Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

金子三勇士@シャネルネクサスホール6/27

2009-06-28 00:43:43 | ピアニスト 金子三勇士
金子三勇士、銀座シャネルの3回目のコンサート。
今までは13:30からのマチネだったが、今日は、16:00からのソワレ。

ピアノの調律が開演寸前まで続いた。
今日は蒸し暑い一日。
ピアノの状態を急激な温度と湿度の変化に対応させようとしている、
その時はそんなふうに思ったが、今、振り返ってみると、
これは後半のサプライズに向けての入念な下準備をしていたのだった。

前半は短い曲にその都度、三勇士のMCが入る。

ショパン ワルツ第1番変ホ長調「華麗なる大円舞曲」作品18
ショパン 夜想曲第12番ト長調作品37-2
ショパン マズルカ第23番ニ長調作品33-2
ショパン 前奏曲第15番変ニ長調「雨だれ」作品28-15
ショパン 練習曲第5番変ト長調「黒鍵」作品10-5

休憩の際、周囲の知人達と「どれが良かった?」
などと会話をする。
マズルカも楽しげな雰囲気が彼に合っている、
「雨だれ」も季節感があって旬だ、
「黒鍵」迫力があった、夜想曲が好きなどの感想。

休憩後、金子三勇士、ジャケットを脱いで登場。
「このような服装で恐縮です。
次の曲の演奏が30分ほど掛かりますので。」
とのコメントに、会場がどよめく。

いったいどのような曲を聴かせてくれるのだろうか、と期待が膨らむ。
演奏が始まってみて、前半に弾いた曲は、
彼のウォーミングアップだったと知ることになる。

リスト ピアノ・ソナタ ロ短調

フランツ・リストが作曲した唯一のピアノソナタ。
ロベルト・シューマンに捧げられた曲。
歴史上、この曲ほど賛否両論、論争を巻き起こした曲はないとさえ、
言われている曲に金子三勇士は手をつけた。

やさしく愛の言葉を囁いたかと思うと、冷たく突き放す。
本性を垣間見た次の瞬間、またしっかりとガードで固める。

ある時は激しく、そして密やかに、
人間的な姿を捉えたかと錯覚させ、
かと思うと悪魔のように恐ろしい様相で威嚇する。
その後、神聖で近寄りがたく形を変えていき、
甘美な調べから厳かな終焉へと導かれる。

30分とは思えぬ時間が、あっという間に過ぎた。

金子三勇士、とうとう本来の姿を現した。
"True to myself"、「僕はこういうふうに生きていく」
と意思表示、カードを切ってきた。
そして、思いっきり自分の胸の内を明らかにして、
観客に突きつけた。

聴いていて涙が。
ほんとうに美しいもの、真の芸術に今、自分が触れている。
金子三勇士が殻を破る瞬間に立ち会っている。

演奏終了後、拍手が鳴り止まない。
会場の人々も興奮と感動に包まれている。
三勇士も大きな賭けに出て、力を出し切り、
確かな手応えを感じ、満足している様子がわかる。

演奏後の金子三勇士はまだ曲の中にいた。
エリック・ベネイが彼に言った言葉、"Continued success!"
と告げると、"Yes!"と真顔で応えてくれ、
そして、ちょっとはにかんだ表情で笑顔を見せた。

金子三勇士@シャネルネクサスホール5/30
http://blog.goo.ne.jp/ak-tebf/d/20090531
クラシックピアニストMK
http://blog.goo.ne.jp/ak-tebf/d/20081120