蒼穹のぺうげおっと

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狼と香辛料

2008-02-11 09:04:37 | アニメ 感想
もう2月も中盤に突入という時期なんですが、1月から始まった作品が数も多くて、それなのに結構しっかり見てしまっています。

その中で個人的にかなりお気に入りなのが「狼と香辛料」。

これが毎週楽しみなんですよ。

最初は猫耳じゃないけど耳・尻尾キャラってどうなの?くらいの感じで思っていたのですが、僕が浅はかでした。
この作品の面白さはそういうのも含めた色んな点にあって、そういう中で行商人を主人公として経済を描き、宗教を描き、孤独と人のつながりの温かさみたいなのを描く点にあるんじゃないか、というのがここまで観てきて分かってきました。

そろそろ原作を購入しようと思います。

アニメ版の第1話で実は個人的に興味惹かれまくりだったんです。

第1話では、行商人が立ち寄る村での収穫祭から始まるわけですが、この時に行われる儀式(というほど大げさなものではなく、祭りの遊びに近いもの)、それは村人がそれぞれ持っている畑の中で最後の麦を刈った者をその祭りの間、土倉の中で過ごさなければならない、という伝統行事から始まるところでした。

これは19世紀に出版された世界中の民俗学を初めて編纂したといわれる『金枝篇』の冒頭でも書かれている史実に即した村の伝統行事なんですよね。

そう、『金枝篇』と言えば「交響詩篇エウレカセブン」。

というわけで、いきなり興味を惹かれたわけです。

余談ですが、J.D.サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の原題は「キャッチャー・イン・ザ・ライ」で、ライ麦畑で捕まえる者、のこと、つまりこうした伝統行事に根ざしたものにあると思います。

最後に刈り取る麦には神(もしくは何かが)が宿り、それを最後に刈ったものをのけ者にする(もしくは違う方法が地方によっていくつもあるんだけれども、基本的には隔離したり、ストレス的なもののはけ口的扱い)ことによって、来年の豊穣を祈り、祝うというものなんですよ。
#「ひぐらしのなく頃に」でも、これは偶然だと思うんだけれども、祭りの日には何かが起こる、というのは民俗学的にみて世界中で同じような伝統行事があって、集団生活の中で起こるストレスのはけ口として、祭りというものがあり、その日には年に一度、我を忘れても良い、というのがあって、祭りの日に人が死ぬ、というこもよくあったそうです(金枝篇にはそういう事例がたくさん書いてある)。

そういう掴みの部分で僕は文字通り掴まれてしまったわけだけれども、この物語が行商人と賢狼ホロ(美少女)の二人が旅をしつつ、行商人ならではの経済をベースとしたお話しであり、そして二人の孤独であったり、つながりであったりを模索していく、というこの独特の雰囲気がとても好きなんですよね。

うんうん、面白い。

話はまた金枝篇に戻ってしまうのだけれども(笑)、金枝篇という書物が何故編纂されたのか?

この真意について誤解を恐れずに言うならば、これは19世紀におけるキリスト教や他の一神教に対する批判の目的であったと思います。
#文中にそういった記述は一切ありませんよ。

世界中の民俗学・呪術なんかを集めた結果、冒頭に紹介したような「麦」の話であったり、その他たくさんの事例(何と日本の事例まである)から読み出されるのは、例えヨーロッパであっても、というかむしろヨーロッパの中層階級では、土着の信仰が非常に重要視されており、そも世の中では土着の信仰がたくさんあって、それを全て一神教で統一しようとする考えに批判なスタンスで書かれたのではないか、と思うんですよね。

それがローマ帝政時代に、併合を繰り返し、人心を統合していかないといけない、またその中の権力争いに勝たなければいけない、という背景からそれまでの太陽神(アポロン)信仰からキリスト教信仰に変わったわけなので。

この「狼と香辛料」の面白い点は、それを意識しているかどうかは分かりませんが、賢狼ホロに対する土着の信仰が時を経て廃れていく様子や(またその寂しさ)、教会と呼ばれる宗教の組織的な勢力拡大、その中で土着の信仰=異端、異端裁判、みたいな風潮、こういうのを上手く表現してるなぁと感じます。


と、いろいろ書いたけれども、一番面白いのは、主人公であるクラフトとホロの声優さんが、福山潤さんと小清水亜実さんのギアスコンビで、またそれがぴったりはまっているっちゅーところですよ。

いいね、若夫婦(違うけど)。

いやー、この二人の演技がとても良いので、クラフトとホロを見ているだけでもほのぼのと面白いんです。

というわけで近々原作を購入しようと思います。

狼と香辛料 DVD1


狼と香辛料 (電撃文庫)