イタリアより

滞在日記

ベネチアのサプライズその2.

2018年01月11日 | ベネチア


前庭にもテーブルが置かれ、この場所でも食事が出来ます


外から見るよりも店内は意外に広くて奥行きがありました。ちょうど小運河に面した小さな窓がある小部屋に通されましたが、そこには既に他の客も居て、ゆっくりと食事を楽しんでおられます。私の為に用意されたらしい席には、テーブルセッティングも完了していてすぐに食前酒が運ばれてきました。あー美味しい。グラスのふちに塗られた塩~いわゆるスノースタイルというのかな~これがなかなかお酒の味を深めます。


食前酒のスピリッツ・カンパーニ・・・というそうな


イタリアでは、これまでも幾度も経験していますが、一品料理の一皿はどれも量がとても多いです。大抵2~3人分をシェアして食べることを想定もしているし、そもそも欧米人と日本人の体格や食の摂取量だって大いに違う。故に量の多さは仕方がないとも思うし、今回もそれを承知の上で・・・


趣のある店内の雰囲気


それでも、ランチだし、無難なところで、このお店の名前が付いたスパゲティを注文しました。ベネチアだから新鮮な魚介類のパスタが出て来るだろうと期待したのですが、目の前に置かれたのは、ポルチーニ茸のスパゲティでした。予測はしたもののその量の多さにもうびっくりです。そしてこのきのこが放つ香りの高さにも驚きました。


店の名前が付けられたスパゲティ


ポルチーニ茸は、イタリアの松茸とも呼ばれる高級食材です。これまでもリゾットなどで口にしたことはありましたが、こんなに豊かな匂いの立つポルチーニは初めてでした。熱々にゆで上げられたスパゲティと芳香な茸、そこにすりおろしたパルミジャーノチーズを掛けたパスタの味は、塩加減もほどよく美味しかったのですが、いかんせん、量が多すぎてやっぱり食べきれない。

半分食べたところで、フォークを持つ私の手は止まってしまいました。食べ物を残すのは本意ではないけれど、作ってくれた人に申し訳ないのだけれど、これ以上はムリだなぁと迷いながらも、箸ならぬフォークを置こうとしたその時、店主が私の席までやってきて、πμξΛΜΗ#βσ~何やら早口のイタリア語で告げたかと思うと、さっと目の前のお皿を取り上げて、そのまま店の奥へ消えてしまったではありませんか。えっー!なにすんねんっ(←心の声)


意外に奥行きのある店内でした


一体何が起こったのか、私が半分しか食べないのを見て、もしかしたら気を悪くした?私はそんなことを思いながらも唖然として彼の後ろ姿を見送りましたが、落ち着いてこの店主の言葉を反芻すると、どうも「私たちのお店のポルチーニ茸は美味しいでしょ?これがないとこのスパゲティの味は半減してしまいます。ちょっと待ってね」と、そんな意味の言葉を掛けてくれたのではないかと思い至りました。

それでも半信半疑で10分ほど待ったでしょうか。果たして、口元に笑みを浮かべながらカメリエーレ(給仕さんのこと)がうやうやしく持って来てくれたのは、ポルチーニ茸が山と盛られた、新たにゆであがったスパゲティでした。私はもう呆然。そしてやっと店主の真意を理解したのでした。


新たに出されたポルチーニ茸山盛りのスパゲティ


スパゲティの余りの多さに音(ね)を上げた私は、半分食べた当たりでせめてポルチーニだけは、と丁寧に拾い上げて口に入れた結果、お皿には麺だけが残ってしまい、それを見た店主の厚意が、このお代わりのお皿だったのです。お腹はもう満腹状態でしたが、さすがにこれは残す訳にはいかなくて、勿論食べきりました。

たった一人の一見客にも、こうして目を配り、心を掛け、気遣いをする、更には自分のお店の料理に愛情を持っている彼の姿に心を打たれたのは言うまでもありません。このレストランのネットの評価にも、種々のサプライズを受けた客の感想が記載されていましたが、自分がこうして体験したことで成る程と頷けました。



でもね・・・でもね、一人分が、あー美味しかった、と完食できるこのくらいの量を最初から出してくれたなら、前菜も注文しセコンドも楽しめるのに・・・そして食べ残すという少々みっともないこともせずに済むのになとちょっと残念に思ったのは贅沢なことかしら。私を思ってのサプライズは本当に本当に嬉しかったのだけれど…

■なお、このレストランは以下です。「Antica Sacrestia」アンティーカ・サクレスティア」。サクレスティア(「聖具室」)の名からも分かる通り、教会と深い縁のあるベネチアの老舗レストランのようです。ご興味のある方は訪ねてみて下さい。
http://www.anticasacrestia.it/index.php

行き方は、確かに迷路のようですが、ベネチアは、カッレ(細い道)にも、通りの名前が出ています。道の角を見上げるとその通りの名前が書かれているので、以下を参考に歩いて下さい。最後の曲がり角では、レストランの名前が掲げられています。夜でもこの看板には灯りが付いているので、迷わずお店に到着できると思います。渡されるメニューの後ろの方のページには日本語でも記載があります。

《行き方》

①ヴァポレットは、「サンザッカッリア」で下船する
②運河を背に、右手方向の細い道「カッレ・デ・レ・ラッセ(Rasse)」(通り名の表示有り)に入る
③真っ直ぐ進むと、通り名「サリツァダ・サン・プロヴォロ(Provolo)」に突き当たる(目の前に八百屋さん)ので左折
④広場にあるホテル「Rio」を左手に、「カッレ・サクレスティア(La Sacrestia)」(表示あり)を進む
⑤写真店があるので、その角を右へ
⑥この通り名も「カッレ・サクレスティア(La Sacrestia)」といいます(表示あり)
⑦次の曲がり角の手前に「←Antica sacrestia」の小さな看板が出ている
⑧この角を左に曲がると、通り名が「カッレ・ラ・コロナ(La corona)」(表示あり)になる
⑨真っ直ぐ進む
⑩小さな橋の手前に「Antica Sacrestia」がある
コメント (7)
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