杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

縞模様のパジャマの少年

2010年01月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年8月8日公開 イギリス=アメリカ

第二次大戦下のドイツ。探究心旺盛で純粋な少年ブルーノ(エイサ・バターフィールド)にとって、ナチス将校の父(デヴィッド・シューリス)の昇進により大好きな家と友だちから離れて田舎に行くことは嬉しい出来事ではありません。周囲には遊べる友達もいないし、お姉ちゃんのグレーテル(アンバー・ビーティー)は若い将校に夢中だし、使用人ときたら「パジャマ」を着たまま仕事してるし・・。部屋の窓から見える「農場」に行くことも裏庭から外に出ることも禁じられていたけれど、好奇心溢れる少年にとっては禁じられたら覗いてみたくなるのは自然な成り行きでしょう。

その結果、ブルーノは「農場」のフェンス際で同い年の友だちを得ます。その子シュムール(ジャック・スキャンロン)も何故か縞模様のパジャマを着ていたけれど・・。二人の間に徐々に育っていく友情がとても微笑ましいけれど、互いに自分の置かれている立場を理解していない二人の会話は時に噛み合いません。やがて、ブルーノはシュムールが「危険な」ユダヤ人だと知ります。

ドイツの歴史を熱心に教える家庭教師の先生はユダヤ人は悪人ばかりだと言ってます。でも・・・シュムールは何も悪いことしてないんじゃないの?台所で芋を剥いてるおじいさんは元はお医者さんだったって言ってたけど、どうして今は違う仕事をしてるんだろう?
それにどうしてこの頃パパとママ(ヴェラ・ファーミガ)は喧嘩ばかりなんだろう?

グラス磨きの手伝いに来たシュムールにお菓子を上げたところを恐いコトラー中尉(ルパート・フレンド)に見つかったブルーノはシュムールが勝手に食べたと言ってしまいます。友だちを裏切ったことを悔やみ、何度もフェンスのところに行くけれど、やっと会えたシュムールの右目は殴られて酷く腫れあがっていました。だけど彼は一生懸命謝るブルーノを許してくれました。この事件がより一層二人を強い友情で結んだのです。

ところが、パパは子供たちにここを離れるように言います。シュムールに別れの挨拶をしに行ったブルーノはシュムールのパパが行方不明と聞かされ、一緒に探してあげる約束をします。フェンスの下に穴を掘り、シュムールの持ってきた「パジャマ」に着替えて「農場」に潜り込んだブルーノを待っていたのは・・・。


ホロコーストを描いた映画は沢山あるけれど、これは8歳の少年の視点で捉えた異色の作品です。年齢的には、もう少し物事がわかる年頃じゃないの?なんて疑問は今の情報化時代に生きる者の驕りかもしれません。

曇りのない少年の目に映る奇妙な農場の人々はやがてユダヤの囚人たちだと判明します。
軍の作ったまやかしの「収容所生活」映画を盗み観た彼は、パパに対する疑いを払拭し、「農場」の人たちも生活を楽しんでいるんだと思い込んだのですが、縞模様のパジャマを着て潜り込んだそこは、彼の想像を粉々にし、彼の命まで奪ったのです。

演じる二人の少年の大きく澄んだ瞳と無邪気な表情が現実の酷さをより一層突きつけてきました。彼らがしっかりと手を繋いで恐怖に向かう様は切なくて涙が溢れてきました。

ブルーノの母は、夫の昇進を初めは素直に喜ぶのですが、収容所で何が行われているかを知って苦悩します。彼女はその行為も、夫がそんな仕事を受け入れていることも耐えられず、子供たちを連れて家を出ようとした矢先に、その悲劇は起こったのです。息子に何が起こったかを察した父母の悲痛な叫び(それは別々の場所で発するのですが)はしかし、彼らが見て見ぬふりをしていたことへの神が与えた罰のようでもありました。

無垢な子供と違い、大人は「知らなかった」では済まされないということなのですね。
知らないこと、見ないことも罪なのだと、この作品は訴えているようです。
観終わって改めて胸に熱いものがこみ上げてきました。

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サロゲート

2010年01月27日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年1月22日公開 アメリカ 89分

“サロゲート”と呼ばれる身代わりロボットが開発された近未来。人類は自宅でサロゲートを遠隔操作し全ての社会生活を代行させ、リアルな世界に身を置くことはなくなっていた。
だが、ある日サロゲートが襲われ、使用者本人も死亡する事件が起こる。FBI捜査官のグリアー(ブルース・ウィリス)は、サロゲートを開発したVSI社と事件とのかかわりを捜査するが……。

ロボットが全ての社会生活を代行してくれ、アクシデントがあってもサロゲートが破損するだけで使用者には影響がなく、しかも理想の「なりたい自分」をオーダーメードで注文できるという、まさに夢のような未来社会が舞台です。

だけど、本当にそんな世界は理想的なのでしょうか?
自動車事故で息子を亡くしたFBI捜査官のグリアーも、そのショックから立ち直れない妻マギー(ロザムンド・パイク)とのリアルな交流のない生活に疑問を持っていることが暗示されます。その疑問が、サロゲートの破壊がその使用者の死に繋がった事件を担当することで更に大きくなっていく様子も描かれ、それが最終的に彼が下した判断に繋がっていきます。

人間にとってユートピアのように見えた社会が、その足元に巨大な陰謀(軍による武器)を抱えていたというのは、いかにもアメリカ的発想だけどね

同僚のピータースを演じるのはラダ・ミッチェルです。
作品の性質上、本人とロボットは同一人物でなくて良いわけで、二人の俳優が一つのキャラを演じているので、ぼんやり見てると、誰が誰役かわからなくなったりするかも。

特に殺人事件の被害者の女性サロゲートの使用者が醜い中年男だったってのが笑えます。が・・・リアル社会でも、ネカマとかいますから~~笑い事じゃなくってフィクションがノンフィクションを凌駕しつつあるのかもと考えたらちょっと背中に冷たいものが

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オーシャンズ

2010年01月25日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010.1.22公開 フランス 103分

地表面積の70%を占める海洋は、その殆どが未だ謎を多く秘めた場所です。
映画の冒頭で、初めて海を目にした子供の発した「海ってなに?」から謎に包まれた海の生物たちの生態が次々と映し出されていきます。

北極海から南極海、海上から深海、世界50か所で4年以上の月日をかけて100種類以上もの海洋生物を撮影したネイチャー・ドキュメンタリーです。
この映画を撮るために開発された撮影技術の素晴らしさは、例えば波間をジャンプしながら泳ぐイルカの群やくじらの雄大な捕食風景、海底に密集した5万匹ものカニたち、砂浜を必死に海へと向かう亀の赤ちゃんたちを容赦なく襲う鳥たち、夜に活動する生き物、クラゲの輪舞にセイウチのお母さんが赤ちゃんをそっと抱く様子、海中から荒れる海上を捉えた映像まで、まるでその場に立ち会って海中を見ているかのような臨場感に圧倒されます。

だけど・・・主人公のない、一定のストーリーを持たないこのような作品は・・・眠気が出ちゃうんですよね(--;
宮沢りえちゃんの温かみのあるナレーションにも催眠効果が

前半はまったりとした展開ですが、後半は人間による海洋汚染で環境が破壊されている状況を示されるので、このあたりは目を見開いて考え込んじゃうところでもあります。

うっかり失念してましたが、この日は鑑賞料金が1000円の日。チケット売り場がえらく混雑してましたポイントで観たのでちょっと損した気分 

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ウィッチマウンテン/地図から消された山

2010年01月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年7月4日公開 アメリカ 98分

UFO大会で賑わうラスベガス。タクシードライバーのジャック(ドウェイン・ジョンソン)は、街に溢れるSFオタクにうんざりしていた。そんな彼のタクシーに乗り込んだセス(アレクサンダー・ルドウィグ)とサラ(アナソフィア・ロブ)と名乗る兄妹の二人組。彼らを乗せて走り出した途端、怪しいSUV車に追われるが、ジャックの並外れた運転テクニックと兄妹の不思議な力で危機を脱する。しかし、さらなる追っ手がかかり、ジャックは戸惑いながらも謎めいた兄妹と行動を共にする。

アメリカのタブースポットと呼ばれる“ロズウェル”“エリア51”そして“ウィッチマウンテン”。地図にない米国政府の秘密施設には宇宙絡みの謎が隠されていると噂される、そんな地を舞台にした、SFミステリーアドベンチャーです。1975年製作の「星の国から来た仲間」のリメイクなんだそう。当時兄役を演じた俳優さんが保安官役で登場してます。公開時の評判がイマイチだったと記憶してますが、私的には面白かったなぁ。

何といっても宇宙人である兄妹が美形なんですね~~。これだけでも高評価
チャリチョコでチューインガム少女を演じたアナソフィアちゃん、美しくなりました。
イケメン兄ちゃんは『光の六つのしるし』の子なのね。

味方をするのはザ・ロック演じるスーパータクシードライバーと宇宙物理学者のフリードマン博士(カーラ・グギノ)。ヘンリー・バーク(キーラン・ハインズ)率いる政府の機密組織や彼らの星からきた暗殺者から逃げながら、星に帰るために宇宙船が隠されているウィッチマウンテンへ向かう場面はスリリングでスピーディで時にコミカルでさえありました。

一度は組織に捕まった子供たちを救出し、宇宙船で逃げるシーンや、別れのシーンも良かったです。宇宙人が人型で特殊能力を持ってるとか、普通に英語喋れるとか、暗殺者の素顔がグロイ(ひょっとして兄妹の素顔も・・?)など、突っ込みは置いて楽しもう

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おとうと 試写会

2010年01月20日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2009年1月30日公開予定 126分

試写会場:よみうりホール 18:30~

夫を早くに亡くした吟子(吉永小百合)は、東京の郊外の商店街で薬局を営みながら女手一つで娘の小春(蒼井優)を育て、義母の絹代(加藤治子)と3人で暮らしていた。吟子には大阪で芸人に憧れながら破天荒な暮らしを送る弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)がいたが、音信不通になっていた。ところが、小春の結婚式当日に鉄郎が紋付袴姿で現われ、披露宴を酔っ払って台無しにしてしまう・・。

東京で堅実に生きてきた姉と、大阪で何かと問題ばかりを起こしてきた弟の、再会と別れが描かれています。

披露宴をめちゃくちゃにしたり、借金を作って消えたりのダメ弟に、初めは小春と同様嫌悪感を持ち、どうしてこんな弟を優しく受け入れることが出来るのかと吟子にも苛立ちを持って観ていたのですが、次第に彼女の人柄や、鉄郎の孤独や悩みがわかり始めて、ラストでは涙が滲み出てきました。

吉永小百合さんはいくつになられたのでしょう? 彼女の品のある美しさに見とれ、娘の小春役の蒼井優ちゃんの凛とした美しさに見とれ、そして二人が着る白衣がまた良いの

しかし、兄が小林捻持で弟が笑福亭鶴瓶って、どんな兄姉弟や

大人になれないダメ男を鶴瓶師匠が好演してます。笑いの部分は芸人さんですから問題ないのは当たり前だけど、凄いのはシリアスなシーンでの演技。これは某映画賞の主演男優賞受賞も当然と思えました。

笑いといえば、笹野高史、森本レオ演じる商店会のおじさんたちが面白かったな。
小春の夫はいけ好かない人物でしたが、商店街の幼馴染(加瀬亮)は好人物で後の展開が読めるけど、許せちゃう

シリアスな場面では小日向文世、石田ゆり子が演じた民間ホスピスで働く人々の姿に頭が下がりました。どんな人生を送ってきた人でも、あんな風に介護されて旅立てたとしたら、それは何よりの贈り物だと思います。

ただ、終盤のエピソードで吟子がある液体を鉄郎の管に入れる場面は、彼女の職業では無防備にそんなものは絶対入れないでしょ!!って突っ込みたくなりました。笑いを取るという意味では前振りもあって効果的ではありましたけどね

義母の絹代(加藤治子)のボケぶりに笑いながらも、あんな風に周囲から認めてもらえないのはやはり寂しかろうと気になったりもしました。

師匠と仲良しの中居君が1シーン出てきますが、 彼の出演話は前に聞いてたのにうっかり忘れてたのであの声にえ?と思ってよく見たら彼でした。
シーンに溶け込んで、自然な演技でしたよ。ファンは階段ではしっかり目を開いててね

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かいじゅうたちのいるところ

2010年01月20日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010年1月15日公開 アメリカ 101分

両親が離婚して、母と姉のクレアと3人暮らしのマックス(マックス・レコーズ)は、ある日母親とケンカをして外に飛び出す。目に付いたボートに乗り、大きな海を渡ってやがてある島に辿り着いたマックスは、そこで不思議なかいじゅうたちと出会う。 大きくて恐そうなかいじゅうたちは、実は長い間、自分たちを導いてくれるリーダーを欲していて、マックスを自分たちの王様にする。王様となったマックスは誰もが幸せになれる場所を創るとかいじゅうたちに約束するが・・・。

モーリス・センダックの絵本「かいじゅうたちのいるところ」の映画化です。
子供たちに昔読み聞かせをした本なので、とても懐かしくて公開を楽しみにしていました。そしてその期待は十分満足させられました。
時間的に吹替で観たのですが、加藤清史郎君の声は可愛かったです。

絵本の世界から飛び出してきたかのようなかいじゅうたちの姿が、グロテスクどころか愛らしくさえ感じられるのは俳優たちの演技力とデザインの良さゆえでしょうか。(吹替の声もキャラに合ってました)
気難しいキャロル、意地悪なジュディスと夫で心優しいアイラ、キャロルの親友ダグラス、皆に注目されたいアレクサンダー、寡黙なザ・ブルとキャロルの元恋人のKW。

それぞれの性格もわかりやすく描かれ、マックスと「かいじゅうおどり」をしたり、重なってお昼寝したり、楽しく暮らす日々が映されます。
しかし、仲間割れや喧嘩といった現実が、マックスに王国の支配の難しさを気付かせ、やがて彼は母の待つ家に帰ろうと決心し、かいじゅうたちに別れを告げるのです。

姉にかまってもらえず、母も恋人に夢中でマックスの寂しさに気付いてくれない、そんな不満がマックスを悪戯や悪態に駆り立てたのですが、かいじゅうたちと繰り広げた不思議な経験が彼を少し大人にしました。

島を出るマックスとかいじゅうたちの別れの際に流した涙や遠吠えにも心を揺さぶられましたが、親という立場でいえば、夕食を食べずに家を飛び出したマックスのために食事を用意して帰りを待っていた母親が、彼を抱きしめるラストに胸が熱くなりました。

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ダウト/あるカトリック学校で

2010年01月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年3月7日公開 アメリカ 105分

1964年、NY。ブロンクスにあるカトリック学校長のシスター・アロイシス(メリル・ストリープ)は厳格な指導で生徒から恐れられていた。一方、ストイックな因習を排し進歩的で開かれた教会を目指すフリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)は生徒に人気があった。ある日、純真な新米教師シスター・ジェイムズ(エイミー・アダムス)の目撃談から、アロイシスは神父が黒人生徒ドナルドと不適切な関係にあるのではないかと疑い、執拗な追及を始めたのだが・・・。


カトリックといえば、厳しい戒律を思い浮かべます。そしてこの校長はまさにそんな厳格で古い価値観に囚われた女性でした。彼女が神父に抱いた疑いは状況からは無理もないものでしたが、神父の告げた「真実」は彼女の心には届きません。一方、シスター・ジェイムズは、その純真さから神父の告白を素直に信じ、頑ななまでに疑惑を捨てない校長に戸惑います。

校長の妄執とも呼べそうな疑惑は、進歩的な考えを持ち生徒に人気のある神父を快く思っていなかったことが大きな理由であり、そもそも、そのような偏見・憎しみを持っていたからこそ、神父を信じることができなかったのでしょう。

何とか「真実」を暴こうとドナルドの母(ヴィオラ・デイヴィス)に疑いを話すのですが、この時、母親は息子がそのような性質を持っていることを告げ、もし疑惑が真実であったとしても将来のためには、息子を受け入れて理解してくれる人が必要なのだと言います。
このシーンでの二人の女優のやりとりも見所の一つです。

こうした校長の振る舞いを見せられるうちに、観客である私も迷い始めます。果たしてこれは校長の偏見に満ちた悪意ある誤解なのか、それとも彼女の方がひょっとしたら正しいのではないか・・・と。少年のシャツや過度に見える抱擁といった小さなエピソードがさりげなく織り込まれた作りもその思いを加速していきます。

母親と会ったことを知った神父との間に交わされた言葉の応酬の激しさにも息を呑みました。しかし、このシーンでも真実はどうだったのかは曖昧なままです。

神父が去り、学校は校長の望む静けさに満ちています。
では校長が正しかったのでしょうか?
しかし、神父は放逐されたのではなく、栄転したのだということが示され、シスター・ジェイムズの前で嗚咽を漏らす校長の姿は、彼女が神父に抱いていた疑いについて迷い後悔しているようにも見えました。そしてそのままフェイドアウト・・疑問は解消されないまま。

冒頭フリン神父の説教のテーマは「ダウト=人は確信が持てないときどうするか」でした。
互いに強い信念を持ちながら、相手を認めることの出来ないまま袂を分かつ校長と神父の姿は広く人間社会→国と国の関わり方をも描いているように思えました。

それにしても、メリルとホフマンの舌戦は凄かった!『マンマ・ミーア』で弾けた若さ?を魅せた彼女が、本作ではどこから見ても厳格で人から敬遠されるシスターで、『プラダを着た悪魔』の編集長の華やかさなど微塵もないのですから驚きます。いつも癖のある役の多いホフマンだけに、完全無欠な善良さを持つようには見えないところも、この役には合っていたと思います


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エンバー 失われた光の物語

2010年01月16日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
劇場未公開 2009年10月23日DVD発売 95分

地底深くに建設された都市<エンバー>の住人たちは、200年もの間、一度も地上へ出ることなく、都市全体の電気を供給する発電機の光を頼りに暮らしていた。しかし、発電機の限界を迎え何度も停電が起こり始め、住人たちは「永遠に光が消えてしまう」という不安を抱く。そんなとき、エンバー・スクールを卒業したばかりの少女、リーナ(シアーシャ・ローナン)が偶然、家の屋根裏で古びた箱を見つける。その中には「出口」の文字が書かれた文書と不思議なカードが入っていた。リーナは、少年ドゥーン(ハリー・トレッダウェイ)と共に光を求めて冒険の扉を開く・・。

トム・ハンクスが製作総指揮を務めたファンタジーアドベンチャーです。
リーナ役のシアーシャ・ローナンは「つぐない」で、キーラの妹の幼少時代を演じた子。最新作の「ラブリーボーン」では主演ですから、着々と女優の道を歩いてるってわけね。
他にもビル・マーレイ、ティム・ロビンス、マーティン・ランドーといった豪華な俳優陣なんですが、本国ではコケたらしく日本未公開なんだなぁ。

人類を滅亡から救うため地下都市を建設して地上への出口を封印した「建設者」たちの未来へ賭ける想いを描いた冒頭シーンは希望をテーマにしている予感を与えてくれます。ただ、どのような状況で地上の滅亡を招いたのかは不明(^^;

エンバーの子供たちは学校卒業と同時にくじで決められた職業に就かなくてはなりません。
ところが、電気工になりたかったドゥーンは、配管工のくじを引いてしまったリーナと、仕事の取替えっこをしちゃいます。それってズルでしょ!なんだけど、誰からも咎められないのね 

リーナのメッセンジャーの衣装はマント風でとても可愛かったです。
配管工の先輩スル(マーティン・ランドー)が愛敬あるじーさんでナイス。

リーナは7代目市長の子孫で、エンバーの出口を示すメッセージの入った箱を偶然見つけたことから彼らの冒険が始まるのですが、食糧不足の都市の中で、一人私腹を肥やす市長(ビル・マーレイ)や共犯者の秘密を知ったことから彼らに追われることになります。しかし、たった200年でその歴史を忘れちゃうってのもなんだかなぁ~。

かつて出口探しをして挫折したリーナの父とドゥーンの父ロリス(ティム・ロビンス)に代わり、その子どもたちが再び出口を目指すという繋がりは良かったです。

子供たちが出口を見つけるシーンは遊園地のアトラクションのようなスリルとドキドキ感もあって楽しめたのですが、地上に出る所はあっけなくて、地底で水路を「下って」るのになんで地上に出ちゃうのかという突っ込みもしたくなりました

更に、地上の穴から地底都市が見えちゃうってどうよ
石投げたら危ないでしょとも
ラストで力尽きちゃったような不完全燃焼さが惜しいかなぁ

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Dr.パルナサスの鏡  ネタバレあり

2010年01月15日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2010.1.23公開予定 イギリス=カナダ 124分

試写会場:中野ゼロホール 
開映:19:00~

2007年、ロンドン。人の心に抱いている想像の世界を具現化してみせる魔法の鏡「イマジナリウム」。それを出し物に劇場仕立ての馬車で巡業をしている旅芸人の一座がいた。科学者でもあり座長でもあるパルナッサス博士(クリストファー・プラマー)、その美しい娘・ヴァレンティナ(リリー・コール)、こびとのパーシー(ヴァーン・トロイヤー)、曲芸師の若者・アントン。摩訶不思議な魔法の鏡はたちまち観客たちを虜にしていく。実は、博士には大きな秘密があった。娘ヴァレンティナが16歳になったとき、悪魔(トム・ウェイツ)に差し出すことと引換えに不死を手に入れていたのだ。もうすぐ期限は迫ってくる。そこへ橋の下に吊されていた謎の青年・トニー(ヒース・レジャー)が一座に加わったことで事態は思いがけない方向へと進んでいく…。 ( cinemacafe.netより)


不運の監督とも呼ばれるギリアム監督ですが、此度もヒース・レジャーの急逝で危機に陥った本作を、ヒースの親友たち、ジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウが演じ分けることで、奇想天外な物語に仕上げています。

前回、ジョニーが演じながらも頓挫した「ドン・キホーテを殺した男」のドキュメンタリー「ロスト・イン・ラ・マンチャ」のDVDを早送りで観たのと「ブラザーズ・グリム」を劇場鑑賞した以外はこの監督作は観ていないのですが、今回は「ブラザーズ・グリム」に近いながらもよりファンタスティックな印象があります。

昔、悪魔との賭けに勝ち不死を手に入れた博士は、やがて一人の女性に恋をします。この時若さを手に入れる代わりに、生まれた娘が16歳になった時、悪魔に差し出す約束をしてしまったのでした。
そりゃ・・・後悔しますよね、普通。何とかその契約から逃れようと苦しみ酒びたりになっても仕方ないですよね(^^;
そして約束の日が迫った時に、悪魔は新たな賭けを提案するのです。

鏡の世界に入り込んだ客に、悪魔の欲望の道と節度ある博士の道を選択させ、先に5人を獲得した方が勝ちというその賭けを知ったトニーはバレンティナのために客を鏡に誘導するのですが・・・

この鏡の世界に入り込んだトニーをヒースに代わってジョニー・ジュード・コリンの順番で演じているのです。ファンの欲目もあるけれど、やっぱりジョニーが一番ヒースの雰囲気を損なわずに演じていたと思うなぁ☆
裕福な中年婦人相手のダンスシーンは自分を置き換えて妄想突入タ~~イム♪

一見善い人のトニーの正体が暴露されるあたりがクライマックス。
この時のトニーを演じているのはコリンだけど(ジョニーじゃなくて良かったぁって少し思った
彼の特徴ある太眉はヒース=トニーとかけ離れてて違和感ありあり。
どうしてもあの眉は譲れない(剃れない)のかしらん?

ラストもなんかいい感じ。小人のパーシーと博士のやりとりも凄くいいです。

鏡の世界は書き割りの稚拙さに見せたセットからCGまで、色んな要素が盛り込まれてキッチュでラブリーでファンタスティック
一粒で二度どころか何度も美味しいキャラメル仕様
もう一度観たくなる映画です。

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イエスマン “YES”は人生のパスワード

2010年01月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2009年3月20日公開 アメリカ 104分
 
3年前に離婚して以来、カール(ジム・キャリー)の毎日は“NO”の連続だった。銀行の貸し付け担当の彼は、ローンの申請を却下し続け友人の誘いも断るネガティブ生活で、昇進の機会を逃し友情も壊れかける始末。そんな時、旧友ニック(ジョン・マイケル・ヒギンス)に強引に誘われた自己啓発セミナーで、カリスマ主宰者テレンス(テレンス・スタンプ)に今後は何があっても“YES”と答えると誓いを立ててしまう。

恐らくカール自身が閉塞した自分の環境を何とかしたいと思う心があったのでしょう。
一度イエスを言ったことで、どんどん状況が好転しだすと、もう彼の行動は止まりません。このあたりはジムお得意の体を張ったコメディ炸裂です。

アリソン(ゾーイ・デシャネル)という魅力的な恋人も出来てHAPPY最高潮の時、思わず口にしたノー!から事態が急降下した時、彼の幸福リズムが狂いだします。
既にこの頃のカールは何にでも考えずに「イエス」という強迫観念が出来上がっているのです。このことが恋人との間に亀裂を生み、最大のピンチに陥った時、テレンスの真意を知る機会が訪れます。

盲目的なイエスではなく、前向きに人生を歩くって楽しいよ!ってことを伝えている映画なんですね。

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ティンカーベル

2010年01月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年12月23日公開 アメリカ 79分

人間の赤ちゃんが初めて笑う時に、妖精は生まれます。そしてネバーランドの妖精の谷(ピクシー・ホロウ)にある日一人の女の子の妖精が誕生しました。彼女はもの作りの才能を持ち、ティンカー(もの作り)の妖精“ティンカー・ベル”と名付けられました。折から谷は人間の住むメインランドへ春を届ける準備に大忙しです。ところが、道具作りや修理が仕事のもの作りの妖精はメインランドへ行くことができないと知ったティンクは、別の才能を示してメインランドへ行こうと友だちの助けを借りて春を呼ぶ仕事に挑戦するのですが・・。

この映画は『ピーター・パン』に登場する小さな妖精ティンカーベルの誕生秘話です。

心躍るメインランド行きが、もの作りの妖精には許されていないと知ったティンクはとてもがっかりして、自分の仕事に対する情熱を失ってしまいます。
他の妖精たちの使う道具を製作、修理するといった仕事は確かに地味な裏方作業ですから、生まれたてのエネルギー溢れるティンクには物足りなく思えても非難は出来ないでしょう。

自分には別の才能があるに違いない!と他の妖精たちの仕事を手伝っては失敗する姿もなんだかとても人間的です。

意地悪なヴィディアに嘘を教えられて「春」の準備を台無しにして落ち込むティンカー・ベルですが、テレンスと出会って「もの作り」の仕事への誇りを思い出し、新しい道具を考案して春の準備を期限までに間に合わせることができ、ご褒美に彼女が修理したオルゴールを落とし主に届けるという役目が与えられ、皆と一緒に
メインランドへ行くことが出来たのでした。めでたしめでたし♪

ところで、このオルゴールの落とし主はウェンディなんだねぇ

全編を通して美しい映像に心が躍ります。
三部作ということで、現在「ティンカーベルと月の石」が公開されてますが、これはちょっとスクリーンで観たくなってきました




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13歳の夏に僕は生まれた

2010年01月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2006年6月3日公開 イタリア 120分

北イタリアのブレシャで工場を経営する両親のもと何不自由なく暮らす13歳のサンドロ(マッテオ・ガドラ)は、父親のブルーノ(アレッシオ・ボーニ)と夏休みに出かけた地中海クルージングの途中、誤って夜の海に転落してしまう。助けてくれたのは不法移民がひしめく密航船だった。ルーマニア人のラドゥ(ヴラド・アレクサンドル・トーマ)とアリーナ(エスター・ハザン)の兄妹に助けられ、なんとか飢えと恐怖を凌いでイタリアの移民センターに保護され両親と再会したサンドロは、兄妹の力になりたくて、両親に彼らを養子にしてほしいと頼むのだが…。

移民の兄弟に助けられた少年が、彼らに幸運を呼ぶという単純なお話ではありません。世界各地から移民が押し寄せるイタリアの現在の状況を、裕福なイタリア人家庭の13歳の少年の目線で捉えた作品です。

生きるために移民にならざるを得ない厳しい現実は、ラトゥのセンターでの処遇と脱走した後にとった彼の行動に現れています。サンドロの父親の対処も一般市民としてはごく当たり前な考え方だと思うし、だからこそこんな現状から目を逸らさず手を差し伸べることの難しさを、見る側にも突きつけているように思えます。

アリーナに呼ばれてミラノへ出かけたサンドロが目にした胸が潰れそうな現実は、映画の冒頭で裕福で世間知らずの無邪気な少年だった彼を一気に大人へと押し上げてしまったようでした。

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俺たちステップ・ブラザース(義兄弟)

2010年01月03日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2008年 劇場未公開 アメリカ 98分

39歳のブレナン(ウィル・フェレル)と40歳のデール(ジョン・C・ライリー)は共に片親で育ち、未だに親元で暮らす「大人になれない」ダメ人間。ところが、ブレナンの母ナンシー(メアリー・スティーンバージェン)とデールの父ロバート(リチャード・ジェンキンス)が結婚したことから義理の兄弟となり、4人での同居が始まる。全くウマが合わず、何かにつけ小競り合いばかりのブレナンとデールは、二人に呆れた両親から、ひと月以内に仕事を見つけ自立するよう強制されてしまう。ブレナンの弟デレク(アダム・スコット)にも散々バカにされたことで、二人は意気投合し、一念発起して就職活動を始めるのだが…。

40にもなるのに定職にも就かずに親と同居している独身中年男が、親同士の結婚により義理の兄弟として同居することになって巻き起こる大騒動を描いたドタバタコメディです。

親の脛をかじって我儘放題の挙句に、子供でもしないような馬鹿馬鹿しい兄弟喧嘩。その内容も、知能低いんじゃないの?というような大人気ない、幼稚なことばかりで笑うより呆れる感じ。それなのに話の中身だけはえげつなく破廉恥で卑猥な大人サイズとくるのだから、日本で未公開でも不思議じゃないって話です(^^;

だけど・・・根は幼児並みに素直というか純真というか、まぁ、悪いヤツじゃないんですね~この二人。逆にヒール役は弟のデレクが一身に引き受けて、やなヤツを熱演してます。

あまり深く考えずに笑って観る映画なんですが、こういうパラサイト中年って日本でも増えてるんじゃないかしらん?と考えると笑えないかも・・・。

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