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杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング

2025年05月19日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年5月23日公開 アメリカ 169分
先行上映 2025年5月19日鑑賞

すべての”ミッション”はここにつながる-。
映画の常識を変え、不可能を可能にし続けてきた「ミッション:インポッシブル」シリーズの集大成にして最高傑作。「ファイナル・レコニング」。トム・クルーズ演じるイーサン・ハントの運命は?そしてタイトルが持つ”ファイナル”の意味とは・・・?(チラシより)


「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作で、前作「デッドレコニング」から続く物語です。前作で世界の命運を握る鍵を手にしたイーサン・ハントが鍵に導かれる運命が描かれ、彼の過去も明かされます。これまで同様アクションシーンを本人が全て演じていて、潜水艦や小型プロペラ機でのシーンは最大の見どころとなっています。
イーサンの盟友ベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)、ルーサー・スティッケル(ビング・レイムス)の他、「デッドレコニング」から登場したグレース(ヘイリー・アトウェル)、パリス(ポム・クレメンティエフ)、ガブリエル(イーサイ・モラレス)も続投しています。

前作から二か月後。
鍵を米政府に渡せば、政府が人工知能エンティティで世界を支配すると考え、どうすべきか迷っていたイーサンに、大統領からのメッセージが届きます。
エンティティが核保有国の保管庫を乗っ取り始め、世界中に核を落として人類を滅亡させようとしており、エンティティによるネットの情報操作で、エンティティ信者が激増して世界の分断が起きていました。

ルーサーとベンジーと合流したイーサンは、ルーサーがエンティティへのデジタル毒薬を作ったことを知ります。
ガブリエルの居場所を突き止めるために服役中のパリスから情報を引き出そうと 刑務所へ潜入したイーサンとベンジーは、パリスを脱獄させ、CIAエージェントのドガも仲間に引き入れます。

パリスからロンドンのアメリカ大使館 のパーティーにガブリエルが来ると聞き潜入しますが、そこに現れたグレース共々ガブリエルの部下に捕まってしまいます。ガブリエルのアジトでの拷問を回避した二人ですが、ガブリエルには逃げられます。ガブリエルがエンティティと交信するために使っていたポッドを発見したイーサンは、エンティティを阻止しようとすれば仲間が死ぬヴィジョンを見せられ、南アフリカにあるオフラインサーバーに侵入してエンティティのデータを入れろと要求されます。イーサンは仲間と世界の両方を救うと決意します。

前作で鍵の奪回に失敗しエンティティに見限られたガブリエルは、潜水艦セヴァストポリからエンティティのソースコードが書かれた「ポドコヴァ」を回収しエンティティを支配しようとしていました。ルーサーからデジタル毒薬を奪った上で罠にかけます。ルーサーの自己犠牲により街は救われますが、イーサンは大切な仲間を喪ってしまいます。

大統領や上層部の面々と会ったイーサンは、エンティティを止めるためにポドコヴァの鍵と空母の命令権を要求します。上層部は反対しますが、大統領はイーサンに1通の手紙(空母の指揮官宛て)を渡し申し出を了承します。

空母からオスプレイでロシア軍とアメリカ軍の境界にいる潜水艦に合流し、耐圧訓練を始めたイーサンをエンティティ信者が襲いますが事なきを得ます。

一方で、ベンジーたちは古いソナー機がある基地を訪れ、潜水艦の座標をイーサンに伝えます。ここでウィリアム・ダンローに再会。彼は1作目の金庫潜入の時のCIA職員(ナイフのシーン)で左遷されていたのね。同じ目的でやってきたロシア兵とのバトルではグレースとパリスが活躍します。
その最中、ダンローは無線機のモールス信号でイーサンに座標を伝達します。
ダンローの妻とグレースはイーサンが潜水から戻った時の即席減圧室を用意し準備を整えます。

セヴァストポリへの潜入に成功したイーサンは様々な障害を乗り越え「ポドコヴァ」を回収しますが、潜水服と酸素ボンベを失い水中で意識を失くします。
次の場面では浮上したイーサンを引き上げたグレースが心肺蘇生して生還してますが、極寒の海中(しかも深い)に裸で出たら1秒と保たずに死んじゃうぞ😨 

ここまでで1本分の作品の尺ですが、本番はこれからなのね~。

エンティティは核で人類を滅亡させた後で自分は保管庫のサーバーに入り生き残ろうとしていました。保管庫に到着したイーサンたちは、敢えてポトコヴァをガブリエルに渡して彼がデジタル毒薬と組み合わせるよう仕向け、エンティティが保管庫と間違えて用意した光学ドライブに入る作戦を実行しようとします。
しかし、CIAのキトリッジ(ヘンリー・ツェーニー) たちが現れて戦闘になり、ベンジーが撃たれ、ガブリエルに逃げられてしまいます。ガブリエルが仕掛けた核爆弾の解除を担当したダンロー夫妻とドガと、イーサンがポトコヴァを取り戻し毒薬を仕込み混乱したエンティティが光学ドライブに入るタイミングでグレースがドライブを抜いて閉じ込める作戦は成功し、人類は滅亡から救われます。

ガブリエルを追って小型飛行機上で繰り広げられるアクションはまさに命がけでスリル満点。小型機にしがみついて操縦席に移動 するなどありえない展開の中、見事にミッションを遂げたイーサンは、ルーサーが残した最期のメッセージを聞きます。

核のボタンを巡る大統領の判断は、人類の絆が試されるシーンになっていて、結果的に人の絆がAIに勝つ展開になっています。そうあって欲しいという製作者の願いが込められている気がします。
これまでのシリーズに登場する出来事が今作に繋がり、イーサンが行ってきたミッションの是非が問われますが、今作で答えが出た感じかな。
シリーズ登場人物の相関図が欲しいところです😁 
そして、本作で完結かと思いきや新たなミッションが・・・まだ続くのね~~😱 

パディントン 消えた黄金郷の秘密 (字幕版)

2025年05月13日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年5月9日公開 イギリス 107分 G

ロンドンでブラウン一家と平和に暮らしていたパディントン(声:ベン・ウィショー)のもとに、故郷から1通の手紙が届く。育ての親のルーシーおばさん(声:イメルダ・スタウントン))の元気がないというのだ。パディントンとブラウン一家が休暇をとってペルーへ行くと、ルーシーおばさんは失踪、里帰りは一転、彼女を探す冒険へと変わる。だが、都会暮らしになれてしまい野生の勘を失ったパディントンは次々と大ピンチに遭遇。果たしてルーシーおばさんを見つけることができるのか? そして、パディントンを待ち受ける「消えた黄金郷の秘密」とは?(公式HPより)


イギリスの小説家マイケル・ボンドの児童小説を実写映画化した2016年、2018年に続く「パディントン」シリーズの三作目は、パディントンの生まれ故郷・南米ペルーを舞台に、大切な家族を探しながら繰り広げる大冒険が描かれます。また、今作で初めてパディントンのルーツが明らかになります。

おばさんに会いに、パディントンとブラウンさん(ヒュー・ボネビル)一家は、はるばるペルーの老ぐまホームへ向かいますが、到着早々、院長(オリヴィア・コールマン)からおばさんがいなくなったと報告を受けます。
冒頭のパディントンたちを迎える準備をする老ぐまホームの院長たちが踊りながら歌うシーンは「サウンドオブミュージック」のオマージュ?
眼鏡と腕輪を残して失踪したルーシーおばさんの手掛かりは部屋に残されていた地図ですが、実はこれはある人物の罠だったのね。
地図が示すインカの黄金郷はジャングルの奥地にあります。

バードさん(ジュリー・ウォルターズ)はホームで留守番をすることになり、パディントンとブラウンさん、ブラウン夫人(エミリー・モーティマー)、ジュディ(マデリーン・ハリス)、ジョナサン(サミュエル・ジョスリン)はハンター・カボット(アントニオ・バンデラス)船長と彼の娘のジーナ(カルラ・トウス)に案内してもらうことになるのですが、実はハンターは黄金郷を探し続ける一族の子孫だったのです。

先祖の妄執に囚われて娘を置き去りにしたハンターでしたが、自分も川に落ちてしまいます。操縦者を失った船は転覆、ジャングルを歩いて向かうことになりますが、パディントンの野生の勘は鈍っていて道に迷い、パディントンは一家とはぐれてしまいます。
一家はジーナと、パディントンはハンターと再会するのですが、黄金郷の入り口を見つけたパディントンにハンターが襲い掛かります。「インディ・ジョーンズ」を連想させる大岩に追いかけられるエピソードはピンチなんだけど何だか楽しい。

一方、ホームの怪しい小部屋を発見したバードさんは院長と飛行機で一行の救出に向かうのですが、実はこの院長はハンターの従姉妹でした。おばさんの腕輪が黄金郷の手掛かりと気付いた彼女がおばさんを川に流してパディントンに探させようとしたのです。
院長の魔手から逃れ、一行は腕輪の鍵を使って黄金郷に入ります。
そこはオレンジがたわわに実るユートピアでした。ルーシーおばさんもここのくまたちに助けられていました。そしてパディントンのルーツはこの黄金郷だったのです。

おばさんや仲間のくまたち楽し気なパディントンに一家は別れを覚悟しますが、彼はロンドンで一家と暮らすことを望みます。黄金郷は故郷でありブラウン一家は「家族」だと彼は言います。

先祖の妄執より愛娘=家族を選んだハンターもまずはめでたし。
一方院長は罪を許されますが、転属先が北極の老ぐまホームというオチでした。😁 
パディントンも家族=ブラウン一家を選んだわけで、今作のテーマになっているようですね。

アマチュア

2025年04月22日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年4月11日公開 アメリカ 123分 G

内気な性格で愛妻家のチャーリー・ヘラー(ラミ・マレック)は、CIA本部でサイバー捜査官として働いているが、暗殺の経験もないデスクワーカーだ。最愛の妻とともに平穏な日々を過ごしていたが、ある日、無差別テロ事件で妻を失ったことで、彼の人生は様変わりする。テロリストへの復讐を決意したチャーリーは、特殊任務の訓練を受けるが、教官であるヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)に「お前に人は殺せない」と諭されてしまう。組織の協力も得られない中、チャーリーは彼ならではの方法でテロリストたちを追い詰めていくが、事件の裏には驚くべき陰謀が潜んでいた。(映画.comより)

戦闘や暗殺については素人のCIA職員の男が、殺された妻の復讐に乗り出す姿を描いたアクションサスペンス。原作はロバート・リテルの小説。監督はジェームズ・ホーズ。

幸せな日常が一転。愛する妻サラ(レイチェル・ブロズナハン)がテロに巻き込まれて殺されたと知ったチャーリーは、犯人検挙を訴えますが、上司のムーア(ホルト・マッキャラニー)は言葉を濁します。
チャーリーは自分で犯人探しを始め、妻の殺害現場付近の監視カメラの映像を解析して犯人がシラー(マイケル・スタールバーグ)、グレッチェン、エリッシュ、ミシカで、妻を撃ったのがシラーだと突き止めます。しかしムーアは他の大きな案件のため彼らの暗殺に動けないと言います。

納得できないチャーリーは、以前からやりとりしていた相手・インクワライン(カトリーナ・バルフ)からの情報で、ムーアの行った報告書の改ざんや、妻を殺したテロリストがCIAの隠密作戦に関わっていたことを知ります。(隠密作戦にシラーたち傭兵を利用していたけれど、ロンドンでの交渉が決裂し、逃げるためにホテルで人質を取ったシラーたちがサラを殺したのが真相のよう) ムーアにその事実を突きつけたチャーリーは彼を脅して暗殺のトレーニングを要求し、ヘンダーソン大佐から射撃や即席の爆弾製造を習いますが、銃もまともに撃てない彼にヘンダーソンは「お前は殺人者にはなれない」と言われてしまいます。

一方秘密を知られたムーアはチャーリーを始末しようと動きます。

ロンドンからパリに飛んだチャーリーは、グレッチェンのアレルギーを利用して彼女からシラーの居場所を聞き出そうとしますが失敗して逃げられ、追いかける彼の前で彼女は車に轢かれて死亡します。苦しむ彼女を見て思わず扉を解除するなんてまさに素人。道に飛び出した彼女が車に轢かれたのも偶然の結果です。

ムーアの命を受けて追ってきたヘンダーソンを即席の爆弾でまいたチャーリーは、インクワラインに協力を求めます。トルコのイスタンブールで落ち合ったインクワラインは女性でした。彼女の夫は元KGBでしたがCIAに寝返ってKGBに殺され、後を継いだ彼女も命を狙われていました。

スペインのマドリードに飛んだ二人は、ミシカが屋上のナイトプールを独占することを利用して、泳いでいたミシカをプールの底を破壊して地上に墜落死させます(ジェイソン・ステイサムの『メカニック ワールドミッション』を連想させました)が、チャーリーを追ってきたヘンダーソンが他のスパイと鉢合わせして乱闘になり撃たれてしまいます。

インクワラインの協力で、エリックに武器の取引を持ちかけますが、居場所がバレてCIAに襲撃され、逃げる途中でインクワラインが撃たれて死亡します。
エリックとの取引現場で、武器の代わりに爆弾を仕掛けたチャーリーは、シラーの居場所を聞き出して彼を爆殺します。

シラーがいるロシアの港町にやってきたチャーリーは、以前命を救ったCIAスパイの友人のジャクソン(ジョン・バーンサル)と再会し、彼からもう復讐はやめろと説得されますが拒否します。
シラーの部下に拉致され船に連行されたチャーリーに、シラーは銃を渡して撃ってみろと言います。シラーはチャーリーが自分の手で人を殺せないと気付いているのね。
その通りなのですが、実はチャーリーは船の操縦に細工してロシア領海からフィンランドの領海に侵入させていて領海侵犯でシラーたちは捕まります。チャーリーにとってサイバーシステムの操作は朝飯前ですもんね。

ムーアを疑っていたCIA長官サマンサ・オブライエン(ジュリアンヌ・ニコルソン)も密かに捜査を進めていたようで、ムーアは罪に問われ、チャーリーはCIAに復帰となります。彼の前に現れたヘンダーソン(予想通り死んでなかった)から「お前は期待以上だった」と言われ嬉しそうなチャーリー。(ヘンダーソンはムーアの命令で動いていたけれどチャーリーを殺したくはなかったように見えました。)

妻から誕生祝で贈られたセスナ(おんぼろだったのを修理しています)を操縦して空に飛び立つラストシーンでした。
サラの遺品にあったチャーリーへの贈り物はパズルでした。次々犯人を殺していく中、パズルを解いたチャーリーは中に方位磁石と“あまり空高く飛びすぎて迷わないで” という手紙が入っているのを見つけます。
妻を殺したシラーを敢えて殺さなかったのはメッセージを読んだ彼が復讐に囚われ自分を見失うのはやめようと我に返ったということなのかも。

白雪姫 吹替版

2025年03月24日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年3月20日公開 アメリカ 109分 G

雪のように純粋な心を持つ白雪姫(レイチェル・ゼグラー:吉柳咲良)の願いは、かつてのような人々が幸せに暮らす希望に満ちた王国。だが、外見の美しさと権力に執着する邪悪な女王(ガル・ギャドット:月城かなと)によって、王国は闇に支配されていた。女王は、白雪姫の“本当の美しさ”に嫉妬し、彼女の命を狙うが、不思議な森で出会った7人のこびとたちや、城の外の世界へいざなってくれたジョナサン(アンドリュー・バーナップ:「JO1」河野純喜)に救われる。誰もが希望を失いかけた時、仲間たちと力を合わせ、白雪姫の優しさが起こした素晴らしい奇跡とは…?
「魔法の鏡よ、教えておくれ──世界で一番美しいのは誰?」(公式HPより)


ディズニー初の長編アニメ映画「白雪姫」を実写化したミュージカル映画です。監督はマーク・ウェブ。

子供の頃読んだお話の白雪姫は「雪のように白い肌」「髪は黒檀のよう」「唇は血のように赤い」と形容されていましたが、本作の姫の肌の色は・・「雪の日に生まれたから」という設定に変更されたようですが何とも違和感がありました。

そもそも、ただ自分を救ってくれる王子様を待つ少女ではなく、自ら運命を切り拓く勇気ある女性として描かれているのでオリジナルとは全く違うのよね。まさに時代が変わったことを強く印象付けられました。なので王子様の登場はなく、ジョナサンは山賊です。毒リンゴを食べて眠っている姫の元に駆け付ける場面で白馬に乗って登場するのはせめてものオマージュでしょうか😁 マジで脇役なんだな~~。😅 

魔女(女王)が何度もこびとの家を訪れて白雪姫を騙して危ない目に遭わせる定番エピソードも、最後の毒リンゴのみで後はバッサリ割愛されており、ジョナサンを助けに行くために何故リンゴ食べなきゃいけないの?な無理くり設定は正直引きました。

城の門前で女王と対決するシーンでは剣じゃなくて対話。しかも民の情に訴えるわけで・・姫が両親から国民の名前を覚えること(=国民一人一人と向き合うこと)が大切と教わってきたという伏線が生かされてはいるんですけど、どうにもぬるいぞ。

女王が鏡の言葉に激怒してブチ切れて割ってしまったことで鏡の中に吸い込まれてしまう最期ですが、鏡の破片が飛び散る中で怪我一つ追わない白雪姫ってどうよ。

とまあ、あれこれ不満はありましたが、こびとたちが鉱山で働く一日のシーンはお馴染みの歌もあってとても楽しかったです。
女王の衣装は邪悪さが出ていてGOODですが、白雪姫のあのドレスはせっかく現代的な味付けなのにアニメと同じではダサ過ぎです。そこは変えられなかったのか?

ちなみに吹替版の声は、先生(大塚明夫)、おこりんぼ(津田篤宏)、てれすけ(平川大輔)、ごきげん役(小島よし)、ねぼすけ(浪川大輔)、くしゃみ(日野)、おとぼけ(風間俊介)でした。

教皇選挙 

2025年03月21日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年3月20日公開 アメリカ=イギリス 120分 G

全世界に14億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派、カトリック教会。その最高指導者にしてバチカン市国の元首であるローマ教皇が、死去した。悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は新教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。世界各国から100人を超える強力な候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まった。票が割れるなか、水面下で蠢く陰謀、差別、スキャンダルの数々にローレンスの苦悩は深まっていく。そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発するのだった……。(公式HPより)


エドワード・ベルガー監督によるローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー作品です。




コンクラーベといえば、ダン・ブラウンのサスペンス小説「天使と悪魔」で登場したのを機にその存在を知りましたが、本作はまさに選挙の実態を描いたもので、外部からの介入や圧力を徹底的に遮断するための様々な措置を含めた選挙の舞台裏が描かれていて興味深かったです。
枢機卿の法衣や修道女の修道服 、十字架、指輪、靴、外套 など衣装やアクセサリーにも作り手の拘りを感じることができます。

聖職者と言えども生身の人間。選挙における駆け引きは政治家にも引けを取らない熾烈なパワーゲームです。投票を重ねる度に情勢も変わり、水面下で様々な陰謀、差別、スキャンダルが蠢く様が生々しく描かれます。観客は選挙を執り仕切るローレンス枢機卿の視点に重ねて選挙の行方を見守ることになります。

政治的分断が深刻化している現代社会の縮図のような選挙戦の中、有力候補者はローレンスの親友で米国出身のリベラル派のベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)、カナダ出身の保守派トランブレ枢機卿(ジョン・リスゴー)、イタリアの伝統主義の保守派テデスコ枢機卿(セルジオ・カステリット)、アフリカ系のアデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)です。

現在枢機卿は世界に252人(コンクラーベの選挙権を持つのは137人)、欧州出身は45%で、12%はアフリカ、15%はアジア だそう。

ローレンスとベリーニは前教皇を批判していたテデスコの前近代的な考え方が教会を後退させることを危惧していて、彼は教皇に相応しくないと考えていました。
 
コンクラーベ直前、ローレンスはウォズニアック大司教からトランプレが重大な不正行為で前教皇から解任されたことを打ち明けられます。しかしトランプレはこれを否定します。
また、前教皇から秘密裏に任命されたというカブール(アフガニスタンの首都)のベニテス枢機卿が現れ、ローレンスは彼を招き入れることを決断します。(何故隠されていたかという理由はイスラム主義勢力が強いアフガニスタンではキリスト教徒が迫害されているための安全策とされましたが、現実には教皇が死去する前に公表していないと資格がないのだとか)

コンクラーベ第1回の投票は、票が割れますが、4人の他ローレンスも有力候補者の一人となります。ベリーニとローレンスはテデスコの勝利を避けるためアデイエミを支持することに渋々同意するのですが、翌日の食事中に起きたアデイエミと修道女シャヌミの騒ぎを目にしたローレンスが事情を問い質すと、過去に彼女がアデイエミと関係を持ち子供を産んでいたことが判明します。(カトリックの司祭は妻帯できない)
教皇の資格に価せず、教会全体のスキャンダルになりかねないと辞退を迫るローレンスに若気の至りと懇願するアデイエミ。ローレンスは秘密を守ると言いましたが騒ぎの噂は広まりアデイエミは失脚します。

枢機卿たちの宿泊施設を運営する責任者であるアグネス修道女(イザベラ・ロッセリーニ)から、シャヌミをバチカンに移したのがトランプレだと告げられたローレンスは、彼がアデイエミを陥れようと画策したと考えて詰問しますが、トランブレは教皇の要請に従っただけだと言い、逆にローレンスが教皇の座に野心を抱いていると非難します。
真相を確かめようと教皇の閉ざされた部屋に侵入したローレンスは、トランプレが票を得るため他の枢機卿に賄賂を渡した記録を見つけます。ベリーニに相談すると、教会の威信を保つために文書を燃やすよう促します。そこでローレンスは彼も賄賂を受け取っていたことに気付きます。

コンクラーベ3 日目。
ローレンスとアグネスは書類のコピーを枢機卿たちに配ります。トランブレは言い訳しようとしますが、彼がアデイエミを陥れるために画策したことアグネスに告発され失脚します。

有力候補者が次々失脚する中、ローレンスは自分の名前を書いて投票しようとしますが、これぞ神の御業とばかりにその瞬間自爆テロによりシスティーナ礼拝堂の窓が破壊され、路上で死傷者が出ます。

テデスコ枢機卿はここぞとばかりにイスラム過激派を非難し、教会は彼らと戦うべきと熱弁を振るいます。形勢はテデスコ有利となる中、ベニテス枢機卿が立ち上がると、戦争の恐ろしさを語り、暴力に暴力をもって対抗すべきではないと語りかけます。

ここまで観てくると誰が教皇に相応しいか自ずと答えが出てきます。しかし物語はその後に衝撃的な真実が明かされるのです。爆発でシスティーナ礼拝堂に開いた穴から風が吹くシーンが新たな時代の幕開けを想像させます。

ベニテスの病という伏線が登場していましたが、それは病ではなく彼が持って生まれた「神から与えられた身体」だったのです。
彼がローレンスに票を投じ続けたのは彼の信念によるものでしたが、そのこと自体が彼の苦悩を抱えた人生から来ていました。

ベニテスの秘密はやがて暴露される日が来ることは必須でしょう。その時教会はどう判断するのか。😣 リベラル派でも女性活躍に対しては保守的 な上、カトリック教会では未だ女性は聖職者(司祭以上)になれないという現実からすると、まさに爆弾投下に等しい衝撃的な結末です。

ちなみにベニテスが選んだ教皇名のインノケンティウスは「先入観のない純粋さを表す名」。他の枢機卿と異なり、企みや私欲のない純粋な信仰心を持つベニテスと彼同様イン・ペクトレで枢機卿に任命された後に教皇になったインノケンティウス10世を重ねているようです。

冒頭でベリーニが「前教皇はチェスで常に8手先を読んでいた」と語っていましたが、このコンクラーベが全て前教皇の考えたシナリオだとしたら凄すぎます。

ウィキッド ふたりの魔女

2025年03月07日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年3月7日公開 アメリカ 161分 G

魔法と幻想の国オズにある<シズ大学>で出会ったふたり― 誰よりも優しく聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバ(シンシア・エリボ)と、誰よりも愛され特別であることを望むみんなの人気者グリンダ(アリアナ・グランデ)は、大学の寮で偶然ルームメイトに。見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくにつれかけがえのない友情を築いていく。ある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、そこでオズに隠され続けていた“ある秘密”を知る。それは、世界を、そしてふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった…。(公式HPより)

名作児童文学「オズの魔法使い」に登場する魔女たちの知られざる物語を描き、2003年の初演から20年以上にわたり愛され続ける大ヒットブロードウェイミュージカル「ウィキッド」を映画化した2部作の前編。後に「オズの魔法使い」に登場する「西の悪い魔女」となるエルファバと、「善い魔女」となるグリンダの、始まりの物語を描いたファンタジーミュージカル。(映画.comより)


この作品がブロードウェイミュージカルを基にしているって知りませんでした。もちろん舞台は日本版も観た事がありません。
なので、「オズの魔法使い」に出て来る良い魔女と悪い魔女の前日譚としか認識していませんでした。😅 

まずは始まってすぐ「Part1」と出たことに驚いた。だって予告編やTVCMでは前後編なんて謳ってないぞ。(後でリーフレットを読んだらちゃんと書いてあったけど💦)

西の悪い魔女が退治されたニュースに大喜びのオズの人々の前に降り立ったグリンダは皆と一緒に祝いながらも少し複雑な表情を見せます。
良い魔女として知られるグリンダですが、大学生の彼女は傲慢で鼻持ちならない女性として描かれていました。

シズ大学の学長モリブル(ミシェル・ヨー)は、妹ネッサローズ(マリッサ・ボーディ)の付き添いだったエルファバの魔法の才能に気付いて大学入学を許可します。モリブルにエルファバと相部屋にされたグリンダは、エルファバの魔法の才能に嫉妬し、緑色の外見を皆と一緒に馬鹿にします。
エルファバの緑色は、母親が浮気相手との間に出来た子供だったからです。父親はエルファバが感情をコントロールできなくなった時に起こる騒動を悩みの種とし、また妹の障害や妻の死をエルファバのせいにして冷たく当たっていました。

ある日、ウィンキー国のフィエロ王子(ジョナサン・ベイリー)が編入してきます。グリンダと彼はすぐに好意を持ち合います。彼は皆をダンスパーティ―に行こうと誘います。ボック(イーサン・スレイター)から一緒に踊ろうと誘われたグリンダは言葉巧みにネッサローズを誘うよう仕向けます。
そのことに感謝したエルファバは、モリブルにグリンダの特別レッスンを許可して欲しいと頼みます。

そうとは知らず、グリンダはエルファバに悪趣味な帽子をプレゼントし、その帽子を被ってダンスパーティーにやってきたエルファバを皆が笑います。
エルファバが学長にレッスンを受けられるよう頼んでくれたと知り胸を打たれたグリンダは、ヘンテコなダンスを踊るエルファバと一緒に踊ります。その夜から2人は親友になりました。

オズの国ではかつて対等だった動物への差別が進み、ある日突然歴史学のヤギのディラモンド教授(声:ピーター・ディンクレイジ)が連行されます。

その後の授業の中で、檻に入れられたトラの赤ちゃんが虐待されるのを見兼ねたエルファバは、魔法でその場にいた者たちを眠らせ、フィエロ王子と一緒に子トラを森に逃がします。このエルファバの行動や考え方に衝撃を受けたフィエロは彼女を見直し、自分の生き方を見つめ直します。(続編でのグリンダとの三角関係も興味をそそりますね。😁

エルファバにオズ(ジェフ・ゴールドブラム)から招待状が届き、エメラルドシティにグリンダと訪れます。オズはこれまで誰も読めなかったグリモリー(呪文書)を見せます。「衛兵(チンパンジー)たちが翼を欲しがっている」と言われ、エルファバはグリモリーを読んで彼らに翼を生えさせますが、これはオズがエルファバを試すための嘘でした。実はモリブルはオズの命令でグリモリーを読むことのできる真の魔法使いを探していたのです。

オズが魔法使いを騙るペテン師で、彼こそが動物の虐待を命令していると知ったエルファバは、グリモリーを奪って逃げます。エルファバを説得しようと追いかけたグリンダに、一緒に魔法の箒で逃げようと誘うエルファバでしたが、グリンダは後ずさりし、二人に別れが訪れます。
動物たちを救うと宣言し、エルファバは西の空へ消えていきました。

冒頭のマンチキン国の900万本のチューリップ畑や、本物の水が使われた船着き場、オズの「巨大な顔」の広間、特に巨大な本棚が回転する大学図書館などが目を惹きます。
グリンダの居室の豪華さと、ピンクを主体とする彼女の衣装小物がまた可愛くて目の保養になりました。

肌の色や種族の違いという差別問題を織り込んだ本作は児童文学作品である「オズの魔法使い」から踏み込んだ内容になっています。
初め、無意識的差別者だったグリンダが、エルファバと交流する中で本当の意味で善に目覚めていくのかなぁ?と続編に期待します。

野生の島のロズ 吹替版

2025年02月14日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年2月7日公開 アメリカ 102分 G

大自然に覆われた無人島に流れ着き、偶然にも起動ボタンを押されて目を覚ました最新型アシストロボットのロズ(綾瀬はるか)。都市生活に合わせてプログラミングされ、依頼主からの仕事をこなすことが第一の彼女は、なすすべのない野生の島をさまよう中で、動物たちの行動や言葉を学習し、次第に島に順応していく。そんなある日、雁の卵を見つけて孵化させたロズは、ひな鳥(濱﨑司)から「ママ」と呼ばれたことで、思いもよらなかった変化の兆しが現れる。ひな鳥に「キラリ(鈴木福)」と名付けたロズは、キツネのチャッカリ(柄本佑)やオポッサムのピンクシッポ(いとうまい子)ら島の動物たちにサポートしてもらいながら子育てという“仕事”をやり遂げようとするが……。(映画.comより)


アメリカの作家ピーター・ブラウンによる児童文学「野生のロボット」シリーズを原作に、野生の島で起動した最新型ロボットが愛情の芽生えをきっかけに運命の冒険へと導かれていく姿を描いた、ドリームワークス・アニメーションによる長編アニメ映画。(映画.comより)

「リロ&スティッチ」や「ヒックとドラゴン」のクリス・サンダース監督。
まさに子供向けの内容ですが、画的には大人も十分楽しめました。
ロズは綾瀬さんの声の印象が強過ぎて重なってしまいましたが、他の声は「え?柄本佑だったの??」みたいな違和感なく入り込めました。😁 

事故で?無人島に漂着したのは最新型アシスト・ロボットです。
ラッコに起動ボタンを押されて目覚めた彼女(ロボットに雌雄がるのかは不明ですが)は、自分が仕える主人を探し回ります。島にいるのは野生動物だけですから、彼らがロズを恐がったり嫌がったりしてもお構いなしです。ビーバーのパドラー(山本高広)の家を悪気はないにせよ壊してしまったり、ピンクシッポの子供たちとのやりとりも笑えます。

言語解析機能で動物の言葉もわかるようになった頃、ロズは雁の巣に落っこちて親鳥と卵を死なせてしまいます。一つだけ無事だった卵を狙う狐のチャッカリとの争奪戦(このシーンもなかなか楽しい)を経て、孵った雛を育てていくことになります。キラリと名付けたひな鳥をチャッカリやオポッサムのピンクシッポも協力します。捕食する側のチャッカリとされる側のキラリの間に生まれる感情はロズに芽生えたそれと同じ「家族」への愛情です。
ロズの優しさに触れ、怪物として彼女を拒絶していた動物たちも島の“家族”として受け入れるようになります。

餌やり・泳ぎを教える・飛び方を教えるという3つの使命を実直に果たそうとするロズはまさに「母親」そのものに見えてきます。雁の仲間から拒絶されたキラリを鷲のサンダーボルト(滝知史)に頼んで飛び方を教えてもらい長く飛べるようになったころ、渡りの季節がやってきます。その直前にロズが親鳥と兄妹を死なせてしまったことを知ったキラリはロズにわだかまりを否めません。
渡りのリーダーのクビナガ(千葉繁)に認められ巣立っていくキラリを見送るシーンはウルっと来ますね。

渡りの途中で嵐に遭ったキラリたちはロズが作られたユニバーサル・ダイナミクスの温室 に避難しますが、侵入者と見なされ攻撃を受けます。パニックになる仲間たちの中で冷静なキラリをクビナガはリーダーと認め、自らが犠牲となって雁たちを逃がします。

島に残ったロズは動物たちと共に厳しい冬を迎えます。チャッカリと共に凍えそうな動物たちを暖かな「家」に避難させるロズ。大騒ぎの動物たち(そりゃ食物連鎖が一堂に会するのだから当たり前)をチャッカリと熊のソーン(田中美央)が諭します。

春が来て雁たちが戻ってきた頃、回収ロボットのヴォントラ が島にやってきます。
逃げるロズを助けようと動物たちは力を合わせてRECOを撃退しますが、ロズはヴォントラに捕らえられ、RECOの爆発で森に火災が起きてしまいます。

ロズを救おうと輸送機に侵入したキラリは、記憶を消去され停止したかに見えたロズを見つけて必死に呼びかけます。キラリの愛がロズの心に届きシステムが復旧します。ヴォントラを破壊して輸送機の爆発から逃れる二人。
一方、チャッカリたちは協力して火を消し止めます。

戦いは動物たちの勝利でしたが、ロズは動物たちと島を再びの攻撃から守るために、ユニバーサル・ダイナミクス社に戻ることを決意します。寂しがるチャッカリにピンクシッポやソーンが仲間がいると慰めます。ロズはキラリにまた戻ってくると約束して回収されていきました。

数か月後。ユニバーサル・ダイナミクス社の温室で働いていたロズをキラリが訪ね再会を喜び合う二人の姿で幕を閉じました。

ロズのせいで親や兄弟が死んだことを知ったキラリはロズを拒絶しますが、一番弱い個体だった自分が生き延びたのもまたロズが守ってくれたからだと気付いて彼女に感謝を伝えます。それはキラリの成長の証でもあります。
心を持たないロボットのロズの中に芽生えた感情が家族への愛であり自分の居場所を見つけたことも素敵な点でした。それにしてもあんなに多機能のアシストロボットがいたら欲しいぞ😀 

ショウタイムセブン ネタバレあり

2025年02月07日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年2月7日公開 98分 G

午後7時、ラジオ局に1本の電話が入り、その直後に発電所で爆破事件が起こる。電話をかけてきた謎の男は交渉人として、ラジオ局に左遷された国民的ニュース番組「ショウタイム7」の元キャスター・折本眞之輔(阿部寛)を指名。これを番組復帰のチャンスと考えた折本は生放送中の「ショウタイム7」に乗り込み、自らキャスターを務めて犯人との生中継を強行する。しかしそのスタジオにも、すでにどこかに爆弾が設置されていた。自身のすべての発言が生死を分ける極限状態に追い込まれた折本の姿は、リアルタイムで国民に拡散されていく。(映画.comより)


テレビの生放送中に爆弾犯との命がけの交渉に挑むキャスターの姿をリアルタイム進行で描いたサスペンス作品です。2013年製作の韓国映画「テロ,ライブ」が原作ですがオリジナル展開も盛り込まれています。折原の相棒レポーターだった伊東さくらは井川遥が演じ、新人アナの結城役はめるること生見愛瑠 。折本の上司・東海林(吉田鋼太郎)がいかにもTV業界人をイメージさせる狡さ・軽さを醸し出していました。

人気報道番組『ショウタイム7』のメインキャスターだった折本は三か月前に突然番組を降板、現在はNJBラジオのキャスターを務めています。シリアスな時事問題を扱う『ショウタイム7』の裏で、ぼさぼさの髪に不精髭で「あなたは犬派?猫派?」という(どうでもいい)テーマを扱う彼の姿のギャップをまずは見せつけられます。
折本の後釜となった安積(竜星涼)はそのルックスと爽やかなイメージが売りですが、インパクトはイマイチ感が醸し出されます。😁 

折本の番組にかかってきた一本の電話から物語が動き出します。
相手の爆破予告を悪戯と取り合わず悪態をついて電話を切った数分後、大きな爆発音が起こり、城東火力発電所が爆破される事態が発生します。これをキャスター復帰のチャンスと考えた折本の行動の素早さには舌を巻きます。
読み通りに交渉相手に指名された折本は、ショウタイム7のキャスターとして犯人と緊迫の駆け引きを展開していくのです。

6年前に起きた大和電力の城東火力発電所での事故で父を亡くしたという犯人の要求は、大和電力社長の謝罪です。当時、次世代発電所の工事にG20開催による海外要人の視察が重なり、無理なスケジュールで働かされた結果、現場で事故が起こって父と仲間たちが死亡したのに、大和電力からの謝罪はなく、僅かな口止め料が支払われただけで事故は揉み消され、母親も半年後に病死したと訴えます。

ところが社長の謝罪を早々に諦めた犯人は次に大和電力と癒着している政府・水橋総理の謝罪を求めます。
スタジオとイヤホンに爆弾を仕掛けたという犯人に、折本は、番組名物のリアルタイムの世論調査「総理は謝罪するか否か」で水橋総理に圧力をかけようとします。
視聴者の反応は「否」。まさに国民の政府への信頼度の低さを如実に現わしているようですね。😁 電話での内閣官房危機管理審議官の兼子(声:内山昂輝 )の対応は
誠実さのかけらも感じさせないまさに役人の模範解答ですね。

これを受け、犯人はさらに標的を折本に変えます。
犯人から折本の収賄疑惑の資料を受け取った安積の告発に潔白を主張する折本に対し、犯人は「折本が真実を告白するか否か」の世論調査を要求するのです。
安積の折本への疑惑は日頃の反感が加わり苛烈な追及となります。それまで犯人を追及する正義の代表然としていた折本の立場が一転、テロを利用し安積を押し除けて返り咲き、世論を利用して首相に迫った折本が、犯人のタレコミを利用した安積に迫られ、世論調査で不信任を突きつけられます。

その疑惑とは、折本が製薬会社から2,000万円の賄賂を受け取りって薬の副作用の追求を止めたというものです。折本の否定によりスタジオ爆破の緊張感が高まる展開は緊迫感があります。

しかしそんなギリギリの緊張感の中で、折本は犯人の本当の狙いと事件の真実に気付くんですね。
犯人が繁藤寛治であることは、高校時代の担任として登場した城大作(平田満)により早い時期に明かされます。犯人を激高させマイクを爆破されて死亡した筈の彼が、スタジオの廊下ですれ違った清掃員だと気付いた折本は、城が共犯者で、倒れたのは芝居だと見破ります。

ここからが本番の種明かし。
スタジオに登場した犯人は錦戸亮が演じていました。城のようにファンならもしかして声だけでわかったのかな?

城は発破技師として働いていた繁藤寛治の父方の祖父でした。清掃員としてTV局に潜り込み孫の計画を助けていたのです。

折本は真実を語り始めます。
彼は6年前の発電所の事故を取材し、遺族である繁藤の母のインタビューを取り真実を掴んでいたのに、TV局のスポンサーの大和電力と与党自由党、上司の(吉田鋼太郎) から圧力をかけられ、情報を握りつぶす代わりに『ショウタイム7』のメインキャスターの座を得ていました。権力の癒着の構図は胸糞が悪くなりますが、それに目を瞑って手に入れた座をわずか一年で再び失ったその理由が、製薬会社からの賄賂を受け取らなかったことというのも皮肉な話です。

折本は繁藤に深々と頭を下げて謝罪しますが、警察に連行される彼にこう言い放ちます。この(ショウタイム7)2時間は最高に楽しかった!
それは視聴者も同じで、安全なところにいるからこそ楽しめたのだと呼びかけた彼は、最後の「ショウタイム」を仕掛けます。その選択肢は折本の「LIVE(生)」か「DIE(死)」か。結果が表示されることはなかったのですが、直後爆弾が仕掛けられているイヤモニをつけ直し、公安の園田(安藤玉恵)が落とした爆弾のリモコンを拾って「私たちは、公正かつ公平な姿勢で真実に迫ります」とカメラに向けて言った折本は、笑顔でスイッチを押します。

画面は変わり、他局の報道番組が「大和電力と自由党、NJB」の談合スクープが報じられます。その最中、速報テロップで、ロンドンの地下鉄での爆発テロのニュースが流れます。そこにPerfumeの新曲「Human Factory – 電造人間 -」紹介とライブ映像が流れ幕を閉じるのです。衝撃的な事件は更に大きな事件に上書きされ、一方で日常は変わりなく移っていくことへの皮肉な現実を揶揄しているかのようでした。

折本の運命についての言及はなかったのですが、おそらくは爆弾は城の時と同じフェイクと推察します。繁藤が折本にスイッチを拾わせたのはその覚悟を見届けようとしたからかなぁ。

今世間を騒がせている某局の問題は質こそ違えど根っこは同じ気がします。
視聴率至上主義、政府が握る権力へのおもねり、大衆の無責任な興味と残酷さを浮き彫りにしていて見応えがありました。

ベルサイユのばら

2025年01月31日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2025年1月31日公開 113分 G

将軍家の跡取りで“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(声:沢城みゆき)。隣国オーストリアから嫁いできた王妃マリー・アントワネット(声:平野綾)。オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ(声:豊永利行)。容姿端麗で知性的なスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(声:加藤和樹)。18世紀後半のベルサイユで出会った彼らは、激動の時代に翻弄されながらも、それぞれの人生を懸命に生きぬいていく。(映画.comより)


1972年から「週刊マーガレット」(集英社)で連載され、現在累計発行部数2000万部を超える池田理代子の漫画を新たに劇場アニメ化しています。
ナレーションは黒木瞳。
来場者特典 第一弾は「原作:池田理代子 伝説の名シーン複製原稿【原稿袋入り】~オスカル人生で一度のドレス姿~」でした。


本編上映前には特典映像<ベルばらミニ!>オスカル編が流れました。

舞台は革命期のフランス。不自由な時代の中で、身分や性別を乗り越え自身の手で人生を選びとり、フランス革命へと飛び込んでいくオスカルの生き様が、少女たちの共感と憧れを一身に集め、読者の熱狂的な支持を集めた本作は、その後宝塚歌劇団による舞台化やTVアニメ化もされて社会現象を巻き起こしました。
当時週刊マーガレットの愛読者だった身にはとても懐かしく思い出深い作品でしたので、これはスクリーンで観なければ!と初日初回にGO!

とても長い物語を、オスカル・マリー・アンドレ・フェルゼンの4人に絞って描くことで簡潔でありながらも要所を抑えた構成で魅せてくれました。
その分、デュバリー夫人やロザリーやジャンヌらのエピソードや首飾り事件は割愛されています。二時間の枠に収めるためか、物語は1789年7月14日のバスティーユ奪取 で幕を閉じ、エンドロールでマリーの処刑までの史実が語られていました。

忘れかけていた記憶がスクリーンに蘇り、懐かしさと新たな感慨に胸が熱くなりました。
大人になった今、恋や愛、自由への渇望といった感情も登場人物により共感を持って迫ってきました。思わず涙腺が緩む場面もあり見応えがありました。😊 

ライオン・キング ムファサ

2025年01月10日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年12月20日公開 アメリカ 118分

息子シンバを命がけで守ったムファサ王。かつて孤児だったムファサの運命を変えたのは、後に彼の命を奪うスカーとの出会いだった。両親を亡くしひとりさまよっていた幼き日のムファサは、王家の血を引く思いやりに満ちたライオン、タカ(後のスカー)に救われる。血のつながりを超えて兄弟の絆で結ばれたムファサとタカは、冷酷な敵ライオンから群れを守るため、新天地を目指してアフリカ横断の旅に出る。(映画.comより)

声の出演(吹替版)
尾上右近 (ムファサ), 松田元太 (タカ), MARIA-E (サラビ), 吉原光夫 (マセゴ), 和音美桜 (アフィア), 悠木碧 (アクア), LiLiCo (賢いキリン), 賀来賢人 (シンバ), 門山葉子 (ナラ), 佐藤二朗 (プンバァ), ミキ・亜生 (ティモン), 駒谷昌男 (ラフィキ), 渡辺謙 (キロス)
 

2019年製作の「ライオン・キング」の前日譚として、若き日のムファサ王とスカーの兄弟の絆が描かれます。
年末予定が合わず、学校が始まった今週の鑑賞です。さすがに空いてた😁 

「ライオン・キング」でシンバの叔父、ムファサの弟として登場するスカーは兄を憎み死なせてしまうヴィランでしたが、今作では二人の関係性が前日譚として描かれています。

若き日のスカーは王の息子タカという名でした。父の命令(血族以外は仲間に入れない)に背いてワニに襲われたムファサの命を救った彼は「兄弟が欲しかった」と無邪気にムファサを慕います。
タカの父は息子の王位を脅かす存在を恐れ、ムファサを雌の中に留めおきます。ムファサはタカの母エシェの愛情を受け、狩りの仕方を教わります。
父に隠れて共に遊び育った幸せな子供時代が描かれ、後の確執との対比がいっそ哀しい。

今回のヴィランは、はぐれライオンを率いる白ライオンのキロスです。エシェを守ってキロスの息子を殺したムファサへの復讐を誓うキロスは、タカたちの群れを襲います。タカの父は血筋を守るために二人を逃がし、ムファサにタカを支えるよう命じます。

ムファサは両親から聞かされていた楽園ミレーレを目指します。その途中で雌ライオンのセラビとサイチョウのザズー、マンドリルのラフィキが仲間に加わったことで、兄弟の関係が壊れ始めます。
タカは心優しいライオンでしたが、母の危機を前にしながら臆病さから逃げ出してしまったことを恥じていました。追ってきたキロスたちから逃れようと像を利用した時にセラビが踏みつぶされそうになった時も何もできずにいました。

セラビに一目惚れしムファサに恋の相談をしていたタカは、彼女を身をもって庇い、それをタカの行為と言ったムファサに感謝しながらも複雑な想いを抱きます。王の命に従いタカを支えようとしてきたムファサも、セラビへの想いを抑えられなくなっていきます。

二人の仲睦まじい様子を目撃したタカは裏切られたと感じ、悲しみはやがて復讐心となって燃え上がります。そんな時、、目の前に現れたキロスを逆に利用するタカの頭には「王には知略も必要だ」と言った父の言葉が浮かんでいました。

ミレーレに辿り着いた一行をキロスの群れが襲います。タカはここで反旗を翻すのですが、ムファサがキロスに殺されそうになった刹那、「ムファサを殺さないで」と庇いキロスの爪を目に受けます。彼の傷はこの時のものなのね。

水中で死闘を繰り広げたムファサを最後に助けたのもタカでした。幼い頃にワニに食べられそうになったムファサを助けたその同じ爪で水中から引き上げます。ムファサへの復讐心の中に、捨てきれない情が残っていることが窺えるシーンです。
(この爪のエピソードは「ライオンキング」でムファサを崖から落としたスカーのシーンにも繋がっているんですね。)

それでもタカのやった裏切りは赦されない・・楽園からの追放を求める声に、ムファサは「私が王である限りは、彼をここに置くことにする。」と宣言しますが、同時に「だがもうその名は呼べない。」と告げます。タカは「ならば(傷という意味の)スカーと呼ぶがいい」と応えます。ムファサの生き別れた母はこの楽園に辿り着いて息子を待っていました。両親をキロスに殺され孤児となったタカの目に再会した二人の姿はどう映ったのでしょう・・・。

本作ではナラが第二子を出産するための場所に向かったシンバに娘のキアラの子守を頼まれたプンバァとティモンも登場します。彼らの「お話」を遮るようにラフィキがキアラに祖父ムファサの若き日のことを語って聞かせる展開になっていますが、偉大な王ムファサよりスカーに思い入れを持って観てしまいました。

若き日のタカが純粋で素直なだけに、闇に落ちてしまった後のスカーが哀れです。
タカには王としての素質(勇気や判断力など)が欠けていましたが、血筋が全ての父親から王になることを望まれ、それが唯一の道だと信じてしまったことで彼の悲劇は始まっていたのかもしれません。

聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団

2024年12月20日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年12月20日公開 93分 G

広い宇宙の数あるひとつ、燦然と輝く命の星、地球。
世紀末を無事乗り越えた神の子イエス(松山ケンイチ)と仏の悟りを開いたブッダ(染谷将太)は、日本の四季折々を感じながら下界で密やかにバカンスを楽しんでいた。東京・立川にある風呂なし6畳一間のアパートをシェアし、ふたり暮らし。アイスを分け合ったり、近所の商店街で福引きを楽しんだり、お笑いコンビ「パンチとロン毛」を結成したり。ゆるーい日常を過ごす2人の元にある日、天界からの使者が現れ、禁断のオファーが伝えられる。やがてそれは、神も仏も天使も悪魔も入り乱れる、まさかの地球滅亡の危機へと繋がっていく!?(公式HPより)


イエスとブッダが東京・立川にある6畳一間のアパートでふたり暮らしをしながら下界を満喫する日常を描いたギャグ漫画「聖☆おにいさん」の実写映画化です。原作者・中村光が映画化のために描いた「スクリーンへの長い途」をもとに、ドラマ版に続き福田雄一がメガホンをとっています。
なので福田組常連さんはもれなく出演。どこに誰が出ているのかを見つけるのもファンの楽しみの一つですが、そうでない人にとっては好き嫌いが別れる作品かも。(二郎さんのアドリブは正直、長過ぎてつまらなかったし😔
感想を一言でいうと、窪田君の出番が思いのほか多くて準主役級だったのが嬉しい!💛です。

ある日、2人を訪れたのは仏法の守護神・梵天(賀来賢人)、雷神・帝釈天(勝地涼)、天使ミカエル(岩田剛典)の3人。人間が臨終間際に見る走馬灯的な映像をヒーロー戦隊ものに作り変えたいと二人に出演のオファーをします。弁財天(白石麻衣)や戦いの仙人(佐藤二郎)のスパルタ特訓を受け、マーラ(窪田正孝)も娘たち(山本美月、桜井日奈子、中田青渚)の応援に張り切って敵役を受けます。

脚本は十一面観音(仲野太賀)とヨハネ(神木隆之介)が担当し、撮影が始まると川口春奈、吉柳咲良、田中美久、森日菜美、安斉星来の女子ーズも登場して盛り上げます。

イエスのお父さん(佐藤二郎)のくだりは冗長でしたが、色んな番組をパロって進む話は気楽に笑えました。(逆にコンプラ大丈夫かと心配になるけど)
戦隊ものではお馴染みの爆破シーンや、倒された後に巨大ロボットが登場する展開はもはや突っ込む気にもなれない😝 
堕天使ルシファー(藤原竜也)の一喝で終わりますが、デスノートネタに至っては、新旧揃い踏みじゃん!と密かに狂喜した次第でございます😍 

ちなみに福田組常連の山田孝之、ムロツヨシは「え?これだけ??」な役でしたが😥 

この手の作品にストーリー性や芸術性とか期待しないので、小ネタを拾ってゆるっと笑ってなんぼですね😁 

はたらく細胞

2024年12月13日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年12月13日公開 109分 G

人間の体内には37兆個もの細胞が存在し、酸素を運ぶ赤血球AE3803 (永野芽郁)や細菌と戦う白血球U-1146(佐藤健)など無数の細胞たちが、人間の健康を守るため日夜はたらいている。高校生の漆崎日胡(芦田愛菜)は、父の茂(阿部サダヲ)と2人暮らし。健康的な生活習慣を送る日胡の体内の細胞たちはいつも楽しくはたらいているが、不規則・不摂生な茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちが不満を訴えている。そんな中、彼らの体内への侵入を狙う病原体が動き始め、細胞たちの戦いが幕を開ける。(映画.comより)


人間の体内の細胞たちを擬人化した同名漫画の実写映画化です。原作漫画「はたらく細胞」とスピンオフ漫画「はたらく細胞 BLACK」から、ある人間親子の体内世界ではたらく細胞たちの活躍と、その親子を中心とする人間世界のドラマが並行して描かれます。
「翔んで埼玉」「テルマエ・ロマエ」シリーズの武内英樹監督で面白くならないわけがない✌

細胞たちのキャラと俳優さんたちがナイスマッチです。
白血球(好中球)U-1146を演じた佐藤健が全身白塗り姿で「ぶっ殺す!」と叫びながら細菌をなぎ倒す様なんて原作から抜け出したようにはまってました。なんたってアクション演出は「るろうに剣心」シリーズの大内貴仁ですからね😁 
「キラーT細胞」役の山本耕史や「NK細胞」役の仲里依紗のキレッキレなアクションも魅せてくれました。

前半はコメディタッチで進みます。
大人になっても方向音痴?な赤血球を何かと守ってくれる白血球を軸に、特徴ある細胞たちが続々登場。優しいマクロファージ先生(松本若菜)や、可愛すぎる血小板(マイカピュ)たちに癒され、ヘルパーT細胞(染谷将太)の司令塔や美しい肝細胞もキャラに合っていました。

黄色ブドウ球菌(小沢真珠)、肺炎球菌(片岡愛之助)、化膿連鎖球菌(新路慎也)の悪玉菌トリオは黄・青・赤の信号トリオじゃないか😓 とは後で気付いた次第💦
それぞれ思いっきり楽しんで演じたんだろうな~というオーラ全開でした。

身体の持ち主であるニコちゃんとお父さんのやりとりに仲良しぶりが感じられ、ニコが想いを寄せる先輩・武田新(加藤清史郎)にときめいた時に神経細胞(DJ KOO)が絶妙なアゲアゲDJを披露するシーンでは細胞たちも踊り出します。

不摂生なお父さんの体内にいた先輩赤血球(加藤諒)と新米赤血球(板垣李光人)の視点で描かれるゴミ(LDL)だらけの血管内や肛門での悲壮な攻防に笑いながら、ふと我が身を顧みて反省も💦
この二人に訪れた悲しい別れから、新米君がニコの細胞の仲間入りをするいきさつにはやや難がありますが、原作二つを巧妙に融合させた結果なのね。

ちなみに健康的な生活を送っていたニコの体内はファンタジックで綺麗な街として描かれ、不健康なお父さんの方は戦後の日本のような荒廃感が漂う街になっていました。

ニコの食事指導のおかげで健康を取り戻したお父さんでしたが、今度は娘の方に病魔が忍び寄りました。
先輩白血球の「お兄ちゃん」に憧れ立派な白血球になろうとしていた子(SEKAI NO OWARIのFukase)が異常細胞と判断され白血病細胞に変貌(がん化)しちゃうんですねぇ😔 
Fukaseは「キャラクター」でも殺人鬼(悪役)を演じていましたが、今回の悪役も合っていました。

ここからはシリアス全開で細胞たちの戦いが描かれます。
体内で抗がん剤は爆弾投下のごとく炸裂し、放射線治療はオーロラのように全身をなめ尽くし、細胞たちを全滅させていきます。輸血によりニコの体内に移植された新米赤血球君と出会い、共に行動し励ます姿はすっかり先輩赤血球なAE3803でした。
無数の白血病細胞と戦い力尽きるNK細胞やキラーT細胞。白血球U-1146も白血病細胞を倒して死亡し、最後まで酸素を届け続けた赤血球AE3803も放射線で死亡するという何とも哀しい最期です。まぁ、細胞にも寿命があるわけで仕方ないのだけど、やりきれなさを残します😭 

ニコのために必死に看病を続けたお父さんとBFの新君の微笑ましいやりとりや、笑うことで免疫力があがると一生懸命に励ます姿には涙腺が緩みました。そういえば愛菜ちゃんと阿部さんは「マルモ~」以来の親子役共演ですね💛

辛い治療に耐え抜き、骨髄移植により病気に打ち勝ったニコの体内では新たな細胞たちが生き生きと働いています。
赤血球AE3803や白血球U-1146に似た二人も再び巡り会って、細胞の物語は続いていくようです。

モアナと伝説の海2 吹替版

2024年12月06日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年12月6日公開 アメリカ 100分 G

前作での壮大な冒険から3年、妹のシメア(増留優梨愛 )が生まれ少し大人へと成長したモアナ(屋比久知奈 )は、愛する家族と島の仲間たちとともに暮らしていた。ある日、「かつて人々は海でつながっていたが、人間を憎む神によって引き裂かれた。海の果てにある島に辿り着けば呪いは解け、世界は再びひとつになる」という伝説を知る。モアナは人々の引き裂かれた絆を取り戻すため航海に出ようとするが、それは、その島に近づこうとこうとすれば、 “生きては帰れないかもしれない”というほどの危険に満ちた冒険だった。幼い妹シメアや家族たちと二度と会えないかもしれない…しかし、愛する人たちを守るため、「私が、やらなきゃ」と決意し、迷いや葛藤を乗り越えて果てしない旅へ踏み出すモアナ。前作で相棒となった半神半人のマウイ(尾上松也 )が「モアナ、お前は一人じゃない」と背中を押し、さらには良き理解者で心の支えとなっているタラおばあちゃんから勇気をもらい、島の新しい仲間たちと一緒に新たな冒険へ旅立つ。(公式HPより)


「モアナと伝説の海」の続編です。
モアナが“タウタイ”(海を渡り人々をつなぐ者)になるための儀式の最中、雷に打たれます。意識の中で、タウタイ・ヴァサから他の島の人々と繋がることができなければ村が終焉を迎えると告げられます。人々が分断されたのはナロ(神)が人々を繋ぐ中継点となるモトゥフェトゥに呪いをかけ沈めたからでした。

この呪いを解くために再び冒険の旅に出るモアナですが、今回は旅の仲間がいます。絵が得意なマウイファンのモニ(小関裕太 )、頼れる船大工のロト(鈴木梨央 )、植物を愛する老人ケレ(山路和弘 )、前作でも活躍?したヘイヘイや豚のプア です。

新たに登場するのはマタンギ(ソニン)です。ナロに仕える彼女はマウイを捕らえていますが、同時に彼女自身も閉じ込められているようです。マタンギはモアナに「迷う」ことがモトゥフェトゥへの道に繋がると言いました。

マウイも加わり進む一行ですが、モニが危険に曝されたことで落ち込んだモアナは前に進めなくなります。そんな彼女を今度はマウイが勇気付けます。

海に沈んだモトゥフェトゥをマウイが釣り上げようとしますが、ナロが作り出す嵐に阻まれます。ナロがマウイではなく、呪いを解こうとする人間を止めようとしていると気付いたモアナは自分たちがナロを引き付ける間にマウイが島を引き上げるという作戦を立てます。魔法の釣り針で島を釣り上げるというのは神話に基づくようですね。

ところが、ナロの雷に打たれたマウイはタトゥーを消され半神の力を奪われてしまいます。モアは「別の道がある」と、自ら泳いで海中のモトゥフェトゥの島に辿り着きますが、ナロの雷に打たれてしまいます。意識を失ったモアナの元にマウイが辿り着き、歌うことでタウタイ・ヴァサ、祖母や祖先たちが現れて蘇生させます。

力を取り戻したマウイによってモトゥフェトゥは釣り上げられます。
モアナの左腕に現れたタトゥーは、神の力が与えられたということですね。

モトゥフェトゥが復活したことで、多くの島々から海を渡って人々がやってきます。
マウイや仲間たちと共にモトゥヌイに戻ったモアナは家族と再会してめでたしめでたし😁 

と思ったら、続きがありました。
モアナを助けたマタンギを責めるナロを横目にタマトア(前作でも登場したキャラ)がひとくさり。・・・まだ続くのね💦

前作では敵キャラだったココナッツの海賊たちが、ナロの呪いを解くためにモアナたちと協力して戦います。愛嬌のあるキャラなので戦いもユーモラスで楽しめました。

今回もヘイヘイがナイスタイミングで活躍してくれるのも😄 

六人の嘘つきな大学生

2024年11月22日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年11月22日公開 113分 G

誰もが憧れるエンタテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用。
最終選考まで勝ち残った6人の就活生に課せられたのは“6人でチームを作り上げ、1か月後のグループディスカッションに臨むこと”だった。
全員での内定獲得を夢見て万全の準備で選考を迎えた6人だったが…急な課題の変更が通達される。
「勝ち残るのは1人だけ。その1人は皆さんで決めてください」
会議室という密室で、共に戦う仲間から1つの席を奪い合うライバルになった6人に追い打ちをかけるかのように6通の怪しい封筒が発見される。その中の1通を開けると…「・・・は人殺し」
そして次々と暴かれていく、6人の嘘と罪。誰もが疑心暗鬼になる異様な空気の中、1人の犯人と1人の合格者を出す形で最終選考は幕を閉じる。
悪夢の最終面接から8年が経ったある日、スピラリンクスに1通の手紙が届くことである事実が発覚する。それは、<犯人の死>。犯人が残したその手紙には、「犯人、・・・さんへ。」という告発めいた書き出しに続き、あの日のすべてを覆す衝撃的な内容が記されていた。残された5人は、真犯人の存在をあぶりだすため、再びあの密室に集結することに…嘘に次ぐ嘘の果てに明らかになる、 あの日の「真実」とは――(公式HPより)


浅倉秋成のミステリー小説の映画化で、監督は佐藤祐市、主題歌は 緑黄色社会「馬鹿の一つ覚え」です。

人気企業の最終選考を舞台に、6人の登場人物の裏の顔が暴かれていく“密室サスペンス”と、8年後にそれぞれの暴かれた嘘と罪の真相が判明する“青春ミステリー”が合わさっていて、犯人探しの息詰まるような緊迫感を味わった後に、思いがけない感情の揺さぶりがあって面白かったです。

最終選考に残った6人は、洞察力に優れた主人公・嶌衣織(浜辺美波)、まっすぐな性格でムードメーカーとなる波多野祥吾(赤楚衛二)、冷静で的確なリーダーシップをとる九賀蒼太(佐野勇斗)、語学力と人脈に自信を持つ矢代つばさ(山下美月)、口数が少なく分析力に優れた森久保公彦(倉悠貴)、スポーツマンでボランティアサークルの代表を務める袴田亮(西垣匠)です。

最終選考の結果次第では6人全員に内定を出すと言われ、全員内定を目指してグループディスカッションを重ねて事前準備に取り組む中で仲を深めていった6人でしたが、急に課題が変更されて戸惑います。

それは6人で話し合い内定者を1人だけ決めるというものでした。
当日、正六角形に配置されたテーブルを囲んだ6人は、自己PRを行いながら15分毎に投票し総得票数で内定者を決めることにします。
1回目の投票の後、怪しい封筒が置かれていることに気付いて中を覗くと、それぞれの宛名が書かれた封筒が入っていました。

最初に九賀が自分宛の封筒を開けると、袴田の高校時代のいじめ記事が入っていました。以後の投票で票を得ることができなくなり自暴自棄になった袴田は、それぞれの過去が暴かれることで相対的に自分にもチャンスが生まれると考えて、次の手紙を開けることを要求します。

九賀、矢代、森久保・・暴露される者が増えていく中、嶌がこの封筒は会社が置いたものではないのではと指摘したことで、封筒を置いた犯人探しが始まります。
録画されていたビデオを確認すると、森久保が置いたことがわかります。森久保の否定の言葉は聞き入れられず、投票は続いていきます。
全員の手紙の開封を望む既に暴露された4人に波多野は迎合せず、これまでの関係に戻ろうと説得した彼の熱弁に心を動かされ始めるメンバーでしたが、九賀が暴露写真の特徴(傷と撮影日)に気が付いたことで、撮影日に唯一予定がなかった波多野が犯人と断定します。波多野は自分が犯人だと認め、嶌には暴露するものがなかったので封筒の中身は空だと言います。
最後の投票で、嶌が票を集める結果となって、彼女が内定者に決定します。

この日までは熱い友情が育っていたように見えた6人が、内定を勝ち取るためにエゴを剥き出しにして互いを非難し合う姿が醜くも人間臭い温度で迫ってきます。まさに彼らの裏の顔が剥き出しになったかのようで迫力がありました。

ここで終わりかと思いきや、シーンは8年後に。
スピラリンクス社員として働く嶌を、波多野の妹・芳恵(中田青渚)が訪ねてきて、
兄が病死したことを伝え、遺品を整理していて見つけた「犯人、嶌衣織へ」と書かれた手紙とUSBメモリーを届けます。ここで真犯人は嶌?と誘導されるわけね。😒 

USBメモリーにはパスワードがかかっていて、ヒントは”犯人が愛したもの”となっていました。身に覚えのない嶌は、事件を調べ直すことにします。暴露写真の撮影時間と場所の矛盾点から、波多野が犯人ではないと気付いた彼女は、最終選考の録画ビデオを見直して、矢代と森久保の不審な動きを見つけます。こういう観察眼の鋭さは彼女の得意とするところですね。

あのときの4人を呼び出した嶌が、犯人に証拠を突きつけるのが最終展開です。
波多野のより明確な証拠暴露写真を使わなかったのは、「彼」がお酒を飲めな(知らな)かったからなのね。
真犯人の動機は何とも稚拙に感じました。だって尊敬する先輩がスピラリンクスに落ちたのは人事部の見る目が無かったからと決めつけ、最終選考に残った自分への自己評価の低さもあって、5人を巻き込んで人事部に復讐しようとしたのですから。

彼の告白の後で、嶌は彼の口癖だった“fair”を入力してUSBメモリーを開きます。そこに保存されていた音声ファイルを開いたことで全ての伏線が回収されていきます。

犯人扱いされたことに絶望した波多野は、メンバーの悪行を更に曝け出そうと、彼らに関わる人物を訪ねていました。しかし、そこでそれぞれの秘密や罪には事情があったことを知ることになります。(例えば袴田は苛められていた後輩を守るために学校に告発した結果、加害者が自殺しており、彼に責任はなかったなど。)

善人面していたように見えたメンバーたちは、本当は悪人ではなくそれぞれの正義や道徳があったことを知った波多野は同時に自分のしようとしていた行為の下劣さに気付いたと告白し、5年、10年後に再会した時に胸を張って生きていたいと残していました。

ラスト。波多野の妹と墓前に手を合わせた嶌は、これで終わりではなく、ここからスタートだと前を向きます。

企業への就職活動をしたことのない身には、彼らの切実さを共感することは難しいのですが、最終選考の場の極限の精神状態の中で繰り広げられる密室劇はヒリヒリした緊迫感が伝わってきて犯人探しのスリルと共に目が離せませんでしたが、裏の顔=悪人というわけではなかった結末に救いを感じました。
嶌の暴露が最後まで出なかったのが気になると言ったら己の野次馬的好奇心の醜さを曝すことになるのかな。そこまで考えての構成だとしたら見事です。

室井慎次 生き続ける者

2024年11月08日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年11月8日 先行上映
2024年11月15日公開 117分

警察を辞めて故郷の秋田に戻り、事件被害者・加害者家族の支援をしたいという思いから、タカ(齋藤潤)とリク(前山くうが・こうが)という2人の少年を引き取り、暮らしていた室井慎次(柳葉敏郎)。しかし、彼の家のそばで他殺死体が発見され、さらにかつて湾岸署を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だという少女・日向杏(福本莉子)が現れたことから、穏やかな日常は徐々に変化していく。かつての同僚であり今は秋田県警本部長になっていた新城(筧利夫)に頼まれ、警視庁捜査一家の若手刑事・桜(松下洸平)とともに捜査に協力することになった室井。そんな彼のもとに、服役を経て出所してきたリクの父親が訪ねてくる。(映画.comより)


「踊る大捜査線」シリーズの中心人物のひとりである室井慎次を主人公に描いた映画2部作の後編です。

前編がなかなか見応えがあったので、事件解決を含め期待して観た後編でしたが・・・正直なんじゃそれ!!でした。
思いっきりネタバレになりますが、室井さんの死は百歩譲って有りとしても、その死に方はないんじゃないの?
秋田出身で冬山の寒さ、厳しさは身に沁みている筈なのに飼い犬探して遭難死はあり得ないと怒りさえ覚えてしまったぞ。😡 そもそも、飼い犬なんだから、戻って来るでしょ、普通は。狭心症を抱える彼が危険を承知で出たのなら自殺行為であり、子供たちとの将来を楽し気に語った姿とは矛盾するんですよね。納得いかんぞ。

前編の遺体の顛末についても、桜が室井に自分の推理を語ったあと、本庁があっさり犯人を捕まえるし、黙秘する犯人に一般人となっている室井が取調室で語り掛けたことで自供を引き出すという展開は「昭和の刑事かよ!」と突っ込みを入れたくなりました。被害者も加害者家族も深い傷を負っているって、それ今更ですか😓 

リクの暴力父親(加藤浩次)のせいでひと悶着(杏が猟銃持ち出す)が起きた後、飼い犬を探しに出たまま戻って来ない室井を、それまで彼に否定的に接していた住民が総出で捜索する様子はまるで大々的な犯人捜査に似ていて深刻なシーンなのに失笑してしまいました。それにしても今回も駐在所のおまわりさん(矢本悠馬)のキャラがあまりにも軽くて腹が立つ~。

ともあれ、この作品のテーマが室井個人の生き方ということであれば、この後編の見方も変わってきます。
青島との約束を果たせず失意のまま警察を辞めて故郷に戻ってきた室井は、事件関係者の子どもを引き取ることで希望を見出していきます。前編ではタカの、後編ではリクのことを守り通した彼は、杏に対しても正面から向き合います。
商店の店主(いしだあゆみ)の「子供は皆愛されたい」という言が室井に杏の行動の真意を気付かせるんですね。このエピソードは良かった💛

彼をよそ者として否定していた住民たちでしたが、彼の死後、その思いを知り、子供たちを受け容れ見守り変わっていきます。ちょっと出来過ぎな気もしますが・・・。
「親」がいなくなったのですから、一般的には養護施設に引き取られると思うのですが、本作では子供たちはそのままあの家で住民たちに見守られながら生きていくことを選んだようです。あれ?タカの進学はどうなったんだ??💦

警察関係はどうなったかといえば、新城が室井の思いを受け継ぎ、沖田(真矢ミキ)の後押しを受けて「秋田モデル」として進めていくようです。同期の3人の立場は変わっても思いは受け継がれていくということですね。

そしてラストで室井の家を訪ねていく青島が!
でも呼び出しがかかりUターン。え?帰っちゃうの?そもそも彼は室井の死を知って訪ねたのかそうでないのか・・・

室井はいなくなっても「踊る~」は続くのかもという期待を持たせて幕を閉じたわけです。