ、すっかり臍を曲げいじけて育った兄フレッド。彼の立場で見ると、けっこう聖人の兄というのも大変なんだな~と思わせてしまう。恋人との仲を修復しようと起業を考えるが資金不足で店舗を借りられず、つい詐欺まがいの寄付金集めをして捕まってしまうというエピソードは相手が寄付集めのサンタ集団というのがブラック入って面白かった。

留置所の保釈金+起業資金を立て替えてもらうために、弟のサンタ工場を手伝いエルフたちと仕事をすることになったフレッドだが、楽をしようとエルフをおだてたりたきつけたりして、工場の仕事は捗らないばかりか、経費節減のため査定に来たクライド(ケビン・スペイシー)から早速失点を貰う始末。

実はこの先の記憶が・・ない(^^;
レンタル返却前夜に眠い目をこすりながら観たせいです。お気に入りの俳優が出てないってことも微妙に影響したかな(汗)

どうもこの後、クライドの陰謀もあって兄弟喧嘩しちゃってNYに帰ってきちゃうらしい。そして同じように兄弟が有名なせいで悩みを持つ人のセラピーに参加して再び北極に戻る・・・ここまでがすっぽり抜けちゃってました。

腰痛の弟に代わりに苦手なトナカイのそりに乗って子供たちにプレゼントを届けるために大奮闘するフレッド。昔悪い子評定をしたクライドに、その時の願いのスーパーマンのマントを贈り謝罪して、彼の気持ちを変えたニコラス。弟ばかり褒める母との確執も解け、恋人ワンダ(レイチェル・ワイズ)ともうまくいって、物語はめでたしめでたしの結末を迎えるのでありました。

クリスマスのハートウォーミング作品ではあるけれど、母親による兄弟一方だけの贔屓や子供を良い子・悪い子に分けてしまう基準など、ドキリとさせられる視点もあります。

抜けた途中のストーリーを確認するためにも、後日リベンジしなきゃ

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サイロンの光と影

2009年01月08日 | 
グイン・サーガ121巻
栗本薫:著 早川書房:発行

忠実な臣下たちとの再会を喜びつつケイロニアに帰国したグインは、国民から盛大な歓呼の声をもって迎えられた。そしてなによりも、グインの長の不在に心ふさいでいたアキレウス帝の喜びようはひとしおであった。しかしそのような光り輝く歓喜とは裏腹に、サイロンの王妃宮の奥深くで、シルヴィアは要人にあるまじき乱行に耽溺した結果、誰とも知れぬ男の子供を宿し、事態の急を知ったハゾスによる追及のさなか、出産する。

リンダ女王に別れを告げ、パロを発ったグイン一行はようやくサイロン・黒曜宮に帰ってきて、病床にあったアキレウス大帝もみるみる活力を取り戻し喜びに沸く中で、タイトルが表す如く、影の部分がやがて明らかになっていくのでありました。

いかに立派な英雄でも、女性の扱いにかけてはその辺の初心な若者といい勝負なグインにとってはあまりにも辛い現実が待っているのですが、だからといって、事態の収拾を親友のハゾスに丸投げしちゃうなんて、そりゃないよ~~と、少々幻滅を味わう巻でもあります。

それにしても王妃宮に仕える女官たちの無能ぶりや、汚れ放題の寝室の描写などには閉口します。

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