森林ジャーナリストの裏ブログ

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駄作『サンクタム』を観た理由

2011-10-07 14:06:11 | 書籍・映画・番組など

映画の『サンクタム(聖域)』を観た。

製作総指揮がジェームズ・キャメロンで3D映画である。『アバター』ほどではないが、前宣伝を結構やっていた。が、人気のほどは『アバター』にはるか及ばず、公開から2週間ほどで尻すぼみになっている。上映館も随分減ったようだ。

内容は、パプア・ニューギニアの巨大洞窟探検隊の話。洞窟をドラマの舞台にすると決まっているのだが、なんらかの事故で入り口が塞がり、未知の出口を探して洞内をさまよう……というものだ。途中でグループ内にいざこざが起きたり、裏切り者が出たり、まったくステロタイプなストーリーである。

この映画を観に行った。事前の評判からも駄作らしいことはうかがえた。それなのに、高い3D割り増し料金を払ってまでなぜ観たのか。

それは、ひとえに洞窟もぐり(ケイビング)を描いているから(笑)。

パプア・ニューギニアのジャングルに、巨大な竪穴があり、そこから無数の横穴が広がる世界は、実際にある。実は、私の友人も、そこへ探検に出かけている。(20年くらい前の話だけど。)

また私の大学の後輩たちも、タイの奥地メーホーソンで同じような大洞窟の探検に挑んだ。

いずれも洞口が直径1キロくらいあり、深さ数百m降下して底に着くと、横穴になっている。

そういえば、日本でもっとも深い竪穴と目される新潟県のマイコミ平の洞窟群を、関西大学探検部が40年くらい前に調査している。そして青海千里洞では500mくらい縦に下りてベースキャンプを築いたところ、大雨となり、濁流が流れ込んだらしい。

その経験者に話を聞いたことがあったが、洞窟内にも嵐が起きるのだそうだ。猛烈な強風と横なぶりの水しぶきが渦を巻く。

この事件は、マスコミに近くの白蓮洞と間違われて、洞窟遭難事件として世間を騒がしたが、結局、全員無事に脱出している。当の本人たちは、安全な洞内の高台に避難して、ゆっくりと水が引いてから脱出したのだった。(この資料は、いま手元にないから正確に説明できない。)

私も、そんな大きな穴ではないが、未知の洞窟を求めて南洋を放浪したことがある。
そのことについては、「不思議の国のメラネシア」を読んでいただきたいが、ソロモン諸島のシンポ島の火山の火口洞窟にもぐった。この件に関しては、拙HPにも掲載している。(ナンバワン、ソロモン!)

また、ちょうど知り合いが、つい最近、小笠原諸島の母島を訪れたことをブログに記していたが、私はかつて母島のジャングルの中にあった岩の隙間から降下して、地底に巨大ホールを持つ洞窟を発見したことがある。あの鍾乳石はすごかった。そして無数に落ちていた骨、骨、骨。

それだけに未知の洞窟の探検話には惹かれるのだ(^o^)。

さて、『サンクタム』は。。。映画としては、やはり駄作であった。まあ、退屈しない程度に物語は展開するが、怪我した同僚をあっさり安楽死?尊厳死? させたりするか? だいたい未知の出口を探すより、嵐が終わり水が引くのを待って、脱出するのが王道だろう。未知の出口なんぞ、期待するのは間違っている。どちらかというと、ケイビングではなく、ケイブダイビング映画だ。

それに、3Dの効果がイマイチだった。少なくても『アバター』では見ほれる映像が展開されたのだが、洞窟内は暗く、しかも水中シーンとなると立体映像の価値が減じる。もともと遠近感のない世界だからだ。

しかし、私にとっては、追体験なのである(^^;)。なんか、過去の体験がフラッシュバックする。
ケイビング技術的な面で見ると、かなり正確に描いていたように思う。(ケイブダイビングに関しては、ありえねえ、の連発だったが。)

真っ暗闇のロッククライミング。高さ数十メートルの岩にしがみついたときの悲壮感。シングルロープテクニックで垂直降下する感覚。圧迫感のある岩の隙間を進む恐怖。濡れた身体を引きずりながら動く寒さ・たいぎさ。暗黒の川の冷たさ。地底湖で泳ぐ密かな楽しみ。狭い岩の間を匍匐前進する身体の痛み。ヘルメットがつかえて身体が動かせなくなった時のパニック感。その奥にある未知の空間に出たときの爽快感。その美しさ。

しかし、今の私には無理だな。そう実感した。もう、私に洞窟探検はできない。あれは若気の至りだよ。

ケイビングには、身体のわけのわからない筋肉を使い、猛烈な疲労感と戦うのだが、それを跳ね返しても未知の奥に進みたい気持ちを持続させねばならない。無理。今の私には無理。とても恐怖に耐えられない……と、映画館でうなっていた(^^;)。

まあ、そんな青春時代の感覚を取り戻すために映画を観に行ったのだよ。

 


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2 コメント

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洞窟愛。 (熊(♀))
2011-10-07 18:01:09
ワタシがこの文章を読んで感じたのは、
洞窟愛です。
洞窟愛に満ちあふれとりますね。(^^;

若気の至りだったなんて言わず、
やはり実際にもぐらねばならないのでは。
そうじゃないと、愛でお腹がいっぱいに
膨らんでしまいますってば。



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愛は、どこへ…… (田中淳夫)
2011-10-07 21:58:51
いや、その、あの、私の残り少ない愛は、別のところに注ぎたいと思います(^^;)。

愛でお腹いっぱいにならなくても、すでに膨らんだお腹で、洞窟に引っかかって出られなくなりそう。
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