世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●どうするンだよ! 民主党政権よりも4.1%も下がった実質賃金

2018年02月19日 | 日記

 

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●どうするンだよ! 民主党政権よりも4.1%も下がった実質賃金

一般の国民にとって、名目賃金などと云うものは、ほとんど意味をなさない。各個人や各家庭の懐具合の実感に影響するのは、実質賃金である。その意味で、以下のように、古賀茂明氏が痛烈に安倍政権の経済政策に鉄槌を下すのには、それ相当の理由がある。なにも、“I am not Abe”と報道ステーション降板日にささやかな抵抗としてフリップを掲げ、目の敵にされている意趣返し、そういうものではないのはたしかだ。

経団連を味方に引き入れるためには、円安誘導金融政策は当たり前と思い込んでいる安倍政権は、結果的に、内需関連商品の価格を狙い撃ちするように物価を押し上げた。仮に、この状況で、消費者物価上昇率2%を実現していたら、実質賃金は5~6%下がっていたと考えられる。つまり、国民は、泣きっ面のハチと云う惨状だったのだから、黒田日銀総裁の再任で、消費者物価上昇率2%が永遠に実現しないことを、ただ祈るばかりである。

古賀氏は元経産官僚らしく、日本経済の弱点を「質の良いものを安く」から「良いもの、他人と違ったものを一円でも高く」と云う経営哲学の転換を求めている。その元凶のシンボルが、経団連であることは言うまでもない。20世紀の既得権勢力と言ってもいいだろう。無論、それらの企業や団体に天下る経産省の官僚らの問題もあるが、彼らの多くはフレキシブル対応可能な人材だけに、悪魔にもなるし、天使にもなる。それが、官僚と云うものだ。官僚に、真の仕事をさせたければ、政権が、真に国家を思う場合のみである。

昨日のコラムで取り上げた「働き方改革」も、欧州先進諸国が苦悩して構築した(苦悩しつつある)先進国型経済モデルだが、我が国が、このモデルを、つまみ食いしても、EUの方向に向かうことは、ほとんど不可能だ。世界一のアメリカだって先進諸国ではないかという意見もあるが、アメリカ、意図的に移民を導入することで、餓えた国民を創造しているのだから、常に発展途上国なのである。アメリカの場合は、戦略的に、軍産複合体のような後進的体質と、GoogleやApple、Facebookのような先進的体質とゴールドマンサックスのような金融と云う体質が複合的に存在している、両睨みな国家体質だ。

我が国の場合の現状は、後進的な経団連的な製造業が、一時の成功体験を背にして、政治圧力勢力として実存しつづけ、政治を牛耳る構造から脱却できていない。折りしもオリンピックたけなわだが、日本の経済界も政界も、ご都合主義の“愛国心”を振りかざし、知的ゲームをする気は、さらさらないようだ。結局、中間層の分解で、民主主義が劣化するに任せていた結果、国政選挙に勝つために、票田を持つことにイコールになって、政策が立案実行される。票田としては、経団連、公明党、連合などが、その好例だが、国民個々から、限りなく遠いところで、政治は動く結果になっている。

今国会の「働き方改革」も安倍自民党自体の意志が不明確だ。早い話が、製造業競争で、中国や韓国、アジアに勝つには、安い労働力が必要だ。曲がりになりにも先進経済国である日本が、とても21世紀とは思えない泥んこレスリングを彼らとに興じようとしているのだから、あきれる。潜在的に30億万人以上とみられるアジア全体の労働力と、1億チョッとの人口で、少子高齢化現象の激しい日本が、低賃金で太刀打ちしようと云うのは、あまりに無謀だ。あまりにも無策すぎる。仮に、安全に移民制度が導入できたとしても、日本人同等の数の移民を受け入れても2億人強である。30億の民と、競い合うジャンルは異にすべきと考えることは、しごく妥当だ。

その解は筆者も、他の人々も正解は持っていない。ただ、明治の産業革命を賛美するような精神では、到底考えつかない領域の発想がないと、その正解の影すらも見えないだろう。大雑把に言えば、“付加価値の経済追求”だ。歴史的にひも解いていけば、創造的であるもの、日本的文化の研ぎ澄まし、豊かな四季と自然。禅、茶道、華道、演芸、歌舞伎、漫画アニメ、ゲーム、ソフト、創薬‥等。これら発展途上のアジア人が真似したくても一朝一夕では到達できない分野に特化した、極東であり、辺境であっても付加価値の高い国家を作ることの方が建設的に思える。少なくとも、製造業はアジアに開放せよ(笑)。そして、経常収支の帳尻は、製造業の輸出で稼ぐと云う、骨折り損な政治をやめることである。


≪古賀茂明
「安倍政権では民主党政権下の実質賃金を上回れない現実を報じないメディア」〈dot.〉

 2月7日に厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(毎勤統計)の速報値によれば、2017年の実質賃金は、前年比0.2%の減少だった。「実質賃金2年ぶりマイナス」という見出しを付ける新聞がほとんどだったが、これは明らかに安倍政権を忖度したものだ。2年ぶりマイナスと言えば、マイナスになったのが珍しく2015年と昨年だけがマイナスになったかのような印象を受ける。
 しかし、安倍政権の5年間で、実質賃金がプラスになったのは一昨年1回だけ。あとは全部マイナス。しかも下げ幅は極めて大きい。民主党政権の最終年である2012年の実質賃金指数104.8から昨年の指数100.5まで、比率でみると実に4.1%も下がっているのだ。
 しかし、その点を伝える報道はほとんどない。朝日新聞ですら、昨年一年のことしか触れず、しかも名目賃金は0.4%増えたが、電気料金やガソリン価格の上昇で消費者物価が上がったので実質賃金指数がマイナスになったと解説している(2月7日朝日デジタル)。物価上昇があったので仕方ないという印象操作だ。
 だが、よく考えてみれば、エネルギー価格が上がったのはアベノミクスの第一の矢で円安になった影響も大きい。そもそもアベノミクスは消費者物価上昇率2%を目標にしていて、5年経った今もそれを実現できていない。もしもこれが実現していたら、実質賃金は5%以上のマイナスになっていたはずだ。
 つまり、アベノミクスではどう転んでも労働者の実質賃金を上げることはできないのではないかという不安がどんどん高まる結果が出ているということだ。
 実は、昨年2月に2016年の実質賃金について発表があった時も日本の大手各紙は「実質賃金5年ぶりに上昇」という忖度報道でアベノミクスでついに労働者の生活が豊かになったと勘違いさせるような報道をしている。もちろん、この時も4年続いたマイナスがわずかに戻っただけで安倍政権になってからの通算では大幅マイナスになっているということは報道からは完全に除かれていた。

■人手不足と働き方改革で上がるのは名目賃金だけ
 安倍総理は、経団連企業などに3%の賃上げを求めている。しかし、こうしたうわべだけのパフォーマンスではいくら頑張っても実質賃金は上がらない。というか、上げられないのだ。
 考えてみれば当たり前の話で、企業は儲からなければ賃上げはできない。一度賃上げすると下げるのは困難だから、一時金であるボーナスはともかく、先行きによほど自信がなければベースアップは難しい。せいぜい物価上昇率に合わせて賃上げするのが精いっぱいだろう。それだと実質賃金は上がらない。
 日本企業の業績は好調だが、これはほとんど円安と海外経済の好調さに支えられている。なにしろ、民主党政権時代は1ドル80円だったのが、アベノミクスで120円まで下がった。これは、国際競争の観点では、日本製品のダンピング状態になる。また、労働者の給料は、ドル換算では3分の1下がったことを意味する。
 そのメリットを享受した経団連企業は、今や1ドルが110円を切ると大変だと言って賃上げに慎重になっている。
 これは何を意味するかと言えば、日本の大企業が、依然として途上国型の価格競争をしていることを示している。だから、円高で競争力が失われるのが怖くて賃上げができないのだ。
 毎勤統計で比較可能な最も古い数字である1990年の実質賃金指数111.0。2017年は100.5だから、27年経って9.5%も実質賃金が下がっているということになる。もちろん、非正規雇用者の割合が増えている影響もあるが、こんなに実質賃金が下がったままである国は珍しい。
 実は、これが日本が先進国になれそうでなれないまま没落へと向かっている一つの証となっている。  途上国は、何よりも経済成長を最優先する政策を採る。社会保障、環境、労働などの政策は後回しだ。労働者も、働けば給料が増えるから、労働条件が多少悪くても文句を言わずに働く。子どもは多い方が生活が豊かになるから、出生率も高い。その結果人口が増えるから、いわゆる「人口ボーナス」もあって高成長を遂げることができる。
 そうした段階を経て、経済がある程度の規模に達し、国民一人当たりGDPも上がって豊かになってくると、必ず出生率が下がり、やがて人口減少時代を迎える。社会も成熟して環境意識も高まり、労働条件を向上させようという世論も高まる。人口オーナスと呼ばれる人口減がそれに拍車をかける。
 こうした状況を受けて、欧州先進国は、政府も企業も抜本的な改革に取り組まざるを得なかった。高い賃金と短い労働時間という高い水準の労働条件を前提として国際競争に勝ち抜く企業を作るという非常に難しい課題に取り組んだのだ。その間の苦しみは長期間続いた。概ね20年はかかったのではないだろうか。
 その結果、英独仏、北欧などの諸国は概ねその転換を成し遂げたと言ってよいだろう(もちろん、ドイツ以外は、今も苦闘は続けているが)。
 こうして生まれ変わった国の特色は、「人を大切にする社会」を目指していることだ。
 人が少ない=人は貴重=労働条件は高くて当然という図式が成り立っている。高い労働条件を提示できない企業は淘汰されて当然ということになる。それが先進国なのだ。

■アベノミクスの劇薬と詐欺師の言葉
 日本も90年代以降、同様の問題に直面していた。今日の事態はもちろん30年以上前から予見できた。私は、通産省(現経産省)で課長補佐の時(1991年)に、「時短リストラの時代」というレポートを出して、労働時間の短縮が喫緊の課題だと警鐘を鳴らした。このレポートは衆議院予算委員会の総括質疑でも取り上げられ、共産党の不破委員長に褒められて肝を冷やしたことがある(笑)。
 しかし、その後の自民党政権と経団連企業は、本来立ち向かうべき課題から逃げ続け、人口減少が確実であるにもかかわらず、それに対する備えを怠った。さらに、現に減少に転じた後も、労働条件を上げるのではなく、請負や派遣を拡大して労働コスト削減で競争力を維持しようとしたのだ。
 しかし、それでも日本の基幹産業である電機産業などが韓国、台湾、中国などに連戦連敗で、どうしようもない状況に陥った。そこで繰り出したのがアベノミクスの円安政策だ。これは前述した通り、国際的に見た労働コストを一気に3分の1カットする劇薬だった。
 劇薬という意味は、この円安政策で輸入食料品が高騰し、労働者の生活を急激に苦しくするからだ。しかし、それに対して、安倍政権は、「もう少し待てば、賃金が上がります」という詐欺的な言葉で何とか批判を抑え、期待をつないだ。
 もちろん、5年待っても実質賃金は上がらなかった。エンゲル係数(家計消費支出に占める飲食費の割合。これが高いほど生活水準は低いと考えられている)が上がったのは、円安政策の当然の帰結で、アベノミクス推進者にとっては、労働者の生活水準の切り下げによる企業利益の確保という展開は予定通りだったと言っても良い。
 今後を見ても、2019年に消費税を2%上げれば、消費者物価も1%以上上がる。今までのマイナス4%を取り戻し、さらに増税分も超えて賃金が上がることは考えにくい。そう考えると、安倍首相が自民党総裁に3選されて21年まで首相を務めても、民主党政権下の実質賃金を上回ることはまずありえないという状況だ。
 人口減少による人手不足で、単純労働者を中心に賃上げしなければ人が集まらない状況になっている。これは安倍政権にとっては幸運なことだという見方をする人もいるが、欧州諸国の苦難の歴史を知らない人の言うことだ。
 今やドイツ車と言えば高級車というイメージが定着した。北欧の車は安全な車というイメージだ。これに対して、日本の車は、高品質の割に「安い」というイメージが付きまとう。トヨタがレクサスブランドを作って高級車ブランドを確立しようとしたが、30年近く頑張っても販売台数はドイツの3大高級車ブランド(ベンツ、BMW、アウディ)の半分にも届かず、全く歯が立たない。「高級車の割には安い」というのは決して悪いことではない。だから北米では何とか売れている。しかし、欧州では売れない。「高級車の割には安い」という概念矛盾のイメージは今でも払拭できないのだ。
 その逆に、ベンツは高級車メーカーだというイメージがあるから、ベンツが作れば小型大衆車でも日本車よりも格段に高く売れる。
 日本最強の企業と言われるトヨタでさえ、高賃金でも儲かるビジネスモデルを作るのには相当苦労している。しかも、20年くらいかけて欧州諸国が克服した課題をわずか数年でクリアしろと言われているのだから、その難度は、ウルトラH級と言っても良いだろう。
 とりわけ、中小企業にとっては、人手不足の中での新たなビジネスモデル作りなど考えも及ばないというところも多いはずだ。
 つまり、今まで経験したことのない淘汰の時代が始まっているのだが、無邪気に「働き方改革」、「生産性革命」などと叫んでいる安倍総理の姿を見ていると、とてもそんなことを理解しているようには見受けられない。
 それがまた心配を増幅させるのだ。

■先進国に変われなかった元凶は経産省と経団連
 一時は世界最強の製造業と言われた日本の産業界がなぜ欧州企業とは全く異なり、今日まで低賃金・長時間労働を続けてきたのだろうか。
 その根底にある違いは、「良いものを安く」という日本企業の哲学が完全に途上国型だったということだ。この哲学での成功体験があまりにも大きかったため、「良いもの、他人と違ったものを一円でも高く」という哲学がいまだに定着しない。
 それを象徴するのが経産省の産業政策だ。
 21世紀に入っても、日本の企業の競争力の源泉は「匠の技」と「擦り合わせ」だと声高に唱えた経産省。アップルのパソコンに使用された鏡面仕上げが燕三条の職人の「ミクロン単位の手ワザ」によるものだとか、「川口の鋳物工場の精密な金型技術」が世界一の日本製造業の基盤だなどとはやし立て、これらの企業を表彰し、それを宣伝する冊子を作ってはしゃいでいた。
 そこでは、「擦り合わせ」や「匠の技」は忠実な労働者の「血と汗と涙の結晶」という「美しい物語」が常にセットとなっていた。「汗水たらす」ことが美徳だという哲学が産業界全体を覆っていたのだ。自ずと長時間の滅私奉公が美徳だという世界が維持されてしまった。
 一方、当時欧米の先進企業が力を入れていたのは3Dプリンターの開発とその応用だった。
 今や、3Dプリンターの分野では日本は完全に出遅れた。日本ではおもちゃに毛が生えたようなものだと考えている人もいるかもしれないが、何年も前から、米GEは、航空機エンジン部品の製造を3Dプリンターで行っている。そのおかげで歩留まりもコストも大幅に削減されたという。3Dプリンターで製造すると、切断、切削、研磨、溶接などの工程が大幅に省略できる。日本のお家芸がスルーされてしまうわけだ。
 また、経産省が何かというと旗印にした「日の丸連合」も日本産業の凋落を加速した。世界は「オープン・イノベーション」の時代で、国籍を超えて最先端の強い企業や独立性の高い個人が連携しながら新技術や新サービスを開発していく時代に入ったのに、日本は負け組の日本企業を集めた「日の丸連合」で失敗を重ねた。家電、液晶、半導体、太陽光・風力発電など、最強を誇った産業がことごとく潰されていった。
 しかし、こうした経産省の過ちは、実は経団連企業の経営者たちのできの悪さの証でもある。なぜなら、経産省の政策の多くは、経団連企業の要望をただ具体化しただけのものが多いからだ。もちろん、それは天下りポストの提供の見返りに行われている。
 経団連企業の経営者は、高い賃金を払っても儲かるビジネスモデルなど思いもよらないのだろう。ひたすら経産省に対して、従来のビジネスモデルの維持を前提とした労働コスト削減のための政策ばかりを要求してきた。その結果が今日の円安政策となっている。
 本来は、そうした企業経営者はとっくの昔にクビになっていなければならないのだが、日本ではなぜかいまだに生き延びているのだ。
 しかし、こうした経営者が日本の産業を牛耳っている限り、日本が、「人を大切にする社会」を目指す「先進国」になることは難しい。
 今、真に求められているのは、「働き方改革」ではなく、「経営者の淘汰」なのだ。  
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