ウクライナ関係の本が図書館新刊コーナーに紹介されるとつい借りてしまう。
そして、読めば読むほど、わかっていないということがわかる。
国の境界線がコロコロ変わるヨーロッパの歴史を生きてきたヨーロッパの国々の人たちの心模様は島国日本の私にわかるはずがない。
先日読んだ本は、ポーランド日本語学校教頭というお仕事をされている坂本龍太郎さんという方のボランティア奮闘記であった。
彼は、ウクライナ避難民を受け入れるボランティアからスタートし、出身地長野のすばらしい協力を得て寄付金を集め、個人でウクライナの人たちのために必要な物資を購入し、届けるという偉業に挑戦されている方。
ポーランドでウクライナ難民支援をしている日本人なんて彼一人。第1次世界大戦で、ユダヤ人のためにビザを書きまくった千畝さんの名に、に恥じないように、そして、日本を代表している唯一の日本人という強い意識をもって、損得抜きで、この1年、ウクライナの人たちが本当に必要な支援を本当に必要とする人たちにちゃんと届くように、一個人ですべてを手配しながら、今も走り続けていらっる。頭の下がる思いばかりでこの本を読んだ。
ウクライナという国は、ちゃんと届かない国であるということを初めて知った。
どうも、やっぱり、ウクライナでは今も賄賂が蔓延しているらしいということがわかって、ショックだった。進攻開始以前から、ずっと、賄賂や汚職まみれの国であったようで、海外から送られてくる物資やユニセフなどの基金も末端までは届いていなさそう・・・らしい。
国家が国家として成り立つためには、いかに賄賂まみれにならないか・・・なのかもしれない。
日本だって、利権がらみな政策だらけに見えないこともない。それでも、市役所で働いていて思う。末端の自治体の職員は本当にきれいだ。たまに、収賄報道もなされるけれど、大方、ギャンブルがらみの職員が絡んでいる。
少なくとも、自治体職員の中で賄賂なんてない。しかし、中央は不透明だ。未来の子どもたちが生きやすい社会を本気で願ってこの施策をやっているのだろうかとお金の使い方が心配になることもしばしばである。
でも、末端の自治体職員がきれいなだけでも、国としてはきれいな方なのかもしれない。おそらく、末端まで賄賂づくしだと救われない。
昔は、職員になるために田んぼを売ったなんて話を聞いたことがあるけれど。
龍太郎さんは、一個人で寄付金を管理し、ウクライナで負傷したため兵士を断念したけれど、ウクライナのために動きたいというウクライナの男性が、危険な現場を渡り歩いて聞き集めた支援必要物資リストをその妹を介して受け取り、必要な物資をポーランドで買い集め、トラックに詰め、その男性に受け渡し、ウクライナの末端に直接届けるような支援をされている。
危険を顧みず、自分が直接闘えないなら、支援物資コーディネーターという闘い方を選んだその男性も、ついに、弾丸に撃たれ亡くなった。
今まで日本からいただいた寄付金の総額は5,000万円とのこと。
なぜ、日本人がそこまでするの?とよく尋ねられるとのこと。
誰だって、目の前に死にそうな人がいたら、自然と手が出るでしょう。そんな感じ・・・。
そりゃ、1回こっきりならするだろう。
でも、スケールが違う。
この1年ずっと。
そして、寄付金集めに奔走し、くすねる人の壁を乗り越えるために、全て、個人の信頼の元に本当に必要な支援物資を本当に必要な弱者に送り届け続けている。時には、私財もなげうって。
彼の元々の人間性が、日本代表としての強い意志の元に、終わりの見えないウクライナの弱者と呼ばれる人たちへの支援を継続させている。
この本の印税も全て寄付になるという。
やば。私は図書館で借りて読んだ身。ちゃんと本屋さんで買わなくては。
坂本さんは、こう言っていた。
当初、ポーランドの避難民受け入れは驚くほど良心的に見えた。しかし、戦争が長引くにつれて変化している。そもそも、長期的な受け入れではなく、通過点としての避難所という立ち位置で、長期避難に向けての体制は整っていない。アパートも借りることはできない。
私もテレビのニュースで、ポーランドってすごいな。あんなにばんばん避難民を受け入れてすごい。でも、大丈夫?って感じていた。
ポーランドは南の国からの避難民は一切受け入れないという国で有名だったそう。なのに、対ウクライナに対しては、正反対の対応。
な~~ぜ?
それは、もちろん、ロシアとの緩衝地帯であるウクライナが負けたら、直でロシアの脅威に向き合わないといけなくなるから・・・だそう。
坂本さんは、この1年、避難所支援からより本物にウクライナ支援に向けて何ができるかを模索され、ウクライナに取り残されて身動きのできない弱者への支援にシフトされてきた。
お菓子や食料の支援から、今は発電機やパソコンなどの物資支援になっているそう。彼のもとに、直接、依頼が来るという。
一番必要なものは、発電機か・・・。
坂本さんの心のどまんなかには、千畝さんの心が宿っているよう。
心を洗われる1冊であった。