対岸に船が着き、車に乗り込む。
来た時は夜で気づかなかったいろいろな物が目に入ってくる。
走っている内に、緑は少なくなり、はげ山のような丘に囲まれてきた。
その路上で生活している人々を見かける。
東京で見掛けるホームレスとは違う。
家族で外で生活を営んでいると言った方が正しい表現かもしれない。
桶に汲んできた水を前に頭から石鹸で洗っている人を見た。
裸足で歩いている人も多い。
都心部に近づくと、
路上には飲み物を売るスタンドやTシャツや小物を売っている露天商もある。
いよいよエアウェイズホテルが見えてきた。
最初にゲートがあり、警備の人が両側と正面に立っている。
ゲートが開けられ、坂道をメインタワーへと進む。
入口にはライフルを持つ人が立っていて、ベルボーイやドアマン、警備員、
それぞれ違った制服を着ている。
内部は美術館のような、びっくりするほどスタイリッシュなホテルだ。
チェックインを済ませて部屋へと案内してもらう。
いくつかの棟に分かれているが、私たちはバスタブなしの部屋を選んだ。
バス付きの部屋、最も豪華な棟はフロアごとにバトラーが待機してサービスしている。
部屋も整然として木調とシルバー系、青銅色に色彩が整えられている。
バルコニーがあり、目の前には椰子が茂っている。
部屋からプール、ダイニングルームに至るまでにいくつものカードキーを通さなければいけない。
エレベーターもしかり。
このセキュリティーの厳重さが安心などころか、
先ほどまで滞在していたロロアタ島ののんびりとした様子とは余りにかけ離れていて、
「ここまでしなければならないほど、ここは危険なのか。」と返って不安になる。
またカードキーの調子が悪く、グリーンのライトがつかず赤いライトが点滅、
ドアが開かないこともあった。
しかしとにかく、掃除の人、巡回する人、ハウスキーパー、警備員、
大勢の人の目が絶えず行き届いているので、ドアが開けられずに戸惑っていると、
誰かしらが飛んできて開けてくれる。
歩いていても皆、挨拶や「何か捜しています?」と声を掛けてくれる。
ここで働いている人達は皆、表情が生き生きとしている。
自分の仕事に誇りを持ち、楽しんでいることがわかる。
チェックインの際にスパの15分間のフットマッサージのサービス券が入っていたので、
ホテルの中を見学しつつ、スパの前に来たのですぐにできるかと聞いてみる。
暗くアロマオイルの香りのするスパロビーに通され、
フットマッサージのコーナーへと案内される。
蒸しタオルで足を清めた後、アロマオイルでマッサージ。
左足の時は気持ちが落ち着かなかったせいか、リラックスできなかったが、
右足の時にはうとうとしてしまった。
ソフトで優雅な雰囲気のフットマッサージだった。
部屋に戻ると水着に着替えてプールへと向かう。
時間は4時。
まだ陽が高く、じりじりと肌が焦げるようだ。
ダイニングルーム、バースペースに隣接したプール。
泳ぐ人はいない。
周りを見るとお客はすべて白人だ。
フランス語やドイツ語、英語が聴こえてくる。
働く人は現地の人、お客はすべて欧米の人種。
東洋人は島でも見掛けなかったが、ここにも全くいない。
先ほどの街中の様子と余りに別世界のホテルの内部に何か戸惑いを覚える。
Rと6時にフロント前で待ち合わせをしていたので、
シャワーを浴びに部屋へ戻った。
三人でその日の晩はホテルで夕食を食べることになる。
高台の最上階にあるレストランからは背後にある空港の夜景が見える。
風が通り涼しい。
Rはポークソテー、夫はラム、私はバナナの皮で蒸した白身魚に
ライスとココナッツミルクのソースが添えられたメインディッシュを選んだ。
メインを頼むとビュッフェも取ることができる。
オードブル、ビーフシチュー、デザート、フルーツ、チーズなどが豊富に並べられている。
ビールは現地のSP。
オーダーする時にRが「ちょっとすいません!」と言ったので二人で笑ってしまった。
私達と話していてつい日本語が出てしまったようだ。
夫とRは煙草を吸うので、食事の後はバーコーナーに移る。
「モヒートを頼んでみよう。」ということになり、オーダーするが、
バーテンダーもわからないとのことで、それぞれウィスキーや白ワインを注文。
働いているスタッフを見ながら「この国の女の子はみんな、とっても可愛いね。」
とRに言うと、実は良く知らないと言う。
家が厳しくて在学中は勉強に追われ、日本に留学してから初めて彼女ができたそうだ。
一昨年、選挙に出たとは聞いていたが、
パプアニューギニアに100名余りいる国会議員に立候補したそうだ。
後、もう少しのところで落選してしまったが、費用が多額に掛かったこと、
日本で仕事も持っているので、選挙運動に充分な時間が取れなかったこと、
また現地と密接な関係のある候補者が有利だったことなどを話してくれた。
日本や海外との接点も多く持っているので国のために貢献できるという自負もあり、
また選挙に出てみたいという気持ちもあるが、諸事情を考えると悩みどころだそうだ。
「さて明日は何をしたい?」とRに聞かれる。
「船を借りて無人島に行き、バーベキューをするのはどう?」と言われたが、
「海はロロアタで行ってきたから、街の人の生活を見たり、首都の観光をしたい。」と夫。
「わかった。それなら国会議事堂を見て、その後、僕の行っていたパプアニューギニア大学を見学、
そこには植物園、動物園もあるし。その後で知り合いの家でこの国、独特の熱い石を使った料理、
食べるところだけでなく、作るとことから一緒にやってみない?
後、現地の野菜市場、スーパーマーケットなんかも見よう。」
「R、ありがとう。そういうことをしたいと思っていた。
でも国会議事堂はいいよ。行かない方がいいって外務省のページにもあったし。
植物園も危ないって書いてあったような・・・」と私。
R「ぜんぜん大丈夫だよ。」
私「それはRがこの国の人だからでしょ?」
R「一緒にいれば僕だって同じ目に合うよ。自分だって危ない思いはしたくないから、
そんなところには連れて行かないよ。」
かつては大使館でも働いていたR、
そこまで言うなら、もう大舟に乗ったつもりで付いていくことにした。
来た時は夜で気づかなかったいろいろな物が目に入ってくる。
走っている内に、緑は少なくなり、はげ山のような丘に囲まれてきた。
その路上で生活している人々を見かける。
東京で見掛けるホームレスとは違う。
家族で外で生活を営んでいると言った方が正しい表現かもしれない。
桶に汲んできた水を前に頭から石鹸で洗っている人を見た。
裸足で歩いている人も多い。
都心部に近づくと、
路上には飲み物を売るスタンドやTシャツや小物を売っている露天商もある。
いよいよエアウェイズホテルが見えてきた。
最初にゲートがあり、警備の人が両側と正面に立っている。
ゲートが開けられ、坂道をメインタワーへと進む。
入口にはライフルを持つ人が立っていて、ベルボーイやドアマン、警備員、
それぞれ違った制服を着ている。
内部は美術館のような、びっくりするほどスタイリッシュなホテルだ。
チェックインを済ませて部屋へと案内してもらう。
いくつかの棟に分かれているが、私たちはバスタブなしの部屋を選んだ。
バス付きの部屋、最も豪華な棟はフロアごとにバトラーが待機してサービスしている。
部屋も整然として木調とシルバー系、青銅色に色彩が整えられている。
バルコニーがあり、目の前には椰子が茂っている。
部屋からプール、ダイニングルームに至るまでにいくつものカードキーを通さなければいけない。
エレベーターもしかり。
このセキュリティーの厳重さが安心などころか、
先ほどまで滞在していたロロアタ島ののんびりとした様子とは余りにかけ離れていて、
「ここまでしなければならないほど、ここは危険なのか。」と返って不安になる。
またカードキーの調子が悪く、グリーンのライトがつかず赤いライトが点滅、
ドアが開かないこともあった。
しかしとにかく、掃除の人、巡回する人、ハウスキーパー、警備員、
大勢の人の目が絶えず行き届いているので、ドアが開けられずに戸惑っていると、
誰かしらが飛んできて開けてくれる。
歩いていても皆、挨拶や「何か捜しています?」と声を掛けてくれる。
ここで働いている人達は皆、表情が生き生きとしている。
自分の仕事に誇りを持ち、楽しんでいることがわかる。
チェックインの際にスパの15分間のフットマッサージのサービス券が入っていたので、
ホテルの中を見学しつつ、スパの前に来たのですぐにできるかと聞いてみる。
暗くアロマオイルの香りのするスパロビーに通され、
フットマッサージのコーナーへと案内される。
蒸しタオルで足を清めた後、アロマオイルでマッサージ。
左足の時は気持ちが落ち着かなかったせいか、リラックスできなかったが、
右足の時にはうとうとしてしまった。
ソフトで優雅な雰囲気のフットマッサージだった。
部屋に戻ると水着に着替えてプールへと向かう。
時間は4時。
まだ陽が高く、じりじりと肌が焦げるようだ。
ダイニングルーム、バースペースに隣接したプール。
泳ぐ人はいない。
周りを見るとお客はすべて白人だ。
フランス語やドイツ語、英語が聴こえてくる。
働く人は現地の人、お客はすべて欧米の人種。
東洋人は島でも見掛けなかったが、ここにも全くいない。
先ほどの街中の様子と余りに別世界のホテルの内部に何か戸惑いを覚える。
Rと6時にフロント前で待ち合わせをしていたので、
シャワーを浴びに部屋へ戻った。
三人でその日の晩はホテルで夕食を食べることになる。
高台の最上階にあるレストランからは背後にある空港の夜景が見える。
風が通り涼しい。
Rはポークソテー、夫はラム、私はバナナの皮で蒸した白身魚に
ライスとココナッツミルクのソースが添えられたメインディッシュを選んだ。
メインを頼むとビュッフェも取ることができる。
オードブル、ビーフシチュー、デザート、フルーツ、チーズなどが豊富に並べられている。
ビールは現地のSP。
オーダーする時にRが「ちょっとすいません!」と言ったので二人で笑ってしまった。
私達と話していてつい日本語が出てしまったようだ。
夫とRは煙草を吸うので、食事の後はバーコーナーに移る。
「モヒートを頼んでみよう。」ということになり、オーダーするが、
バーテンダーもわからないとのことで、それぞれウィスキーや白ワインを注文。
働いているスタッフを見ながら「この国の女の子はみんな、とっても可愛いね。」
とRに言うと、実は良く知らないと言う。
家が厳しくて在学中は勉強に追われ、日本に留学してから初めて彼女ができたそうだ。
一昨年、選挙に出たとは聞いていたが、
パプアニューギニアに100名余りいる国会議員に立候補したそうだ。
後、もう少しのところで落選してしまったが、費用が多額に掛かったこと、
日本で仕事も持っているので、選挙運動に充分な時間が取れなかったこと、
また現地と密接な関係のある候補者が有利だったことなどを話してくれた。
日本や海外との接点も多く持っているので国のために貢献できるという自負もあり、
また選挙に出てみたいという気持ちもあるが、諸事情を考えると悩みどころだそうだ。
「さて明日は何をしたい?」とRに聞かれる。
「船を借りて無人島に行き、バーベキューをするのはどう?」と言われたが、
「海はロロアタで行ってきたから、街の人の生活を見たり、首都の観光をしたい。」と夫。
「わかった。それなら国会議事堂を見て、その後、僕の行っていたパプアニューギニア大学を見学、
そこには植物園、動物園もあるし。その後で知り合いの家でこの国、独特の熱い石を使った料理、
食べるところだけでなく、作るとことから一緒にやってみない?
後、現地の野菜市場、スーパーマーケットなんかも見よう。」
「R、ありがとう。そういうことをしたいと思っていた。
でも国会議事堂はいいよ。行かない方がいいって外務省のページにもあったし。
植物園も危ないって書いてあったような・・・」と私。
R「ぜんぜん大丈夫だよ。」
私「それはRがこの国の人だからでしょ?」
R「一緒にいれば僕だって同じ目に合うよ。自分だって危ない思いはしたくないから、
そんなところには連れて行かないよ。」
かつては大使館でも働いていたR、
そこまで言うなら、もう大舟に乗ったつもりで付いていくことにした。