世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●「想定外」流行り言葉蔓延国家 津波、原発、安保、円高株安

2016年01月18日 | 日記
ヘーゲルからニーチェへ――十九世紀思想における革命的断絶(上) (岩波文庫)
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●「想定外」流行り言葉蔓延国家 津波、原発、安保、円高株安

東日本大震災以降、我が国では、「想定外」という言葉が、責任ある立場の連中のエクスキューズ用語として、言い訳三昧に使われることが多くなっている。「仕方なかった」と似たニアンスがあるが、ここまで「想定外」を連発されると、「想定外」と云う言葉と「無能」、「無責任」との境界線が曖昧になるのは、好ましいことではない。地位ある立場の人間は、それ相当の待遇と、自尊心を満足させる恩恵に浴しているのだから、世間は、彼らの間違いを、日本人の“和を持って尊しとする”特性を悪用されないように注意すべきだ。

今世紀に入り、前世紀後半の国際的常識と云う基準は、ことごとく、変化の過程にある。その変化は大きさの面でも、その質においても、第二次大戦後のパックスアメリカーナ時代の物差しで、その変化量を探るのは不可能な時代に入っている。つまり、過去の経験則に沿った方策の殆どが、弥縫策と断定されるような、赤っ恥な政治行政の結果をもたらしている。このような傾向は、何が一番問題なのかと云うと、過去に照らし合わせて、物事を見極め、次善の策に打って出る、中央官庁の官僚の得意技分野の技が通じない世界がやってきたと云うことだ。

にもかかわらず、日本の政治行政金融政策などの決定は、あいも変わらず、過去の経験則に頼っている点が重大な瑕疵を招き入れている。以下の日経新聞の解説記事が指摘するように、黒田日銀のバズーカ金融緩和への疑念が垣間見えるのは、そのためである。先進諸国の経済は、成長どころか、衰退すら見えてきている筈なのに、「経済成長」という「神話」に縋りついている現状は、笑止の沙汰なのだ。その結果、インフレターゲット2%と云う幻影を国民や国際社会に提示したわけだが、根本的にないものを有ると言い出したのだから、「想定外」が恒常化するのは当たり前の結論だ。

安倍政権の経済成長神話も完璧なねつ造だし、世界の財政金融に関わる連中が唱えるGDP経済評価基準が、まったくの頓珍漢になっている可能性の方が断然高い。GDPを大きくしたいのは、簡単な話、国家財政を適正な基準にしたいが為なのだが、本質的部分で「経済成長」ありきが前提なのだから、「想定外」が恒常的について回る。おそらく、こう云う点は、経済金融関係の官僚や学者や専門家が、誤謬に陥るのは、“紺屋の白袴”だと言えるだろう。原発事故対応の稚拙さも、原子力専門家の“紺屋の白袴”による、「想定外」の連続だった。筆者から言わせれば、カオスに突入した時代は、「専門家を疑え」が合言葉になって然るべきだ。

当該日経の記事は、数日前に安倍政権が瓦解してゆくターニングポイント“円高115円、株安16000”とまったく同じだった点は評価してやってもいいが、このターニングポイントを過ぎると、底割れと云う問題が生じるので、狼狽売りを誘発する危機も見えてくる。日経の解説記事は長いのだが、一番言いたい部分は、日銀黒田総裁の接続可能な経済成長には、インフレ2%が整合性があると云う、逆算から導き出した「根拠なき目標」だった点がポイントだ。つまり、政府が経済成長を目標にするのだから、日銀は整合性を担保する意味で2%を掲げ、異次元の金融緩和を実施したとなる。一番、ポイントの部分だけを以下に抜き出しておく。

 安倍政権の発足からまもない2013年1月。2%の物価目標を決めた日銀はこう説明した。家計や企業が物価変動を気にせず消費や投資をできる持続可能な物価の安定が必要だ。成長力が強化されてくれば、物価は高まる。それには「2%」が「整合的」とした。だが2%なのは各国の経験則から導き出された面が強く、明確な根拠はない。
 元日銀理事の早川英男氏は「異次元緩和は株高や円安に高い効果を挙げたが、物価上昇の成果は△、経済成長は ×だ」と喝破する。たしかに物価上昇率は0%近辺のままだ。最近日銀が重視している「生鮮食品とエネルギーを除く」ベースでも1.2%にとどまる。政策委 員のなかでも17年度までに2%に届かないとの意見が複数ある。
■決意の象徴、旗降ろせず
 物価以上に日銀が読み誤ったのは経済の成長力だ。個人消費はもたつき、設備投資も2000年代半ばの水準を回復できていない。目標の導入から3年たっても、日本経済の成長率が強化されてきたとは言いがたい。
 実際に日銀はほぼ毎四半期、経済見通しを引き下げてきた。日銀が推計する潜在成長率も0%台前半での低空飛行が続く。成長力強化との兼ね合いからも持続可能な物価が本当に2%なのか判然としない。
 黒田総裁はかつて、海外の中央銀行の大半が2%の目標を採用していると述べ、正当性を訴えていた。仮に日銀だけ目標値を低くすれば円高圧力がかかるリスクも意識していたようだ。だが、いまやディスインフレーション(物価上昇の鈍化)は世界的に広がる。東京大学の渡辺努教授は「金融緩和だけで2%を達成するのは世界的にもかなり厳しくなっている」と指摘する。2%達成にこだわるなら中銀だけでなく政府の取り組みも欠かせない。
 黒田日銀にとって「2%」は物価上昇の決意への象徴でもあり、簡単には旗を降ろせない。人々の物価上昇への期待が剥がれ落ち、デフレに戻るリスクもあるからだ。だが「2%」が度重なる緩和でも達成できず、かえって金融政策や日本経済のひずみを広げているとすればどうか。金科玉条のようにしがみつくのではなく「目標の柔軟化を検討する必要がある」(渡辺教授)という議論には耳を傾ける価値がある。 (日経抜粋)


経済には門外漢の、社会学的目線から見る筆者の主張は、一段のデフレ状況と、安定的定常経済の担保の方が、転ばぬ先の杖だと云うことだ。イケイケドンドンの安倍政権の掛け声に乗った連中は、最近、煮え湯を飲まされているが、当然の結果だ。自分の頭で、世界情勢、パックスアメリカーナの凋落、中東イスラム問題、EUの理念と難民‥等総合的に勘案してくと以外に見えてくる達観の境地だ。こう云う達観の境地で、泰然自若な態度が取れるのは旧い国だけだ。新大陸には不可能なのだ。マネーが接着剤の国と一緒に動くこと自体、実は無理の中に飛び込む自殺行為である。以下に当該記事全体を参考引用しておく。


 ≪ 黒田バズーカ3 発動の条件 「株安1万6000円・円高115円」なら緩和不可避か
 株安と円高を背景に、日銀の追加金融緩和が現実味を帯びてきた。「株1万6000円、為替115円」を超えれば発動が視野に入るとの見方が多い。今月末の実施を予測する声も再浮上した。「3度目のバズーカ」はあるのか。
 「現時点で追加緩和をする必要はない」。15日の衆院予算委員会で、参考人として出席した日本銀行の黒田東彦総裁がこう言い切ると、直後に円相場は1ドル=118円台から117台に上昇し、失望感をあらわにした。市場は急速な株安と円高で日銀に追加緩和「バズーカ3」を迫る。この日も涼しい表情で「黒田節」を展開した総裁だが、胸中はどうだったのか。
 1ドル=115円、日経平均1万6000円──。円高と株安がこの水準を超えて定着するようなら、追加緩和の導入は避けられない。こんな見方が市場関係者の間で広がりつつある。根拠は2014年10月に導入した追加緩和「バズーカ2」前の水準だ。
 その時、株価は1万5658円だった。円高は1ドル=110円まで進んでいたが、対主要通貨での円の実効レートは現在でも、グラフにあるようにすでに追加緩和前を上回る。円相場が115円を上回れば、前回の追加緩和の効果が完全に消えてしまう。円安・株高の「貯金」は急速に減っている。
  2%の物価上昇こそが黒田総裁の日銀が「異次元緩和」に踏み切るに当たって掲げた目標であり、円安や株高の効果はあまり声高に説明してこなかった。だが、資産価格の押し上げは異次元緩和の経路の1つだ。異次元緩和後の急速な円安が物価上昇をもたらしていたのはまぎれもない事実で、日銀内からも円相場の前年比が円高に傾いた現状について「14年の追加緩和前の水準に迫れば見過ごせなくなる」との声が聞こえる。
 異次元緩和は期待に働きかける政策のはずだ。だが、米国の利上げは世界の市場環境を一変させてしまった。日本の企業業績や雇用情勢は好調を保つものの、物価上昇が大きく遅れるなかでの急速な円高・株安は経営者や家計の心理を冷やしかねない。

 ■物価、想定外の原油安響く
 その物価目標の達成も原油価格が「危険水域」に入り、ますます遠のく。
 「半値になった原油がまさかさらに半値になるとは……」(日銀幹部)。ドバイ原油は先週、一時1バレル25ドル台まで下がった。日銀が10月に想定した水準は50ドル。14年秋の100ドル台からの急落も「誰も予想していなかった」(黒田総裁)事態だったが、わずか2カ月で“想定外”に再び襲われた。







 25ドルの前提だと物価見通しはがらりと変わる。みずほ証券の末広徹氏によると、油価が50ドルから35ドルに下がると、16年度の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)の上昇率を0.39%押し下げる。30ドルなら0.53%、25ドルで0.66%になるという。日銀は10月時点で16年度の物価を1.4%とみていたので、この試算を当てはめると0%台に落ち込む。
 16年は年央にかけてマイナスへと突入するリスクすら出ている。金融市場や各種のアンケート調査の予想インフレ率は下がり、労働組合の賃上げの機運も昨年より鈍い。日銀は「インフレ予想に悪影響が出れば、政策対応せざるをえない」としてきただけに、最近の原油安は「1月28~29日の金融政策決定会合の極めて重要な論点になる」(幹部)。
 くしくも黒田総裁は年明けから「必要と判断すれば、さらに思い切った対応をする用意がある」などとやや前のめりな発言を繰り返している。原油安の影響を除いた物価の基調は強いとの判断は崩さないものの、29日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)では16年度の物価見通しを下方修正する方向だ。物価2%目標の達成時期も現在の「16年度後半ごろ」から先送りする可能性が高い。
 追いつめられた日銀。月末までに金融市場の動揺が収まらなければ、1年3カ月ぶりの追加緩和へ「ちゅうちょなく」(黒田総裁)動いてもおかしくない。

 ■緩和「年100兆円増」最低ライン  
  日銀は2013年4月から2度にわたり量的・質的緩和(QQE)を実施したが、年2%という物価上昇の目標達成は遠い。過去2回の緩和がもたらした円安や資産増大の効果は、急激な相場変動の前に消えつつある。市場が日銀に発動を迫る「黒田バズーカ3」は今度こそ、的の中心を撃ち抜かなければならない。その効力を発揮するにはどれだけの緩和策が必要なのか。







 「年100兆円増」の大台がバズーカ3の1つの目安だ。バズーカ1のようにマネタリーベースを 「2倍」にするといった強烈な増額は難しい。一方で、年90兆円程度の増額では「小出し」と受け取られかねない。100兆円増は最低ラインになる。しかも 「最良のタイミングを見極めないといけない」(日銀幹部)。市場環境が悪ければ、効果はたちまち吸収されてしまう。「無駄弾は撃てない」(同)
 日銀は昨年12月に決めた金融緩和の補完措置で、円滑に資産を買い入れるため、購入対象を広げたり、銀行が国債を売りやすいよう担保要件を緩めたりした。市場に広がる緩和限界説を払拭し「バズーカをいつでも撃てるようにした」(幹部)。一方、市場には国債の代わりに地方債などの新たな資産を購入する案も浮上している。
 上場投資信託(ETF)の買い入れも年3兆円から年5兆円程度に増額する必要があるとの見方が多い。ETFは国債に比べ増額余地が大きい。日本株の時価総額は500兆円を超え、購入の限界はまだ先にある。金融不均衡を招いたり自己資本を毀損したりするリスクも、日銀は低いとみる。緩和効果を確かなものにするには、買い入れ額の「倍増」も視野に入りそうだ。
 日銀ウオッチャーの間では、日銀当座預金の超過準備にかかる金利(付利金利)を年0.1%から年0.05%程度に引き下げる案や、マイナス金利の導入を予想する声も出ている。ただ、マイナス金利は黒田総裁が再三否定してきた。日銀の説明が急変すれば市場との対話が機能しづらくなる。2%の物価目標の旗を降ろせないように、実現の可能性は低そうだ。

 ■狭まる手段、積もる副作用
 だが、大規模なバズーカ3を放ったとしても本当に効果を上げられるのか、疑問視する声も少なくない。


 


 
 2%上昇という物価目標を達成するうえで、日銀はこれまでQQEの波及経路について、名目金利の低下とインフレ予想の上昇が設備投資や個人消費を増やし、物価上昇につながるとしてきた。だが、長期金利は14日に0.19%と史上最低を更新し、これ以上国債を買っても低下余地は限られる。インフレ予想をどの程度引き上げられるのかも確たる証拠はない。
 国債の買い入れでは、日銀はすでに国債発行量の3割を占め、売り手が減っている。過去に買った国債の償還分を再投資する必要もあるため、年間で買う量は120兆円と短期国債を除いた年間発行量にほぼ匹敵する。日銀内でも「すぐに限界が来るとは思わないが時間とともに難しくなることは事実」との声が上がる。
 「国債を永遠には買えない」。日銀の木内登英審議委員は、市場で買い入れの限界が意識されれば金利が急上昇しかねないと警鐘を鳴らす。日銀の総資産残高は名目国内総生産(GDP)比で7割に膨らんだ。米連邦準備理事会(FRB)の約2割を大きく上回る。政府の赤字を中央銀行が穴埋めする財政ファイナンスの懸念も高まり、財政や通貨の信認が傷つく恐れがある。その先にあるのは国債暴落のリスクだ。
 薄まる効果と狭まる手段、積もる副作用を前に、「最後の一手」ともいわれるバズーカ3を繰り出すのはますます難しくなっている。14年の追加緩和の時よりも、引き金を引く日銀の手はすくんでいる。

■「2%」のジレンマ  
 「2%の物価上昇は必ず実現します」──。日銀の黒田東彦総裁は5日、連合の新年交歓会であいさつし、2%の目標達成へ決意を新たにした。物価目標の導入からはや3年、「2%でなくてもいいのではないか」との指摘が増えていることへの焦りが見えた。 安倍政権の発足からまもない2013年1月。2%の物価目標を決めた日銀はこう説明した。家計や企業が物価変動を気にせず消費や投資をできる持続可能な物価の安定が必要だ。成長力が強化されてくれば、物価は高まる。それには「2%」が「整合的」とした。だが2%なのは各国の経験則から導き出された面が強く、明確な根拠はない。
 元日銀理事の早川英男氏は「異次元緩和は株高や円安に高い効果を挙げたが、物価上昇の成果は△、経済成長は ×だ」と喝破する。たしかに物価上昇率は0%近辺のままだ。最近日銀が重視している「生鮮食品とエネルギーを除く」ベースでも1.2%にとどまる。政策委 員のなかでも17年度までに2%に届かないとの意見が複数ある。

 ■決意の象徴、旗降ろせず
 物価以上に日銀が読み誤ったのは経済の成長力だ。個人消費はもたつき、設備投資も2000年代半ばの水準を回復できていない。目標の導入から3年たっても、日本経済の成長率が強化されてきたとは言いがたい。
 実際に日銀はほぼ毎四半期、経済見通しを引き下げてきた。日銀が推計する潜在成長率も0%台前半での低空飛行が続く。成長力強化との兼ね合いからも持続可能な物価が本当に2%なのか判然としない。
 黒田総裁はかつて、海外の中央銀行の大半が2%の目標を採用していると述べ、正当性を訴えていた。仮に日銀だけ目標値を低くすれば円高圧力がかかるリスクも意識していたようだ。だが、いまやディスインフレーション(物価上昇の鈍化)は世界的に広がる。東京大学の渡辺努教授は「金融緩和だけで2%を達成するのは世界的にもかなり厳しくなっている」と指摘する。2%達成にこだわるなら中銀だけでなく政府の取り組みも欠かせない。
 黒田日銀にとって「2%」は物価上昇の決意への象徴でもあり、簡単には旗を降ろせない。人々の物価上昇への期待が剥がれ落ち、デフレに戻るリスクもあるからだ。だが「2%」が度重なる緩和でも達成できず、かえって金融政策や日本経済のひずみを広げているとすればどうか。金科玉条のようにしがみつくのではなく「目標の柔軟化を検討する必要がある」(渡辺教授)という議論には耳を傾ける価値がある。 (後藤達也、浜美佐) ≫(日経電子版:日経ヴェリタス2016年1月17日付)

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