杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

黄金のアデーレ 名画の帰還

2015年11月30日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2015年11月27日公開 アメリカ=イギリス 109分

1998年、ロサンゼルス。マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)は、小さなブティックを切り盛りしながら、夫亡きあとも一人で溌剌と暮らしていた。そんなある日、ユダヤ人として波乱の人生を共にした姉のルイーゼが亡くなり、彼女が故郷のオーストリア政府にナチスに没収された絵画の返還を求めようとしていたことを知る。法が改定され、近々過去の訴えの再審理が行われるのだ。姉の遺志を継ぐと決めたマリアは、友人の息子で弁護士のランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)に相談を持ちかける。彼は一度独立したがうまくいかず、妻パム(ケイティ・ホームズ)と赤ん坊を養うために再び雇われの身となっていた。問題の絵画はベルベデーレ美術館が所蔵するクリムトの名画で、モデルになったマリアの伯母アデーレが遺言で寄贈したとされているが、マリアも姉も遺言書など見たこともなかった。マリアは、家族や全てを奪われ友人を殺された国に二度と戻る気はなかったが、実の娘のように可愛がってくれた伯母の面影を胸に過去と向き合う旅に出ることを決意。ウィーンに着き、かつての自分の家の前に佇み、偉大なアーティストや音楽家、作家たちが出入りした日々をマリアは懐かしむ。その時、ジャーナリストのフベルトゥス・チェルニン(ダニエル・ブリュール)が二人の手伝いをしたいと声を掛ける。政府は国のイメージアップとして返還を持ち出したが、重要な美術品は手放さないはずだというのだ。その後、美術館を訪れたマリアは伯母が描かれた絵画との再会を果たし、当時を思い出す。ヒトラー率いるナチスの軍隊をオーストリアの人々は歓喜のなか花を投げて迎えた。一方、ユダヤ人は次々と捕えられ監視下に置かれ、マリアの家族も国外脱出どころか近隣への外出さえ制限された。フベルトゥスの力添えで、美術館の資料室からアデーレの遺言書が見つかる。確かに寄贈すると記されていたが、夫の死後という条件が破られていた。しかも絵画の所有権は実は伯父にあり、マリアと姉に全財産を残すという伯父の遺言だけが法的な効力を持っていた。審問会の日。審問会は新たな証拠を却下して返還を拒否、文化大臣は「ご不満なら残る道は裁判です」と言い放つ。マリアは毅然と「恥を知りなさい」と一喝するが、この国で裁判を起こすなら180万ドルという法外な預託金が必要だった。9か月後。何とか法の抜け道がないかと仕事の合間に勉強を続けていたランディは、アメリカで訴訟を起こせる条件を見つけ出す。過去は忘れたと一度は拒んだマリアも、ランディが事務所を辞めてまでこの戦いに全てを懸けようとしていると知り心を決める。やがて、一人の女性と新米弁護士がオーストリア政府を訴えるという前代未聞の裁判が幕を開けた……。(Movie Walkerより)


グスタフ・クリムトが描いた名画「黄金のアデーレ」をめぐって実際に起こった裁判と名画に秘められた数奇な物語が描かれます。毅然とした品のあるマリアをヘレン・ミレンが好演しています。

もしオーストリア政府が自国の面子に拘らず罪は罪、非は非と素直に認める姿勢があったなら、あの名画は今もかの国の美術館に飾られていたかもしれないのね どんな歴史も、その真実には個人の思惑が関わっているのかもしれませんね。

マリアは本当は自分の家族や幸せを奪っていった故国に謝って欲しかったのかも。当時の故郷の人々の、ユダヤ人への手のひらを返したような冷たい態度や裏切りを、悪かった、酷い過ちだったと詫びて欲しかっただけなのだと思います。

文科大臣(女性です)の居丈高で高慢な態度と逆に、マリアに尽力するジャーナリストのフベルトゥスは、かつてナチの熱烈な支持者だった父の贖罪の気持ちがあります。過去に目を背ける人々と過去を見つめてそこから前に進もうとする人々の図は今の日本にも当てはまる気がします。

ランディがマリアの依頼を引き受けた当初の目的はずばり「お金」でした。名画に莫大な金額の価値があると知ったからです。しかし、自分のルーツもまたオーストリアにある彼は、マリアの過去を辿るうちに考えを改めます。法外な預託金を前に諦めてしまったマリアでしたが、訴訟の道を見つけて、自分の職を投げ打ってまでこの戦いに踏み出したランディの気持ちに打たれ、裁判に臨むのです。

難癖をつけるオーストリア側に小気味良く釘を刺すアメリカの判事に喝采
そしてまさに「正義は勝つ」的決着が
ところでこれってオーストリア国内では上映されたのかな?


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ケータイ捜査官7 20~26話

2015年11月30日 | ドラマ
あらすじはドラマ公式HPより

第20話 「圏外の女(後編)」
一人旅の計画が頓挫し、道中で知り合った不思議な女性・お七(安藤麻吹)と温泉旅館に泊まることになったケイタ。最初は嫌々ながら付き合っていたケイタだが、段々とお七に惹かれている自分に気がつく。そんな思いを見透かしてか、節々に現れては謎の言葉を残していくやくざ(須藤雅宏)。相変わらずの態度をとるお七に対して、ケイタはある行動に出る。

少年に訪れた夏の誘いってところでしょうか
おねーさんに包まれて眠る姿はまだ目覚めていない「坊や」そのもので、ついついお七の目線で観てしまう自分 あの「魔法の言葉」はすぐにわかったけどね~~
で、結局彼女はなんなんだ・・と


第21話 「黒い過去」
三年前のアンダーアンカー本部。滝本(津田寛治)、千草(伊藤裕子)らは、姿を眩ませたゼロワンの行方を追っていた。千草のバディであるセカンドは、兄弟機種であるゼロワンの暴走を危惧。千草もまた、自分達の手でゼロワンを捕まえようと勇んでいた。開発中のセブンを心待ちにしながらも、あまりに強い絆で結ばれたふたりを心配する滝本。そんなある日、ゼロワンによるハッキングがアンダーアンカーを襲う。通信機能が次々と遮断されていく中、ゼロワンの狂気が仲間のフォンブレイバーたちに迫る…。

ゼロワンの過去が判明。でもケイタの出番ほぼ無しね


第22話 「こころのひかり」
過去の事件から人間全てを憎み、ひとり放浪を続けるゼロワン。セブンとの闘いで負傷した彼は、盲目の少女・純子(高橋真唯)に拾われる。回路に損傷を負い、自らの力では動けなくなったゼロワンは間明(高野八誠)に回収を頼むことに。間明を待つ間、電話越しに純子と言葉を交わしたゼロワンは、純子の失明の原因が交通事故であることを知る。拾ってくれた礼に、加害者に復讐してやると持ちかけるゼロワン。しかし純子から返ってきたのは、ゼロワンにとって意外な一言だった。

今回もケイタの出番はちょっとだけ。人の心の負の部分ばかり見てきたゼロワンが盲目の少女と出会い人間に対する判断に揺らぎを覚える展開です。


第23話 「ケータイ死す」(一時間SP)
間明(高野八誠)とゼロワンによって捕らえられたケイタとセブン。ふたりを隔離した間明は、ケイタにあるゲームを持ちかける。3つのキーワードをもとに、セブンの元まで時間以内にたどり着くことができるか、というものだった。「滝本」「セブン」「ケイタ」という言葉をもとに、必死でセブンを探すケイタ。一方、間明はセブンを使ってアンダーアンカーのシステムに大規模なハッキングを仕掛け始める。やがてアンカー本社のサーバーを完全に制圧し、その魔手は各企業を経由し都内全域にまで拡大。街中のいたるところでシステムダウンによる大混乱が巻き起こり、その事態は急速なスピードで全世界へと広がっていく。前代未聞の異常事態に直面し、ケイタとアンカーの面々はある苦渋の決断を下すが…。

久々ケイタ君フル登場。しかも水に濡れるわ、汗でシャツは張り付くは、チェーンで縛られるわで散々な状況。(見てる方はワクワク
人間に対する気持ちに変化が見え始めたゼロワンと対照的に間明の行動はエスカレートしていきます。ひたすら互いを思い合うケイタとセブンの姿に負けを認めたゼロワンを赦そうとするケイタ。う~~ん、若いってことは許容する柔軟性を持っているってことなのかも。


special episode 「ケータイ語る」
ケイタ(窪田正孝)・セブンvs間明(高野八誠)・ゼロワンの激闘から数日後…。最後にゼロワンが投げかけた「真の敵はアンカーにいる」という言葉に不安を隠せないまま本部へと向かうケイタ。その途中、偶然にもエージェント達と同じエレベーターに乗り合わせる。なぜか動きの遅いエレベーターの中で、ゼロワンの一件を発端に、いつしかケイタ・桐原(松田悟志)・瞳子(三津谷葉子)、そして美作部長(伊藤裕子)の話し合いは白熱 してしまい…。一方、戦いで負傷したセブンは開発部で修理・改造を施されていた。損傷の激しいセブンを見た水戸(ミッキー・カーチス)は、支倉(長澤奈央)にある提案をする。

ここまでの話のおさらい編


第24話 「網島家最大の危機」
近ごろ家での存在感がなくなってきたことに悩んでいる健太郎(田口浩正)。ケイタはバイトで毎日帰りが遅く、可憐(五十嵐令子)や晴美(渡辺典子)はまるで自分に関心がない様子。父親の威厳がないばかりに、家庭崩壊の危機を招いているのでは…と不安はつのるばかりだった。ある日、居酒屋で同僚の山崎(玉袋筋太郎)と家庭の愚痴を重ねるうちに、健太郎はある一大決心を固める。家族の絆を再び固く結束させるために、健太郎が起こした意外な行動とは…?

アンカーとは無関係の網島家の事情。ま、結局仲良し家族ってことで


第25話 「天使のふる遊園地」
不思議な魅力で来場者の心を掴む遊園地・ハッピーランドが老若男女で大流行。友人の評判でその存在を知った晶(飛鳥凛)は、インターネットでの情報収集で、ハッピーランドに関する不可解な書き込みを見つける。ケイタ(窪田正孝)を誘ってハッピーランドを調査しに行くことにした晶だったが、園内で二人は偶然にも優璃(岡本奈月)と出会ってしまう。ふてくされる優璃を誘い、結局3人で遊園地を回ることに。その後、いくつかのアトラクションを体験する内に、晶はある不気味な現象に気がつく。

アンカーのお仕事のことは内緒じゃなかったっけ?晶に正体をばらす時のケイタのちょっと誇らしげな表情が可愛いです


第26話 「ニャンたる忍者!」
「過去の失敗の記憶を消して、自分に都合のいい記憶に書き換えられる」とうたう妙なサイトの噂が広がっていた。不審に思いながらも、早速捜査に乗り出すアンダーアンカーのエージェントたち。一方ケイタは、同級生に誘われて怪しげな老人(長門裕之)の家に招かれていた。最初は警戒していたケイタだが、老人の勧める軍人将棋にすっかりハマってしまう。その後、連日老人の家に通いつめるまでになったケイタだが…。その頃、アンダーアンカー本部では事件の謎を握る奇妙なノートを入手。噂が本当かどうか、瞳子(三津谷葉子)は自らの身体で実験をすると言い出す。

今度はニンジャですか
なんだかんだと、面倒がりながらも、意外に親身なケイタの性格、いいなぁ~

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ケータイ捜査官7 12~19話

2015年11月25日 | ドラマ
第12話 「地球最後の日(T_T)」(以下あらすじはドラマHPより)
無事にエージェントの研修期間を終えたケイタ(窪田正孝)。大きな事件もなく退屈な毎日を送っていたある日、アンダーアンカー本部から緊急の呼び出しがかかる。本部に直行すると、そこにはいつもと全く違う服装をしたエージェントたちの姿が…。実はアンダーアンカーのもうひとつの顔は宇宙人と戦う組織であり、敵のUFOが大量に攻めてきたのだという。唖然とするケイタだが、有無も言わさずUFO迎撃システムに参加させられ…。

どうにも設定がぶっ飛んでるし、衣装も派手派手で、夢の中の話かと思ってたらエージェント昇格祝いのドッキリって・・・おいおい、遊び過ぎ
でもパニクるケイタは可愛いから、ま、いっか


第13話 「激震!グラインダー」
アンダーアンカー開発部に所属する博文(森田直幸)。彼は天才的な頭脳を買われて水戸(ミッキー・カーチス)が引き抜いてきた人物だが、コミュニケーションが下手で部内では浮いた存在になっていた。同じ高校生同士ということで、気になったケイタは声をかけてみるが、いまいち話がかみ合わない。博文は新たなブーストフォン“グラインダー”を開発し、その試作実験にセブンを貸してほしいと言うのだが…。

セブンが実験台にされて怒るケイタを、セブンはただのツールだと思っている博文は理解できなかったのですが、事件に巻き込まれた二人をセブンが自らを犠牲にして助けようとする姿に考えを改めます。チンピラやくざ(ボスがゴルゴ松本でした)のあまりの陳腐さに脱力です。


第14話 「セブンの子守唄」
とある事件を解決したケイタとセブン。しかしその後、ケイタはうっかり現場にセブンを置きっぱなしにして本部に帰ってしまう。取り残されたセブンを拾ったのは、幼い少女・ケイコ(柴田杏花)だった。変形した姿を見られてしまったセブンは、仕方なくケイコに正体を明かす。ケイコが一人で父親の会社に向かう途中だと知ったセブンは、しぶしぶその道案内をすることに。一方、セブンをなくしたことに気づいたケイタは必死で探し回るが…。

前作で絆を見せつけたばかりなのに置き忘れって・・おぃ!!
世間にばれたらヤバイ筈なのに少女ならいいんかぃ
忘れたことに気付いたケイタの挙動不審ぶりが笑えます
土下座の姿に、今再放送されている「リミット」のイガピーが重なっちゃったぞ


第15話 「なかよくなる魔法」
企業から個人まで、様々なサイトがハッキングされる同一の事件が多発。早速ケイタが調査を任され、そのサポートとして久しぶりの現場復帰となる桐原(松田悟志)がつくことになる。サードの探知で犯行場所を特定し、現場に向かった2人は、そこで怪しげな小学生の集団を目撃。その内のひとりに接触したケイタは、ハッキング事件が小学生たちの仕業だったことを知る。

今度は小学生かよ少年に「魔法」(ハッキングウィルスですが)を与えたのがゼロワンと知ったケイタは、その目的がなんだろうと考えます。セブンは人間の可能性を探っているのではと答えるのですが・・・。転校を繰り返し友達ができない少年に自分を重ねちゃったケイタ君です。君も学校で友人作りなさいよって突込みたくなるなぁ。


第16話 「セブン対ゼロワン!」
インターネット上では謎の花火予告事件が話題を集めており、みんな場所を特定しようと必死。そんな中、セブンに犯人から「トメテミロ」というメールが届く。そのメールには、花火より数倍の威力をもつ爆弾の写真も添付されていた。なんとか場所を特定し駆けつけるセブンとケイタだったが、ゼロワンによってビルに閉じ込められてしまう。さらに、本物の爆弾とは知らず、ネット上で場所を特定した野次馬達も集まってきた。
爆発のタイムリミットまであとわずか…どうするセブン!?

高校生に爆弾処理までさせるか??という突込みは止めておこう
ゼロワンってばやたらとケイタ&セブンに絡んでくるのね~
犯人役がアンガールズの田中だったという


第17話 「遠い夏の空と」
日本史の課題のために、クラスメイト・陽子(秋山奈々)の大叔母・初枝(佐々木すみ江)を頼って郊外の田舎を訪れたケイタと優璃(岡本奈月)。表向きは初枝の戦争体験を聞いてレポートにまとめるのが目的だが、ケイタには別の理由があった。アンカー開発部が新たに“遠隔通信遮断システム”を開発し、その実験を支倉(長澤奈央)から頼まれていたのだ。2人の目を盗んでさっそく実験を開始すると、セブンが奇妙な電波を受信する。それは、何十年も前に戦死したはずの初枝の夫からの電話だった。

ちょっと一休み・サブストーリー的なお話になってますね。夏休みだったのか??
クラスメイトとお泊り旅行に行くくらい打ち解けたのか?ケイタ!!優璃が強引過ぎるのか?
過去を変えちゃったらと~~っても大変な気がするのですが・・・これもアリなのか???(あから突っ込むなつうの


第18話 「URL」
「あるスパムメールに載っているアドレスを踏むと行方不明になる」という不気味な噂が、インターネット上で話題になる。実際に被害が多発している事態を受け、アンダーアンカーも捜査に乗り出すことに。そして調査を進める内に、行方不明者たちの全員が同じメールを受信していたことが判明。「捜さないで」と題名をつけられたそのスパムメールは、前日にケイタ(窪田正孝)が受信したメールと全く同じものだった…。
一方、友人の詩緒里(中越典子)にそのメールが届いていたことを思い出した瞳子(三津谷葉子)は、急いで詩緒里の家に向かうが…。

今度は夏の怪談仕様できたか
結局オチというか真相わからず仕舞いなんですが・・・


第19話 「圏外の女(前編)」
セブンを家に置いたまま、スクーターに乗ってふらりと一人旅に出たケイタ。その道中、お七(安藤麻吹)と名乗る不思議な女性に出会う。素性どころか本名すら明かさず、掴みどころのない奇妙な振る舞いをする彼女に振り回されるケイタ。さらに不運にもスクーターが故障してしまい、修理の間、お七と一緒に温泉旅館に一泊することに・・・。そんな彼に、強面のやくざ(須藤雅宏)が謎の助言を送る。

ツタヤのレンタルDVDは19話で切れてる~~どうせなら前後編まとめておいてくれ~~
お七だなんて今回も夏仕様なのかな?
でも、お七に振り回されるケイタがとっても可愛いし、入浴や浴衣シーンもありファン的にはツボな回です。
スクーターを修理してくれる人は長江健次(欽ドン!の普通の子役してた人)が演じていました。懐かしいな~

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臨床犯罪学者・火村英生の推理 I 46番目の密室

2015年11月22日 | 
有栖川有栖(著)イラスト:麻々原絵里依 角川書店(発行)

英都大学社会学部の若き助教授、火村英生。その明晰な頭脳で難事件を解決し、「臨床犯罪学者」と呼ばれている。そんな火村が心を許す唯一の存在は、大学時代からの親友である推理作家、有栖川有栖。冬のある日、有栖川が大御所推理作家・真壁聖一の別荘に招かれたことから、2人は軽井沢を訪れることに。しかしなんと真壁自身が「密室」で殺される事件が起き……!?


ドラマ化決定!2016年1月日テレで放送予定 で有栖川有栖 役は窪田君と聞けば、そりゃ予習するでしょイラストのアリスを見ただけで、実写化されて演じる窪田君が目に浮かぶような痛いファンです

それはともかく、この作品は20年以上も前の1992年に発表されたものなんですね当帯もPCも登場しないのも当たり前です。

人里離れた別荘での殺人事件。いかにも怪しい火傷の跡のある男の素性と作家との過去に目を向けると思わぬしっぺ返しが待っていました
真犯人がわかってみれば、そんな偶然ありかよ!!なんです。おまけに密室の謎自体が古典的トリックによるものと「たまたま」密室が成立しただけというかなり行き当たりばったりな展開。動機もまぁ当時はかなりセンセーショナルな事ではあったでしょうけれど、今の時代では殺人を犯すまでもない秘密でした。

謎解きとしてはまだ粗が目立つ気がしますが、火村&アリスコンビのデビュー作として楽しめます。
どこかおっとりしてるというか、ズレてる感じのアリスですが、火村の良き理解者であり、彼もアリスのことを精神的に頼っている風でもあります。

このコンビの次回作も借りてきたので、続けて読んでいこうかな。何しろ数十作も出ているようですから、年内には読み終わらないだろうなぁ~
(グインといい、七王国シリーズといい、どうして私は長期連載ものに惹かれるんだろう

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6才のボクが、大人になるまで。

2015年11月22日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年6月14日公開 アメリカ 165分

テキサス州に住む6歳の少年メイソン(エラー・コルトレーン)は、キャリアアップのために大学で学ぶという母(パトリシア・アークエット)に従い、姉サマンサ(ローレライ・リンクレイター)と共にヒューストンに転居、そこで多感な思春期を過ごす。アラスカから戻って来た父(イーサン・ホーク)との再会、母の再婚、義父の暴力、そして初恋……。周囲の環境の変化に時には耐え、時には柔軟に対応しながら、メイソンは静かに子供時代を卒業していくのだった。やがて母は大学で教鞭をとるようになり、オースティン近郊に移った家族には母の新しい恋人が加わっていた。ミュージシャンの夢をあきらめた父は保険会社に就職し、再婚してもうひとり子供を持った。12年の時が様々な変化を生み出す中、ビールの味もキスの味も、そして失恋の苦い味も覚えたメイソンはアート写真家という夢に向かって母親から巣立っていく……。(Movie Walkerより)


ひとりの少年の6歳から18歳までの成長と家族の軌跡を、実際に12年をかけて撮影したドラマと言うことで話題でになった作品。メイソン役のエラー・コルトレーンを筆頭に、母親役のパトリシア・アークエット、父親役のイーサン・ホーク、姉役のローレライ・リンクレーターの4人が、12年間同じ役を演じ続けています。第87回アカデミー賞ではアークエットが助演女優賞を受賞しています。

初めは何も同じ俳優を使わなくても成長に応じて変えれば製作期間もぐっと短縮できるのにと思いましたが、これは同じ俳優が演じ続けたことに大きな意味があるのですね。観客は、メイソン一家の成長記録を早回しで体験できるというわけです。

メイソンの母は大学時代に妊娠して結婚。仕事と子育てに追われる日々に不満が溜まり、ミュージシャンの夢を追いかけている夫との間にも溝ができて夫婦は口論が絶えず、遂に離婚に至ります。彼女はキャリアアップを望んで大学で学び直す道を選び、子供たちと家を出て引越します。両親の不和に心を痛め、突然の引越しに戸惑う幼いメイソンとサマンサの姿は大人に振り回される子供の不安定さを印象付けています。

母は大学で新しい夫と出会い再婚。義父にはメイソンやサマンサと同じ年頃の連れ子がいますが、子供同士は仲良く暮らします。でもこの義父ってば規則に五月蠅いアル中のDV男だったのたまりかねた母は実子である二人を連れ再び離婚。連れ子の二人も助け出してよと言うメイソンに、母は法律上連れ子を引き取ることは出来ないけれど、しかるべき方面に通報したことを話します。出来ることと出来ないことを子供たちにはっきり説明するのもアメリカらしいかな。

興味深いのは、両親の離婚や再婚があっても、父との面会権はしっかり確保されていたこと。それは父の子供たちへの愛情が変わっていないことの証と言えるのかな。新しい親ができ、環境が変わっても実の親子の関係は揺るがないというのは、観ていてとても安心できることでした。

やがて、母は大学で教鞭を取るようになり、三度目の結婚をします。思春期を迎えたメイソンは家族の束縛を煩わしいと感じ摩擦も起きます。実父の再婚や異母兄弟の誕生もあり、小さな世界の中での大きな変化が映し出されて行きます。

初恋から失恋までの一連のセレモニーを経ながら、メイソンは将来の夢(写真家)を見出し高校を卒業し大学の寮に入るため家を出る日がやってきます。日本では大学生はまだ子供扱いで、就職してやっと一人前の感があるのですが、アメリカでは高校を卒業し大学で親元を離れることが大人への一歩と認識されているのね。一足先に大学生となり家を離れていたサマンサとメイソンに、子育ては終了、これからは自分のための人生の充実を図るのだと新たな引越しを宣言した母ですが、メイソンが家を出る日、感情が高ぶって泣いてしまいます。娘より息子に感情移入してしまう母の気持ち、巣立っていく最後の雛への寂寥感が滲み出たシーンです。

メイソンの方はそんな母に面喰ってしまいます。学生生活にバラ色の期待を抱き胸を弾ませている彼が母の想いを理解するのはまだ早過ぎるのね。入寮の日、同室者とそのGF、彼女の同室者と出かけるメイソンはもうすっかり青年の顔になっています。新しい恋の予感を漂わせ映画は幕を閉じるのでした。

親の離婚・再婚は子供にとって大きな変化ではありますが、他に特別な事件が起こるわけでもなく、淡々と進むメイソンの成長記録娯楽作とは言えないけれど味わいのある佳作です。

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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

2015年11月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年3月13日公開 イギリス=アメリカ 115分

1939年、英国がヒトラー率いるドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が始まる。ケンブリッジ大学特別研究員で、27歳の天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は、英国政府ために独軍の誇る難攻不落の暗号エニグマ解読に挑むことになる。英国海軍のデニストン中佐(チャールズ・ダンス)は6人の精鋭を解読チームとしてブレッチリー・パークに集めるが、チューリングは一人で仕事をしたいと訴える。MI6のスチュアート・ミンギス(マーク・ストロング)はチーム一丸となることを求めるが、チューリングにとって暗号解読は自分の能力を試すゲームに過ぎなかった。リーダーのヒュー・アレグザンダー(マシュー・グード)のもと奇襲作戦やUボート情報の暗号文を分析するチームを尻目に、チューリングは一人でマシンを作り始める。製作費を却下されると、チャーチル首相に手紙で直訴し、首相から責任者に任命される。そして、二人の同僚を「無能だ」とクビにしてしまう。子供の頃から孤立し、唯一の親友とも悲しい別れをしたチューリングには、他人との交流など不要だった。1940年、解読は一向に進まず、メンバーの苛立ちはチューリングに向けられる。そんな中、目的を伏せた試験でチューリングより早くクロスワードパズルを解いてチームに加わったジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)が、チューリングの心を少しずつ開いていく。マシンに見切りをつけた中佐にクビを宣告されたときも、仲間が助けてくれた。中佐から1カ月の猶予を引き出したチームは、遂にエニグマを解読する。しかし、解読したことが敵にばれれば、エニグマの構造を変えられてしまう。ヒトラーから世界を救うため、チューリングとMI6は新たな極秘作戦を計画する。それはチューリングの人生、仲間との絆をも危険に晒し、さらにソ連スパイ疑惑まで向けられる。そしてチューリングの大きな秘密が重なり、彼の人生は思わぬ方向へ進んでいく……。(Movie Walkerより)



第2次世界大戦時、ドイツ軍が世界に誇った暗号機エニグマによる暗号の解読に成功し、連合国軍に勝機をもたらしたイギリスの数学者アラン・チューリングの人生を描いた映画です。

天才はしばしば凡人の理解の範囲を超える思考回路を持つことで孤立しますが、アランにもその傾向が大です。少年時代には級友たちから苛められ、彼を理解してくれたただ一人の友人クリストファーも結核で世を去ってしまい、孤独の殻に閉じこもってしまったアランにとって、暗号解読も国や正義感のためというより、謎解きのゲーム感覚に近かったようです。チームの仲間を認めず孤立するアランでしたが、ジョーンの存在が少しずつその頑なだった心を開いていきます。(キーラは理知的で意志の強いジョーンを好演しています。)
頭脳明晰で美しいジョーンは、チームの皆にも受け入れられ、彼女を仲介としてアランとチームの間にも仲間意識が芽生えていくのです。

しかし、アランにはある重大な秘密がありました。現代ならカミングアウトしても受け入れられたでしょうけれど、当時それが公になれば投獄される「罪」でした。
映画は、戦時中の1940年代と戦争終結後の1950年代が交互に描かれます。
50年代で、チューニングの家に泥棒が入ったことで、彼の秘密が露わになるのですが、取り調べで戦時中に彼が関わった暗号解読の真実が語られていくのです。

難攻不落と言われたエニグマの解読に成功した時、彼らは知り得た情報を戦争終結に結びつけるために一番最適な方法を選択します。ドイツ側にエニグマを解読したと悟られれば、構造を変えられてしまうと恐れた彼らは、情報を取捨選択して連合国側の勝利に貢献したのです。それは、敵の作戦を知りながら軍部に知らせず犠牲を見過ごすことでもありました。
チームの一人の兄が犠牲になるとわかっていても、アランは方針を変えなかったのです。

大局を見て論理的に考えるなら、彼らの出した結論は間違っていないでしょう。この解読により、戦争は2年以上早く終結し、1400万人以上の犠牲を食い止めたそうです。でもねぇ・・・個人としては割り切れない思いが残ります。情報操作により犠牲となった人とそうならなかった人。どちらも大切な「誰か」であるんですもの。

アランたちの業績は半世紀以上機密扱いで伏せられていたとか。エンドロールでは、秘密が露見して投獄か治療かを迫られ、治療を選択したアランが一年後に自殺したと伝えています。その原因は薬の副作用だったのか、それとも当時の「決断」への自責の念だったのかは想像するしかないのですが・・・。

初めは傲慢・偏屈な天才にしか見えなかったアランですが、観ているうちに一人の生身の人間としての苦悩や迷いが伝わってきて、何だか愛しいような気持ちになりました。
クリストファーがアランに、アランがジョーンに、そしてジョーンがアランに再び言った「時として誰も想像しないような人物が想像できない偉業を成し遂げる」というセリフがまさにこの作品の主題かも。

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コードネーム U.N.C.L.E. ネタバレあり

2015年11月18日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2015年11月14日公開 アメリカ 116分

東西冷戦真っただ中の1960年代前半。ナチスの残党が強大な国際犯罪組織と手を組み、核兵器とその技術拡散によって世界の勢力バランスを揺るがそうとするテロ計画を企んでいた。そんな中、CIAで最も有能な男といわれるナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)と、KGBに史上最年少で入った超エリートのイリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)は、長年の敵対感情をひとまず忘れ、謎の国際犯罪組織撲滅の合同任務に乗り出す。だが手掛かりは、その犯罪組織潜入の鍵となる失踪したドイツ人科学者の娘ギャビー(アリシア・ヴィキャンデル)だけであった。彼女を守りながら、科学者本人を探し出さなければならない二人だったが、考え方もやり方も何もかも正反対。タイムリミットが迫る中、核爆弾大量生産の危機から二人は世界を救えるのか……。(Movie Walkerより)


1960年に作られたイギリスのTVシリーズ『0011 ナポレオン・ソロ』を新たに映画化したスパイアクションアドベンチャーです。今から50年以上も前のスパイのお話で、連絡手段は無線通信だったりします。スパイとしては凄腕だけどプレイボーイで女に弱いソロと、真面目で几帳面だけど短気なイリヤのコンビは初めから衝突してばかり。そんな彼らに守られながら、実は裏の顔を持つギャビーとの駆け引きもなかなか面白いのです。ソロは大泥棒の腕を買われてムショ暮らしを逃れる代わりにスパイをさせられており、イリヤは父親が罪人となり家族離散の憂き目に遭っています。どちらも組織に弱みを握られているわけです。

そもそも二大国が手を組むという禁じ手自体、かなり胡散臭い話で、案の定、任務遂行のためにはコンビの相手であっても抹殺しろという命令を受けている二人ですが、そこは危ない橋を渡るうちに芽生える友情というか仲間意識結末も、米・ソどちらかが相手を出し抜くのではなくイギリス諜報部を緩衝材に配置したところがミソかも。

かつて「007」の最終オーデションまで残ったことがあるというヘンリー・カヴィルは、正統派プレーボーイスタイルを華麗に演じ、アーミー・ハマーも、ジョニーと共演した「ローン・レンジャー」で見せた真面目っぷりを再演しています。どちらもイケメンですが、このお話では真面目で女にウブなイリヤを応援したくなっちゃうかな

敵の警備の隙をついて潜入する際の扉や金庫を開けるやりとりや、気付かれてボートで逃げ出す場面など、スリリングなのに軽妙な笑いも盛り込まれて飽きさせません。ボンドやイーサンのようなハイテクを駆使した作品も楽しいけれど、今作のような古きスパイものも味わいがありますね

ナチス残党と手を組む国際犯罪組織のトップであるヴィクトリア・ヴィンチグエラ(エリザベス・デビッキ)の存在感も光っています。ゴージャスでデンジャラスな毒女です。彼女やギャビーの60年代ファッションも見どころです

タイトルにあるU.N.C.L.E.とは、United Network Command of Law and Enforcementの略で、アレキサンダー・ウェーバリー(ヒュー・グラント)が指揮官となり、三人がその指揮下に入るという・・あれ?これってシリーズ化されるのかな?

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トゥモローランド

2015年11月17日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年6月6日公開 アメリカ 130分

17歳のケイシー・ニュートン(ブリット・ロバートソン)は、ある日、自分の荷物の中に見慣れぬピンバッジを見つけるが、そのピンバッジに触れた途端、彼女はたちまち未知なる世界へ紛れ込んでしまう。そこはテクノロジーの発達した未来のようであったが、バッテリー切れと同時にケイシーは見慣れた現実世界へと引き戻されていた。必死で夢の世界へと戻ろうとするケイシーの前に、ピンバッジを彼女の荷物に紛れ込ませたという謎の少女アテナ(ラフィー・キャシディ)が現れる。すべてが可能になる場所“トゥモローランド”に再び訪れたいのならば、フランク・ウォーカー(ジョージ・クルーニー)という男を訪ねるようにとアテナは誘う。実はアテナが人類の未来を託した二人の人間、それこそがケイシーとフランクであった……。(Movie Walkerより)


公開時の評判があまり芳しくなかったためレンタル待ちリスト入りしていた作品です。
でも期待値が低かった分、逆に面白く感じたかも

1964年。まだ子供のフランクは、発明大好き少年。コロナパークで開かれていた万国博覧会に自慢の空を飛べるジェットパックを携えてやってきてアテナと出会います。美しいアテナに一目惚れするのもまぁ自然かと彼が「イッツ・ア・スモールワールド」のアトラクションから“トゥモローランド”へ導かれるくだりはかなりワクワクします。

それから40年後。NASAのエンジニアの父の影響で宇宙を目指すケイシーの前に少女のままのアテナが現れるの。ここで、アテナが生身の人間ではないことが示唆されます。

アテナに導かれ、ケーシーはフランクと出会います。科学への溢れるほどの好奇心を持つケーシーに、フランクは、素晴らしい未来都市は幻想で、地球は大変動により人類が滅亡する定めになっていることを告げます。絶望的な未来を阻止しようとしてうまくいかない現実に倦み疲れていたフランクですが、それでも諦めないというケーシーに触発され、再びかつての夢を取り戻していきます。

再び“トゥモローランド”を訪れた三人は、未来を映し出す装置こそが人類を滅亡に導いていることに気付き、これを破壊しようとして戦いになります。アテナの犠牲により装置は破壊されますが、都市も荒廃してしまいます。それを修復しようと二人は世界中から有能な人材(夢を諦めない人:映画の主題ですね)を“トゥモローランド”にリクルートするのでしたもちろん、例のバッジが鍵なのでした

フランクのアテナへの想いを彼女自身も知っていて、応えられない自分に苦悩していたのも切なかったなぁ。いわば心が宿ったアンドロイドですね。

“トゥモローランド”の描写はまさに1960年代の未来像という印象を受けました。ちょっと懐かしいような不思議な感覚になりました。

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シンプル・シモン

2015年11月12日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年5月3日公開 スウェーデン 86分

シモン(ビル・スカルスガルド)は宇宙と兄さんのサム(マルティン・ヴァルストロム)が大好き。サムのガールフレンドのフリーダ(ソフィ・ハミルトン)と、3人で暮らしている。「アスペルガー症候群です、僕に触らないで」って書いてあるバッジをつけて、規則正しく仕事場に通っている。ある日、フリーダが出て行ってしまった。どうして!??シモンは元通りの日常を取り戻したくて、サムのために完璧な新しい恋人を見つけることにしたのだが…。(Movie Walkerより)


アスペルガー症候群の主人公の目に映る世界を描いた作品です。
発達障害の特徴である物事へのこだわりは周囲には理解され難く、シモンの母(ロッタ・テイレ)でさえ持て余しています。物理への特異な才能を持ち、SFが大好きなシモンは、気に入らないことがあるとすぐに“ロケット”に閉じ籠ります。そんなシモンの唯一の理解者は兄のサムで、シモンを恋人のフリーダと住む自分の家に引き取るのですが、シモンの奇行に耐えきれなくなったフリーダは家を出てしまいます。弟と自分のどちらを選ぶのかと迫るフリーダを責めるのは簡単ですが、実際シモンのような強烈な個性と付きあい理解するのはとても難しい気がします。

兄がフリーダに振られた原因が自分にあるとは露知らず、いつもの日常を取り戻したいシモンは兄の新しい恋人探しを始めるのですが、その方法もまたとてもユニーク。初めは兄と同じ好みを持つ女性を探そうとしますが、人は自分と異なる相手に惹かれると兄に教わり、今度は真逆な人を探し始めるの偶然出会ったイェニファー(セシリア・フォルス)に狙いを定めたシモンは2人を近づけようと奮闘するのですが、当然二人にその気はなく・・・。サムにとってはフリーダとの仲が修復不能と悟っても、新しい恋に進むには気持ちの整理も時間も必要です。それにイェニファーが興味を持ったのは兄のために一生懸命なシモン自身なのですから

自分の中のルールに固執するシモンですが、イェニファーと関わるうちに、これまで経験したことのない感情が芽生えていきます。それはまさしく人を好きになる感情です
イェニファーがシモンの中にある純粋さに惹かれたのは、きっと彼女自身が強くて聡明で純粋な女性だからでしょう。ハッピーな結末はある意味ファンタジーですね。
(自分を置き換えてみるとしたら・・・やっぱりフリーダの方かも

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鹿の王 (下) ‐‐還って行く者

2015年11月10日 | 
上橋 菜穂子 (著)  角川書店(発行)

不思議な犬たちと出会ってから、その身に異変が起きていたヴァン。何者かに攫われたユナを追うヴァンは、謎の病の背後にいた思いがけない存在と向き合うことになる。同じ頃、移住民だけが罹ると噂される病が広がる王幡領では、医術師ホッサルが懸命に、その治療法を探していた。ヴァンとホッサル。ふたりの男たちが、愛する人々を守るため、この地に生きる人々を救うために選んだ道は―!? (「BOOK」データベースより)


2015年本屋大賞受賞作品ということで新聞に紹介記事が載っていたので図書館で予約しましたが、上巻より先に下巻が回ってきました。上巻はまだ100人待ちだったので、いいや!と下巻から読むことに。でも読み進めるうちに上巻の内容も何となく想像できたので良しとします

ヴァンは故郷を追われ奴隷として岩塩鉱で働かされていたところを疫病を持つ犬たちに襲われ、彼とユナ以外全滅します。彼も噛まれたのですが、何故か九死に一生を得て逃げ出す途中でユナが何者かに浚われてしまい、彼も負傷したところをアカファ王のモルファ(密偵)であるサエに助けられたところから下巻は始まったようです。

どうやら東乎瑠帝国という大国が近隣諸国を侵略して回り、ヴァンの一族や〈火馬の民〉は土地を追われ、アカファ国は服従したということね。〈火馬の民〉の族長は故郷を取り戻すために、異邦人だけを殺す疫病<黒狼熱>の病原菌を持つ犬を使って帝国を滅ぼそうと企み、アカファ王や山地氏族の協力を仰ぎますが、実はこの疫病は彼らにも無害ではないことがわかって背反されるのですが。

もう一人の主人公ホッサルは医術師で、山地氏族に捕われ、特効薬を作るよう頼まれます。
探していたユナは山地氏族の元にいたため、ユナを通じてホッサルとヴァンは出会うのです。
病に罹るものと罹らないものの違いについて話をするうち、彼らは帝国の侵略とともに森の環境が変わったことが黒狼熱に関係していることに気付きます。移住民が土地を開拓していくうち、先住民の食生活も変化して、侵略以前に持っていた病原菌に対する耐性がなくなってしまったこと(乳や地衣類から得ていた)が大きな要因だったのです。また、ヴァンは、嗅覚の発達と自分も犬の仲間であるように感じ人を噛む衝動が抑えられない症状が現れ、ユナには病素を抑え込む力があるものが光って見えました。これは病素が宿主を渡り歩くうちに性質が変化することを現しています。

病素は黒ダニが媒介していることを突き止めたホッサル(と助手のミラル)は、人の体内を国に例えてヴァンに説明します。ひとつの個体のようでいて実はたくさんの小さな命の塊であり、それぞれが生かし生かされているのだと。正直、感染病をこのような観点で説かれるとは思ってもいなかったのでとても新鮮でした。
ファンタジーでありながら、医学的見地のもとに書かれた疫学の話でもあるところが面白かったです。

ホッサルは、この事件を陰で操っていたのが自分の祖父であったと気付きます。高名な医術師である祖父に病そのものへの探求心が度を超えてなかっただろうかという疑惑に思い至った時、そしてそれが自分の心の中にもあることを認めざるを得なかったのです。祖父にはもう一つの思惑もありました。それは自分たちの医術を帝国に根付かせることです。そのために病を使って邪魔者を排除しようとしたのです。
ところが、祖父の計画は彼に利用されていた筈のシカンの裏切りで頓挫します。火馬の民であるシカンの狙いは、あくまで自分たちを滅ぼした者たちへの復讐だったのです。

タイトルの「鹿の王」は、危機に瀕した群れを守るために現れる鹿のことです。それは群れを統率するボスではなく、自らの命を賭して仲間を守る強い意志を持った者のことであり、決して諦めぬ者のことで、そのままヴァンに重なっていきます。だから、彼が犬たちを率いて暗い森の奥に消えた時、彼の生はここで費えるのだろうと思いました。ところが、ヴァンを慕うユナ、サエ、トマ、智陀が後を追います。それならきっと・・・と希望が持てる展開は嬉しかったな。

ホッサルの話の中に登場する「光る葉」は、卵から生まれたウミウシが病素を含んだ藻を食べやがて緑の葉になり卵を産み、己の病素に負けて死ぬと病素はまた藻に入りこみ、それをまた・・という奇妙で複雑な営みをしています。生の中には必ず死が潜んでいるという必定の中で、それでも人は懸命に生きなければならないというメッセージが強く込められているエピソードでした。

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おみおくりの作法

2015年11月08日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年1月24日公開 イギリス=イタリア 91分

ロンドンの南部、ケニントン地区の公務員である44歳のジョン・メイ(エディ・マーサン)の仕事は、孤独死した人の葬儀を執り行うこと。几帳面な彼は遺族を見つける努力を惜しまず、その人のために葬礼の音楽を選び、弔辞を書く。故人の魂が、品位ある方法で眠りにつくのをきちんと見届けるのが彼の作法だった。規則正しい仕事と生活をしながら、ジョン・メイはいつも独りだったが、ある朝、真向いのアパートでビリー・ストークという年配のアルコール中毒患者の遺体が発見される。すぐ近くで、その人を知らぬままに人が孤独死したことにショックを受けたジョン・メイに追い打ちをかけるように、その日の午後、彼は仕事に時間をかけすぎるという理由で解雇を言い渡される。最後の案件となったビリー・ストークのために、ジョン・メイはこれまで以上に情熱を傾け、ビリーの部屋にあった古いアルバムに写る満面の笑顔の少女の写真を手がかりに、イギリス中を回ってビリーの人生のピースを組み立てていく。故人を知る人を訪ね、葬儀に招く旅の過程で出会った人々と触れ合ううち、ジョン・メイの心の中にも変化が訪れる。自分を縛ってきた決まりきった日常から解放されたジョン・メイは、いつもと違う食べ物や飲み物を試し、知り合ったばかりのビリーの娘ケリー(ジョアンヌ・フロガット)とカフェでお茶をする。ビリーの葬儀も近いある日、ジョン・メイは人生で初めての行動に出るが・・・。


孤独死した人を弔う仕事をする民生係の男が、最後に扱った故人の人生を紐解く旅で新たな人々と出会い、生きる意味を見つめ直していく姿を描いています。

毎日同じ服を着て、定刻出勤するジョン・メイは、道を横断する際にはまったく車が通らなくても必ず左右を確認し、毎日同じ昼食と夕食をとります。(これがまたいかにも味気ないメニューなのよね)夕食後には、これまで弔った人々の写真をアルバムに収めるのが日課の彼は、解雇通知に少なからぬショックを受けます。仕事を失い毎日の日課が無くなったらどうしたら良いのでしょう?アパートの真向いで孤独死した男に自分を重ねたのでしょうか、ジョンは彼のために家族を葬儀に招こうと奔走します。せめて人生の最期くらいは誰か関わりのある人たちに送ってもらいたい、それはジョン自身の願いでもあったのでしょう。

彼が訪ねたのはウィットビー(ビリーと暮らしていた女性の営むフィッシュ&チップス店のある町)、オーカム(ビリーが勤めていた製パン工場)、ロンドンのバークレースクエア(路上生活をしていた高級街にある公園)、トゥルーロー(ビリーの娘のケリーが住んでいる)、プリマス(ケリーと葬儀の打ち合わせでお茶した町)です。一介の公務員の出張費で賄えるとは思えず、おそらくジョンの持ち出しだったと推察しますが、そこまでしてビリーの縁故の人を探す姿に彼の心の底にある願いが伝わってくるようでした。

ケリーを演じるジョアンヌは「ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館」のメイド長・アンナ役の女優さん。どうりで見たことがある顔だ

ジョンが探し出した人々は一様に葬儀の参列を断るのですが、彼は諦めず、遂には自分のために買っていた日当たりのよい最高立地の墓所までビリーに譲ります。ケリーと葬儀の手はずを相談し、彼女に参列の意志を伝えられて喜ぶジョンですが、その帰り道に悲劇が・・・・。

初めてジョンの人生に輝きが見えた次の瞬間、彼の人生そのものが幕を閉じるという悲劇が切ない。そして葬儀当日、ジョンは無縁墓地にたった独りで葬られ、彼が譲ったビリーの墓にはジョンが訪ね歩いて探し出したビリーの縁の人々が大勢参加しています。う~~ん、この対比は胸が痛くなりますね。

でもジョンは不幸せな一生を終えたのかというと、それは違うようです。
生きている人間は誰も参列しなかったけれど、今まで彼が弔ってきた孤独死した人々が大勢彼の墓を訪れるラストは、ジョンの人生が決して悲劇でもつまらなくもなかったことを現しているのではないのかな?
(それでも、後日ケリーがジョンの最期とビリーの墓の顛末を知り、ジョンのために墓所を訪れてくれることを願わずにはいられませんでした

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天才スピヴェット

2015年11月07日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年11月15日公開 フランス=カナダ 105分

アメリカ北西部のモンタナで牧場を営む父(カラム・キース・レニー)と昆虫博士の母(ヘレナ・ボナム=カーター)、アイドルを夢見る姉(ニーアム・ウィルソン)に囲まれ暮らすスピヴェット(カイル・キャトレット)は、10歳にして天才科学者だが、なかなか家族からは理解されずにいるのが悩みの種だった。二卵性双生児の弟が死んで以来家族それぞれの心にぽっかり穴があいてしまっていた。ある日、アメリカを代表する研究機関であるスミソニアン学術協会から、スピヴェットが最も優れた発明に贈られるベアード賞を獲得したという連絡が入る。認められることの嬉しさを噛みしめながら、スピヴェットは東部にあるワシントンDCで開かれる授賞式に向かうため家出を決意。大陸横断の冒険の中で、スピヴェットは様々な人と出会いながら本当に大切なものに気付いていく。(Movie Walkerより)


ラルフ・ラーセンの「T・S・スピヴェット君 傑作集」が原作です。

双子の弟は活発で父のお気に入りでしたが、銃の暴発で亡くなります。自分が研究に銃を使用しなければ弟は死なず、家族の嘆きもなかったと思い込んでいるT・Sは家に自分の居場所を見出せず、学校でもその才能が理解されない疎外感を抱いています。そんな時、ベアード賞受賞の知らせが舞い込みます。一度は断ったT・Sですが、スミソニアンでなら自分を受け入れてもらえるのではないかと期待を抱いてスピーチをするための家出を決行するのです。

家を出た初っ端、父のトラックとすれ違ったのに、父は無視。自分は本当に要らない人間なのだと信じ込んでしまったT・S。実はその時父は他の事に気を取られスピヴェットに気付かなかったのよねまた、存在しない昆虫を探す一見風変りな母(ヘレナはこういう役が得意よね)の行動も、愛息を喪った悲しみを紛らわす代償行為なのですが、幼いT・Sに察しろというのは無理な話です。

信号機を塗りつぶして貨物列車に潜り込んだり、宣伝パネルの真似をしたり、警官に見つかって必死に逃げたりとひとしきりの冒険を経てスミソニアンに到着した彼を見て、博物館の副館長は驚きます。だってわずか10歳の子供が素晴らしい発明をしたんですものね。計算高い彼女はT・Sを利用しようと思いつきます。そこへ彼を救いにやってくるのが彼の両親というわけ。

一番理解されたい、受け入れられたい家族との再会に安堵するT・Sはまさに10歳の等身大の少年に還っています。子供の手の届くところに銃を置いた親の責任なのだから、彼が自分を責めることはないのだと説き、家に帰ろうと言う両親と共にTV局のスタジオを出る彼はもう孤独な少年ではありません。
天才だろうと何だろうと、自分をわかってくれる人がいるのが一番幸せなのよね

旅の途中で出会った老人からT・Sは松の木の話を聞きます。他の木々がスズメが冬を越す宿を断った中、松の木だけはスズメを受け入れ守ってくれた。神様はスズメを守らなかった罰として、他の木の葉は冬に枯れるようにしたという説話です。それに対してT・Sは松の尖った葉ではスズメを守れないから嘘だと言います。彼の想像力は後ろ向きで、否定的でしたが、旅を通してその方向性は前向きに変わっていきます。

家に戻ったT.Sが想像の中で発明したのは生まれてくる赤ちゃん(弟妹)の乳母車を揺らすための永久機関動力で、母が壊したトースターたちの再利用というのが面白いです。うん、まさに前向きだ

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ミケランジェロ・プロジェクト

2015年11月06日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2015年11月6日公開 アメリカ 118分

第二次世界大戦が激化する中、ヨーロッパ各国に侵攻したドイツ軍が、大量の美術品略奪を重ねていた。危機感を募らせたハーバード大学付属美術館の館長フランク・ストークス(ジョージ・クルーニー)は、ルーズベルト大統領を説得。歴史的建造物や美術品を守る特殊チーム“モニュメンツ・メン”を結成する。そのメンバーは、リーダーのストークス以下、メトロポリタン美術館で中世美術を管理するジェームズ・グレンジャー(マット・デイモン)、建築家リチャード・キャンベル(ビル・マーレイ)、彫刻家ウォルター・ガーフィールド(ジョン・グッドマン)、ユダヤ系フランス人美術商ジャン・クロード・クレモント(ジャン・デュジャルダン)ら7人。略奪された美術品の追跡、発掘、保護を使命としてヨーロッパへ旅立った彼らは1944年7月、フランスのノルマンディー海岸に到着する。だが、激戦を終えたばかりの連合軍から十分なサポートは期待できない。やむなく2,3人ずつに分かれてヨーロッパ各地へ移動し、別々に任務を遂行することとなる。様々な困難を乗り越え、着実に成果を挙げて行くモニュメンツ・メン。ストークスたちは、パリで美術品略奪に加わったシュタールという男から重要な地図を奪取。坑道に隠されていた数多くの美術品を発見する。パリを訪れたグレンジャーは、クレール・シモーヌ(ケイト・ブランシェット)という女性の信頼を得て、ナチが運び出した何千点もの美術品の台帳とそれらの運び先の情報を入手。その一方で、2人のメンバーが命を落としていた。やがてドイツに集結したモニュメンツ・メンは、最大の隠し場所と見られる場所に向けて決死の行動を起こす。果たして、そこには消息不明となったミケランジェロの作品も隠されているのか?だがその行く手には、横槍を入れてきたソ連軍の影がちらつき、ヒトラーの自殺によって全てを破壊しようとするナチの脅威が待ち受けていた……。(Movie Walkerより)


ジョージ・クルーニーが監督・製作・脚本・主演を務め、第2次世界大戦中の実話を映画化したサスペンス作。ついつい『オーシャンズ』を連想してしまうキャストです。さすがに娯楽大作だけあって見応え満足度高し!
戦争でかけがえのない歴史的建造物や美術品が失われてしまうのを防ごうとアメリカが立ち上がった!!といういかにもハリウッド的ヒーロー精神に富んだ展開ですが、これが実話に基づいているというから驚きました。彼らの活躍があったからこそ、今私たちは歴史的な芸術品を世界中で鑑賞することができるのですね

ジェームズとクレールのラブ・ロマンスも描かれますが、最終的に仕事以上の間柄を超えないのは、芸術への使命感という共通項で結ばれた関係だからでしょう。紳士的なジェームズには好感度UPです。(パリ女は情熱的という描き方はベタな気がしますが)クレールがジェームズに心を開いたのは、彼らが美術品を自分たちの国に運ぼうとしているのではなく、持ち主に返そうとしていることを信じたからですね。

ブルージュの聖母子像とヘントの祭壇画は物語の重要なキーとして登場します。
敗北を悟ったヒトラーによる「ネロ指令」の発令で、一刻の猶予もなくなり、必死に略奪された美術品の隠し場所を探す彼らは、あることに気付いてその場所を探しあてるのですが、この謎解きも見どころの一つです。
ソ連軍の侵攻の前に美術品を運び出す場面は、間に合ったんだろうとわかっていてもドキドキします。最後にブルージュの聖母子像が見つかった時には、きっと死んでいった仲間にやっと報いられたような気持ちになったのでしょうね。

略奪された美術品の3/4を取り戻すことができたというのは素晴らしい!そして戦勝国の戦利品とするのではなく、持ち主がわかっているものは返却するという姿勢こそ評価されるべきものだと思います。映画ではソ連軍のやり方を暗に非難していますが、これは冷戦の名残なのか、そもそもの発端であるのか、興味深いところです。

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繕い裁つ人

2015年11月04日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年1月31日公開 104分

神戸の街を見渡す坂を上ると、その店はあった。「南洋裁店」という小さな看板が掛けられた、古びた洋風の一軒家。店主の南市江(中谷美紀)が作る服は、いつも即日完売。すべて昔ながらの職人スタイルを貫く手作りの一点ものだ。神戸のデパートに勤める藤井(三浦貴大)は、市江にブランド化の話を持ち掛けるが、まるで“頑固じじい”のような彼女は、全く興味を示さない。一代目である祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、あとは先代のデザインを流用した新作を少しだけ、市江はそれで満足だった。南洋裁店の服は、世界で一着だけの一生もの──それが市江の繕い裁つ服が愛される、潔くも清い秘密だった。 だが、自分がデザインしたドレスを作りたいはずだという藤井の言葉に、市江の心に封印してきた何かが揺れ動く──。 (公式HPより)


町の仕立て屋と常連客たちとの織りなす日々を描いた池辺葵の同名人気コミックの実写映画化です。
娯楽大作とは異なる、はっきり言って地味だけど味わいのある大人な作品でした。
神戸を中心に関西でオールロケしたとのことで、坂の上から海を見下ろす風景や、南洋裁店の舞台となった旧平賀邸の美しい佇まいなど、風景だけでも楽しめますが、市江の作る古風で上品な洋服の数々にも目を奪われます。現代風ではないけれど、忘れ去られようとしている古き良き時代の香りのようなものが画面から伝わってくる気がしました。

市江の母(余貴美子)や先生(中尾ミエ)、紳士服の仕立屋(伊武雅刀)、市江の友人(片桐はいり)、藤井の妹(黒木華)、常連客の娘(杉咲花)など、市江の周囲の人間関係も穏やかで優しいゆったりした時間の流れの中にあります。

町の仕立屋という仕事自体が馴染みのない現代で、この町の人々と市江の関わり方は既にファンタジーの領域です。
彼女が主催する「夜会」の幻想的で美しいことと言ったら!!
普段は普通の主婦でありお母さんやお父さん、お爺ちゃんの顔で暮らしている大人たちが、この夜ばかりは、紳士淑女として優雅に振る舞う姿がとても素敵です。こんな町の住人になってみたいと思ってしまいました

布やボタン、裁縫道具、デザインブックやお客様のファイルといった小道具たちもレトロで伝統的な美しさに溢れていて、特にファッションに興味がない人でも心惹かれてしまうのではないかしら。

藤井は市江の中に眠っていた新しいことに踏み出す勇気を引き出してくれたようです。二人の間に恋愛感情が芽生えたのかは定かにはされず(おそらくは服に対する共通の熱い想いということでくくられるのかしら?)幕が引かれますが、藤井の妹に贈ったウェディングドレスの先代とは違うキュートなデザインはまさに市江の心境の変化を現していました。

単館系作品ですが、こういう上質なものをスクリーンで観る贅沢もたまにはしてみたいなぁ

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ジュピター

2015年11月02日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2015年3月28日公開 アメリカ 127分

宇宙最大の王朝に支配されている地球。家政婦として働くジュピター(ミラ・クニス)は、何者かに襲われたことをきっかけに、自身がその王朝の王族であることを知る。王朝ではバレム、タイタス、カリークというアブラサクス家の3兄妹が権力争いを繰り広げており、それぞれが自身の目的のためジュピターを狙っていた。ジュピターは、遺伝子操作で戦うために生み出された戦士ケイン・ワイズ(チャニング・テイタム)に助けられながら、アブラサクスの野望から地球を守るために戦いに身を投じていく。

アンディ&ラナ・ウォシャウスキー姉弟によるオリジナルのSFアクション大作です。
普通の女の子だと思っていた自分が実は王族の生まれ変わりで、王族の争いに巻き込まれ、戦士に助けられというような、女の子が一度は憧れる要素が沢山詰まったお伽話的作品です。現代の女性像を反映して、銃を撃ったり特殊能力があるわけではないけれど、敵の言いなりにはならない意志の強さを持つヒロイン像も好感度高いです。

亡き女王と同じ遺伝子配列を持つジュピターを巡ってその覇権を自分のものにしようと女王の子供たちの陰謀が巡らされていきます。バレムは彼女を殺そうと刺客を送り、タイタスはケインを使って彼女を連れて来させ甘言で騙して結婚することでその権利を我物にしようと企みます。カリークも彼女を自分の側に付けようと目論みます。
女王自身は優れた統治者だったとしても、三人の子供たちは全員腹黒いのね

ケインは狼と人間のDNAを操作して生まれた戦士です。しかも罰でむしりとられるまでは羽があった(彼が持つ王族に対する本能的な嫌悪感の理由は不明のまま))ジュピターとは身分違いですが、窮地に陥る度に命を懸けて救い出しにくる姿に、女の子なら皆恋に落ちちゃうよね

ジュピターが女王としての継承権を得るために、現代の役所と同じようにあちこちの窓口をたらい回しにされる描写が可笑しかったです。地球人より遥かに進化している筈の彼らでもやってることは一緒かい!!と突っ込んでみる

彼女が継承するのは、莫大な利益を生むはずの「収穫」前の地球です。そしてその利益を自分のものにしようと三人が狙うのです。彼らにとって一番大切なのは「収穫」した人間から作られる若返り=不老不死のエネルギーというわけです。死こそが彼らの最大の弱点なのね。

バレムに囚われたジュピターを救うために飛び込んだケインが開けた「穴」がバレムの星を滅亡に導きます。まさに蟻の一穴、蜂の一刺し
壮大な宇宙で繰り広げられる戦いも見応えがありました

事態が収拾した後、彼女が選んだのは「家族」と地球でこれまで通りに暮らすこと。それまで仕事に不満たらたらだった彼女が進んでトイレ掃除をする姿が印象的。人生で一番大切なのは何かに気付いた彼女は、ケインとの身分違いも軽々と乗り越えて恋を成就させるのでしょうね

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