速水勉著の「美しい森をつくる」(日本林業調査会)を読んでいる。
速水勉氏は、有名な速水林業の8代目、現当主の速水亨氏の父上だ。ある意味、速水林業の基礎を作った人とも言える。この人が50年に渡って専門誌などに記した原稿を集めたのが、この本。
最初は、あまりに古い記事(もっとも古いものは昭和34年)なので、現代に合わないだろうし、まあ回顧録みたいなものかと思っていた。
ところが、目からウロコがぼろぼろ落ちる。電車の中で読み始めたのに、思わず線を引いてしまった。
たとえば1981年に書かれたものには、政府の見通しから国産材時代が来るのは、2005年からと記している。これは実態とは全然違うが、この年に木材自給率が反転を始めたという点では、多少かすったかもしれない。が,本当に驚いたのは、その後の分析である。
国産材が外材に破れたのは並材の分野であり、「将来、日本の経済社会が順調に展開して、木材需要が次第に大きくなれば、国産木材価格は高くなるとは考えられない」とある。
写し間違いではない。木材需要が大きくなれば、価格は高くならない、というのだ。国産材が十分に供給できない点から外材の価格に引っ張られることを示している。
そのほか、労働集約的な林業から資本集約的な林業への転換の必要性とか、大正昭和の始めにあった木材不況と現在の木材不況の類似性とか、除草剤の有用性とか、下刈りや間伐の省力化とか、結構うなる話が多い。
もちろん、最近の筆によるものもある。緑陰の父子対話なんて素敵だ。
常に新しいことをやり続けるという姿勢も、すごい。林業は時間がかかるというが、そうでもない、毎年新たなことを行い、その成果が順繰りに毎年やってくるように感じてしまった。
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