2007/12月上旬 八ヶ岳・大同心南稜
言葉
「苦労は買ってでもするもんだ」
良く親父に言い聞かされた言葉の一つである。
「昔は学林のバス停から歩いたもんだ」というのは諸先輩方からの言。
八ヶ岳今昔。果たして・・・。
12月。暦の上では冬山のスタ-ト。
アプロ-チではなんと、非力な二輪駆動車でも美濃戸まで入ることが出来た。
仰ぎ見る大同心は薄っすら雪化粧。
アプロ-チでの寡雪が心配ではあったが、山はしっかり雪山模様。
大同心稜は久しぶりのアイゼン歩行となった。
しかし、足と靴とアイゼンが何だかシックリこずに、早くもふくらはぎが悲鳴を上げる。
先行のパ-トナ-に随分遅れをとり、喘ぎながらも何とか大同心基部。
南稜の取付を探すこと一時間。小同心へのトラバ-ス道から随分上で支点を発見。
でもここまで来るともはやド-ムまで1ピッチほどしかない。
それでは物足りないので、トラバ-ス道まで戻って登攀開始。
雰囲気
リ-ドで1ピッチは右上。ホンの一手が出ずに直上を断念。
結局先ほど確認した支点に出てピッチを切る。
2ピッチは左上へ。ガバをいいことに豪快に。
こういうときの苦労は買ってもイイかな。
短めであったがアルパインの雰囲気を味わおうと小さなバンドでピッチを切る。
3ピッチは左から。
リッジに出たら顕著なピナクル。さらに小ギャップを超え、リッジを乗り越せばド-ムの基部は一投足。
正直チョット物足りない。
笑顔
ド-ムは人工登攀。ここでリ-ドをWさんに選手交代。
さすが、アブミの取り回しに無駄がない。
姿が見えなくなったと思ったらまもなく、ビレイ解除のコ-ル。
数mをフリ-。ピナクルを足下にしたところから人工登攀。
3、4mmのスリングに不安を憶えつつも、ここは根拠も無くコレを信じるしかない。
アブミをかけ、全体重をそのスリングに乗せる。足元を見れば大同心基部まで見通せる。
緊張の中、爽快な気分である。
最後の支点、スリングが上のほうに引っかかって一寸苦労したが何とか終了点。
頭から望むパノラマに仲間の笑顔はよく似合う。
今昔
あとは大同心稜を下る。
前半の南稜事体は少々物足りないものの、ド-ムの登攀は爽快の一言に尽きる。
後発パ-ティ-の奮戦を我がことのように眺めつつ、今日の登攀を語りつつの下山。
充足のひととき。
あとはダラダラ、ボトボトと美濃戸まで。
いやしかし、美濃戸まで行けば車があるという安堵は正直、ありがたい。
苦労にまつわる今昔。現実には、必要に駆られた利便が幅を利かす。
「苦労は買ってでもするもんだ」
あなたの心に、この言葉はどのように響くのであろうか。
sak