杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

白ゆき姫殺人事件

2016年04月10日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2014年3月29日公開 126分
2016年4月1日「金曜ロードSHOW!」地上波初放送

日の出化粧品の美人社員・三木典子(菜々緒)が何者かに惨殺される事件が起こり、典子と同期入社で地味な存在の女性・城野美姫(井上真央)に疑惑の目が向けられる。テレビのワイドショーは美姫の同僚や同級生、故郷の人々や家族を取材し、関係者たちの口からは美姫に関する驚くべき内容の証言が飛び交う。噂が噂を呼び、何が真実なのか多くの関係者たちは翻弄されていき……。過熱報道、ネット炎上、口コミの衝撃といった現代社会が抱える闇を描き出していく。


二年前の公開当時は劇場鑑賞予定もなく忘れていたのが、地上波放送されたので録画して観てみましたが、かなり豪華な出演者の顔ぶれだな~というのが観終わっての感想です。
犯人はこの人だ!とミスリードしておいて、最後に真犯人が登場する展開はまさに原作者・湊かなえ氏の作風そのものでした

蓮佛美沙子はこれ以降TVドラマなどの露出が多くなったという印象があります菜々緒は悪女イメージが強いのだけど、この作品では途中までは淑やかな美女?と見せておいて、あら~やっぱり!なキャラでした

美人OL殺害、しかもめった刺しの上燃やされるという状況で、犯人は被害者に強い恨みを持つ人物という推測の中、地味で目立たない彼女の同僚が疑われます。そのきっかけは同じく同僚の里沙子(蓮佛美沙子)が元カレでワイドショーの契約ディレクターである赤星(綾野剛)に情報を流したから。
事件ネタに飛びついた彼がツィッターで憶測情報をつぶやき、ワイドショーに取り上げる際の周辺取材も偏った方向からなされます。ネット上で、勤務する化粧品会社の目玉商品になぞらえ「白ゆき姫殺人事件」と呼ばれて無責任な噂や口コミが広まり、美姫が犯人だと世間が断定していく様がなかなか恐いです。

美姫が交際していた上司の篠山(金子ノブアキ)を典子にとられたとか、同期で美人の典子へのコンプレックスがあったとか、果ては子供の頃に放火騒ぎを起こしたり呪いの力で同級生を怪我させたなど、実名や学歴に加えてあることないことが曝され、美姫の両親すら娘が犯人という前提のもとに謝罪する始末。
美姫の学生時代を知る友人(谷村美月)が番組に抗議文を送ったことで赤星の行動が問題視されてTwitterへの書きこみは止めても、既に事件は彼の手を離れて騒ぎが収束する気配もありません。

一方ビジネスホテルに潜伏していた美姫は、事態に絶望して死を選ぼうとし、手記を書いています。これまで噂されていた彼女に関する数々のエピソードが、今度は彼女自身の視点から描かれます。物事には必ず裏と表があって、一方の見方だけでは真実は浮かんで来ないということがよくわかる手法でした。
例えば、篠山が手作り弁当を迷惑がっていたというのは嘘で彼の方から頼んできたとか、典子が嫌がらせのために篠山を奪ったとか、放火事件もいじめられていた友人の力になろうとやったことがたまたま火事を引き起こしてしまったことや、級友の怪我も呪いとは全く関係がなかったことなどが明かされるのです。

死のうとした美姫の目に、TV画面は真犯人逮捕のニュースを映し出します。実は最初に赤星に情報を流した里沙子が典子を殺した犯人だったのです。三木の性格の悪さを直前の美姫の手記で明かしているので、典子のパートナーだった里沙子が彼女を恨む理由も一応納得はできますが、あのような強い殺意・憎悪に至る動機としてはやや弱い気もしました。

姫は「赤毛のアン」が愛読書の想像力の豊かな少女で、辛いことがあっても想像の翼を広げることで乗り切ってきた女性でした。彼女が苦境に立たされた時、両親でさえも娘を信じきれなかったけれど、大学時代の友人や幼馴染の夕子(貫地谷しほり)だけはずっと美姫を見捨てなかった。まさに「貧の友は真の友」です。美姫を励ましたのは、昔夕子と交わした秘密の合図(ロウソクの灯りを使ったサイン)で、これも「赤毛のアン」に出てくる有名なエピソードの一つです。(同級生で初恋の男の子とのエピソードもアンとギルバートのそれから採られていました。)

事件が解決するとTwitterは一転して美姫への同情と赤星の糾弾が溢れます。今度は赤星の個人情報が曝され仕事もクビに。美姫の実家を謝罪に訪れた赤星を父親(ダンカン)は怒鳴りつけ追い返しますが、そんな父親だって娘の無実より世間体を気にして謝っていたじゃないか~とここは複雑な気持ちになるね。

ぼんやり歩いていた赤星を美姫の運転する車が轢きそうになります。彼女を認識できないほど憔悴している赤星に、「きっとなにか良いことがありますよ」と声をかけ去っていく美姫。このラストが象徴するものって・・・深いね

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