2002/7中旬 谷川連峰・馬蹄形縦走
いざ
もはや季節は夏。夏といえば毎年恒例となりつつある 「夏山休み」が控えている
一時の独身気分にくわえて冷涼な高山の風。
この時をなくしてなんのために仕事などするものか。
しかし、なんとなくだらだらと締りのない生活に準備不足は否めない。
さかぼうは確信が欲しかった。
「まだまだ若い者には負けない」と思える心と体を。
そして始まるのだった。さかぼうの 「とてもながい日」が
第一関門の白毛門は土合から一気に1000m登りである。
馬蹄形縦走路
土合から白毛門、清水峠、蓬峠、一ノ倉岳、谷川岳、そして土合へとつづく路は ル-ト図で見ると馬の蹄鉄に似ていることから 「谷川岳・馬蹄形縦走路」と いわれる。
通常、一泊二日のコ-スではあるが、良いトレ-ニングコ-スであり、 どうにか日帰りもできそうであった。
以前、身を置いていた山岳会でも高レベルの山岳ランナ-ならば10時間を 切ったタイムで下りてくるらしいことも聞いていた。
しかし、凡人のさかぼうに天才になれといっても土台無理な話。 ヘッテン覚悟で”完走”を目指した。
第二関門は朝日岳までの登下降である
降りて登ってを繰り返し、ようやくここで1/3である。
しかし、お花畑や涼しい風に慰められ、禁欲的トレ-ニングというよりは 快楽トレ-ニングというべきか。
爽快感
思いつきも急であれば 実行も急だった
前夜、一泊二日の研修参加を済ませ、帰宅後仮眠。
午前0時の予定が寝過ごして午前1時半の出発となった。
朝日岳からは下りとなる。巻機山への分岐(ジャンクションピ-ク)を右に見て 清水峠、蓬峠への道はゆったりとした笹の草原が風に揺れ、なんともいえない 爽快感を演出する癒しの区間である。
ヤマ場
蓬峠からようやく後半戦となる。
峠から武能岳へ200m登って200m下る。そしてそこから茂倉岳へ400m登り返す。
さかぼうはこの第三関門が 踏ん張りどころであると考えていた。
後半のヤマ場である。
息の上がらないように歩幅を小さくしペ-スを落とした。 しかし、息は荒くなるばかりである。
思うように足が上がらなくなってきたのは疲労を呈してきた証拠だ。
さかぼうは自分に言い聞かせた。
これはタイムトライアルではなく完走が目標であることを。
ここではたっぷりと時間を使った。
息が上がるたび、時間にかかわらず小休止した。
焦り
一歩、また一歩。
地味に歩を進めると茂倉の頂がようやく見えてきた。
マラソンでいえばこのあたりが35km地点というところだ。
茂倉岳への登りを終え、谷川のネコミミを拝した時にさかぼうは思った。
谷川岳まで、あと一時間チョットの散歩道。 今思えばすこし甘い計算をしていた。
事は5年前に遡る。谷川岳から茂倉岳へ縦走した時の記憶の中に は稜線漫歩のイメ-ジが強く刻まれていたからである。
マラソンは35kmからが勝負所であることなどスッカリ頭になかった。
魔の第四関門。
この一時間、やけに長く感じた。
時計と景色が思うほど進まない為、焦りが生じた。
茂倉岳で水を切らしたのもその一端であろう。 ペ-スが崩れ、一気に脈が速くなる。
典型的なバテ・パタ-ンだ。
もはやこの時、気持ちは天神尾根へと傾きつつあった。
西黒尾根
ようやくの思いで肩の小屋に辿りつく。
思いのほか時間がかかってしまった。
しかし、湯檜曽川を挟んで連なるあの山々を歩いてきたと思えば 良くもまあ頑張っちゃったものだなあと、まずは 自分に敬意を評したい。
さて、もうひと踏ん張り。
「ここまできたらこっちへ来いよ。」 夕陽に輝く西黒尾根がそう言っていた。
駐車場について自宅へ無事下山の連絡をした。
下山時のお約束、スカッとさわやか飲料を傾けながら。
・・・・・!
しまった!忘れていた。
今日は娘の誕生日だった。パ-ティ-の準備も整い、 もう待ちかねているとの事だった。
・・・・・。
さかぼうのながい日はまだまだ終わらない。
sak