波打ち際の考察

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波屋山人

佐藤優というタブー

2022-04-18 21:00:16 | Weblog
佐高信さんという評論家が『佐藤優というタブー』という本を書いたので、佐藤優さんは名誉棄損で訴えているらしい。
昨年、ネットの記事を興味深く読んだ。

・佐藤優批判はタブーなのか!? 佐高信の著作めぐり1000万円の名誉棄損裁判に
2021年4月29日 エコノミストOnline
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210429/se1/00m/020/001000d

・辛口評論家〟佐高信の反論インタビュー
全文掲載【佐藤優vs.佐高信「名誉毀損バトル」】佐高信「言論人なら法廷でなく『言論』で戦え!」 ZAITEN 2021年07月号
https://www.zaiten.co.jp/article/2021/06/post-192.html


『佐藤優というタブー』(旬報社、2021年)という本は、『創』、『月刊社会民主』、『月刊ロジスティクス・ビジネス』、まぐまぐのメルマガ「佐高信の筆刀両断」の連載などに新しい原稿を加えて再構成した本らしい。
佐藤優さんに関する記述は前半部分に集中している。

遅ればせながら本を入手して流し読みしてみたが、事実がどうなのかはともかく、相変わらず佐高さんの「誹る(そしる)」「貶す(けなす)」といった印象の文体に違和感を覚える。

佐藤優さんのことを「知識の干物」とか「創価の犬」「陰険で暗い」とか「卑しい」と記述。
見下すような表現を使わないと意見が言えないのだろうか。

佐高さんは、「言論人なら法廷ではなく言論で戦え!」と言っているようだが、そうであれば、佐藤優さんも「言論人なら論理的に表現してほしい。唾を吐きかけるような言語表現は暴力や侮辱に相当する。私はそのような態度で対抗したくない」とでも言えばいいのではないだろうか。
言論人であれば、侮辱に侮辱、非難に非難で対抗したりせず、論理の通じない人とは距離をとって裁判所に判断を任せるという選択もありえる。


佐高さんは20年前にはNHKで常連だったみたいだが、安倍政権以降保守的な勢力にパージされたというのは自己評価が高すぎないだろうか。
単純に、むかしは社会で許容されていた暴力的な発言が、現代では通用しなくなったというだけという可能性が高い。
(左派に同調的な職員がこの10年20年で続々と定年退職していることも関係あるのかもしれない。知っている元職員たちもいわゆる左派的な人が多かった)

漫才師だって過激などつき漫才が世の中に受け入れられなくなってきたと見ると、誰も傷つけない漫才を生み出して人々を楽しませている。
佐高さんも自分のスタイルに保守的にならず、周囲を観察して表現を変えてもいいのではないだろうか。
そうしなければ、やがてその暴力的・侮蔑的な表現が跳ね返って来て、佐高さんの世界を狭めてしまう可能性が高い。

おそらく、編集者は佐高さんの原稿をかなり穏健な表現に変えているのだろう。それでも出版するには厳しい状況になってきているのではないだろうか。
そのようなことをうっすらと考える。

タブロイド紙や総会屋系雑誌などでは品のない表現でもある程度許容されるのかもしれないけど、評論家を名乗るのであれば、分析的な説明を端折らないでほしい。
「自分が土下座する人間は容易に他人を土下座させる人間である。よほど人間をバカにしていなければ土下座などできるものではない。」
という一文も説明不足ではないだろうか。因果関係がよくわからない。
「心から謝る姿勢を見せる人は、他人に対しても心から謝ることを強いる。他人を尊重している人は心から謝る姿勢などできない」ということ?
「絶対服従のポーズを見せる人は、他人に対しても絶対服従のポーズを強いる。他人を見下している人は絶対服従のポーズができる」ということ?
なぜ土下座をすることが、人を見下していることにつながるのか、丁寧な説明がない。

私から見れば、むしろ「侮蔑的・攻撃的な表現を多用して人を見下す人は、他人から価値を見出されにくい人である。よほど人を見下していなければ侮蔑的・攻撃的な表現を多用できるものではない」などといった認識の方が理解しやすい。

品性があって思慮深く穏やかな人は、「品がない!」「教養がない!」「バカにしている!」「暴力的だ!」などとあまり口にしない。
「品がない!」「教養がない!」「バカにしている!」「暴力的だ!」と言っている人を見ると、「人に言える立場なのだろうか」と感じることが多い。
ほんとうに教養がある人は、上には上があることを意識し、自分はまだまだだ、などと思っているのではないだろうか。そんなことを考える。
ぜひ、分析的で目を見開かされるような視点がある、知性にあふれた評論を読んでみたい。

敵を設定して罵ってやっつけて問題解決、というような姿勢は、今の時代にはあまり通用しないのではないだろうか。
物事の構造を把握しなければ、問題の解決はむずかしい。
同じような構造を持つ問題であっても敵であれば攻撃、味方であれば擁護、などといった姿勢を見せる人は、問題を解決する力がないと思われてしまうおそれがある。


<参考>
『佐藤優というタブー』佐高信著、旬報社、2021年
P6
 私は二冊も佐藤と共著を出した責任を感じて、ここで佐藤批判を、特に佐藤ファンの読者に届けたい。
 佐藤は端的に言えば“雑学クイズ王”である。確かに博学であり、小さなことまでよく知っている。しかし、それは断片的なものであり、生きてはいない。知識の剥製と言ったらいいか。干物の知識である。

P9
目次
はじめに――佐藤優は雑学クイズ王………3
一――右顧左眄する臆病なオタク、佐藤優………13
佐藤優にとっての三つのタブー………14
佐藤優はソウカの狗………21
(略)
“矮小な思想家”佐藤優が守ろうとした“国益”………36
コウモリ党と創価学会をかばう佐藤優へ………37
(略)

P21
佐藤優はソウカの狗
「喪家の狗」という漢語がある。喪中の家の犬、もしくは宿なし犬のことである。
 やつれて元気のない人をそう呼ぶこともあるが、創価(学会)の犬でもある佐藤優は太ってはいても、やつれてはいない。
 池田大作著とされる『新・人間革命』をそのまま無批判に引き写した『池田大作研究』(朝日新聞出版)を出したり、原発推進の新聞広告に出たり、宿なし犬は誰でも主人にするのかとあきれるほど忙しい。

P32
 自分が土下座する人間は容易に他人を土下座させる人間である。よほど人間をバカにしていなければ土下座などできるものではない。佐藤よ、お前もか! 私は信じられない思い出いっぱいだった。

P51
 陰険で暗いという点で北村と佐藤は共通する。

P83
 二〇年前のこのころは、私はNHKのほぼ常連だった。「日曜討論」などにも何度か出たし、少なくとも忌避されてはいなかった。
 しかし、最近そんな話をすると、
「えっ、サタカさん、NHKに出ていたんですか?」
とビックリされる。
 私の感覚では安倍(晋三)政権になってから、明確にパージされたように思う。


追記
amazonの、30歳ぐらいの人のレビューが興味深かった。佐高信さんも、こういった分析的な記述ができれば、お仲間以外の人にも意見を受け入れてもらえるのではないだろうか。
https://www.amazon.co.jp/%E4%BD%90%E8%97%A4%E5%84%AA%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%BC-%E4%BD%90%E9%AB%98-%E4%BF%A1/dp/4845116812
★★☆☆☆ GaMy
(略)
評者の親や祖父母も左派(というよりガチ左翼)であったが、自民党や公明党などに関する一切合切を批判して、与党議員の人格などを全否定してしまうような傾向があったが、左右どちらにも言えることだが、一度強烈なバイアスを持ってしまうと反対意見を持つ者が全て下劣に見えてしまうものである。佐高氏もそういうバイアスの持ち主であるか、もしくは自身はそうでなくても、そういうバイアスを持った人を喜ばせるために叙述活動をしているのだと思う。こういう評者の考えも佐高氏への否定的なバイアスかもしれないのではあるが。
ある立場からの人格攻撃とセンセーショナルな罵詈雑言は、特定の立場の人には受けるが、それ以外の人にはただの汚い言葉の羅列になる。佐高氏の叙述スタイルは、いわばネット右翼の見るに耐えない言説の、左翼バージョンのようにしか評者には映らなかった。評者はいまだに左派という立場を卒業しきれていないが、それでもこの佐高氏の叙述スタイルは好きにはなれなかった。これは佐高氏のような学生闘争世代の攻撃的な言説に慣れている世代と、29歳の評者のようなソ連崩壊後の世界しか知らない世代のギャップなのだろうか。
(略)
評者は佐高信という人物をよく知らないのであるが、彼は広瀬隆のような左派のトンデモ言論人なのだろうか?
もちろん、左派には沢山のまともな言論人がいるのであるが、正直なところ、本書は佐高氏のオヤジギャグのような口の汚いブーイングが、面白いような、不快なような、微妙な感情を抱いたが、内容は薄っぺらいというかなんというか・・・

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