Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

ロロアタ島へ

2011-08-19 21:17:29 | パプアニューギニアへの旅
早朝、4時40分にパプアニューギニア、ポートモレスビー、ジャクソン空港に着くと
旅行社のKさんがにこやかに出迎えてくれる。
そしてすぐ近くにいたロロアタ島からの出迎えのドライバーに引き継いでくれた。

真っ暗な中、車はどんどん進んでいく。
道路の状態は穴や路肩に窪みがあったりでかなり悪いが、途中から舗装もなくなった。
私は猪、あるいは野豚の群れを見た。
暗闇の中、時々、歩いている人がいる。
こんな時間にどこに何をしに行くのだろう。

最初は島のホテルと航空券だけをお願いしようと思ったが、
ポートモレスビーのホテルも合わせて申し込んだことで、
個人旅行でもパッケージという形になり、滞在中の行動にサポートが受けられる。
緊急時の連絡先というのも設定されている。
もしKさんの誘導なしに、この車に二人で乗っていたら、
「これって本物の送迎の車かな?」と不安になったかもしれない。
実際、ベトナムでは「偽送迎に注意」という案内も出ていた。

鉄の柵を開けて私有地へと車は入って行った。
そしてその先には船着き場がある。
まだ眠気が覚めないまま、ボートに乗り込むと穏やかな海を進んでいく。
客は夫と私だけ。
だんだんと夜が明け始めた。
海に朝陽が昇って行く間、空は様々な表情を見せる。
漆黒から墨色、黄、オレンジへと変化していく。

ロロアタ島の桟橋へと船は着く。
ホテルの人が荷物を持ってくれて桟橋を歩き小さなアーチをくぐる。

フロント、ダイニングスペース、屋根はあるが壁はなく、ほとんどオープンエアに近い。
待つことなく、すぐ近くの部屋に案内してくれた。
二部屋が一つのコテージになり、海に面したデッキがある。
部屋の三面に窓があり、ドアを開ければ目の前は海。
ベッドとシャワー、小さな洗面所とトイレが付いている簡素な部屋。
電話もテレビも時計もない。
アメニティーはバスタオルのみ。シャンプー、石鹸も持参。
虫が多いと聞いて蚊取り線香も持ってきたが、殺虫剤が部屋に置いてある。

エアコンと冷蔵庫付きの部屋とこの部屋の選択肢があり迷ったが、
設備のある部屋は丘の上で離れていると聞き、近い方のこの部屋にしたが正解だった。
ほどなく7時の朝食が始まる。
コンティネンタルなブレークファスト。
4つの卵料理、フレンチトーストの中から選ぶことができる。

海が見えて風が抜ける空間が心地良い。
午後に近くにあるライオン島にシュノーケリングに連れて行ってもらう約束をして、
午前中は部屋のデッキや島内の涼しい場所を見つけて風に吹かれながら、
読書をしたりして過ごす。

この日は日曜日。
日帰りでこの島に観光に来た人達もいて、ビュッフェスタイルのランチは賑わっている。
蟹や海老の料理、パパイヤやスイカ、林檎、南の島らしいフルーツが並んでいる。
同席したのは午前中のダイビングから戻って来た人達だった。

午後になると風が強くなり、空は曇って来た。
海の色がどんどん暗くなってくる。
部屋を離れるので、フロントにセイフティーを使わせてし欲しいと伝えると、
「ありません。でも部屋に鍵を掛けておけば誰も入らないから問題ない。」

マスクとフィンを借りてボートに乗せてもらうが、
海が荒れてまるでジェットコースターのようだ。
水をザブザブとかぶる。
ライオン島に上陸したものの周りはサンゴ礁や尖った岩や石だらけ。
砂浜はない。
泳げる深さになるまでしばらく海中を歩き、シュノ―ケリングを始めるが、
海が荒れて水が濁っているので、小さな魚がやっと何尾か見えるのみ。
潮の流れが速くなってきたので、戻ることにした。

来た時よりもずっと潮流が早くなり、歩こうにも転んでしまいそう。
泳げるだけの深さはない。
途中で手をついてしまい、動けなくなる。
先にいっていた夫が「今、戻ってあげるから。」と言うと、
ボートを操って連れてきてくれた人が「僕の方が近いから行ってあげる。」
素足のままでザクザク海に入ってくるので「足痛いでしょ。来なくていいよ。」
と叫ぶと「大丈夫。慣れてるから。」と言いながらやって来て、
にっこり笑って手を差し伸べてくれた。
手を引いてもらいながら、岸に戻る。
ちょっと情けないなぁ・・・

帰りはさらに海は荒れて「この波に向かって縦に進むのか?」とぎょっとすることもあった。
日本やハワイやグアム辺りだったら「今日のシュノ―ケリングは天候のため中止です。」
となるところだろう。
手足にいくつか擦り傷ができている。

夕方、島の山頂に登ってサンセットを見たかったのだが、風は強くなり、
気温もどんどん下がっているので諦めた。

夜はまるで高原にいるような涼しさになってしまったので、
虫除けのために用意してきた長袖、踝までのスパッツが防寒用に役だった。
足や首周りには蚊よけのスプレーをして夕食に行く。

同席したのはオーストリア人でもう何回この島に来たのか数えられないほどだというダイバー、
仕事でポートモレスビーに来るとその都度、この島に寄っているというドイツ人。
そこに日本語が少し話せる島のダイビングインストラクターが加わった。

日本のダイバー人口は世界で2番目と聞いた。
またPNGを訪れる日本の観光客は「ボーンコレクター」が多いと言う。
「ボーンコレクター」、最初、映画のタイトルの方が頭に浮かんでしまったが、
つまり「遺骨収集」ということだ。
オーストラリア人のダイバーも「潜っていると日本のマークの付いた潜水艦、
飛行機や鉄兜を見かけるよ。」

「日本は地震でたいへんだったね。」と言われたので、
「オーストラリアには地震がなくていいわね。」と答えると、
「いや、こっちは山火事がある。」

夕食は酸味のあるスープと白身の魚、ジンジャー風味のココナッツソースにトマトを散らした物。
デザートにはフルーツとココナッツアイス、レモンパイが出た。
コーヒーと紅茶はフロント前に用意されていていつも飲めるようになっている。
ビールは現地の物をいくつか試した結果、SPというのが一番旨いと周りの人とも意見が一致した。
食事が美味しく、働いている人も皆、感じが良くて、設備が何もない分、
何かしなければと追われることもなく、ほんとうにのんびりできた。

翌朝、朝食を食べようとダイニングに向かう途中、
従業員達が行列して船着き場へと向かっていくのに会った。
皆、今朝までの勤務を終えて本土へ戻って行くようだ。
何人かが親しげに声を掛けてくれるのが嬉しい。

従業員には子連れで働いている人もいる。
島には放し飼いになったクジャクやワラビーがいる。
15歳になるロッジの飼い猫が人懐っこくて私に寄ってくる。

午前中、島の頂上へと登ってみる。
早朝は曇っていたが、途中からどんどん晴れてきて、海の色が澄み切ったブルーで美しい。
島を一周する一時間弱のコースもあったが、そのまま下へと降りる。
チェックアウトは9時半。
昼食後、ボートで本土へ、そこからポートモレスビーのホテルへと送ってもらうことになっていたので、
それまで島内のいろいろな場所で寛ぐ。
ここはほんとうに時間がゆったりと流れていく。
デッキチェアに横になり、空を見上げると木々の緑の間に青空が広がっている。
陽射しは強いが、日陰は涼しくて風もあり心地良い。

この日は月曜日。
島を訪れる人もなく、本土から企業の合宿で来ているという8人組と私達のみ。
島内は一斉に大掃除が始まっている。

ランチはPNG風のミネストローネスープと
海老料理にココナッツの皮で包まれたライスが添えられている。
パンは自家製。

朝、島に戻って来たというオーストラリア出身のこのロッジのオーナーと一緒に食事をした。
35年前にここをダイバー用にと始めたそうだ。
子供が5人いるので教育のこともあり、島と本土を行ったり来たりの生活らしい。
「ホテルを経営するのは何がたいへん?」なんて質問をしてしまった。
「メインテナンス、設備を維持して新しい物も取り入れていくことかな。」
としばらく考えてから答えてくれた。
家庭的な雰囲気、島の心地良さ、食事が美味しいこと、スタッフのフレンドリーなこと、
また訪れたいと思っていると伝えた。

島を離れる時間が近付いてきた。
オーナーとスタッフ達にお礼を言って船着き場へと向かう。
来た時は寝惚けていてぼんやりと眺めてしまった景色。
帰りの船ではしっかりとこの大自然の美しさを目に焼きつけようと思いながら、
ボートに揺られていた。