波打ち際の考察

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波屋山人

現代歳時記

2011-01-23 23:50:36 | Weblog
先日、歳時記を持っていないと書いたけど、かつて買おうとしたことはあった。

金子兜太、黒田杏子、夏石番矢が編集したという『現代歳時記』は買っておきたいと思っていた。
だが、不運なことに発行元の成星出版は2001年に倒産してしまい、たちばな出版から改訂版が出た。

宗教本や占い本で知られる「たちばな出版」の社長である深見東州さんは、新宗教ワールドメイトの教祖でもあり、みすず学苑の学苑長でもある。

深見さんは、金子兜太さんの推薦で現代俳句協会の会員になった。
現代俳句協会名誉会長である金子さんは深見さんを俳人だと認めているのだろうか。

だが、深見さんの句は、俳句を名乗るレベルにあるとは思えない。
雑誌やコンクールに応募してもまず取り上げられることはないだろう。

手元に、2004年3月初版の深見さんの第5句集がある。
その名も、『冬の山、ホワイトチョコをかけました』。
定価1575円。ブックオフで200円。
ハードカバーの全64ページ。
美しいカラー写真と31の句が並んでいる。

風景写真はとても美しいのだが、句は俳句と言えるものではない。
このような調子の句が並ぶ。

ため息がこみ上げる雪雪の山
この頃の激務布団に寝るは稀
寒い寒い壁に隠れて襟立てる
懸念事項あれど幸せ年暮るる
年迎ふ振り返らない悔やまない
初夢や何も見なくて気持ちよし
初春や心底喜べない私
初滑り雪はまぶしく新しく

なんなのだろう、この直接的過ぎる表現は。
状況描写とか印象、比喩に近いのか。
表面的すぎる表現で、芸術的バランスを示せていない。
句の構成要素が乏しい。

おもしろかったよ!
おいしかったよ!
そのように言うのは俳句とは言えない。
詩でも文学でもない。

そこで脱ぐのかよ!
アボカドにはやっぱり醤油だよ!
と言うほうがまだ奥行きのあるバランスを示せる。

句集を出せるレベルになくても、深見さんは自分の経営する会社から何冊も句集を出している。
そのような会社から出ている歳時記を、ぼくは買う気にはならない。

また、深見さんの句集の写真は完全にプロレベルだったので、もし深見さんの作品であれば写真家を名乗られたほうがいいのではないかと思ったけど、写真は写真家の作品だった。

<参考>
http://www.tachibana-inc.co.jp/detail.jsp?goods_id=338
■現代歳時記
金子兜太 著
黒田杏子 著
夏石番矢 
判型:四六、ケース入り
ページ数:762
初版年月日:2001/11/20
ISBN:4-8133-1451-1
税込定価:3,780円

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2 コメント

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深見さんの本格的な句集をお薦めします (某俳人)
2011-03-04 20:25:17
私は俳句を生業としている者です。
深見先生は俳句をはじめ、ポエム、小説、絵画、書などさまざまな芸に秀でておられる方です。オペラや能もされていると聞きますが、実に多芸多才な方と思います。

深見さんの本格的な句集は、第一句集「かげろふ」、第二句集「新秋」に掲載されています。

たとえて言うなら、写真の句集は俳句になじみのない方でもよくわかるような、おやつとかおつまみのような句が選ばれているのではないかと思います。

懐石料理やフランス料理にあたるものは、第一句集や第二句集に掲載されていると思います。

著書のあとがきによると、
深見さんは、18歳から俳句を始められ、三年間毎月投稿しても佳作にしか選ばれず、天地人という一番上の賞には入らなかったそうです。その後、伊藤淳子先生に毎月俳句を習うようになってから、いい句を作れるようになったそうです。伊藤先生は中村汀女先生の直弟子さんだそうです。

第二句集は、伊藤淳子先生が59句を選ばれ、金子兜太先生が159句を選ばれたといいます。

この句集は金子兜太先生が素晴らしいと認められた句だけあって、なかなか味わい深い句が多いですよ。

第一句集の帯に

陽炎に大地の霊抜け井でし
(かげろうにだいちのみたま ぬけいでし)と読むのでしょう。
という句がのっておりますが、なかなかに趣深い句であると思います。

是非、本格的なな句集である「第一句集」や「第二句集」をお読みになったら、良いと思います。
伝統的な句もたくさんのっていますし、きっと、深見さんへの評価が変わると思いますよ。
返信する
第二句集「新秋」の序文で金子兜太先生が高評価 (金子兜太先生に評価されてるようですね)
2011-03-14 14:33:30
http://www.totoami.jp/haiku_shinshu.html




金子兜太

 東州さんが数年間に作られた一〇二一句から、無作為に良いものを、と一五九句選びました。

 東州さんの多忙さはとくと承知のことだが、その日常が実に素直に書きとれていて、好感しました。
 あの元気自在の仁とは思えない、鬱屈振りや弱気、そこに覗く《幼なごころ》などが詩だね。自由に書ける現代俳句の姿ですね。能の話がときどき入るのが、好き味付けになっています。
 東州さんがパーソナリティを務めているラジオ番組に、ゲストで招かれたことがあり、自在な感性の人だという印象を持ちました。だから、外国、特にアジアでも広く活躍しておられるのでしょう。
 その後、絵も描き、唄までやる人と知り、恐れ入りました。多能のエネルギー、羨まし。








  序


伊藤淳子 

 「深見東州俳句集」草稿「新秋」をいくたびも見た。
 初々しく やさしく 浄められた。
 俳句の一つ一つに 生れながらの心がこめられていた。
 その清々しさを大事にしたい。


 この果に何があるやらあたたかし


  平成二十年十一月九日
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