杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ホテル・ムンバイ

2019年09月30日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2019年9月27日公開 オーストラリア・アメリカ・インド合作 123分 R15+

インドの巨大都市ムンバイに、臨月の妻と幼い娘と暮らす青年アルジュン(デヴ・パテル)は、街の象徴でもある五つ星ホテルの従業員であることに誇りを感じていた。この日も、いつも通りのホテルの光景だったが、武装したテロリスト集団がホテルを占拠し、“楽園”は一瞬にして崩壊する。500人以上の宿泊客と従業員を、無慈悲な銃弾が襲う中、テロ殲滅部隊が到着するまでに数日かかるという絶望的な報せが届く。アルジュンら従業員は、「ここが私の家です」とホテルに残り、宿泊客を救う道を選ぶ。一方、赤ん坊を部屋に取り残されたアメリカ人建築家デヴィッド(アーミー・ハマー)は、ある命がけの決断をするのだが──。(公式HPより)


2008年のインド・ムンバイ同時多発テロでテロリストに占拠されたタージマハル・パレス・ホテルでの人質脱出劇の映画化です。

テロリストたちがムンバイに上陸するシーンから始まります。まだ若い子供と言える年齢の彼らはイスラム過激派組織の指導者に洗脳され、自分たちの行いこそが正義だと信じ込まされています。利用客でごった返す駅や旅行者に人気のレストラン、病院、映画館なのでの同時多発テロが行われ、その一つがタージマハル・ホテルでした。ためらいなく銃口を向けるテロリストたちの前に次々と犠牲者が倒れていきます。彼らの狙いは観光で訪れていた英米などの外国人。この五つ星ホテルはそんな富裕層の外国人が大勢宿泊していたのです。

映画では、ホテルの従業員のアルジュンの視点で、宿泊客を守り逃すために、プロとしての矜持を持って残ったホテルマンたちの姿が描かれています。同時に、アメリカ人建築家のデヴィッドと妻のザーラ(ナザニン・ボニアディ)が、部屋に残している乳母のサリーと乳児の息子を救うために決死の覚悟で向かう姿も描かれます。

乳児の鳴き声がテロリストたちの耳に一切届いていないのは少し出来すぎな感もありますが、息詰まるような切迫した状況にハラハラ感が半端ない!!

サリーと息子を守るため、敢えてテロリストに捕まったデヴィッドの運命は、ハリウッド映画ならまた違っていたかもですが、現実はやはりそういうことになるのでしょう

登場したときは横柄な金持ちのロシア人に見えたワシリー(ジェイソン・アイザック)は意外にも紳士でした。(実はロシアの軍人だった過去を持つ設定ですが、彼の矜持は犯人たちに屈しないという点に凝縮されていて、その能力を脱出の方に向けても良かったのでは?と思ってしまいますが、作中でザーラを守るという役割を与えられていたのかなぁ

オベロイ料理長(アヌパム・カー)が従業員を集めて協力を仰ぐシーンで、「帰りたい者は帰って構わない、そうしても恥ではない」との言葉に多くの従業員が残ることを選びます。それは「お客様は神様」(この和訳は別の人を連想させてちょっと・・なのだけど)というホテルマンとしての精神を皆が共有していることの証でもあります。

避難した部屋の中で、客同士の不安によるトラブルも描かれます アラブ語を話すザーラに疑いの目を向けるイギリス人の老女は、アルジュンのターバンや髭の姿も恐がります。シーク教徒のアルジュンは、彼女にターバンは自らの誇りの象徴であることを話しつつ、不安を取り除くためならターバンを外しますと言うと、彼女はそのままでと答えます。(重症を負った女性客を脱出させる際に、怪我の手当てのためにターバンは外されますが、その彼女は勝手に逃げ出し射殺されてしまうという・・)対テロ部隊が到着するには数日かかるという状況の中、実際はもっと色んなトラブルがあったと想像しますが、それでも従業員と客同士が助け合い、団結したからこそ、その多くが助かったといえるでしょう。

夫と息子が心配で部屋を出たザーラと彼女を心配して追いかけたワシリーですが、テロリストに捕まり人質として監禁されます。そこには夫もいましたが、敢えて他人のフリをするんですね。見張りは負傷したテトリストの一人ですが、隠れ部屋が見つかり応援に向かう際に人質全員を殺すように命じられます。次々銃で撃たれる中、ザーラは彼の前でイスラムの祈り(コーラン)を唱えます。異教徒に対しては女でも容赦なかった彼ですが、初めて躊躇いが生まれます。それ以前に、今回の行為に対する報奨金が家族に届いていないことを知り頭をもたげた疑いが、彼女の祈る姿でこの行為自体への疑問が生じてきたことが観客に伝わってきます。結局彼はザーラを殺すことなく部屋を出て彷徨い、テロ対策部隊の突入により射殺されてしまうのですが、もし彼が負傷していなかったとしたら、最期まで我こそが正義だと思って死んでいったのかしら?他のテロリストたちも、自らが殺される側になって初めて死への恐怖が実感となったように描かれていました。

地元警察も手をこまねいていたわけではなさそうですが、犯人たちの重装備に比べ、彼らは拳銃ひとつ。対テロ部隊は1300kmも離れたニューデリーにいる状況は何とももどかしい。アルジュンと出会い、監視カメラのある部屋に辿り着きますが、彼らもその多くが銃弾に倒れてしまいます。(この部屋をテロリストたちに知られなかったというのは奇跡というべきか )

対テロ部隊の到着で事態はクライマックスへ。避難部屋の存在を知られ危険が迫った客と従業員は決死の脱出に出ます。最後まで客を庇って銃弾に倒れる従業員、誘導する料理長。閉じ込められていたサリーと赤ん坊も無事救出されます。煙が充満する部屋の窓から身を乗り出し助けを求めるザーラも無事救出され、愛息の元へ。

大変な数日を乗り越えたアルジュンが向かったのは愛する妻子の待つ家でした。

ホテルは事件の二か月後にはレストランを再開し、二年後には完全復活を遂げたそうです。ラストはその美しい外観を映して閉じます。

テロリストたちは一人を除いて全員射殺されていますが、首謀者はいまだ捕まっていないという事実に憤りがこみ上げてきます。無垢な若者に狂信的な考えを植え付け殺戮に走らせた者こそ、神の罰をと願わずにいられません。


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バジュランギおじさんと、小さな迷子

2019年09月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年1月18日公開 インド 159分

パキスタンの小さな村に住む女の子シャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)。幼い頃から声が出せない彼女を心配したお母さんと一緒に、インドのイスラム寺院に願掛けに行くが、帰り道で一人インドに取り残されてしまう。そんなシャヒーダーが出会ったのは、ヒンドゥー教のハヌマーン神(猿神)の熱烈な信者のパワン(サルマーン・カーン)だった。
これも、ハヌマーンの思し召しと、母親とはぐれたシャヒーダーを預かることにしたパワンだったが、ある日、彼女がパキスタンのイスラム教徒と分かって驚愕する。
歴史、宗教、経済など様々な面で激しく対立するインドとパキスタン。それでもパスポートもビザもなしに、国境を越えてシャヒーダーを家に送り届けることを決意したパワン。国境では警備隊に捕まり、パキスタン国内ではスパイに間違われて警察に追われる波乱万丈の二人旅が始まった。果たしてパワンは無事にシャヒーダーを母親の元へ送り届けることができるのか?そこには、思いもよらなかった奇跡が待っていた…(公式HPより)

 
インド人青年と、声を出せないパキスタンから来た少女が、国や宗教を超えて織り成す2人旅をあたたかく描き、世界各国でヒットを記録したインド映画です。
 ロケはインド各地で行われ、大都市デリーをはじめ、パキスタン国境付近のパンジャーブ、ラジャスタンのタール砂漠カシミールの山岳地帯など、壮大な大自然に芽を奪われます。
 
パキスタンの国民的英雄のスポーツ選手の名を女読みして名付けられたシャヒーダーちゃんは、(崖から転落して木に引っかかったショックで声が出なくなったのかと思って観てましたが)生まれつき声が出せない・・らしい。 そんな娘を不憫に思った母親が、ご利益があるというインドのイスラム寺院に願掛けに連れていくんですね~~。ところがシャヒーダーちゃんは好奇心の塊のような女の子。綺麗な腕輪は欲しがるし、停まった列車の窓から穴に落ちた子ヤギを見つけると助けに行っちゃう。その間に列車が発車して置いてきぼりになっちゃうんですね~~。慌てて次にやってきた貨物列車に潜り込んだけれど、またインドに逆戻り。途方にくれるシャヒーダちゃんが見つけたのは楽しそうに踊るパワンの姿。(いきなり踊りだすのはインド映画のお約束ですね)
すっかり懐いてしまった彼女を持て余し、警察に連れていくも、預かれないと突き放され、仕方なく居候している家に連れていきます。
 
パワンはその単純で純粋な性格が災いして十年も落第を繰り返し、父親を嘆かせていましたが、遂に及第したとの報告に父親は卒倒死(おぃおぃ)その前に父親に言われた家を出ていけとの言葉を真に受けてデリーの父の知り合いを訪ねるバスの中でその知り合いの娘のラスィカー(カリーナ・カプール)と出会いますが、この時のやりとりもコメディチック。どうやらパワンは自閉症かサヴァン症候群の一種ではないかと思わせるエピソードがこの後も続々登場します。とっても単純・純情ながら、実は腕っぷしも強く、わけへだてなく他人に接し、嘘が大嫌いで悪いことは絶対できない男です。
 
パワンはこの口のきけない少女をムンニと呼んで面倒を見ますが、天真爛漫なムンニは、ご飯中に隣家のイスラム教徒の家から漂ってくるお肉の匂いに誘われて上がり込んでチキンを食べていたり、ハマヌーン神の門前で売り物の綺麗なアクセサリーを勝手に盗ったり(善悪の区別がまだついていないんですね)、あげくムスクに入り込んで礼拝をする姿に、彼女がムスリムの少女だと知って困惑します。だって下宿先のラスィカーの父は厳格なヒンドゥー教徒で、異教徒を認めない人でしたからね。ところが、今度はクリケットの試合でパキスタンが勝利したTV放送を見て一人拍手するムンニに、彼女がパキスタン人であることが判明するんですね。インドとパキスタンは対立関係にあり、いわば敵国の少女なわけで、激怒したラスィカーの父はムンニを即刻パキスタンに追い返すよう迫ります。
 
ラスィカーとの結婚資金をはたいて、ムンニをパキスタンに送ってくれるという男に渡したパワンですが、こいつが娼家に売り飛ばそうとしたのを知って大暴れ。父親から何をやってもダメと言われていたけれど、なんだ、パワンって強いんじゃん
自らムンニを送り届ける決意をしたパワンを応援するラスィカー彼女こそ、パワンを本当に理解している存在ですね。
 
国境近くまでやってきたパワンとムンニに怪しげな男が声をかけます。 金を出せば潜り込ませてやるともちかける男を無視するパワンですが、男はムンニを国へ帰そうとしていると知ると無償で協力してくれるんですね。 (いいやつじゃん)男たちがひそかに作った抜け穴を通ってパキスタン領に入ったのに、バカ真面目なパワンは国境警備隊に許可をもらわなければ先に行けないと、殴られても蹴られても諦めません。ムンニが目配せしても頑固にその場を動きません。(インドでムンニが何かしでかすと「あちゃ~!」と額に手をやる仕草をするパワンでしたが、この時はムンニが小さなその手を額にやって「あちゃ~!」の仕草をします。これが可愛いのなんのって事態は深刻なのに思わず微笑んでしまいます。)呆れたのか、その真っ直ぐな心根にほだされたのか、隊長は渋々許可を与えます。いや、あり得ないから~~
インドではムンニが困ったちゃんでしたが、パキスタンではパワンの頑固さが足手まといになり騒動を巻き起こします。菜食主義者のパワンが出された料理の肉を食べないとか、警察に捕まった時、ムンニを庇って警官を投げ飛ばし逃げ出したことで警察からインドのスパイと思われ指名手配されることになったり
この場に遭遇した記者のチャンド・ナワーブ(ワーズッディーン・シッディーキー)は特ダネとばかりに逃げ出したパワンたちを追いかけます。しかしパワンがただムンニを送り届けるために危険を冒してやってきたことを知ると、その思いにうたれ協力するんですね。
 
パワンたちを助けてくれたのはナワーブだけではありません。寝床を提供してくれたり、警察から匿ってくれたり、ムスクでは宗教の違いなど関係ないと手を差し伸べてくれるパキスタンの名もなき人々たちのお陰で、ムンニは無事お母さんの元に帰ることができました。
対して警察は一方的にスパイ扱いしてパワンを捕まえ拷問を加えて何としてもスパイと認めさせようとします。この拷問シーンはかなり壮絶です
 
ナワーブは真実を報道したいと望みますがマスコミは取り上げてくれず、ネットに流すことでようやく世間の注目が集まります。そうなるとマスコミも俄然協力的になるのがなんだかな~~ 警察の上層部はメンツがあるのでなかなかパワン解放の許可が下りませんが、彼の真っ直ぐな人間性に打たれた現場の署長がパワンを解放し、国境警備隊も見て見ぬふりをします。
このラストシーンの舞台はカシミールのソナマルグというところで、約7000人のエキストラが集められたそう。口のきけないムンニ=シャヒーダーがこの時初めて「バジュランギおじさん」と呼びかけます。これまで、眼と表情だけで喜怒哀楽を表現してきた彼女の心からの叫びが声になったのです。奇跡は起こったのです
 
国や宗教を超えて、人はわかりあえると訴えるインド映画にしては骨太で、でもやっぱり歌や踊りはあって、そこそこ楽しさもあり、コミカルなシーンもあり、そしてもちろん感動を与えてくれる作品でした

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ふたりの女王 メアリーとエリザベス

2019年09月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年3月15日公開 イギリス 124分

スコットランドでイングランドの王位継承権を持ちながら、カトリックとして生まれたメアリー・スチュアート(シアーシャ・ローナン)は、父ジェームズⅤ世が生後6日で亡くなり、0歳にしてスコットランド女王となる。幼少時に渡仏し、フランス王宮で育ち、15歳でフランス王太子と結婚、16歳でフランス王妃に、18歳で未亡人となり、母国スコットランドで王位に戻る。メアリーの不在の間、スコットランドではプロテスタント教徒たちが勢力を拡大していた。摂政として国を統治していた異母兄マリ伯、プロテスタント長老派の指導者ジョン・ノックス、国務大臣メイトランドらはカトリックの女王を快く思わず、何度も陰謀や内乱を画策した。イングランドでは、エリザベスⅠ世(マーゴット・ロビー)が25歳で即位、宰相ウィリアム・セシルやエリザベスが心を寄せるレスター伯ロバート・ダドリーら枢密院と侍女ベスたちが彼女を支えていた。王位継承者がいなかったため、エリザベスは日々、早く世継ぎを産むようプレッシャーをかけられていた。そんな折、メアリー帰国の知らせに、枢密院内は緊迫した空気が走る。メアリーは同じスチュアートの血を引くダーンリー卿ヘンリー・スチュアートと結婚し、息子ジェームズを出産する。何よりも正当なイングランドとスコットランドの王位継承権を持つ子供の誕生はスコットランド宮廷を揺るがせた。メアリーの結婚、出産の知らせはイングランド宮廷とエリザベスの心をざわつかせた。しかし、結婚によって王室の混乱が深まるのを目の当たりにし続けてきたエリザベスは、愛する人が目の前にいたとしても、その争いを避けたかった。心を犠牲にしてでも、彼女には守らねばならないものがあった。「私は男になったの」。エリザベスの言葉にウィリアム・セシルは「この世は残酷な場所です」と返すのみだった。メアリー・スチュアートは生まれた時からエリザベスⅠ世の王位継承権のライバルだった。ふたりの女王はお互いに意識し合い、同時に魅せられていた。女性として世を治めるとはどういうことなのかは、このふたりにしか理解できなかった。誰よりも理解し合えたはずのふたりの女王。ある時、お互いを恐れ続けたふたりの運命が交差する――。(公式HPより)


16世紀の英国を生きた2人の女王を描いたた歴史ドラマで、男性社会の中で孤軍奮闘する二人の女性の生きざまを対比させたドラマになっています。

若く美しいメアリーは自分が望んだ男性と結婚し、二つの国の王位継承権を持つ息子を出産。一方エリザベスは世継ぎのプレッシャーをかけられながらも、自ら国を治めるべく「男になる」決意をします。メアリーは彼女の王位を快く思わぬ者たちが繰り出す陰謀に追い詰められていき、エリザベスは伝染病の後遺症で醜くなった容貌を化粧で隠しながら王室で確固たる地位を築いていくんですね。

王位継承権を巡ってライバルでもあるメアリーとエリザベスですが、自分にないもの、持てないもの(揺るがぬ権力や女としての幸せ)を持つ相手に複雑な感情を抱きながら、恐れ合ってもいます。終盤、スコットランドを追われたメアリーはエリザベスを頼ります。映画の中で二人の会談はクライマックスの見せ場です。密会の場に幾重にもかかる布の織り成す情景は、幻想的でさえあります。厚化粧に華やかな装いで対面したエリザベスは、この従妹に嫉妬していたことを打ち明けます。共に女として手を組むことができたなら良かったと思う二人でしたが、エリザベスは鬘を外して短く刈り込んだ頭をメアリーに見せ、政治的な決断を下すのです。メアリーは幽閉され、後にエリザベス暗殺未遂の罪で死刑となります。

女王となるまでにも数々の困難を乗り越え、女の幸せより女王としての生き方を選んだエリザベスの覚悟に比べ、生まれた時から女王としての地位が与えられ、周囲の人間を素直に信じ、恋や結婚に夢を抱いていたメアリーは、やはり甘さが目立つ気がします。どちらが幸せだったかは、本人たちにしかわからないでしょうし、だからこそ二人には相通じる感情が存在していたのだと思いました。

二人の女王の性格や生き方を表現する豪華絢爛な衣装の数々や、荘厳な王室の内装にも注目です。エリマキトカゲのような独特のカラーのエリザベスはもちろん、特に処刑されるメアリーの真っ赤なドレスが印象に残りました。


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僕のワンダフル・ライフ

2019年09月28日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年9月29日公開 アメリカ 100分

2019年9月27日放送「金曜ロードSHOW!」

ゴールデン・レトリバーの子犬ベイリーは、自分の命を救ってくれた少年イーサン(8歳ブライス・ガイザー、10代K・J・アパ)と固い絆で結ばれていく。やがて寿命を終えたベイリーは、愛するイーサンにまた会いたい一心で生まれ変わりを繰り返すようになるが、なかなかイーサンに遭遇できない。3度目でようやくイーサン(デニス・クエイド)に出会えたベイリーは、自身に与えられたある使命に気づく。(公式HPより)

 

ラッセ・ハルストレム監督がW・ブルース・キャメロンの小説を実写映画化し、飼い主の少年と再び巡り会うため生まれ変わりを繰り返す犬の奮闘を描いています。

犬より猫派ですのでレンタル予定もなかった本作。たまたまつけたチャンネルで放送されていて何気にリアル視聴(冒頭数分見逃したけど)したのですが、愛犬と飼い主のハートフルでほんわかしたストーリーだと思い込んでいたので、前半は正直「え?こんな話だったの」と少し引いてしまいました。

だって、イーサンの父ジム(ルーク・カービー)はアル中だし、イーサンに嫉妬した同級生のトッド(ローガン・ミラー)に放火されて怪我をして輝かしい筈の未来を奪われ、初恋相手のハンナ(ブリット・ロバートソン)と別れるしで散々じゃないですか

おまけに犬ですから数年で寿命を終えることになり、生まれ変わる度に名前も犬種も飼い主も変わっていくんですもの

飼い主たちに共通していたのは孤独でした。最初に生まれ変わったエリーの飼い主は警察官のカルロス(ジョン・オーティス)で、愛する人を亡くして独り暮らし。次にティノとして生まれ変わった時の飼い主はマヤ(カービー・ハウエル=バプティスト)ですが、彼女も自分の殻に閉じこもる大学生です。でもベイリー(エリー、ティノ)が彼らの孤独を癒していくんですね。 カルロスを守って犯人に銃で撃たれた時は「え~~また悲劇ですか」と思いましたが、マヤとアル(プーチ・ホール)を結びつけるキューピッドになるエピソードはほっこりしました。

三度目に生まれ変わった先で、飼い主のパートナーに捨てられた(これも酷い話だけど)ことで、やっとイーサンと巡り合うことができます。イーサンはずっと独りで生きてきたようです。でもベイリーがハンナ(ペギー・リプトン)との再会のきっかけを作り、若き日の苦い過ちを謝って再出発できそうなラストにようやく安堵でした。

ベイリー自身は意識していなくて、ただ自分がしたいことをしてるだけなのだけど、彼の使命とは飼い主を幸せにすることですね。(至極当たり前の着地点だ~~といったら愛犬家の非難を受けそうだけど)続編も劇場鑑賞予定はないかなぁ


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響 HIBIKI

2019年09月26日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年9月14日公開 104分

スマートフォン・SNSの普及により、活字離れは急速に進み、出版不況の文学界。そこに現れた一人の天才少女、彼女の名は『響』(平手友梨奈)。15歳の彼女の小説は、圧倒的かつ絶対的な才能を感じさせるもので、文学の世界に革命を起こす力を持っていた。文芸誌「木蓮」編集者の花井ふみ(北川景子)との出会いを経て、響は一躍世の脚光を浴びることとなる。しかし、響は、普通じゃない。彼女は自分の信じる生き方を絶対曲げない。世間の常識に囚われ、建前をかざして生きる人々の誤魔化しを許すことができない。響がとる行動は、過去の栄光にすがる有名作家、スクープの欲だけで動く記者、生きることに挫折した売れない小説家など、様々な人に計り知れない影響を与え、彼らの価値観をも変え始める。一方、響の執筆した処女作は、日本を代表する文学賞、直木賞・芥川賞のダブルノミネートという歴史的快挙にまで発展していく。(公式HPより)


文芸の世界を舞台に15歳の天才女子高生小説家を主人公にした柳本光晴の漫画「響 小説家になる方法」の映画化で、「欅坂46」の平手友梨奈が主演を務めたことで話題になった・・らしい。この作品はオンデマンドで家族が視聴したのでついで観でしたが、かなりの衝撃度

編集部に届いた一編の新人賞応募作が発端となります。応募要項をまるで満たしていなかったため破棄されるはずだったその作品に目を留め、内容に衝撃を受けた花井ふみは、何としてもこの作品「お伽の庭」を世に出したいと切望しますが、住所も書かれていなかったため連絡の取りようもありません。ところが、担当する作家(吉田栄作)の家で彼の娘・祖父江凛夏(ヤカ・ウィルソン)の友人の鮎喰響と運命の出会いをしちゃうんですね~~ 

しかし、この響という少女のパワーが半端ない!気に入らない相手には即蹴りが飛びます。相手が年上でも男でも地位があっても全く意に介さず、ずけずけとした物言いには引いてしまいますが、でも彼女の言葉には真実があります。響が暴れるのは彼女なりに誰かを庇ってとかその誰かの名誉が傷つけられるのを見過ごせないからなんですね。 実はとても純粋で不器用な子なんだとわかってきます。かつての芥川賞作家(北村有起哉)や、新人賞を響と分け合った若手作家の田中(柳楽優弥)、芥川賞に執念を燃やす作家・山本(小栗旬)らは人生観が変わるほど響に刺激を受けることになります。

また、響が所属する文芸部の部長で人気作家の父を持つ凜夏も、響の圧倒的な才能を前に苦しみます。彼女が父に憧れ認められたいという思いは充分理解できるし、自分の作品が響きの作品に遠く及ばない焦りや自らの限界に絶望する気持ちも伝わってきます。それでも彼女たちの間には友情があって、それが救いでもありました。

高嶋政伸演じる編集長の神田という男は、目の前の利益を追う自分第一な俗なヤツです。(最近こういう嫌なヤツの役ばかりだなぁ)同じく響きを追う週刊誌の記者(野間口徹)のえげつなさにも閉口しますが、それを上回る響の行動はぶっ飛んでるというか恐いほどでした。

芥川賞・直木賞同時ノミネートしW受賞した「お伽の庭」、どんな話なのか気になるところですが、作中では全くその内容は登場しないのが残念。つか読んでみたくなりますね~~

響自身は周囲の騒ぎに無関心、ただ自分が書きたいから書いただけなんですね。それでも今後の響はこれまでとは違う状況に放り込まれるわけで、この感性や天才的な閃きが摩耗していうのか、さらに開花するのか気になるところです。

響と山本の出会いもかなり衝撃的ですが、その時にとった響の行動は常軌を逸しています。 ここまでくると世間的にも迷惑極まりないぞ 本当に賠償請求されるかは別として、賞金を充てるから大丈夫というのはいかがなものかと 


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シャザム!

2019年09月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年4月19日公開 アメリカ 132分

身寄りがなく里親のもとを転々としてきた少年ビリー(アッシャー・エンジェル)はある日、謎の魔術師からスーパーパワーを与えられ、「S=ソロモンの知力」「H=ヘラクラスの強さ」「A=アトラスのスタミナ」「Z=ゼウスのパワー」「A=アキレスの勇気」「M=マーキューリーの飛行力」という6つの力をあわせもつヒーロー「シャザム(SHAZAM)」(ザカリー・リーバイ)に変身できるようになる。筋骨隆々で稲妻を発することができるが、外見は中年のシャザムに変身したビリーは、ヒーローオタクの悪友フレディ(ジャック・ディラン・グレイザー)と一緒にスーパーマン顔負けの力をあちこちで試してまわり、悪ノリ全開で遊んでいた。しかし、そんなビリーの前に、魔法の力を狙う科学者Dr.シヴァナ(マーク・ストロング)が現れ、フレディの身に危険が及んでしまう。遊んでいる場合ではないと気付いたビリーは、ヒーローらしく戦うことを決意するが……。(映画.comより)


「スーパーマン」や「バットマン」と同じDCコミックスのヒーロー「シャザム」を実写映画化。見た目は大人だが中身は子どもの異色ヒーローですが・・・全く知らなかったキャラでしたそもそもアメコミって読んだことないしなぁ 知ってるのはマーベル作品の映画だけですもん

冒頭で登場する眼鏡の少年が後のDr.シヴァナ。親兄弟に信じてもらえずバカにされて育てば、あんな歪んだ大人になってしまうという見本みたいなキャラですね。とはいえ、魔法使いからも資格なしとされたのだから、元々邪悪で弱い心の持ち主だったともいえるかな

母とはぐれて施設に入れられたビリーは、きっと母親が見つけてくれると信じ、里親に馴染めず脱走を繰り返し、グループホームにやってきます。ホームには足が不自由なフレディ、抱き付き癖のあるダーラ、大学進学を控えたメアリー、ゲーマーのユージーン、無口なペドロが一緒に暮らしていますが、ビリーはここでも殻に閉じこもっていました。フレディをいじめっ子から救ったことがきっかけで、ビリーは魔術師からスーパーパワーを与えられることになります。(それだけで?とも思いますが、魔術師がビリーの中の正義感とか情を感じ取ったということにしておきましょう決して寿命が尽きかけていたからこの際・・ということではないと

ビリーは15歳の設定。今時の15歳はもう少しオトナな気がしますが、手に入れたスーパーパワーを他愛のない遊びに使って喜んでいるガキンチョです。まぁ、案外現実にはそんな反応をするものかもしれませんが、くだらなさ過ぎて笑えます。しかし、パワーが思わぬ事故を招いたり、自分のせいでフレディが危険に曝されたことで、初めてヒーローを意識するんですね。

ホームの仲間がビリーの母親の居場所を見つけてくれて、ドキドキしながら会いに行ったビリーでしたが、母親には別の暮らしがあり、ビリーは捨てられたのだということがわかる展開はなかなか辛いものがあります。若かった母の苦労も察してあげられるほどには大人になっていたビリーに成長を感じます。

Dr.シヴァナに人質に取られた仲間を助け出し、力を合わせて戦うのはマーベルお得意の展開です。一人の力は弱くても皆が集まれば・・・という、これは洋の東西を問わずお決まりのパターンですね。 

いわゆる少年の成長物語ではありますが、だからこそ普遍の教訓を含んで定番の安定感がありました。


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アベンジャーズ エンドゲーム ネタバレあり

2019年09月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年4月26日公開 アメリカ 182分

最凶最悪の敵“サノス”によって、人類の半分が消し去られ、最強チーム“アベンジャーズ”も崩壊してしまった。
はたして失われた35億の人々と仲間を取り戻す方法はあるのか?大逆転の確率は、1,400万605分の1…。
わずかな希望を信じて再び集結したアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーたちに残されたのは、最強の絆だけ──。
“今はここにいない”仲間のために、最後にして最大の逆襲が始まる!(公式HPより)


マーベルコミックヒーローたちが同一の世界観で活躍する「アベンジャーズ」の第4作です。前作「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」で、宇宙最強の敵サノスに立ち向かうも、ヒーローたちを含めた全人類の半分を一瞬で消し去られてしまうという敗北を喫したアベンジャーズが、残されたメンバーたちで再結集し、サノスを倒して世界や仲間を救うため、史上最大の戦いに挑む姿が描かれます。

ホークアイやアントマン、キャプテン・マーベルも加わり、まさにヒーロー大集合な豪華な布陣は、よくぞここまで!という夢の共演となっていて、それだけでも見応えがあるのですが、各ヒーロー・ヒロインたちの物語を忘れかけた(私のような)、あるいは観てこなかった人にも優しい、簡単ストーリーガイド(回想ともいう)までつけてくれて、至れり尽くせりな展開が嬉しいね 日本のTVドラマで、最終回前にざっとお浚いストーリーを流したり、SPと題してこれまでの回想シーンを挟んでちょこっと新しい展開を加える手法とも似てますが、本作は大筋を邪魔しない回想シーンとのバランスが良い感じなのがニクイね 

あまりにも大勢が登場するのでちょっと人物整理

生き残っていたメンバー:トニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー Jr.)、スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)、ブルース・バナー/ハルク(マーク・ラファロ)、ソー(クリス・ヘムズワース)、ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)、クリント・バートン/ホークアイ(ジェレミー・レナー)、ジェームズ・ローズ/ウォーマシン(ドン・チードル)、スコット・ラング/アントマン(ポール・ラッド)、キャロル・ダンヴァース/キャプテン・マーベル(ブリー・ラーソン)、ネビュラ(カレン・ギラン)、オコエ(ダナイ・グリラ)、ロケット(ブラッドリー・クーパー)、ペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロ)

サノスの指パッチンで消されたメンバー:ピーター・パーカー・スパイダーマン(トム・ホランド)、スティーブン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバ―バッチ)、ピーター・クイル・スターロード(クリス・プラット)、グルート(ヴィン・ディーゼル)、マンティス(ボム・クレメンティフ)、ティチャラ・ブラックパンサー(リャドウィック・ボーズマン)、バッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)、ワスプ(エヴァンジェリン・リリー)、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)、ハンク・ピム博士(マイケル・ダグラス)

他にも何人かいますが、覚えていなかったりするキャラもチラホラいるので割愛

さて、人類の半分が消えて5年。トニーはペッパーと家族になり娘も生まれて、良きお父さんになっています。一方、キャプテン・アメリカやナターシャ、ハルクの元へ量子世界から戻ってきたアントマンがやってきて、過去からインフィニティ・ストーンを集めてくる「タイム泥棒作戦」を提案します。そのためにはトニーの力が必要ですが、今の幸せを喪うかもしれないトニーは断るのね。でも、可能性がある以上、試してみずにはいられないのが科学者そしたら・・あら、できちゃった!悩むトニーの背中を押したのはもちろんペッパーです

作戦始動にあたっては、他のメンバーにも召集が。家族を失い、暗殺者“ローニン”となっていたバートンを迎えに行ったのはナターシャ。(この時、戦っていた東京のヤクザ役は真田広之です。)ソーに至っては酒びたりの中年腹のひげ面で、ビジュアルも大変よろしくないという颯爽としたソーはどこに行っちゃったの~~。

メンバーが揃ったところで、効率よくインフィニティ・ストーンを回収するため、いくつかのチームに分かれて過去へ向かいます。

キャプテン・アメリカとアイアンマン、ハルク、アントマンは2012年のNYへ。

ハルクとエンシェント・ワンの会話(時間の分岐についての警告)は興味深かったなぁ。ハルクは石を元の時間と場所に戻すことを条件に、ストーンを預かることに成功します。キャプテンは当時の自分と対決することになりますが、何とか無事に回収。ところがアイアンマンとアントマンは当時のハルクに邪魔されて失敗。当時のロキが持って行っちゃうという (ロキのキャラもけっこう好きなんですが、現代ではもう死んでしまっている設定なので、本作での登場も少ししかなくて残念

ソーとロケットは2013年のアスガルドへリアリティ・ストーン回収に向かいます。元カノ・ジェーン(ナタリー・ポートマン)の姿を見て動揺し逃げ出したソーは母フリッガに再会。混乱するソーを優しく受け止め諭す母を前にしてやっと本来のありのままの自分を受け入れることができます。酒びたりのマザコンからの復活ですそれにしても前半のソーはコメデイかと思うほどよれよれのおっさん状態です。

ネビュラとウォーマシンは2014年の惑星モラグへ行き、スター・ロードを待ち伏せてパワー・ストーンを奪います。ところが当時のネビュラがリンクしてしまい、サノスに捕まってアベンジャーズの計画を知られてしまうのね。そして当時のネビュラが現代へ。

ホークアイとブラック・ウィドウは2014年の惑星ヴォーミアへ。サノスがガモーラの命と引き換えに手に入れたソウル・ストーンがある星です。手に入れるためにはどちらか一方が死ななければならず、その運命を受け入れれば二度と生き返ることはできない・・・互いに相手を生かそうとする二人でしたが、結局ナターシャが犠牲になります。 (指パッチンんで復活できるのはサノスが消した人たちだけで、それ以前に死んでいる者、犠牲になった者は生き返らないのです。)

ここまでで5つが集まってますね

スペース・ストーンの奪取に失敗したNY組。キャプテンとトニーは1970年の陸軍キャンプにスペース・ストーンとピム粒子があると踏んで時間移動します。 トニーは、自分が生まれる直前の父ハワードと鉢合わせしますが、若き父が親になることに不安を感じていると知って長年のわだかまりが解けます。キャプテンも、恋人ペギー・カーターの姿を見て熱い思いがこみ上げるのでした。

というわけで、6つのストーンが集まり、装着されたガントレットを誰がはめて指パッチンする?強力なパワーが要るんだけど・・・って争ってる場合じゃないんだよ、ネビュラいないじゃん気付けよ!な展開なんですが 結局ハルクがはめて元に戻した地球に、ネビュラが呼び寄せた2014年のサノスがやってきてアベンジャーズの基地は完全崩壊しちゃいます

ガントレットを守るべく必死に戦うメンバーたちですが、絶体絶命の危機・・・その時突然ワームホールが開いてドクター・ストレンジやスパイダーマン、スター・ロード、ブラックパンサーたちが現れ、戦いに加わります。まさにヒーロー大集合の瞬間です。ワカンダやアスガルドの軍隊、魔術師たちも加わるに至り、形勢逆転。

サノスに奪われたガントレットですが、アイアンマンがストーンを奪い返し、自分のアーマーの手につけて指パッチン!遂にサノスは塵となって消滅し世界は救われます。

でもね~~ストーンのパワーに耐えきれず、トニーは命を落としてしまうの。

思えば、アベンジャーズはアイアンマン=トニーが大きな柱となって動いていましたっけね。自己中な彼ですが、心の奥には誰よりも熱い正義感と使命感が潜んでいたんですね。 父親となったことや、亡き父の自分への思いを知ったことで、彼の中で何かが変わったということもあるのかな。

個人的にも一番好きなキャラだったので、これ以後の活躍が見られないのはとても残念です

ドクター・ストレンジが見た未来の中に、トニーが自分を犠牲にすることで得る勝利があったということで、「1400万分の1」とはつまりそういうことだったのね だからこそ、一度はサノスに渡してしまったのだということがわかるオチでした。

トニーの葬儀の後で、キャプテンはストーンをそれぞれの場所に戻すために再び過去へ行きます。・・が、戻ってきた時、彼は年老いた姿になっていました。彼はストーンを返し終えたあと“キャプテン・アメリカ”ではない人生を送る選択をしたのでした。盾はサムに託されます。最後のシーンでは、スティーブがペギーとダンスを踊っています。トニーとスティーブがアベンジャーズから抜けてしまう展開に、シリーズが本当に終わってしまったのだなという思いを強くします。

でもね、他のメンバーはちゃんと生きてるわけで、彼らのシリーズは続いていくのね

三時間という長丁場ゆえ、劇場鑑賞は見送りましたが、大画面で観て、もう一度DVDでおさらいするのもありだったかな~とちょっと悔しい気持ちになりました


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ポリス・ストーリー REBORN

2019年09月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年11月23日公開 中国=香港 109分

国際捜査官リン(ジャッキー・チェン)は危篤に陥った幼い娘を病院に残したまま、証人警護作戦に急遽駆り出されるが、ある陰謀に巻き込まれ、瀕死の重傷を負ってしまう—そして13年後、かつての事件を元ネタにした小説「ブリーディング・スチール」の出版をきっかけに、黒ずくめの犯罪組織&謎のハッカーなど、過去に因縁のある者達が次々に姿を現わし、正体を隠して暮らしていたリンも、事件の鍵を握る最愛の娘を守る為、再び立ち上がる!(公式HPより)

 

1985年に製作された「ポリス・ストーリー 香港国際警察」から10本目の本作は、過去作品のエッセンスを踏襲した集大成という触れ込みです。世界初のオペラハウス屋上でのスタントや、本物の銃&弾丸&火薬を使った街中での大規模な銃撃戦、多数の高級車を潰した路上での派手なカー・チェイスなどのアクションシーンはまさにジャッキーの面目躍如といったところ。主題歌「英雄故事」も新たにレコーディングしているそうな。

警護の対象は遺伝学者で、組織を裏切り持ち出したある技術を奪い返すため、組織が追ってきます。その筆頭がアンドレ(カラン・マルヴェイ)という半サイボーグ的な超人。見た目は何だか「名前を言ってはいけないあの人」のような容貌博士を何とか守り切ったものの瀕死の重傷を負うリン。リンの部下のスー(エリカ・シアホウ)の活躍もなかなかの見所です。そして娘は死んで・・・・いなかったのねということがわかるまで暫しの時を要します。だっていきなり13年後に飛んでしまうんだもの。 

かつての事件そっくりの内容の小説が発表されたことで、新たな事件が。こいつも死んでなかったのか!なアンドレはSFちっくな宇宙船のような飛行物体の中で復讐に燃えています。彼は博士の人体実験で作り出された人間兵器なのですが、リンとの戦いで同様に瀕死状態となった際に細菌に感染し、治療には博士の作り出した人工心臓が作り出す血液が必要というわけです。そしてリンの娘は博士の技術により死から蘇り、ナンシー(オーヤン・ナナ)と名を変えて新しい人生を送っていたという・・・。

アンドレが組織のボスみたいな展開は??ですが、彼の指示のもと、殺し屋(テス・ハウブリック)が小説の著者を襲います。そこに同じくデータを奪おうとしていたリスン(ショウ・ルオ)が居合わせ、リンと関わっていく展開です。冒頭のシーンはいきなりのアクション炸裂でしたが、リスンやナンシーとのやりとりはいつものコメディ要素が加わってきます。でも、バディ感は少なく、リスンの正体も最後の方まで明かされませんでしたが。 正体がわかった時点で「これは次回作への伏線だな」っていう

アンドレに攫われたナンシーを救出するためにリンとリスンは力を合わせます。スーも加わり、飛行物体の中でのアクションもなかなかではありますが、やはりその前のオペラハウスの屋根の上でのバトルには及びませんねえ 

切断されたリンの腕が高速で再生されるシーンはまさにSFでございます さらに心臓わしづかみですから、これはもう超人の域。脳を撃たれターミネーターのように溶鉱炉?に突き落とされた筈のアンドレが生きていたのは更に驚き・・というか、もう勝手にせいや!なんですが

今回はストーリー云々より、ジャッキーのアクションを堪能するという意味で、意義ある作品かと


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サムライマラソン

2019年09月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年2月22日公開 104分

ペリーの来航で開国ムードが広まるなか、逆に危機感を抱く安中藩主・板倉勝明(長谷川博己)は、藩士たちの心と体を鍛錬するため、翌日に十五里の遠足を行うと宣言。優勝者すればどんな願いも叶うと知り、藩士たちは色めきたつが、幕府は遠足を謀叛の動きと見て刺客を放つ。遠足当日、刺客が関所を襲い、幕府の動きに気付いていた隠密の唐沢甚内(佐藤健)は仲間とともに藩へ戻ろうとする。(MovieWalkerより)


日本のマラソンの発祥と言われる史実「安政遠足(あんせいとおあし)」を題材にした小説「幕末まらそん侍」の映画化です。「超高速!参勤交代」の土橋章宏や、「ラストエンペラー」のジェレミー・トーマスと「おくりびと」の中沢敏明が企画・プロデュースを手がけ、監督は「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」のバーナード・ローズで、衣装デザインはワダエミと制作陣も超豪華なのですが・・・なんだろう?このつまらなさ、違和感は 日本人向けというより外国人が観て楽しめる作品なのかもと思ったけれど、上記制作陣の顔ぶれで何だか妙に納得しちゃったぞ タイトルからコメディちっくなんだと思い込んでいた身には、予想外な作品で違和感ありまくりでしたが、外国人の視点での時代劇と思えばいいのね。

時は1855年。幕末。黒船でやってきたペリー(ダニー・ヒューストン)と大老(豊川悦治)の面談を知った安中藩主は、アメリカの目的は日本侵略だと疑い、国と藩を守るために藩士たちの心身を鍛錬しようと考え、「遠足」を行うと宣言します。(いやいや、鉄砲持ち込む相手にマラソンで対抗ってどうよ

藩主の目的を謀反と誤解して幕府に密書を送ってしまった隠密の甚内は、自分の軽々な行動のせいで藩の存亡危機を招いたと気付いて飛脚の後を追いかけるのですが、手形もないので関所で止められてしまうんですね。(ていうか、もっと状況を把握してから密書を送れよ!)

一方、藩主の娘の雪姫(小松菜奈)は江戸で絵を勉強し、いずれは異国へもとの願いを父に反対され、重臣の息子・辻村平九郎(森山未來)との縁談を命じられたことで城を抜け出します。(城の中で大事に育てられたであろう姫なのに、武芸だと誰もが知っていた。もできて足も速いなんて、ちょっとありえね~~設定なんですが、そこは藩主の教育方針なのだと無理やり自分を納得させて先へ進みます

藩主の「優勝者はどんな願いも叶えられる」の言葉に、藩士も城下も色めき立ち、誰が一着かの賭けに伴う八百長話や駆け引きが持ち上がるのはどんな世でも人の欲には変わりがないってことね。 八百長を持ち掛けられてお金と名誉のどちらをとるか悩む、藩で一番足が速い足軽の上杉広之進(染谷将太)が、妻の言葉に心を決める場面は、いかにも「日本人」らしい誠実なキャラ設定です。

江戸では、以前より安中藩主を警戒していた幕府がこの機に乗じて刺客を送り込みます。ここで、「行はマラソン、帰りは戦」の舞台が揃ったわけです。

代々隠密として幕府に仕えてきた唐沢家当主は、妻子にも正体を隠しているのですが、夫の姿に何かを察し「ご無事で」と声をかける妻の結衣(門脇麦)。武家の妻らしい奥ゆかしさと控え目ながらも強い覚悟を秘めたシーンになっています。

それぞれの思惑が絡み合い始まった遠足。馬や籠を用意してズルをするものもいます 守護番を解雇された栗田又衛門(竹中直人)は亡き親友の幼い息子と男装した雪姫とともに出場。(でもこの人の存在意義がよくわからないままでした

関所で身分がばれた雪姫は捕えらえるのですが、刺客たちがやってきて関所が破られます。銃で撃たれながらも逃げ出した雪姫は、甚内に助けられ、城に急を知らせるべく全力で走り始め・・・いやいや、撃たれて怪我してるのにそれはないない

藩内には甚内の上司の植木(青木崇高)他、複数の隠密が潜伏していて、彼らも騒ぎに乗じて襲ってくるのですが、そんなに信用されてなかったのか!安中藩 

仲間を待たせておいて城に乗り込んだハヤブサは藩主と一緒に遠足のゴールを待ち受けているというのも??でした。藩主とは旧知の仲らしいけど、いわば敵味方なわけで、そんな悠長な場合かよ! 残してきた仲間がやってこないことに疑問を持たないんかい

藩より幕府な隠密が、結果として飼い主を裏切ることになったら、どうあっても死は免れない筈なんですが、姫の命乞いであっけなく許されちゃうし、変に美談になってるし。元は甚内の軽率で誤った情報のせいじゃないかい!! え?違うの?元々狙っていたのできっかけに過ぎないってか

とまあ、突っ込みどころも満載。だけど首が飛ぶシーンは、グロさの中に血しぶきが田んぼの稲穂に飛び散る鮮やかな赤が鮮やかで美しいとさえ感じるような、画的に妙に芸術的だったりします。劇場で観たらきっと金返せ~と思ったでしょうけど、レンタルだし、、まいっか~~


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記憶にございません!

2019年09月13日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2019年9月13日公開 127分

病院のベッドで目が覚めた男(中井貴一)。自分が誰だか、ここがどこだか分からない。一切の記憶がない。こっそり病院を抜け出し、ふと見たテレビのニュースに自分が映っていた。演説中に投石を受け、病院に運ばれている首相。そう、なんと、自分はこの国の最高権力者だったのだ。そして石を投げつけられるほどに……すさまじく国民に嫌われている!!!部下らしき男が迎えにきて、官邸に連れて行かれる。「あなたは、第百二十七代内閣総理大臣。国民からは史上最悪のダメ総理と呼ばれています。総理の記憶喪失はトップシークレット、我々だけの秘密です」真実を知るのは、秘書官3名のみ。進めようとしていた政策はもちろん、大臣の顔と名前、国会議事堂の本会議場の場所、自分の息子の名前すら分からない総理。記憶にない件でタブロイド紙のフリーライター(佐藤浩市)にゆすられ、記憶にない愛人(吉田羊)にホテルで迫られる。どうやら妻(石田ゆり子)も不倫をしているようだし、息子は非行に走っている気配。そしてよりによってこんな時に、米国大統領が来訪!他国首脳、政界のライバル(草刈正雄)、官邸スタッフ(ディーン・フジオカ)、マスコミ、家族、国民を巻き込んで、記憶を失った男が、捨て身で自らの夢と理想を取り戻す!果たしてその先に待っていたものとは……!?(公式HPより)


三谷幸喜監督の8作目の映画作品は、構想13年、「もしも自分が、ある日突然総理大臣になったら……?」という空想から生まれたオリジナルストーリーの政界コメディです。事務秘書官役に小池栄子、官邸料理人役に斉藤由貴、米国大統領役に木村佳乃、野党第二党党首役に吉田羊、さらに総理の恩師役の山口崇、職務熱心な警官役の田中圭、建設会社社長役の梶原善、大工役の寺島進、SP役の藤本隆宏、秘書官補役の迫田孝也、米国大統領通訳役の宮澤エマ、総理大臣の息子役の濱田龍臣、衆議院議員役のROLLY、官房長官秘書官役のジャルジャルの後藤淳平、キャスター役の有働由美子など、相変わらず豪華な俳優陣です。

一切の記憶をなくしてしまった総理が、金と権力に目がくらんだ悪徳政治家から善良な普通のおじさんに変貌したことで、あらゆるしがらみから解放されて、真摯に政治と向き合い、本気でこの国を変えたいと思い始めるという展開は、池井戸潤原作のTVドラマ「民王」と似ていなくもないけれど、そこは三谷マジックで、笑いありちょっぴり感動ありのエンターテイメント作品に仕上がっています。

どんな政治家も、おそらく最初の志は「国を良くしたい」ひいては民の幸せを念頭に置いたものだったかと思います(思いたい!!)それがいつしか周囲のしがらみにがんじがらめになって志を忘れ自己保身と我欲に走るようになっていく・・・人間のサガとはいえ哀しい現実です。せめて映画(虚構)の世界の中だけでも、状況を変えたいという人物が現れて未来に希望を持つことができたら、ひとときの希望を抱くことができてHAPPYな気持ちになれるかも

有働さんのケバいメイクのインパクトが半端ない!前情報でそれが彼女だとわかってみていても「誰??」と目を疑うほどの衝撃でした

田中圭の職務熱心だけど空回ってる警官役や、あり得ないほど不細工な女装の佐藤浩市を始め、絶対楽しんでるだろ!な面々の演技も見所の一つです。

黒田啓介(総理)がいつから記憶を取り戻したのかはよくわからなかったけれど、きっかけさえあれば人は変われるんだな~と思える結末でした。総理だけじゃなく、フリーライターにも秘書官にも、誰にでもそのチャンスはあるんですね


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喜望峰の風に乗せて

2019年09月09日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年1月11日公開 イギリス 101分

1968年イギリス。ヨットによる単独無寄港世界一周を競うゴールデン・グローブ・レースが開催。華々しい経歴を持つセーラーたちが参加するなか、航海計器を扱う会社を経営するビジネスマンのドナルド・クロウハースト(コリン・ファース)が名乗りをあげる。レース用のヨットもないアマチュアの果敢な挑戦にスポンサーも現れ、周囲の期待に押されながら、ドナルドは妻クレア(レイチェル・ワイズ)と子供たちを残し出発。だが、彼を待っていたのは、厳しい自然と耐えがたい孤独、そして予想もしなかった自身の行動だった……。(MovieWalkerより)


実話を基にした海洋冒険ドラマということで、1968年にイギリスで開催されたヨットによる単独無寄港世界一周を競うレースに挑んだビジネスマンの苛烈な運命を描いています。コリン・ファースは好きな俳優さんなのでチョイスしましたが、正直こんな展開だとは知らず、ちょっとショック 

そもそも週末アマチュアセーラーのドナルドがいきなり世界一周レースに出るなんて、正気の沙汰じゃない。スポンサーを見つけたり、広報にジャーナリストのロドニー(デビッド・シューリス)を得るなどの積極的な手腕は認めますが、せめて準備期間と潤沢な資金があれば、満足のいく装備で出発できただろうに、資金も設備も足りずに時間切れとなっては、初めから結末が目に見えるというものです。 船の建造費も家を抵当に入れた借金で賄っている彼は、この時点でもう後戻りはできないところにきています

クレアも、夫が本当に実行するとは思っていなかったようで、それでも不安を押し殺して夫を送り出します。この時、ドナルドが本音を言えていたら、どんなに世間に非難されようと彼女は夫を止めた筈です

出航早々、トラブルが続出し、遂には航海途中でこれ以上進んだら本当にヤバいところまできてしまいます。極限状態に置かれた彼がついた嘘はしかし、棄権者が続出する中で、後戻りのできない状況を作り出します。優勝しなければ、三位以下だったら(日誌を提出しなくてよいので嘘がばれずにすむ)と追い詰められていくドナルドですが、事態は彼の期待を裏切り、なんとドナルドが記録上はトップになってしまったのです。ゴールすることは嘘がばれて破滅することであり、彼は逃げ場を失ってしまうんですね。そして最悪の選択をするドナルド・・・。彼の精神が徐々に壊れていく様が何とも痛々しくはあります。 海上で一人きりで何十日、何百日も漂っていたこと自体が、ものすごい精神力なんじゃないかと思ってしまうのだけど、その気力をリスタートするという決断に使って欲しかったなぁ。

アマチュアの彼が予想外の記録を出したことに大騒ぎする世間でしたが、彼の嘘が明らかになると手のひらを返したように非難が巻き起こります。押し寄せるマスコミにクレアが放つセリフが強烈で胸を撃ち抜かれます。(でもドナルドの嘘を信じていた頃は、クレアも宣伝に一役買っていた時期もあるんだけどね

身から出た錆とはいえ、なんとも後味の悪い結末です。行方不明のままの彼は、最期に安らぎを得たのかしら?


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ワイルド・ストーム

2019年09月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年1月4日公開 アメリカ 104分

アメリカ西海岸に史上最大規模の巨大ハリケーンが迫り、住民たちが避難する中、大災害の混乱に乗じて、ある犯罪計画が進行していた。それは武装集団が財務省の紙幣処理施設を襲撃し、6億ドルにもおよぶ現金を強奪するという前代未聞の計画だった。施設のセキュリティ担当であるケーシー(マギー・グレイス)と、最強の性能を誇る災害用特殊車両「ドミネーター」を操る気象学者のウィル(トビー・ケベル)は、猛烈な嵐が吹き荒れ、銃弾が飛び交う過酷な状況下、計画阻止のために決死の大勝負に出る。(映画,comより)

 

「ワイルド・スピード」「トリプルX」のロブ・コーエン監督による巨大ハリケーンの中で強盗を企てる悪党たちを描いたクライムアクションです。「多くの建物が倒壊し、海岸線沿いでは大洪水が発生する恐れのある猛烈なハリケーン」とされる最も強大なカテゴリー5のハリケーンと、その最中に日本円で600億円以上の強奪作戦という、災害も犯罪も桁違いのスケールで描かれた本作は娯楽として観る分には文句なしに楽しめますが、最近の猛烈な異常気象を思うと手放しで喜べないちょっと複雑な気持ちにもなります。

冒頭で幼い兄弟の前で父親がハリケーンに呑まれるシーンが登場。これが後のブリーズとウィルです。(子役たちがめちゃ可愛いの)この事件以来兄弟の間に溝ができているようです。 ハリケーン発生で、故郷で修理屋を営む兄(ライアン・クワンテン)のもとを訪れたウィルは、町から避難するよう兄を説得します。そこへ施設の電源の不具合の修理を依頼しに訪れたのがケーシーです。

ブリーズを連れて施設に戻ったケーシーですが、門が破壊され何者かが侵入した形跡に気付きます。実は彼女の同僚のコナー・パーキンス (ラルフ・アイネソン)が武装集団のリーダーだったのです。 何とか逃げ出したケーシーはウィルに助けられますが、ブリーズは捕まってしまいます。同じく財務省職員のランディ・モレノ(クリスチャン・コントレラス)も人質になっています。

彼らはディクソン保安官に助けを求めますが、何と彼や警察署の連中も皆武装集団の仲間だったという・・・これじゃ、四面楚歌です (毎日破砕される現金が運ばれてくるのを目の前で見ているうちにおかしくなってしまったという彼らの言い分は全く通らない理屈だわ)彼らが熱心に町の人々を避難させていた理由がコレだったなんてね。

ここからケーシーとウィルの反撃が開始されます。特殊車両を駆使して、荒れ狂うハリケーンの中を戦うのは迫力満点ですが、どこか現実離れしても見えます。

猛烈な風雨を利用して敵から逃れたのも束の間、高波にのまれた二人。ケーシーはコナーに捕まって保管庫を開けさせられ、トラック三台に積まれた6億ドルと共に連れ去られます。ブリーズに助けられたウィルは、トラックを追いかけ・・・ ランディはケーシーの目の前であっさり殺されちゃって、あれれ~~?な感じ。彼は恋人じゃなかったのかな

ハリケーンの目の無風状態の中を駆け抜けるトラックの中で繰り広げられるアクションもスリルがありますが、迫りくるハリケーンの淵ギリギリに疾走するシーンの方が迫力満点。(でもやはり嘘くさい

昔、兄弟の間で交わしていたアメフトのトリックプレーの掛け声で、コナーのトラックを追い詰める展開は、彼らの絆を強調して上手い演出ですね

コナーが雇っていたハッカーのカップルもトラックと一緒に空中へ消えていきますが、彼らの扱いの雑なことったら雑魚キャラだけど、バカップルなりの背景くらいあっても良かったんじゃないかしらん 同じことがコナーの仲間たちにも言えますが。コナーも含めてどうにも魅力のない悪役たちでした。

がっかりしたのはラストシーン。ふた昔前のメロドラマ並みにダサいんですけど そして目の中だったハリケーンは再び猛威を振るって襲ってくるんじゃないの?という心配は杞憂かいつの間に消えたんだ?な夕焼けシーンでした。


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引っ越し大名!

2019年09月04日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2019年8月30日公開 120分

姫路藩書庫番の片桐春之介(星野源)は、書庫にこもりっきりで人と話すのが苦手な引きこもり侍。
あるとき、藩主の松平直矩(及川光博)は、幕府に姫路(兵庫)から日田(大分)への国替え(引っ越し)を言い渡される。当時の引っ越しは全ての藩士とその家族全員で移動するという、桁外れの費用と労力がかかる“超難関プロジェクト”。しかも藩の財政は逼迫しているため、引っ越しを成功させるためには家財を減らし、人も減らし(リストラ)、さらには商人から借金までしなければならない。全ては国替えの総責任者、【引っ越し奉行】の手腕にかかっている。お国最大のピンチに、いつも本ばかり読んでいるのだから色んな知識があるだろうと、なんと春之介に白羽の矢が立った!
突然の大役に怖気づく春之介は、幼馴染で武芸の達人・鷹村源右衛門(高橋一生)や前任の引っ越し奉行の娘である於蘭(高畑充希)に助けを借りることに。こうして前代未聞の引っ越し準備が始まった!
移動人数10,000人!距離600km!予算…なし!?
果たして春之介はこの超難関プロジェクトを知恵と工夫で無事に成し遂げ、国を救うことができるのだろうか?!(公式HPより)


「超高速!参勤交代」シリーズを手がけた土橋章宏の時代小説「引っ越し大名三千里」を、星野源主演、高橋一生、高畑充希の共演、「のぼうの城」の犬童一心監督ので映画化した作品です。

国替えという言葉は知っていても、実際にどのように行われていたかを経済面から考えることはこれまでありませんでしたので、とても興味深く鑑賞しましたが、基本的にコメディですので堅苦しさはなく楽しい作品です。

藩主の直矩が柳沢吉保(向井理)の機嫌を損ねたことで恨みを買い国替えになる展開がまず笑えます。いや、当事者にとっては笑い事じゃないですが これまでの度重なる国替による借金と、かつてない遠方への引越し、おまけに減棒、国の存亡が危うくなるほどのピンチに頭を抱えます。この国難を乗り切るためには国替えを仕切る引っ越し奉行の手腕が必要ですが、前任者は激務が原因でに亡くなっていて、ノウハウも失われています。もし失敗したら切腹が待っているこの職を誰もやりたがらない空気の中、源右衛門が推挙したのは幼馴染の引きこもり侍の春之介です。 書庫に閉じこもり本ばかり読み耽っているのだから知識もあるだろうと白羽の矢が立つのですが、当人には青天の霹靂。必死に逃げようとする姿が予告CMで流れましたね~ 武士の世界で上からの命令に逆らうことは死を意味しますから、渋々、嫌々引き受けざるを得なくなった春之助ですが、当然何から手を付けたらよいのか皆目わかりません。そこへ、前任者の娘・於蘭に助言を求めるよう源右衛門が助け舟を出すのですが、彼女と親しくなりたい源右衛門の魂胆丸見えで笑えます。実は美しい於蘭に春之助もひとめ惚れしちゃうんですけどね (彼女が子(音松)持ちの出戻りと知った時は少しショックを受けたようでしたが

苦労の成果は全て上役が持っていき、貧しさの中で亡くなった父を知る於蘭は、春之助の願いをきっぱり断りますが、彼の身分の分け隔てなく真心で接する人となりを知ると協力を申し出ます。 

さて、引っ越しに当たり、まずはお金の算段をしないといけません。勘定奉行はないものはないとけんもほろろ。金貸しの和泉屋に掛け合い、土下座までして何とか工面ができました。次はもの減らしです。上役の中には抵抗する者も出ますが、彼は自分の大切な物=書物を燃やして反論を封じてしまいます。書物を愛する彼にとってまさに断腸の決断ですが、「全部頭に入れてしまえばよい」という解決法には、元々の才能を感じてしまいますね。

次は人減らし…大規模なリストラです。悩んだ末に春之助は、山里(小澤征悦)ら対象者に帰農して再び召し抱えられる日を待ってくれと頼みます。もちろん素直に頷く者はおりませんから、心を込めての説得になります。切る方も切られる方も辛い場面でした。 引っ越し人足も不足していますから、武士自らが人足に身をやつして運ぶことになります。そのためには体を鍛えねばなりません。「これは戦だ!」と鼓舞して鍛錬に励みますが、於蘭も一役買います。それに焼きもちを焼く春之助が可愛い 

ようやく引っ越しの日が来ました。(離縁され実家の父も亡くなり)藩と関わりがないため一緒に行くことができない於蘭に春之助がおずおずとプロポーズするシーンが微笑ましいです。しかしその先にも波乱が待っていました。柳沢の息がかかった公儀隠密と結託した次席家老の藤原(西村まさ彦)の裏切りにより、村人に変装した隠密たちが襲い掛かってきます。でもね~~引っ越しのために鍛錬してきた藩士たち、特に源右衛門にとっては「待ってました!」な展開です。嬉々として藩主から許された家宝の“御手杵の槍”を振り回して敵に向かっていきます。3.8mの長大な槍を一振りすると敵がバタバタと倒れていく様は圧巻で源右衛門の見せ場でもあります

こうして辿り着いた日田は姫路城に比べるとまるで陣屋の見すぼらしさでした。その後も出羽山形への国替えとなり15年が経ちます。その間に春之助と於蘭は所帯を持ち、生まれた春太郎も元服を迎えます。音松も立派に成人しています。遂に陸奥白川へ国替えの際、元の15万石に加増され、晴れて帰農させた藩士たちを迎えにいく春之助の顔は晴れやかです。迎える山里の胸にも去来するものがあったことでしょう。中には残る者もいましたが多くは胸を張って白川藩へ帰参します。姫路の地で亡くなった者とそのまま帰農した者の刀と共に、すべての藩士が揃うラストシーンに胸が熱くなりました。

カタツムリと揶揄されるほど自分の殻の中に閉じこもっていた春之助が、引っ越し奉行となったことを機に外の世界に踏み出し、書物から得た知識をヒントに自ら考え実践し、於蘭や源右衛門らの助けを借りながら心身共に成長していく様子が時にコミカルに、時に切なく描かれていました。

幼少の頃の引っ越しで父を亡くしたトラウマを抱えている反面、割と楽天家というか少々KYなところがあるの憎めない藩主や、気が強くて人情家の於蘭、筋肉バカで武闘派だけど友情に厚い源右衛門など、それぞれのキャラも立っていて面白かったです。


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