杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

NINE

2010年03月31日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年3月17日公開 アメリカ 

1964年。イタリア・ローマにある映画スタジオ・チネチッタで天才映画監督、グイド・コンティー二(ダニエル・デイ=ルイス)は頭を抱えていた。新作の脚本を一行も書けずに撮影開始日が迫っていたからだ。決まっているのは主演女優だけ。追い詰められた彼は、新作の記者会見から逃げ出し海辺のホテルに身を隠す。そこで彼は、自分の弱さを抱きとめてくれる女たちの幻想に逃避しながら、呼び出した愛人(ぺネロぺ・クルス)や妻(マリオン・コティヤール)に救いを求める。プロデューサーに居場所を突き止められ映画製作の現場に連れ戻された彼はクランクイン直前ある決断を下す・・・。

フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』に着想を得たミュージカル映画です。
監督は『シカゴ』のロブ・マーシャル。
絢爛豪華な女優陣に惹かれ、苦手なミュージカルだけど足を運んでみました。ダニエルの素敵なダメおじさまぶりにも
こういう作品は部屋の14インチTVじゃ絶対迫力不足になるに決まってるしね(笑)

一番の理解者である妻のルイザ(マリオン)、一途で官能的な愛人カルラ(ペネロペ・クルス)、彼の映画のミューズである大女優クローディア(ニコール・キッドマン)。
いずれ劣らぬ美女に囲まれて何と贅沢な悩みか、と思ってしまうけど(カルラを診た医者のセリフに激しく共感)、華やかな映画の世界に君臨する男ならさもありなん!とも思えてしまうのがグイドの女を惹きつける魅力なのかもね。

他にも衣装係であると共にグイドの良き友人のリリー(ジュディ・デンチ)、甘えさせてくれたママ(ソフィア・ローレン)、少年のグイドを「男」として目覚めさせた娼婦サラギーナ(ファーギー)、記者のステファニー(ケイト・ハドソン)といった豪華女優が登場し、それぞれのソロパートを情感たっぷりに歌い上げています。ひょっとして、あたし、ミュージカル好きなんじゃない?と錯覚しそうになりました

ファーギーのパートでは砂が効果的な使われ方をしているけれど、舞台に立つ彼女たちにとっては大変な仕事だったろうなぁ。目に入ったりしなかったのかしら?

でもやがて、数多の美女たちの母性をくすぐりながらも自分のことしか考えられないグイドに女たちは絶望し、愛想を尽かして去っていきます。
ルイザやクローディアに何故別れを告げられたのか理解できないグイドにもどかしさと憐憫を覚えるのは、それだけこちらも大人になったってことなのかなぁ。観客としての立ち位置は、どちらかというとリリー側だったりして
特に献身的な妻のルイザがグイドへの別れを決意したエピソードは殆どの女性が頷けるものだったと思います。

結末はグイドの復活と女たちの愛の再燃を予感させていますが、彼は愛の迷路の出口を見つけたのかな

ところで「NINE」の意味はグイドの9番目の映画だから?
「無」という意味もあるとか聞いたような・・

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ジャンプ! ボーイズ

2010年03月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2006年7月15日公開 台湾 84分

2003年夏、台湾東部の公正小学校で6歳から9歳までの少年7人が体操強化選手として練習に明け暮れていました。厳しいけれど選手思いのコーチの指導のもと、恐怖の一対一ストレッチに耐え、失敗して逆立ちの刑にあっても挫けず、歯を食いしばり大粒の涙をこぼしながらも、難易度の高い技に挑戦していく彼らの姿には悲壮感はありません。夢を叶えるために大好きな仲間と一緒に頑張る輝く目をした7人は、コーチと共に10月のジュニア体操全国大会に向けて猛特訓に励むのです・・。

映画公開時にチラシを入手してとても観たかったけれど、単館系で諦めた作品。
DVDになってからも近くのレンタル店では置いていなくて、ネットレンタルでようやく観ることが出来ました。

ドキュメンタリー作品は苦手なのですが、小さな彼らの頑張る姿は、昔体操教室(もちろん選手コースじゃない、お遊びの教室ではありましたが)に通わせていた頃の息子たちの姿に重なって胸が熱くなりました。

何といっても遊びたい盛りのボーイズです。練習の合間のおふざけや、母親にくっついて甘える姿、コーチが用意してくれる賞品に目を輝かせて頑張る姿はただただ可愛らしく微笑ましいです。いつもビリでキャラメルしか残らず泣いてしまう子や、痛いストレッチに耐えた後の大粒の涙には切なさに胸が締め付けられます。

それでも、大会で上位に入るという目標を持って、苦しい厳しい練習から逃げ出さずに頑張る彼らは年齢以上に大人に見えました。


<わんぱく盛りの7人>
キャプテンは黄靖(ホアン・ジン)人見知りだけど仲間想いの優しい子。
ハッタリ君 黄克強(ホアン・クーチャン)はチーム一の実力を誇ります。
市場っ子 李伴凱(リィ・チカイ )はお母さんが働く市場の人気者、猿真似が得意でハッタリ君の良きライバルです。
つり輪君 林信志(リン・シンチ)は恥ずかしがりやでお家にはお父さんが作ってくれたつり輪があります。
英才君 楊育銘(ヤン・ユゥミン )は甘えん坊。幼稚園から英才教育を受けてきました。
2点君 小軒(シャオ・シュエン)はあん馬で1回転しか出来ないの。
キャラメル君 小恩(シャオ・エン)は2点君の弟でいつもビリの賞品(キャラメル)しか貰えず悔し涙がこぼれます。

腕白盛りの7人を指導するのは、アジア大会の元金メダリスト、林育信(リン・イーシン)。週に1度行われる模擬試合の賞品のおやつを自腹で用意する姿は優しいお兄さんだけど、練習の時は鬼コーチに変身です。

全国大会で彼らは見事優勝を飾ります。
そして物語は更に一年後の彼らの成長をも見せてくれます。
あん馬で1回転しか出来なかった2点君の成長を見ると、子供の可能性って凄いなぁとただただ感心してしまうのでありました。

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フールズ・ゴールド/カリブ海に沈んだ恋の宝石

2010年03月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年5月31日公開 アメリカ 112分

トレジャーハンターのフィン(マシュー・マコノヒー)は、1715年にカリブ海に沈んだ18世紀のスペイン女王の結納金を探すことに没頭するあまり、家も財産も借金で失い、妻のテス(ケイト・ハドソン)にも愛想を尽かされてしまう。一方のテスは大富豪ナイジェルのヨットで働きながら人生の立て直しを図るが、そこに宝へ繋がる決定的な証拠を発見し、ナイジェルをスポンサーにつけようとフィンが乗り込んできて・・・。

伝説の秘宝を探すアドベンチャーではあるけれど、中心になっているのはフィンとテスのラブロマンスとナイジェル(ドナルド・サザーランド)、ジェマ(アレクシス・ジーナ)父娘のちょっと不器用な関係だったりします。

妻に愛想を尽かされながらもめげずにお宝探しに夢中なフィンはまさに夢にまっしぐらな少年の瞳をしていて憎めません。そんなフィンのことを、離婚はしたけれど本音ではまだ惹かれているテスの心情もよく描けていると思います。

お宝探しのライバルはフィンの借金取りのギャングたち。ちょっと抜けてる2人組とのやり取りは滑稽で笑えます。それにしてもよく殴られる主役だこと痛そう~~

カリブの青い海と空とフィンやテスの素晴らしい肉体美を堪能するといった楽しみ方もあるかなやっぱ、夏・海といったらマコちゃんでしょ

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マイレージ・マイライフ

2010年03月24日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年3月20日公開 アメリカ

ライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は、年間322日も出張で飛び回り、企業のリストラ対象者に解雇を通告するプロフェッショナル、“リストラ宣告人”。全米中を旅しながら、二度と会うことのない相手に人生のやり直しを宣告する。そんな彼の唯一の生きがいは、出張で乗る飛行機のマイレージを貯めること。しがらみという煩わしい人生の荷物を背負うことなく、夢の目標1,000万マイル達成だけが彼の存在証明だった。しかし、ある日ライアンに予期せぬ出会いが訪れ、自分の立場と1,000万マイル達成が危うくなる・・。

『仕事も人生もバックパックに入らないものは背負わない』をモットーに生きてきたライアンの転機はネット上で解雇通告を行うという合理化案を出した新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)と旅先で知り合ったキャリアウーマン・アレックス(ヴェラ・ファーミガ)との出会いでした。

「ネットなんかでクビを伝えられるか!」と猛反対したライアンは、プランの棚上げの代わりにナタリーの教育係を引き受けさせられます。初めは険悪ムードだった2人が、各地を旅するうちにお互いの思いやりや愛を信じる姿に心を動かされていくのです。

上司に対しても物怖じせずに自分の主張を伝えるナタリーはまさに現代っ娘。失恋した時には思いっきり泣き、ライアンとアレックスの関係についてもまっすぐに核心をついた意見を言う姿は若さ故の自信と可愛い傲慢さに溢れています。恋人との電話の中で「大丈夫、相手はおじさんだもの!」と言ってるのを耳にして凹むライアンが可愛かったです。

そんなひたむきさに刺激されて、ライアンは自らの人生を振り返ります。
どちらかといえば、ナタリーに焚きつけられてアレックスへの想いを深めた彼ですが、当のアレックスは・・・というのが、何とも現代風なオチでした。
いや・・・女性はここまで強くなったというべきでしょうか(^^;

妹の結婚式のためにライアンが出張先の観光地で妹と婚約者のパネルを手に写真を撮ったり、挙式当日になって結婚に迷いを持った新郎を説得する姿は、たとえ日頃世界中を飛び回って家族と疎遠にしていたとしても、まさに良き兄そのものでした。
川に落ちたパネルを拾おうとして川に落ちたり、バックパックに入りきらないパネルを飛び出したまま歩く姿もコミカルだけど、心があったかくなります。

リストラ通告というのは映画で描いてる以上に過酷な精神疲労があると思います。マニュアル通りには行かない現実に行き当たり当惑し動揺するナタリーに、ライアンは自分たちの仕事は単にクビを切ることじゃなく、一人ひとりに新しい人生の扉を開く可能性を教えることだと諭します。流石に年の功というか、長年この仕事をしてきただけある心に沁みるセリフでした。

結局ナタリーの案は挫折を迎え、ライアンはこれまで通りの生活に戻るのですが、
夢の1000万マイル達成後、ライアンは仕事に投資して新婚旅行を諦めた妹夫婦に世界一周をプレゼントします。(それでも50万マイルだということだから、1000万ってどんだけ~~!!!な距離だなぁ)うん、多分ライアンの人生に対する姿勢は変わったんだと思う。それも良い方にね

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アヒルと鴨のコインロッカー

2010年03月21日 | 
伊坂 幸太郎(著)  東京創元社(出版)

引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立っていた・・・。

映画の存在を先に知りました。といっても観てません。
図書館の検索で何気に見つけて借りてみました。

僕=椎名という大学生の現在の物語と琴美という女性の2年前の物語が交互に語られていきます。

引っ越したアパートの隣人・河崎に「本屋で広辞苑を盗まないか」と誘われ、断りきれずに手伝いをさせられてしまう「僕」。いや、現実にありえないから~(^^;

2年前の物語では琴美とその恋人であるドルジ(ブータン人)が当時多発していたペット惨殺事件の犯人たちに出会います。このくだりが何だか背筋が寒くなる緊迫感と言いようのない嫌悪感があって、胸が苦しくなり、思わず最終ページのチラ見という掟破りをしちゃいました。(でもラスト1ページだけ読んでもわけわかんなかったんだけど

現在と2年前を繋ぐのがどうやら僕=椎名のようです。
現在の物語に琴美が出て来ないことに不安を覚えつつ読み進めると、犯人たちに付け狙われながらも彼らを逆に捕まえようとする琴美が書かれていました。
彼女が消えた理由もわかったけれど、何より犯人に惨殺されたのではないことがわかって安堵感が広がりました。だってそんなことだったら後味悪すぎだもの。

本屋の襲撃の訳も、椎名の部屋を訪れる「シッポサキマルマリ」やペットショップの店長の麗子さんとの関わりも徐々に明らかになっていくのだけれど、一番驚いたのはやっぱり河崎の正体だねぇ

巻き込まれた椎名もわずかな期間で深い人間観察と自分の人生への見つめ方の変化があるのですが・・・ちょっとその選択が可哀想な気がするのは自分がモラトリアム世代だったからかなぁ

ペットを無残に殺して喜ぶ犯人たちの深層心理はわかりたくもないけれど、外人に対するいわれのない偏見や、見てみぬ振りをすることの後味の悪さなど、多くの日本人が日常的に無意識にしている行動を文字にして突きつけられているような気がしました

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オー!マイ・ゴースト

2010年03月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年製作 アメリカ 日本未公開

歯科医のバートラム・ピンカス(リッキー・ジャーヴェイス)は、気難しい皮肉屋で極度の人間嫌い。ところが健康診断中の麻酔ミスで7分間の心肺停止状態から生還の後、自分にしか見えない人たちに気づく。現世に未練を残したまま世を去り、親族や愛する相手に伝えたいことが残っているせいで成仏できない幽霊たちにまとわりつかれ弱り果てたピンカスは、不慮の事故で死んだ浮気男のフランク(グレッグ・キニア)に、妻グウェン(ティア・レオーニ)が悪徳弁護士と再婚する邪魔をしてくれればそっとしておいてやると持ちかけれ、渋々彼に協力することにするのだが・・・。

前に観たDVDの作品紹介に入っていて気になってレンタルしました。
嫌なヤツに見えるけど、本当は他人との接し方がわからない不器用な男で、過去の経験から恋愛にも臆病になっているピンカスがちょっと愛しくなりました。

グウェンに誤解され拒絶されて落ち込んでいた彼に、同僚のインド出身のジャハンギール医師が自分の診察台の天井に貼っていたアインシュタインのポスターを見せて諭す場面が好きです。書かれていたのは
Only a life for others is worthliving (他人に尽くさねば 人生に価値無し)

あらら~~「クリスマス・キャロル」のスクルージなんだね、ピンカスは

幽霊の体をすり抜けるとくしゃみが出るとか、幽霊は死んだ時の服装のままだとかお約束があるのも面白かったです。

ピンカスが気付いたのは
『未練があるのは幽霊の方じゃなく、残された遺族の方なんだ』ということでした。

初めは冴えない容姿もやや劣る男性に見えたピンカスがすっかり良い顔付きになってちょっと惚れそう

余談ですが、麻酔ミスをした病院側の専守防衛の態度が腹立たしいけど笑えます。ミスと認めず、意識朦朧としてる患者に承諾のサイン書かせて賠償にも応じない姿勢や逃げの態度は現実にもありそうだし、それを笑いに包んで皮肉っているように思えました。

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ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式

2010年03月18日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年8月1日公開 イギリス 90分

父親の葬儀を控え、長男ダニエル(マシュー・マクファディン)はお葬式の費用と妻ジェーン(キーリー・ホーズ)に約束した新居の敷金の工面で頭が痛い上に、有名な作家となった弟ロバート(ルパート・グレイヴス)が弔辞を読まないことで皆にがっかりされて気分を害していました。一方従妹のマーサ(デイジー・ドノヴァン)は厳格な父(ピーター・イーガン)に恋人サイモン(アラン・テュディック)を認めてもらおうと必死なのに、弟トロイ(クリス・マーシャル)がサイドビジネスにしていたドラッグを安定剤と間違えてサイモンに飲ませたことから大騒ぎになってしまいます。

邦画で「お葬式」という作品があるけれど、それと三谷幸喜作品に通じるユーモア・ドタバタ感を合わせたような作風でした。

ダニエルの友人のハワード(アンディ・ナイマン)は被害妄想気味の自己中男で厄介事を押し付けられる損な役回り。その友人のジャスティン(ユエン・プレムナー)は昔一度だけ関係したマーサにご執心で縁りを戻そうと言い寄ってきます。我儘な車椅子の伯父さん(ピーター・ボーン)も登場し、薬でハイになったサイモンと、ある写真をネタに脅迫してきた列席者の中の見知らぬ小男ピーター(ピーター・ディンクレイジ)により、葬式は大混乱となるのです。

初っ端から別人の遺体の入った棺が届いたり、実は故人がゲイだったとか、ドラッグでハイになったサイモンが全裸で屋根に上ったりとなかなか際どい設定なんですが、笑いのオブラートに包まれて面白く見られます。
特に書斎での小男とダニエル・ロバート・トロイ・ハワードの繰り広げる騒動は、現実なら笑えない深刻な事態であるにもかかわらず抱腹絶倒でした。

喪主挨拶に悩んだり緊張したり過剰反応するダニエルの姿が何度も出てきますが、てんやわんやの大騒動になった時、彼の挨拶「父は偉大な人でした・・」に続くコメントが素晴らしく、物語をキリリと引き締めてくれました。

洋の東西を問わず、「お葬式」にはドラマが満載なのね


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シャーロック・ホームズ

2010年03月17日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年3月12日公開 イギリス

1981年、ロンドン。
若い女性の連続殺人事件を見事解決し、首謀者のブラックウッド卿(マーク・ストロング )を死刑に追い込んだホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)。しかし卿が復活したとの情報が寄せられ、ホームズは親友ワトソン(ジュード・ロウ)と共にその謎に挑んでいく。

子供の頃読んだ記憶ではルパンは陽気な怪盗でホームズは礼儀正しい英国紳士でした。
でもこの映画のホームズは紳士というよりタフでワイルドでユーモアたっぷりの男です。そしてそれが何とも面白いのです。もちろん超人的な観察力、記憶力、推理力を備えた最高の頭脳の持ち主としてのホームズは原作通り

相棒のワトソン医師も気の良い太っちょではなく、洒落てスマートな紳士です。ホームズがワトソンの婚約者に嫉妬するのもわかるなぁ。

このシリーズ最強の敵であるモリアーティ教授も登場、ホームズが唯一心惹かれた女性アイリーン(レイチェル・マクアダムス)の活躍もあり、最後までわくわく楽しめる内容でした。

ブラックウッド卿は秘密結社の一員である父を殺し、自分が世界を動かそうと企みます。そのために使ったトリックは科学を利用したもので、現代人にはわかりやすい、けれど当時の人には魔術に見えただろう数々でした。そしてモリアーティ教授もまたその技術を狙ってアイリーンを手先に使っています。

産業革命で沸くロンドンの情況を上手に取り込んだ背景に感心。また、思わぬ武闘派な面を持ち人を食ったユーモアの持ち主として魅せてくれるホームズ役は、ぎょろ目で愛敬たっぷりなロバート・ダウニー・Jrにぴったりでした
特にアイリーンとのホテルの件は抱腹絶倒です

もちろん、ジュードの紳士然とした物腰にも
普段はホームズと仲の悪いワトソンの婚約者メアリー(ケリー・ライリー)が落ち込んだホームズに声をかけるシーンも良かったな

どうも続編がありそうな終わり方、しかも次回はモリアーティ教授との対決を予感させるものだったので、早くも次作が待たれます

監督はガイ・リッチー、耳に残る独特の心弾む音楽はハンス・ジマー。なるほど、なるほど

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食堂かたつむり

2010年03月15日 | 
小川 糸 (著)  ポプラ社(刊)

トルコ料理店でのアルバイトを終えて家に戻ると、部屋の中が空っぽになっていた。突然、同棲していたインド人の恋人に家財道具一式を持ち逃げされ、ショックから声をも失った倫子は、たったひとつ残った祖母から譲り受けたぬか床を抱えて山あいの故郷に戻る。大嫌いなおかんに頭を下げて、実家の隣に小さな食堂を開いた倫子は、そこで一日一組だけ客を迎え、その客に合う最高のメニューでもてなす。倫子のつくる料理を食べた客には次々と奇跡が起き、願いが叶う食堂との噂になる。そんなある日、おかん・ルリコから癌で余命が半年であることを聞かされ・・・。

とにかく、描かれているメニューの美味しそうなことと言ったら・・・夜中に空腹で読む本じゃないですね(^^;

昔からの素朴で温かみのある、本物の料理を祖母から仕込まれて育ったヒロインが作るメニューの数々にまずは心奪われます。

どうして恋人が家財一式を持って消えたのか、最初は気になってたんですが、そのうちどうでも良いことのように思えてきちゃいました。
田舎の暮らしは自然栽培の有機野菜や海や山の幸に溢れていて、倫子の暮らしはつつましいけれど、とても贅沢なもののように感じられます。

「あんたは不倫の子だから倫子」と言われ、子供心が傷つきおかんなんて大嫌い!とずっと避けてきた彼女が、おかんの真実の姿(少々乙女ちっく過ぎな感ありだが)を知り、長年のわだかまりが融けるのもほっとする感じ。真実といえば、屋根裏のふくろうの「本当」にもヒロインの純朴さが現れているかも。

でも、おかんの希望とはいえ、2人が可愛がって育ててきた豚のエルメスを食べちゃうのはその精神(意味)は理解できても、やっぱり心理的抵抗はあるなぁ。

色んなものから逃げていた倫子が、立ち止まり、前を向く気持ちになった時、彼女の声は戻ってきます。作品全体に漂うゆったりとした流れが、忙しい毎日を暫し忘れさせてくれるかも。

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セントアンナの奇跡

2010年03月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年7月25日公開 アメリカ=イタリア  163分

NYの郵便局で働く定年間近のヘクター(ラズ・アロンソ)は、ある日窓口に切手を買いに来た男性客をいきなり銃で撃ち殺した。彼には前科も借金もなくトラブルを抱えているようにも見えなかったが、家宅捜査で長年行方不明となっていたイタリアの貴重な彫像が発見される。やがて重い口を開いたヘクターが語ったのは第2次世界大戦真っ只中の1944年、イタリアのトスカーナでの出来事だった・・。

まだアメリカ国内でも人種差別の根が残っている時代。黒人だけで組織された“バッファロー・ソルジャー”の4人の兵士が戦闘中イタリア人の少年アンジェロ(マッテオ・スキアボルディ)を保護し、トスカーナのある村に身を隠します。ここで本国でのような差別や偏見の目で見られることなく、彼らは束の間の平和を感じるのです。

物語は1944年8月12日に起きた、イタリア・トスカーナでのナチスによるイタリア市民の大量殺害“セントアンナの大虐殺”を下敷きに作り上げられています。

物語の中では、イタリアのパルチザンを匿ったという理由で起きた虐殺の真相には報酬目当てで仲間を裏切った一人のイタリア人が関わっていました。

少年アンジェロに『チョコレートの巨人』と呼ばれ慕われたのは彼を助けたサム・トレイン(オマー・ベンソン・ミラー)でした。別の一人は村の女性と愛し合います。村での短い滞在の中で、彼らは母国でも味わったことのない「一人の普通の人間」としての尊厳を得るのです。

しかし、ナチスの侵攻はこの村にも及び、彼らのうち3人までもが亡くなります。
そう、生き残ったのはヘクター一人・・・。そして現在。彼の射殺した相手は・・・。はい、もうわかりますよね

もう一つ、ヘクターの保釈金を払い弁護に回るのはあるイタリア人男性です。そしてこの男性の正体がまさしく「奇跡」の一つでした。これも事件の真相がわかった時点で想像はつくけどね

長い年月を経て、こんなに広い世界の中で出会う偶然と因果関係。これこそが奇跡なのですね。天網恢恢、緻にして漏らさずの言葉が頭に浮かびました

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40男のバージンロード

2010年03月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
日本未公開 アメリカ 106分

恋人ゾーイ(ラシダ・ジョーンズ)にプロポーズしてOKをもらい人生順風満帆に思われたピーター(ポール・ラッド)だったが、結婚式で花婿付添人“ベストマン”を頼めるような親友がいないことに気づく。慌てて親友探しを始めたが、なかなか友だちになれそうな男に巡り会えず四苦八苦。諦めかけていたある日、陽気なお気楽男シドニー(ジェイソン・シーゲル)と出会う。趣味が合って意気投合したピーターは、シドニーとの男同士の付き合いを楽しんでいたが、今度はゾーイとの雲行きが怪しくなってしまう…。

いくら「40歳の童貞男」主演のポール・ラッドが出てるからって、放題にわざわざ「40男の」と付ける意味、わからないなぁ。別にいくつでも大筋に関係ないし。

仕事も優秀で理想の彼女との結婚式を目前にした真面目な男が、自分には結婚式の付き添いをしてもらえるような親友がいないことに気づき、悪戦苦闘しながら親友探しを繰り広げる中で大切な何かを見つけ出していく姿をユーモラスに描いています。

ピーターの生真面目さは私にはとても好ましく映るけれど、やっぱり友達のいない人は人生寂しいなぁと思うよね。自分が扱う不動産売却会場で知り合ったシドニーの率直さに惹かれた彼が、恐る恐る友達になってよと働きかけるシーンが好きです。まるで思春期の少年が初デートに誘うようなドキドキが伝わってきました。

趣味の音楽(ヘビメタ・バンド、ラッシュのファン)が一致したことで急速に親しさを増す2人の関係が言葉遣い(丁寧語からタメ口)が変わっていくことで表現されてるのもとても自然な感じ。 

ゾーイはかなり理解のある女性として描かれているけれど、「親友」との遊びに夢中になって彼女との関係に亀裂が入りそうになるのも、そりゃ当然よね。

ゾーイの友達の嫌みったらしい夫役で「アイアンマン」監督のジョン・ファブローが出演してますが、その演技もかなり笑えます。この夫婦の関係もちょっと面白かったな。

結局男友達より婚約者を選んだピーターだけど、寂しさは隠せません。そんな彼を心配してシドニーに連絡を取るゾーイは本当良い子だ

実はお気楽男に見えるシドニーの方も、ピーターほど気の合う友は初めてのようです。互いにかけがえのないベストフレンドと気づいた二人が和解してジ・エンドですが、登場人物に特別悪い人も出て来ない点も安心して楽しめる作品です。

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パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々

2010年03月03日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年2月26日公開 アメリカ 

多動で難読症の落ちこぼれ高校生パーシー(ローガン・ラーマン)は美術館で怪物に襲われたのを機に、自分が半神半人のデミゴッドだと知る。しかも彼は海神ポセイドンの息子で、全能の神ゼウス(ショーン・ビーン)の最強武器である稲妻を盗んだ嫌疑をかけられているというのだ。パーシーは身に覚えのない嫌疑を晴らし冥界の神ハデスにさらわれた母親を助けるべく、親友で半人半山羊のグローバー(ブランドン・T・ジャクソン)、アテナの娘・アナベス(アレクサンドラ・ダダリオ)と共にハデスの元へと向かうが……。

原作はリック・リオーダンの人気小説で、海神ポセイドンの血を引く少年が現代を舞台に活躍する物語です。映画は主人公が母を助けるために仲間と共に旅をし成長していく姿がテンポ良く描かれたアクション・アドベンチャーに仕上がってます。メデゥーサ(ユマ・サーマン)の蛇の髪のCGはお見事!

ハリーポッターシリーズの影響が強いのかな?相手が魔法使いじゃなくて神という違いはあるけど、主人公が賢く強い女の子とちょっとドジだけど愛敬のある親友と三人で助け合って戦う構図も、地獄の番犬が出てくるところも・・。

それでも神話に出てくる神々が意外に人間臭いというか、ちょっとおバカっぽくさえあるのも、いかにもギリシャ神話って感じで面白かったです。
ゼウスがデミゴッドの子供に会うことを禁じたのは、神が家族を愛するあまり仕事をさぼるからってのは・・七夕伝説かい!!とか、ギリシャの神なのに、なんでアメリカが舞台?オリンポスがNYの高層ビルからエレベーターで上がるの?という突っ込みはベッドサイドストーリーには不要ってことでひとつよろしく

けっこう豪華な俳優陣にも満足です。
パーシーを守り導くのは学校の教師に化けたブルナー先生(ピアース・ブロスナン)でケンタウロスです。全能の神ゼウスの我儘で怒りっぽいキャラをショーンが好演してます。

冥界の王ハデスとペルセポネはロックスター風。しかも何となくカカア天下??神話では貞淑な淑女の印象が強いのに 冥界に渡るための渡し賃は三途の川の発想と同じね。洋の東西はあれど、地獄のイメージは人類共通なのね。あの場面はアトラクション風ではあったけど、ちょっと怖かった。やっぱり真面目に生きようって思ったな

パーシーの補佐かと思えたルーク(ヘルメスの息子)が実は・・という設定も楽しめました。その動機も現代的でいて普遍の親子のテーマかも。

母が飲んだくれの義父と暮らしていたのはパーシーを守るため(ニオイを消すため)でしたが、う~~んそんな風に自分を犠牲に出来るもん?あんなヤナ男と暮らすなんて・・ でも、ラストで「追い出したからもう永遠に会わない」と言った意味はエンドロールの後にわかります。冷蔵庫が映った時点で察しがつく筈。しかし後始末大変だったろうなぁ

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モンスターVSエイリアン

2010年03月01日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年7月11日公開 アメリカ

カリフォルニア娘のスーザンは挙式寸前に宇宙から飛来した隕石の直撃を受け、15m21cmに巨大化してしまいます。新種のモンスターとして軍隊に捕えられたスーザンは“ジャイノミカ”と命名され、他のはみ出しモンスターたちと共に秘密基地に監禁されてしまいました。ところがある日、巨大なエイリアン・ロポットが地球に降り立ちます。苦戦する軍隊に業を煮やしたモンガー将軍は“モンスターvsエイリアン作戦”を大統領に進言。スーザンたちは自由と引き換えにロボット戦うことを承知するのですが・・・。

ヒロインは夫婦はチームと信じて幸せな結婚生活を夢見るごく平凡な女の子でしたが、隕石にぶつかり巨大化するという非日常的な出来事により、あっけなく夢破れてしまいます。そのことで傷つきはするけれど、婚約者のエゴイストな姿を見て、逆に発奮するバイタリティのある女性として描かれています。

今まで自分の持つ可能性や力に気付かなかったスーザンが、モンスターではあるけれど熱い心を持つ仲間たちと友情を築いていく様子が良かったなぁ

仲間のモンスターたち、スライム状のボブに脳みそはなく、コックローチ博士はマッド・サイエンテスト、半漁人のリンク、ムシザウルスは放射能を浴びて巨大化した虫といった具合で強烈に個性的ですが、彼らを見ていると人間の方が危険な生き物だなぁと自戒させられます。

実は隕石には巨大なエネルギーを持つ物質が含まれていて、地球侵略を目論むギャラクサーはそれを狙ってロボットを送り込んだという設定。ロボット作戦が失敗すると、今度は自ら乗り込んできて彼女たちと戦うのですが、素晴らしいチームプレイで難局を乗りて越えていくスーザンたちの活躍を楽しめます。

ドリームワークス・アニメーション初の本格的3D作品だそうで、過去の名作へのオマージュ(スター・ウォーズ・モスラ他)も散りばめられていて楽しかったです。

事が起こるのはいつもアメリカ、核戦争の起動ボタンとそっくりの珈琲メーカーのボタンを作らせるなどの大統領のいかれっぷりに風刺精神も生きています。スーザンの声はリース・ウィザースプーン(日本語版はベッキー)、モンガー将軍はキーファー・サザーランドです。

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