氷と炎の歌シリーズ5
ジョージ・R・R・マーティン(著) 酒井 昭伸(訳) 早川書房
第一巻
白竜、緑竜、黒竜の三頭の竜を従え、デナーリスはミーリーンで女王として君臨していた。だが、その前途には暗雲がたちこめる。都の中では内乱をもくろむやからが殺戮を繰り返し、外では敵対勢力が都を包囲せんと軍を進めていた。さらに、竜たちはどんどん巨大化し、残虐さを増して、デナーリスでさえ抑えきれなくなったのだ。そのころ、父タイウィン公を殺害したティリオンは、密告者の長ヴァリスの手によってキングズ・ランディングを脱出、“狭い海”を渡りペントスのマジスター・イリリオのもとに身を寄せていた。イリリオから、女王デナーリスが軍を率いて七王国へ帰還するときの軍師になるよう求められたティリオンは、勇躍ミーリーンへと旅立った。だが、ドーンのプリンス、クェンティンもまた、父である大公の密命を受け、三頭の竜とデナーリスを七王国に帰還させるべく、女王の都に向かっていた…。
第二巻
青白い太陽が昇っては沈み、また昇る。空は黒雲に覆われ、稲妻が閃き雷鳴が轟くなか、黒い手と青く光る目の死者が、丘の斜面に口をあけた裂け目のまわりをうろつく。だが、決してなかへは入れない。丘の内部では、半身不随の少年がウィアウッドの玉座につき、ささやき声に耳を傾けていた。“冷たい手”に導かれ、ついに目的地に到着したブランは、“最後の緑視者”である“三つ目の鴉”から「空の飛びかた」を学んでいたのだ。そこからさらに南へと下った、といっても酷寒の地であることに変わりはない黒の城では、スタニス王が南へと発って以来、奇妙な虚脱感が漂っていた。そんななか、総帥であるジョンは古株の黒衣の兄弟たちが考えもしなかったような施策をつぎつぎに打ち出していく。なんとしても“壁”を死守するという固い決意のもとに。一方、さらに南の白い港では、捕えられ処刑の日を待つサー・ダヴォスの前に、思いもかけぬ人物が現われ…
第三巻
は「讃えよ、ル=ロールを、光の王を」雪が舞うなか、メリサンドルが歌い、結婚式の参列者が唱和する。北の果て〈黒の城〉では、アリス・カースタークとゼン族の族長シゴーンとの結婚式が執り行われていた。背リース王妃と騎士たち、ジョン・スノウと黒衣の兄弟が見守るうちに、式は滞りなく終了し、宴へと入ったその時、突如角笛が鳴り響いた。それも二回。敵襲の合図だ。野人を率いて、〈巨人殺しのトアマンド〉が、ついに襲撃してきたのだ!一方、ミーリーンの宮殿の大広間でも、華やかな宴が繰り広げられていた。ヒズダール王の招きを受け、和平条約への調印と、世に名高い闘技場見物のために、ユンカイ人が大挙してやってきたのだ。そしてその宴のさなか、デナーリスは公子クェンティンの手をとり、大ピラミッドの地下のあなぐらへと赴いた。二頭の竜、ヴィセーリオンとレイガルに会わせるために。だがまさかその翌日、自分がもう一頭の竜、ドロゴンと思いもかけぬ状況で出会うことになろうとは、その時のデナーリスには知る由もなかった・・・・。
第4部 『乱鴉の饗宴』 と合わせて1冊の本になる予定があまりに長くなり過ぎてこの第5部と二つに分けられたのだとか
しかも時系列ではなく登場人物や場所で分けられているので、物語が前後してしまって混乱を覚えました
まずは私の押しキャラであるティリオンから
ヴァリスによってペントスにいるイリリオの元に逃されたティリオンは、デナーリスの味方になるよう持ちかけられます。あれ?ターガリエン家にとってラニスター家は憎むべき敵じゃなかったっけ?
敵の敵は味方というわけですか
その気になってミーリーンを目指す彼は、死んだ筈のターガリエンの王子(デナーリスの甥)と出会います。王位継承権が上の王子とデナーリスを結び付ければ王位簒奪の強力な目になるとほくそ笑むのですが、ジョン・モーモントによって捕えられた彼は、さらに海賊に襲われ、モーモント共々奴隷にされてしまうの。また、ジョフリーの結婚式の余興に出ていた小人の娘ペニーとの出会いも描かれます。
この巻のティリオンは無意識に父親殺しの罪に苛まれているように思えます。彼が南へ下ったのは、最初の妻であるティシャの行方を捜したいという思いもあるのかな?「娼婦は何処へ行く?」というのは謎かけであり禅問答のようでもあります。
どんなに辛辣な物言いをしても、彼の本質は善なる優しさに満ちていて、だからこそ自分のせいで都から逃げ出さねばならなくなり、さらに自分と間違われて兄を殺されたペニーに対して、保護者のような気持ちを持ってしまうのね。
紆余曲折を経て、奴隷から傭兵へと駒を進めたティリオンの今後がますます楽しみ
デナーリスの方はなんだかパッとしないなぁ。
ミーリーンでぐずぐずしているうちに進軍の機会を逸し、疫病や謀反人たちに翻弄され、意に染まぬ結婚をしながらも愛人に対して小娘のような胸のときめきを感じているという展開です。
ドラゴンたちは大きくなりすぎて手に負えなくなってきていますが、第三巻でようやくドラゴンライダーたる姿が
この先、竜たちを意のままに操ることができるようになれば物語もぐっと面白くなるかな? ドーンの公子がデナーリスの求婚者として登場しますが、いかんせん世間知らずのボンボン
自分にもドラゴンの血が(一滴)流れてると軽率にも思いあがってドラゴンを解放したものの、彼らに火ダルマにされ絶命しちゃうという何とも情けない最期でした
ジョンはといえば、こちらも壁でスタニスやメリサンドルや野人たちへの対応で精一杯。壁を守るために彼なりに色々考えているのだけど、「兄弟」たちには受け入れられず次第に溝ができているようです。そしてとうとう仲間に裏切られて・・・でもここで死んじゃったらあっけなさすぎだから、きっと次章で命はとりとめてるんだろうな
ブランはいよいよ人ならぬ者になりつつあるようです。そういえば、スターク家の中で彼とジョンとアリアは皮装者なのかな?
今回一番悲惨だったのがシオン
あれだけ酷いことをスターク家に対してしたのだから当然の報いではあるけれど、皮剥ぎボルトンの残酷さは常軌を逸しています
生きるために自我を抹殺せざるを得なかったシオンですが、アリアの身代りの娘を助けたあたりから少しずつ昔の自分を取り戻していくのかな?彼の姉のアシャはスタニスの軍に捕らわれ人となりますが、彼女は弟とは違っていざとなれば潔く死を選ぶタイプですね
アリア救出に向かった野人たちの末路も悲惨。スタニス軍は本当にウインターフェル城を落とぜす全滅したの?その様子が描かれていないので、まだ先があると推察するのですが・・
サーセイも今回は窮地に立たされています。
罪を告発され、屈辱の道を歩まされ、さすがに精神的にも追い詰められたかのようですが・・いやぁ、このまま大人しくしているタマじゃないもんね。絶対盛り返して恐ろしい復讐をするに違いないと思うんだけど
今回はヴァリスやリトルフィンガーの視点は出て来ないのですが、デナーリスやエイゴン(死んだとされていた王子)を匿い育てた背後に彼らがいたのは明らかで、まさに王位を狙ったゲームの駒を動かしているのは各貴族たちではなく彼らなのではないかと思えてきました。