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病院や農場で働く金バエ

2016-02-17 07:00:31 | 日記
ウジ虫が傷口を這いまわる
 
 時代が変わると旬も変わる様で、子供の頃初夏だったイチゴの旬が今ではすっかり
冬になってしまいました。
特に年明けから4月までが出荷の最盛期。
確かに寒い時期でも食品スーパーに行くと、甘くておいしそうなイチゴがたくさん
並べられています。
 甘くておいしいと聞くと、我々世代が連想するワードのひとつに「高血糖」があります。
この症状、放置していると血管にダメージを与え血流障害や酸素運搬障害を引き起こし、
最悪の場合は手足の壊死を招いてしまいます。

 時代が変わると病気の治療法も変わる様で、糖尿病などで壊死した患部を外科手術で
切除せずに、虫に食べさせて治す方法があるそうです。
マゴット療法と呼ばれるこの治療法は、ウジに傷口を食べさせた上に患部を洗浄させ、
正常な組織の再生を促す物です。
 ここで用いられるのがヒロズキンバエの幼虫。
聞きなれない名前ですが、普通にブンブン飛んでいるいわゆる金バエです。
とは言え動物の死骸やごみ処理場などにいるウジを使うのではありません。
専用の施設で無菌状態に培養された物が対象です。

 これを患部1平方センチ当たりに5~6匹置き、逃げ出さずしかも呼吸が出来る様に
空間を作って固定します。
すると腐った組織だけを食べ始め、同時に分泌液を出します。
この液が周囲をアルカリ性にして殺菌します。
 その効果は非常に高く、医療現場で問題になっているメチシリン耐性ブドウ球菌等の
耐性菌をも死滅させる程です。
 この治療では禁忌症例は無く副作用もありません。
しかし全ての適用がうまく行くとは限らず、稀に症状の悪化を招いた例もあります。
個人差はあるけれどウジに噛みつかれる痛みもあるし、今のところ価格が高い事もネック
になっています。

 大注目のこの治療法、実はマヤ人は大昔から使っていたそうです。
しかも近年まで戦場では傷口にウジを這わせると治りが早い事が知られてもいました。
戦争映画で傷口からウジが這い出すシーン、あれはもう助からない、の演出ですが本当は
全く逆なのですね。
 大昔からの知恵は1928年にペニシリンが発明されて、前近代的な医療法として忘れ
去られていました。
それが耐性菌や糖尿病の増加した現在、再び脚光を浴びているのです。

イチゴ栽培でも大活躍

 ヒロズキンバエの活躍は医療現場に留まりません。
何とミツバチに代わってイチゴの人工授粉でも使われているのです。
ここ数年ミツバチの異常消滅が度々報道されています。
個体数の減少で価格が高騰したミツバチの代替えとしてヒロズキンバエを使ってみると、
ミツバチよりも受粉率が高く、何より人を刺さないと良いことずくめ。
 ただし寿命が1週間程しか無いので、今のところは受粉期間が短いイチゴなどで用いられています。
この様に生物本来の力を借りて我々の生活を便利にする知恵は、間違いなく今後
大きく発展するでしょう。
 おいしいイチゴ作りに新しい方法を取り入れるのは素晴らしい話です。
ただ残念なのは正直に「金バエが育てたイチゴ」と謳っては恐らく全く売れない事。 

コメント
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