2015年7月11日公開 119分
2016年7月22日 金曜ロードSHOW放送
この世界には、人間の世界とは別に、もう1つの世界がある。バケモノの世界だ。
人間界【渋谷】とバケモノ界【渋天街(じゅうてんがい)】。交わるはずのない2つの世界に生きる、ひとりぼっちの少年とひとりぼっちのバケモノ。
ある日、バケモノ・熊徹(役所広司)に出会った少年(宮﨑あおい)は強さを求め、バケモノの世界へ行くことを決意した。少年は熊徹の弟子となり、九太という新しい名前を授けられる。当初はことあるごとに、ぶつかり合う2人だったが、奇妙な共同生活と修行の日々を重ねることで互いに成長し、いつしか、まるで本当の親子のような絆が芽生え始める。
少年が逞しい青年となったある日。偶然にも、【渋天街】から【渋谷】へ戻った九太(染谷将太)は、高校生の少女・楓(広瀬すず)と出会う。新しい世界や価値観を教えてくれる楓との出会いによって、九太は自身が本当に生きるべき世界を模索し始めるのだった。
そんな時、人間とバケモノの2つの世界を巻き込んだ大事件が勃発する。
みんなを救うために、自分にできることは何なのか?熊徹と九太、そして楓。それぞれに決断のときが訪れる――(公式HPより)
『時をかける少女』、『サマーウォーズ』、『おおかみこどもの雨と雪』に続く細田守監督の長編オリジナル第4作ですが、幼い子供には少々難しいお話かな
この監督の作品は自立しようともがく子供たちが多く登場しますが、その荒々しい描写が個人的にはちょっと苦手だったりします
絵柄もあんまり好みじゃない・・・。でも全部観てるんだな
母親を亡くした蓮は親戚に引き取られることを拒み逃げ出した渋谷で渋天街に迷い込みます。
両親は離婚していて父親とは連絡が取れない状況の中、周囲の大人に反発する蓮は、生意気で我儘な子供に見えるのだけど、そこはちょっと置いとこう。
バケモノ界の長老「宗師」(津川雅彦)は引退して神に転生する予定で、後継者候補の熊徹は、宗師から弟子を取るという条件を課せられていました。蓮を見込んだ熊徹は名前を言い渋った彼を(9歳だったから)「九太」と名付け共同生活を始めます。人間は心に「闇」を宿すという言い伝えがあるため、周囲は反対しますが宗師がこれを認めます。
事ある毎にいがみ合いぶつかる二人でしたが、素の自分を曝け出す修行の日々を重ねるうち、いつしか親子のような関係が築かれていきます。独りで生きてきた熊徹は、我流な技術面でライバルの猪王山に及びませんでしたが、九太を指導することで武術が洗練されていきます。九太の方も師匠をとことん真似るうち、目覚ましい成長を遂げて行きます。
17歳になったある日、偶然人間界の渋谷に戻った蓮は、図書館で進学校に通う女子高生の楓と出会い、彼女から勉強を教わります。小学校も卒業していない、漢字も殆ど知らない彼が、短期間で高卒程度の学力を得るなんて、普通では考えられないけど、集中力の高さ故ってことですかね。(ビリギャルの例もあることだし
)楓から高卒程度認定試験を受けて大学進学を目指してはと勧められた九太は、区役所で住民票を調べる内に、実父の住所を知って再会を果たすの。父親は蓮を捨てたわけではなく、行方不明になった彼を懸命に探していたのでした。
自分の居場所を決めかねていたところを、熊徹から人間界と縁が切れていなかったことを問い詰められて反発した九太は渋天街を出奔しますが、父親から「辛い過去は忘れて一緒に暮らそう」と言われて「何も知らないくせに」と拒絶してしまうの。自分が本当はどうしたいのか苦しむ九太の心に闇が入り込む描写はなかなか恐いものがありました。
楓自身も不仲な両親の間で孤独を募らせていて、彼女の中にも闇があるのですが、そのことを自覚していて制御できているのが凄いです
というか、蓮の中に自分と同じ孤独を感じたからこそ惹かれたのかもね。そして独りじゃないと気付いたことで勇気を貰ったのかも。
楓と話をしたことで落ち着きを取り戻した彼が、渋天街に戻ってみると、宗師後継者を決める闘技会が始まるところでした。精彩を欠き、ノックダウン寸前の熊徹を九太が一喝、九太の声を聞いて勢いを取り戻した熊徹は、猪王山に勝利します
ところが、猪王山の長男の一郎彦が投げた長刀が熊徹を背後から刺し貫いた。実は一郎彦も九太同様 猪王山に育てられた人間の少年だったのです。人間であることを隠して育てられた彼は、自分が尊敬する父の実の子でないことで宿した心の闇に呑み込まれてしまったのです。怒りに駆られた九太ですが、楓のお守りを見て理性を取り戻します。
失踪した一郎彦を追って渋谷に戻った九太との戦いで、渋谷の街は爆発炎上し大混乱に陥るのですが、事態を収めるため、自らの中に一郎彦の闇を取り込んで死のうとした九太の胸に、神に転生した熊徹が燃える剣となって飛び込みます。一体となった二人により一郎彦の闇は粉砕されるのです。巨大な鯨に身を変えた一郎彦との戦いは幻想的ですらありました。
人間界に戻り父親と一緒に暮らす事を決めた蓮。彼の胸には師匠である熊徹が生き続けるのね
熊徹の悪友の多々良(大泉洋)と旧友の百秋坊(リリー・フランキー)の取り合わせもなかなか良い感じです。毒舌で皮肉屋だけど、憎めない愛嬌のある多々良が気になったのですが、大泉さんの声だったのね~~