波打ち際の考察

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波屋山人

IT系の次はNG系か(儲かる農業)

2009-09-13 23:53:05 | Weblog
数か月前にテレビを見ていたら、今や注目はIT系じゃなくてNG系、という特集を行っていた。
IT系(情報技術系)ではなくて、NG系(農業系)が注目されているのだとか。

たしかに、カロリーベースでの食料自給率は約40%。
日本の畜産業は飼料の多くを輸入のトウモロコシなどに頼っているから、輸入飼料で育てられた鶏や豚や牛は、カロリーベースでは自給率にカウントされない。

また、農業を主収入にしている人たちの60%程度は、65歳以上だという。
このままでは日本の農業は立ち行かなくなる。

地球温暖化や世界的経済不況の中、一大転換期にある日本の農業は、注目の的となっている。
去年から今年にかけて、一般雑誌やニュースで農業が取り上げられることが増えた。

斬新な発想のアダルトビデオで一世を風靡した高橋がなりさんは、アダルトビデオを引退して農業に取り組んだけど、3年間で10億の赤字だという。
ギャル社長として一世を風靡した藤田志穂さんも農業に取り組んで、困難に直面している。

ぼくは実家が兼業農家だから、農業には関心がある。
農業で稼ぐことの厳しさや、農家の人の視野の狭さ、農薬に頼ることの怖さ、農機具の高さ、後継者の少なさなど、様々な問題を身近に感じている。

いつか農業に関わるかもしれないと感じているから、農業関係の本は時々読んでいる。
昨日は「奇跡のりんご」で有名な木村秋則さんの「すべては宇宙の采配」(東邦出版)、今日は嶋崎秀樹さんの「儲かる農業」という本を読んだ。

木村秋則さんの本は、いつ読んでも共感する。
いつかお会いして、りんごの木を眺めながらお茶をいっしょに飲みたいなと思う。

トップリバーという農業生産法人を率いて年商10億を超えている嶋崎秀樹さんの話には、目を見開き、姿勢を正したくなる。
嶋崎社長は、一つの産業としての農業に取り組んでいる。
おっしゃることはごもっとも。兼業農家の息子として身がひきしまる思いだ。

この本は、田舎の農家の人たちにもぜひ読んでもらいたいと思う。
国や農協に頼ってなんとかやり過ごそうとしても、限界はすぐそこにきている。
自分たちで、なんとか乗り越えなくてはならない。

乗り越えられなければ、自分たちが倒れた上を、ワタミやサイゼリヤの農場担当者が耕していくのかもしれない。
それもいいけど、農家や農協がぎりぎりの時期に、反転を見せるのか、転げ落ちて行くのか、ターニングポイントを見届けたいと思う。


儲かる農業-「ど素人集団」の農業革命
嶋崎秀樹著
竹書房
2009年7月31日発行
1300円(税込)

p.15
トップリバーは、基本的には卸売市場を通す取引をほとんど行っていない。トップリバーが行っているのは、野菜加工者やスーパー、レストランなどに直接卸す契約栽培である。
取引企業と契約した出荷量を生産し、確実に卸す。取引価格は事前に交渉を行うので、市場の相場に左右されることなく、安定した収益を見込むことができる。後述するが、この契約栽培を実現するためには、様々な努力や覚悟が必要なのだが、それはビジネスを行う者としては当然引き受けなければならないものだ。

p.34
今までのやり方を変えることに強い抵抗感を示す。新しい道を切り拓いていこうと考えない。それが、昔も今も変わらない農家の姿勢なのだ。

p.43
私が幸運であったのは、そうした既存の農家の固定概念や常識、慣習と無縁であったということだ。農業への新規参入者であったこと、そして農業経験のないど素人であったことが、かえって私に自由を与えてくれた。
どうしたら、売れる商品ができるか。どんな産業分野であれ、ビジネスの基本はそこにある。一般のビジネス分野では、その答えは明らかになっている。「顧客が望むものを提供すること」である。これは、どんなビジネスマンにも浸透していることだ。

p.53
日本の農家は表向きには「儲かる」ということに罪悪感を感じる人が多いようである。「儲け」や「儲かる」という言葉に人前では拒絶反応を示す。特に、農家の仲間うちでは儲け話は御法度だ。まるで収穫量はお天気まかせ、実入りは相場で一か八かの期待をすることが潔い態度であると思っているかのようである。
それは裏を返せば、ビジネス感覚が欠落しているということである。ビジネス感覚を持たない農家は、脱落していくしかないのである。そんな農家ばかりでは、日本の農業の未来は確実にない。それでは困るから、私はこのような本を書いている。
農家も農業生産法人も農業に携わる人は、「農」ではなく「農業」を行うんだという意識を持つ必要があると私は思う。農業をビジネスとしてとらえ、儲けようとしなければいけないのである。

p.60
農業を他の産業分野と同様、ビジネスとして成立させようとするなら、生産にしか関わらないという態度ではダメだ。営業・販売セクションも持ち、どうやったら多く、より高く、より的確に買ってもらえるかを検討し、売り込まなければならない。ビジネスとして農業を考えるなら、それは当然のことだ。

p.109
儲かる組織となるためには、強力なリーダーシップが不可欠だ。リーダーがいるからこそ、組織は強くなれる。
しかし、農家の組織ではそうした強力なリーダーは生まれにくい。農家の間に悪しき横並び意識や間違った平等感覚があるからだ。また、みんなに配慮する形になるので、結論がありきたりの箸にも棒にもかからないところに落ち着きやすい。要するに、大きな変化が期待できないのである。

p.111
いくら生産者が「これは良いものです」と主張しても、買う側-消費者や外食産業など-が「こういうものが欲しかった」と認めてくれなければ、それは本当の意味で「良いもの」とは言えない。

p.122
初めから「儲からなくてもいい」というのでは、努力もしないし、知恵も絞らない。結果的にお客さんにメリットを提供することができないから、人も集まらない。ダメなビジネスの典型である。
他業種の企業が入り込んできているのに、生産の主体である肝心の農家がこのようなていたらくであることに、私は強い危機感を持っている。ぼやーっとしている農家を尻目に、ビジネス経験豊富な異業種がおいしいところ-二百点の部分を根こそぎ持っていかれてしまうのではないか。その心配が現実のものとなりつつある。

p.130
私が目指しているのが、二〇一二年(平成二四年)までにトップリバーの人材育成システムやノウハウをマニュアル化するということである。農業はただ農作物を栽培すればいいのではなく、販売の問題やJAとのつきあいもある。そのあたりもすべて紹介する。野菜だけではなく米や果物づくりなど、たくさんの農家が活用できるマニュアルにして、これを農林水産省経由で全国に配布してもらうのである。

p.154
とくに農家とのつきあいでは「遠慮は敵」である。独立農家になってからも、農業は一人ではできない。隣の畑では今何をやっているのか、情報交換するのも大事な仕事である。

p.164
ビジネスであれ、投資であれ、もっとも大きな収益を享受できるのは、まだ世間が注目する前に目を付けて、いち早く足を踏み入れた者である。そういう意味から言えば、農業はこれからの分野であり、まさに先行者利益をとれる魅力的な仕事だと言えるのではないだろうか。

p.185
トップリバーにも過った幻想を抱いた人間がやって来る。彼らは都会の生活に疲れ、地方の農業ならもっと時間にゆとりを持って仕事ができるにちがいないと思っている。自分の自由にできる時間がたくさんつくれると思っている。数字に追われることのない、心やすらかな生活が送れると思っている。
だが、そんな思い込みは最初の一週間で覆されてしまう。
夏場のレタスの収穫時になると、仕事は朝の四時から始まる。炎天下の太陽の下で長時間、大量のレタスを収穫しなければならない。収穫できる期間は決まっているので、二週間休みなしに働くということも珍しくない。


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