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春とアブを呼ぶ花

2016-02-23 08:00:07 | 日記
蜜を持たない虫媒花

 雪が融けたばかりの冷たい地面を突き破り、いち早く芽を出し早くも開いた花を
見つけました。
鮮やかな黄色は、色彩の乏しい冬の散歩道では場違いな程に目立つ存在です。

 毎週火曜日はウォーキングの途中で目にした山野草を取り上げていますが、今週は
 キンポウゲ科 フクジュソウ属 フクジュソウ です。

 キンポウゲの仲間は大抵その身に毒を持っています。
フクジュソウも例外ではありません。
芽をフキノトウと間違えて口にしてしまう事故が毎年発生し、数年前には死亡例も
ありました。
 そんな強力な毒を作る力がありながら、おかしな花で普通なら当たり前にある筈の
蜜がありません。
虫に受粉を助けてもらう虫媒花ながら蜜も持たずに、あんたどうやって子孫を残す
つもりなの、不思議です。

手の込んだ仕掛けあれこれ

 まだ寒い頃から活動を始めるのは、日本に500種もいるハナアブの仲間です。
名前はアブですがハエに近い種類。
フクジュソウはこのアブ達を呼び寄せる為にあの手この手を使います。
練りに練ったその作戦は独創的で見事です。

 作戦その1は目に訴える。
花に集まるアブは黄色を、吸血性のアブは青を好むと言われています。
フクジュソウの花は鮮やかな黄色、しかも光を良く反射する花びらが存在を際立たせています。
 作戦その2は花を開く時期。
フクジュソウが黄色の花を咲かせた時、周囲にはオオイヌノフグリの薄青色しかありません。
競争相手の少ない時期に目立つ黄色で虫を集める。
 しかし集めた虫も蜜が無ければすぐに飛び去ってしまいます。

 そこで更なる一手、作戦その3は居心地の良さです。
まるでパラボナアンテナの様な形のこの花は、中心部に日光を集めています。
それでどれ程の効果があるのかだって?
侮ってはいけません。
何と平均で2度から3度、条件が良ければ数度も花びらに囲われた世界の温度を
高めています。
 しかも一度暖まった熱を逃がさない工夫もバッチリ。
花は太陽に合わせ小まめに向きを変えて強い光を集め、陽が陰るとすぐさま閉じて
温度を封じ込めます。
 心地よいスペースで十分に休憩したハナアブは、知らぬ間に花粉をまとって
飛び立ちます。
その後に別のフクジュソウに下りれば受粉は完了、もしも蜜のある他の花に行って
しまっても大丈夫。
体が冷えれば暖かな空間が恋しくなって、アブはまたフクジュソウに舞い降ります。
 こうして蜜を持たない身の上ながら、まんまと虫の力で受粉をするのでした。

 まだ冬と春の、押したり引いたりが続く毎日。
汗ばむ日の次はぶるっと震える風も吹きます。
そんな時にはせめて指先だけでも、と黄色い花のぬくもりにすがりたくもなるもの。
 でも大丈夫、この花が咲けば春はすぐそこ。
コメント
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