変な親子？ ・ 似た者親子？

　ラインのおかげで、息子と頻繁に連絡を取り合えるようになった。7月に入るとすぐに、お盆の帰省について連絡を入れた。が、１１日からの連休も、お盆当日も、予定が混んでいるもよう。私の日程もあるので、早く返事がほしいと思っている矢先、「福井出張の前日、２７日に帰る」と連絡があった。私には最悪の日、高岡薪能の日だ。今年は素謡と連調連管と２つも出番があり、２時間以上時間がとられる。

　前日にメールを入れると、富山空港からレンタカーで昼前には家に着くと連絡があった。が、当日昼過ぎても到着しない。１時過ぎには瑞龍寺へ行きたいのに、とイライラし出した頃、急にピアノの音が…。顔も見せずにピアノの蓋を捲ったのだろう。もう、ホントに…。すぐに昼ご飯を並べ、４時頃帰るから、と私は家を出た。

　この日、お寺では特別な行事があったようで、薪能第１部の会員謡曲大会は、いつもの法堂ではなく、例年は着替えに使っていた広い厨房の和室だった。当然着替えも日ごろ入ったことのない奥の部屋。自然の風は入るが、最初はクーラーも扇風機もなく汗がタラタラ（後でクーラーのスイッチもわかり、扇風機も持って来てもらった）。リハーサルやら本番やら、その都度部屋を変える度に下足を履かねばならず、面倒だし暑いし…、私にはかなり堪えた。
　氷見のTAさんが差し入れを持って聴きに来てくださった。顔を見たが、混雑していて挨拶もできなかった。その後一旦帰宅し、息子と二上山のお墓参りに行く。夕暮れで涼しく、人もまばら、ゆっくりお参りした。

　👇は、第一部での「連調連管」（能楽会HPより）。　

　墓参の後すぐにその足で瑞龍寺へ。ちょうど開会宣言が終わったところ。藪先生の解説の途中だった。👇は、北日本新聞のHPより。「竹生島」の弁財天が「天女の舞」を舞っているところ。まさに幽玄の世界だった。（能についてはいずれ）さすがプロの写真、どんないい位置に陣取って撮ったのか、月と提灯と薪と天女の舞、すべてが収まっている。

　見終わって大満足で駐車場へ戻った。息子と一緒に見るつもりだった（彼は、写真を撮りたかったらしく別の席へ移動）ので私はスマホを車に置いていたが、そう広くもない駐車場、簡単に会えると思っていた。ところが会えなかったのだ…。
　原因は、私が息子のレンタカーを黒色と思い込んでいたこと、ナンバーを覚えていなかったこと、昼自分の車を止めた場所とこんがらがり駐車場所に自信がなかったこと…。

　今から思うと、私が先に駐車場に着いたのだ。黒の軽四車、きっとコレだとその前にいたが知らない人が乗って発進された。他に黒の車は…？ときょろきょろしていた。大勢の人たちが会場から駐車場へ戻って来る。息子らしい、カメラを持った男性が近づいて来た。暗くて顔が見えない。向こうは知らん顔。私も、なんか息子より縦横ともに大きく見えたから違うと思い込んだ。
　その人は、グレーの車に乗り運転席で灯りをつけ、何かスマホを操作しているもよう。私はどこからも見えるように、駐車場内を行ったり来たり歩き回ったのだが…。人も車もどんどん減って行く…。結局私が判断したのは、ともかく歩いて家に帰ろう、家に着けば電話があるから連絡できるし、もしかして先に帰っているかもしれないし…。
　普通は歩いてほんの１０数分の距離なのだが、暑くて１日の疲れがドッと出て、やっとかっとよろよろと家に辿り着いた。ああ、やはり私の車しかない。家に入り、固定電話で息子のケータイに電話する。「もしもし？」向こうからも「もしもし？」　「どこにいるの？」「駐車場の車の中。どこにいるの？」「今、家に着いたところ」「あ、わかった。じゃ、すぐ帰るわ」

　息子も、自分が先に着いたと思い込んだようだ。ともかく車に乗り、電気をつけて外から見えるようにして私を待っていたのだと言う。その前に私の前を通りながら気づかなかった。私もすれ違いながら、「息子のようだが知らん顔しているから違うのだろう」と思い込む。電気をつけた車を認識しながら近寄って顔を確かめない。ホントに変な親子だね！　それぞれ相手が見つけてくれるだろう、と勝手に思っているところ、似た者同士と言うことか。

　その後の夕食は、刺身とサラダと味噌汁だけになった、いろいろ準備していたのに…。ま、ビールさえあればいいのだけど…。